説明

トランスミッション

本発明は、ハウジング、第1の駆動出力シャフト、第2の駆動出力シャフト及び当該駆動出力シャフト間のトルク分配のためのクラッチシステムを有するトランスミッションに関する。少なくとも2つのトランスミッションコンポーネントが、当該駆動出力シャフト間に動作可能に接続され、潤滑油圧力を生成する。別個のチューブがハウジング内部において当該少なくとも2つのトランスミッションコンポーネントから当該クラッチシステムに伸長し、潤滑油を当該クラッチシステムに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング、第1の出力シャフト、第2の出力シャフト及び当該出力シャフト群間のトルクの分配のためのクラッチシステムを有するトランスミッションに関し、少なくとも2つのトランスミッションコンポーネントが当該出力シャフト間に動作可能に接続されており、潤滑油圧を生成する。
【背景技術】
【0002】
トランスファーケースは、複数のアクスルへのトルクの分配のために全ホイール駆動の自動車に使用されている。当該分配は、第1の出力シャフトと第2の出力シャフトとの間のトルク伝達が制御可能なように構成されたマルチディスククラッチによって行われる。制御可能なマルチディスククラッチによる係合状態を、「トルクオンデマンド」という。
【0003】
特に、マルチディスククラッチがスリップ動作時に高いオイル冷却要求を有するトランスファーケースは、別個のオイル供給を必要とする。さらに、特に、当該マルチディスククラッチのブロッキングにおいて、当該マルチディスククラッチを支持するベアリングには、全負荷が掛かり、当該ベアリングとコンポーネントとの間の摩擦は最大となる。
【0004】
欧州特許第0 268 904 B1号公報には、当該出願の独立請求項の前提部分に従ったトランスファーケースが記載されている。欧州特許第0 268 904 B1号公報のトランスミッションは、遊星歯車ギアセットの無ポンプ油潤滑を有し、それにおいて、ギアはオイルポンプとして動作して所定の圧力を作り出し、潤滑油は同心シャフト間の通路及びギャップを介して当該遊星歯車ギアセットに供給される。当該通路は、トランスミッションハウジング内に一体化されている。従って、欧州特許第0 268 904 B1号公報のトランスミッションは、マルチディスククラッチの直接的な油潤滑を有さず、当該通路形成のために複雑かつ/または高価なハウジンングデザインを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改善された効率、単純な構造及び改善された油潤滑特性を有するトランスミッションを提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1記載の特徴によって充足される。
【0007】
本発明のトランスミッションが無ポンプ油潤滑を実現する故に、当該トランスミッションは追加のオイルポンプを必要としない。さらに、マルチディスククラッチ及び支持ベアリングの直接的な油潤滑は、特にコンポーネントに温度負荷がかかった時の効率を改善する。個別のパイプは、通路をトランスミッションハウジング内に一体に形成する必要無しに、ハウジング内に追加的に伸長する。これによって、当該トランスミッションハウジングは、単純でありかつ必要な材料も減り、従って軽くかつ安価になる。
【0008】
本発明の有利な実施例は、詳細な説明、図面及び従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の好ましい実施例において、パイプはディストリビュータエレメントを介してクラッチシステムと組み合わされており、当該ディストリビュータエレメントが、当該クラッチシステムの部品間に潤滑油を供給する。従って、当該クラッチシステムのコンポーネントは、直接的に潤滑されて効率が改善する。
【0010】
本発明の第2の好ましい実施例において、トランスミッションコンポーネントの1は、ギアの少なくとも片面に設けられるカットアウト(cut-out)を有するギアである。潤滑油は、カットアウトを介してギアの歯状の部分に導かれ、潤滑油圧を上昇させて潤滑油供給を改善する。
【0011】
本発明の第3の好ましい実施例において、潤滑油シールドプレートが設けられ、それによってトランスミッションコンポーネントが潤滑油に対して保護される。潤滑油シールドプレートは、各々のトランスミッションコンポーネントが永続的にオイル溜内を攪拌することを防止し、それによって攪拌ロスが最小限に減少する。これによって潤滑油の温度が低下し、潤滑油の耐用年数が延長される。さらに、クラッチシステムの良好な潤滑にのために潤滑油の粘性が維持される。
【0012】
本発明の第4の好ましい実施例において、潤滑油供給はパンによって提供され、当該パンは潤滑油リザーバを有する。当該潤滑油リザーバは、トランスミッションコンポーネントに追加の潤滑油を供給する。
【0013】
本発明は、図面を参照して単に例示の目的で以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トランスファーケースを備えた原動機付き車両(以下自動車と称する)パワートレインの全体ブロック図である。
【図2】本発明のトランスファーケースの第1実施例の第1断面図である。
【図3】本発明のトランスファーケースの第1実施例の第2断面図である。
【図4】本発明のトランスファーケースのハウジング、ギア及びオイルシールドプレートの第1実施例の斜視図である。
【図5】本発明のトランスファーケースのハウジング、ギア及びオイルシールドプレートの第2実施例の斜視図である。
【図6】オイルシールドプレートの第3実施例の斜視図である。
【図7】オイルシールドプレートの第4実施例の斜視図である。
【図8】オイルシールドプレートの第5実施例の斜視図である。
【図9】トランスファーケースの第2実施例の断面図である。
【図10】本発明のトランスファーケースの第2実施例のハウジング、ギア、出力シャフト及びクラッチ潤滑部の斜視図である。
【図11】図10のクラッチ潤滑アレンジメント(以下構造とする)の潤滑油供給装置の斜視図である。
【図12】図10のクラッチ潤滑構造の第1実施例の断面図である。
【図13】図10のクラッチ潤滑構造の第2実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
自動車パワートレイン10の全体ブロック図が図1に示されており、パワートレイン10はドライブ12を含み、ドライブ12は、第1のパワー伝達経路14、第2のパワー伝達経路16、内燃エンジン18、マニュアルトランスミッション20及びトランスファーケース22を含む。内燃エンジン18は、駆動トルクを生成し、マニュアルトランスミッション20を介してトランスファーケース22を駆動する。トランスファーケース22は、当該マニュアルトランスミッションの出力トルクを第1と第2のパワー伝達経路14、16とに分配する。
【0016】
第1のパワー伝達経路14は、トランスファーケース22によって駆動されるカルダンシャフト24並びに一対のホイール28及びディファレンシャルユニット30に接続されている一対のハーフシャフト26を含む。ディファレンシャルユニット30は、カルダンシャフト24からの駆動トルクを片方または両方のハーフシャフト26に伝達するように動作する。同様の態様において、第2のパワー伝達経路16は、トランスファーケース22によって駆動されるカルダンシャフト32並びに一対のホイール36及びディファレンシャルユニット38に接続されている一対のハーフシャフト34を含む。ディファレンシャルユニット38は、カルダンシャフト32からの駆動トルクを片方または両方のハーフシャフト34に伝達するように動作する。
【0017】
コントロールユニット40は、トランスファーケース22の動作を複数の自動車パラメータに基づいて制御する。コントロールユニット40は、少なくとも1つのセンサと電気的に接続され、好ましくは複数のさらなるセンサと電気的に接続される。センサの例には、ヨーレートセンサ42及び/またはホイール速度センサ44を含む。センサ42、44は、例えば、自動車のヨーレート、ホイール各々の速度及び/または自動車の速度のような複数の動作状態を検出する。コントロールユニット40は、これらの信号(群)を処理して制御信号を生成し、トランスファーケース22の少なくとも1のアクチュエータが当該制御信号に基づいて制御され、パワー伝達経路14、16にトルクを分配する。
【0018】
ここで、トランスファーケース22の第1実施例のコンポーネントが、図2及び図3を参照して説明される。トランスファーケース22は、トランスミッションハウジング50、第1の出力シャフト52、第2の出力シャフト54、マルチディスククラッチ56、アクチュエータ58及びトルク伝達コンポーネント60、62、64を含む。第1の出力シャフト52は、第1の軸Aの周りに回転し、マニュアルトランスミッション20の図示されていない出力シャフトによって直接的に駆動される。第2の出力シャフト54は、第2の軸Bの周りに回転する。マルチディスククラッチ56は、第1の出力シャフト52と第2の出力シャフト54との間のトルク伝達の制御のために制御可能である。
【0019】
トランスファーケース22は、マルチディスククラッチ56のコンポーネント及び支持ベアリングの潤滑のためのクラッチ潤滑構造をさらに含む。当該クラッチ潤滑構造は、トランスミッションハウジング50に一体に形成された圧力チャンバ66、パイプ68及びディストリビュータエレメント70を有する。パイプ68は、圧力チャンバ66からマルチディスククラッチ56まで伸長し、圧力チャンバ66からの潤滑油をマルチディスククラッチ56に供給する。ディストリビュータエレメント70は、マルチディスククラッチ56の異なるコンポーネント及び支持ベアリングへ潤滑油を供給する。特に、トランスファーエレメント70は、供給された潤滑油を様々な方向に分配する複数の開口部71を含む。パイプ68は、好ましくはプラスチックによって形成され、ディストリビュータエレメント70は、好ましくは射出形成部品である。図3に示されているように、収束する自由空間がアイドルギア64及びギア62とトランスミッションハウジング50との間に、間隔X及びYによって各々形成される。当該空間は、各々のギアの回転方向に向かって収束し、潤滑油移送量を調節する役割を果たす。収束自由空間は、特にノズルとして動作して潤滑油の圧力を上昇させる。
【0020】
トルク伝達はトルク伝達コンポーネントによって行われ、当該トルク伝達コンポーネントは、第1のギア60、アイドルギア62及び第2のギア64を含む。第1のギア60は、マルチディスククラッチ56のコンポーネントに回転自在に固着され、第1の出力シャフト52周りに回転自在に軸受支持されている。第2のギアは、第2の出力シャフト54に回転自在に固着されている。アイドルギア62は、トランスミッションハウジング50内に回転自在に軸受支持され、第1及び第2のギア60、64の各々と噛合している。アイドルギア62及び第2のギア64は、トランスミッションハウジング内にある潤滑油内に部分的に浸される。当該潤滑油の液面高さはSNラインで示されている。
【0021】
図2によれば、マルチディスククラッチ56は、クラッチハブ73を含んでおり、当該クラッチハブは回転自在に第1の出力シャフト52に固着されている。クラッチハブ73は、摩擦ディスク72の各々を介して摩擦固定でクラッチバスケット74と連結させられる。当該クラッチバスケットは、マルチディスククラッチ56の第1の軸Aすなわち第1の出力シャフト52の第1の軸A周りに回転可能に支持されている。クラッチハブ73とクラッチバスケット74との間のトルク伝達のための摩擦固定は、圧力プレート76によって生起される。圧力プレート76は、プレートスプリング構造78のプレストレス(pre-stress)に対して軸変位可能であって、それによってクラッチハブ70の摩擦ディスク72の各々とクラッチバスケット74とを互いに対して圧接する。
【0022】
プレストレスに対する圧力プレート76の選択的な変位及びそれによるマルチディスククラッチ56の駆動のために、アクチュエータ58は、支持リング80及び調整リング82を含む。それらは、軸Aに対して互いに同軸に設けられている。支持リング80は、回転自在に固着されかつ軸方向に固定的に保持されている。この目的のために、支持リング80は、第1の出力シャフト52またはセクション88にラジアルベアリング84及び軸ベアリング86によって支持され、支持ベアリング80は、トランスミッションハウジング(図示せず)の固定部との形状適合接合によって回転自在に固着保持されている。調整リング82は、回転自在かつ軸移動可能に軸受支持され、軸ベアリング90によって圧力プレート76において支持されている。
【0023】
支持リング80及び調節リング82の各々は、互いに向かい合う側面に複数のボール溝92及び94を各々有している。当該ボール溝は、各々軸Aに関する外周の方向に伸長している。支持リング80のボール溝92及び調整リング82のボール溝94は、互いに対向した位置にあり、それによって各々が関連するボール96を取り囲む。ボール溝92、94は、軸Aの法線平面に対して傾けられていて、従って、ボール溝92、94は、前述した外周に沿って変化する深さを有する。これによって、回転自在に固着保持された支持リング80に対する調整リング82の回転運動は調整リング82の軸移動に帰結し、圧力プレート76がこの様な調整リング82の回転運動によって軸的にオフセットしてマルチディスククラッチ56が駆動され得ることが達成される。これに関連して、プレートスプリング構造78によって生じたプレストレスは、ボール96の各々が、調整リング82の支持リング80に対する回転位置の各々において、関連するボール溝92、94内に拘束され続けることを保証する。
【0024】
上述された調整リング82の回転運動を生起可能にするために、当該調整リングは、ギアドライブ98を介して電気モータ100と結合させられる。角度セグメントとして構成された歯状のセグメント102は、調整リング82において約90°の角度範囲の間で半径方向外側に形成されている。この歯状のセグメント102は、駆動モータ100のウォームギア104と共にギアドライブ98を形成する。例えば、調整リング82の歯状のセグメント102の歯は、軸Aに対して5°から15°のピッチ角を有し得る。駆動モータ100のはすば歯車シャフト104の軸Cを一方とし、軸Aすなわち歯状のセグメント102を有する調整リング82の回転軸を他方としたとき、それらは互いに交差しかつ90°の軸角度を形成する。
【0025】
第1の出力シャフト52と第2の出力シャフト54との間のトルクの伝達のための図示されたマルチディスククラッチ56の動作は以下の様に行われる。
【0026】
駆動モータ100の動作によって、それに対応する軸C周りのウォームギア104の回転運動が生じる。このことによって、ギアドライブ98による調整リングの軸A周りの回転運動が生じる。この関係において、調整リング82の歯状セグメント102の歯の傾斜した位置はアラインメントされ、調整リング82の歯状の構造によって調整リング82の所望の移動方向において生じたはすば歯車の対の軸力は、マルチディスククラッチ56の加圧動作を発生させる。調整リング82のボール溝94と支持リング80の関連するボール溝92とのボール96の各々を介した連携は、調整リング82の回転運動の間生じ、このことによって、調整リング82は支持リング80から軸方向に離れるように移動して圧力プレート76をプレートスプリング構造78の付勢に対向して軸方向に変位させる。それによってクラッチハブ70の各々の摩擦ディスク72とクラッチバスケット74とが互いに圧接させられて、クラッチハブ70からクラッチバスケット74へ増大したトルクが伝達され得る。この摩擦ロックの解放は、逆の順序で行われる。すなわち、駆動モータ100が調整リング82に逆方向の回転運動をさせ、調整リング82及び圧力プレート76の対応する軸方向移動は、支持リング80の方向においてプレートスプリング構造によって支持される。
【0027】
マルチディスククラッチ56によるトルク伝達において、第1のギア60は軸A周りに回転してアイドルギア62を駆動する。それに従って、アイドルギア62は、第2のギア64を軸B周りに駆動する。通常、ギア62、64は、矢印で示された方向に回転し、それらのオイル溜に浸かっている部分が互いに移動する。圧力は、ギア62及び64の搬送効果によって歯車噛合状態において生成され、潤滑油を圧力チャンバ66、パイプ68及びディストリビュータエレメント70を介してアクチュエータ及びマルチディスククラッチまでかつその内部へ搬送する。この関係において、アクチュエータ58のコンポーネント、特にベアリング84、86、90及びマルチディスククラッチ56のコンポーネントは、直接的に潤滑される。
【0028】
図4に示されているように、カットアウト122は、アイドルギア62の端面120内に形成されている。さらに、潤滑油シールドプレート124が、アイドルギア62のおおよそ下半分の周囲に形成されている。タブ(pan)形状の潤滑油シールドプレート124は、側壁126と、その側壁126の間の外周セクション128とを有し、温度変化の減少及び潤滑油搬送量の調整の役割を果たす。潤滑油シールドプレート124は、特に、アイドルギア62がトランスファーケース内のオイル溜内を常時攪拌することを防止する。常時攪拌によって、潤滑油の望まれない泡立ちが生じ、その結果の攪拌ロスは、特に高速度域において望まれない温度上昇に帰結するので最小限に減少させるべきである。
【0029】
図4に示された潤滑油シールドプレートの実施例において、開口部128は側壁126内に形成され、潤滑油は側壁126に形成された湾曲した長手穴130を介して流れ込み、カットアウト122を介してギアの歯状構造に供給される。図5に示された他の実施例において、長手穴130aが側壁126aと外周セクション128aとの間のエッジに形成される。潤滑油シールドプレート126aは、追加開口部132aを含み、当該追加開口部132aは、トランスミッションハウジング50内の潤滑油シールドプレート126aの堅固な保持を提供し、開口部132aがトランスミッションハウジング50の図示されていない突起を受け入れる。
【0030】
図6から8は、潤滑油シールドプレートの追加の実施例を示している。図6の潤滑油シールドプレート124bは、図5の潤滑油シールドプレート124aと類似しているが、長手穴130bが側壁126bと外周部128bとの間の底部に形成され、長手穴130bは潤滑油溜内に全て存在する。図7の潤滑油シールドプレート124cは、図4の潤滑油シールドプレート124と類似しているが、側壁126c内に開口部が無いように形成されている。図8の潤滑油シールドプレート124dは、図6の潤滑油シールドプレート124bに類似している。しかし、側壁126dの開口部の代わりに、開口部130dが外周セクション128d内に形成される。
【0031】
ここで、トランスファーケース22′の第2の実施例のコンポーネントが、図9及び図10を参照して説明される。トランスファーケース22′は、トランスミッションハウジング50′、第1の出力シャフト52′、第2の出力シャフト54′、マルチディスククラッチ56′、アクチュエータ58′及びトルク伝達コンポーネント60′、62′、64′を含む。第1の出力シャフト52′は、第1軸A′周りに回転し、マニュアルトランスミッション20の図示されていない出力シャフトによって直接的に駆動される。第2の出力シャフト54′は、第2の軸B′周りに回転する。マルチディスククラッチ56′は、第1の出力シャフト52′と第2の出力シャフト54′との間のトルク伝達を調整するように制御可能である。第2の実施例によれば、トランスファーケース22′は、チェーンギアとして形成され、トルク伝達コンポーネントは、チェーン62′によって回転動作可能に接続されたギア60′、64′を含む。チェーン62′は、歯142(図12及び13)を形成する複数のチェーンリンク140を有する。歯142はギア60′、64′の歯と噛合する。マルチディスククラッチ56′及びアクチュエータ58′の各々は、マルチディスククラッチ56及びアクチュエータ58′の様なコンポーネントを各々含む。
【0032】
図10から13を参照すると、トランスファーケース22′は、マルチディスククラッチ56′のコンポーネント及び支持ベアリングの潤滑のためのクラッチ潤滑構造150を含む。クラッチ潤滑構造150は、潤滑油供給部152及び少なくとも1のパイプ154a、154bを有する。図示されてはいないが、クラッチ潤滑構造150は、供給された潤滑油を異なった方向に分散させるディストリビュータエレメントをさらに含み得る。潤滑油供給部152は、好ましくは射出成形部品であり、横方向に伸長する2つの腕部を有するパン156を有する。パン156は、側壁160、端壁162、162′及びベース164を含む。側壁160及び腕部158は、チェーン64′が通過するチェーン経路165を形成する。腕部158と端壁162′の湾曲表面166とは、ギア60′を部分的に含むポケットを形成する。
【0033】
潤滑油は、桶部156内に収集され、それによって追加潤滑油溜が形成される。ベース164は、図示されていない通路を含み、潤滑油は、そこを通ってチェーン62′に供給される。パン156は、チェーン62′によって潤滑油溜から汲み上げられた潤滑油を収集する役割を有しかつそれを再度すぐにチェーン62′に供給する役割を有する。従って、潤滑油は再度収集され、パイプ154a、154bを介してマルチディスククラッチ56′内に即時に搬送されない。従って、パン156は、トランスファーケース22′のパワーの伝達を改善する役割を果たす。
【0034】
クラッチ潤滑構造150の第1の実施例において、通路170は、端壁162′及び表面166を貫通して形成される。パイプ154aは、接続パイプ172(図12)に接続されて、潤滑油供給部152とマルチディスククラッチ56′及びアクチュエータ58′との間の流路が構築される。クラッチ潤滑構造150の第2の実施例において、通路174は、腕部158によって形成され、パイプ154aは、接続パイプ176に接続され、潤滑油供給部152とマルチディスククラッチ56′及びアクチュエータ58′との間の流路が構築される。
【0035】
チェーン62′は、潤滑油を上方にトランスファーケース22′内のオイル溜の外へ搬送する。通常、ギア60′及びチェーン62′は、矢印で示された回転方向を有する。圧力は、ギア60′及びチェーン62′の搬送効果によって歯部係合領域ZB内で生成され、パイプ154a及び/またはパイプ154bを介してアクチュエータ58′及びマルチディスククラッチ56′までかつその内部への潤滑油の搬送を達成する。クラッチ潤滑構造150の第1の実施例によれば、潤滑油は、通路170及び接続パイプ172を介してパイプ154aまで供給される。クラッチ潤滑構造150の第2の実施例によれば、潤滑油は、通路174及び接続パイプ176を介してパイプ154bまで供給される。
【0036】
本発明のトランスファーケース22、22′が無ポンプな油潤滑を提供するので、トランスファーケース22、22′は、追加のオイルポンプを必要としない。さらに、マルチディスククラッチ56、56′及び支持ベアリングの直接的な油潤滑は、特に、コンポーネントが温度負荷を受けているときの効率を改善する。例えば、パイプ68、154a、154b、ディストリビュータエレメント70及び潤滑油供給部152の様な、油潤滑システムの部品の各々は、プラスチックで製造され得る。従って、これらの部品は、製造容易で安価である。さらに、パイプ68、154a、154bは、ハウジング50、50′内に伸長しており、トランスミッションハウジング内に一体化された通路を形成する必要がない。
【符号の説明】
【0037】
10 自動車パワートレイン
12 ドライブ
14,16 パワー伝達経路
18 内燃エンジン
20 マニュアルトランスミッション
22,22′ トランスファーケース
24,32 カルダンシャフト
26,34 ハーフシャフト
28,36 ホイール
30,38 ディファレンシャルユニット
40 コントロールユニット
42,44 センサ
50,50′ トランスミッションハウジング
52,52′,54,54′ クラッチアクチュエータ
56,56′ マルチディスククラッチ
58,58′ アクチュエータ
60,60′,64,64′ ギア
62 アイドルギア
62′ チェーン
66 圧力チャンバ
68,154a,154b パイプ
70 ディストリビュータエレメント
71 開口部
72 摩擦クラッチ
73 クラッチハブ
74 クラッチバスケット
76 圧力プレート
78 プレートスプリング構造
80 支持リング
82 調整リング
84,86,90 ベアリング
88 部分
92,94 ボール溝
96 ボール
98 ギアドライブ
100 駆動モータ
102 歯状セグメント
104 ウォームギア
120 端面
122 カットアウト
124,124a‐d 潤滑油シールドプレート
126,126a‐d 側壁
128,128a‐d 外周セクション
130,130a‐d 長手穴/開口部
132a‐d 開口部
140 チェーンリンク
142 歯部
150 クラッチ潤滑構造
152 潤滑油供給部
156 パン
158 腕部
160 側壁
162,162′ 端壁
164 ベース
165 チェーン経路
166 表面
170,174 通路
172,176 接続パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(50,50′)と、第1のドライブシャフト(52,52′)と、第2のドライブシャフト(54,54′)と、当該出力シャフト(52,52′,54,54′)間のトルク分配のためのクラッチシステム(56,56′,58,58′)と、を有し、少なくとも2つのトランスミッションコンポーネント(62,64;60,62′)が前記出力シャフト(52,52′,54,54′)間に動作可能に接続されて潤滑油圧力を生成するトランスミッション(22,22′)であって、
別個のパイプ(68,154a,154b)が前記ハウジング(50,50′)内において前記少なくとも2つのトランスミッションコンポーネント(62,64;60,62′)から前記クラッチシステム(56,56′,58,58′)まで伸長し、前記クラッチシステム(56,56′,58,58′)へ潤滑油を供給することを特徴とするトランスミッション。
【請求項2】
請求項1記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記パイプ(68,154a,154b)はプラスチックで形成されていることを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項3】
請求項1または2記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記パイプ(68,154a,154b)は、ディストリビュータエレメント(70)を介して前記クラッチシステム(56,56′,58,58′)と組み合わされ、前記ディストリビュータエレメント(70)が前記クラッチシステム(56,56′,58,58′)の部品間に潤滑油を供給することを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項4】
請求項3記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記ディストリビュータエレメント(70)は、前記潤滑油が周囲にあるベアリング(84,86,90)及び前記クラッチシステム(56,56′,58,58′)の摩擦ディスク(72)を潤滑する様に形成されていることを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項5】
請求項3記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記ディストリビュータエレメント(70)は、射出成形部品であることを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記トランスミッションコンポーネントの1がギア(62)であって、前記ギア(62)は、前記ギア(62)の少なくとも片側の表面(120)に形成されるカットアウト(122)を有し、前記潤滑油が前記カットアウト(122)を介して前記ギア(62)の歯状の構造内に供給されることを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項7】
請求項6記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記カットアウト(122)は半径方向に伸長することを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1記載のトランスミッション(22,22′)であって、潤滑油シールドプレート(124,124a‐d)が含まれてトランスミッションコンポーネント(62)の1を前記潤滑油から保護することを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項9】
請求項8記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記潤滑油シールドプレート(124,124a‐d)は、側壁(126,126a‐d)と、前記側壁(126,126a‐d)の間にある外周セクション(128,128a‐d)と、を含むことを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項10】
請求項8または9記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記潤滑油シールドプレート(124,124a‐d)は、少なくとも1の開口部(130,130a‐d;132,132a‐d)を有し、前記少なくとも1の開口部(130,130a‐d;132,132a‐d)が所定の潤滑油供給をなすことを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記潤滑油シールドプレート(124,124a‐d)は、タブ形状でありかつ前記2つのトランスミッションコンポーネント(62,64)の1の少なくとも一部を囲っていることを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記トランスミッションコンポーネントは、ギア(60′)及びチェーン(62′)を含むことを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項13】
請求項12記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記ギア(60′)は、前記クラッチシステム(56,56′,58,58′)と同一の軸周りに回転することを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項14】
請求項12または13記載のトランスミッション(22,22′)であって、潤滑油供給部(152)が、パン(156)を有するように形成され、前記ギア(60′)を部分的に囲み、前記チェーン(62′)が前記潤滑油供給部(152)を通って伸長し、前記パン(156)は潤滑油リザーバを有することを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項15】
請求項14記載のトランスミッション(22,22′)であって、前記個別のパイプ(154a,154b)は、前記潤滑油供給部(152)から前記クラッチシステム(56,56′,58,58′)へ伸長していることを特徴とするトランスミッション(22,22′)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1記載のトランスミッション(22,22′)を有する自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−544903(P2009−544903A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521121(P2009−521121)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005453
【国際公開番号】WO2008/011943
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(507392853)マグナ パワートレイン アクツィエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (18)
【Fターム(参考)】