説明

トレンチ埋め込み用樹脂組成物

【課題】基体に形成されたトレンチ内に酸化シリコンを埋め込むために使用するのに好適なトレンチ埋め込み用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係るトレンチ埋め込み用樹脂組成物は、酸化シリコン粒子をトレンチ埋め込み用樹脂組成物全体に対して0.35重量%以上2.20重量%以下で、並びに、一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して、一般式(1):Si(ORで表されるテトラアルキシキシラン化合物を45mol%以上87mol%以下で、一般式(2):RSi(ORで表されるトリアルコキシシラン化合物を10mol%以上50mol%以下で、そして一般式(3):RSi(ORで表されるジアルコキシシラン化合物を1.5mol%以上3.6mol%以下で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に形成されるトレンチ内の絶縁保護膜用トレンチ埋め込み用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される電子デバイスの構成要素であるトランジスタなどの回路素子を電気的に分離するための技術のひとつとして、シャロートレンチ分離技術(STI技術)が開発されている。STI技術とは、基板中、回路素子の間隙にあたる箇所にトレンチを形成し、トレンチ内に絶縁材料を埋め込むことにより、回路素子間の電気的分離を行う技術である。
【0003】
デバイスの高集積化が進行するにつれ、STI技術におけるトレンチ幅は狭くなり、そのためトレンチのアスペクト比(トレンチの開口幅を、トレンチの深さで除した値)も大きくなる傾向にある。
このようなトレンチ埋め込みに使われる材料としては、高い電気絶縁性が求められるためシリコン酸化物が広く好適に用いられている。
トレンチ内にシリコン酸化物を埋め込むための手段としては、トレンチを有する基体上に、酸化シリコンの前駆体を塗布し、次いで酸化条件下でこれを加熱する方法がある。酸化シリコン前駆体としては、例えば、酸化シリコン粒子に各種アルコキシシランを混合した組成物(例えば、以下の特許文献1を参照のこと。)などが用いられている。
【0004】
この酸化シリコン粒子に各種アルコキシシランを混合した組成物は、微細、高アスペクト比のトレンチ内に、シームやボイドが発生することなく、良好な埋め込み性を示す。しかしながら、加熱後の酸化シリコンのHFエッチレート(焼成後に1%HF水溶液中に1分間浸漬させたときの単位時間当たりの膜減量)が高く、CMP後のHF洗浄工程でトレンチ内に埋め込んだ酸化シリコンのダメージが大きい。また、トレンチを埋め込むために膜厚を厚くするとクラックが入るという問題がある。そのため、HF耐性が高く、厚膜でもクラックが発生しにくいシリコン酸化物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−310448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、その課題は、基体に形成されたトレンチ内に酸化シリコンを埋め込むために使用するのに好適なHF耐性、クラック耐性を有するトレンチ埋め込み用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、実験を重ね鋭意研究を行った結果、予想外に、以下に示すトレンチ埋め込み用組成物を発見し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、具体的には、以下の[1]〜[5]である:
【0008】
[1]酸化シリコン粒子、並びに、下記一般式(1):
Si(OR14
{式中、R1は、一般式(1)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。}で表されるテトラアルキシキシラン化合物、下記一般式(2):
2Si(OR13
{式中、R1は、一般式(2)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてR2は、一般式(1)〜(3)の間で独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。}で表されるトリアルコキシシラン化合物、及び下記一般式(3):
22Si(OR12
{式中、R1は、一般式(3)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてR2は、一般式(3)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。}で表されるジアルコキシシラン化合物を含有するトレンチ埋め込み用樹脂組成物であって、該酸化シリコン粒子を、トレンチ埋め込み用樹脂組成物全体に対して0.35質量%以上2.20質量%以下で、一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン化合物を、一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して、47mol%以上87mol%以下で、一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン化合物を、一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して、10mol%以上50mol%以下で、そして一般式(3)で表されるジアルコキシシラン化合物を、一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して、1.5mol%以上3.6mol%以下で、含有することを特徴とする前記トレンチ埋め込み用樹脂組成物。
【0009】
[2]多価アルコールのモノエーテル溶媒をさらに含有する、前記[1]に記載のトレンチ埋め込み用樹脂組成物。
【0010】
[3]前記多価アルコールのモノエーテル溶媒をトレンチ埋め込み用樹脂組成物全体に対して3質量%〜80質量%で含有する、前記[2]に記載のトレンチ埋め込み用樹脂組成物。
【0011】
[4]一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン化合物、及び一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン化合物からなる縮合反応物、並びに酸化シリコン粒子を含有する組成物(A)、並びに一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン化合物、及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン化合物からなる縮合反応物(B)を、それぞれ、作製してから混合することを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のトレンチ埋め込み用樹脂組成物の製造方法。
【0012】
[5]前記組成物(A)が、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の合計に対して10mol%〜70mol%の一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン化合物と、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の合計に対して30mol%〜90mol%の一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン化合物と、該組成物(A)全体に対して1質量%〜20質量%の酸化シリコン粒子とを、反応させた縮合反応物であり、そして前記組成物(B)が、一般式(1)又は一般式(3)で表される化合物の合計に対して70mol%〜99mol%の一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン化合物と、一般式(1)又は一般式(3)で表される化合物の合計に対して1mol%〜30mol%の一般式(3)で表されるジアルコキシシラン化合物とを、反応させた縮合反応物であり、そして該組成物(A)と(B)の混合比が1:9〜9:1である、前記[4]に記載のトレンチ埋め込み用樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、基体に形成されたトレンチ内に酸化シリコンを埋め込むために使用するのに好適なトレンチ埋め込み用樹脂組成物が提供される。
本発明のトレンチ埋め込み用樹脂組成物は、微細、高アスペクト比のトレンチへの埋め込み性が高く、HF耐性が高く、厚膜でもクラックが発生しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るトレンチ埋め込み用組成物について詳細に説明する。
酸化シリコン粒子
本発明に係るトレンチ埋め込み用樹脂組成物に使用される酸化シリコン粒子は、例えば、酸化雰囲気下300℃以上で加熱焼成時にシリカを生成する粒子であり、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
ヒュームドシリカは、シリコン原子を含む化合物を、気相中で、酸素及び水素と反応させることによって得ることができる。ここで原料となるケイ素化合物としては、例えばハロゲン化ケイ素(例えば、塩化ケイ素等)等を挙げることができる。
【0015】
コロイダルシリカは、原料化合物を加水分解及び縮合するゾルゲル法により合成することができる。コロイダルシリカの原料化合物として、例えば、アルコキシケイ素(例えば、テトラエトキシシラン等)、ハロゲン化シラン化合物(例えば、ジフェニルジクロロシラン等)等を挙げることができる。中でも、金属やハロゲン等の不純物が少ないことが求められていることより、アルコキシケイ素から得られたコロイダルシリカが好ましい。
【0016】
酸化シリコン粒子の平均一次粒子径は、トレンチへの埋め込み性が高くなることにより約1〜120nmであることが好ましく、約1〜40nmであることがより好ましい。
酸化シリコン粒子の平均二次粒子径は、トレンチへの埋め込み性が高くなることにより約2〜250nmであることが好ましく、約2〜80nmであることがより好ましい。また、トレンチへの埋め込み性を高くする観点から、酸化シリコン粒子の平均二次粒子径は、上記の範囲内で、基板に形成されたトレンチの内の最小の開口幅に対して、約0.1〜3倍であることがより好ましく、約0.1〜2倍であることが更に好ましい。
【0017】
なお、酸化シリコンの粒子は、加熱された際に結合が開裂・再結合して再配列する、いわゆる「リフロー」といわれる現象を示すことが知られている。このため、酸化シリコン粒子の平均二次粒子径がトレンチの開口幅より大きくても、後述する加熱工程においてリフロー現象が起こり、これによって細分化された酸化シリコン粒子の一部がトレンチ内部まで到達することとなる。
【0018】
酸化シリコン粒子の形状としては、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらのいくつかが合体した形状であることができるが、好ましくは球状である。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体や卵形等の略球状である場合も含むことができる。
酸化シリコン粒子の比表面積としては、HF耐性が上がることより1〜1000m2/gであることが好ましく、1〜500m2/gであることがより好ましい。
酸化シリコン粒子として、上記要求を満たす限り、特に制限は無く、市販品を使用してもよい。
【0019】
このような市販品としては、コロイダルシリカとして、例えば、LEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、メタノールシリカゾルIPA−ST、同MEK−ST、同NBA−ST、同XBA−ST、同DMAC−ST、同ST−UP、同ST−OUP、同ST−20、同ST−40、同ST−C、同ST−N、同ST−O、同ST−50、同ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)等を、そして粉体状のシリコン粒子として、例えば、アエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を、それぞれ、挙げることができる。
【0020】
酸化シリコン粒子の使用量は、本発明に係るトレンチ埋め込み用樹脂組成物全体に対して、0.35質量%以上2.20質量%以下が好ましく、より好ましくは0.76質量%以上0.86質量%以下である。上記の範囲にあると、塗布膜にクラックが入り難く及びHF耐性が良くなるため、該範囲が好ましい。
酸化シリコン粒子を配合する際には、粉体状又は溶剤に分散した状態で配合することができる。
酸化シリコン粒子を溶剤に分散した状態で配合する場合、使用できる溶剤として、水若しくは有機溶剤又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
上記有機溶媒としては、例えば、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等が挙げられる。
【0021】
上記アルコール類の具体例として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等を;上記ケトン類の具体例として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を;上記エステル類の具体例として、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を;上記エーテル類の具体例として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等を;上記脂肪族炭化水素類の具体例として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、デカリン等を;上記芳香族炭化水素化合物の具体例として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を;そして上記アミド化合物の具体例として、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N− メチルピロリドン等を、それぞれ、挙げることができる。
【0022】
上記溶剤の内、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等は、水と混合しやすく、酸化シリコン粒子を分散させやすいため、好ましい。
【0023】
本実施の形態のトレンチ埋め込み用樹脂組成物中に使用されるテトラアルコキシシランは、下記一般式(1):
Si(OR14
{式中、R1は、一般式(1)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。}で表される。
上記一般式(1)の具体例として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン等を挙げることができる。これらの中でテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは、Si含量が多く濃度をコントロールし易いこと、加水分解・縮合反応性が高いため、より好ましい。
【0024】
上記一般式(1)の使用量は、上記一般式(1)〜(3)で表される成分の合計に対して約50mol%以上がトレンチへの埋め込み性が向上すること、約86mol%以下が塗布膜にクラックが入り難くなるため、好ましい。上記一般式(1)の使用量は、上記一般式(1)〜(3)で表される成分の合計に対して、より好ましくは、約70mol%以上80mol%以下である。
【0025】
本実施の形態のトレンチ埋め込み用樹脂組成物中に使用されるトリアルコキシシランは、下記一般式(2):
2Si(OR13
{式中、R1は、一般式(2)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてR2は、一般式(1)〜(3)の間で独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。}で表される。
トリアルコキシシラン化合物、下記一般式(2)で表される。
【0026】
上記一般式(2)で表されるトリアルコキシシランの具体例としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン等を挙げることができる。これらの中で、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランは、Si含量が多く濃度をコントロールし易いこと、加水分解・縮合反応性が高いため、より好ましい。
【0027】
上記一般式(2)の使用量は、上記一般式(1)〜(3)で表される成分の合計に対して約10mol%以上がトレンチへの埋め込み性が向上すること、約50mol%以下が塗布膜にクラックが入りにくくなるため好ましい。一般式(2)の使用量は、上記一般式(1)〜(3)で表される成分の合計に対して、より好ましくは約16mol%以上26mol%以下である。
【0028】
本実施の形態のトレンチ埋め込み用樹脂組成物中に使用されるジアルコキシシランは、下記一般式(3):
22Si(OR12
{式中、R1は、一般式(3)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてR2は、一般式(3)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。}で表される。
【0029】
上記式(3)で表されるジアルコキシシランの具体例としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−フェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジ- エトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジビニルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの中で、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランは、Si含量が多く濃度をコントロールし易いこと、加水分解・縮合反応性が高いため、より好ましい。
【0030】
上記一般式(3)で表される化合物の使用量は、上記一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して約1.5mol%以上3.6mol%以下が、トレンチへの埋め込み性が良くなることより、好ましい。一般式(3)で表される化合物の使用量は、上記一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して、より好ましくは約2.5mol%以上3.5mol%以下である。
【0031】
次に本実施の形態であるトレンチ埋め込み用樹脂組成物の製造方法について説明する。本実施の形態のトレンチ埋め込み用樹脂組成物は、上記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランと、一般式(2)で表されるトリアルコキシシランと、酸化シリコン粒子とを縮合させた組成物(A)と、一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランと一般式(3)で表されるジアルコキシシランとを縮合させた組成物(B)とを、それぞれ、製造し、次に組成物(A)と組成物(B)を混合することによって得ることができる。
【0032】
組成物(A)の縮合反応物は、それぞれ上記一般式(1)のテトラアルコキシシランと、上記一般式(2)で表されるトリアルコキシシランと、酸化シリコン粒子とを、触媒と水の存在下で反応させることにより得ることができる。この反応は有機溶媒中で行ってもよい。
縮合反応に使用する有機溶媒として、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールの如き一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールの如き多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルの如き多価アルコールのモノエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトンの如きケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルの如き多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類などが挙げられる。中でも縮合反応後の状態が安定なアルコール類がより好ましい。
【0033】
これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、その使用量は、調製した組成物がゲル化し難くなるという観点から、(1)テトラアルコキシシラン及び(2)トリアルコキシシランの合計1mol当り、1〜30molが好ましい。
【0034】
また、縮合反応時の有機溶媒と組成物Aの有機溶媒は異なっていてもよく、縮合反応後に、上記の他の有機溶媒を加えてもよいし、上記の他の有機溶媒を加えた後に蒸留等により縮合時の有機溶媒を除いて置換しても構わない。
縮合反応に使用される触媒としては、酸触媒、アルカリ触媒等が挙げられる。
酸触媒としては、無機酸又は有機酸を挙げることができる。
上記無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等を挙げることができる。
上記有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等を挙げることができる。
これらの化合物は、一種又は二種以上を混合して用いることができる。
【0035】
触媒として酸触媒を使用する場合、その使用量は、(1)テトラアルコキシシラン及び(2)トリアルコキシシランの全部に含まれるR1O−基の総量1molに対して、約0.00001〜10molが好ましく、約0.00005〜5molがより好ましい。触媒量が上記の範囲であると、調製した組成物がゲル化しにくいこと及び塗布膜にクラックが入りにくいため、該範囲が好ましい。
【0036】
アルカリ触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セリウム等を挙げることができる。
これらの化合物は、一種又は二種以上を混合して用いることができる。
【0037】
触媒としてアルカリ触媒を使用する場合、その使用量は、(1)テトラアルコキシシラン及び(2)トリアルコキシシランの全部に含まれるR1O−基の総量1molに対して約1.0×10-5当量以上約10当量以下が好ましく、約0.5×10-5当量以上約5当量以下がより好ましい。上記の範囲であると、調製した組成物がゲル化しにくいこと及びHF耐性が高いため、該範囲が好ましい。
縮合反応の際に使用する触媒としては、調製した組成物がゲル化しにくいこと及び不純物を除きやすいことから、酸触媒がより好ましく、硝酸が特に好ましい。
【0038】
縮合反応の際に必要な水の量は(1)テトラアルコキシシラン及び(2)トリアルコキシシランの全部に含まれるR1O−基の総量1molに対して、好ましくは約0.1当量から5当量であり、より好ましくは約0.2当量から3当量である。上記の範囲であると、調製した組成物がゲル化しにくいこと及び塗布膜にクラックが入りにくいため、該範囲が好ましい。
【0039】
水系の酸化シリコン粒子を用いる場合は、溶剤の水が加水分解反応に使用される。酸化シリコン粒子の有機溶液を使用する場合は、別途水を加えることによって加水分解、縮合反応によって組成物Aを得ることができる。水の添加方法は、先に触媒を入れてから水を加えてもよいし、先に水を加えてから次に触媒を加えてもよく、また水と触媒を混合して触媒水溶液として加えてもよい。
【0040】
組成物(A)中の上記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランの量は、調製した組成物がゲル化しにくいこと、及び膜質が良いことにより、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の合計に対して約10mol%〜70mol%が好ましく、約20mol%〜40mol%がより好ましい。上記一般式(2)で表されるトリアルコキシシランは、調製した組成物がゲル化し難いこと及び膜質が良いことにより、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の合計に対して約30mol%〜90mol%が好ましく、約50〜80%がより好ましい。酸化シリコン粒子は、調製した組成物がゲル化し難いこと及び膜質が良いことにより、組成物(A)の全体に対して、約1.0質量%〜20質量%が好ましく、約3.0質量%〜15質量%がより好ましい。
【0041】
加水分解、縮合反応を行う際の反応温度は、特に制限は無いが、調製した組成物がゲル化し難いことにより、好ましくは約0〜100℃、より好ましくは約15〜80℃である。反応時間としては、好ましくは約30分〜5時間、より好ましくは約1時間〜3時間である。
【0042】
組成物(B)の縮合反応物は、上記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランと、上記一般式(3)で表されるジアルコキシシランとを、有機溶媒中、触媒と水の存在下で、反応させることにより得ることができる。
上記有機溶媒、触媒は、組成物(A)で使用される有機溶媒、触媒と同一でも異なっていてもよいが、触媒は混合すると反応する場合があるため、組成物(A)と同一である方が好ましい。有機溶媒及び触媒の量は、膜質が良いことから、組成物(A)の縮合反応と同様の範囲であることが好ましい。
【0043】
調製した組成物がゲル化し難いこと及び塗布膜にクラックが入り難いことにより、組成物(B)中の、上記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランの量は、一般式(1)又は一般式(3)で表される化合物の合計に対して、約70mol%〜99mol%、より好ましくは約80%〜95%であり、そして上記一般式(3)で表されるテトラアルコキシシランの量は、一般式(1)又は一般式(3)で表される化合物の合計に対して、約1mol%〜30mol%、より好ましくは約5mol〜20molである。
【0044】
加水分解、縮合反応を行う際の反応温度に特に制限は無いが、組成物(A)の製造と同様、好ましくは約0〜100℃、より好ましくは約15〜80℃である。反応時間は、好ましくは約30分〜5時間、より好ましくは約1時間〜3時間である。
【0045】
縮合反応の際に必要な水の量は、(1)テトラアルコキシシラン及び(3)ジアルコキシシランの全部に含まれるR1O−基の総量1molに対して、好ましくは約0.1当量〜12当量であり、より好ましくは約0.5当量〜10当量である。水の量が上記の範囲であると、調製した組成物がゲル化し難いこと及びHF耐性が高いことにより、好ましい。
水の添加方法としては、先に触媒を入れてから水を加えてもよいし、先に水を加えてから次に触媒を加えてもよく、また水と触媒を混合して触媒水溶液として加えてもよい。
【0046】
本発明のトレンチ埋め込み用樹脂組成物は、上記組成物(A)と組成物(B)を、それぞれ、製造した後に、これらを混合することによって得ることができる。
組成物(A)と組成物(B)を、それぞれ、作製してからこれらを混合すると、すぐにゲル化しないため、組成物(A)と組成物(B)の原料である上記(1)テトラアルコキシシラン、(2)トリアルコキシシラン、(3)ジアルコキシシラン、及び酸化シリコン粒子を全て混合してから触媒及び水の存在下に反応させるよりも、組成物(A)及び組成物(B)をそれぞれ作製してからこれらを混合することが好ましい。
【0047】
本発明のトレンチ埋め込み用組成物は、上記組成物(A)と組成物(B)を重量比で約1:9〜約9:1の範囲で混合することによって得ることができる。混合する方法としては通常の方法を使用することができ、混合する際の温度は約0℃〜100℃の範囲であることができる。
組成物(A)と組成物(B)を混合することによって得られる本発明のトレンチ埋め込み用樹脂組成物に含まれる酸化シリコン粒子は、トレンチ埋め込み用樹脂組成物全体に対して約0.35質量%以上2.20質量%以下であり、一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランの割合は、一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して、約47mol%以上87mol%以下であり、一般式(2)で表されるトリアルコキシシランの割合は、一般式(1)〜(3)で表される化合物の合計に対して、約10mol%以上50mol%以下であり、そして一般式(3)で表されるジアルコキシシランの割合は、一般式(1)〜(3)で表される成分の合計に対して、約1.5mol%以上3.6mol%以下であることが好ましい。
【0048】
酸化シリコン粒子や一般式(1)〜(3)で表されるアルコキシシランが上記範囲内にあると、トレンチ埋め込み用樹脂組成物がゲル化せず、得られた膜質が良いため、該範囲が好ましい。
本発明のトレンチ埋め込み用樹脂組成物には、多価アルコールのモノエーテル溶媒がさらに含まれていることが好ましく、多価アルコールのモノエーテル溶媒は、組成物(A)、組成物(B)中に含まれていてもよく、また組成物(A)と組成物(B)を混合した後に添加してもよい。
【0049】
本発明に係るトレンチ埋め込み用樹脂組成物に多価アルコールのモノエーテル溶媒が含まれると、トレンチへの埋め込み性が良くなるため、好ましい。
上記多価アルコールのモノエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル溶媒、プロピレングリコールモノアルキルエーテル溶媒、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル溶媒を挙げることができる。
【0050】
上記エチレングリコールモノアルキルエーテル溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等を挙げることができる。
上記プロピレングリコールモノアルキルエーテル溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
上記ジエチレングリコールモノアルキルエーテル溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0051】
前記した方法により製造されたトレンチ埋め込み用樹脂組成物は、通常の方法で塗布することができる。例えば、スピンコート法、ディップコート法、ローラーブレード塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。これらの方法で塗布した後、塗布膜中の残存溶媒を除くため約50〜200℃で予備硬化することが好ましい。
予備硬化させて得られた膜を通常の方法で酸化、加熱焼成することによって酸化物を得ることができる。
本硬化の酸化、加熱焼成方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス等による加熱適用が挙げられる。酸化、加熱焼成時の雰囲気としては、空気や酸素又は水蒸気酸化のいずれを用いても構わない。酸化、加熱焼成温度としては約300〜850℃の範囲で行われ、酸化後にN2やAr等の不活性雰囲気下で焼成しても構わない。
【0052】
酸化、加熱焼成工程時の圧力は、特に制限は無く、加圧下、常圧下、減圧下又は真空中のいずれの圧力でも使用することができる。
本発明のトレンチ埋め込み用樹脂組成物を使用して得られた絶縁膜は、例えば、フラッシュメモリ等の絶縁膜として好適である。
以下、非制限的な実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0053】
合成例1−1:組成物Aの合成
テトラエトキシシラン14.05gとメチルトリエトキシシラン45gを混合し、この混合液を攪拌しながら、酸化シリコン粒子(LEVASIL300/30%(H.C.Starck(株)製、水分散、平均一次粒径9nm、比表面積300m2/g))17.5gを添加した。その後5分間攪拌した。次に硝酸(1N)2.95mlとエチレングリコールモノエチルエーテル51.2gを加え、30分間攪拌して組成物Aを得た。
【0054】
合成例1−2:組成物Aの合成
合成例1−1において酸化シリコン粒子を添加せずに、代わりに酸化シリコン粒子に含まれる水と同量の水を添加して、その他は合成例1−1と同条件で組成物Aを得た。
【0055】
合成例1−3:組成物Aの合成
合成例1−1においてメチルトリエトキシシランを添加せずに、その他は合成例1−1と同条件で組成物Aを得た。
【0056】
合成例1−4:組成物Aの合成
合成例1−2においてエチレングリコールモノエチルエーテルを添加せずに、代わりに1−ブタノールを添加し、その他は合成例1−2と同条件で組成物Aを得た。
【0057】
合成例2−1:組成物Bの合成
エタノール12.8gにテトラエトキシシラン9.9gとジエトキシジメチルシラン0.3gを加え、攪拌した。ここへ水6.9gと硝酸(1N)750μlを、ゆっくりと滴下した。その後50℃で4時間攪拌して組成物Bを得た。
【0058】
合成例2−2:組成物Bの合成
合成例2−1においてジエトキシジメチルシランを添加せずに、その他は合成例2−1と同条件で組成物Bを得た。
【0059】
実施例1:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−1で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比1:9で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0060】
実施例2:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−1で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比2:8で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0061】
実施例3:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−1で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比5:5で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0062】
比較例1:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−1で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比0.5:9.5で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0063】
比較例2:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−1で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比8:2で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0064】
比較例3:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−2で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比2:8で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0065】
比較例4:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−3で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比2:8で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0066】
比較例5:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−1で得られた組成物Aと、合成例2−2で得られた組成物Bを重量比2:8で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
【0067】
比較例6:トレンチ埋め込み用樹脂組成物の調製
合成例1−4で得られた組成物Aと、合成例2−1で得られた組成物Bを重量比2:8で混合し、攪拌してトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得た。
以上、合成例と実施例・比較例についてまとめたものを、以下の表1と2に示す。
【0068】
製膜試験
実施例1〜3、比較例1〜6で得られたトレンチ埋め込み用樹脂組成物を、6インチシリコンウエハー基板にスピンコーターで塗布した後、ホットプレート上で、50℃で5分間、100℃で5分間、200℃で5分間ずつ、順次予備硬化した。次いで、酸素雰囲気中にて850℃で本硬化させることによりシリコン酸化物を得た。これらのHFエッチレート(焼成後に1%HF水溶液中に1分間浸漬させ、単位時間当たりの膜減量をHFエッチレート(Å/min)とした。)、クラック限界膜厚(Å)についての結果を、以下の表2に示す。HFエッチレートについては、<100Å/minのものを○、そうでないものと×で、クラック限界膜厚については、焼成後の膜厚が>7000Åのものを○、そうでないものと×で評価した。
【0069】
トレンチ埋め込み試験
実施例1〜3、比較例1〜6で得られたトレンチ埋め込み用樹脂組成物を、幅30nm、深さ450nmのトレンチを有する基板にスピンコーターで塗布した後、ホットプレート上で、50℃で5分間、100℃で5分間、200℃で5分間ずつ、順次予備硬化した。次いで、酸素雰囲気中にて850℃で本硬化させることによりシリコン酸化物を得た。
この基板をトレンチと直交する方向に切断し、その断面をSEMにより観察した。実施例1〜3、比較例3については、トレンチ内部はすべて満たされており、埋め込み性は非常に良好であった。比較例1、2、4〜6については、トレンチ内部に多数のボイドが発生しており、トレンチ埋め込み性は不良であった。表2中、トレンチ埋め込み性が良好なものを○で、そうでないものと×で評価した。
以上より明らかであるように、本発明によって微細、高アスペクト比のトレンチへの埋め込み性が高く、HF耐性が高く、厚膜でもクラックが発生しにくいトレンチ埋め込み用樹脂組成物を得ることができる。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の組成物は、半導体素子に形成されたトレンチ内の絶縁保護膜用トレンチ埋め込み用樹脂組成物の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化シリコン粒子と、
下記一般式(1):
Si(OR
{式中、Rは、一般式(1)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。}で表されるテトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解縮合物と、
下記一般式(2):
Si(OR
{式中、Rは、一般式(2)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてRは、一般式(2)と(3)の間で独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。}で表されるトリアルコキシシラン化合物又はその加水分解縮合物とからなる縮合反応物(A)、並びに
上記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解縮合物と、
下記一般式(3):
Si(OR
{式中、Rは、一般式(3)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてRは、一般式(3)内で及び一般式(1)〜(3)の間でそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。}で表されるジアルコキシシラン化合物又はその加水分解縮合物とからなる縮合反応物(B)、
を含有するトレンチ埋め込み用樹脂組成物であって、トレンチ埋め込み用樹脂組成物全体に対して、該酸化シリコン粒子は0.35質量%以上2.20質量%以下で含有され、そして前記縮合反応において使用される一般式(1)〜(3)でそれぞれ表されるテトラ〜ジアルコキシシラン化合物の合計に対して、一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランは47mol%以上87mol%以下で、一般式(2)で表されるトリアルコキシシランは10mol%以上50mol%以下で、かつ、一般式(3)で表されるジアルコキシシランは1.5mol%以上3.6mol%以下で使用されることを特徴とする前記組成物。
【請求項2】
多価アルコールのモノエーテル溶媒をさらに含有する、請求項1に記載のトレンチ埋め込み用樹脂組成物。
【請求項3】
前記多価アルコールのモノエーテル溶媒を3重量%〜80重量%で含有する、請求項2に記載のトレンチ埋め込み用樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−16823(P2013−16823A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183054(P2012−183054)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【分割の表示】特願2008−248925(P2008−248925)の分割
【原出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】