説明

シリカ系被膜形成用組成物、シリカ系被膜の形成方法、シリカ系被膜、及び、電子部品

【課題】 従来と比較して平坦性に優れるシリカ系被膜を形成することができるシリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、(a)シロキサン樹脂、(b)その(a)成分を溶解可能な溶媒、及び、(c)オニウム塩を含有してなるシリカ系被膜形成用組成物であって、上記(c)成分の配合割合が上記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.5重量部であるシリカ系被膜形成用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系被膜形成用組成物、シリカ系被膜の形成方法、シリカ系被膜、及び、電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化による配線の微細化にともない、配線間容量の増大による信号遅延時間の増大が問題となっており、電子部品の絶縁材料は、耐熱性、機械特性等の他、低比誘電率と熱処理工程の短縮が求められている。
【0003】
一般に配線の信号の伝搬速度(v)と、配線材料が接する絶縁材料の比誘電率(ε)とは、v=k/√ε(kは定数)で示される関係があり、信号の伝搬速度を高速化するためには使用する周波数領域を高くし、また、そのときの絶縁材料の比誘電率を低くする必要がある。従来から、比誘電率4.2程度のCVD法によるSiO膜が層間絶縁材料として用いられてきたが、デバイスの配線間容量を低減し、LSIの動作速度を向上するため、より低誘電率な材料が求められている。現在実用化されている低誘電率材料としては、比誘電率3.5程度のSiOF膜(CVD法)があげられる。比誘電率2.5〜3.0の絶縁材料としては、有機SOG(Spin On Glass)、有機ポリマー等が、さらに比誘電率2.5以下の絶縁材料としては膜中に空隙を有するポーラス材が有力と考えられており、LSIの層間絶縁被膜に適用するための検討が盛んに行われている。
【0004】
その中でポーラス材の形成方法として、有機SOG材の低誘電率化が提案されており、金属アルコキシシランの加水分解縮重合物と加熱することにより揮発もしくは分解するポリマーを含有する組成物から被膜を形成し、加熱することにより空孔を形成することで低誘電性に優れた被膜材料を形成することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、これらの方法では、低誘電率化が進行するにつれ、膜強度の低下を伴うためプロセス適応性に大きな問題点がある。
【0005】
一方で、配線材料がAlの場合の層間絶縁被膜の形成方法は、Al配線形成後に絶縁膜を形成する手法のため、配線間の凹部を隙間なく平坦に埋め込む特徴を有する絶縁材料が要求されている。
【0006】
従来、このような凹部の段差をなくす平坦化技術としては、例えば、シリコンラダー系、ポリイミドやポリイミドシリコーンのような有機系用材を用いる方法が知られている。しかし、これらの有機系用材から得られる被膜は300〜450℃程度の温度で熱分解し易く、耐熱性、耐湿性等が劣るという欠点がある。
【0007】
また、基板中に水素、酸素、窒素などの残留ガスを含まないように基板を荷電粒子で軽くたたきながら被膜を形成する、いわゆるバイアススパッタリング法が知られている。この方法は、微細な部分での平坦化に適しているが、膜の累積過程で下地基板に損傷を与えるという欠点がある。
【0008】
また、シラノール及びアルキルシラノールを有機溶媒中に溶解して塗布液を調製し、この塗布液を、配線間の凹部を埋めるとともに下地基板の表面全体を覆うように塗布した後、熱処理によるシリカ系被膜を形成して平坦化する、いわゆるスピンオングラス法(SOG塗布法)が一般に実用化されている。しかし、従来のシリカ系被膜は比誘電率が3.0程度の絶縁材料であり、LSIの動作速度向上のためには、より低誘電率な材料が求められている。
【特許文献1】特開平11−310411号公報
【特許文献2】特開平11−322992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、特定の配合割合のオニウム塩を含有するシリカ系被膜形成用組成物を、表面に凹凸を有する基板に塗布したところ、オニウム塩を上記特定の配合割合以外の配合割合で含有したシリカ系被膜形成用組成物と比べ、得られるシリカ系被膜の平坦性が向上するということを見出し、本発明に至った。本発明の重要なポイントはオニウム塩の配合割合を特定の配合割合にしたことにある。
【0010】
本発明は、従来と比較して平坦性に優れるシリカ系被膜を形成することができるシリカ系被膜形成用組成物、それより得られるシリカ系被膜、及び、その形成方法、並びに、そのシリカ系被膜を備える電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a)シロキサン樹脂、(b)その(a)成分を溶解可能な溶媒、及び、(c)オニウム塩を含有してなるシリカ系被膜形成用組成物であって、上記(c)成分の配合割合が上記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.5重量部であるシリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、(a)シロキサン樹脂として、下記一般式(1);
SiX4−n (1)
(式中、Rは、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物を加水分解縮合して得られる樹脂を含む上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、(a)シロキサン樹脂として、シロキサン樹脂のシロキサン結合を形成しているSi原子の1原子あたりに結合しているH原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子の総数が0.65以下の樹脂を含む上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、(c)オニウム塩の配合割合が上記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.4重量部である上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、(c)オニウム塩の配合割合が上記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.3重量部である上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、(c)オニウム塩の配合割合が上記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.2重量部である上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、(c)オニウム塩の配合割合が上記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.1重量部である上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、(c)オニウム塩の配合割合が上記(a)成分の総量100重量部に対して0.01〜0.1重量部である上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、表面に凹凸を有する基板上へ塗布される上記シリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、基板上にシリカ系被膜を形成する方法であって、上述のシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜に含まれる有機溶媒を除去した後、該塗布膜を焼成するシリカ系被膜の形成方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、シリカ系被膜形成用組成物を塗布する基板の表面が凹凸を有する上記シリカ系被膜の形成方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、基板上に設けられており、上述のシリカ系被膜の形成方法により形成されてなるシリカ系被膜を提供する。
【0023】
また、本発明は、基板上に上述のシリカ系被膜が形成されてなる電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のシリカ系被膜形成用組成物、及び、シリカ系被膜の形成方法は、従来と比較して平坦性に優れるシリカ系被膜を形成することができ、電子部品に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
〈(a)成分〉
(a)成分はシロキサン樹脂であり、公知のものを使用できるが、樹脂の末端や側鎖などにOH基を有することが好ましい。これはシリカ系被膜形成用組成物を硬化させるための加水分解縮合反応を一層進行させるためである。
【0027】
また、シロキサン樹脂は、溶媒への溶解性、機械特性、成形性等の観点から、重量平均分子量(Mw)が、500〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であるとより好ましい。この重量平均分子量が500未満ではシリカ系被膜の成膜性が劣る傾向にあり、この重量平均分子量が20,000を超えると、溶媒との相溶性が低下する傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)により測定され且つ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算されたものである。
【0028】
重量平均分子量(Mw)は、例えば、以下の条件によるGPCにより測定することができる。
試料:シリカ系被膜形成用組成物10μL
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製標準ポリスチレン(分子量;190000、17900、9100、2980、578、474、370、266)
検出器:株式会社日立製作所社製RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレータ:株式会社日立製作所社製GPCインテグレータ、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所社製、商品名「L−6000」
デガス装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0029】
好ましいシロキサン樹脂としては、例えば、下記一般式(1);
SiX4−n (1)
で表される化合物を必須成分として加水分解縮合して得られる樹脂等が挙げられる。ここで、式中、Rは、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は、炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。
【0030】
加水分解性基Xとしては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらの中では、組成物自体の液状安定性や塗布特性等の観点からアルコキシ基が好ましい。
【0031】
加水分解性基Xがアルコキシ基である一般式(1)の化合物(アルコキシシラン)としては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシランなどが挙げられる。
【0032】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0033】
トリアルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
ジオルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
また、Rが炭素数1〜20の有機基である一般式(1)の化合物で、上記以外の化合物としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン等のビスシリルアルカン、ビスシリルベンゼンなどが挙げられる。
【0036】
また、RがSi原子を含む基である一般式(1)の化合物としては、例えば、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサ−n−プロポキシジシラン、ヘキサ−iso−プロポキシジシラン等のヘキサアルコキシジシラン類、1,2−ジメチルテトラメトキシジシラン、1,2−ジメチルテトラエトキシジシラン、1,2−ジメチルテトラプロポキシジシラン等のジアルキルテトラアルコキシジシラン類などが挙げられる。
【0037】
また、加水分解性基Xが、ハロゲン原子(ハロゲン基)である一般式(1)の化合物(ハロゲン化シラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がハロゲン原子で置換されたもの等が挙げられる。さらに、加水分解性基Xが、アセトキシ基である一般式(1)の化合物(アセトキシシラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がアセトキシ基で置換されたもの等が挙げられる。またさらに、加水分解性基Xが、イソシアネート基である一般式(1)の化合物(イソシアネートシラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がイソシアネート基で置換されたもの等が挙げられる。さらにまた、加水分解性基Xが、ヒドロキシル基である一般式(1)の化合物(ヒドロキシシラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がヒドロキシル基で置換されたもの等が挙げられる。
【0038】
これら一般式(1)で表される化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0039】
また、一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物を加水分解縮合して得られる樹脂、一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物と一般式(1)で表される化合物とを加水分解縮合して得られる樹脂、一般式(1)で表される化合物とその他の化合物とを加水分解縮合して得られる樹脂、一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物と一般式(1)で表される化合物とその他の化合物とを加水分解縮合して得られる樹脂、などを使用することもできる。
【0040】
一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物としては、例えば、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサ−n−プロポキシジシロキサン、ヘキサ−iso−プロポキシジシロキサン等のヘキサアルコキシジシロキサン、部分縮合が進んだトリシロキサン、テトラシロキサン、オリゴシロキサン等が挙げられる。
【0041】
上記「その他の化合物」としては、例えば、重合性の2重結合又は3重結合を有する化合物等が挙げられる。重合性の2重結合を有する化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−iso−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸フェニル、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アクリルアミド、アリルベンゼン、ジアリルベンゼン等やこれらの化合物が部分縮合したものなどが挙げられる。3重結合を有する化合物としてはアセチレン、エチニルベンゼン等が挙げられる。
【0042】
このようにして得られる樹脂は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0043】
一般式(1)で表される化合物を加水分解縮合させる際に用いる水の量は、一般式(1)で表される化合物1モル当たり0.1〜1000モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜100モルであり、特に好ましくは0.5〜20モルである。この水の量が0.1モル未満では加水分解縮合反応が十分に進行しない傾向にあり、水の量が1000モルを超えると加水分解中又は縮合中にゲル化物を生じる傾向にある。
【0044】
また、一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合において、触媒を使用することも好ましい。このような触媒の種類としては、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、金属キレート化合物等が挙げられる。
【0045】
酸触媒としては、例えば、有機酸及び無機酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、トリフルオロエタンスルフォン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0046】
アルカリ触媒としては、例えば、無機アルカリ及び有機アルカリなどが挙げられる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。有機アルカリとしては、例えば、ピリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、アンモニア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデカシルアミン、ドデカシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジシクロペンチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0047】
金属キレート化合物としては、例えば、トリメトキシ・モノ(アセチルアセトナト)チタン、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナト)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナト)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナト)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナト)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナト)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナト)チタン、ジメトキシ・ジ(アセチルアセトナト)チタン、ジエトキシ・ジ(アセチルアセトナト)チタン、ジn−プロポキシ・ジ(アセチルアセトナト)チタン、ジiso−プロポキシ・ジ(アセチルアセトナト)チタン、ジn−ブトキシ・ジ(アセチルアセトナト)チタン、ジsec−ブトキシ・ジ(アセチルアセトナト)チタン、ジtert−ブトキシ・ジ(アセチルアセトナト)チタン、モノメトキシ・トリス(アセチルアセトナト)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナト)チタン、モノn−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナト)チタン、モノiso−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナト)チタン、モノn−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナト)チタン、モノsec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナト)チタン、モノtert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナト)チタン、テトラキス(アセチルアセトナト)チタン、トリメトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジメトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジn−プロポキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジiso−プロポキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジn−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジsec−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジtert−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、モノメトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノn−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノiso−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノn−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノsec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノtert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンを有する金属キレート化合物、上記チタンを有する金属キレート化合物のチタンがジルコニウム、アルミニウム等に置換された化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0048】
一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合において、かかる触媒を用い加水分解を行うことが好ましいが、組成物の安定性が悪化する場合や触媒を含むことにより他材料への腐食等の影響が懸念される場合もある。そのような場合は、例えば、加水分解後に、上記触媒を組成物から取り除いたり、他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させたりしてもよい。取り除く方法や反応させる方法に特に制限はないが、蒸留やイオンクロマトカラム等を用いて取り除いてもよい。また、一般式(1)で表される化合物から得られる加水分解物は、再沈等により組成物から取り出されてもよい。また、反応により触媒としての機能を失活させる方法としては、例えば、触媒がアルカリ触媒の場合、酸触媒を添加して、酸塩基反応により中和したりpHを酸性側にしたりする方法が挙げられる。
【0049】
この触媒の使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して0.0001〜1モルの範囲であることが好ましい。この使用量が0.0001モル未満では実質的に反応が進行しない傾向にあり、1モルを超えると加水分解縮合時にゲル化が促進される傾向にある。
【0050】
さらに、この加水分解によって副生するアルコールはプロトン性溶媒であるため、エバポレータ等を用いて除去することが好ましい。
【0051】
このようにして得られる樹脂は、溶媒への溶解性、機械特性、成形性等の観点から、重量平均分子量(Mw)が、500〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であるとより好ましい。この重量平均分子量が500未満ではシリカ系被膜の成膜性が劣る傾向にあり、この重量平均分子量が20,000を超えると、溶媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0052】
下地への接着性及び機械強度を必要とする場合は、一般式(1)におけるSi原子1モルに対する、H原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子の総含有割合、すなわちシロキサン樹脂のシロキサン結合を形成しているSi原子の1原子あたりに結合しているH原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子の総数(これを、特定の結合原子(一般式(1)中のR)の総数(M)とする。)が、0.65以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましく、0.50以下であることが特に好ましく、0.45以下であることが極めて好ましい。この下限は0.20程度である。このようにすれば、シリカ系被膜の他の膜(層)への接着性及び機械強度の低下を抑制することができる。
【0053】
この特定の結合原子の総数(M)が0.20未満では、シリカ系被膜を絶縁膜として用いたときの誘電特性が劣る傾向にあり、0.65を超えると最終的に得られるシリカ系被膜の他の膜(層)との接着性や機械強度等が劣る傾向にある。また、上述の特定の結合原子のなかでも、シリカ系被膜の成膜性の点で、H原子、F原子、N原子、Si原子、Ti原子及びC原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を含むことが好ましく、それらのなかでも、誘電特性及び機械強度の点において、H原子、F原子、N原子、Si原子及びC原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を含むことがより好ましい。
【0054】
なお、特定の結合原子の総数(M)は、シロキサン樹脂の仕込み量から求めることができ、例えば、下記式(A);
M=(M+M/2)+(M/3))/Msi (A)
で表される関係を用いて算出できる。式中、Mは、特定の結合原子のうち単一の(ただ1つの)Si原子と結合している原子の総数を示し、Mは、特定の結合原子のうち2つのケイ素原子と結合している原子の総数を示し、Mは、特定の結合原子のうち3つのケイ素原子と結合している原子の総数を示し、Msiは、Si原子の総数を示す。
【0055】
例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)154.6gと、メチルトリエトキシシラン(MTES)120.6gと、を仕込んで加水分解縮合した樹脂のMの値は以下のようになる。
TEOS仕込量 154.6g
MTES仕込量 120.6g
TEOS分子量 208.3g/mol
MTES分子量 178.3g/mol
M={(120.6/178.3)×6.02×1023}/{(154.6/208.3)+(120.6/178.3)×6.02×1023}=0.48
【0056】
このようなシロキサン樹脂は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上のシロキサン樹脂を組み合わせる方法としては、例えば、異なる重量平均分子量を有する2種類以上のシロキサン樹脂を組み合わせる方法、異なる化合物を必須成分として加水分解縮合して得られる2種類以上のシロキサン樹脂を組み合わせる方法等が挙げられる。
【0057】
〈(b)成分〉
(a)成分を溶解可能である溶媒としては、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0058】
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ジ−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;アセトニトリル、N―メチルピロリジノン、N―エチルピロリジノン、N―プロピルピロリジノン、N―ブチルピロリジノン、N―ヘキシルピロリジノン、N―シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0059】
プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のエステル系溶媒などが挙げられる。
これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0060】
(b)成分を用いる方法は特に限定されないが、例えば、(a)成分を調製する際の溶媒として用いる方法、(a)成分を調製後、添加する方法、溶媒交換を行う方法、(a)成分を溶媒留去等で取り出して(b)溶媒を加える方法等がある。
【0061】
また、更に、本発明のシリカ系被膜形成用組成物は、必要に応じて水を含んでいてもよいが、目的とする特性を損なわない範囲であることが好ましい。
【0062】
この溶媒(非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒との合計)の配合割合は、(a)成分(シロキサン樹脂)の濃度(((a)成分/((a)成分+(b)成分))×100)が3〜25重量%となるような量であることが好ましい。この溶媒の配合割合が3重量%未満では安定性、成膜性等が劣る傾向があり、25重量%を超えると所望の膜厚を得ることが困難になる。
【0063】
〈(c)成分〉
オニウム塩化合物としては、例えば、(d−1)窒素含有化合物と、(d−2)アニオン性基含有化合物及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種とから形成される塩が挙げられる。上記(d−1)窒素含有化合物の窒素上に結合する原子は、H原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子、及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、上記アニオン性基としては、例えば、水酸基、硝酸基、硫酸基、カルボニル基、カルボキシル基、カーボネート基、フェノキシ基等が挙げられる。
【0064】
これらオニウム塩化合物としては、例えば、アンモニウムハイドロオキシド、アンモニウムフルオライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、ヨウ化アンモニウム、燐酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、蟻酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アンモニウム塩、フタル酸アンモニウム塩、マロン酸アンモニウム塩、コハク酸アンモニウム塩、酒石酸アンモニウム塩、リンゴ酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、酢酸アンモニウム塩、プロピオン酸アンモニウム塩、ブタン酸アンモニウム塩、ペンタン酸アンモニウム塩、ヘキサン酸アンモニウム塩、ヘプタン酸アンモニウム塩、オクタン酸アンモニウム塩、ノナン酸アンモニウム塩、デカン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、アジピン酸アンモニウム塩、セバシン酸アンモニウム塩、酪酸アンモニウム塩、オレイン酸アンモニウム塩、ステアリン酸アンモニウム塩、リノール酸アンモニウム塩、リノレイン酸アンモニウム塩、サリチル酸アンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、安息香酸アンモニウム塩、p−アミノ安息香酸アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸アンモニウム塩、メタンスルホン酸アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルフォン酸アンモニウム塩、トリフルオロエタンスルフォン酸アンモニウム塩、等のアンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0065】
また、上記アンモニウム塩化合物のアンモニウム部位がメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等に置換されたアンモニウム塩化合物なども挙げられる。
【0066】
上記したアンモニウム塩以外のオニウム塩として、例えば、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられるが、組成物の安定性の見地からアンモニウム塩であることが好ましく、4級アンモニウム塩であることがより好ましい。
【0067】
上記アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムオキサイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムフロライド、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等が挙げられ、シリカ系被膜の電気特性の見地から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等のアンモニウム塩が特に好ましい。
【0068】
これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0069】
これらオニウム塩の配合割合は、(a)シロキサン樹脂の総量に対して0.001〜0.5重量%であること、すなわち(a)シロキサン樹脂の総量100重量部に対して0.001〜0.5重量部であることが好ましく、(a)シロキサン樹脂の総量に対して0.001〜0.4重量%であること、すなわち(a)シロキサン樹脂の総量100重量部に対して0.001〜0.4重量部であることがより好ましく、(a)シロキサン樹脂の総量に対して0.001〜0.3重量%であること、すなわち(a)シロキサン樹脂の総量100重量部に対して0.001〜0.3重量部であることが特に好ましく、(a)シロキサン樹脂の総量に対して0.001〜0.2重量%であること、すなわち(a)シロキサン樹脂の総量100重量部に対して0.001〜0.2重量部であることがさらに好ましく、(a)シロキサン樹脂の総量に対して0.001〜0.1重量%であること、すなわち(a)シロキサン樹脂の総量100重量部に対して0.001〜0.1重量部であることが非常に好ましく、(a)シロキサン樹脂の総量に対して0.01〜0.1重量%であること、すなわち(a)シロキサン樹脂の総量100重量部に対して0.01〜0.1重量部であることが最も好ましい。この配合割合が0.001重量%未満では、最終的に得られるシリカ系被膜の電気特性、機械強度等が劣る傾向があり、0.5重量%を超えると組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向があり、さらにシリカ系被膜の平坦性、電気特性、プロセス適合性が劣る傾向がある。
【0070】
なお、これらのオニウム塩は、必要に応じて水や溶媒に溶解又は希釈してから、所望の濃度となるように添加することができる。また、添加する時期は特に限定されないが、例えば、(a)成分の加水分解を行う時点、加水分解中、反応終了時、溶媒留去前後、酸発生剤を添加する時などがある。
【0071】
また、オニウム塩を水溶液とした場合、そのpHが1.5〜10であると好ましく、2〜8であるとより好ましく、3〜6であると特に好ましい。このpHが範囲外では、組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向がある。
【0072】
〈その他の成分〉
また、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、さらに色素、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、無機充填剤、ポリプロピレングリコール等の熱分解性化合物、揮発性化合物などを添加してもよい。上記熱分解性化合物及び揮発性化合物は熱(好ましくは250〜500℃)により分解又は揮発し、空隙を形成可能であることが好ましい。また、(a)成分であるシロキサン樹脂に空隙形成能を付与してもよい。また、光酸発生剤、又は、光塩基発生剤を含有させ、放射線硬化性組成物とすることもできる。
【0073】
上記熱分解性化合物及び揮発性化合物としては、250〜500℃の加熱温度で熱分解性又は揮発性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ポリアルキレンオキサイド構造を有する重合体、(メタ)アクリレート系重合体、ポリエステル重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアンハイドライド重合体、テトラキスシラン類等が挙げられる。
【0074】
上記熱分解性化合物及び揮発性化合物が250℃を下回る温度で熱分解性又は揮発性を有するものであると、シロキサン骨格形成前に熱分解揮発してしまうため、所望の誘電特性が得られない恐れがある。一方、500℃を超える温度で熱分解性又は揮発性を有するものであると、配線金属の劣化が生じる恐れがある。したがって、かかる温度範囲で熱分解又は揮発するものであれば、配線金属の劣化を抑えつつ、絶縁膜の誘電特性を調整し易くなる利点がある。
【0075】
上記ポリアルキレンオキサイド構造としては、例えば、ポリエチレンオキサイド構造、ポリプロピレンオキサイド構造、ポリテトラメチレンオキサイド構造、ポリブチレンオキサイド構造等が挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩等のエーテルエステル型化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等のエーテルエステル型化合物などが挙げられる。
【0076】
また、(メタ)アクリレート系重合体を構成するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0077】
上記アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等の炭素数1〜6のアルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル等の炭素数1〜6のアルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチルなどが挙げられる。
【0078】
上記ヒドロキシル基を有するアクリル酸およびメタクリル酸としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルプロピル等が挙げられる。
【0079】
上記ポリエステルとしては、例えば、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物、ラクトンの開環重合物、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との重縮合物等が挙げられる。
【0080】
上記ポリカーボネートとしては、例えば、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリトリメチレンカーボネート、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等の炭酸とアルキレングリコールの重縮合物などが挙げられる。
【0081】
上記ポリアンハイドライドとしては、例えば、ポリマロニルオキシド、ポリアジポイルオキシド、ポリピメイルオキシド、ポリスベロイルオキシド、ポリアゼライルオキシド、ポリセバコイルオキシド等のジカルボン酸の重縮合物等が挙げられる。
【0082】
上記テトラキスシラン類としては、例えば、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン等が挙げられる。
【0083】
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0084】
なお、本発明のシリカ系被膜形成用組成物を電子部品に使用する場合は、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含有しないことが望ましく、含まれる場合でも組成物中のそれらの金属イオン濃度が100ppb以下であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましい。これらの金属イオン濃度が100ppbを超えると、組成物から得られるシリカ系被膜を有する半導体素子等の電子部品に金属イオンが流入し易くなって、デバイス性能そのものに悪影響を与えるおそれがある。したがって、必要に応じて、例えば、イオン交換フィルター等を使用してアルカリ金属やアルカリ土類金属を組成物中から除去することが有効である。しかし、光導波路や他の用途等に用いる際は、その目的を損なわないのであれば、この限りではない。
【0085】
このような本発明のシリカ系被膜形成用組成物を用いて、基板上にシリカ系被膜を形成する方法について、一般に成膜性及び膜均一性に優れるスピンコート法を例にとって説明する。ただし、シリカ系被膜形成方法はスピンコート法に限定されるものではない。また、基板は表面が平坦なものでも、電極等が形成され凹凸を有しているものであってもよい。これら基板として、上記の他にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリル、ナイロン、ポリエーテルサルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース等の有機高分子なども使用することができる。また、前記有機高分子等のプラスチックフィルムなども使用可能である。
【0086】
まず、シリカ系被膜形成用組成物をシリコンウエハ又はガラス基板等の基板上に好ましくは500〜5000回転/分、より好ましくは500〜3000回転/分でスピン塗布して被膜を形成する。この回転数が500回転/分未満では膜均一性が悪化する傾向があり、5000回転/分を超えると成膜性が悪化するおそれがある。
【0087】
シリカ系被膜の膜厚は使用用途により異なり、例えば、LSI等の層間絶縁膜に使用する際の膜厚は0.01〜2μmであることが好ましく、パッシベーション層に使用する際の膜厚は2〜40μmであることが好ましい。液晶用途に使用する際の膜厚は0.1〜20μmであることが好ましく、フォトレジストに使用する際の膜厚は0.1〜2μmであることが好ましく、光導波路に使用する際の膜厚は1〜50μmであることが好ましい。
通常、この膜厚は概して0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましく、0.01〜3μmであることが更に好ましく、0.01〜2μmであることが特に好ましく、0.1〜2μmであることが極めて好ましい。本発明のシリカ系被膜形成用組成物は、0.5〜2.0μmの膜厚に好ましく用いることができ、0.5〜1.5μmの膜厚により好ましく用いることができ、0.5〜1.0μmの膜厚に特に好ましく用いることができる。
【0088】
シリカ系被膜の膜厚を調整するためには、例えば、組成物中の(a)成分の濃度を調整してもよい。また、スピン塗布法を用いる場合、回転数と塗布回数を調整することにより膜厚を調整することができる。(a)成分の濃度を調整して膜厚を制御する場合は、例えば、膜厚を厚くする場合には(a)成分の濃度を高くし、膜厚を薄くする場合には(a)成分の濃度を低くすることにより制御することができる。また、スピン塗布法を用いて膜厚を調整する場合は、例えば、膜厚を厚くする場合には回転数を下げたり、塗布回数を増やしたりし、膜厚を薄くする場合には回転数を上げたり、塗布回数を減らしたりすることにより調整することができる。
【0089】
次いで、好ましくは50〜350℃、より好ましくは100〜350℃、更に好ましくは100〜300℃、特に好ましくは150〜300℃、極めて好ましくは200〜250℃でホットプレート等にて塗布膜中の有機溶媒を乾燥させる。この乾燥温度が50℃未満では、有機溶媒の乾燥が十分に行われない傾向がある。また、乾燥温度が350℃を越えると、例えばシリカ系被膜形成用組成物が熱分解揮発性化合物を含む場合に、その熱分解揮発性化合物がシロキサン骨格形成前に揮発しやすくなるため、シリカ系被膜の誘電特性が低下する、等の不具合が発生する傾向にある。このときの乾燥時間は1秒〜1時間であると好ましく、2秒〜10分であるとより好ましく、10秒〜5分であると更に好ましく、30秒〜3分であると特に好ましい。乾燥時間が1時間を超えるとスループットが低下する傾向にあり、乾燥時間が1秒を下回ると十分に乾燥できない傾向にある。
【0090】
次いで、有機溶媒が除去された塗布膜を好ましくは250〜500℃、より好ましくは350〜500℃の加熱温度で焼成して最終硬化を行う。このようにして、100kHz以上の高周波領域においても低い比誘電率を発現できるシリカ系被膜(Low−k膜)が形成される。なお、本発明における「比誘電率」とは、23℃±2℃、湿度40%±10%の雰囲気下で測定された値をいい、2.5以下であることが好ましい。また、比誘電率は、例えば、Al金属とN型低抵抗率基板(Siウエハ)間の電荷容量を測定することにより求められる。
【0091】
より詳しくは、以下のようにして求められる。まず、被膜の膜厚は0.5〜0.6μmになるように被膜を形成する。具体的には、低抵抗率シリコンウエハ(抵抗率<10Ωcm)上にスピンコート法で塗布した後、200℃に加熱したホットプレートで溶媒除去し、最後に窒素雰囲気下400℃/30分最終硬化することにより被膜を形成する。被膜形成後、真空蒸着装置でAl金属を直径2mm、厚さ約0.1μmになるように真空蒸着する。絶縁被膜がAl金属と低抵抗率シリコンウエハに挟まれた構造を形成して電荷容量を測定する。ここで、膜の膜厚は、ガートナー製のエリプソメータL116Bで測定された膜厚であり、具体的には被膜上にHe−Neレーザー照射し、照射により生じた位相差から求められる膜厚を用いる。
【0092】
被膜の比誘電率の測定は、Al金属と低抵抗率シリコンウエハ間の電荷容量を測定することにより行う。電荷容量は、LFインピーダンスアナライザー(横河電機製:HP4192A)に誘電体テスト・フィクスチャー(横河電機製:HP16451B)を接続させて測定する。測定時の周波数を1MHzとして測定された値を用いる。上記測定値を下記の式(2)に代入して、被膜の比誘電率を測定する。
(被膜の比誘電率)=3.597×10−2×(電荷容量[単位pF])×(被膜の膜厚[単位μm]) (2)
【0093】
なお、最終硬化は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で行うのが好ましく、この場合、酸素濃度が1000ppm以下であると好ましい。この加熱温度が250℃未満では、十分な硬化が達成されない傾向があり、500℃を超えると、金属配線層がある場合に、入熱量が増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。したがって、450℃以下の温度で最終硬化を行うことが好ましい。
【0094】
また、この硬化の際の加熱時間は2〜60分が好ましく、2〜30分であるとより好ましい。この加熱時間が60分を超えると、入熱量が過度に増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。また、加熱装置としては、石英チューブ炉その他の炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール(RTA)等の加熱処理装置を用いることが好ましい。
【0095】
本発明のシリカ系被膜の最終加熱工程後の比誘電率は、2.6以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。下限は通常1.5程度である。1.5を下回ると、機械強度の低下を招く恐れがあるので好ましくない。この比誘電率を低下させるためには、例えば、微細孔を導入する量を多くすることが有効である。しかし、微細孔の導入量をあまりに多くしすぎると、シリカ系被膜の機械強度の低下を招く恐れがある。
【0096】
また、本発明のシリカ系被膜は、弾性率が2.5GPa以上であることが好ましく、3.0GPa以上であることがより好ましく、3.5GPa以上であることが特に好ましく、4.0GPa以上であることが極めて好ましく、4.5GPa以上であることが最も好ましい。上限は特に制限はないが通常は30GPa程度である。この弾性率が2.5GPa未満では、例えば、半導体絶縁膜として使用する場合の加工時に問題が起こる可能性があるので好ましくない。弾性率の増大は、例えば、シリカ系被膜中に含有する空孔の割合を減少させることにより達成することができる。
【0097】
本発明において膜の弾性率とは、膜の表面近傍での弾性率であり、MTS社製のナノインデンターDCMを用いて得られた値を用いる。被膜の形成方法としては、シリコンウエハ上に被膜の膜厚が0.5〜0.6μmになるように回転塗布し、ホットプレートで溶媒除去をした後、425℃/30分硬化した被膜を用いる。被膜の膜厚が薄いと下地の影響を受けてしまうため好ましくない。表面近傍とは、膜厚の1/10以内の深度で、具体的には膜表面から深さ15〜50nm潜り込んだところでの弾性率を示す。
【0098】
また、荷重と荷重速度とは、下記式(3)で表されるような関係で変動させる。
dL/dt × 1/L = 0.05 [単位sec−1] (3)
ここでLは荷重を示し、tは時間を示す。また、押し込みを行う圧子には、バーコビッチ圧子(素材:ダイヤモンド)を用い、圧子の振幅周波数を45Hzに設定して測定する。
【0099】
また、本発明の被膜はシリカ系であるため、従来の有機系ポリマーからなる被膜と比較して耐熱性や耐湿性に優れたものである。
【0100】
本発明の膜の平坦率は、最終加熱過程後の膜厚が基板の凹部の深さに対して45%〜100%になるように塗布した時に、凹部の凹みが35%以下になることが好ましく、30%以下になることがより好ましい。
【0101】
平坦率は、日立社製のSEMであるS570で凹部の断面を観察することで算出する(図1参照)。より詳細には、幅750nm、深さ700nmの断面矩形凹部1の深さをAとし、その凹部1に充填された膜2の最深部までの深さをBとしたときに、下記式(4)で表される数値を平坦率とする。
(平坦率[単位%])=((A−B)/A)×100 (4)
【0102】
また、上記のようにして形成されたシリカ系被膜を用いた本発明による電子部品としては、半導体素子、多層配線板等のシリカ系被膜を有する電子デバイス、液晶用部品などが挙げられる。半導体素子としてはダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子などが挙げられる。多層配線板としては、MCM等の高密度配線板などが挙げられる。
【0103】
本発明のシリカ系被膜は、半導体素子においては、表面保護膜(パッシベーション膜)、バッファーコート膜、層間絶縁膜等として使用することができる。一方、多層配線板においては、層間絶縁膜として好適に使用することができる。かかる適用により、信号伝搬遅延時間の低減等の高性能化と同時に高信頼性を達成できる。
【0104】
液晶用部品等のディスプレイ用途に使用される場合には、シリカ系被膜の屈折率は1.35以下であることが好ましく、1.30以下であることがより好ましい。
【0105】
また、光導波路等の用途としても使用することができるが、使用用途はこの限りではなく、電子部品の製造に好適に使用できる。
【0106】
本発明のシリカ系被膜形成用組成物によって形成されるシリカ系被膜は、平坦性が優れるために表面に凹凸を有する基板のその表面にシリカ系被膜形成用組成物を塗布し、平坦性が優れるシリカ系被膜を得ることができる。表面に凹凸を有する基板としては、例えば、基板上に電極や配線のパターンが形成されて表面が凹凸を有する基板や、基板がパターン状にエッチングされて表面が凹凸を有する基板、等が挙げられる。
【0107】
これらの凹凸のパターンについては特に制限はないが、例えば、凸部高さ(又は凹部深さ)が100〜1000nm(より好ましくは250〜500nm)程度のパターンや、凹部幅が10〜1000nm(より好ましくは20〜100nm)程度のパターンであることが好ましく、これらのパターンを複数有している基板であることが好ましい。
【0108】
本発明のシリカ系被膜形成用組成物は、これらの基板に塗布することによって、平坦性が向上するため、例えば、シリカ系被膜形成用組成物の塗布量を低減させることが可能である。また半導体デバイスの多層配線において、下層配線の平坦性が悪いと上層配線がショートするなどの問題があるが、本発明のシリカ系被膜形成用組成物を用いれば、平坦性が良いため、配線ショートの低減が可能である。
【0109】
また、例えば、図1に示すような表面に凹凸を有する基板1にシリカ系被膜形成用組成物を塗布し、加熱によりシリカ系被膜2を形成した場合、基板1表面の凸部分上にもシリカ系被膜が形成される場合があるが、その時は必要に応じて研磨処理等を行うことによって除去することができる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0111】
〔実施例1(TMA0.05重量部)〕
テトラエトキシシラン77.3g及びメチルトリエトキシシラン60.3gをシクロヘキサノン270.8gに溶解させた溶液中に、60%硝酸0.44gを溶解させた水40.5gを攪拌下で10分間かけて滴下した。滴下終了後1.5時間反応させ、次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.95gを添加して、0.5時間反応させ、ポリシロキサン溶液を得た。その後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去し、ポリプロピレングリコール11.8gを添加し400gのシリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0112】
〔実施例2(TMA0.1重量部)〕
テトラエトキシシラン77.3g及びメチルトリエトキシシラン60.3gをシクロヘキサノン269.8gに溶解させた溶液中に、60%硝酸0.44gを溶解させた水40.5gを攪拌下で10分間かけて滴下した。滴下終了後1.5時間反応させ、次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液1.9gを添加して、0.5時間反応させ、ポリシロキサン溶液を得た。その後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去し、ポリプロピレングリコール11.8gを添加し400gのシリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0113】
〔実施例3(TMA0.3重量部)〕
テトラエトキシシラン77.3g及びメチルトリエトキシシラン60.3gをシクロヘキサノン266.0gに溶解させた溶液中に、60%硝酸0.44gを溶解させた水40.5gを攪拌下で10分間かけて滴下した。滴下終了後1.5時間反応させ、次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液5.7gを添加して、0.5時間反応させ、ポリシロキサン溶液を得た。その後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去し、ポリプロピレングリコール11.8gを添加し400gのシリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0114】
〔比較例1(TMA1.0重量部)〕
テトラエトキシシラン77.3g及びメチルトリエトキシシラン60.3gをシクロヘキサノン252.7gに溶解させた溶液中に、60%硝酸0.44gを溶解させた水40.5gを攪拌下で10分間かけて滴下した。滴下終了後1.5時間反応させ、次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液19gを添加して、0.5時間反応させ、ポリシロキサン溶液を得た。その後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去し、ポリプロピレングリコール11.8gを添加し400gのシリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0115】
〔比較例2(TMA2.0重量部)〕
テトラエトキシシラン77.3g及びメチルトリエトキシシラン60.3gをシクロヘキサノン233.8gに溶解させた溶液中に、60%硝酸0.44gを溶解させた水40.5gを攪拌下で10分間かけて滴下した。滴下終了後1.5時間反応させ、次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液37.8gを添加して、0.5時間反応させ、ポリシロキサン溶液を得た。その後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去し、ポリプロピレングリコール11.8gを添加し400gのシリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0116】
〔平坦性評価用被膜作製〕
実施例1〜3、並びに、比較例1及び2で作製したシリカ系被膜形成用組成物を幅750nm、深さ700nmの凹部を有するパターンウエハー上に、最終加熱過程(最終硬化)後の膜厚が凹部の深さに対して45%になるように、回転数2000〜3000rpmで30秒間回転塗布した(すなわち、平らなSiウエハー上にシリカ系被膜形成用組成物を塗布して最終加熱した後にシリカ系被膜の膜厚が700nmの45%になるような塗布条件で塗布した)。回転塗布後、250℃で3分間加熱した。その後、O濃度が100ppm前後にコントロールされている石英チューブ炉内で425℃で30分間かけて被膜を最終硬化した。
【0117】
〔電気特性(比誘電率)・膜強度(弾性率)測定用被膜作製〕
実施例1〜3、並びに、比較例1及び2で作製したシリカ系被膜形成用組成物をSiウエハー上に滴下後、シリカ系被膜の膜厚が0.5〜0.6μmになるように、回転数1000〜3000rpmで30秒間回転塗布した。回転塗布後、250℃で3分間加熱した。その後、O濃度が100ppm前後にコントロールされている石英チューブ炉内で425℃で30分間かけて被膜を最終硬化した。ここでシリカ系被膜の膜厚が薄いと下地の影響を受けてしまうため好ましくない。
【0118】
上記成膜方法により成膜されたシリカ系被膜に対して、以下の方法でシリカ系被膜の平坦性、電気特性及び膜強度評価を行った。
【0119】
〔平坦性評価〕
ここで、シリカ系被膜の膜厚は、ガートナー製のエリプソメータL116Bで測定された膜厚であり、具体的には被膜上にHe−Neレーザー照射し、照射により生じた位相差から求められる膜厚を用いた。そして、図1におけるBの値を求め、Aの値(本実施例ではパターンウエハーの凹部深さの700nmに該当する)とともに、上記式(4)に代入して平坦率を求めた。なお、平坦率は値が小さい程、平坦性が良好であることを示す。
【0120】
平坦率は、日立製作所社製の走査型電子顕微鏡S570を用いて凹部の断面を観察することで算出した。
【0121】
〔比誘電率測定〕
シリカ系被膜上にアルミニウム被膜を直径2mm、0.1μmの厚さに真空蒸着法で形成し、この試料の電荷容量を、LFインピーダンスアナライザー(横河電機社製:HP4192A)に、誘電体テスト・フィクスチャー(横河電機製:HP16451B)を接続した装置を用いて、温度23±2℃、湿度40±10%、使用周波数1MHzの条件で測定した。そして、電荷容量の測定値を上記式(2)に代入し、シリカ系被膜の比誘電率を算出した。
【0122】
〔弾性率測定〕
ナノインデンターSA2(DCM、MTS社製)を用いて、温度:23℃±2℃、周波数:75Hz、弾性率の測定範囲:層間絶縁膜厚の1/10以下で、押し込み深さで変動しない範囲の条件下で、シリカ系被膜の弾性率を測定した。
【0123】
〔評価結果〕
結果を表1に示す。
【0124】
【表1】



【0125】
本発明の(a)シロキサン樹脂、(b)(a)成分を溶解可能な溶媒、及び、(c)オニウム塩を含有してなるシリカ系被膜形成用組成物で、(c)成分の配合割合が(a)成分の総量に対して0.001〜0.5重量%であるシリカ系被膜形成用組成物を用いた実施例1〜3は、平坦性に優れる。また、十分な低誘電性、機械強度を有する。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のシリカ系被膜形成用組成物、及び、シリカ系被膜の形成方法は、平坦性が優れるシリカ系被膜を得ることができ、電子部品に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】平坦率を説明するための模式断面図である。
【符号の説明】
【0128】
1…基板、2…基板凹部に埋め込まれたシリカ系被膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シロキサン樹脂、(b)前記(a)成分を溶解可能な溶媒、及び、(c)オニウム塩を含有してなるシリカ系被膜形成用組成物であって、前記(c)成分の配合割合が前記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.5重量部であるシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(a)シロキサン樹脂として、下記一般式(1);
SiX4−n (1)
(式中、Rは、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物を加水分解縮合して得られる樹脂を含む、請求項1記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(a)シロキサン樹脂として、シロキサン樹脂のシロキサン結合を形成しているSi原子の1原子あたりに結合しているH原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子の総数が0.65以下の樹脂を含む、請求項1又は2記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項4】
前記(c)オニウム塩の配合割合が前記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.4重量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項5】
前記(c)オニウム塩の配合割合が前記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.3重量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項6】
前記(c)オニウム塩の配合割合が前記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.2重量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項7】
前記(c)オニウム塩の配合割合が前記(a)成分の総量100重量部に対して0.001〜0.1重量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項8】
前記(c)オニウム塩の配合割合が前記(a)成分の総量100重量部に対して0.01〜0.1重量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項9】
表面に凹凸を有する基板上へ塗布される請求項1〜8のいずれかに一項記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項10】
基板上にシリカ系被膜を形成する方法であって、請求項1〜9のいずれかに一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜に含まれる有機溶媒を除去した後、該塗布膜を焼成するシリカ系被膜の形成方法。
【請求項11】
前記シリカ系被膜形成用組成物を塗布する前記基板の表面が凹凸を有する、請求項10記載のシリカ系被膜の形成方法。
【請求項12】
基板上に設けられており、請求項10又は11記載のシリカ系被膜の形成方法により形成されてなるシリカ系被膜。
【請求項13】
基板上に請求項12記載のシリカ系被膜が形成されてなる電子部品。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−213908(P2006−213908A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231198(P2005−231198)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】