説明

ゲートタイミング制御回路

【課題】半導体スイッチ,負荷電流,温度,主回路構成等によるサージ電圧の波形に応じて半導体スイッチの動作タイミングを調整することなく、各半導体スイッチの電圧分担を均等化させる。
【解決手段】直列接続された複数の半導体スイッチA,Bに出力されるゲート信号のタイミングを調整するゲートタイミング制御回路3において、コンパレータ4,4により、各半導体スイッチA,BのVce検出(A),(B)と、予め設定されたしきい値とを比較してVce検出における立ち上がりのタイミングを示すVce信号(A),(B)を出力する。そして、時間差制御部8において、ゲート信号に基づいて、前記各Vce信号(A),(B)の変化のタイミングが整合するように生成されたゲート出力(A),(B)をゲートドライバ2に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGBTに代表される半導体スイッチを2個以上直列に接続し、見かけ上のスイッチ素子耐圧を高くした装置に係り、特に、高圧・大容量インバータ等の半導体電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体電力変換装置を高圧化する場合、半導体スイッチの耐圧によって出力電圧が制限される。半導体スイッチの耐圧には物理的な限界があり、例えば、IGBTにおいては現在市販されているものの限度が6500V程度である。しかし、系統電圧にはより高い電圧が存在すること、半導体電力変換装置の効率を改善するため変圧器を使用せずに直接スイッチング動作をさせたいこと、などの理由により高耐圧な半導体スイッチが求められている。
【0003】
半導体電力変換装置を高圧化させるため、半導体スイッチを2個以上直列に接続して同時にスイッチ動作をさせることにより、半導体スイッチの見かけ上の耐圧を高める技術が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、特許文献1を例にして、上記の技術を簡単に説明する。
【0005】
半導体スイッチにおけるスイッチング動作の変更の間やターンオフ時は、パラメータの差によって全てのVce(特許文献1では電圧負荷Uce)が各半導体スイッチにアンバランスに電圧分布する。そのため、特許文献1では、直列に接続された各々の半導体スイッチのVce(特許文献1では、電圧負荷Uce1,Uce2,…,UceN)を測定して、下記(1),(2)を行うことにより、半導体スイッチ間の電圧分布(電圧分担)が等しくなるように制御している。
(1)測定したVce(電圧負荷Uce1)に基づいて、半導体スイッチの動作タイミング(スイッチングの瞬間Tdon,Tdoff)を決定する。
(2)測定したVce(電圧負荷Uce1)に基づいて、ゲート電圧の大きさ(制御電圧のレベル)を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−241080号公報(段落[0007]〜[0013])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直列に接続された各々の半導体スイッチの電圧分布(電圧分担)が等しくなるように半導体スイッチの動作タイミングを決定しないと、各々の半導体スイッチ間の電圧分担にアンバランスが生じる。
【0008】
特許文献1では、図8に示すように、半導体スイッチのターンオン,ターンオフ動作後のサージ電圧が収まったタイミングで、各半導体スイッチのVceを検出して電圧負担のアンバランスを観測する方法が取られている。
【0009】
しかしながら、半導体スイッチ,負荷電流,温度,主回路構成によるサージ電圧の波形等によって、サージ電圧の収束時間は異なるため、装置ごとに半導体スイッチの動作タイミングの調整が必要となり、開発に要する時間が長くなるという問題があった。
【0010】
また、例えば、インバータ装置においては、何れかの相の半導体スイッチがスイッチングすると、直流電圧が変動するため、Vceを検出することができない。そのため、直流電圧の変動期間中は他の相の半導体スイッチもターンオン,ターンオフすることができず、出力の制御性能が制限される(低下する)。
【0011】
以上示したようなことから、 半導体スイッチ,負荷電流,温度,主回路構成によるサージ電圧の波形等に応じて半導体スイッチの動作タイミングを調整することなく、各半導体スイッチの電圧分担を均等化させるゲートタイミング制御回路を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、直列接続された複数の半導体スイッチに出力されるゲート信号のタイミングを調整するゲートタイミング制御回路であって、各半導体スイッチのVce検出と、予め設定されたしきい値とを比較してVce検出における立ち上がりのタイミングを示すVce信号を出力するコンパレータと、ゲート信号に基づいて、前記各Vce信号の変化のタイミングが整合するように生成されたゲート出力をゲートドライバに出力する時間差制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記2つのVce信号の偏差に基づき、Vce検出がしきい値に到達するタイミングの時間差を検出し、調整幅として出力する時間差検出部を備え、前記時間差制御部において、前記ゲート信号と調整幅に基づいて、前記各Vce信号における変化のタイミングが整合するように生成されたゲート出力をゲートドライバに出力することを特徴する。
【0014】
また、前記時間差制御部において、Vce信号における変化のタイミングと、予め決定された目標タイミングと、の時間差に基づいて、前記各Vce信号における変化のタイミングと前記目標タイミングが整合するように、各半導体スイッチのゲート出力を個別に生成してゲートドライバに出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体スイッチ,負荷電流,温度,主回路構成によるサージ電圧の波形等に応じて、半導体スイッチの動作タイミングを調整することなく、各半導体スイッチの電圧分担を均等化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1におけるゲートタイミング制御回路を用いた半導体電力変換装置を示す構成図である。
【図2】実施形態1におけるVce検出,Vce信号を示すグラフである。
【図3】実施形態1におけるゲート信号,ゲート出力,Vce信号の一例を示すグラフである。
【図4】実施形態1におけるゲート信号,ゲート出力,Vce信号の他例を示すグラフである。
【図5】実施形態2におけるゲートタイミング制御回路を用いた半導体電力変換装置を示す構成図である。
【図6】実施形態2におけるゲート信号,ゲート出力,Vce信号の一例を示すグラフである。
【図7】実施形態3におけるゲートタイミング制御回路を用いた半導体電力変換装置を示す構成図である。
【図8】特許文献1におけるVceの検出タイミングを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特許文献1では、半導体スイッチにおけるオンオフ動作後のサージ電圧が収まったタイミングでVceを検出し、各半導体スイッチの電圧分布(電圧分担)が等しくなるように、半導体スイッチの動作タイミングを決定している。それに対し、本願発明は、Vce検出がしきい値(設定レベル)に到達する時間により半導体スイッチの動作タイミングを決定して、ゲート信号におけるオンオフ動作のタイミングのずれを防止し、半導体スイッチにおける電圧分担のアンバランスを抑制するものである。
【0018】
以下、本発明の実施形態1〜3におけるゲートタイミング制御回路を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[実施形態1]
図1は本実施形態1におけるゲートタイミング制御回路を用いた半導体電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、半導体電力変換装置1は、半導体スイッチ(例えば、IGBT)A,Bと、ゲートドライバ2と、ゲートタイミング制御回路3と、を備えている。
【0021】
前記半導体スイッチA,Bは直列に接続され、各半導体スイッチA,Bには、直列に接続された2つの抵抗R1,R2およびR3,R4がそれぞれ並列に接続されている。この2つの抵抗R1,R2およびR3,R4の中間接続点は後述するコンパレータ4,4の入力端子に接続されている。
【0022】
前記ゲートドライバ2は、トランジスタQ1,Q2,Q3,Q4,電源E1,E2,E3,E4,抵抗R5,R6を備えている。ゲートドライバ2は一般的なものであるため、ここでの説明は省略する。
【0023】
前記ゲートタイミング制御回路3は、コンパレータ4,4と、絶縁器5,5と、減算器6と、時間差検出部7と、時間差制御部8と、絶縁器9,9と、ダイオード10,10と、を備える。
【0024】
前記コンパレータ4の他方の入力端子にはしきい値が入力され、Vce検出(A),(B)としきい値とを比較し、その結果がVce信号(A),(B)として絶縁器(例えば、フォトカプラ)5,5を介し減算器6に出力される。前記Vce信号(A),(B)は論理信号であり、以降の説明ではVce検出(A),(B)がしきい値よりも大きい場合「1」、小さい場合「0」とする。減算器6は2つのVce信号(A),(B)の偏差を算出し、算出された偏差を、時間差検出部7に出力する。時間差検出部7は、前記偏差に基づきVce検出(A),(B)がしきい値に到達するタイミングの時間差を検出し、その時間差を調整幅として時間差制御部8に出力する。時間差制御部8には、ゲート信号が入力され、このゲート信号と前記調整幅に基づいて、ゲート出力(A),(B)を生成し、絶縁器9,9、ダイオード10,10を介して、ゲートドライバ2に出力する。
【0025】
Vce検出のしきい値は、時間差が検出できれば良い。そのため、少なくとも「ターンオフ時に複数の半導体スイッチに係るトータル電圧/半導体スイッチ数>しきい値」を満たす必要はあるが適宜設定可能である。
【0026】
次にゲートタイミング制御回路3の具体的な制御方法について説明する。
【0027】
複数の半導体スイッチA,Bがターンオン,ターンオフするタイミングのずれは、ゲートドライバ2やゲート容量のばらつきなどによって発生する。
【0028】
そのため、半導体スイッチA,Bのターンオフ動作によるVce検出の立ち上がりのタイミングを測定し、立ち上がりのタイミングが整合するようにゲート出力(A),(B)のタイミング(指令が変化するタイミング)を調整することにより、半導体スイッチA,Bの電圧分担のアンバランスを抑制する。
【0029】
図2は、実施形態1におけるVce検出(A),(B),Vce信号(A),(B)を示すグラフである。図2(a)に示すように、時間差検出部7により、Vce信号(A),(B)の時間差を検出し、調整幅を決定する。そして、図2(b)に示すように、時間差制御部8により、前記ゲート信号と調整幅に基づきVce信号(A),(B)の変化のタイミングが整合するように、ゲート出力(A),(B)を生成する。なお、この調整幅は維持され、この調整幅で運転が続けられる。そして、同じ調整幅で、またVce信号(A),(B)における変化のタイミングに時間差が発生した場合、その次のスイッチングにおける調整幅を変化させる。なお、PI制御などを適用して、除々に変化させるようにしても良い。
【0030】
図3は、実施形態1におけるゲート信号,ゲート出力(A)(B),Vce信号(A),(B)を示すグラフである。なお、図3(a)は時間差制御前,図3(b)は時間差制御後(Vce信号が早い方のゲート出力を遅らせる場合),図3(c)は時間差制御後(Vce信号が遅い方のゲート出力を早める場合)を示すグラフである。
【0031】
図3(a)に示すように、時間差制御前は、ゲート信号と、ゲート出力(A),(B)は同一の波形となる。そして、この図3(a)の例では、Vce信号(A)が立ち上がってから遅れてVce信号(B)が立ち上がっている。そして、時間差検出部7において、Vce信号(A)とVce信号(B)の変化(立ち上がり)のタイミングの時間差が調整幅として検出される。
【0032】
そして、Vce信号が早い方のゲート出力を遅らせる場合は、図3(b)に示すように、前記調整幅分だけ時間差制御部8によりゲート出力(A)を遅らせる。なお、この図3(b)の場合、ゲート出力(B)はそのままとする。その結果、Vce信号(A)とVce信号(B)の変化(立ち上がり)のタイミングは整合する。
【0033】
また、Vce信号が遅い方のゲート出力を早める場合は、図3(c)に示すように、前記調整幅分だけ時間差制御部8によりゲート出力(B)を早める。なお、この図3(c)の場合、ゲート出力(A)はそのままとする。その結果、Vce信号(A)とVce信号(B)の変化(立ち上がり)のタイミングは整合する。
【0034】
ただし、ゲート信号よりもゲート出力を早めるためには、「ゲート信号の元になるゲート信号がさらに早い時間に作成されている」または「ゲート信号の変化を予測する」方法をとる必要がある。
【0035】
しかしながら、上記の方法は困難であるため、図4に示す方法が考えられる。以下、図4に基づいて説明する。
【0036】
図4(a)に示すように、予め、ゲート信号に対してゲート出力(A),(B)を遅らせておく。そして、時間差検出部7により、Vce信号(A)とVce信号(B)の立ち上がりの時間差が調整幅として検出される。次に、図4(b)に示すように、時間差制御部8により、前記調整幅分だけゲート出力(A),(B),またはその両方の時間差を調整する。
【0037】
図4(b)では、Vce信号(A),(B)が立ち上がるタイミングの中間でVce信号(A),(B)が立ち上がるように制御している。そして、図4(b)に示すように、任意のタイミングt0からtaまでの時間a[sec],t0からtbまでの時間をb[sec]とした時に、(a+b)/2となる時間に、Vce信号(A),(B)が立ち上がるように、ゲート出力(A)を遅らせて、ゲート出力(B)を早めている。なお、図4(b)では、遅らせる時間と早める時間を等しくしているが、等しくなくても良い。
【0038】
以上示したように、本実施形態1におけるゲートタイミング制御回路3によれば、Vce検出(A),(B)の立ち上がりタイミングを測定してゲート出力(A),(B)を調整することにより、各スイッチング素子に対する電圧分担を均等化させることが可能となる。
【0039】
また、Vce信号(A),(B)の変化(立ち上がり)のタイミングの時間差に基づいて制御しているため、半導体スイッチ,負荷電流,温度,主回路構成等に依存せず、装置ごとに半導体スイッチの動作タイミングの調整を行う必要がない。そのため、装置の開発に要する時間を短縮化することが可能となる。
【0040】
さらに、前記半導体スイッチA,Bに印加される電圧がどのような直流電圧でも適用可能である。また、例えば、インバータの場合、半導体スイッチのスイッチングにより直流電圧が変動しても、本実施形態1のゲートタイミング制御回路3には影響がないため、他の相のスイッチング素子もオン・オフすることが可能であり、出力制御性能の低下を抑制することが可能となる。
【0041】
[実施形態2]
実施形態1のゲートタイミング制御回路3は、半導体スイッチが2直列以上だと演算が複雑になり演算負担が増加する。また、半導体スイッチの直列数が増加するほど、この演算負担の増加が顕著となる。
【0042】
そのため、本実施形態2では、予想されるVce信号の最大遅延よりも各ゲート出力を長く遅らせてゲートタイミング制御を行い、各半導体スイッチ個別にゲートタイミング制御を行うことにより、半導体スイッチの直列数に依存しないゲートタイミング制御を実現する。
【0043】
図5は、本実施形態2におけるゲートタイミング制御回路13を用いた半導体電力変換装置11の構成を示すブロック図である。半導体スイッチA,B,ゲートドライバ2は実施形態1と同様の構成のため説明を省略し、ゲートタイミング制御回路13についてのみ説明する。
【0044】
本実施形態2のゲートタイミング制御回路13は、実施形態1における減算器6および時間差検出器7が省略され、その代わり、時間差制御部8が各ゲート出力(A),(B)ごとに設けられている。
【0045】
本実施形態2における前記ゲートタイミング制御回路13は、コンパレータ4,4により、Vce検出(A),(B)としきい値とを比較し、その結果がVce信号(A),(B)として絶縁器5,5を介し時間差制御部8,8に出力される。時間差制御部8,8には、ゲート信号が入力され、このゲート信号に基づいてVce信号(A),(B)の変化(立ち上がり)のタイミングが目標タイミングと整合するように、ゲート出力(A),(B)を生成し、絶縁器9,9を介してゲートドライバ2に出力する。
【0046】
実施形態1のゲートタイミング制御回路3では、Vce信号(A)とVce信号(B)の時間差を検出し、その時間差(調整幅)に基づいて時間差制御を行うが、本実施形態2のゲートタイミング制御回路13は、事前に定められた目標タイミングとVce信号(A),(B)における変化(立ち上がり)のタイミングの時間差を検出し、その時間差(調整幅)に基づいて時間差制御を行うものである。
【0047】
前記目標タイミングは、ゲート信号の変化から一定時間経過後(事前に規定した任意の時間)のある時点を指している。すなわち、事前に決められた目標タイミングにVce信号における変化(立ち上がり)のタイミングが整合するように、それぞれのゲート出力(A),(B)を個別に調整する。
【0048】
図6は、本実施形態2におけるゲート信号,ゲート出力(A),(B),Vce信号(A),(B)の一例を示すグラフである。なお、図6(a)は時間差制御前,図6(b)は時間差制御後を示すグラフである。
【0049】
図6(a)に示すように、時間差制御前は、ゲート信号とのゲート出力(A),(B)は同一の波形となる。そして、図6(a)の例では、Vce信号(A)が立ち上がってから少し遅れてVce信号(B)が立ち上がり、目標タイミングは、Vce信号(A),(B)の立ち上がりよりも後に設定されている。このVce信号の立ち上がりのタイミングと目標タイミングの時間差が調整幅としてそれぞれ検出される
そして、時間差制御を行うと、図6(b)に示すように、前記調整幅分だけゲート出力(A),(B)をそれぞれ遅らせる。すなわち、各半導体スイッチごとにVce(A),(B)の変化(立ち上がり)のタイミングと目標タイミングとの時間差(調整幅)を検出し、その調整幅分だけゲート出力(A),(B)のゲートタイミング制御が行われる。その結果、Vce信号(A),(B)の変化(立ち上がり)は目標タイミングと同一となり、整合する。
【0050】
以上示したように、本実施形態2におけるゲートタイミング制御回路13によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0051】
また、各半導体スイッチごとに遅延時間を制御することにより、半導体スイッチの直列数が増加しても、演算負担が増加することを抑制することが可能となる。
【0052】
[実施形態3]
図7は、本実施形態3におけるゲートタイミング制御回路23を用いた半導体電力変換装置21の構成を示す構成図である。半導体スイッチA,B,ゲートドライバ2は実施形態1,2と同様の構成であるため説明は省略する。
【0053】
本実施形態3におけるゲートタイミング制御回路23は、コンパレータ4,4と、絶縁器9,9と、時間差制御部8,8と、ダイオード10,10と、を備える。
【0054】
そして、Vce検出(A),(B)は、コンパレータ4,4によってしきい値と比較され、その結果がVce信号(A),(B)として時間差制御部8,8へそれぞれ出力される。ゲート信号は絶縁器9,9を介して時間差制御部8,8へ出力される。時間差検出部8,8では、Vce信号(A),(B)が目標タイミングと整合するようにゲート信号を調整してゲート出力(A),(B)を生成し、ダイオード10,10を介して、ゲートドライバ2へ出力する。
【0055】
実施形態2の場合、Vce信号の検出ブロックに絶縁器5が用いられているため、絶縁器によってVce検出がばらつくことがある。時間差制御部8の制御性能に依存するが、時間差制御部8を絶縁器9の二次側に配置することが可能である。これにより、Vce検出のばらつきを抑制することができる。
【0056】
なお、時間差制御部8を絶縁器9の二次側に配置することは、2つの半導体スイッチにおけるVce信号の変化のタイミング差を測ろうとした場合、必ず絶縁する必要があるため、実施形態1には適用することはできない。
【0057】
一方、実施形態2では、それぞれ個別にVce信号を目標タイミングに整合させるため、2つのVce信号を比較する必要がなく、絶縁の必要が無い。
【0058】
以上示したように、本実施形態3におけるゲートタイミング制御回路23によれば、実施形態1,2と同様の作用効果を奏する。
【0059】
さらに、絶縁器の影響によるVce信号のばらつきを抑制することが可能となる。
【0060】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0061】
例えば、実施形態1〜3では、ターンオフについてのタイミング調整についてのみ詳細に説明したが、ターンオンのタイミング調整についても適用可能である。
【0062】
また、実施形態1〜3では特定の構成のゲートドライバ2,半導体スイッチA,Bを説明したが、半導体スイッチを複数直列に接続したものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,11,21…半導体電力変換装置
2…ゲートドライバ
3,13,23…ゲートタイミング制御回路
4…コンパレータ
6…減算器
7…時間差検出部
8…時間差制御部
A,B…半導体スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の半導体スイッチに出力されるゲート信号のタイミングを調整するゲートタイミング制御回路であって、
各半導体スイッチのVce検出と、予め設定されたしきい値とを比較してVce検出における立ち上がりのタイミングを示すVce信号を出力するコンパレータと、
ゲート信号に基づき、前記各Vce信号の変化のタイミングが整合するように生成されたゲート出力をゲートドライバに出力する時間差制御部と、
を備えたことを特徴とするゲートタイミング制御回路。
【請求項2】
前記2つのVce信号の偏差に基づき、Vce検出がしきい値に到達するタイミングの時間差を検出し、調整幅として出力する時間差検出部を備え、
前記時間差制御部において、
前記ゲート信号と調整幅に基づいて、前記各Vce信号における変化のタイミングが整合するように生成されたゲート出力をゲートドライバに出力することを特徴する請求項1記載のゲートタイミング制御回路。
【請求項3】
前記時間差制御部において、
Vce信号における変化のタイミングと、予め決定された目標タイミングと、の時間差に基づいて、前記各Vce信号における変化のタイミングと前記目標タイミングが整合するように、各半導体スイッチのゲート出力を個別に生成してゲートドライバに出力することを特徴とする請求項1記載のゲートタイミング制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−249224(P2012−249224A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121394(P2011−121394)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】