説明

トランジスタアレイパネル及びトランジスタアレイパネルの製造方法

【課題】トランジスタアレイパネルの表面がキャパシタの上の部分と配線の上の部分との間で段差のないようにすること。
【解決手段】信号線群Yをパターニングするとともにトランジスタ21のゲート21g及びキャパシタ24の電極24aをパターニングし、ゲート絶縁膜31を成膜する。半導体膜81をゲート絶縁膜31上に成膜し、チャネル保護膜21pをパターニングするとともに絶縁膜72を信号線群Yに重ねるようにパターニングする。オーミック膜21a,21bをパターニングし、エッチングによって半導体膜81から半導体膜71及び半導体膜21cを得る。走査線X、供給線Zをパターニングするとともに、トランジスタ21のソース21s、ドレイン21d及びキャパシタ24の電極24bをパターニングする。保護絶縁膜32を成膜し、平坦化膜33を成膜し、画素ごとに有機EL素子Lをパターニングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタ及びキャパシタを画素ごとに設けたトランジスタアレイパネルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンスという用語をELと略称する。)はアノード、有機EL層、カソードの順に積層した自発光素子である。そして、有機EL素子を画素に用いたELディスプレイパネルの研究開発が進んでいる。
【0003】
特許文献1に記載されているように、アクティブマトリクス駆動方式のELディスプレイパネルでは1画素につき複数の薄膜トランジスタが設けられており、薄膜トランジスタによって有機EL素子を発光させる。また、各画素の薄膜トランジスタが有機EL素子に電流を流し続けるために各画素にはコンデンサ、つまりキャパシタが設けられている。
【0004】
アクティブマトリクス駆動方式のディスプレイパネルを製造するに際しては、薄膜トランジスタを画素ごとにパターニングしてトランジスタアレイパネルを作製した後に、そのトランジスタアレイパネルの表面に有機EL素子を画素ごとにパターニングすることが好ましい。薄膜トランジスタの後に有機EL素子をパターニングするのは、薄膜トランジスタを形成する際の温度が有機EL素子の耐熱温度を超えてしまうためである。
【0005】
このようなトランジスタアレイパネルには、薄膜トランジスタ及びキャパシタの他に信号線や走査線といった配線が設けられているが、走査線は例えば薄膜トランジスタのゲートとなるゲートメタルをパターニングして形成され、信号線は薄膜トランジスタのソース・ドレインとなるソース・ドレインメタルをパターニングして形成される。また、キャパシタの一対の電極はそれぞれ薄膜トランジスタのゲートメタル、ソース・ドレインメタルをパターニングして形成される。
【0006】
また、トランジスタアレイパネルの表面には保護膜が一面に成膜され、保護膜によって薄膜トランジスタ、キャパシタ、信号線及び走査線が覆われている。
【0007】
有機EL素子のパターニングに際しては、アノードとカソードのうちの一方を画素電極として画素ごとにトランジスタアレイパネルの表面にパターニングし、各画素電極に有機EL層を積層し、アノードとカソードのうちの他方を共通の対向電極として一面に成膜する。
【特許文献1】特開平8−330600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、信号線及び走査線は、重なり寄生容量を最低限とするために交差領域を除くとほとんど重ならない構造になっている。このため、これら配線の交差領域以外では、ゲートメタルやソース・ドレインメタルのいずれか一方の厚さ分は堆積されるが、他方の厚さ分が堆積されていない。対してキャパシタでは、ゲートメタルやソース・ドレインメタルの両方が堆積されているので、配線領域とキャパシタ領域とでは段差が生じてしまう。このような段差は、その上に絶縁膜を被覆しても容易に緩和されず、画素電極を形成する領域まで段差による影響が及ぶ。画素電極が段差によって凹凸を生じてしまうと、有機EL層の膜厚が一様にならなかったり、有機EL層が部分的に途切れて画素電極と共通電極がショートしたりする虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点を解決しようとしてなされたものであり、トランジスタアレイパネルの表面がキャパシタの部分と配線の部分との間で段差を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本発明のトランジスタアレイパネルは、複数の層で構成されるトランジスタを有する画素回路と、キャパシタと、前記画素回路に接続される配線と、前記配線に重なるように前記配線の延在方向に沿って設けられ、前記トランジスタの複数の層となる層のうちの少なくとも1つの層で形成された段差抑制用の膜と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のトランジスタアレイパネルの製造方法は、複数の層で構成されるトランジスタを有する画素回路に接続される配線を形成し、キャパシタを形成し、前記配線に重なるように前記配線の延在方向に沿って、前記トランジスタの複数の層となる層のうちの少なくとも1つの層で段差抑制用の膜を形成することを特徴とする。
【0012】
また本発明のトランジスタアレイパネルは、トランジスタを有する画素回路と、キャパシタと、前記画素回路に接続される配線と、前記キャパシタに重なることなく、且つ前記配線に重なるように前記配線の延在方向に沿って設けられた段差抑制用の膜と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このような製造方法の好適な例として、トランジスタのゲートと、キャパシタの一方の電極と、配線とを絶縁基板上に同時にパターニングし、前記ゲート、前記一方の電極及び前記配線をゲート絶縁膜で被覆し、段差抑制用の膜を前記配線と重ねるよう前記ゲート絶縁膜上にパターニングし、トランジスタのソース・ドレインと、キャパシタの他方の電極とをパターニングする。
【0014】
上記製造方法において、前記トランジスタの半導体膜を前記ゲート絶縁膜の上にパターニングするのと同時に前記段差抑制用の膜をパターニングしたり、前記トランジスタのオーミック膜を前記ゲート絶縁膜の上にパターニングするのと同時に前記段差抑制用の膜をパターニングしたり、前記トランジスタの半導体膜を保護するためのチャネル保護膜を前記ゲート絶縁膜の上にパターニングするのと同時に前記段差抑制用の膜をパターニングしたりすることが好ましい。
【0015】
以上のように、トランジスタの半導体膜をゲート絶縁膜の上にパターニングするのと同時に段差抑制用の膜をパターニングしたので、トランジスタの半導体膜のパターニング用マスクを変更するだけで、段差抑制用の膜を形成することができる。同様に、トランジスタのチャネル保護膜のパターニング用マスクを変更したり、薄膜トランジタのオーミック膜のパターニング用マスクを変更したりするだけで、段差抑制用の膜を形成することができる。そのため、段差抑制用の膜のために工程を増やす必要がない。
【0016】
上記製造方法において、前記配線と重ねるよう樹脂を塗布することによって前記段差抑制用の膜をパターニングしたりすることが好ましい。
【0017】
以上のように、段差抑制用の膜をトランジスタとは別にパターニングするので、段差抑制用の膜厚をトランジスタの各膜の膜厚に関係せずに調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キャパシタの部分と配線の部分との間で段差を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
図1は、ELディスプレイパネル1の等価回路図である。
ELディスプレイパネル1を平面視すると、複数の走査線X及び複数の供給線Zが互いに平行となって行方向に延在し、信号線群Yが互いに平行となって列方向に延在している。走査線Xと信号線群Yが互いに絶縁され、走査線Xと信号線群Yが平面視して互いに直交している。同様に、供給線Zと信号線群Yが互いに絶縁され、供給線Zと信号線群Yが平面視して互いに直交している。信号線群Yと直交する方向(行方向)に並列される画素群は互いに同じ色に発光する。そして、信号線群Yの延在方向(列方向)に沿って連続して配置される3つの画素は互いに異なる色、具体的には赤、緑、青にそれぞれ発光する。このため、信号線群Yは、赤色に発光する画素群に接続される信号線Yと、緑色に発光する画素群に接続される信号線Yと、青色に発光する画素群に接続される信号線Yと、で構成されている。したがって、信号線Y、信号線Y、信号線Yは、行方向に隣接する2つの画素の間を、ひとまとめになって且つ互いに離間しながら列方向に沿って配列されることになる。また、各画素には画素回路Pが設けられ、これら画素回路Pが画素同様にマトリクス状に配列されている。赤の画素については画素回路Pが走査線Xと信号線Yとの交差部において走査線X、信号線Y及び供給線Zに接続され、緑の画素については画素回路Pが走査線Xと信号線Yとの交差部において走査線X、信号線Y及び供給線Zに接続され、青の画素については画素回路Pが走査線Xと信号線Yとの交差部において走査線X、信号線Y及び供給線Zに接続されている。つまり、各画素回路Pは、信号線Y、信号線Y、信号線Yのうちのいずれか一つと接続されている。また、1画素につき1つのエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)素子Lが設けられ、各エレクトロルミネッセンス素子Lは一端がそれぞれ画素回路Pに接続され、他端が共通電位VCOM(例えば接地)に接続されている。
【0021】
画素回路Pは信号線Y(又は、信号線Y、信号線Y)の階調信号(電圧信号又は電流信号)及び走査線Xの走査信号に基づき、供給線Zからエレクトロルミネッセンス素子Lに電流を流すものであり、これによりエレクトロルミネッセンス素子Lが走査信号に応じたタイミングで、また階調信号に応じた強度で発光する。画素回路Pは、複数の薄膜トランジスタと、キャパシタとから構成されている。
【0022】
図2は、このELディスプレイパネル1の1画素の断面図である。図2においては、1画素の画素回路Pのうち1つの薄膜トランジスタであるトランジスタ21がチャネル長方向に平行な断面で破断された状態で示されている。他のトランジスタもトランジスタ21と同一の積層構造を有し、トランジスタ21と画素回路P内の他のトランジスタは何れも気相成長法(スパッタリング、CVD法、PVD法等)、フォトリソグラフィー法、エッチング法によって同時にパターニングされるので、トランジスタ21について特に説明し、他のトランジスタについての説明は省略する。
【0023】
トランジスタ21は絶縁基板2上に設けられた逆スタガ構造のトランジスタである。具体的には、トランジスタ21は、絶縁基板2上に形成されたゲート21gと、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート21gに対向した半導体膜21cと、半導体膜21cの中央部上に形成されたチャネル保護膜21pと、半導体膜21cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜21pに一部重なったオーミック膜21a,21bと、オーミック膜21a上に形成されたドレイン21dと、オーミック膜21b上に形成されたソース21sとを具備する。なお、トランジスタ21は、チャネル幅を長くするために平面視してチャネルがU字状やZ字状のように蛇行して形成されていてもよい。
【0024】
ゲート絶縁膜31及びチャネル保護膜21pは、SiO2又はSiNからなる。半導体膜21cは、真性アモルファスシリコン又は真性ポリシリコンを有する。オーミック膜21a,21bは、導電型不純物(例えば、リン)を含んだアモルファスシリコン又はポリシリコン(n+Si)を有する。
【0025】
トランジスタ21の近傍には、キャパシタ24が設けられている。キャパシタ24は、トランジスタ21のゲート21gと一体形成された電極24aと、トランジスタ21のドレイン21dと一体形成されるとともにゲート絶縁膜31を挟んで電極24aに対向した電極24bとを具備する。
【0026】
トランジスタ21のゲート21g、キャパシタ24の電極24aは、気相成長法によって絶縁基板2上に成膜された導電性のゲートレイヤー(例えば、AlとTiからなる導電膜)をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。
【0027】
絶縁基板2上には、信号線群Yが形成されている。信号線群Yは、ゲートレイヤーのパターニングによってトランジスタ21のゲート21g及びキャパシタ24の電極24aと同時に形成されたものである。そして、ゲート21g、電極24a及び信号線群Yは、共通のゲート絶縁膜31によって被覆されている。
【0028】
ゲート絶縁膜31上には、段差抑制用の半導体膜71がキャパシタ24に重なることなく信号線群Yに重なるように信号線群Yに沿って成膜されている。半導体膜71は、気相成長法によってゲート絶縁膜31上に成膜されたべた一面の半導体膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものであり、トランジスタ21の半導体膜21cと同時に形成されたものである。
【0029】
半導体膜71には段差抑制用の絶縁膜72がキャパシタ24に重なることなく積層されている。絶縁膜72は、気相成長法によって成膜されたべた一面の絶縁膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものであり、トランジスタ21のチャネル保護膜21pとなる絶縁膜をパターニングしてチャネル保護膜21pと同時に形成されたものである。
【0030】
トランジスタ21のドレイン21d及びソース21s並びにキャパシタ24の電極24bは、気相成長法によってべた一面に成膜された導電性のドレインレイヤー(例えば、Cr膜にAlとTiからなる膜を積層したもの)をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。走査線X及び供給線Zは、ドレインレイヤーのパターニングによってソース21s、ドレイン21d及び電極24bと同時に形成されたものである。そして、ソース21s、ドレイン21d、電極24b、走査線X及び供給線Zは、SiO2又はSiNからなる共通の保護絶縁膜32によって被覆されている。
【0031】
信号線群Yの上層には、ドレインレイヤーが堆積されていないが、半導体膜71及び絶縁膜72が成膜されているため、保護絶縁膜32の表面は信号線群Yの上の部分とキャパシタ24の上の部分との間の段差が抑制され、その段差が非常に小さくなる。
【0032】
保護絶縁膜32には、感光性樹脂を硬化させた平坦化膜33が積層されている。平坦化膜33の表面が平坦となり、トランジスタ21、キャパシタ24、走査線X、信号線群Y及び供給線Zによる凹凸が平坦化膜33によって解消されている。
【0033】
なお、絶縁基板2から平坦化膜33までの積層構造がトランジスタアレイパネル50である。
【0034】
平坦化膜33上には、有機EL素子Lのアノードである画素電極20aが画素ごとに形成されており、複数の画素電極20aがマトリクス状に配列されている。画素電極20aは信号線群Yに重なるとともにキャパシタ24に重なっていてもよく、重なることなくキャパシタ24の近傍に設けられていてもよい。半導体膜71及び絶縁膜72によって信号線群Yの上の部分とキャパシタ24の上の部分との間の段差が抑制されているから平坦化膜33を極端に厚くしなくても、平坦化膜33の表面はほぼ平坦な状態となっているので、その上に形成される画素電極20aが凹凸が生じない。
各画素回路Pのうち、ゲートが走査線Xに接続されるべきトランジスタは、ゲート絶縁膜31に設けられたコンタクトホール51を介してゲートが走査線Xと接続されている。
各画素回路Pのうち、ソース又はドレインが信号線Y、信号線Y、信号線Yのいずれかに接続されるべきトランジスタは、ゲート絶縁膜31に設けられたコンタクトホール52を介してソース又はドレインが信号線Y、信号線Y、信号線Yのいずれかと接続されている。
【0035】
画素電極20aは、気相成長法によって平坦化膜33上に成膜された導電性膜(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO))をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。それぞれの画素においてコンタクトホール91が平坦化膜33及び保護絶縁膜32を貫通するよう形成され、コンタクトホール91に埋められた導電性パッド92によって画素電極20aとキャパシタ24の電極24bが接続されている。
【0036】
平坦化膜33上には、画素電極20aの他に隔壁41が設けられている。隔壁41は、画素電極20aの間を縫うように網目状に形成されている。隔壁41の下にトランジスタ21があり、隔壁41の一部がトランジスタ21に重なっている。隔壁は少なくとも表面が電気的に絶縁されている。
【0037】
画素電極20a上には、有機EL素子Lの有機EL層20bが積層されている。有機EL層20bは、有機化合物含有層を二層以上積層したものである。ここでは、有機EL層20bは、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)からなる正孔輸送層と、ポリフェニレンビニレン系やポリフルオレン系発光材料からなる発光層とをこれらの順に積層したものである。なお、有機EL層20bが、画素電極20aから順に正孔輸送層、発光層、電子輸送層となる三層構造であっても良いし、画素電極20aから順に発光層、電子輸送層となる二層構造であっても良いし、その他の積層構造であっても良い。
【0038】
有機EL層20bは、湿式塗布法(例えば、インクジェット法)によって成膜される。この場合、正孔輸送層となるPEDOT及びPSSを含有する有機化合物含有液を画素電極20aに塗布し、その後、発光層となるポリフルオレン系発光材料を含有する有機化合物含有液を塗布するが、隔壁41が設けられているので、隣り合う画素電極20aに塗布された有機化合物含有液が隔壁41を越えて混ざり合うことを防止することができる。
【0039】
赤用画素には赤色に発光する有機EL層20bが成膜され、緑用画素には緑色に発光する有機EL層20bが成膜され、青用画素には青色に発光する有機EL層20bが成膜され、互いの間に介在する隔壁41によって混じり合うことなく形成される。
【0040】
有機EL層20b上には、有機EL素子Lのカソードである対向電極20cが成膜されている。対向電極20cは、全ての画素に共通して形成された共通電極であり、べた一面に成膜されている。
【0041】
対向電極20cは、画素電極20aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、具体的には、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。また、対向電極20cは、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていても良いし、以上の各種材料の層に加えて金属層が堆積した積層構造となっていても良い。ボトムエミッション型の場合、例えば、対向電極20cは、有機EL層20b側に設けられた低仕事関数の高純度のバリウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造であるか、又は、有機EL層20b側に設けられたリチウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造である。
【0042】
なお、ELディスプレイパネル1がトップエミッション型である場合、対向電極20cを透明な電極とし、画素電極20aを光反射性の電極とする。この場合、画素電極20aを、下層の反射性導電層と、反射性導電層に積層され、金属酸化物からなる上層の透明導電層とからなるものとしても良い。
【0043】
次に、ELディスプレイパネル1の製造方法について説明する。
【0044】
まず、図3〜図6の工程図のようにしてトランジスタアレイパネル50を製造する。トランジスタアレイパネル50の製造工程は次のようになる。
【0045】
図3に示すように、ゲートレイヤーをトランジスタアレイパネル50上面に被覆し、気相成長法、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を順に行うことによって、信号線Y、信号線Y及び信号線Yをパターニングするとともに、同時にトランジスタ21のゲート21g及びキャパシタ24の電極24aをパターニングする。次に、気相成長法によってゲート絶縁膜31を成膜する。
【0046】
次に、気相成長法によって半導体膜81をゲート絶縁膜31上に成膜する。次に、気相成長法によってチャネル保護膜21pとなる絶縁膜を全面に被膜してから、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を順に行うことによって、トランジスタ21ごとにチャネル保護膜21pをパターニングするとともに、同時にこの絶縁膜から絶縁膜72を信号線Y、信号線Y及び信号線Yに重ねるようにパターニングする。チャネル保護膜21pと同時に絶縁膜72を形成したら、絶縁膜72のパターニングのために工程を増やす必要がなくなる。
【0047】
次に、図4に示すように、気相成長法、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を順に行うことによって、トランジスタ21ごとにオーミック膜21a,21bをパターニングする。
【0048】
次に、図5に示すように、半導体膜81をエッチャントでエッチングするが、エッチングする際のフォトレジストマスク、オーミック膜21a,21b、チャネル保護膜21p及び絶縁膜72がエッチャントから半導体膜81を保護するためのエッチングブロックとして機能する。半導体膜81の形状加工によって、半導体膜71及び半導体膜21cを得る。半導体膜21cと同時に半導体膜71を形成したら、半導体膜71のパターニングのために工程を増やす必要がなくなる。
【0049】
次に、コンタクトホール51及びコンタクトホール52をゲート絶縁膜31に形成してから、ドレインレイヤーをトランジスタアレイパネル50上面に被覆し、気相成長法、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を順に行うことによって、走査線X、供給線Zをパターニングするとともに、同時にトランジスタ21のソース21s、ドレイン21d及びキャパシタ24の電極24bをパターニングする。このとき、画素回路Pのトランジスタが、適宜、走査線X又は信号線Y(又は信号線Y、信号線Y)と接続することになる。
【0050】
次に、図6に示すように、気相成長法によって保護絶縁膜32をべた一面に成膜する。
【0051】
次に、ディップコート法、スピンコート法等により樹脂を保護絶縁膜32に塗布し、その樹脂を硬化させることによって平坦化膜33を成膜する。以上によりトランジスタアレイパネル50を製造する。
【0052】
トランジスタアレイパネル50の製造後、画素ごとにコンタクトホール91を形成して導電性パッド92を埋設し、気相成長法、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を順によって画素電極20aをパターニングする。次に、スピンコート法、ディップコート法等によって平坦化膜33に感光性樹脂を塗布し、その感光性樹脂を露光・現像することによって隔壁41を形成する。
【0053】
次に、正孔注入材料を含む有機化合物含有液を画素電極20aに塗布し、その有機化合物含有液の硬化後、ポリフェニレンビニレン系やポリフルオレン系発光材料を含む有機化合物含有液を塗布する。有機化合物含有液が乾燥して被膜することにより画素ごとに発光層20bがパターニング形成される。塗布方法としてはインクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いて、色ごとに塗り分けを行う。発光層20bをパターニングするに際して、平坦化膜33、半導体膜71及び絶縁膜72によって画素電極20aが凹凸もなくほぼ平坦な状態となっているので、発光層20bが途切れることなく、画素電極20a全体を発光層20bによって覆うことができる。
【0054】
次に、気相成長法により対向電極20cをべた一面に成膜する。具体的には、真空蒸着法によってCa又はBaの薄膜をべた一面に成膜し、その上に、ボトムエミッションの場合、Al等の不透明導電層を、トップエミッションの場合、ITO等の透明導電層をべた一面に成膜する。上述したように、発光層20bが途切れることなく、画素電極20a全体が発光層20bに覆われているので、画素電極20aと対向電極20cのショートを防止することができる。
【0055】
〔変形例1〕
上記実施形態では、信号線群Yの上において半導体膜71及び絶縁膜72がゲート絶縁膜31に積層されているが、図7に示すように半導体膜71及び段差抑制用オーミック膜73が順に積層されていても良いし、図8に示すように半導体膜71、段差抑制用オーミック膜73及び絶縁膜72が順に積層されていても良い。ここでの、段差抑制用オーミック膜73は、トランジスタ21のオーミック膜21a,21bの元となるべた一面のオーミック層をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによってオーミック膜21a,21bとともに形成されたものである。
【0056】
図7の場合のELディスプレイパネルの製造方法について説明する。上記した製造方法の場合と同様に、信号線Y、信号線Y、信号線Y、トランジスタ21のゲート21g及びキャパシタ24の電極24aをパターニングし、次にゲート絶縁膜31を成膜する。次に、半導体膜81をべた一面に成膜し、トランジスタ21ごとにチャネル保護膜21pをパターニングする。次に、オーミック膜21a,21b及び段差抑制用オーミック膜73となるオーミック膜を気相成長法によって成膜し、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を順に行うことによって、トランジスタ21ごとにオーミック膜21a,21bをパターニングするとともに、同時にオーミック膜73を信号線Y、信号線Y及び信号線Yに重ねるようにパターニングする。次に、半導体膜81をエッチャントでエッチングするが、エッチングする際のフォトレジストマスク、オーミック膜21a,21b、チャネル保護膜21p及びオーミック膜73がエッチャントから半導体膜81をエッチャントから保護するためのエッチングブロックとして機能する。半導体膜81の形状加工によって、半導体膜71及び半導体膜21cを得る。次に、走査線X、供給線Zをパターニングするとともに、同時にトランジスタ21のソース21s、ドレイン21d及びキャパシタ24の電極24bをパターニングする。次に、上述した場合と同様に、保護絶縁膜32をべた一面に成膜し、平坦化膜33を成膜し、画素電極20aをパターニングし、隔壁41をパターニングし、発光層20bをパターニングし、対向電極20cを成膜する。
【0057】
図8の場合のELディスプレイパネルの製造方法について説明する。上記した製造方法の場合と同様に、信号線Y、信号線Y、信号線Y、トランジスタ21のゲート21g及びキャパシタ24の電極24aをパターニングし、次にゲート絶縁膜31を成膜する。次に、半導体膜81をべた一面に成膜し、トランジスタ21ごとにチャネル保護膜21pをパターニングするとともに、同時に絶縁膜72を信号線Y、信号線Y及び信号線Yに重ねるようにパターニングする。次に、オーミック膜21a,21b及び段差抑制用オーミック膜73となるオーミック膜を気相成長法によって成膜し、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を順に行うことによって、トランジスタ21ごとにオーミック膜21a,21bをパターニングするとともに、同時にオーミック膜73を信号線Y、信号線Y及び信号線Yに重ねるようにパターニングする。引き続きオーミック膜21a,21b及び段差抑制用オーミック膜73の下層に位置する半導体膜81をエッチャントでエッチングするが、エッチングする際のフォトレジストマスク、オーミック膜21a,21b、チャネル保護膜21p及びオーミック膜73がエッチャントから半導体膜81を保護するためのエッチングブロックとして機能する。このようにして半導体膜81の形状加工によって、半導体膜71及び半導体膜21cを得る。次に、走査線X、供給線Zをパターニングするとともに、同時にトランジスタ21のソース21s、ドレイン21d及びキャパシタ24の電極24bをパターニングする。次に、上述した場合と同様に、保護絶縁膜32をべた一面に成膜し、平坦化膜33を成膜し、画素電極20aをパターニングし、隔壁41をパターニングし、発光層20bをパターニングし、対向電極20cを成膜する。
【0058】
なお、信号線Y、信号線Y及び信号線Yの上において、オーミック膜73及び絶縁膜72を形成せずに半導体膜71をパターニングしても良いし、オーミック膜73及び半導体膜71を形成せずに絶縁膜72をパターニングしても良いし、半導体膜71及び絶縁膜72をパターニングせずにオーミック膜73をパターニングしても良いし、半導体膜71を形成せずに絶縁膜72及びオーミック膜73を順に積層しても良い。
【0059】
〔変形例2〕
上記実施形態では、トランジスタ21のパターニングと同時に半導体膜71及び絶縁膜72をパターニングしたが、図9に示すように、半導体膜71及び絶縁膜72をパターニングせずに、段差抑制用の有機膜74を信号線Y、信号線Y及び信号線Yに重ねるようにパターニングしても良い。この有機膜74は、熱硬化型又は紫外線硬化型の樹脂を信号線Y、信号線Y及び信号線Yに重ねるようにして保護絶縁膜32に塗布することによってパターニングされたものである。有機膜74のパターニングタイミングは、保護絶縁膜32の成膜後、平坦化膜33の成膜前である。有機膜74が信号線Y、信号線Y及び信号線Yの上にパターニングされることで、保護絶縁膜32の表面は信号線Y、信号線Y及び信号線Yとキャパシタ24との間の段差が解消され、その段差が非常に小さくなる。なお、図9のELディスプレイパネルの製造方法は、半導体膜71及び絶縁膜72をパターニングせずに、有機膜74をパターニングしたことを除いて上記実施形態の場合と同様である。
【0060】
段差抑制用の有機膜74をトランジスタ21とは別にパターニングするので、有機膜74の膜厚をトランジスタ21の各膜の膜厚に関係せずに調整することができる。そのため、キャパシタ24の上の部分と信号線Y、信号線Y及び信号線Yの上の部分との間の段差を更に精度良く解消することができる。
【0061】
〔変形例3〕
上記実施形態、変形例では、走査線X及び供給線Zがドレインレイヤーから形成され、信号線Y、信号線Y及び信号線Yがゲートレイヤーから形成されていたが、信号線Y、信号線Y及び信号線Yがドレインレイヤーから形成され、走査線X及び供給線Zがゲートレイヤーから形成されていても良い。この場合、上記実施形態や変形例のように、走査線X及び供給線Zに重ねるように半導体膜71、絶縁膜72、オーミック膜73又は有機膜74を積層する。
【0062】
〔変形例4〕
上記実施形態、変形例では、段差を抑制するために画素回路P内のトランジスタに用いられる層を信号線Y、信号線Y及び信号線Yに沿って積層したが、これに限らず上記実施形態又は変形例のように画素回路P内のトランジスタに用いられる層を走査線Xに沿って積層して、走査線Xとキャパシタ24との間の段差を抑制してもよい。
【0063】
〔変形例5〕
上記実施形態、変形例では、変形例2を除き、いずれも段差を抑制するための膜が複数積層されたが、単層であってもよい。つまり、段差抑制用の半導体膜71のみ、又は段差抑制用の絶縁膜72のみ、又は段差抑制用のオーミック膜73のみであってもよい。
上記実施形態、変形例は、整合性のある限り複数組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】ELディスプレイパネル1の等価回路図である。
【図2】ELディスプレイパネル1の1画素の断面図である。
【図3】ELディスプレイパネル1の製造方法における一工程を示した図である。
【図4】図3の次の工程を示した図である。
【図5】図4の次の工程を示した図である。
【図6】図5の次の工程を示した図である。
【図7】ELディスプレイパネル1の変形例における1画素の断面図である。
【図8】ELディスプレイパネル1の変形例における1画素の断面図である。
【図9】ELディスプレイパネル1の変形例における1画素の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ELディスプレイパネル
21 トランジスタ
21g ゲート
21s ソース
21d ドレイン
24 キャパシタ
24a 電極
24b 電極
50 トランジスタアレイパネル
71 段差抑制用の半導体膜
72 段差抑制用の絶縁膜
73 段差抑制用のオーミック膜
74 段差抑制用の有機膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層で構成されるトランジスタを有する画素回路と、
キャパシタと、
前記画素回路に接続される配線と、
前記配線に重なるように前記配線の延在方向に沿って設けられ、前記トランジスタの複数の層となる層のうちの少なくとも1つの層で形成された段差抑制用の膜と、
を備えることを特徴とするトランジスタアレイパネル。
【請求項2】
トランジスタを有する画素回路と、
キャパシタと、
前記画素回路に接続される配線と、
前記キャパシタに重なることなく、且つ前記配線に重なるように前記配線の延在方向に沿って設けられた段差抑制用の膜と、
を備えることを特徴とするトランジスタアレイパネル。
【請求項3】
前記段差抑制用の膜の上方に形成される画素電極を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のトランジスタアレイパネル。
【請求項4】
複数の層で構成されるトランジスタを有する画素回路に接続される配線を形成し、
キャパシタを形成し、
前記配線に重なるように前記配線の延在方向に沿って、前記トランジスタの複数の層となる層のうちの少なくとも1つの層で段差抑制用の膜を形成する、
ことを特徴とするトランジスタアレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−343504(P2006−343504A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168443(P2005−168443)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】