説明

ガラスランチャンネル及びその製造方法

【課題】 ガラスランチャンネルの基底部と低摩擦材部との接合強度を十分に確保しながら、低摩擦材部を形成する材料の選択の自由度を広げることができるようにする。
【解決手段】 ガラスランチャンネル13の製造時に、チャンネル本体28の基底部29及び各側壁部30,31に所定の外力を加えて押圧接合部44の凹条45を幅方向に拡開させるように基底部29を弾性変形させた状態で、基底部29に低摩擦材部43を積層して押圧接合部44の凹条45を低摩擦材部43の凸条47で埋めるように低摩擦材部43を溶着接合する。この後、基底部29及び各側壁部30,31に加えていた外力を除去して基底部29の弾性復元力によって押圧接合部44の凹条45を幅方向に縮小させることで、押圧接合部44の凹条45で低摩擦材部43の凸条47に押圧力を作用させると共に、押圧接合部44の凸条46を低摩擦材部43の凸条47間に食い込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓枠に沿って装着されて窓ガラスのスライド移動を案内するガラスランチャンネル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の窓枠構造は、窓枠の内周縁に沿って長尺なガラスランチャンネルを装着し、このガラスランチャンネルによって窓ガラスの昇降移動(スライド移動)を案内するように構成されている。従来のガラスランチャンネルは、ゴム等の弾性ポリマー材料により、窓ガラスの端面に対向する基底部と、この基底部の幅方向両側からそれぞれ立ち上がる車内側及び車外側の側壁部等を一体成形することで、窓ガラスの昇降移動を案内する溝形状に形成したものがあるが、窓ガラスの昇降移動の際に基底部が窓ガラスの端面と接触して擦れるため、基底部が摩耗しやすいという欠点があった。
【0003】
この対策として、特許文献1(特開平10−71649号公報)に記載されているように、ガラスランチャンネルの基底部の表面に、樹脂テープを溶着接合することで、基底部の耐摩耗性を向上させるようにしたものがある。
【特許文献1】特開平10−71649号公報(第3頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の技術では、ガラスランチャンネルの基底部の表面と樹脂テープ等の低摩擦材部の下面とを単に平面同士で密着させて溶着接合するだけであるため、基底部(ガラスランチャンネル本体)を形成する材料と低摩擦材部を形成する材料との相溶性が高くないと、基底部と低摩擦材部との熱溶着(熱融着ということもある)による接合強度を十分に確保することができず、窓ガラスの昇降移動の繰り返しによって基底部から低摩擦材部が剥がれてしまう可能性がある。これにより、低摩擦材部を形成する材料が基底部を形成する材料と相溶性の高い材料に限定されてしまうため、低摩擦材部を形成する材料の選択の自由度が狭くなってしまい、コスト性、成形性等を考慮した幅広い材料選択を行うことができないという欠点があった。
【0005】
本発明は、これらの事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、ガラスランチャンネルの基底部と低摩擦材部との接合強度を十分に確保することができると共に、低摩擦材部を形成する材料の選択の自由度を広げることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、弾性変形可能なポリマー材料により形成されて窓ガラスの端面と対向する位置に配置される基底部と該基底部の幅方向両側からそれぞれ立ち上がる側壁部とを有するチャンネル本体と、窓ガラスに対する摩擦係数がチャンネル本体よりも低いポリマー材料により形成されて基底部のうち少なくとも窓ガラスの端面と対向する部分に溶着接合された低摩擦材部とを備えたガラスランチャンネルにおいて、基底部のうち低摩擦材部との接合部分に、長手方向に延びる凹部及び/又は凸部を有し、該凹部及び/又は該凸部によって該低摩擦材部に押圧力を作用させる押圧接合部を設け、基底部を所定の外力により弾性変形させた状態で該基底部に低摩擦材部を溶着接合した後に当該外力を除去することで基底部の弾性復元力によって押圧接合部で低摩擦材部に押圧力を作用させるように構成したものである。
【0007】
この構成では、基底部の弾性復元力によって押圧接合部で基底部と低摩擦材部との接合界面に押圧力を作用させることができるため、基底部(ランチャンネル本体)を形成する材料と低摩擦材部を形成する材料との相溶性があまり高くなくても、基底部と低摩擦材部との接合強度を高めることができる。これにより、基底部と低摩擦材部との接合強度を十分に確保することができると共に、低摩擦材部を形成する材料の選択の自由度を広げることができ、コスト性、成形性等を考慮した幅広い材料選択を行うことができる。
【0008】
この場合、請求項2のように、押圧接合部には、基底部の長手方向に沿って延びる複数の凹部及び/又は凸部を形成するようにすると良い。このようにすれば、押圧接合部に形成した複数の凹部や凸部で基底部と低摩擦材部との接合界面に押圧力を作用させることができ、基底部と低摩擦材部との接合強度を確実に高めることができる。
【0009】
また、請求項3のように、押圧接合部に形成された凹部に低摩擦材部が入り込むようにすると良い。このようにすれば、押圧力に加え押圧接合部と低摩擦材部との接触面積が増大することによっても基底部と低摩擦材部との接合強度を高めることができる。
【0010】
更に、請求項4のように、押圧接合部に形成された凸部が低摩擦材部に食い込むようにしても良い。このようにすれば、低摩擦材部に食い込んだ押圧接合部の凸部のアンカー作用によっても基底部と低摩擦材部との接合強度を高めることができる。
【0011】
また、請求項5のように、基底部には、低摩擦材部を溶着接合する際の弾性変形を容易にするための薄肉部を設けるようにすると良い。このようにすれば、低摩擦材部を溶着接合する際に、基底部を容易に弾性変形させることができる。
【0012】
また、請求項6のように、チャンネル本体はゴムで形成し、低摩擦材部はチャンネル本体と熱溶着可能な熱可塑性ポリマー材料で形成すると良い。このようにすれば、チャンネル本体の基底部や側壁部を弾性変形可能に形成しながら、基底部に低摩擦材部を溶着接合させることができる。
【0013】
この場合、請求項7のように、低摩擦材部を形成する熱可塑性ポリマー材料は、それ自体がチャンネル本体を形成するゴムよりも摩擦係数が低い熱可塑性ポリマー材料又はチャンネル本体を形成するゴムよりも摩擦係数が低い材料を混練した熱可塑性ポリマー材料を用いると良い。ここで、チャンネル本体を形成するゴムよりも摩擦係数が低い熱可塑性ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。また、チャンネル本体を形成するゴムよりも摩擦係数が低い材料を混練した熱可塑性ポリマー材料としては、例えば、高分子量ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を混練した熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。
【0014】
本発明のガラスランチャンネルを製造する場合には、請求項8のように、基底部のうち低摩擦材部との接合部分に、長手方向に延びる凹部及び/又は凸部によって低摩擦材部に押圧力を作用させる押圧接合部が設けられたチャンネル本体を準備し、基底部を所定の外力により凹部及び/又は凸部の位置及び/又は形が元と異なるように弾性変形させる弾性変形工程と、基底部を弾性変形させた状態で該基底部に低摩擦材部を積層して溶着接合する溶着接合工程と、溶着接合工程後に外力を除去することで基底部の弾性復元力によって押圧接合部で低摩擦材部に押圧力を作用させる外力除去工程を実行するようにすると良い。このようにすれば、本発明のガラスランチャンネルを効率良く製造することができる。
【0015】
この場合、請求項9のように、チャンネル本体を押出成形して、その後連続して弾性変形工程、溶着接合工程、外力除去工程を実行するようにすると良い。このようにすれば、1つの製造ラインで、チャンネル本体成形工程と弾性変形工程と溶着接合工程と外力除去工程を連続的に実行することができる。
【0016】
このようにチャンネル本体成形工程後に弾性変形工程と溶着接合工程を連続的に実行する場合には、チャンネル本体の成形時の熱(例えば未加硫ゴムを加硫する際の熱)があまり放熱されないうちに溶着接合工程に進むことができるため、請求項10のように、溶着接合工程において、チャンネル本体の熱で低摩擦材部の軟化状態又は溶融状態を維持させるようにすると良い。このようにすれば、チャンネル本体の成形時の熱を利用して低摩擦材部の軟化状態又は溶融状態を維持させることができる。
【0017】
ところで、低摩擦材部を基底部に積層して溶着接合する際に、低摩擦材部の接合面を基底部の接合面(押圧接合部)の形状に対応した形状に塑性変形させるようにしても良いが、請求項11のように、溶着接合工程前に、低摩擦材部を基底部の形状に対応した形状に押出成形するようにしても良い。このようにすれば、低摩擦材部成形工程で、低摩擦材部の接合面を基底部の接合面(押圧接合部)の形状に対応した形状に形成することができるため、低摩擦材部を基底部に積層して溶着接合する際に、低摩擦材部の接合面を基底部の接合面(押圧接合部)に確実に密着させることができる。
【0018】
また、請求項12のように、弾性変形工程において、チャンネル本体の移動方向に回転するローラで該チャンネル本体を送り出しながら基底部を弾性変形させるようにすると良い。このようにすれば、チャンネル本体(基底部)が変形手段との間の摩擦抵抗などにより移動方向に引張力を受けて伸びることを防止しながら基底部を所定の形状に弾性変形させた状態で溶着接合工程に進むことができる。
【0019】
更に、請求項13のように、弾性変形工程において、基底部と該基底部の幅方向両側の側壁部にそれぞれ所定の外力を加えて基底部を弾性変形させるようにしても良い。このようにすれば、基底部を確実に所定の形状に弾性変形させることができる。
【0020】
また、請求項14のように、押圧接合部には基底部の長手方向に沿って延びる凹条を形成し、弾性変形工程において押圧接合部の凹条を幅方向に拡開させるように基底部を弾性変形させ、溶着接合工程において押圧接合部の凹条を埋めるように低摩擦材部を溶着接合し、外力除去工程において基底部の弾性復元力によって押圧接合部の凹条が幅方向に縮小することで低摩擦材部に押圧力を作用させるようにすると良い。このようにすれば、押圧接合部の凹条で基底部と低摩擦材部との接合界面に押圧力を作用させることができ、基底部と低摩擦材部との接合強度を高めることができる。
【0021】
この場合、請求項15のように、押圧接合部の凹条は、横断面略U字形状又は横断面略V字形状に形成しても良いが、請求項16のように、押圧接合部の凹条は、底部よりも入口部の幅寸法が狭くなるように形成すると良い。このようにすれば、押圧接合部の凹条に入り込んだ低摩擦材部を凹条から抜けにくくすることができ、基底部と低摩擦材部との接合強度を更に高めることができる。
【0022】
また、請求項17のように、押圧接合部には基底部の長手方向に沿って延びる複数の凸条を形成し、弾性変形工程において押圧接合部の複数の凸条を幅方向において互いに近付くように基底部を弾性変形させ、溶着接合工程において押圧接合部の凸条が形成されている部分を覆うように低摩擦材部を溶着接合し、外力除去工程において基底部の弾性復元力によって押圧接合部の凸条同士の間隔が幅方向に拡大することで低摩擦材部に押圧力を作用させるようにしても良い。このようにすれば、押圧接合部の凸条で基底部と低摩擦材部との接合界面に押圧力を作用させることができ、基底部と低摩擦材部との接合強度を高めることができる。
【0023】
また、請求項18のように、溶着接合工程において、基底部に低摩擦材部を積層した後にチャンネル本体の移動方向に回転するローラで接合部を押圧し且つ該チャンネル本体を送り出しながら基底部に低摩擦材部を圧着させるようにしても良い。このようにすれば、基底部に低摩擦材部を確実に溶着接合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を4つの実施例1〜4を用いて説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1を図1乃至図7に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて自動車のフロント側のサッシュタイプのドア11の概略構成を説明する。サッシュタイプのドア11には、窓枠(サッシュ)12が溶接等により一体的に取り付けられ、この窓枠12の内周側に、ポリマー材料製の長尺なガラスランチャンネル13が窓枠12に沿って装着され、このガラスランチャンネル13によって窓ガラス14の昇降移動(スライド移動)が案内されるようになっている。
【0026】
窓枠12は、窓ガラス14の昇降移動方向とほぼ平行方向に延びる前側窓枠部15及び後側窓枠部16と、窓ガラス14の上端面に対向する上側窓枠部17とから構成され、上側窓枠部17には、フロントピラーの傾斜に対応して傾斜した傾斜部17aとルーフに対応してほぼ水平方向に延びる水平部17bとが形成されている。
【0027】
一方、ガラスランチャンネル13は、前側窓枠部15に沿って装着される前側ガラスランチャンネル部19と、後側窓枠部16に沿って装着される後側ガラスランチャンネル部20と、上側窓枠部17(傾斜部17aから水平部17b)に沿って装着される上側ガラスランチャンネル部21と、上側ガラスランチャンネル部21と前側ガラスランチャンネル部19とを接合する前側コーナー部22と、上側ガラスランチャンネル部21と後側ガラスランチャンネル部20とを接合する後側コーナー部23とから構成されている。
【0028】
次に、窓枠12とガラスランチャンネル13の具体的な構成について説明する。但し、窓枠12の各窓枠部15〜17の要部は実質的に同じ構成であり、ガラスランチャンネル13の各ガラスランチャンネル部19〜21は実質的に同じ構成であるため、図2を用いて後側窓枠部16と後側ガラスランチャンネル部20の構成について説明し、前側及び上側窓枠部15,17と前側及び上側ガラスランチャンネル部19,21の構成については説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、窓枠12(後側窓枠部16)は、例えば金属ストリップ材の折り曲げ加工により、内周側にガラスランチャンネル13を装着するための横断面略U字形状の溝状部24が長手方向に沿って形成されると共に、外周側にドアシール材(図示せず)を保持するためのドアシール材保持部25が長手方向に沿って形成され、溝状部24の幅方向略中央部で金属ストリップ材が複数枚折り重なった部分が長手方向に所定間隔でスポット溶接等により固着されている。溝状部24の車内側及び車外側の側壁には、それぞれガラスランチャンネル13を係止するための係止部26,27が形成されている。
【0030】
一方、ガラスランチャンネル13(後側ガラスランチャンネル部20)のチャンネル本体28は、例えばEPDMを主体とするゴム等の弾性ポリマー材料の押出成形により、窓ガラス14の端面に対向する基底部29と、この基底部29の幅方向両端側からそれぞれ立ち上がるように延びる車内側の側壁部30及び車外側の側壁部31と、各側壁部30,31の先端側からそれぞれ基底部29の幅方向略中央側に向けて突出して折り返し状に形成された車内側のシールリップ32及び車外側のシールリップ33と、各側壁部30,31の先端側からそれぞれシールリップ32,33と反対側に向けて突出する車内側の遮蔽リップ34及び車外側の遮蔽リップ35と、各側壁部30,31の根元側からそれぞれ基底部29の幅方向外側に向けて突出する車内側の係止片36及び車外側の係止片37と、基底部29の外面から外周側に向けて突出する複数の外周側突条38とが一体に成形されている。
【0031】
窓枠12の溝状部24に沿ってガラスランチャンネル13を装着したときに、窓枠12の車内側の係止部26と車外側の係止部27に、それぞれガラスランチャンネル13の車内側の係止片36と車外側の係止片37が係止されることで、窓枠12の溝状部24にガラスランチャンネル13が抜け止め保持されるようになっている。また、ガラスランチャンネル13の車内側のシールリップ32と車外側のシールリップ33が、それぞれ窓ガラス14の表面に当接することで、窓ガラス14を保持すると共に窓枠12と窓ガラス14との間をシールするようになっている。
【0032】
また、各シールリップ32,33の表面(つまり、窓ガラス14と接触する部分)には、それぞれ低摩擦材層39,40が形成されている。この低摩擦材層39,40は、窓ガラス14に対する摩擦係数がチャンネル本体28(基底部29等)よりも低い材料で形成され、窓ガラス14が移動するときにガラスランチャンネル13(シールリップ32,33)と窓ガラス14との間に生じる摩擦力(摺動抵抗)を小さくする役割を果たしている。
【0033】
更に、各側壁部30,31の内面には、シールリップ32,33が側壁部30,31に付着することを防止するための付着防止層41,42が形成されている。この付着防止層41,42は、低摩擦材層39,40と同じ材料で形成されている。尚、シールリップ32,33の裏面に、付着防止層を形成しても良い。また、各側壁部30,31の内面とシールリップ32,33の裏面のうちの少なくとも一方を粗化する(凹凸形状にする)ことで、接触面積を小さくしてシールリップ32,33が側壁部30,31に付着することを防止するようにしても良い。これらの低摩擦材層39,40と付着防止層41,42はチャンネル本体28と共押出成形により熱融着されて強固に一体化されている。
【0034】
また、基底部29の内面(つまり、窓ガラス14の端面と接触する部分)には、低摩擦材部43が基底部29の長手方向に沿って溶着接合されている。この低摩擦材部43は、窓ガラス14に対する摩擦係数がチャンネル本体28(基底部36等)よりも低い熱可塑性ポリマー材料の押出成形により形成され、窓ガラス14が移動するときにガラスランチャンネル13(基底部29)と窓ガラス14との間に生じる摩擦力(摺動抵抗)を小さくする役割を果たしている。
【0035】
低摩擦材部43を形成する熱可塑性ポリマー材料は、チャンネル本体28を形成するゴムと熱溶着可能な熱可塑性ポリマー材料であり、それ自体がチャンネル本体28を形成するゴムよりも摩擦係数が低い熱可塑性ポリマー材料又はチャンネル本体28を形成するゴムよりも摩擦係数が低い材料を混練した熱可塑性ポリマー材料が用いられている。ここで、チャンネル本体28を形成するゴムよりも摩擦係数が低い熱可塑性ポリマー材料としては、例えば、PE樹脂(ポリエチレン樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、TPO(ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー)、SBC(スチレン系熱可塑性エラストマー)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂)等を用いることができる。また、チャンネル本体28を形成するゴムよりも摩擦係数が低い材料を混練した熱可塑性ポリマー材料としては、例えば、高分子量PE樹脂、超高分子量PE樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の滑性材料を少なくとも1つを混練した熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。
【0036】
また、基底部29のうち低摩擦材部43との接合部分には、低摩擦材部43に押圧力を作用させるための押圧接合部44が設けられている。この押圧接合部44には、基底部29の長手方向に沿って延びる複数の凹条(凹部)45が形成され、各凹条45間に凸条(凸部)46が形成されている。この押圧接合部44の凹条45は、底部よりも入口部の幅寸法が狭くなる横断面略台形形状(あり溝形状)に形成されている。
【0037】
一方、低摩擦材部43のうち基底部29との接合部分には、押圧接合部44の凹条45に対応した凸条47が形成され、押圧接合部44の凹条45に低摩擦材部43の凸条47が入り込んでいると共に、押圧接合部44の凸条46が低摩擦材部43の凸条47の間に食い込んでいる。
【0038】
本実施例1では、ガラスランチャンネル13の製造時に、図6に示すように、チャンネル本体28の基底部29及び各側壁部30,31に所定の外力を加えて押圧接合部44の凹条45を幅方向に拡開させるように基底部29を弾性変形させた状態で、基底部29に低摩擦材部43を積層して押圧接合部44の凹条45を低摩擦材部43の凸条47で埋めるように低摩擦材部43を溶着接合する。この後、図7に示すように、基底部29及び各側壁部30,31に加えていた外力を除去して基底部29の弾性復元力によって押圧接合部44の凹条45を幅方向に縮小させることで、押圧接合部44の凹条45で低摩擦材部43の凸条47に押圧力を作用させると共に、押圧接合部44の凸条46が低摩擦材部43の凸条47間に食い込むようになっている。
【0039】
また、図2に示すように、基底部29の外面の複数箇所に横断面略V字形状又は横断面略U字形状の凹溝48を長手方向に沿って延びるように形成することで、基底部29の複数箇所に薄肉部が設けられ、この薄肉部によって低摩擦材部43を溶着接合する際の弾性変形を容易に行うことができるようになっている。
【0040】
次に、図3乃至図7に基づいてガラスランチャンネル13の製造方法を説明する。尚、図5乃至図7では、外周側突条38と低摩擦材層39,40と付着防止層41,42と凹溝48の図示を省略している。
【0041】
図3に示すように、ガラスランチャンネル13を製造する場合には、まず、チャンネル本体成形工程を実行する。このチャンネル本体成形工程では、押出成形機50にチャンネル本体28を形成するゴム材料等を供給して、押出成形機50で直線状のチャンネル本体連続体Sを押出成形すると共に、低摩擦材層39,40や付着防止層41,42を共押出成形してチャンネル本体連続体Sに熱融着させて一体化する。この後、未加硫のチャンネル本体連続体Sを加硫槽51内に通し、この加硫槽51内で未加硫のチャンネル本体連続体Sを加熱して加硫させる。
【0042】
チャンネル本体成形工程の実行後、低摩擦材部成形工程を実行すると共に、弾性変形工程及び溶着接合工程を実行する。図4に示すように、低摩擦材部成形工程で使用する押出成形機52は、弾性変形工程及び溶着接合工程で使用す溶着接合機54と一体的に設けられ、押出成形機52の押出ダイ53が溶着接合機54内に配置されている。
【0043】
また、溶着接合機54には、上流側から順に、予備変形用ローラ55,56と、変形用ローラ57,58と、圧着用ローラ59,60とが配置されている。
図6に示すように、変形用ローラ57,58は、チャンネル本体連続体Sを送り出しながら、チャンネル本体連続体Sを所定の溶着接合用形状(各側壁部30,31を外側に広げると共に基底部29の内面側が凸面となるように基底部29を幅方向に湾曲させた形状)に弾性変形させるためのローラであり、上側変形用ローラ57と下側変形用ローラ58とが、チャンネル本体連続体Sを上下から挟むように配置されている。各変形用ローラ57,58の回転軸61,62がギヤ63,64を介して連結され、駆動モータ(図示せず)で下側変形用ローラ58の回転軸62を回転駆動することで、各変形用ローラ57,58がチャンネル本体連続体Sを送り出す方向に同一周速度で回転駆動されるようになっている。
【0044】
上側変形用ローラ57は、チャンネル本体連続体Sの基底部29を避けるように左右のローラ57a,57bに分割されて、チャンネル本体連続体Sの基底部29以外の部分を押さえるようになっている。一方のローラ57aの外周部には、チャンネル本体連続体Sの車内側の側壁部30及びシールリップ32を上方から押さえる押さえ部65と、基底部29の車内側端面を位置決めする位置決め部66とが形成され、他方のローラ57bの外周部には、チャンネル本体連続体Sの車外側の側壁部31及びシールリップ33を上方から押さえる押さえ部67と、基底部29の車外側端面を位置決めする位置決め部68とが形成されている。また、上側変形用ローラ57の左右のローラ57a,57b間のスペースに、押出成形機52の押出ダイ53の出口部が配置されている。
【0045】
一方、下側変形用ローラ58の外周部には、チャンネル本体連続体Sの基底部29を下方から押さえる押さえ部69と、車内側の側壁部30を下方から押さえる押さえ部70と、車外側の側壁部31を下方から押さえる押さえ部71とが形成されている。尚、チャンネル本体連続体Sを送り出す際の滑り止めとして、下側変形用ローラ58の押さえ部69等の表面に、ローレット加工等により凹凸模様を形成するようにしても良い。
【0046】
これらの上側変形用ローラ57と下側変形用ローラ58との間に、チャンネル本体連続体Sが挟まれることで、チャンネル本体連続体Sの横断面形状が溶着接合用形状(各側壁部30,31を外側に広げると共に基底部29の内面側が凸面となるように基底部29を幅方向に湾曲させた形状)に弾性変形するようになっている。
【0047】
図4に示すように、予備変形用ローラ55,56は、上述した変形用ローラ57,58の上流側に配置されて、チャンネル本体連続体Sを送り出しながら、チャンネル本体連続体Sを所定の中間形状(図5に示すフリー状態時の形状と図6に示す溶着接合用形状との中間的な形状)に予備変形させるためのローラであり、上側予備変形用ローラ55と下側予備変形用ローラ56とが、チャンネル本体連続体Sを上下から挟むように配置されている。各予備変形用ローラ55,56の回転軸72,73がギヤ(図示せず)を介して連結され、変形用ローラ57,58と共通の駆動モータ又は専用の駆動モータ(図示せず)によって各予備変形用ローラ55,56がチャンネル本体連続体Sを送り出す方向に回転駆動されるようになっている。
【0048】
また、圧着用ローラ59,60は、変形用ローラ57,58の下流側に配置されて、チャンネル本体連続体Sを送り出しながら、チャンネル本体連続体Sを溶着接合用形状に弾性変形させた状態で基底部29に低摩擦材部43を圧着させるさせるためのローラであり、上側圧着用ローラ59と下側圧着用ローラ60とが、チャンネル本体連続体Sを上下から挟むように配置されている。各圧着用ローラ59,60の回転軸74,75がギヤ(図示せず)を介して連結され、変形用ローラ57,58と共通の駆動モータ又は専用の駆動モータ(図示せず)によって各圧着用ローラ59,60がチャンネル本体連続体Sを送り出す方向に回転駆動されるようになっている。
【0049】
低摩擦材部成形工程では、押出成形機52に低摩擦材部43を形成する熱可塑性ポリマー材料を供給して、押出成形機52の押出ダイ53で低摩擦材部43を連続的に押出成形する。その際、図6に示すように、低摩擦材部43のうち基底部29との接合部分に、押圧接合部44の凹条45に対応した凸条47を形成することで、後述する溶着接合工程で、低摩擦材部43の接合面を基底部29の接合面(押圧接合部44)に良好に接合させることができるようにする。
【0050】
一方、弾性変形工程では、溶着接合機54の予備変形ローラ55,56で、チャンネル本体連続体Sを送り出しながら、基底部29及び側壁部30,31に外力を加えてチャンネル本体連続体Sを中間形状に予備変形させた後、図6に示すように、溶着接合機54の変形用ローラ57,58で、チャンネル本体連続体Sを送り出しながら、基底部29及び各側壁部30,31に外力を加えてチャンネル本体連続体Sを溶着接合用形状に弾性変形させることで、押圧接合部44の凹条45を幅方向に拡開させる。その際、押圧接合部44の凹条45は、入口部の幅寸法が底部の幅寸法とほぼ同じか又はそれよりも広くなる程度まで拡開させるようにすると良い。
【0051】
更に、溶着接合工程では、変形用ローラ57,58でチャンネル本体連続体Sを溶着接合用形状に弾性変形させた状態で、押出成形機52の押出ダイ53から供給される低摩擦材部43を基底部29に積層して、押圧接合部44の凹条45に低摩擦材部43の凸条47を入り込ませる。ここで、本実施例1のように、チャンネル本体成形工程後に弾性変形工程と溶着接合工程を連続的に実行する場合には、チャンネル本体連続体Sの成形時の熱(未加硫のチャンネル本体連続体Sを加硫させた際の熱)が放熱されて所定の温度を下回らないうちに溶着接合工程に進むことができるため、チャンネル本体連続体Sの成形時の熱を利用して低摩擦材部43の接合面の急激な温度低下に伴う固化を防いで軟化状態又は溶融状態を良好に維持させることができる。
【0052】
この後、圧着用ローラ59,60で、チャンネル本体連続体Sを送り出しながら、基底部29及び側壁部30,31に外力を加えてチャンネル本体連続体Sを溶着接合用形状に弾性変形させた状態で、低摩擦材部43に上方から圧力を加えて基底部29に低摩擦材部43を圧着させることで、押圧接合部44の凹条45を低摩擦材部43の凸条47で埋めるように低摩擦材部43を溶着接合する。
【0053】
この溶着接合工程の実行後に、チャンネル本体連続体Sが圧着用ローラ59,60から送り出されることで、圧着用ローラ59,60によって基底部29及び側壁部30,31に付加されていた外力が除去される外力除去工程となる。この外力除去工程では、図7に示すように、圧着用ローラ59,60によって基底部29及び側壁部30,31に付加されていた外力が除去されるため、チャンネル本体連続体Sが弾性復元力により元の形状(外力が加わっていないフリー状態時の形状)に戻る。その際、基底部29の弾性復元力によって押圧接合部44の凹条45が幅方向に縮小することで、押圧接合部44の凹条45で低摩擦材部43の凸条47に幅方向の押圧力が作用すると共に、押圧接合部44の凸条46が低摩擦材部43の凸条47,47間に食い込むようになっている。
【0054】
このようにして、長尺状のガラスランチャンネル連続体Tを成形した後、図3に示すように、冷却工程に進み、ガラスランチャンネル連続体Tを冷却槽76内に通し、この冷却槽76内で低摩擦材部43を冷却して固化させる。この後、切断工程に進み、引取機77でガラスランチャンネル連続体Tを引取りながら、ガラスランチャンネル連続体Tを切断機78によって所定の長さ寸法(前側ガラスランチャンネル部19の長さ寸法又は後側ガラスランチャンネル部20の長さ寸法又は上側ガラスランチャンネル部21の長さ寸法)に切断して、前側ガラスランチャンネル部19又は後側ガラスランチャンネル部20又は上側ガラスランチャンネル部21を形成する。
【0055】
この後、接合工程に進み、前側コーナー部22を成形する射出成形型(図示せず)に、上側ガラスランチャンネル部21の前端部と前側ガラスランチャンネル部19の上端部を所定角度で交差させてセットした状態で、該射出成形型内に弾性ポリマー材料を射出して前側コーナー部22を形成することで、上側ガラスランチャンネル部21と前側ガラスランチャンネル部19とを前側コーナー部22を介して接合する。更に、後側コーナー部23を成形する射出成形型(図示せず)に、上側ガラスランチャンネル部21の後端部と後側ガラスランチャンネル部20の上端部を所定角度で交差させてセットした状態で、該射出成形型内に弾性ポリマー材料を射出して後側コーナー部23を形成することで、上側ガラスランチャンネル部21と後側ガラスランチャンネル部20とを後側コーナー部23を介して接合する。これによりガラスランチャンネル13の製造が完了する。
【0056】
以上説明した本実施例1では、ガラスランチャンネル13の基底部29のうち低摩擦材部43との接合部分に押圧接合部44を設け、外力を加えて基底部29を弾性変形させた状態で該基底部29に低摩擦材部43を溶着接合した後に外力を解放して基底部29の弾性復元力によって押圧接合部44の凹条45で低摩擦材部43に押圧力を作用させるようにしたので、押圧接合部44の凹条45で基底部29と低摩擦材部43との接合界面に押圧力を作用させることができ、基底部29(ランチャンネル本体28)を形成する材料と低摩擦材部43を形成する材料との相溶性があまり高くなくても、基底部29と低摩擦材部43との接合強度を高めることができる。これにより、基底部29と低摩擦材部43との接合強度を十分に確保することができると共に、低摩擦材部43を形成する材料の選択の自由度を広げることができ、互いに相溶性が高い材料という制約を受けることなく、より高い滑り性、コスト、成形性等をも考慮した幅広い材料選択を行うことができる。
【0057】
更に、本実施例1では、押圧接合部44に、基底部29の長手方向に沿って延びる複数の凹条45を形成するようにしたので、押圧接合部44に形成した複数の凹条45で基底部29と低摩擦材部43との接合界面に押圧力を作用させることができ、基底部29と低摩擦材部43との接合強度を確実に高めることができる。
【0058】
しかも、本実施例1では、押圧接合部44の凹条45に低摩擦材部43の凸条47が入り込むと共に、押圧接合部44の凸条46が低摩擦材部43の凸条47間に食い込むようにしたので、押圧接合部44の凹条45に入り込んだ低摩擦材部43のアンカー作用及び低摩擦材部43に食い込んだ押圧接合部44の凸条46のアンカー作用によっても基底部29と低摩擦材部43との接合強度を高めることができる。
【0059】
更に、本実施例1では、押圧接合部44の凹条45を、底部よりも入口部の幅寸法が狭くなる横断面略台形形状に形成したので、押圧接合部44の凹条45に入り込んだ低摩擦材部43を凹条45から抜けにくくすることができ、基底部29と低摩擦材部43との接合強度を更に高めることができる。
【0060】
また、本実施例1では、低摩擦材部成形工程で、低摩擦材部43のうち基底部29との接合部分に、押圧接合部44の凹条45に対応した凸条47を形成するようにしたので、溶着接合工程で、押圧接合部44の凹条45に低摩擦材部43の凸条47を確実に入り込ませて、低摩擦材部43の接合面を基底部29の接合面(押圧接合部44)に確実に密着させることができる。
【0061】
ところで、チャンネル本体連続体Sが移動方向(長手方向)に引張力を受けて延びた状態で低摩擦材部43を溶着接合すると、チャンネル本体連続体Sが縮んで元の形状に戻ったときに溶着接合不良が発生する可能性がある。
【0062】
そこで、本実施例1では、弾性変形工程で、溶着接合機54の予備変形ローラ55,56及び変形用ローラ57,58ローラで、チャンネル本体連続体Sを送り出しながら基底部29を弾性変形させるようにしたので、チャンネル本体連続体S(基底部29)が移動方向に引張力を受けて延びることを防止しながらチャンネル本体連続体S(基底部29)を溶着接合用形状に弾性変形させた状態で溶着接合工程に進むことができ、低摩擦材部43の溶着接合不良を防止することができる。
【0063】
しかも、本実施例1では、弾性変形工程で、基底部29と各側壁部30,31に外力を加えてチャンネル本体連続体Sを溶着接合用形状に弾性変形させるようにしたので、チャンネル本体連続体S(基底部29)を確実に溶着接合用形状に弾性変形させることができる。
【0064】
また、本実施例1では、前側、後側、上側の各ガラスランチャンネル部を同一断面のガラスランチャンネル連続体Tから形成してコーナー部を介して接合したが、例えば、前側、及び後側ガラスランチャンネル部を同一断面のガラスランチャンネル連続体Tから形成して、上側ガラスランチャンネル部を異なる断面のガラスランチャンネル連続体から形成し、これらをコーナー部を介して接合することも可能である。
【0065】
以下、本発明の実施例2〜4を図8乃至図11に基づいて説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分には同一符号を付して説明を簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【実施例2】
【0066】
図8に示すように、本発明の実施例2では、基底部29の押圧接合部79には、低摩擦材部80の下部全体が入り込む幅広凹条(凹部)81が形成されている。この幅広凹条81の入口部両側には、それぞれ幅方向中心側に向けて突出する係止突片82が形成され、幅広凹条81の底部よりも入口部の幅寸法が狭くなっている。一方、低摩擦材部80の幅方向両端には、それぞれ幅方向外側に向けて突出する被係止部83が形成されている。
【0067】
ガラスランチャンネル13の製造時に、基底部29及び各側壁部30,31に所定の外力を加えて押圧接合部79の幅広凹条81を幅方向に拡開させるように基底部29を弾性変形させた状態(基底部29の内面側が凸面となるように基底部29を幅方向に湾曲させた状態)で、基底部29に低摩擦材部80を積層して押圧接合部79の幅広凹条81を低摩擦材部80の下部全体で埋めるように低摩擦材部80を溶着接合する。この後、基底部29及び各側壁部30,31に加えていた外力を除去して基底部29の弾性復元力によって押圧接合部79の幅方向に広がっていた幅広凹条81を縮小させることで、押圧接合部79の幅広凹条81で低摩擦材部80の下部全体を挟んで押圧力を作用させると共に、押圧接合部79の係止突片82を低摩擦材部80の被係止部83に係止させるようになっている。
【0068】
以上説明した本実施例2では、押圧接合部79の幅広凹条81で基底部29と低摩擦材部80との接合界面に押圧力を作用させることができると共に、押圧接合部79の係止突片82を低摩擦材部80の被係止部83に係止させることができ、基底部29と低摩擦材部80との接合強度を高めることができる。
【実施例3】
【0069】
図9に示すように、本発明の実施例3では、基底部29の押圧接合部84には、複数の横断面略V字形状の凹条(凹部)85が形成されている。一方、低摩擦材部86のうち基底部29との接合部分には、押圧接合部84の凹条85に対応した複数の横断面略逆V字形状の凸条87が形成され、押圧接合部84の凹条85に低摩擦材部86の凸条87が入り込んでいる。
【0070】
ガラスランチャンネル13の製造時に、基底部29及び各側壁部30,31に所定の外力を加えて押圧接合部84の凹条85を幅方向に拡開させるように基底部29を弾性変形させた状態(基底部29の内面側が凸面となるように基底部29を幅方向に湾曲させた状態)で、基底部29に低摩擦材部86を積層して押圧接合部84の凹条85を低摩擦材部86の凸条87で埋めるように低摩擦材部86を溶着接合する。この後、基底部29及び各側壁部30,31に加えていた外力を除去して基底部29の弾性復元力によって押圧接合部84の凹条85を幅方向に縮小させることで、押圧接合部84の凹条85で低摩擦材部86の凸条87に押圧力を作用させるようになっている。
【0071】
以上説明した本実施例3においても、押圧接合部84の幅広凹条85で基底部29と低摩擦材部86との接合界面に押圧力を作用させることができ、基底部29と低摩擦材部86との接合強度を高めることができる。
【0072】
尚、上記実施例3では、基底部29の押圧接合部84に横断面略V字形状の凹条85を形成し、低摩擦材部86に横断面略逆V字形状の凸条87を形成したが、図10に示す変形例のように、基底部29の押圧接合部84に横断面略U字形状の凹条85を形成し、低摩擦材部86に横断面略逆U字形状の凸条87を形成するようにしても良い。
【実施例4】
【0073】
図11に示すように、本発明の実施例4では、基底部29の押圧接合部88には、幅広凸条(凸部)89が形成されている。この幅広凸条89は、根元部よりも先端部の幅寸法が広くなる横断面略逆台形形状に形成され、幅広凸条89の先端部両側に、それぞれ係止突部90が形成されている。また、幅広凸条89の表面に横断面略V字形状又は横断面略U字形状の凹溝48を形成することで、低摩擦材部91を溶着接合する際の弾性変形を容易にする薄肉部が設けられている。一方、低摩擦材部91の幅方向両端には、それぞれ幅方向中心側に向けて突出する被係止部92が形成されている。
【0074】
ガラスランチャンネル13の製造時に、基底部29及び各側壁部30,31に所定の外力を加えて押圧接合部88の幅広凸条89を幅方向に圧縮させるように基底部29を弾性変形させた状態(基底部29の内面側が凹面となるように基底部29を幅方向に湾曲させた状態)で、基底部29に低摩擦材部91を積層して押圧接合部88の幅広凸条89を低摩擦材部91で覆うように低摩擦材部91を溶着接合する。この後、基底部29及び各側壁部30,31に加えていた外力を除去して基底部29の弾性復元力によって押圧接合部88の幅広凸条89を幅方向に拡大させることで、押圧接合部88の幅広凸条89で低摩擦材部91の両端部に押圧力を作用させると共に、押圧接合部88の係止突部89を低摩擦材部91の被係止部92に係止させるようになっている。
【0075】
以上説明した本実施例4では、押圧接合部88の幅広凸条89で基底部29と低摩擦材部91との接合界面に押圧力を作用させることができると共に、押圧接合部88の係止突部89を低摩擦材部91の被係止部92に係止させることができ、基底部29と低摩擦材部91との接合強度を高めることができる。
【0076】
尚、上記各実施例1〜4では、1つの製造ラインでチャンネル本体成形工程と弾性変形工程と溶着接合工程と外力除去工程を連続的に実行するようにしたが、別の製造ラインや別の工場で予め製造したチャンネル本体を準備して、弾性変形工程と溶着接合工程と外力除去工程を実行するようにしても良い。
【0077】
また、上記各実施例1〜4では、低摩擦材部成形工程で低摩擦材部の接合面を基底部の接合面(押圧接合部)に対応した形状に形成するようにしたが、必ずしも、低摩擦材部成形工程で低摩擦材部の接合面を基底部の接合面(押圧接合部)に対応した形状に形成しておく必要はなく、低摩擦材部を基底部に積層して溶着接合する際に、低摩擦材部の接合面を基底部の接合面(押圧接合部)の形状に対応した形状に塑性変形させるようにしても良い。更に、別の製造ラインや別の工場で予め製造した低摩擦材部を用いるようにしても良い。
【0078】
また、上記各実施例1〜4では、チャンネル本体をゴムで形成するようにしたが、チャンネル本体を形成する弾性ポリマー材料はゴムに限定されず、TPO、SBC等の熱可塑性エラストマーやPVC樹脂等の熱可塑性樹脂でチャンネル本体を形成するようにしても良い。
【0079】
また、本発明の適用範囲は、サッシュドアの窓枠に装着されるガラスランチャンネルに限定されず、パネルドアの窓枠に装着されるガラスランチャンネルやドア以外の窓枠に装着されるガラスランチャンネルに本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例1におけるサッシュドアの概略構成図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】ガラスランチャンネルの製造装置の概略構成図である。
【図4】押出成形機及び溶着接合機の断面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】図4のC−C断面図である。
【図7】図4のD−D断面図である。
【図8】実施例2のガラスランチャンネルの断面図である。
【図9】実施例3のガラスランチャンネルの断面図である。
【図10】実施例3の変形例を示すガラスランチャンネルの断面図である。
【図11】実施例4のガラスランチャンネルの断面図である。
【符号の説明】
【0081】
12…窓枠、13…ガラスランチャンネル、14…窓ガラス、28…チャンネル本体、29…基底部、30…車内側の側壁部、31…車外側の側壁部、43…低摩擦材部、44…押圧接合部、45…凹条(凹部)、46…凸条(凸部)、50…押出成形機、51…加硫槽、52…押出成形機、54…溶着接合機、55,56…予備変形用ローラ、57,58…変形用ローラ、59,60…圧着用ローラ、79…押圧接合部、80…低摩擦材部、81…幅広凹条(凹部)、82…係止突片、83…、被係止部、84…押圧接合部、85…凹条(凹部)、86…低摩擦材部、87…凸条、88…押圧接合部、89…幅広凸条(凸部)、90…係止突部、91…低摩擦材部、92…被係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓枠に沿って装着されて窓ガラスのスライド移動を案内する長尺なガラスランチャンネルであって、弾性変形可能なポリマー材料により形成されて前記窓ガラスの端面と対向する位置に配置される基底部と該基底部の幅方向両側からそれぞれ立ち上がる側壁部とを有するチャンネル本体と、前記窓ガラスに対する摩擦係数が前記チャンネル本体よりも低いポリマー材料により形成されて前記基底部のうち少なくとも前記窓ガラスの端面と対向する部分に溶着接合された低摩擦材部とを備えたガラスランチャンネルにおいて、
前記基底部のうち前記低摩擦材部との接合部分には、長手方向に延びる凹部及び/又は凸部を有し、該凹部及び/又は該凸部によって該低摩擦材部に押圧力を作用させる押圧接合部が設けられ、
前記基底部を所定の外力により弾性変形させた状態で該基底部に前記低摩擦材部を溶着接合した後に前記外力を除去することで前記基底部の弾性復元力によって前記押圧接合部で前記低摩擦材部に押圧力を作用させるように構成されていることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項2】
前記押圧接合部には、前記基底部の長手方向に沿って延びる複数の凹部及び/又は凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスランチャンネル。
【請求項3】
前記押圧接合部に形成された凹部に前記低摩擦材部が入り込んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスランチャンネル。
【請求項4】
前記押圧接合部に形成された凸部が前記低摩擦材部に食い込んでいることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガラスランチャンネル。
【請求項5】
前記基底部には、前記低摩擦材部を溶着接合する際の弾性変形を容易にするための薄肉部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガラスランチャンネル。
【請求項6】
前記チャンネル本体はゴムで形成され、前記低摩擦材部は前記チャンネル本体と熱溶着可能な熱可塑性ポリマー材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガラスランチャンネル。
【請求項7】
前記低摩擦材部を形成する熱可塑性ポリマー材料は、それ自体が前記チャンネル本体を形成するゴムよりも摩擦係数が低い熱可塑性ポリマー材料又は前記チャンネル本体を形成するゴムよりも摩擦係数が低い材料を混練した熱可塑性ポリマー材料であることを特徴とする請求項6に記載のガラスランチャンネル。
【請求項8】
車両の窓枠に沿って装着されて窓ガラスのスライド移動を案内する長尺なガラスランチャンネルであって、弾性変形可能なポリマー材料により形成されて前記窓ガラスの端面と対向する位置に配置される基底部と該基底部の幅方向両側からそれぞれ立ち上がる側壁部とを有するチャンネル本体と、前記窓ガラスに対する摩擦係数が前記チャンネル本体よりも低いポリマー材料により形成されて前記基底部のうち少なくとも前記窓ガラスの端面と対向する部分に溶着接合された低摩擦材部とを備えたガラスランチャンネルを製造する方法において、
前記基底部のうち前記低摩擦材部との接合部分に、長手方向に延びる凹部及び/又は凸部を有し、該凹部及び/又は該凸部によって該低摩擦材部に押圧力を作用させる押圧接合部が設けられたチャンネル本体を準備し、
前記基底部を所定の外力により前記凹部及び/又は前記凸部の位置及び/又は形が元と異なるように弾性変形させる弾性変形工程と、
前記基底部を弾性変形させた状態で該基底部に前記低摩擦材部を積層して溶着接合する溶着接合工程と、
前記溶着接合工程後に前記外力を除去することで前記基底部の弾性復元力によって前記押圧接合部で前記低摩擦材部に押圧力を作用させる外力除去工程と
を含むことを特徴とするガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項9】
前記チャンネル本体を押出成形して、その後連続して前記弾性変形工程、前記溶着接合工程、前記外力除去工程を実行することを特徴とする請求項8に記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項10】
前記溶着接合工程において、前記チャンネル本体の熱で前記低摩擦材部の軟化状態又は溶融状態を維持させることを特徴とする請求項9に記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項11】
前記溶着接合工程前に、前記低摩擦材部を前記基底部の形状に対応した形状に押出成形することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項12】
前記弾性変形工程において、前記チャンネル本体の移動方向に回転するローラで該チャンネル本体を送り出しながら前記基底部を弾性変形させることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項13】
前記弾性変形工程において、前記基底部と該基底部の幅方向両側の側壁部にそれぞれ所定の外力を加えて前記基底部を弾性変形させることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項14】
前記押圧接合部には、前記基底部の長手方向に沿って延びる凹条が形成され、
前記弾性変形工程において、前記押圧接合部の凹条を幅方向に拡開させるように前記基底部を弾性変形させ、
前記溶着接合工程において、前記押圧接合部の凹条を埋めるように前記低摩擦材部を溶着接合し、
前記外力除去工程において、前記基底部の弾性復元力によって前記押圧接合部の凹条が幅方向に縮小することで前記低摩擦材部に押圧力を作用させることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項15】
前記押圧接合部の凹条は、横断面略U字形状又は横断面略V字形状に形成されていることを特徴とする請求項14に記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項16】
前記押圧接合部の凹条は、底部よりも入口部の幅寸法が狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項14に記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項17】
前記押圧接合部には、前記基底部の長手方向に沿って延びる複数の凸条が形成され、
前記弾性変形工程において、前記押圧接合部の複数の凸条が幅方向において互いに近付くように前記基底部を弾性変形させ、
前記溶着接合工程において、前記押圧接合部の凸条が形成されている部分を覆うように前記低摩擦材部を溶着接合し、
前記外力除去工程において、前記基底部の弾性復元力によって前記押圧接合部の凸条同士の間隔が幅方向に拡大することで前記低摩擦材部に押圧力を作用させることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載のガラスランチャンネルの製造方法。
【請求項18】
前記溶着接合工程において、前記基底部に前記低摩擦材部を積層した後に前記チャンネル本体の移動方向に回転するローラで接合部を押圧し且つ該チャンネル本体を送り出しながら前記基底部に前記低摩擦材部を圧着させることを特徴とする請求項8乃至17のいずれかに記載のガラスランチャンネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−76610(P2007−76610A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270617(P2005−270617)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】