説明

エポキシ樹脂配合物を含む複合材料を調製する方法

エポキシ複合材料が、エポキシ樹脂および硬化剤を別々に予熱し、予熱したエポキシ樹脂と予熱した硬化剤とを混合して熱い反応混合物を形成し、該混合物が硬化して、少なくとも150℃のガラス転移温度を有するポリマー相を有する複合材料を形成するまで、熱い反応混合物を強化材の存在下で硬化することにより調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年2月16日出願の米国仮特許出願第60/902035号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、エポキシ樹脂配合物を用いて複合材料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂配合物は、強化複合材料を形成するための多くの方法で使用されている。これらの方法としては、例えば、モールディング法(molding process)、例えば、樹脂トランスファー成形(RTM)、真空補助樹脂トランスファーモールディング(VARTM)、樹脂フィルム注入(RFI)およびSeeman複合樹脂注入モールディング法(SCRIMP)として知られるもの、ならびに引き抜き成形(protrusion)法および他の方法が挙げられる。これらの方法に共通するのは、エポキシ樹脂配合物が強化材に施され、強化材の存在下で硬化されることである。強化材が分散されている(硬化エポキシ樹脂から形成された)連続ポリマー層を有する複合材料が形成される。
【0004】
様々な方法を使用して広範な製品を製造することができる。モールディング法(例えば、RTM、VARTM、RFIおよびSCRIMP)は、例えば座席、自動車車体パネルおよび航空機部品に使用される高強度部品を製造するために使用される。これらの方法では、織布繊維プリフォームまたはマット繊維プリフォームが金型キャビティ内に挿入される。金型を閉じて、樹脂を金型に射出する。樹脂は金型内で硬化して複合材料を形成し、次いで離型される。
【0005】
引き抜き成形法は、均一な断面を有する複合品を形成するために使用される。これらとしては、強化棒、角材、「C」断面、「I」断面、管および他の縦方向中空品、テープ、ならびに他の形状を挙げることができる。引き抜き成形法は、金型を使用しないため、上記のモールディング法とは異なる。代わりに、連続強化繊維が、樹脂浴から引き抜かれ、そこでそれらは樹脂で被覆されることになり、次いで1つまたは複数のダイス(dies)を通過させ、そこで樹脂/繊維の混合物が、一定断面を有する細長い物品に連続的に形成される。
【0006】
多くの他の製造方法の場合のように、これらの複合材料製造方法の経済性は、稼働率に大きく依存している。モールディング法に関しては、稼働率は、「サイクルタイム」という用語で表現される場合が多い。「サイクルタイム」は、金型で部品を製造し、次の部品を製造するために金型を準備するのに必要な時間を表す。サイクルタイムは、単位時間当たりに金型で製造することができる部品の数に直接影響を与える。サイクルタイムが長くなると、間接費(とりわけ施設費および人件費)が、製造した部品当たりでより高くなるため、製造コストが増大する。より高い生産能力が必要とされる場合、追加の金型および他の加工装置の必要性により、資本コストも増大する。これらの理由によって、可能であればサイクルタイムを短縮することが要望される場合が非常に多い。
【0007】
エポキシ樹脂が、上記のモールディング法で使用される場合、サイクルタイムの主な構成要素は、樹脂を硬化するために必要な時間である。特に部品が大きいか、または複雑である場合は、15分以上の硬化時間が必要とされる場合が多い。したがって、樹脂を硬化するために必要な時間を短縮することができる場合、サイクルタイムおよび生産コストを削減できる。引き抜き成形法では、より迅速な硬化は、より高い稼働率と関係している。
【0008】
硬化時間は、多くの場合、樹脂が高いガラス転移温度(Tg)を持つようになるのに必要とされる時間によって決定される。多くの用途には、150℃以上のTgが必要とされる。エポキシ樹脂のTgは、使用する特定のエポキシ樹脂および硬化剤を含む、いくつかの因子に依存しているが、Tgの主な決定因子はポリマーの架橋密度である。より高度に架橋された樹脂は、より高いガラス転移温度を有する傾向がある。架橋密度は、出発物質、およびこれらの出発物質が反応して高分子量の高度に架橋されたポリマーになることができる程度に依存する。エポキシ樹脂において、ポリマーの分子量および架橋密度が増加すると、ポリマーのTgが硬化プロセスを介して上昇する。
【0009】
gが進展できる程度は、「ガラス化(vitrification)」として知られる事象によって制限される場合が多い。ガラス化とは、硬化を完了する前に硬質でガラス状のポリマー塊が形成されることを指す。硬質のポリマー塊が形成されると、硬化剤分子上の遊離エポキシド基および反応部位には、互いを「発見し」、反応して、硬化を完了することが困難になる。その結果、エポキシ樹脂が使用される場合、ポリマーのTgが時には期待されたほどにならない。
【0010】
迅速な硬化は、触媒、場合によっては反応性が高い硬化剤の使用を介して促進することができる。以下のような迅速な硬化方式に関連した他の問題が存在する。1つの問題は、触媒および特殊な硬化剤は、残りの原料と比較して高価である傾向があるため、単純にコストである。さらに、より急速に硬化する方式では、「オープンタイム」が短い傾向にある。「オープンタイム」とは、大まかには、成分が混合された後、ポリマー系が、それがもはや液体として容易に流れることができないほどの分子量および架橋密度を確立するためにかかる時間を指し、その時点でそれは、もはや適当な条件を用いて処理することができない。オープンタイムは、2つの主な理由で複合材料製造方法において重要である。第1に、混合した複合材料は、金型またはダイスに移さなければならない。これは、ポリマーの分子量および架橋密度の増加と共に粘度が上昇すると、困難または不可能になる。第2に、混合した複合材料は、それが強化繊維の周りおよび間を容易に流れることができるほど低い粘度でなければならない。ポリマー系の粘度が高すぎる場合、それは繊維の周りを容易に流れることができず、得られた複合材料はボイド(voids)または他の欠陥を有するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの問題により、硬化時間が削減され、良質な複合材料が形成され、複合材料のポリマー層が高いTgになる、エポキシ樹脂を用いて複合材料を製造する方法を開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
a)エポキシ樹脂と硬化剤とを別々にしておきながら、それらを予熱する工程と、
b)予熱したエポキシ樹脂と予熱した硬化剤とを混合して、熱い(hot)反応混合物を形成する工程と、
c)ポリマー相が少なくとも150℃のガラス転移温度に達するまでは、少なくとも1種の強化材の存在下で熱い反応混合物を硬化し、ポリマー相を有する複合材料を形成する工程と
を含み、工程b)およびc)が、熱い反応混合物がポリマー相の瞬間(instantaneous)Tg超で常に維持されるように行われる、複合材料を形成する方法である。
【0013】
本発明の方法は、様々な種類の複合製品を形成するのに有用である。強化材は、特定の方法および製品に応じて、いくつかの形態のいずれかをとることができる。連続、平行繊維、織布繊維プリフォームまたはマット繊維プリフォーム、短繊維、さらに低アスペクト比の強化材が、本発明の様々な実施形態で使用することができる。
【0014】
ある種の好ましい実施形態では、本発明は、
a)エポキシ樹脂と硬化剤とを別々にしておきながら、それらを予熱する工程と、
b)予熱したエポキシ樹脂と予熱した硬化剤とを混合し、熱い反応混合物を形成する工程と、
c)熱い反応混合物を、少なくとも1つの繊維プリフォーム(fiber preform)を含有する密閉金型に導入する工程と
d)ポリマー相が少なくとも150℃のガラス転移温度に達するまでは、少なくとも1種の強化材の存在下で金型内で熱い反応混合物を硬化し、ポリマー相を有する複合材料を形成する工程と
を含み、工程b)、c)およびd)が、熱い反応混合物がポリマー相の瞬間Tg超で常に維持されるように行われる、複合材料を形成する方法である。
【0015】
本発明の方法は、いくつかの利点がもたらす。硬化時間は、非常に短くなる傾向にある。硬化時間は、一般に10分未満であり、5分以下である場合が多く、ポリマー相のTgは150℃以上になる。硬化の最初の段階で、反応混合物は、それを金型または樹脂浴に容易に移すことができるほど低い粘度である傾向があり、そこで反応混合物は、強化粒子または繊維の周りを容易に流れて、ボイドがほとんどない製品を製造する。これらの利点のため、本発明の方法は、広範な複合製品を製造するために有用であり、その中でも自動車および航空機の部品は顕著な例である。
【0016】
本発明の方法では、エポキシ樹脂および硬化剤を余熱し、混合して、熱い反応混合物を形成する。熱い反応混合物は強化材の存在下で反応し、複合材料を形成する。複合材料は、以下に記載の動的熱機械分析(DTMA)法により測定した場合、150℃以上のガラス転移温度を有するポリマー相を有する。反応は金型内で、あるいは引き抜き成形法または類似の方法の場合、樹脂浴内および/または1つもしくは複数のダイス内(これは複合材料に特別な断面形状を付与する)で行われてもよい。まず、モールディング法に関して該方法を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
混合工程中、反応混合物を金型に導入する工程中、および硬化プロセス中の反応混合物の温度は重要である。余熱したエポキシ樹脂と予熱した硬化剤とを混合すると、同時に反応を開始して、高分子量の架橋ポリマーを形成するであろう。分子量が増加し、ポリマーがさらに架橋すると、ポリマーのTgが上昇するであろう。混合、金型充填および硬化のプロセス中のいずれかの時点でのポリマーのTgは、本明細書において「瞬間(instantaneous)」Tgとして称される。重合の初期段階で、Tgは低い傾向にあるが、架橋反応が進むにつれて上昇する。
【0018】
本発明において、混合、金型充填および硬化の工程中の反応混合物の温度は、少なくとも例えばポリマーのTgが150℃に達する時間までは、瞬間Tg超で維持される。
【0019】
反応混合物の温度は、それがエポキシ樹脂と硬化剤とを混合することにより最初に形成されるとき、好ましくは少なくとも80℃である。80℃以上の温度は、混合物の粘度を低下させ、速い初期反応に備える利点をもたらす。このプロセスの前半中、昇温による粘度の低下は、原料の重合により起こり得るどのような粘度の増加も補う傾向がある。温度は、エポキシ樹脂または硬化剤(またはもしあれば他の任意選択の成分)が、著しく分解するか、または揮発するまでの、任意のより高い温度であってよいが、但し、反応混合物は、高粘性またはゲルになる前に、金型に導入することができることとする。この段階では160℃超の温度を用いる利点は一般的にほとんどない。反応混合物を形成するときは、80から130℃の温度が好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂および硬化剤は、熱い反応混合物が、それらを混合した直後に形成されるように、それらを混合する前に、室温(約25℃)超に別々に加熱される。エポキシ樹脂および硬化剤は、混合前に50℃、好ましくは80℃以上の温度に各々加熱してもよい。前述同様に、最高温度は、特定の成分が著しく分解しないか、または揮発しない、任意の温度であってよい。また前述同様に、混合前に160℃超の温度に成分を加熱する利点はほとんどなく、好ましい余熱温度は80から130℃である。好ましい実施形態では、一方の成分が80℃よりも若干高い温度に加熱され、その結果、混合物の温度が、それが形成されるとき、80℃以上である場合、1つの成分または他の成分は、記載の温度よりも若干低い温度に加熱してもよい。
【0021】
以下でより詳細に考察されるように、熱い反応混合物は、エポキシ樹脂および硬化剤だけでなく、任意選択の成分を含有していてもよい。場合によってはエポキシ樹脂と硬化剤とを混合する前に、該成分をエポキシ樹脂または硬化剤のいずれかとブレンドし、それをエポキシ樹脂または硬化剤と共に予熱することが好都合な場合が多い。エポキシ樹脂と硬化剤とが混合されるのと同時またはその後のいずれかで、1種または複数のこのような任意選択の成分に別に加えることも可能である。後から加える場合、それは、エポキシ樹脂と硬化剤とが混合された直後で、反応混合物を金型に導入する前に、加えられることが好ましい。何らかの任意選択の成分が、エポキシ樹脂と硬化剤とが混合された後で、反応混合物に加えられる場合、任意選択の成分(複数可)を加えることにより、反応混合物が前記載の温度以下に冷却されてはならない。エポキシ樹脂および硬化剤とは別に加えられる何らかの任意選択の成分は、余熱されることが好ましい。任意選択の成分の余熱温度は、前に記載したとおりであり、好ましくは少なくとも80℃、最大160℃、より好ましくは80から130℃である。
【0022】
熱い反応混合物は、金型が満たされる前に、熱い反応混合物が高粘性にならないか、または顕著なゲルが形成されないほど急速に金型に導入される。エポキシ樹脂と硬化剤とが最初に接触してから1分以内に反応混合物を金型に移すことが一般的に好ましい。一般的に、より短い移しかえ時間が良好であり、反応混合物は、エポキシ樹脂と硬化剤とが最初に接触してから1分以内、より好ましくは30秒以内、さらにより好ましくは10秒以内に金型に移されるのが好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂と硬化剤とが最初に混合されてから、反応混合物が金型に導入されるまでの期間、反応混合物の温度は、反応混合物中で形成し始めているポリマーの瞬間Tg超で維持される。反応混合物は、この期間少なくとも80℃、好ましくは80から160℃の温度で維持されるのが好ましい。必要な場合、またはこの期間に反応混合物の温度を上昇させることが所望される場合、(通常は処理装置を介して)反応混合物に熱を加えてもよい。
【0024】
反応混合物は、やはりポリマーの瞬間Tg超の温度にて金型内で硬化される。金型(および反応混合物を導入する前に金型内に含有されている場合は、強化材料)は、ヒートシンクとして作用し、反応混合物を冷却するため、反応混合物を導入する前に、少なくとも導入する反応混合物の温度まで、好ましくは少なくとも130℃まで、より好ましくは少なくとも150℃まで金型(およびもしあればその内容物)を予熱することが好ましい。反応混合物が硬化し、ポリマーのTgが上昇するように、金型(およびその内容物)を徐々に加熱し、常に反応混合物の温度を瞬間Tg超で維持することは本発明の範囲内である。しかし、単純に、150℃超のある温度まで金型(およびその内容物)を加熱し、硬化プロセス中その温度でそれら(および反応混合物)を維持することが好ましい。金型およびその内容物は、160から230℃の温度まで余熱され、複合材料が離型する状態になるまでその温度範囲内で維持されることが好ましい。
【0025】
反応混合物の温度が、それが金型に導入されるとき150℃未満である場合、反応混合物が150℃超に急速に加熱されるような加熱条件を使用することが好ましい。このような場合、少なくとも150℃の温度が得られるまでは、少なくとも50℃/分の速度で反応混合物を加熱することが特に好ましい。
【0026】
離型は、複合材料のポリマー相が、少なくとも150℃のTgに達するのに十分に硬化した後で行われる。硬化したポリマーは、複合材料を離型する前に、そのガラス転移温度以下、特にガラス転移温度より少なくとも25℃以下までは冷却されることが好ましい。ほとんどの場合、反応混合物は、本発明による条件下で、ポリマー相が、エポキシ樹脂と硬化剤とが混合された後10分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは3分以内に150℃以上のTgになるほど急速に硬化する。したがって、金型内滞留時間(in-mold residence times)は、通常10分以下、より好ましくは5分以下、さらにより好ましくは3分以下である。金型内滞留時間は、わずか1分またはさらには45秒であってよい。
【0027】
金型内で直接Tgを測定するのは難しいため、ほとんどの場合、必要な金型内滞留時間は、特定の反応系、装置および硬化条件に対して経験的に確立されるであろう。
【0028】
急速な硬化は、熱い反応混合物の形成によりある程度促進されると考えられる(だが、本発明はどのような理論にも制限されるものではない)。エポキシ樹脂および硬化剤は、それらが混合されたときに加熱され、次いで高温に保持されるため、それらは混合された後で急速に反応し、分子量を確立する傾向にある。ポリマーネットワークの発達により、粘度が上昇するが、重合が一因となる粘度の上昇は、反応の初期段階で、混合物の昇温により少なくとも部分的に補われる。結果的に、反応混合物は、容易に処理されるのに十分に流動性のままであり、特にプリフォームまたは他の繊維状強化材のフィラメントの周りおよびその間を流れる能力を保持すると考えられる。通常オープンタイムは、15秒から3分、特に30秒から2分である。金型が充填された後、使用する温度は、ガラス化を防止するか、または少なくとも遅延させると考えられる。高温およびガラス化の欠如の結果として、ポリマーは、急速に高いTgになる傾向にあり、結果的に短い離型時間を実現することができる。
【0029】
部品を予熱し、それを混合し、混合物を金型に移すために使用する特定の装置は、本発明に決定的なものであると見なされていないが、但し温度制御は、前に記載したように行うことができ、反応混合物は、それが高い粘度に達するか、またはかなりの量のゲルになる前に、金型に移すことができることとする。本発明の方法は、RTM、VARTM、RFIおよびSCRIMP処理方法および処理装置(場合によっては、方法の様々な段階で必要な加熱を行うために装置の改造を伴う)、ならびに他の方法になじみやすい。
【0030】
エポキシ樹脂および硬化剤は、加熱タンク内で保存されることが好ましい。加熱ラインを介して、混合装置にエポキシ樹脂および/または硬化剤を移すことも可能であり、その方式では、樹脂および/または硬化剤が混合装置に移されるときにそれらを加熱する。
【0031】
混合装置は、エポキシ樹脂と硬化剤(およびこの段階で同様に加えられる何らかの任意選択の成分)との非常に均一な混合物を製造できる任意の種類のものであってよい。様々な種類の機械的なミキサーおよび撹拌器(stirrers)が使用できる。2つの好ましい種類のミキサーは、静的ミキサー(static mixers)および衝突ミキサー(impingement mixers)である。
【0032】
特に関心のある混合および分配装置は、衝突ミキサーである。この種のミキサーは、ポリウレタンおよびポリ尿素の成形品を形成するためのいわゆる反応射出成形法で汎用されている。エポキシ樹脂および硬化剤(ならびにこの段階で加えられる他の成分)は混合ヘッドに圧力下で押出され、そこでそれらは急速に混合される。いくつかの低圧機は、著しく低い圧力で動作できるが、高圧機の動作圧は、1000から2000psi以上(6.9から13.8MPa以上)に及び得る。次いで、得られた混合物は、静的混合装置を通過させてさらに追加して混合し、次いで金型キャビティに移されることが好ましい。静的混合装置は金型内に設計してもよい。これは、静的混合装置を清掃のために容易に開くことができる利点を有する。この衝突混合方法を使用することで、反応混合物は、エポキシ樹脂と硬化剤とを最初に接触させた後10秒以内に金型内に通常移される。
【0033】
該方法を行うのに特に好ましい装置は、大型のポリウレタンおよびポリ尿素の成形品を加工するために汎用されているもの等、反応射出成形機である。このような機械は、Krauss Maffei CorporationおよびCannon USAから商業的に入手できる。
【0034】
他の実施形態では、熱い反応混合物は前述同様に混合され、次いで金型にスプレーされる。温度は、熱い反応混合物の温度が、前に記載されているように、維持されるようにスプレーゾーンで維持される。
【0035】
金型は、通常金属金型であるが、セラミックまたはポリマー複合材料であってよく、但し金型がモールディング法の圧力および温度条件に耐えることができることとする。金型は、ミキサー(複数可)との液体伝達において、反応混合物を導入する1つまたは複数の入口を有している。金型は、反応混合物が射出されたときガスを排出することができるように通気孔(vents)を含有していてもよい。
【0036】
金型は、それを開閉することができ、金型に圧力を加えて充填動作および硬化動作中はそれを閉じておくことができる、プレスまたは他の装置内に通常保持されている。金型またはプレスは、熱を与えることができる手段を備えている。
【0037】
前に言及したように、強化材は、いくつかの形態のいずれかをとることができる。モールディング法では、特に適した強化材は、繊維プリフォームである。あるいは、連続繊維ロービング、カット繊維または短繊維を含む、様々な他の種類の繊維状強化材が使用できる。非繊維状強化材も使用できるが、クラスAの自動車表面を製造することが所望されるいくつかの場合を除いては、それらは一般的にあまり好ましくない。
【0038】
強化材は、強化材が成形プロセス中に分解または溶融しないように、熱的に安定であり、高い溶融温度を有する。適切な繊維材料としては、例えばガラス繊維、石英繊維、ポリアミド樹脂繊維、ホウ素繊維、炭素繊維およびゲル紡績ポリエチレン繊維が挙げられる。非繊維状強化材としては、重合の条件下で固体のままである粒子材料が挙げられる。それらとしては、例えば、ガラスフレーク、アラミド粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、様々な粘土、例えばモンモリロナイト、および他の無機充填剤、例えば珪灰石、タルク、マイカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、フリント粉末、カーボランダム、ケイ酸モリブデン、砂等が挙げられる。珪灰石およびマイカは、クラスAの自動車表面を必要とする自動車車体部品等、高い画像鮮明度(distinctness of image)(DOI)を有する部品を製造するとき、それ自体でまたは繊維状強化材と組み合わせて好ましい強化材である。
【0039】
いくつかの充填剤(fillers)は、若干導電性であり、複合材料中のそれらの存在は、複合材料の導電性を高めることができる。いくつかの用途では、とりわけ自動車用途では、複合材料は、電荷が複合材料に加えられ、被膜が複合材料に静電的に引き寄せられる、いわゆる「eコート(e-coat)」法を用いて、被膜を複合材料に施すことができるほど導電性であることが好ましい。この種の導電性充填剤としては、金属粒子(例えば、アルミニウムおよび銅)および繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボン繊維、グラファイト等が挙げられる。
【0040】
好ましい種類の強化材は、繊維プリフォーム(fiber preform)、即ち繊維の織布またはマットである。繊維プリフォームは、連続フィラメントが一緒に編まれるか、絡ませるか、または接着させて、完成した複合品(finished composite article)(または強化材を必要とするその部分)の大きさおよび形状に近似するプリフォームを形成する、連続フィラメントマットで構成されていてもよい。あるいは、短繊維を、絡ませるか、または接着させる方法によりプリフォームに形成することができる。連続繊維または短繊維のマットは、必要な場合、通常、粘着付与剤の補助により、一緒に束にして圧縮し、様々な厚さのプリフォームを形成することができる。
【0041】
プリフォームを(連続繊維または短繊維のいずれかから)調製するのに適した粘着付与剤(tackifiers)は、例えば米国特許第4992228号、第5080851号および第5698318号に記載されているような熱軟化性ポリマーを含む。粘着付与剤は、ポリマーと強化繊維との間に良好な接着性が存在するように、複合材料のポリマー相と相容性があり、かつ/またはそれと反応しなくてはならない。米国特許第5698318号に記載されているような、熱軟化性エポキシ樹脂、または硬化剤とのその混合物が、特に適している。粘着付与剤は、1つもしくは複数の触媒、熱可塑性ポリマー、ゴム等の他の成分、または他の調整剤を含有していてもよい。
【0042】
繊維プリフォームは、通常、熱い反応混合物を導入する前に、金型に配置される。熱い反応混合物は、混合物を金型に射出することにより、プリフォームを含有する密閉金型に導入することができ、そこで反応混合物はプリフォーム内の繊維の間に浸透し、次いで硬化して、複合製品を形成する。このような場合、反応射出成形装置および/または樹脂トランスファー成形装置が適している。あるいは、プリフォームは、開放金型内に堆積させることができ、熱い反応混合物は、プリフォーム上および金型内にスプレーすることができる。金型がこのような方式で充填された後で、金型を閉じて、反応混合物を硬化する。いずれの方式でも、金型およびプリフォームは、前に記載されているように反応混合物の温度を維持するために、それらが反応混合物と接触する前に加熱されることが好ましい。
【0043】
短繊維は、繊維プリフォームの代わりに、またはそれに加えて使用することができる。短繊維(長さ最大約6インチ、好ましくは長さ最大2インチ、より好ましくは長さ最大約1/2インチ)を熱い反応混合物にブレンドし、熱い反応混合物と共に金型に射出することができる。このような短繊維は、反応混合物を加熱および形成する前に、例えばエポキシ樹脂または硬化剤(または両方)とブレンドしてもよい。あるいは、短繊維は、エポキシ樹脂と硬化剤とが混合されるのと同時に、またはその後ではあるが、熱い反応混合物を金型に導入する前に、反応混合物に加えてもよい。短繊維がエポキシ樹脂および硬化剤とは別に反応混合物に加えられる場合、短繊維は、それらが前記の温度以下に反応混合物を冷却するのを防ぐために予熱されるのが好ましい。
【0044】
短繊維は、金型にスプレーすることができる。このような場合、熱い反応混合物も、短繊維をスプレーするのと同時にまたはその後で金型にスプレーすることができる。繊維および反応混合物を同時にスプレーするとき、それらはスプレーする前に混合することができる。あるいは、繊維および反応混合物は、別々ではあるが同時に金型にスプレーすることができる。特に関心のある方法では、長繊維が短い長さに切断され、熱い反応混合物がスプレーされるのと同時にまたはその直前に、切断された繊維が金型にスプレーされる。
【0045】
他の粒子状充填剤(particulate fillers)は、短繊維に関して記載したのと同じ方式で反応混合物に組み込むことができる。
【0046】
引き抜き成形法(pultrusion processes)は、押出方向に互いに平行に配向されている連続繊維を使用する。引き抜き成形法は、モールディング法と類似の方式で行われ、主な違いは、熱い反応混合物が、金型ではなく樹脂浴に送られることである。樹脂浴は、連続繊維が引き抜かれる、反応混合物が充填された貯留層である。樹脂浴は、通常、繊維をわずかに分離して、それらが反応混合物と共に全表面上に被覆されることを可能にする一連のピン等、いくつかの手段を有する。繊維が熱い反応混合物で濡らされると、それが1つまたは複数のダイスから引き抜かれ、そこで繊維が連結し、所望の断面形状に形成される。ダイスを前に記載した温度に加熱し、反応混合物を硬化させて、少なくとも150℃のTgを有するポリマー相を形成する。
【0047】
エポキシ樹脂および硬化剤は、それらが一緒に硬化して、少なくとも150℃のTgを有する硬化ポリマーを形成するように共に選択される。エポキシ樹脂は、1分子当たり2.0個超のエポキシド基の平均官能度を有する化合物または化合物の混合物であることが好ましい。エポキシ樹脂またはその混合物は、1分子当たり平均で最大4.0個のエポキシド基を有していてもよい。1分子当たり平均2.0から3.0個のエポキシド基を有することが好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂は、約150から約1000、好ましくは約160から約300、より好ましくは約170から約250のエポキシ当量を有していてもよい。エポキシ樹脂がハロゲン化されている場合、当量は若干高くてもよい。
【0049】
エポキシ樹脂は、室温(約22℃)で固体または液体であってよいが、80℃で液体でなくてはならない。
【0050】
適切なエポキシ樹脂としては、例えば、多価フェノール化合物のジグリシジルエーテル、例えばレゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP[1,1−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)−1−フェニルエタン]、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラメチルビフェノール、脂肪族グリコールおよびポリエーテルグリコールのジグリシジルエーテル、例えばC224アルキレングリコールおよびポリ(エチレンオキシド)グリコールまたはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのジグリシジルエーテル;フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(エポキシノボラック樹脂)、フェノールヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂およびジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0051】
適切な多価フェノールのジグリシジルエーテルとしては、以下の構造式(I)により表されるものが挙げられる:
【0052】
【化1】

式中、各Yは、独立してハロゲン原子であり、各Dは、1から約10個、好ましくは1から約5個、より好ましくは1から約3個の炭素原子を適切には有する二価の炭化水素基、−S−、−S−S−、−SO−、−SO2−、−CO3−、−CO−または−O−であり、各mは0、1、2、3または4であってよく、pは0から5、特に0から2の数である。適切なエポキシ樹脂の例としては、多価フェノールのジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールK、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびビスフェノールAD、ならびにそれらの混合物が挙げられる。この種のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA樹脂のジグリシジルエーテル、例えばD.E.R.(商標)330樹脂、D.E.R.(商標)331樹脂、D.E.R.(商標)332樹脂、D.E.R.(商標)383樹脂、D.E.R.(商標)661樹脂およびD.E.R.(商標)662樹脂の呼称でThe Dow Chemical Companyにより販売されているものを含めて商業的に入手できる。
【0053】
この種の臭素置換エポキシ樹脂は、D.E.R.(商標)542およびD.E.R.(商標)560の商標でThe Dow Chemical Companyから商業的に入手できる。他の適切なハロゲン化エポキシ樹脂は、例えば米国特許第4251594号、第4661568号、第4710429号、第4713137号および第4868059号、ならびに「The Handbook of Epoxy Resin」、H.LeeおよびK.Neville著、McGraw−Hill、New Yorkより1967年刊行に記載されており、それらはすべて参照により本明細書に組み込まれている。
【0054】
本明細書で有用な市販のポリグリコールのジグリシジルエーテルとしてはThe Dow Chemical Companyにより、D.E.R.(商標)732およびD.E.R.(商標)736として販売されているものが挙げられる。
【0055】
適切なエポキシノボラック樹脂としては、D.E.N.(商標)354、D.E.N.(商標)431、D.E.N.(商標)438およびD.E.N.(商標)439としてすべてThe Dow Chemical Companyから商業的に入手できるものを含めて、クレゾール−ホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂、フェノールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂およびビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂が挙げられる。
【0056】
他の適当なエポキシ樹脂は、脂環式エポキシドである。脂環式エポキシドは、以下の構造式IIによって例示されるように、炭素間中に2個の隣接原子に結合したエポキシ酸素を有する、飽和炭素環を含む:
【0057】
【化2】

式中、Rは脂肪族基、脂環式基および/または芳香族基であり、nは1から10、好ましくは2から4の数である。nが1であるとき、脂環式エポキシドは、モノエポキシドである。nが2以上であるとき、ジ−またはポリエポキシドが形成される。モノ−、ジ−、および/またはポリエポキシドの混合物が使用できる。参照により本明細書に組み込まれている米国特許第3686359号に記載の脂環式エポキシ樹脂が本発明で使用できる。特に関心のある脂環式エポキシ樹脂は、(3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル)−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノキサイドおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
他の適切なエポキシ樹脂としては、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
他の適切なエポキシ樹脂としては、米国特許第5112932号に記載のオキサゾリドン含有化合物が挙げられる。さらに、D.E.R.(商標)592およびD.E.R.(商標)6508(The Dow Chemical Company)として商業的に販売されているもの等、先端エポキシ−イソシアネートコポリマーが使用できる。
【0060】
硬化剤は、1分子当たり平均で少なくとも2.0個のエポキシド−反応性基(epoxide-reactive group)を有する化合物または化合物の混合物が好ましい。硬化剤は、1分子当たり2.0から4.0個以上のエポキシド−反応性基を有していてもよい。硬化剤は、30から1000、より好ましくは30から250、特に30から150の1エポキシド−反応性基当たりの当量を有することが好ましい。
【0061】
エポキシド−反応性基は、隣接エポキシドと反応して、共有結合を形成できる(will)官能基である。これらの基としては、フェノール基、無水物基、イソシアネート基、カルボン酸基、アミノ基またはカーボネート基が挙げられる。第1級および第2級のアミノ基が好ましい。アミノ基は、脂肪族または芳香族であってよい。芳香族アミンが特に好ましい。
【0062】
適切な芳香族アミン硬化剤としては、ジシアンジアミド、フェニレンジアミン(特にメタ異性体)、メチレンジアニリン、メチレンジアニリンとポリメチレンポリアニリン化合物との混合物(Air Products and Chemicals製のDL−50等の市販製品を含めて、時にはPMDAと称される)、ジエチルトルエンジイソシアネート、ならびにジアミノジフェニルスルホンが挙げられる。
【0063】
適切な脂肪族アミン硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルピペラジンおよびアミンエポキシ樹脂付加物、例えばThe Dow Chemical CompanyからD.E.H.(商標)52として商業的に入手できるものが挙げられる。
【0064】
適切なフェノール硬化剤としては、構造式(III)によって表されるものが挙げられる:
【0065】
【化3】

式中、各Yは、独立してハロゲン原子を表し、各zは、独立して0から4の数であり、Dは上記構造式Iに関して記載されているように二価の炭化水素基である。適切なフェノール硬化剤の例としては、二価フェノール、例えばビスフェノールA,ビスフェノールK、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびビスフェノールAD、それらの混合物、ならびにそれらのモノ−、ジ−、トリ−およびテトラ−臭素化対応物が挙げられる。
【0066】
テトラフェノールエタン、フェノールノボラックまたはビスフェノールAノボラック等の3個以上のフェノール基を有するフェノール硬化剤も使用できる。
【0067】
別の有用な部類の硬化剤としては、アミノ官能性ポリアミドが挙げられる。これは、HenkelからVersamide(登録商標)100、115、125および140、ならびにAir Products and ChemicalsからAncamide(登録商標)100、220、260Aおよび350Aとして商業的に入手できる。
【0068】
適切な無水物硬化剤としては、例えば、スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、メチルナド酸無水物(nadic methyl anhydride)、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、フタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物およびテトラヒドロフタル酸無水物が挙げられる。
【0069】
適切なイソシアネート硬化剤としては、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、水素化メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(およびそれらと、「高分子MDI」として一般的に知られるメチレンジフェニルジイソシアネートとの混合物)、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
本発明で有用な他の硬化剤は、参照により本明細書に組み込まれている、米国公表特許出願第2004/0101689号に記載されている。
【0071】
エポキシ樹脂および硬化剤だけでなく、様々な任意選択の成分を反応混合物中に加えることができる。これらとしては、例えば1種または複数の触媒、溶媒または希釈剤、無機充填剤(mineral fillers)、顔料、酸化防止剤、保存料、耐衝撃性調節剤(impact modifiers)、湿潤剤(wetting agent)等が挙げられる。
【0072】
適切な触媒は、例えば米国特許第3306872号、第3341580号、第3379684号、第3477990号、第3547881号、第3637590号、第3843605号、第3948855号、第3956237号、第4048141号、第4093650号、第4131633号、第4132706号、第4171420号、第4177216号、第4302574号、第4320222号、第4358578号、第4366295号および第4389520号に記載されており、すべて参照により本明細書に組み込まれている。適切な触媒の例としては、イミダゾール、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール;第3級アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリブチルアミン;ホスホニウム塩、例えばエチルトリフェニルホスホニウムクロライド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイドおよびエチルトリフェニルホスホニウムアセテート;アンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよびベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド;ならびにそれらの混合物がある。
【0073】
触媒を使用してもよいが、本発明の1つの利点は、特にアミン硬化剤を使用するとき、速い硬化時間が、触媒を使用せずに、またはほんの微量の触媒を使用することにより実現できる場合が多いことである。触媒量の除去または削減により、反応混合物が、高粘性になるか、またはゲルを形成するのにかかる時間を増加させる利点ももたらす。これにより、混合および金型充填の工程中、より高い処理許容度が得られる。したがって、好ましい実施形態では、触媒を使用しない。触媒を使用する場合、触媒の量は、エポキシ樹脂の重量に対して、一般的に約0.001から約2重量%に及ぶが、好ましくは約0.5重量%以下である。
【0074】
溶媒も使用してもよいが、やはりこれを省略することが好ましい。溶媒は、エポキシ樹脂もしくは硬化剤、または両方が、エポキシ樹脂と硬化剤とが混合される温度で溶解できる材料である。溶媒は、重合反応の条件下ではエポキシ樹脂(複数可)または硬化剤と反応しない。溶媒(または混合物を使用する場合は溶媒の混合物)は、重合を行うために使用する温度と少なくとも同等であり、好ましくはそれより高い沸点を好ましくは有する。適切な溶媒としては、例えば、グリコールエーテル、例えばエチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル;グリコールエーテルエステル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;ポリ(エチレンオキシド)エーテルおよびポリ(プロピレンオキシド)エーテル;ポリエチレンオキシドエーテルエステルおよびポリプロピレンオキシドエーテルエステル;アミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミド;芳香族炭化水素のトルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素;環状エーテル;ハロゲン化炭化水素;ならびにそれらの混合物が挙げられる。溶媒は、それを使用する場合、反応混合物の重量の最大75%、より好ましくは該混合物の重量の最大30%を構成してもよい。さらにより好ましくは、反応混合物は、5重量%以下の溶媒を含有し、最も好ましくは1重量%未満の溶媒を含有する。
【0075】
適切な耐衝撃性改良剤は、−40℃以下のTgを有する天然ポリマーまたは合成ポリマーを含む。これらとしては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、コアシェルゴム等が挙げられる。ゴムは、複合材料のポリマー相中に分散する小粒子の形態で存在することが好ましい。ゴム粒子は、エポキシ樹脂または硬化剤中に分散させ、熱い反応混合物を形成する前に、エポキシ樹脂または硬化剤と共に余熱することができる。
【0076】
本発明の方法は、様々な種類の自動車部品を含む、広範な複合製品を製造するのに有用である。これらの自動車部品の例としては、垂直または水平な車体パネル、自動車およびトラックのシャーシ部品、ならびにいわゆる「車体骨格(body-in-white)」構造部品が挙げられる。
【0077】
車体パネル用途としては、フェンダー、ドアスキン、ボンネット、ルーフスキン、ラゲージドア、テールゲート等が挙げられる。車体パネルは、高い鮮明度(DOI)を有する、いわゆる「クラスA」の自動車表面を必要とする場合が多い。このため、多くの車体パネル用途での充填剤は、マイカまたは珪灰石等の材料を含むであろう。さらに、これらの部品は、いわゆる「eコート」法で被覆される場合が多く、このため若干導電性でなければならない。したがって、前記の導電性充填剤は、部品の電気伝導度を高めるために車体パネル用途で使用してもよい。前記の耐衝撃性改良剤は、部品を強化するために車体パネル用途で所望される場合が多い。短いサイクルタイムは、車体パネル製造の経済性にとって、通常重要性が高い。このため、より反応性の高いエポキシ樹脂および硬化剤が、これらの用途で有利であり、予熱温度は、80℃より若干高くてもよい。車体パネルのサイクルタイムは、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、さらにより好ましくは1分以下である。
【0078】
本発明に従って製造された自動車およびトラックのシャーシ部品は、スチールと比較して有意な重量減少をもたらす。この利点は、重量の節約が車両のより多くの積載量に変わる、大型トラックの用途において最も意義がある。自動車シャーシ部品は、構造強度を与えるだけでなく、多くの場合(例えば、フロアモジュール)において、振動および音の減少をもたらす。部品全体で音および振動の伝達を減少させるために、スチールフロアモジュールおよび他のシャーシ部品に減衰材料の層を施すことが一般的である。このような減衰材料は、本発明に従って製造された複合フロアモジュールに、類似の方式で施すことができる。
【0079】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されているが、その範囲を限定するものではない。別段の指示がない限り、すべての部およびパーセンテージは重量によるものである。
【実施例1】
【0080】
複合ラミネートの調製:
プランジャ型およびキャビティ型の7”×8”(18×18cm)金型に離型剤をスプレーする。平織Eグラス繊維(18g)の層を金型に充填し、金型およびガラス繊維を180℃に加熱する。
【0081】
約180のエポキシド当量を有するエポキシ樹脂[DER(商標)383、The Dow Chemical Company製]を貯蔵タンク内で80℃に予熱する。別の貯蔵タンク内で、メチレンジアニリンとポリメチレンポリアニリンとの混合物[ANCAMINE(登録商標)DL50、Air Products and Chemicals製]も80℃に予熱する。次いで、両方の物質流を、125℃に加熱したポンプを用いて、静的ミキサーに別々に移し、そこでそれらは、硬化剤27.4重量部とエポキシ樹脂72.6重量部との重量比で急速に混合される。次いで、得られた熱い(約125℃)混合物を予熱した金型に直ちに移す。金型を急速に閉じて、180℃で5分間維持する。次いで金型を冷却して開放し、得られた複合材料を除去する。得られた複合材料は、厚さ約0.13インチである。
【0082】
約2.5gのラミネートを秤量し、るつぼ(crucible)に入れ、有機相が燃え尽きるまでオーブン内で大気下で600℃にて加熱する。次いで、試料を冷却し、再度秤量する。繊維の重量画分は、燃え尽きた後に得られた繊維重量を試料の元の重量で割ることにより算出される。
【0083】
ポリマー相のTgを示差走査熱量計(DSC)で測定する。また、Tg試験を、幅約12mmおよび長さ約25mmの長方形試料について、動的機械的熱分析(Dynamic Mechanical Thermal Analysis)(DMTA)により評価する。DMTA分析は、固体状態の長方形試料固定具を用いて、Rheometrics ARESレオメータで行われる。固定周波数(1Hz)のねじれモード実験を30℃から行い、次いで250℃の温度に3℃/分の一定の温度傾斜を付ける。
【0084】
室温曲げ試験は、ASTM D790試験に従って行われる。幅0.5インチおよび長さ3.5インチの試料を、水冷式円形タイル切断機を用いてラミネートから切断し、600グリットのサンドペーパーを用いてエッジを研磨し、標準に従った条件に放置する。次いで試料を、2インチ(約5.1cm)の支持スパンおよび0.054インチ/分(約0.023mm/秒)の負荷速度を有する3点曲げ具に充填する。
【0085】
室温引張試験は、幅1インチ(2.5cm)および長さ6インチ(15cm)のストレートエッジ試料で行われる。試験は、1万ポンド(44480N)ロードセルを備えたInstron4505試験フレームを用いて行われる。自動締め付けグリップを用いて試料をつかむ。グリップ長さは両側1.5インチ(3.8cm)である。負荷速度は1秒当たり0.2インチ(0.5cm)である。ゲージ長2インチ(5.1cm)の伸縮計を用いて、試験中の引張度を監視する。
【0086】
前記試験からの結果は表1に報告されているとおりである。
【0087】
【表1】

【0088】
本実施例で使用する特定のエポキシ樹脂は、緩やかな硬化が得られるように製造者により配合される。しかし、ポリマー相は、5分未満で150℃を超えるTgまで硬化する。より反応性の高いエポキシ樹脂により、さらにより短い硬化時間が得られることが期待されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)エポキシ樹脂と硬化剤とを別々にしておきながら、それらを予熱する工程と、
b)前記予熱したエポキシ樹脂と予熱した硬化剤とを混合して、熱い反応混合物を形成する工程と、
c)ポリマー相が少なくとも150℃のガラス転移温度に達するまで、少なくとも強化材の存在下で前記熱い反応混合物を硬化し、前記ポリマー相を有する複合材料を形成する工程と
を含み、工程b)およびc)が、前記熱い反応混合物が前記ポリマー相の瞬間Tg超で常に維持されるように行われる、複合材料を形成する方法。
【請求項2】
工程b)において、前記熱い反応混合物が、最初に形成されるとき、少なくとも80℃の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、前記熱い反応混合物を密閉金型に導入し、前記熱い反応混合物を前記密閉金型内で硬化することにより行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金型が、前記熱い反応混合物を前記金型に導入する前に、少なくとも130℃に加熱される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱い反応混合物が前記金型内で硬化している間、前記金型が少なくとも160℃に加熱される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱い反応混合物が、前記エポキシ樹脂の重量に対して、0.5重量%以下の触媒を含有する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記強化材が繊維プリフォームである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記プリフォームが、前記熱い反応混合物を導入する前に前記金型内にあり、前記プリフォームおよび前記金型が、前記熱い反応混合物を前記金型に導入する前に、少なくとも150℃に各々加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物が前記金型内で硬化している間、前記金型が少なくとも160℃に加熱される、請求項0に記載の方法。
【請求項11】
前記熱い反応混合物が、前記エポキシ樹脂の重量に対して、0.5重量%以下の触媒を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記強化材が短繊維を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記短繊維が、前記熱い反応混合物を前記金型に導入する前に、前記熱い反応混合物に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱い反応混合物が、前記エポキシ樹脂の重量に対して、0.5重量%以下の触媒を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記エポキシ樹脂が、1分子当たり2.0から3.0個のエポキシド基の平均官能度、および170から250のエポキシド当量を有する、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記エポキシ樹脂が、多価フェノール化合物のジグリシジルエーテルである、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記硬化剤が1分子当たり2.0から4.0個のエポキシド反応性基および30から250の1エポキシド−反応性基当たりの当量を有する、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記硬化剤が芳香族アミン硬化剤である、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
a)エポキシ樹脂と硬化剤とを別々にしておきながら、それらを予熱する工程と、
b)前記予熱したエポキシ樹脂と予熱した硬化剤とを混合して、熱い反応混合物を形成する工程と、
c)前記熱い反応混合物を、少なくとも1つの繊維プリフォームを含有する密閉金型に導入する工程と、
d)ポリマー相が少なくとも150℃のガラス転移温度に達するまで、少なくとも強化金型の存在下で熱い反応混合物を硬化し、ポリマー相を有する複合材料を形成する工程と
を含み、工程b)、c)およびd)が、前記熱い反応混合物が前記ポリマー相の瞬間Tg超で常に維持されるように行われる、複合材料を形成する方法。
【請求項24】
工程b)において、前記熱い反応混合物が、最初に形成されるとき、少なくとも80℃の温度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記熱い反応混合物が、前記エポキシ樹脂の重量に対して、0.5重量%以下の触媒を含有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記エポキシ樹脂が、1分子当たり2.0から3.0個のエポキシド基の平均官能度、および170から250のエポキシド当量を有する、請求項23から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記エポキシ樹脂が、多価フェノール化合物のジグリシジルエーテルである、請求項23から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記硬化剤が1分子当たり2.0から4.0個のエポキシド反応性基および30から250の1エポキシド−反応性基当たりの当量を有する、請求項23から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記硬化剤が芳香族アミン硬化剤である、請求項23から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
工程c)が、前記熱い反応混合物を樹脂浴中に導入し、連続繊維が前記熱い反応混合物で被覆されるように前記繊維を樹脂浴から引き抜き、次いで前記被覆された繊維が固まり、指定された断面形状に形成されるように前記被覆された繊維を1つまたは複数の加熱したダイスから引き抜かれ、前記熱い反応混合物が硬化して、少なくとも150℃のTgを有するポリマーを形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項33】
a)エポキシ樹脂と硬化剤とを別々にしておきながら、それらを予熱する工程と、
b)前記加熱したエポキシ樹脂と加熱した硬化剤とを混合して、少なくとも80℃の温度を有する熱い反応混合物を形成する工程と、
c)前記熱い反応混合物が密閉金型に導入されるとき、前記金型および繊維プリフォームが少なくとも160℃の温度にある、前記熱い反応混合物を少なくとも1つの繊維プリフォームを含有する密閉金型に導入する工程と、
d)前記混合物が硬化して、少なくとも150℃のガラス転移温度を有するポリマー相を有する複合材料を形成するまで、少なくとも160℃の温度にて金型内で前記混合物を硬化する工程と
を含む、樹脂トランスファーモールディング法。
【請求項34】
前記熱い反応混合物が、前記エポキシ樹脂の重量に対して、0.5重量%以下の触媒を含有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記熱い反応混合物が1重量%以下の溶媒を含有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エポキシ樹脂が、1分子当たり2.0から3.0個のエポキシド基の平均官能度、および170から250のエポキシド当量を有する、請求項33から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記エポキシ樹脂が、多価フェノール化合物のジグリシジルエーテルである、請求項33から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記硬化剤が1分子当たり2.0から4.0個のエポキシド反応性基および30から250の1エポキシド−反応性基当たりの当量を有する、請求項33から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記硬化剤が芳香族アミン硬化剤である、請求項33から39のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−519067(P2010−519067A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549663(P2009−549663)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/052973
【国際公開番号】WO2008/100730
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】