説明

エッチング用組成物及びエッチング方法

【課題】 銀又は銀合金をエッチングする際に銀残渣を発生させず、しかもエッチング液を繰り返して使用してもエッチング速度が変化しないエッチング液及びそれを用いたエッチング方法を提供する。
【解決手段】 銀又は銀合金のエッチングにおいて、組成物全体に対し、銅イオンを0.01〜10重量%、硝酸を0.01〜10重量%、燐酸を10〜69重量%、カルボン酸を30〜50重量%含有し、残部は水である銀又は銀合金エッチング用組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング用組成物及びそれを用いたエッチング方法に関する。更に詳しくは、例えば、フラットパネルディスプレイ等の製造において使用する、銀又は銀合金エッチング用の組成物及びそれを用いたエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化技術の急速な進展に伴い、フラットパネルディスプレーやメモリ集積回路として用いられる電極配線材料にあっては、その加工の微細化精度に対する要求が益々向上している一方、高光反射率、低抵抗値を有する金属として、銀及び銀合金の使用が増大している。
【0003】
銀又は銀合金からなる電極配線を形成するためには、銀又は銀合金を所定のパターン形状に加工する必要がある。このパターン形成のための加工技術としては、化学薬品を用いた金属エッチングが知られている。
【0004】
金属エッチングでは、通常、酸化剤と共に被エッチング金属を溶解させる目的で酸成分を添加したエッチング液を用いており、酸成分としては燐酸、酸化剤成分としては硝酸が一般的に用いられている。エッチング速度を調整する目的で、酸成分、酸化剤成分に加えて、酢酸等の希釈剤成分も添加される。
【0005】
銀及び銀合金のエッチング方法においては、燐硝酢酸と呼ばれる燐酸、硝酸、及び酢酸の混合液が広く使用されている。また、酢酸の代わりに、クエン酸を使用するエッチング液(特許文献1参照)、多価カルボン酸を使用するエッチング液(特許文献2参照)、乳酸を使用するエッチング液(特許文献3参照)、メトキシ酢酸を使用するエッチング液(特許文献4参照)や、燐硝酢酸にグリセリンを添加したエッチング液(特許文献5参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記したエッチング液には、いくつかの問題点が指摘されている。
【0007】
フラットパネルディスプレー基板やメモリ集積回路基板は、例えば、ガラス基板表面にスパッタリング法等により所定の膜厚の銀又は銀合金薄膜層を形成し、次いで、微細な電極パターンや配線を形成するためのレジスト樹脂層を形成した後、これら電極パターンや配線間の銀又は銀合金薄膜層をエッチング等により除去した後、レジスト層を除去することにより製造される。
【0008】
このようにして形成された微細パターンの銀又は銀合金薄膜層を除去するエッチング工程においては、エッチングすべき銀又は銀合金の露出部にエッチング残渣が生じやすく、レジスト樹脂層に覆われた銀又は銀合金層の側面部のエッチング(サイドエッチング)が発生しやすいという問題がある。
【0009】
また、エッチング液を工業的に使用する場合、エッチング液を繰り返して使用することになるが、希釈成分を添加してエッチング速度を調整しても、エッチング速度が変化してしまい、一定のエッチング速度を維持できる期間が短縮するという問題がある。
【0010】
銀又は銀合金の残渣が発生しやすく、銀又は銀合金薄膜のサイドエッチングが発生しやすいという問題に対しては、銀イオンを添加する方法(特許文献6参照)が提案されている。
【0011】
また、燐硝酢酸を繰り返して使用した場合にエッチング速度が変化するという問題に対しては、酸化剤を追加添加する方法(特許文献7参照)が提案されている。しかしながら、この方法は、酸化剤をコントロールしながら追加添加するための特別の装置を必要とするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3419223号公報
【特許文献2】国際公開第2003/031688号パンフレット
【特許文献3】特開2005−206903号公報
【特許文献4】特開2006−253473号公報
【特許文献5】特開2002−231706号公報
【特許文献6】特開2004−2946号公報
【特許文献7】特開2002−129361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、銀又は銀合金をエッチングする際に銀残渣を発生させず、しかもエッチング液を繰り返して使用してもエッチング速度が変化しないエッチング液及びそれを用いたエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、銀又は銀合金のエッチングについて鋭意検討した結果、銅イオン、硝酸、燐酸、及びカルボン酸を特定の組成で含むエッチング液が、銀又は銀合金のエッチングにおいて、エッチング残渣を減少させ、しかも繰り返して使用しても安定したエッチング速度を維持できるという新規な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの銀又は銀合金エッチング用組成物及びその組成物を使用したエッチング方法である。
【0016】
[1]銀又は銀合金エッチング用組成物であって、組成物全体に対し、銅イオンを0.01〜10重量%、硝酸を0.01〜10重量%、燐酸を10〜69重量%、カルボン酸を30〜50重量%含有し、残部は水である銀又は銀合金エッチング用組成物。
【0017】
[2]カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸、及びニトリロ三酢酸からなる群より選ばれる一種又は二種以上のカルボン酸であることを特徴とする上記[1]の記載のエッチング用組成物。
【0018】
[3]さらに、アンモニア及び/又はアミンを含むことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のエッチング用組成物。
【0019】
[4]アミンが、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチリレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジン、N−アミノエチレルピペラジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンから成る群より選ばれる一種又は二種以上のアミンであることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のエッチング用組成物。
【0020】
[5]アンモニア及び/又はアミン濃度が、5重量%以下であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のエッチング用組成物。
【0021】
[6]銀又は銀合金のエッチングにおいて、上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のエッチング用組成物を使用することを特徴とするエッチング方法。
【0022】
[7]銀又は銀合金を使用するフラットパネルディスプレイや薄膜トランジスタの製造において、銀又は銀合金をエッチングすることを特徴とする上記[6]に記載のエッチング方法。
【0023】
[8]40℃以下の温度でエッチングすることを特徴とする上記[6]又は[7]に記載のエッチング方法。
【0024】
[9]銀合金が、銅を含む銀合金である上記[6]乃至[8]にいずれかに記載のエッチング用組成物。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエッチング用組成物及びそれを用いたエッチング方法によれば、銀又は銀合金のエッチングにおいて、エッチング後のエッチング面がテーパー形状となり、絶縁膜による配線パターンの被覆性が良好となるだけでなく、銀及び銀合金の残渣が無い特徴がある。また、エッチング用組成物を繰り返し使用してもエッチング速度が安定しているため、フラットパネルディスプレーを安定して製造することが可能になり、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
本発明のエッチング用組成物の必須成分は、銅イオン、硝酸、燐酸、及びカルボン酸である。
【0028】
本発明のエッチング用組成物に使用される銅イオンは、銀又は銀合金のエッチング速度を加速し、エッチング用組成物の繰り返し使用においてエッチング速度の安定化に寄与する。本発明のエッチング用組成物において、銅は組成物に溶解しておれば特に支障なく使用することができる。組成物に銅塩、錯体の形で添加しても良いし、銅金属を酸、又は塩基で溶解して使用しても良い。銅塩としては、ギ酸銅、酢酸銅、クエン酸銅等の有機酸塩、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅等の無機酸塩のいずれも問題なく使用できる。
【0029】
本発明のエッチング用組成物に使用される硝酸、燐酸についても特に制限はない。すなわち、一般に工業的に流通している硝酸、燐酸を使用しても一向に差し支えない。
【0030】
本発明のエッチング用組成物に使用されるカルボン酸は、エッチング速度の調整、エッチング残渣の減少、エッチング形状の制御に影響する。好ましいエッチング形状とは、パターンを形成する際に、パターンのエッジ(輪郭)をなす端面が、エッチング後、基板面に対してなだらかな傾斜面となる形状である。即ち、パターンに垂直な断面においてエッジが基板面に対して小さいテーパー角(エッジ端面と基板面がなす角)にする必要がある。エッジがテーパー形状でないと、絶縁膜による配線パターンの被覆性が不充分となって絶縁不良を起こしやすくなる。
【0031】
このようなカルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸等の多価カルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸等のアミノ酸等が挙げられる。
【0032】
本発明のエッチング用組成物には、アンモニア及び/又はアミンを添加することができる。アンモニア及び/又はアミンは、エッチング速度の調整、エッチング残渣の減少に影響する。
【0033】
このようなアミンとしては、特に限定するものではないが、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、エチレンジアミン、ジエチリレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジン、N−アミノエチレルピペラジン等のエチレンアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。これら以外のアミンも使用できるが、工業的に高価であったり、エッチング用組成物に対する溶解度が低い等、使用に制限を受ける場合があるため、上記したアミンが好ましく使用される。
【0034】
本発明のエッチング用組成物において、銅イオンの濃度は、通常0.01重量%〜10重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲であり、更に好ましくは0.3重量%〜2重量%の範囲である。銅イオンの濃度を0.01重量%以上とすることで、銅イオンの上記した効果、すなわちエッチング速度の加速及びエッチング液繰り返し使用時のエッチング速度の安定化効果が向上する。また銅イオンの濃度を10重量%以下とすることで、銅イオンがエッチング対象に残存する可能性が低くなり、特に電子デバイスの製造には好影響を与える。
【0035】
本発明のエッチング用組成物の硝酸濃度は、通常0.01〜10重量%の範囲であるが、特に0.1〜5重量%の範囲が好ましい。硝酸濃度を0.01重量%以上とすることで、エッチング速度が向上して、工業的な実施レベルになり、10重量%以下とすることで、レジスト等他材へのダメージを小さくすることができる。
【0036】
本発明のエッチング用組成物の燐酸濃度は、通常10〜69重量%の範囲であるが、特に20〜50重量%の範囲が好ましい。燐酸濃度を10重量%以上とすることで、エッチング速度が向上して、工業的な実施レベルになり、69重量%以下とすることで、エッチング液の粘度が高くなりすぎず、エッチングムラの発生を抑制することができる。
【0037】
本発明のエッチング用組成物のカルボン酸濃度は、通常30〜50重量%の範囲であるが、特に35〜50重量%の範囲が好ましい。カルボン酸濃度が30重量%未満でもエッチングは可能であるが、エッチング面がテーパー形状にならないことがある。また、50重量%を超えても、添加しただけの効果が得られない。
【0038】
アンモニア及び/又はアミンを本発明のエッチング用組成物に添加する場合、アンモニア及び/又はアミン濃度は、通常5重量%以下であり、特に1重量%以下が好ましい。アンモニア及び/又はアミン濃度が5重量%を超えた場合、エッチング速度は工業的でないほど遅くなる。
【0039】
本発明のエッチング用組成物は、水で希釈して使用しても良いし、有機溶媒で希釈して使用しても良い。有機溶媒としては、一般に流通しているものを使用することができる。
【0040】
本発明のエッチング用組成物は、銀及び銀合金(銀−パラジウム、銀−ネオジム−銅、銀−パラジウム−銅等)をエッチングできるが、特に銅を含む銀合金において優れた性能を発揮する。
【0041】
また、本発明のエッチング用組成物は、電子デバイス、特にフラットパネルディスプレイ(アクティブマトリクス方式の液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ)やメモリ集積回路等に利用される薄膜トランジスタ等の製造で使用される銀又は銀合金のエッチングにおいて優れた性能を発揮する。
【0042】
本発明のエッチング用組成物を使用する時の温度は、20〜40℃、好ましくは20〜35℃である。40℃を超える温度では、エッチング液の成分が揮発し、エッチング液の寿命が低下し、20℃未満の温度では、工業的に満足できる速度でエッチングすることが難しい。
【0043】
本発明のエッチング用組成物を使用し、銀又は銀合金をエッチングする際には、エッチング対象をエッチング用組成物に浸漬しても良いし、エッチング用組成物をエッチング対象にスプレーしても良い。また、エッチングを促進し、残渣を除去するために、エッチング時に超音波等を使用しても良い。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
なお表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用する。
【0046】
APC:銀−パラジウム−銅合金
Ag:銀
EDA:エチレンジアミン
NH:アンモニア
CA:クエン酸
実施例1.
燐酸34重量%、硝酸4.3重量%、酢酸40重量%、硝酸銅3.7重量%(残部は水)からなるエッチング用組成物(エッチング液)を調製した。
【0047】
このエッチング液を使用し、シリコン酸化膜上に150nmの厚さでAPCを成膜し、さらにポジ型ホトレジストを塗布して、パターンを露光、現像した。この基板を23℃で浸漬した。APC薄膜が消失するまでの時間からエッチング速度を算出した結果、エッチング速度は430nm/分であった。
【0048】
このエッチング液に再度、APCパターン基板を23℃で浸漬した。同様にエッチング速度を測定すると、エッチング速度は430nm/分であり、前回と全く変わらなかった。
【0049】
また、この基板を水洗、乾燥した後、ポジ型ホトレジストを除去してSEMでエッチング面を観察した。その結果、エッチング面は良好なテーパー形状となっていることが観測された。
【0050】
比較例1.
燐酸34重量%、硝酸4.2重量%、酢酸20重量%(残部は水)からなるエッチング液を調製した。
【0051】
このエッチング液を使用し、実施例1と同様にエッチング速度を算出した結果、エッチング速度は58nm/分だった。
【0052】
このエッチング液に再度、APCパターン基板を23℃で浸漬し、同様にエッチング速度を測定すると、エッチング速度は156nm/分となり、前回に比べ大きく変化した。
【0053】
また、この基板を水洗、乾燥した後、ポジ型ホトレジストを除去してSEMでエッチング面を観察した。その結果、エッチング面はほとんどテーパー形状となっていなかった。
【0054】
比較例2.
燐酸34重量%、硝酸4.2重量%、酢酸20重量%、硝酸銀0.1重量%(残部は水)のエッチング液を調製した。
【0055】
このエッチング液を使用し、実施例1と同様にエッチング速度を算出した結果、エッチング速度は58nm/分だった。
【0056】
このエッチング液に再度、APCパターン基板を23℃で浸漬し、同様にエッチング速度を測定すると、エッチング速度は156nm/分となり、前回に比べ大きく変化した。
【0057】
また、この基板を水洗、乾燥した後、ポジ型ホトレジストを除去してSEMでエッチング面を観察した。その結果、エッチング面はほとんどテーパー形状となっていなかった。
【0058】
実施例2〜実施例5.
表1に記載の組成のエッチング液を調製し、表1に記載の温度で表1に記載の金属をエッチングした。これらの結果を表1に併せて示す。なお、エッチング面をSEMで観察し、良好なテーパー形状となっている場合を○、テーパー形状が不充分な場合は×とした。
【0059】
【表1】

比較例3
燐酸34重量%、硝酸6.3重量%、酢酸40重量%(残部は水)からなるエッチング液を調製した。
【0060】
このエッチング液を使用し、実施例1と同様にエッチング評価を行ったところ、テーパー形状は良好であったが、エッチング速度を算出した結果、エッチング速度は75nm/分であり、同じエッチング液で再度エッチング評価を行った結果、エッチング速度は390nm/分となり、前回に比べ大きく変化した。
【0061】
比較例4.
燐酸67.7重量%、硝酸0.35重量%、酢酸10重量%、硝酸銅0.1重量%(残部は水)からなるエッチング液を調製した。
【0062】
このエッチング液に、APC薄膜を25℃で20秒浸漬した後、APC薄膜をエッチング液から取り出し、水洗、乾燥した。前後の膜厚変化からエッチング速度を算出した結果、エッチング速度は360nm/分であった。
【0063】
このエッチング液に再度、APC薄膜を25℃で20秒浸漬した。同様にエッチング速度を測定すると、エッチング速度は360nm/分であり、前回と全く変わらなかった。
【0064】
また、この基板を水洗、乾燥した後、ポジ型ホトレジストを除去してSEMでエッチング面を観察した。その結果、エッチング面は十分にはテーパー形状となっていなかった。
【0065】
比較例5.
燐酸67.7重量%、硝酸0.35重量%、酢酸10重量%(残部は水)からなるエッチング液を調製した。
【0066】
このエッチング液に、APC薄膜を25℃で20秒浸漬した後、APC薄膜をエッチング液から取り出し、水洗、乾燥した。前後の膜厚変化からエッチング速度を算出した結果、エッチング速度は90nm/分であった。
【0067】
このエッチング液に再度、APC薄膜を25℃で20秒浸漬した。同様にエッチング速度を測定すると、エッチング速度は300nm/分となり、前回に比べ大きく変化した。
【0068】
また、この基板を水洗、乾燥した後、ポジ型ホトレジストを除去してSEMでエッチング面を観察した。その結果、エッチング面はほとんどテーパー形状となっていなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀又は銀合金エッチング用組成物であって、組成物全体に対し、銅イオンを0.01〜10重量%、硝酸を0.01〜10重量%、燐酸を10〜69重量%、カルボン酸を30〜50重量%含有し、残部は水である銀又は銀合金エッチング用組成物。
【請求項2】
カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸、及びニトリロ三酢酸からなる群より選ばれる一種又は二種以上のカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング用組成物。
【請求項3】
さらに、アンモニア及び/又はアミンを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング用組成物。
【請求項4】
アミンが、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチリレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジン、N−アミノエチレルピペラジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンから成る群より選ばれる一種又は二種以上のアミンであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエッチング用組成物。
【請求項5】
アンモニア及び/又はアミン濃度が、5重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエッチング用組成物。
【請求項6】
銀又は銀合金のエッチングにおいて、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のエッチング用組成物を使用することを特徴とするエッチング方法。
【請求項7】
銀又は銀合金を使用するフラットパネルディスプレイや薄膜トランジスタの製造において、銀又は銀合金をエッチングすることを特徴とする請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
40℃以下の温度でエッチングすることを特徴とする請求項6又は7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
銀合金が、銅を含む銀合金である請求項6乃至請求項8にいずれかに記載のエッチング用組成物。

【公開番号】特開2010−242124(P2010−242124A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89412(P2009−89412)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】