説明

エアベアリングユニット

【課題】精密な押圧制御を行うと共に、微少な位置を高精度に検出することができるエアベアリングユニットを提供すること。
【解決手段】ロッド4に対して加圧エアを噴出することにより、シリンダブロック2に非接触状態でロッド4を支える。そして、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の間に測定用エアを出力すると共に、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の間に出力される測定用エアの流量を計測することにより、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の間の距離を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置を検出する位置検出手段を備えたエアベアリングユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICの微細加工が進んでおり、ウェハの多層に渡ってICパターンを形成することが行われている。ところで、ICパターンを形成した層の表面にはある程度の凹凸が生じるのが避けられない。従来は、そのまま次の層のパターンを形成していたが、層数が増加すると共に線やホールの幅が小さくなり、良好なICパターンを形成するのが難しく、欠陥などが生じ易くなっていた。そこで、ICパターンを形成した層の表面が平坦であるか否かを検査した後、又はパターンを形成した層の表面を研磨して表面を平坦にした後、次の層のパターンを形成することが行われている。
【0003】
ところで、パターンを形成した層の表面が平坦であるか否か等を検査する際、表面に生じる位置変化は、極めて微少である。このような微少な位置変化を検出するために、例えば、特許文献1に記載されているエアマイクロ式変位測定装置を利用している。このエアマイクロ式変位測定装置は、コントロールバルブによりベローズ内の空気圧を調整することによりロッドの移動量を調整して、ウェハに対してロッドを押圧すると共に、貫通孔に設けられた差動コイルとロッドに設けられた磁気コアからなる作動変圧器によりロッドの実際の移動量を測定し、ウェハが平坦であるか否かを検査していた。
【特許文献1】実開平5−34510
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアマイクロ式変位測定装置では、ベローズ内の空気圧を調整する際、ベローズに摺動抵抗が生じるため、ロッドの移動量をサブミクロン単位で正確に調整することができないという問題があった。また、ロッドの移動量をサブミクロン単位で正確に調整することができないため、ウェハに対してロッドを正確に押圧することができないこととなり、ウェハの位置を正確に測定することができず、平坦であるか否かを正確に判定できないという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、精密な押圧制御を行うと共に、微少な位置を高精度に検出することができるエアベアリングユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ロッド挿通孔を有するシリンダブロックと、前記ロッド挿通孔の長手方向に沿って前記ロッド挿通孔に移動可能に挿通されるロッドと、前記ロッド挿通孔の内壁面に設けられ、且つ、前記ロッドに対して加圧エアを噴出することで前記ロッドを非接触的に固定する軸受け部材とを備えるエアベアリングユニットにおいて、前記ロッドに固定されると共に、測定対象となるワークが固定される検出部と、前記シリンダブロックに固定されており、前記検出部に対して測定用エアを所定の空気圧で出力するエアマイクロノズルと、前記エアマイクロノズルから出力される測定用エアの流量を計測する流量センサと、を備え、前記エアマイクロノズルは、前記検出部と前記シリンダブロックの間に検査用エアを出力することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記流量センサ及び前記エアマイクロノズルは、前記シリンダブロックに埋め込まれたことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記エアマイクロノズルは、交換可能に構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、精密な押圧制御を行うと共に、微少な位置を高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態のエアベアリングシリンダ1を利用したシリンダシステムC1を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
図1,図2等に示されるように、このシリンダシステムC1は、エアベアリングシリンダ1と、それに加圧エアを給排するための構造とからなる。まず、エアベアリングシリンダ1の構造について説明する。
【0010】
同エアベアリングシリンダ1を構成する金属製のシリンダブロック2は、ロッド挿通孔3を有している。ロッド挿通孔3は断面略矩形状であって、シリンダブロック2の上下方向に沿って延びている。同ロッド挿通孔3は非貫通であって、シリンダブロック2の下端面の略中央部のみにて開口している。なお、このロッド挿通孔3は大きく分けて3つの領域(即ちシリンダブロック2の下端面側から順に小断面積領域3a、中断面積領域3b及び大断面積領域3c)からなる。
【0011】
また、このシリンダブロック2は、実際には複数のシリンダブロック構成体を組み合わせて一体化することにより構成されている。ただし、図面作成の便宜上、前記シリンダブロック2を一体物として図示している。
【0012】
図1,図2等に示されるように、ロッド挿通孔3には真空吸着用ロッド4(以下、単にロッド4と示す場合がある)が自身の長手方向に沿って移動可能に挿通されている。このロッド4は、断面正方形状をした上半部31と、断面長方形状をした下半部32とに大きく分けられる(図3参照)。ロッド4の先端側(即ち下端側)は、シリンダブロック2の下端面側にあるロッド挿通孔3の開口から突出している。このロッド4の下端面には、検出部としての真空吸着用治具6(以下、単に治具6と示す場合がある)がロッド4と一体移動可能に取り付けられている。この治具6には被吸着物であるウェハ5が真空吸着される。本実施形態では、このウェハ5が、検査対象となるワークである。
【0013】
真空吸着用ロッド4の内部には、例えばドリル加工等を施すことによって真空引き通路7が形成されている。真空引き通路7の一方側はロッド4の下端面において開口し、他方側はロッド4の外周面の所定箇所において開口している。前記治具6にもその真空引き通路7に対応する位置に貫通孔が形成されている。図3に示されるように、真空引き通路7の外周面側開口7aは、ロッド4の軸線方向に沿って長い長円形状に形成されている。一方、真空引き通路7の下端面側開口7bは円形状に形成されている。
【0014】
図1〜図3に示されるように、ロッド4における非突出状態の基端部(即ち上端部)には、フランジ状のストッパ部11が形成されている。このストッパ部11は大断面積領域3c内において移動可能に形成されている。従って、ストッパ部11の寸法は、中断面積領域3bの寸法よりも大きく、かつ大断面積領域3cの寸法よりも小さくなっている。
【0015】
ロッド挿通孔3における大断面積領域3cの内壁面には、緩衝部材としての一対のゴムクッション12,13が固定されている。一方のゴムクッション12は円盤状であって、ストッパ部11の上側面に当接可能な位置にある。他方のゴムクッション13は円環状であって、ストッパ部11の下側面に当接可能な位置にある。これら一対のゴムクッション12,13はロッド4に加わる衝撃を緩衝するとともに、ロッド4の移動可能範囲(即ちストローク長)を決定する役割を果たしている。
【0016】
図1,図2に示すように、ロッド挿通孔3の内壁面の複数箇所(本実施形態では2箇所)には、軸受け部材としての多孔質体15,16が設けられている。具体的に説明すると、ロッド挿通孔3の大断面積領域3cにおける内壁面には、多孔質体取付凹部17が形成されている。この多孔質体取付凹部17には、基端側軸受け部材としての板状の多孔質体15が4つ取り付けられている。一対の多孔質体15は対向した状態で離間配置されている(図1参照)。一方、ロッド挿通孔3の小断面積領域3aにおける内壁面には、多孔質体取付凹部18が形成されている。この多孔質体取付凹部18には、先端側軸受け部材としての多孔質体16が4つ取り付けられている。一対の板状の多孔質体16も同様に対向した状態で離間配置されている(図1参照)。なお、基端側の多孔質体15は、ロッド4の挿通時においてその上半部31の外周面のうちの2つに対面する。先端側の多孔質体16は、ロッド4の挿通時においてその下半部32の外周面のうちの2つに対面する。
【0017】
前記多孔質体15,16の形成材料としては、例えば焼結アルミニウム、焼結銅、焼結ステンレス等の金属材料を使用することができる。その他にも、焼結三ふっ化樹脂、焼結四ふっ化樹脂、焼結ナイロン樹脂、焼結ポリアセタール樹脂等のような合成樹脂材料や、焼結カーボン、焼結セラミックスなどが使用可能である。
【0018】
図1に示されるように、シリンダブロック2の一側面には給気ポート21が形成されている。この給気ポート21は、エア供給源Pに対して配管L1を介して直接的に接続されている。多孔質体取付凹部17のある領域と給気ポート21とは、通路21aを介して連通されている。また、2つの多孔質体取付凹部17,18同士は、通路21bを介して連通されている。
【0019】
従って、給気ポート21に加圧エアを供給すると、その加圧エアは通路21aを通り抜けて基端側の多孔質体15の外周面に到達するとともに、通路21a,21bを通り抜けて先端側の多孔質体16の外周面に到達する。そして、前記加圧エアは、両多孔質体15,16の内周面側からロッド4の外周面に向けて噴出される。上記のように噴出された加圧エアの発生する静圧により、ロッド4がシリンダブロック2のロッド挿通孔3に対して非接触的に支承される。即ち、このエアベアリングシリンダ1は静圧スラスト軸受けを備えたものとなっている。
【0020】
シリンダブロック2において多孔質体16の下側に相当する箇所には、ロッド4を包囲する集気空間が形成されている。この集気空間は、シリンダブロック2の一側面に形成された排気ポート22に通路22aを介して接続されている。前記排気ポート22は、配管L2を介して図示しない真空ポンプに接続されている。従って、多孔質体16から噴出した加圧エアの大部分は、まず集気空間内に集められた後、真空ポンプの働きにより排気ポート22を介して外部に排出される。
【0021】
シリンダブロック2の一側面において、真空引き通路7の外周面側開口7aに対応する位置には、真空引きポート23が設けられている。この真空引きポート23は、通路23aを介してロッド挿通孔3内に連通している。真空引きポート23は、配管L6を介して図示しない真空ポンプに接続されている。従って、真空ポンプの働きにより、配管L6、真空引きポート23、通路23a、真空引き通路7を介して、治具6の下面側領域の空気が吸引される。その結果、治具6の下面側領域が負圧となり、そこにウェハ5が吸着されかつ保持されるようになっている。なお、外周面側開口7aは長円形状に形成されていることから、ロッド4の移動位置の如何を問わず常に通路24aと対向した状態を維持する。
【0022】
シリンダブロック2の一側面において、ロッド挿通孔3の大断面積領域3cに対応する箇所には、第3の推力ポート24が設けられている。第3の推力ポート24は、通路24aを介して第3の圧力作用室34に連通している。第3の推力ポート24から供給される制御エアは、第3の圧力作用室34内に配置されているロッド4のストッパ部11に作用する。この場合、ストッパ部11の上側面積から下側面積を差し引いたものに相当する領域が、本実施形態における第3の圧力作用部P3として実質的に機能する。図1,図2に示されるように、第3の圧力作用部P3の有効受圧面積S3は、ロッド4の上半部31の断面積と等しいものとなる。
【0023】
そして、この第3の圧力作用部P3に制御エアが作用すると、ロッド4が下方に押圧される。従って、ロッド4を前進させる推力、より具体的にいうとロッド4をシリンダブロック2の下端面から突出させる方向の推力が、同ロッド4にもたらされる。
【0024】
図3等に示されるように、本実施形態の真空吸着用ロッド4の有する4つの外周面のうち、2つのものは段差部分がなくフラットになっている。2つのフラットな外周面(シール面39)は、ロッド4の中心を基準として互いに反対面側となる位置関係に形成されている。そして、ロッド挿通孔3において中断面積領域3bがある部分の内壁面には、2つのシール面39に対応すべく2箇所にメタルシール38が形成されている。なお、メタルシール38とシール面39とがなすクリアランスは、数μm以内という極めて小さな値に設定されている。
【0025】
ロッド4の有するシール面39以外の2つの外周面はフラットではなく、段差部分を備えている。このような段差部分は、上半部31と下半部32との境目の領域に存在する。本実施形態では、前記段差部分の下端面に第1及び第2の圧力作用部P1,P2としての役割を担わせている。なお、前記第1の圧力作用部P1は、ロッド4及び治具6の自重分を解消するための推力をロッド4にもたらす。第2の圧力作用部P2は、ロッド4を駆動制御するための推力をもたらす。
【0026】
第1及び第2の圧力作用部P1,P2は、ロッド4の中心を基準として互いに反対面側となる位置関係にあって、ともにロッド4の突出端側、つまり下端側を向くようにして形成されている。また、図1,図3等からも明らかなように、両圧力作用部P1,P2は、ともにロッド4の長手方向に対して垂直関係にある同一平面内に存在している。
【0027】
第1の圧力作用部P1の有効受圧面積S1は、第2の圧力作用部P2の有効受圧面積S2と同等かまたはそれよりも大きく(有効受圧面積比S1/S2≧1)設定されていることがよい。好ましくは両者の有効受圧面積比S1/S2が2以上に、さらに好ましくは4以上に設定されることがよい。図面作成の便宜上、実際よりも有効受圧面積比S1/S2が小さく描かれているものの、本実施形態では有効受圧面積比S1/S2=5に設定している。なお本実施形態では、第2の圧力作用部P2の有効受圧面積S1は、上述した第3の圧力作用部P3の有効受圧面積S3の1/2に設定されている。
【0028】
ロッド挿通孔3にロッド4を挿通した場合、ロッド挿通孔3の内壁面とロッド4の外周面との間には2つの空間ができる。第1の圧力作用部P1が配置されている空間を第1の圧力作用室35と呼び、第2の圧力作用部P2が配置されている空間を第2の圧力作用室36と呼ぶことにする。
【0029】
第1及び第2の圧力作用室35,36は、ロッド4の中心を基準として互いに反対面側となる位置関係で形成される。これら2つの圧力作用室35,36は、メタルシール38及びシール面39の存在により、互いに隔てられている。従って、両圧力作用室35,36同士の間で加圧エアの往来は、実用上無視できる程度に少ない。ゆえに、その意味において第1及び第2の圧力作用室35,36は、互いに独立したものとなっている。
【0030】
図1,図4に示されるように、シリンダブロック2の一側面において、ロッド挿通孔3の中断面積領域3bの下部に対応する箇所には、第2の推力ポート26が設けられている。第2の推力ポート26は、通路26aを介して第2の圧力作用室36に連通している。従って、第2の推力ポート26に供給された制御エアは、前記通路26aを経て第2の圧力作用室36に到ることができる。
【0031】
一方、シリンダブロック2において第2の推力ポート26がある位置のちょうど反対面側の箇所には、第1の推力ポート25が設けられている。第1の推力ポート25は、通路25aを介して第1の圧力作用室35に連通している。従って、第1の推力ポート25に供給された制御エアは、前記通路25aを経て第1の圧力作用室35に到ることができる。
【0032】
そして、第1及び第2の圧力作用部P1,P2に制御エアが作用すると、ロッド4が上方に所定の力で押圧される。従って、ロッド4を後退させる推力、より具体的にいうとロッド4をシリンダブロック2の下端面から没入させる方向の推力が、同ロッド4にもたらされる。ただし、第1の圧力作用部P1のもたらす推力のほうが、第2の圧力作用部P2のもたらす推力よりも数倍大きく設定されている。これは両圧力作用部P1,P2の役割の相違に基づくものである。
【0033】
図1に示されるように、第3の推力ポート24に接続された配管L3及び第2の推力ポート26に接続された配管L4は、それらに共通の配管L5に接続されている。さらに、その配管L5はエア供給源Pに接続されている。第3の推力ポート24及び第2の推力ポート26に共通の配管L5の途上には、レギュレータR1及び圧力制御弁としての電空レギュレータR2が設けられている。レギュレータR1は、エア供給源Pからの加圧エアを所定圧力に減圧する役割を果たす。このレギュレータR1の下流側に位置する電空レギュレータR2は、同レギュレータR1により減圧された加圧エアをさらに減圧して所望の制御エアにする役割を果たしている。即ち、共通の配管L5上では2段階の減圧が行われる。
【0034】
従って、第3の推力ポート24及び第2の推力ポート26にはそれぞれ配管L3,L4を介して等しい圧力の制御エアが供給される。なお、レギュレータR1の設定圧は手動により適宜調節可能であり、電空レギュレータR2の設定圧力は外部の図示しないコントローラにより適宜調節可能となっている。
【0035】
第2の推力ポート26側の配管L4上には電磁弁等が何ら設けられていないのに対し、第3の推力ポート24側の配管L3には電磁弁としての電磁切換弁Bが設けられている。この電磁切換弁Bは、配管L3の流路を開放する位置と閉鎖する位置との2位置に切換可能な構成を有する。従って、電磁切換弁Bの切換に基づき、第3の推力ポート24への制御エアの供給または遮断の切換が可能となっている。なお、電磁切換弁Bは前記コントローラに接続されていて、同コントローラにより自動的に切り換えられる。これに対して、第2の推力ポート26側には、常に一定圧力値の制御エアが供給される。
【0036】
図1に示されるように、電磁切換弁Bが配管L3の流路を閉鎖している場合には、第3の推力ポート24への制御エアの供給は遮断され、第2の推力ポート26へのみ制御エアが供給される。このとき、制御エアは第2の圧力作用部P2に作用して、ロッド4を後退させる。
【0037】
一方、電磁切換弁Bが配管L3を開放している場合には、第3の推力ポート24及び第2の推力ポート26へそれぞれ等しい圧力の制御エアが供給される。その結果、第2の圧力作用部P2にはロッド4を後退させる推力が作用するとともに、第3の圧力作用部P3にはロッド4を前進させる推力が作用する。既述のとおり、第2の圧力作用部P2の有効受圧面積S1は、上述した第3の圧力作用部P3の有効受圧面積S3の1/2に設定されている。従って、このときロッド4は前進することとなり、その推力の大きさは制御エアがロッド4を後退させる場合の大きさと等しくなる。
【0038】
また、第1の推力ポート25に接続された配管L7は、エア供給源Pと給気ポート21とをつなぐ配管L1に対して接続されている。この第1の推力ポート25側の配管L7には、手動により設定圧が適宜調節可能なレギュレータR3が設けられている。なお、このレギュレータR3の設定圧は、前記レギュレータR1の設定圧とは異なる値、即ちロッド4及び治具6の自重分を解消する推力をもたらすのに最適な値に設定されている。従って、第1の推力ポート25側には、常に一定圧力値の制御エアが供給される。
【0039】
そして、本実施形態のエアベアリングシリンダ1には、治具6とシリンダブロック2との間の距離を測定するための構造が設けられている。以下、詳しく説明する。
図1に示すように、シリンダブロック2の側面(図1における左側側面)には、左方に開口するように、センサ収容部101が凹設されている。このセンサ収容部101には、通過する測定用エアの流量を計測する流量センサ102が収容される。センサ収容部101に収容される流量センサ102は、エア供給源Pに対して配管L8を介して直接的に接続されている。なお、配管L8には、手動により設定圧が適宜調節可能なレギュレータR4が配設されており、エア供給源Pから流量センサ102に供給される測定用エアの設定圧が調整されるようになっている。すなわち、流量センサ102には、所定の圧力値の測定用エアが供給されるようになっている。
【0040】
そして、シリンダブロック2の下端面には、測定用エアを出力するエアマイクロノズル103を収容するためのノズル収容部104が凹設されている。ノズル収容部104は、下方(即ち、治具6側)に開口するように、凹設されている。すなわち、ノズル収容部104は、エアマイクロノズル103を収容したとき、エアマイクロノズル103が下方に測定用エアを出力することができるように設けられている。また、ノズル収容部104は、ノズル収容部104の直下に真空吸着用治具6が位置するように設けられている。
【0041】
また、センサ収容部101とノズル収容部104の間には、測定用エアが通過する通路105が形成されており、当該通路105により、センサ収容部101とノズル収容部104は連結されている。すなわち、センサ収容部101に収容された流量センサ102を通過した測定用エアは、当該通路105を通過してノズル収容部104に収容されたエアマイクロノズル103に供給されるようになっている。
【0042】
そして、前記ノズル収容部104に収容されるエアマイクロノズル103は、測定用エアが通過する供給通路106が貫通形成されている。そして、エアマイクロノズル103は、前記ノズル収容部104に収容されたとき、測定用エアを真空吸着用治具6に向けて(本実施形態では、下方に)出力できるように、供給通路106の一端が下方に開口する向きで収容されている。
【0043】
また、エアマイクロノズル103は、その下端がシリンダブロック2の下面と一致するようになっている。このため、ロッド4が上方へ移動し、真空吸着用治具6がシリンダブロック2と接触した場合、エアマイクロノズル103(の供給通路106)は、真空吸着用治具6により閉塞されるようになっている。
【0044】
また、ノズル収容部104は、ノズル収容部104の直下に真空吸着用治具6が位置するように設けられているため、エアマイクロノズル103の供給通路106から出力される測定用エアは、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の下面との間にできる隙間に出力されることとなる。そして、エアマイクロノズル103から真空吸着用治具6とシリンダブロック2の下面との間にできる隙間に出力される測定用エアは、エアマイクロノズル103のノズル径及び測定用エアの設定圧が一定であるならば、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の下面との間にできる隙間の大きさによりその流量が変化することが経験上分かっている。具体的には、図5に示すように、関係曲線Xに従って、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の下面との間にできる隙間(距離)が大きくなればなるほど、測定用エアの流量が多くなるようになっている。従って、測定用エアの流量から真空吸着用治具6とシリンダブロック2の下面との間にできる隙間(距離)を測定することが可能となる。
【0045】
次に、上記のように構成されたエアベアリングシリンダ1及びシリンダシステムC1の動作を説明する。
エア供給源Pから供給される加圧エアは、給気ポート21を介して常時多孔質体15,16に供給されている。従って、多孔質体15,16からロッド4に対して噴出される加圧エアの圧力により、ロッド4がロッド挿通孔3内の多孔質体15,16に対して非接触的に支承されている。多孔質体15,16から噴出された加圧エアは、集気空間に集められた後、真空ポンプの作用により外部に排出される。また、エア供給源Pから供給される制御エアは、第1の推力ポート25を介して、一定の圧力で常時第1の圧力作用室35内に供給されている。従って、ロッド4及び治具6は、それらの自重分にほぼ見合う大きさの推力で持ち上げられている。即ち、ロッド4及び治具6の自重が解消されている。
【0046】
図1に示されるように、電磁切換弁Bが配管L3を閉鎖している場合には、第3の推力ポート24への制御エアの供給は遮断され、第2の推力ポート26へのみ制御エアが供給される。このとき、前記制御エアは第2の圧力作用室36に作用し、ロッド4を後退(上動)させる。
【0047】
この状態で、治具6によりウェハ5を吸着保持すべく、エアベアリングシリンダ1をウェハ5の上方位置まで移動させたうえで、コントローラにより電磁切換弁Bを切り換えて配管L3を開放する。すると、第3の推力ポート24及び第2の推力ポート26へそれぞれ等しい圧力の制御エアが供給される結果、ロッド4が前進(下動)する。これに先立って真空引きを開始しておけば、治具6の下面側にウェハ5を吸着保持することができる。この後、再びロッド4を後退させる。
【0048】
次に、ウェハ5を吸着保持した状態でエアベアリングシリンダ1を測定台200の上に移動させる。そして、ロッド4を前進させて、治具6でウェハ5を測定台200に所定の押圧力で押し付ける。そして、押しつけた際の測定用エアの流量を計測する。その後、治具6でウェハ5を測定台200に所定の押圧力で押し付けた状態で、エアベアリングシリンダ1を測定台200に対して前後左右に水平に移動させ、測定用エアの流量変化を測定する。すなわち、測定台200をウェハ5の全表面上を移動させ、測定用エアの流量変化を測定する。このとき、測定用エアの流量が変化する場合には、治具6とシリンダブロック2との間の距離が一定でなく、ウェハ5の表面が平坦でないと判定できる。一方、測定用エアの流量が変化しない場合には、治具6とシリンダブロック2との間の距離が一定であり、ウェハ5の表面が平坦であると判定できる。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態は、以下の効果を有する。
(1)真空吸着用治具6とシリンダブロック2の間に一定の空気圧の測定用エアを出力した場合、当該測定用エアの流量は、真空吸着用治具6とシリンダブロック2との距離に応じて変化する。このため、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の間に出力される測定用エアの流量を計測することにより、真空吸着用治具6とシリンダブロック2の間の距離を計測することができる。そこで、真空吸着用治具6に固定されたウェハ5の表面を平坦な測定台200に押圧しつつ、ウェハ5を測定台200に対して移動させ、その移動中の測定用エアの流量変化を計測することにより、表面が平坦か否かを判定することができる。
【0050】
また、真空吸着用治具6が固定されるロッド4に加圧エアを噴出し、所定の圧力を加えることによりロッド4を非接触状態で支えている。このため、ロッド4が移動する際、ロッド4とシリンダブロック2との間に摺動抵抗は生じなくなる。従って、正確にウェハ5への押圧力を制御することができ、ウェハ5に対して押圧力を加えすぎることや、逆にウェハ5に加える押圧力が弱くて、測定台200に押し当てることができずに、ウェハ5と測定台200が離れてしまい、正確に検査することができないという状態を防止することができる。以上のことから精密な押圧制御を行うと共に、微少な位置を高精度に検出することができる。
【0051】
(2)測定用エアの流量は、真空吸着用治具6とシリンダブロック2との距離に応じて変化するので、流量センサ102により測定用エアの流量を計測することにより、ウェハ5の厚さを測定することができる。このため、例えば、作動変圧器(差動コイル)に一定周波数の電圧を加える発振器や差動コイルにおいて磁束変化により生じた出力電圧を増幅するリニアライザなどを装置の外部に設ける場合と比較して装置の大きさをコンパクトにすることができる。また、製造コストを低減することができ、電源消費量を少なくすることができる。
【0052】
(3)ロッド4を支える加圧エアを測定用エアに流用することができるので、例えば磁束変化を計測する場合と比較して、装置構成を簡単にすることができる。
(4)流量センサ102及びエアマイクロノズル103は、シリンダブロック2に埋め込まれている。このため、エアベアリングシリンダ1をコンパクトにすることができ、また、無駄な配線や配管を少なくすることができる。
【0053】
尚、上記実施形態は、次のような別の実施形態(別例)にて具体化できる。
○上記実施形態において、第1の推力ポート25をシリンダブロック2における反対側の側面、つまり第2の推力ポート26等が形成されている側面に形成してもよい。このようにすれば集中配管化に好都合となる。
【0054】
○上記実施形態において、第1及び第2の圧力作用部P1,P2を、ロッド4の中心を基準として互いに反対面側とはならない位置関係、例えば隣接する面に形成してもよい。
○上記実施形態において、第1の推力ポート25につがなる配管L7をレギュレータR1と電空レギュレータR2との間に接続するようにして、配管L7上のレギュレータR3を省略することも可能である。このようにすれば、より簡略なシリンダシステムとすることができる。
【0055】
○上記実施形態では、ロッド軸線方向に沿って離間した2箇所に軸受け部材としての多孔質体15,16を設けたものを例示した。これに対し、一方の多孔質体15(または16)のみを用い、他方のもの16(または15)を省略して実施してもよい。
【0056】
○上記実施形態において、一対の板状の多孔質体15を対向して離間配置した前記各実施形態に代えて、例えば多孔質体15を環状に形成してもよい。勿論、多孔質体16についても同様のことがいえる。以上のように形成すると、多孔質体15,16によりロッド4の外周面が包囲され、その全域にわたって加圧エアを噴射することができる。
【0057】
○上記実施形態では、前述のごとく、第1及び第2の圧力作用部P1,P2の有効受圧面積S1,S2が任意に設定可能な構成を有している。従って、必要に応じて、例えば第1の圧力作用部P1の有効受圧面積S1を、第2の圧力作用部P2の有効受圧面積S2よりも小さく設定することも勿論許容される。
【0058】
○上記実施形態では、軸受け部材である多孔質体15,16を、シリンダブロック2側ではなくロッド4側に設けた構成も許容される。このようにすると、シリンダ1全体をスリム化することができる。
【0059】
○上記実施形態において、ゴムクッション12,13以外の緩衝部材として、例えばゴム以外の材料からなる板材を用いてもよい。この場合、衝撃を緩和し得る性質を有する材料であれば、一般的に知られている各種の合成樹脂(例えばフッ素系樹脂など)からなる板材を使用することが可能である。
【0060】
○上記実施形態において、ゴムクッション12,13等の緩衝部材は、不要であれば省略されてもよい。このようにすると、エアベアリングシリンダ1がよりいっそうコンパクトなものとなる。
【0061】
○上記実施形態において例示した真空吸着用治具6には、ウェハ5等のような被吸着物を吸着するための構造としての貫通孔が1つ形成されていた。これに対して、治具6の有する貫通孔の開口部に多孔質体を介在させ、その多孔質体の表面(下面)をウェハ5の吸着面としてもよい。このようにすれば、ウェハ5に対して局部的に真空圧が作用しにくくなり、ウェハ5の変形・破損を未然に防止することができる。
【0062】
○上記実施形態において、治具6に、ウェハ5が水平方向へ移動しないように移動を規制する規制部を設けても良い。このようにすれば、ウェハ5の表面に凹凸が存在しても、水平方向への移動を規制することができ、厚さ(又は表面が平坦であるか否か)を正確に測定できる。
【0063】
○上記実施形態では、測定用エアの流量を変化から平坦であるか否かのみを計測した。この別例として、ウェハ5の厚さを計測できるようにしても良い。具体的には、真空吸着用治具6−シリンダブロック2間の距離と、測定用エアの流量の関係曲線X(図5)を予め計測しておき、測定用エアの流量からウェハ5(ワーク)の厚さを求めることができるようにしても良い。このようにした場合、ロッド4はシリンダブロック2に対する摺動抵抗はないため、所定の押圧力で常にウェハ5を押圧することができ、正確にウェハ5の厚さを計測することができる。
【0064】
○上記実施形態では、ウェハ5の表面が平坦であるか否かを検査したが、ウェハ5の表面を平坦となるように研磨する構成であっても良い。具体的には、測定台200の代わりに自身が高速回転する研磨台を設置し、測定用エアの流量が変化しないように、ウェハ5を研磨台に対して(又は研磨台をウェハ5に対して)前後左右に平行移動させればよい。このようにすれば、ウェハ5の表面を平坦とすることができる。
【0065】
○上記実施形態では、ウェハ5の表面が平坦であるか否かのみを検査したが、ウェハ5を所定の厚さになるように研磨する構成であっても良い。具体的には、真空吸着用治具6−シリンダブロック2間の距離と、測定用エアの流量の関係曲線X(図5)を予め計測しておき、研磨する厚さから測定用エアの流量を算出する。そして、測定用エアの流量が算出した測定用エアの流量と一致するように、ウェハ5を研磨台に対して(又は研磨台をウェハ5に対して)前後左右に表面上を平行移動させればよい。このようにすれば、ウェハ5を所定の厚さに研磨することができる。
【0066】
○上記実施形態では、エアマイクロノズル103のノズル径を変更することにより、測定用エアの流量とシリンダブロック2−治具6間の距離との関係曲線Xが変更される。具体的には、図6に示すように、ノズル径を大きくすると、関係曲線X1のように、測定用エアの流量変化が多くても距離変化が大きく増加しない関係となり、ノズル径を小さくすると、関係曲線X2のように、測定用エアの流量変化が少なくても距離変化が大きい関係となる。そこで、別例としてエアマイクロノズル103が交換可能となるように、エアベアリングシリンダ1を構成しても良い。このようにすれば、計測する距離の大きさの程度(スケール)によってノズル径を変更して、より正確に距離変化を測定することができる。また、埋め込み式と異なり、エアマイクロノズル103以外の部品を利用できるので、コストを少なくすることができる。
【0067】
○上記実施形態では、測定対象がウェハ5であったが、ウェハ5以外の物を測定対象としても良い。例えば、金属板を測定対象としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】エアベアリングシリンダの断面図。
【図2】A−A線断面図。
【図3】真空吸着用ロッドの斜視図。
【図4】B−B線断面図。
【図5】測定用エアの流量と、真空吸着用治具−シリンダブロック間の距離の関係性を示す曲線を説明するための説明図。
【図6】別例における測定用エアの流量と、真空吸着用治具−シリンダブロック間の距離の関係性を示す曲線を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0069】
1…エアベアリングシリンダ、2…シリンダブロック、3…ロッド挿通孔、4…(真空吸着用)ロッド、5…ウェハ、6…真空吸着用治具、7…真空引き通路、7b…外周側開口、15,16…多孔質体、25…第1の推力ポート、26…第2の推力ポート、35…第1の圧力作用室、36…第2の圧力作用室、S1…第1の圧力作用部の有効受圧面積、S2…第2の圧力作用部の有効受圧面積、P1…第1の圧力作用部、P2…第2の圧力作用部、102…流量センサ、103…エアマイクロノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド挿通孔を有するシリンダブロックと、前記ロッド挿通孔の長手方向に沿って前記ロッド挿通孔に移動可能に挿通されるロッドと、前記ロッド挿通孔の内壁面に設けられ、且つ、前記ロッドに対して加圧エアを噴出することで前記ロッドを非接触的に固定する軸受け部材とを備えるエアベアリングユニットにおいて、
前記ロッドに固定されると共に、測定対象となるワークが固定される検出部と、
前記シリンダブロックに固定されており、前記検出部に対して測定用エアを所定の空気圧で出力するエアマイクロノズルと、
前記エアマイクロノズルから出力される測定用エアの流量を計測する流量センサと、を備え、
前記エアマイクロノズルは、前記検出部と前記シリンダブロックの間に検査用エアを出力することを特徴とするエアベアリングユニット。
【請求項2】
前記流量センサ及び前記エアマイクロノズルは、前記シリンダブロックに埋め込まれたことを特徴とする請求項1に記載のエアベアリングユニット。
【請求項3】
前記エアマイクロノズルは、交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアベアリングユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−151261(P2008−151261A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340169(P2006−340169)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】