説明

クラッチディスクの製造方法

【課題】クラッチに用いられるクラッチフェーシング、圧力パッドそして摩擦パッドのようなクラッチに用いられる摩擦材を炭素複合材で製造できるようにする。
【解決手段】クラッチ用摩擦材の製造方法は、炭素繊維を第1熱処理温度で熱処理して黒鉛化処理する第1熱処理段階、樹脂を炭素繊維織物の上に撒布してプリプレグを製造するプリプレグの製造段階、前記プリプレグに炭素繊維と前記樹脂とを積層してプリフォームを製造するプリフォーム製造段階、前記プリフォームをプレスして成形体を製造する成形体の製造段階、前記成形体を第2熱処理温度で熱処理する第2熱処理段階、とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ用摩擦材の製造方法に関し、より詳しくはスプールラインハブの構成を一つの部品に単純化させ、耐久性と衝撃吸収および摩擦力が優れた炭素−炭素複合材を使用しているため動力伝達効率に優れ、かつスムースに出発できるように構成されたクラッチ用摩擦材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クラッチは、機械装置の原動軸と従動軸とを連結して動力を伝達するため、その機械要素として、特性上、スムースなギア変速と迅速で高い動力伝達応答特性とが要求される。かかるクラッチは、自動車、オートバイ、産業用機械、プレス、船舶等の多様な産業分野で用いられる。
【0003】
特に、自動車に用いられるクラッチは、車両のスムースな発進のために、半クラッチ操作による滑りが許容されるように設計されている。したがって、半クラッチ操作により、クラッチには200〜600℃の高温摩擦熱が発生する。
【0004】
このように、クラッチでは摩擦によって高いトルクの動力が伝達されるので、フライホイール、クラッチディスク、圧力板等で摩擦による熱負荷および熱疲労、クラッチの断続的な接触トルクによる動的負荷、摩擦による高温でのクラッチカバーおよびディスクの劣化などの現象が発生する。
【0005】
このような現象によってクラッチディスクでは、熱負荷および動的負荷による疲労現象や亀裂などが発生し、高温および高回転数(高rpm)により摩擦係数が減少してフェーディング現象が発生する。これはクラッチの寿命を短縮させる主要な要因である。
【0006】
現在、前述したような問題点を解決すべく、多くの研究がなされており、このような公知の問題の解決方法としては、衝撃吸収構造としてクラッチクッション板、コイルスプリング、ゴムダンパー、ウェーブスプリング等を利用する方法が挙げられる。そして、冷却システムとしては、クラッチディスクにベンチレーション(Ventilation)溝またはフライ
ホイールやプレスプレートに穴をあける方法等が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、クラッチに用いられるクラッチフェーシング、圧力パッドそして摩擦パッドのようなクラッチに用いられる摩擦材を炭素複合材で製造できるようにしたクラッチ用摩擦材の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明によるクラッチ用摩擦材の製造方法は二つに大別される。2次元プリフォームを用いて製造する方法と、3次元プリフォームで製造する方法である。
【0009】
2次元プリフォームで製造する方法は、
炭素繊維を第1熱処理温度で熱処理して黒鉛化処理する第1熱処理段階と、
樹脂を炭素繊維織物上に撒布してプリプレグを製造するプリプレグ製造段階と、
前記プリプレグに炭素繊維と樹脂(ピッチまたはレジン(resin))とを積層してプリフ
ォームを製造するプリフォーム製造段階と、
前記プリフォームをプレスして成形体を製造する成形体の製造段階と、
前記成形体を第2熱処理温度で熱処理する第2熱処理段階と、
を有する。
【0010】
そして、第1熱処理段階とプリプレグの製造段階との間には、
熱処理した炭素繊維を繊維切断機で200〜2,000μmに切断する切断段階が含まれる。
【0011】
また、成形体の製造段階と第2熱処理段階との間には、
成形体を75〜1,400℃の温度で3〜5時間、炭化圧力50〜2,000kg/cm2で加圧して炭化/含浸させて、成形体を所定密度に密度化させる密度化段階が含まれる。ここで所定密度は1.3〜1.6g/cm3である。
【0012】
また、第1熱処理段階で前記第1熱処理温度は、2,000〜3,000℃である。
そして、成形体の製造段階で成形体は、
炭素繊維を20〜50重量%、前記樹脂を25〜50重量%の量で含んでなり、かつ200〜300℃でプレス加熱して成形される。
【0013】
また、第2熱処理段階は、
第2熱処理温度1,700〜2,500℃、真空度3〜5mmHg、昇温速度20〜100℃/hr、最高温度で3〜5時間行う。
【0014】
また、第2熱処理段階後、
珪素粉末を成形体に添加する珪素粉末添加段階と、
真空雰囲気下で1,450〜2,200℃の温度に昇温して0.1〜5時間保持させる
真空加熱段階と、を含み、
さらに、珪素粉末添加段階において、珪素粉末を成形体の重量に対して0.2〜5倍の
量で添加し、
またさらに、真空加熱段階を経た成形体は、珪素成分3〜25重量%、炭化珪素成分10〜65重量%、炭素成分10〜80重量%の量で含有してなる。
【0015】
3次元プリフォームで製造する方法は、
3次元プリフォームに発熱体を装着して、前記プリフォームの内部から外部間に熱勾配が発生するように加熱する熱勾配加熱段階と、
反応炉の内部に炭素原子1〜6個を有する化合物の反応ガスを注入する反応ガス注入段階と、
所定条件下で反応を行い、成形体を製造する成形体製造段階と、
成形体を熱処理する熱処理段階と、
からなる。
【0016】
そして、所定条件は、昇温速度10〜20℃/min、反応温度700〜1,200℃、反応ガス濃度10〜100%、反応圧力250〜1,500mbarであり、熱処理段階は温度1,700〜2,500℃、真空度3〜5mmHg、昇温速度20〜100℃/hr、最高温度
で3〜5時間行う。
【0017】
そして、二つの製造方法で製造された摩擦材はクラッチで摩擦がなされるクラッチフェーシング、摩擦パッドまたは圧力パッドのうち、いずれか1つまたは2つ以上に適用できる。
【0018】
本発明による動力伝達用クラッチは、単純化されたスプールラインハブと、衝撃吸収力
が優れた炭素−炭素複合材からなるクラッチフェーシングとで構成される。
スプールラインハブの構造を一つの部品に単純化することで、組立性を向上させ、重量を減少させ、かつエンジン動力伝達の効率性を向上させることができる。
【0019】
また、炭素−炭素複合材からなったクラッチフェーシングは、従来のスプールラインハブに設置されたコイルスプリングなどのようなものが担っていた衝撃緩和の役割を担うことにより、自動車のスムースな発進を保障する。
【0020】
さらに、高温における摩擦特性および摩耗特性と、熱衝撃抵抗性とが卓越しているため、フェーディング現象を発生させずに動力伝達を充分行うことができ、商品性および耐久性の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明のクラッチ用摩擦材の製造方法によれば、クラッチディスクアッセンブリーにコイルスプリングなどのような衝撃緩和装置を使用せずに一つの部品に単純化することによって、組立性を向上させると共に、重量を減少させることができる。
【0022】
また、エンジン動力伝達の効率性を向上させ、衝撃吸収機能に優れた炭素−炭素複合材、および炭素−炭化珪素複合材を用いることによって自動車がスムースに発進でき、急加速時にもスリップが発生しないようにする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の望ましい実施形態は、図面を参照してより詳しく説明する。
本発明に係る動力伝達用クラッチに用いられるクラッチディスクアッセンブリーは、図1と図2とに示すように略中央部に貫通孔11が形成され、この貫通孔11の外縁を囲繞するように多数個の第1締結孔12が形成され、その材質が炭素複合材からなるクラッチフェーシング10を備える。
【0024】
このクラッチフェーシング10は、一体に形成された本体部10aと接触部10bとを分けて説明する。
本体部10aは後述するスプールラインハブ20と結合する部分であり、接触部10b
は後述する摩擦パッド71および圧力パッド61と接触する部分である。したがって、必要に応じて本体部10aと接触部10bとを別途に製作して、これらを互いに結合させて
使用することもできる。
【0025】
そして、このクラッチフェーシング10の一方の面に重なって配置されるとともに、貫通孔11に挿入されるボス22が一面に形成され、さらに外縁に沿って第1締結孔12と連通される第2締結孔23が形成されたスプールラインハブ20を備える。そして、スプールラインハブ20の略中心部分に形成されたボアの内周面には、スプールラインハブ20の垂直方向に多数個のスプールライニングルブ(スプールライン溝)21が形成されている。
【0026】
なお、クラッチフェーシング10の他方の面には、第1締結孔12の位置に重なるようにリテーナリング30が配置される。このリテーナリング30には、第1締結孔12と連通する多数個の第3締結孔31が形成されている。
【0027】
したがって、第1締結孔12、第2締結孔23、そして第3締結孔31は、全部お互いに連通され、結合部材によってクラッチフェーシング10と、スプールラインハブ20そしてリテーナリング30を同時に相互に固着する。この結合部材は、図に示したようにボルト40で構成され、必要に応じてリベットなどのような他の種類の結合部材を用いるこ
とができる。そして、それぞれの連通孔12、23、31は、10〜20個程度形成される。
【0028】
一方、炭素複合材からなったクラッチフェーシング10は、炭素繊維20〜50重量%、ピッチ25〜50重量%の量で含んでなる炭素−炭素複合材から形成され、また、他の複合材として、珪素成分3〜20重量%、炭化珪素成分10〜60重量%、ピッチに含まれた炭素成分20〜87重量%の量で含んでなる炭素−炭化珪素複合材で形成することもできる。そして炭素繊維は、単繊維または連続的に製造(連続織造)された炭素織物が積層されてなる。
【0029】
本発明に用いられるクラッチディスクアッセンブリーは、図3に示したようにクラッチカバー50の内部に設置される。そして、クラッチカバー50の内部に設置されたクラッチフェーシング10の右側には、圧力パッド61を有する圧力板60が位置し、左側には摩擦パッド71を有するフライホイール70が位置する。
【0030】
この圧力パッド61および摩擦パッド71は、いずれも炭素複合材から製造することができるが、炭素複合材からなる摩擦パッド71をフライホイール70に設置するには、フライホイール70の表面に各々5〜8mmの深さの溝72を加工して形成し、この溝72に接着剤を0.2〜0.6mm程筆で塗布した後、塗布された接着剤を70〜80℃で20〜30分程乾燥させる。その後、摩擦パッド71をそれぞれの溝72に配置した後、350〜1,000KN/m2の圧力で加圧し、150〜230℃温度で15〜30分保持させて硬化
させる。または、摩擦パッド71をボルトで締結して設置してもよい。このような設置方法は、炭素複合材からなった圧力パッド61を設置する場合にも適用可能であり、本実施形態で圧力パッド61は圧力板60に別途の溝を形成せずに付着した状態を例示している。
【0031】
一方、他の実施形態(図示せず)として、従来のクラッチディスク構造と同様にスプールラインハブにクッション板を設置し、このクッション板に炭素複合材からなるクラッチフェーシングを接着して使用することもできる。この時のクラッチフェーシングは、円形または3〜6個程のパッドを作り、スプールラインハブのクッション板も円形または3〜6程度のパドル型(Paddle type)に分けて形成して炭素複合材からなったクラッチフェーシ
ングを接着剤で接合する。ここでクッション板には従来のような別途の衝撃吸収構造は不要である。
【0032】
そして、接合方法は、クッション板と炭素複合材からなるクラッチフェーシングとをアルコールで洗浄し、80℃程度で20分間乾燥した後、接着剤をクッション板と炭素−炭素複合材とに0.2〜0.6mm程度の濡れ厚さ(wet thickness)となるように塗布する。そ
の後、70〜80℃で20分〜30分乾燥し、プレス圧力350〜1,000KN/m2程度
で加圧した後、150〜230℃温度で加熱し、5〜30分程度保持させ硬化(curing)させることによって接合がなされる。
【0033】
以下、クラッチにおいてクラッチフェーシング、摩擦パッドまたは圧力パッドに用いられるクラッチ用摩擦材の製造方法に対する実施形態を説明する。
本発明によるクラッチ用摩擦材の製造方法は、PAN(polyacrylonitrile)系炭素繊
維を使用する。製造方法は、以下のような製造段階で構成されるが、特にプリフォームを2次元または3次元状態に製造して摩擦材を製造することが好ましい。
【0034】
まず、2次元プリフォームを使用したクラッチ用摩擦材の製造方法は、図4に示すように、熱伝導度をより一層向上させるために第1熱処理温度で熱処理して炭素繊維を黒鉛化処理する第1熱処理段階S100と、樹脂を炭素繊維織物上に撒布してプリプレグを製造
するプリプレグ製造段階S110と、プリプレグに炭素繊維と樹脂を積層してプリフォームを製造するプリフォーム製造段階S120と、前記プリフォームをプレスしてプリフォーム成形体を製造する成形体製造段階S130と、成形体を第2熱処理温度で熱処理する第2熱処理段階S150からなる。
【0035】
そして、前記のような段階を経た後、さらに珪素粉末添加段階S200と、真空加熱段階S210とを経て炭素−炭化珪素複合材が製造されるが、このように区分された段階を図4ではS1とS2とに分けて説明する。
【0036】
まず、炭素−炭素複合材を製造するためのS1段階である第1熱処理段階S100は、2,000〜3,000℃の第1熱処理温度でPAN系炭素繊維を高温熱処理して、炭素
繊維の熱伝導度をより一層向上させるために黒鉛化処理する工程である。
【0037】
そして炭素繊維は、単繊維または連続的に製造(連続織造)された炭素織物を積層して用いることができ、炭素繊維を単繊維で使用した場合には、熱処理された炭素繊維を繊維切断機で200〜2,000μmに切断する切断段階が行われる。
【0038】
プリプレグ製造段階S110は、粉砕機で0.5〜10μmの粒子サイズとなるように粉砕したピッチやレジンのような樹脂を、炭素繊維上にまんべんなく撒布し、180〜270℃の温度範囲で加熱してプリプレグを製造する段階である。
【0039】
プリフォーム製造段階S120は、切断された炭素繊維と粉砕された樹脂とをプリプレグに均一に積層してプリフォームを製造する段階である。
そして、成形体製造段階S130は、プリフォームを200〜300℃でプレス加熱して、必要な成形体を製造する段階であり、成形体製造段階S130の後には、別途に成形体を密度化させるための密度化段階S140を追加することができる。
【0040】
この密度化段階S140は、成形体を750〜1,400℃温度で、3〜5時間炭化圧力50〜2,000kg/cm2で加圧して炭化/含浸して成形体を所定密度で密度化する段階
である。ここで所定密度は1.3〜1.6g/cm3程度となる。
【0041】
次に、第2熱処理段階S150は、第2熱処理温度である1,700〜2,500℃、真空度3〜5mmHg、昇温速度20〜100℃/hr、最高温度で3〜5時間実施される。
一方、前述した方法で製造された低密度の炭素−炭素複合材に珪素粉末を添加して炭素−炭化珪素複合材を製造するS2段階を適用することができる。
【0042】
このために、珪素粉末添加段階S200と、真空加熱段階S210とがさらに行われる。珪素粉末添加段階S200は、珪素粉末を成形体の重量に対して0.2〜5倍程度の量
で成形体表面に添加する段階であり、真空加熱段階S210は真空雰囲気で1,450〜2,200℃の温度に昇温して0.1〜5時間保持させ、炭素と溶融珪素との反応を通じ
て炭素−炭化珪素複合材を製造する。
【0043】
このようにして製造された炭素−炭化珪素複合材は、珪素成分が3〜25重量%、炭化珪素成分が10〜65重量%、炭素成分が10〜80重量%の割合で含んでなる。
次に、3次元プリフォームで製造する場合を説明すると、図5に示したように炭素繊維で織って製造(織造)された3次元プリフォームの中心部に発熱体を装着してプリフォームの内部と外部間に熱勾配が生じるように加熱する熱勾配加熱段階S300と、反応炉内部に炭素原子1〜6個を有する化合物の反応ガスを注入する反応ガス注入段階S310と、所定条件下で反応を行い、成形体を製造する成形体製造段階S320と、成形体を熱処理する熱処理段階S330とからなる。
【0044】
ここで、3次元プリフォームは、引抜成形工程で作った直径1〜2mmの炭素糸を3次元に織って(織造して)製造したもので、米国のASNC(American Structure Needing Co.)のような会社で製造して販売されている。
【0045】
そして、熱勾配加熱段階S300と、反応ガス注入段階S310とは、熱勾配化学気相蒸着法(thermal gradient chemical vapor deposition)における段階である。この熱勾配化学気相蒸着法は、反応炉内部に、その中心部に発熱体が装着された炭素繊維プリフォームを配置して、この発熱体を通じて加熱することで、プリフォームの中心部から外部への熱伝導によりプリフォーム内部から外部間に温度勾配を発生させ、この状態で反応物質の化学気相蒸着を行う方法である。
【0046】
このような熱勾配化学気相蒸着法は、相対的に先に反応温度に到達するプリフォームの中心部からガスが先に熱分解され蒸着がなされる。この蒸着によりプリフォーム中心部は密度が高まって熱伝導度が高まるようになり、この熱伝導度により反応温度範囲が中心部から表面側へ漸次拡大するにつれ、ガスの反応領域も表面側に移動しながら最終的にプリフォームの表面まで蒸着がなされるようになる。
【0047】
そして、成形体製造段階S320は、昇温速度10〜20℃/min、反応温度700〜1,200℃、反応ガス濃度10〜100%、反応圧力250〜1,500mbarでなされ、熱処理段階S330は温度1,700〜2,500℃、真空度3〜5mmHg、昇温速度20〜100℃/hrで、3〜5時間行う。熱処理段階S330が終了した後、珪素粉末を炭素
−炭素複合材に添加して炭素−炭化珪素複合材を製造する前記S2段階を、前述した方法と同一な条件で適用される。
【0048】
以下、本発明による炭素複合材からなったクラッチフェーシングと従来のクラッチフェーシングとを比較説明する。以下のグラフは、それぞれの種類のクラッチフェーシングが装着されたクラッチを2回ずつテストして表したものである。
【0049】
図6は、従来のオーガニック系クラッチフェーシングが装着されたクラッチをシャーシ動力試験機に設置して実験したもので、回転数(RPM(図の横軸))による馬力(左側)とトルク(右側)との関係を表したグラフである。このクラッチは図6に示されたように発進時にはスムースであるが急加速または2,800〜3,800RPMでスリップが発生して駆動軸フライホイールの動力をギア軸に伝えられる効率が20〜30%落ちるようになるのが分かる。
【0050】
一方、図7は、銅セラミック焼結フェーシングが装着されたクラッチの馬力−トルクグラフを示す。図7に示すように、このクラッチは、急加速時、出力の応答特性は良いが、発進時2,100〜2,700RPMで急激な摩擦衝撃が発生して自動車の円滑な発進が難しく、運転手がすぐ疲労を感じる短所を有している。
【0051】
図8は、本発明による炭素複合材クラッチフェーシングが装着されたクラッチの馬力−トルクグラフを示す。図8に示すように、このクラッチは、4,500〜6,000RPMで最大トルクを試験したもので、4,800RPMでトルク44.4kg−M、馬力33
1.2PSになることがわかる。本発明によるクラッチディスクアッセンブリーが適用さ
れたクラッチを装着した自動車は、スムースな発進が可能で、急加速するときにもスリップが発生せず、駆動軸フライホイール側の動力をギア軸に伝達する特性に優れており、高トルク値においても適用できることを示している。
【0052】
図9に、本発明によるクラッチディスクアッセンブリーが装着されたクラッチに対する
ギア変速における応答特性を示す。1段で発進して2段変速時の瞬間的な衝撃(impact position)の他にも動力伝達の低減(loss)や衝撃の発生無しに動力伝達がスムースで、
応答特性が優れることを表した。
【0053】
以下の表に、これら各々のクラッチフェーシングの特性を示した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から分かるように、摩擦係数は、銅−セラミック焼結材と炭素−炭素複合材とがほぼ同じ傾向にあり、温度は炭素−炭素複合材が摩擦係数に比例して高くなった。そして、オーガニック系は圧力板加圧荷重(Pressure Plate)1,000kgfで摩擦熱および摩耗に
よる破れが発生した。すなわち、本発明によるクラッチディスクアッセンブリーに使われる炭素複合材からなる摩擦材は、オーガニック系に比べて極めて向上した性能を発揮し、銅−セラミック焼結材質の摩擦材に比べて若干優れた性能を発揮していることが分かる。
【0056】
前述した本発明による動力伝達用クラッチとクラッチ用摩擦材の製造方法に対する実施形態は、該分野の平均的な知識を有する技術者が実施形態の一部を変形して実施できるものを含む。また、変形した実施例が本発明の必須的な構成要素を含めば全て本発明の技術的範疇に含まれるものとみなされる。さらに、本発明の技術的思想は実施形態で言及した構成要素により限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の動力伝達用クラッチのディスクアッセンブリーの分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の動力伝達用クラッチのディスクアッセンブリーを組立て切開した断面図である。
【図3】図3は、本発明のクラッチディスクアッセンブリーの動力伝達用クラッチを半分に切断した断面図である。
【図4】図4は、2次元プリフォームで、クラッチ用摩擦材を製造する方法を示す工程図である。
【図5】図5は、3次元プリフォームで、クラッチ用摩擦材を製造する方法を示す工程図である。
【図6】図6は、従来のオーガニック系フェーシングが適用されたクラッチの馬力−トルクグラフである。
【図7】図7は、従来の銅−セラミックフェーシングが適用されたクラッチの馬力−トルクグラフである。
【図8】図8は、本発明の炭素−炭素複合材フェーシングが適用されたクラッチの馬力−トルクグラフである。
【図9】図9は、本発明の炭素−炭素複合材フェーシングが適用されたクラッチのギア変速状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
10…クラッチフェーシング
20…スプールラインハブ
30…リテーナリング
40…ボルト
50…クラッチカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維を第1熱処理温度で熱処理して黒鉛化処理する第1熱処理段階、
樹脂を炭素繊維織物の上に撒布してプリプレグを製造するプリプレグの製造段階、
前記プリプレグに炭素繊維と前記樹脂とを積層してプリフォームを製造するプリフォーム製造段階、
前記プリフォームをプレスして成形体を製造する成形体の製造段階、
前記成形体を第2熱処理温度で熱処理する第2熱処理段階、
とからなることを特徴とするクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項2】
前記第1熱処理段階と前記プリプレグの製造段階との間に、
熱処理をした前記炭素繊維を繊維切断機で200〜2,000μmに切断する段階が含
まれることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項3】
前記成形体製造段階と前記第2熱処理段階との間には、
前記成形体を温度750〜1,400℃、炭化圧力50〜2,000kg/cm2の条件で3〜5時間加圧して炭化/含浸させて、
前記成形体を所定密度に密度化する密度化段階が含まれることを特徴とする請求項2に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項4】
前記所定密度は、1.3〜1.6g/cm3であることを特徴とする請求項3に記載のクラッ
チ用摩擦材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、ピッチまたはレジンを含むことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項6】
前記第1熱処理段階における前記第1熱処理温度は、2,000〜3,000℃であることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項7】
前記成形体製造段階で前記成形体は、
炭素繊維を20〜50重量%、前記樹脂を25〜50重量%の量で含んでなり、かつ200〜300℃でプレス加熱して成形されていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項8】
前記第2熱処理段階は、
第2熱処理温度1,700〜2,500℃、真空度3〜5mmHg、昇温速度20〜100℃/hr、実施時間3〜5時間で行うことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用摩擦材
の製造方法。
【請求項9】
前記第2熱処理段階後、
珪素粉末を前記成形体に添加する珪素粉末添加段階;
真空雰囲気下で1,450〜2,200℃の温度に昇温して0.1〜5時間保持させる
真空加熱段階;
を含むことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項10】
前記珪素粉末添加段階において、
前記珪素粉末を、前記成形体の重量に対して0.2〜5倍の量で添加することを特徴と
する請求項9に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項11】
前記真空加熱段階を経た前記成形体は、珪素成分3〜25重量%、炭化珪素成分10〜
65重量%、炭素成分10〜80重量%の量で含有してなることを特徴とする請求項9に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項12】
前記成形体は、
クラッチにおいて摩擦がおこるクラッチフェーシング、摩擦パッド、または圧力パッドのうちのいずれか一つで用いられることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項13】
3次元プリフォームに発熱体を装着して前記プリフォームの内部から外部間に熱勾配が発生するように加熱する熱勾配加熱段階、
前記反応炉内部に炭素原子1〜6個を有する化合物の反応ガスを注入する反応ガス注入段階、
所定条件下で反応を行い、成形体を製造する成形体製造段階、
前記成形体を熱処理する熱処理段階、
からなることを特徴とするクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項14】
前記所定条件は、
昇温速度10〜20℃/min、反応温度700〜1,200℃、反応ガス濃度10〜100%、反応圧力250〜1,500mbarであることを特徴とする請求項13に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理段階は、
温度1,700〜2,500℃、真空度3〜5mmHg、昇温速度20〜100℃/hr、実
施時間3〜5時間の条件で行うことを特徴とする請求項13に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。
【請求項16】
前記成形体は、
クラッチにおいて摩擦がおこるクラッチフェーシング、摩擦パッド、または圧力パッドのうちのいずれか一つで用いられることを特徴とする請求項13に記載のクラッチ用摩擦材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−139197(P2007−139197A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343380(P2006−343380)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【分割の表示】特願2004−31179(P2004−31179)の分割
【原出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【出願人】(504049109)ダック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】