説明

ナビゲーション装置

【課題】先の案内ポイントと次の案内ポイントとの距離が短い場合でも、ナビゲーション装置が、次の案内ポイントの情報を運転者に対して正しく報知する。
【解決手段】先の案内ポイントと次の案内ポイントとの距離が、基本報知領域より短い場合には、案内モード設定手段25が基本報知領域より短い短縮報知領域を設定すると共に、この短縮報知領域に対して基本報知領域の報知ポイントと略等しい数の報知ポイントを設定し、車体が報知ポイントに達する毎に、案内処理手段26が、2つの振動体VL、VRのうち案内ポイントにおける案内方向と同じ方向のものを振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位情報に基づいて車体の現在位置を取得し、この現在位置が走行経路上の案内ポイントに接近したことを判別した際に、報知出力を行うことで運転者に案内ポイントを認識させる案内処理手段を備えているナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたナビゲーション装置として、特許文献1と特許文献2とに記載されるものが存在する。つまり、特許文献1では、GPS受信装置等で取得した測位情報に基づいて、車体の現在位置を中心とした周辺地図をディスプレイに表示し、現在位置から目標位置までの経路検索を行い、その経路中に交差点等の案内ポイントを設定し、車体が案内ポイントに接近した場合には、700m、300m、100m手前の位置において案内ポイントまでの距離、交差点の名称、案内方向等の情報を人の言葉による音声で出力するように基本的な情報出力形態が設定されると共に、交差点と交差点との距離が近い場合のように、先の案内ポイントに対する音声の出力と、次の案内ポイントに対する音声の出力とが重複する場合には、音声を繋ぎ合わせて出力するように処理形態が設定されている。
【0003】
また、特許文献2では、GPS電波に基づいて取得した測位情報から自動車が走行すべき移動経路(走行ルート)を設定してディスプレイに表示すると共に、交差点や分岐点等の案内ポイントに車体が達する以前に案内ポイントまでの距離の報知を音声によって行い、運転者用のシートに備えた右振動体と左振動体とのうち案内方向に対応するものを作動させる処理を行う。
【0004】
この特許文献2では、右振動体と左振動体とのうち案内ポイントで案内する方向に対応するものを作動対象に設定し、車体が案内ポイントに接近するほど音声による報知インターバルと、振動体の作動インターバルとを短くし、また、この振動体の駆動ゲインを増大させるように処理形態が設定されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002‐202147号公報 (段落番号〔0020〕〜〔0038〕、図5〜図9)
【特許文献2】特開2000‐221051号公報 (段落番号〔0027〕〜〔0062〕、図1〜図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナビゲーション装置での報知に従って走行経路を走行する際には、車体が交差点等の案内ポイントに達する以前に、その交差点での案内方向(左折又は右折)を運転者に対して早期に報知することが適正に走行経路を走行する点において重要である。
【0007】
この報知の形態として、特許文献1、2に示されるように、車体が案内ポイントに対して設定距離まで接近した時点で最初の報知を行い、車体が案内ポイントに達するまでに、案内ポイントに接近するほど報知のインターバルを短く設定して複数回の報知を行うことが運転者に対して確実に情報を伝える点において重要となる。
【0008】
先の交差点と次の交差点との距離が近い場合には、特許文献1において課題として記載されるように、報知の音声が重複し、運転者が情報を正確に把握できないことが考えられ、短い電子音で報知を行うことや、特許文献2に記載されるように振動体により報知を行うことも考えられる。
【0009】
しかしながら、先の交差点と次の交差点との距離が、最初の報知を開始する距離より短い状況において、設定されたインターバルで複数回の報知を行うものを考えると、先の交差点を通過した時点で、次の交差点に対応して行うべき報知のタイミングを逸しているため、報知の回数が大きく低下することになり、運転者が報知を適正に認識できないことも考えられ、改善の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、先の案内ポイントと次の案内ポイントとの距離が、報知を開始する距離より短い場合でも、次の案内ポイントの情報を運転者に対して確実に報知するナビゲーション装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、測位情報に基づいて車体の現在位置を取得し、この現在位置が走行経路上の案内ポイントに接近したことを判別した際に、報知出力を行うことで運転者に案内ポイントを認識させる案内処理手段を備えると共に、
この案内処理手段は、前記案内ポイントの手前側の走行経路上に基本報知領域を設定し、この基本報知領域に設定された複数の報知ポイントに前記車体が達する毎に前記報知出力を行う基本出力モードと、
先に通過する案内ポイントから次の案内ポイントまでの距離が前記基本報知領域より短いことを判別した際に、この基本報知領域より短い短縮報知領域を設定し、この短縮報知領域に対して前記基本報知領域における報知ポイントの数と一致する数又は近似する数の報知ポイントを設定し、この複数の報知ポイントに前記車体が達する毎に、前記報知出力を行う短縮出力モードとを備えた点にある。
【0012】
この構成により、車体が案内ポイントに接近した場合には、案内処理手段が基本報知領域に認定された複数の報知ポイントに車体が達する毎に報知を行う。また、この案内ポイント(先に通過する案内ポイント)から次の案内ポイントまでの距離が基本報知領域より短いことを判別した際には、案内処理手段が前記基本報知領域より短い短縮報知領域を設定し、この短縮報知領域に設定された複数の報知ポイントに車体が達する毎に報知を行う。この短縮報知領域には、前記基本報知領域に認定され報知ポイントの数と略等しい数の複数の報知ポイントが設定されているので、運転者は、この短縮報知領域においても基本報知領域を走行する際と同様の数の報知に基づいて案内ポイントを認識できる。その結果、先の案内ポイントと次の案内ポイントとの距離が短い場合でも、次の案内ポイントの情報を運転者に対して確実に報知するナビゲーション装置が合理的に構成された。
【0013】
本発明は、前記短縮出力モードとして、前記短縮報知領域として異なる距離のものが複数準備され、前記案内処理手段は、この複数の短縮報知領域の中から、前記先に通過する案内ポイントから次の案内ポイントまでの距離に対応した1つを選択しても良い。
【0014】
この構成により、先に通過する案内ポイントと次の案内ポイントとの距離に対応して複数の短縮報知領域のうち適したものを選択することが可能となる。
【0015】
本発明は、前記基本報知領域と短縮報知領域とに設定される複数の報知ポイント同士の間隔を、前記案内ポイントに近いほど短く設定しても良い。
【0016】
この構成によると、車体が案内ポイントに接近するほど短いインターバルで報知を行うことになり、案内ポイントに接近したことを報知のインターバルから容易に把握できる。
【0017】
本発明は、前記報知出力を行う報知機構として、振動を運転者に伝えるバイブレータを備えると共に、前記案内処理手段は、前記複数の出力ポイントのうち前記案内ポイントに近いものほど前記バイブレータを強く駆動しても良い。
【0018】
この構成によると、運転者は案内ポイントに接近するほど強い振動を感ずることにより、例えば、外部の騒音等の妨げされることなく、案内ポイントに接近したことを適正に把握できる。
【0019】
本発明は、前記バイブレータが、運転座席の左側に備えた左振動体と、右側に備えた右振動体とで構成され、前記案内処理手段は、前記左振動体と右振動体のうち、案内ポイントでの前記車体の案内方向に対応した側を前記出力ポイント毎に駆動しても良い。
【0020】
この構成によると、運転者は振動体の振動から案内ポイントでの案内方向を誤りなく把握して、案内ポイントにおいて案内された方向に走行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1及び図2には乗用車の運転座席1の近傍位置を示しており、運転座席1の前方位置にはステアリングホイール2と、メータパネル3とが配置され、このメータパネル3の側部位置のコンソール4の上部にナビゲーション装置Nが備えられている。
【0022】
前記ナビゲーション装置Nは、図3に示すように、アンテナ11Aを備えたGPS受信器11と(GPSとは Global Positioning Systemの略)、アンテナ12Aを備えたVICS受信機12と(VICSとは Vehicle Information and Communication Systemの略: 登録商標)、方位センサ13と、車速センサ14とで取得した情報をナビコントローラ20に入力するナビ情報の取得系を備えると共に、このナビコントローラ20からの情報をディスプレイ15と、スピーカ16(報知機構の一例)と、左振動体VL及び右振動体VRで成るバイブレータV(報知機構の一例)とに出力するナビ情報の出力系を備え、更に、ナビコントローラ20に対して複数の入力スイッチ17、ディスプレイ15の表示面に形成したタッチパネル15Tからの人為操作情報の取得系を備え、ハードディスクHD、メディアドライブMDとの間で情報のアクセス系を備えている。
【0023】
前記ディスプレイ15は、カラー表示が可能な液晶型のものが用いられ、車体を経路に沿って走行させる際の案内情報が表示される。前記スピーカ16は音声情報を出力する。尚、ディスプレイ15として液晶型を用いているがCRTやプラズマディスプレイを用いて良い。また、スピーカ16は図1、図2に示す如く、車体の左右のドアーの内面側に備えたものを用いているが、ナビゲーション装置Nの本体に備えても良い。
【0024】
前記左振動体VL及び右振動体VRは、電動モータの出力軸に偏芯ウエイトを連結し、出力軸の回転により振動を発生させる構造のものを用いているが、電磁石のコイルに間歇的に電力を供給することや、交流電力を供給することで振動を発生させる構造のものを使用しても良い。
【0025】
このナビゲーション装置Nは、複数のGPS衛星からの信号をGPS受信器11で受信することにより、車体(自車輌)が存在する位置情報(経度・緯度で示される測位情報)をリアルタイムで取得し、この位置情報と、方位センサ13で取得する車体の走行方向情報と、車速センサ14で取得する車速情報とからディスプレイ15に表示された地図上に車体(自車輌)の位置と、走行方向とを表示する位置表示処理を実現する。
【0026】
このナビゲーション装置Nは、目標地設定モードにおいて前記複数の入力スイッチ17、あるいは、タッチパネル15Tの操作によって目的地を指定することにより、その目的地に至るために走行すべき走行経路R(推奨走行経路・図5を参照)がナビゲーション装置Nでの処理によって求められる。前記目的地は、個人の住所や、特定の地番、郵便番号を入力すること、あるいは、目的地を含む地図をディスプレイ15に表示し、その地図上の目的地を直接的に指定する等の操作によって指定が可能である。前記走行経路R(推奨走行経路)は、走行距離が最短となるもの、走行時間が最短になるもののうち運転者が選択したもの、あるいは、運転者が指定したルートを含むものを探索して求めるように処理形態が設定されている。
【0027】
そして、車体の走行時には、ディスプレイ15に地図を表示し、この地図上に走行経路Rと、車体の位置を表示する。更に、走行経路上に存在する交差点や分岐点等の案内ポイントGP(図5を参照)に車体が達する以前に、その案内ポイントに関連する情報をディスプレイ15に表示し、スピーカ16に出力し、左振動体VL及び右振動体VRの何れかを駆動することにより、運転者に対して案内ポイントGPに接近したことを認識させ、案内ポイントGPでの案内方向(左折や右折の方向)を報知する経路案内処理を実現する。
【0028】
このナビゲーション装置Nは、走行時において前記VICS受信機12によってVICS用の電波ビーコン(光ビーコンに対応するものでも良い)や、FM放送に多重されたVICS信号を受信することで走行経路Rの渋滞情報、現在位置情報、駐車場情報等の各種交通情報を取得してディスプレイ15やスピーカ16に出力する周辺情報出力処理を実現する。
【0029】
前記方位センサ13は、地磁気センサやジャイロセンサ等を備えることにより車体の走行方向の情報を出力する。前記車速センサ14は車輪の単位時間内の回転数から車体の走行速度の情報を出力する。
【0030】
図1及び図2に示すように、前記運転座席1は、シートクッション部1Aと、シートバック部1Bと、ヘッドレスト部1Cとで構成され、シートクッション部1Aに前記左振動体VLと右振動体VRとを左右に振り分けて配置している。このように左振動体VLと右振動体VRとを備えることにより、案内ポイントGPでの案内方向が、例えば、右折である場合には、右振動体VRを駆動し、その振動を運転者の右脚に伝えることで案内方向を運転者に認識させ得るものにしている。
【0031】
本発明では、前記左振動体VLと右振動体VRとを運転座席1のシートクッション部1Aに備えなくても良く、例えば、直進姿勢におけるステアリングホイール2の左右に備えることや、シートベルトのように運転者の体に直接的に接触させるものに備えても良い。
【0032】
前記タッチパネル15Tは、前記ディスプレイ15の表示面に形成され、運転者が指等を接触させることにより、その接触位置の情報を出力する。前記複数の入力スイッチ17は人操作によって選択や設定を実現する。
【0033】
前記ハードディスクHDは、情報記憶手段として機能するものであり、地図情報のデータベースと、道路情報のデータベース等が予め記憶されている。これらのデータベースは前記メディアドライブMDにセットされたCD−RやDVD等から取り込まれ、ナビコントローラ20がハードディスクHDに記憶する。
【0034】
前記メディアドライブMDは、CD−RやDVD等のディスク型のメディアに対応したものに限らず、コンパクトフラッシュ(登録商標)・スマートメディア(登録商標)・メモリースティック(登録商標)、SDメモリカード( SanDisk、松下電器産業、東芝の3社が共同開発したメモリカードの規格)等のフラッシュメモリとの間で情報のアクセスを実現する構造のものであっても良い。
【0035】
〔ナビコントローラの構成〕
前記ナビコントローラ20は、図面には示していないが、情報処理を行うCPU(central processing unit )、情報を記憶する半導体メモリ、入出力用のインタフェース等のハードウエアを備えると共に、半導体メモリに展開されたプログラム、このプログラムを管理するOS(operating system)等のソフトウエアを備えている。
【0036】
このナビコントローラ20での処理を実現する処理系の概要を図4のように示すことが可能である。つまり、このナビコントローラ20には、前記GPS受信器11からの測位情報、方位センサ13からの方位情報、車速センサ14からの車速情報に基づいて車体の現在位置を取得する現在位置取得手段21と、現在位置に対応する地図情報と走行経路Rとを抽出するマッチング処理手段22と、マッチング処理手段22が抽出した地図情報と走行経路Rとからディスプレイ15に表示可能な情報を生成する表示処理手段23とで成る位置表示処理系を備えている。
【0037】
この位置表示処理系での処理を行う際に地図上に表示される走行経路R(推奨走行経路)の情報は、前述したように、目標地設定モードにおいて指定された目標値に目標地と、運転者が選択した条件等と、車体の現在位置と、道路情報のデータベースとに基づいて走行経路設定手段24が探索処理によって求め、前記ハードディスクHDや半導体メモリに記憶する。
【0038】
このナビコントローラ20には、前記車速センサ14からの車速情報に基づいて案内モードを設定する案内モード設定手段25と、この案内モード設定手段25からの情報が入力し、かつ、この案内モードにおいて選択された基本出力モードと短縮出力モードとの何れか一方に基づいて案内(報知を含む)を行う案内処理手段26とで成る経路案内処理系を備えている。
【0039】
図6及び図7に示すように、前記基本出力モードの基本報知領域Fと、短縮出力モードの短縮報知領域Cとには複数の報知ポイントT(Ta〜Td)が設定されている。この経路案内処理系では、車体が交差点等の案内ポイントGPの手前側に位置する状態で、前記基本報知領域Fと短縮報知領域Cとに設定された報知ポイントTに達する毎に報知を行うものである。この報知出力については後述する。
【0040】
このナビコントローラ20には、前記VICS受信機12から渋滞情報、現在位置情報、駐車場情報等の各種交通情報を取得する情報取得手段27で成る周辺情報出力処理系を備えている。
【0041】
このナビコントローラ20には、前記ディスプレイ15に画像情報を出力する画像出力回路31、前記スピーカ16に音声情報を出力する音声出力回路32、前記左振動体VLと右振動体VRとを駆動する振動体駆動回路33夫々を備えている。尚、振動体駆動回路33はデューティ制御によって左振動体VLと右振動体VRとに供給する電圧を調節できるように構成されている。
【0042】
このナビコントローラ20では、前記現在位置取得手段21、マッチング処理手段22、表示処理手段23、走行経路設定手段24、案内モード設定手段25、案内処理手段26夫々として前述したように半導体メモリに展開したプログラム(ソフトウエア)で構成するものであるが、ロジック等のハードウエアで構成することや、ハードウエアとの組み合わせによって構成するものであっても良い。
【0043】
〔制御形態・メインルーチン〕
本発明のナビゲーション装置Nによる基本的な処理形態を図8のフローチャートに示している。つまり、走行経路Rに基づいて案内ポイントと案内方向とを設定する(#01ステップ)。
【0044】
この処理を実行する際には、前述したように目的地を指定することにより、前記現在位置取得手段21で取得した車体の現在位置と、ハードディスクHDに記憶されている道路情報のデータベースとに基づいて走行経路設定手段24が探索処理によって走行経路R(推奨走行経路)を求め、前記ハードディスクHDや半導体メモリに記憶する処理を予め行う必要がある。
【0045】
このように走行経路RがハードディスクHDに記憶された後には、前記案内処理手段26が走行経路RをハードディスクHDから取得し、この案内処理手段26が、走行経路Rに存在する交差点や分岐点を案内ポイントGPを設定し、その案内ポイントGPでの走行方向(左折や右折)を設定してハードディスクHDやメモリ等に保存する。
【0046】
次に、前記車速センサ14から取得した車体の走行速度に基づいて前記案内モード設定手段25が案内モードを設定する(#02、#03ステップ)。
【0047】
前記案内モードとは、案内ポイントGPを基準にして、この案内ポイントGPから手前側(車体側)に設定距離だけ離れた位置を報知開始ポイントTsとして車体の走行速度に基づいて設定し、案内ポイントGPと報知開始ポイントTsとの間の領域を基本報知領域F(基本出力モードの場合)に設定する処理である。
【0048】
具体的には、高速道路での報知開始ポイントTsを、一般道路における報知開始ポイントTsより長く設定している。一般道路における報知開始ポイントTsは案内ポイントGPから手前側の300mの位置に設定され、高速道路における報知開始ポイントTsは図6に示すように、案内ポイントGPから手前側の1000mに設定される(基本出力モードの場合)。
【0049】
このように報知開始ポイントTsを設定することにより、高速道路を走行している場合でも、一般道路を走行している場合でも、報知開始ポイントTsから案内ポイントGPに到達するまでの時間内(基本報知領域Fを走行する際)において、等しい間隔で複数回の報知を行い、案内ポイントGPの情報を運転者に認識させ得るのである。
【0050】
次に、前記案内ポイント同士の距離D(図5を参照)に基づいて、案内モードに対応した出力モードを設定する(#03ステップ)。この出力モードの設定時には、基本報知領域Fより短い距離として予め設定された設定距離(本実施形態では、550m)に基づいて基本報知領域Fと、短縮報知領域Cとの何れか一方が選択されると共に、これに対応する報知ポイントTとが設定される。
【0051】
つまり、図5に示す先に通過する案内ポイントGPから次の案内ポイントGPまでの距離Dが、基本報知領域Fより短いこともある。このような状況では、先の案内ポイントGPに対するバイブレータVの報知出力と、次の案内ポイントGPに対するバイブレータVの報知出力とを重複させないために、先の案内ポイントGPに対するバイブレータVの報知出力を終了した後に、次の案内ポイントGPに対するバイブレータVの報知出力を行うように処理形態が採用されている。
【0052】
図5に示すように、高速道路において(高速走行時において)、先に通過する案内ポイントGP(同図では左側)から、次の案内ポイントGP(同図では右側)まで距離Dが、基本報知領域Fの距離より充分に長い状況では、出力モードとして基本出力モードが設定され、図6に示すように、この基本出力モードの基本報知領域Fにおいて同図に示すように複数の報知ポイントTa〜Tdが設定される(前記報知ポイントTは、複数の報知ポイントTa〜Tdの上位概念)。
【0053】
これに対して、先に通過する案内ポイントGPから、次の案内ポイントGPまでの距離Dが、前記基本報知領域Fより短い状況では、出力モードとして短縮出力モードが設定され、更に、図7に示すように、この短縮出力モードの短縮報知領域Cにおいて、複数の報知ポイントTa〜Tdが設定される。特に、この短縮報知領域Cが設定される際には、この短縮報知領域Cより更に手前側の位置に、音声での報知を行うための予備報知ポイントTxが設定される。
【0054】
次に、前記GPS受信器11からの測位情報、方位センサ13からの方位情報、車速センサ14からの車速情報に基づいて前記現在位置取得手段21が車体の現在位置を取得し、この現在位置に基づいて、車体の現在位置と走行経路Rとが対応する位置の地図情報と重ね合わせた状態でディスプレイ15に表示される(#04ステップ)。
【0055】
前記マッチング処理手段22は、現在位置取得手段21で取得した現在位置に対応した地図情報と、走行経路情報とを前記ハードディスクHDから取得し、この地図情報と経路情報とから表示処理手段23がディスプレイ15の画面に表示可能な画像データを生成し、このように生成された画像データが前記画像出力回路31を介してディスプレイ15に出力される。
【0056】
この位置表示処理系の処理を行う状況において車体を走行させた場合には、車体の表示位置が固定された状態でディスプレイ15に表示される地図情報がスクロールされる表示形態となる。
【0057】
次に、出力モードを判別し、この判別に基づいて基本出力モードでの報知処理と、短縮出力モードでの報知処理を行い、これらの処理を反復して行う(#05、#100、#200、#06ステップ)。
【0058】
〔制御形態・タイミングチャート〕
基準出力モードでは図6に示すタイミングチャートが設定される。具体的には、高速走行時においては、案内ポイントGPを基準から1000m手前側に最初の報知開始ポイントTsが設定され、基本報知領域Fに複数の報知ポイントTa〜Tdが設定される。初期の2つの報知ポイントTaのうち最初のものは報知開始ポイントTsと一致する。
【0059】
この先頭の4つの報知ポイントTa、Tbの相対的な報知間隔W1が125mに設定され、これに続く3つの報知ポイントTcの相対的な報知間隔W2が100mに設定される。尚、最終の報知ポイントTdと案内ポイントGPとの間隔W3が200mになる。
【0060】
最初の2つの報知ポイントTaでは、バイブレータVを設定された駆動時間P1で設定された強度で駆動する。次の2つの報知ポイントTbでは、直前の報知ポイントTaと等しい駆動時間P1で、これらより強くバイブレータVを駆動する。更に次の3つの報知ポイントTcでは、これ以前の4つの報知ポイントTa、Tbの2倍となる時間P2で、これらより強くバイブレータVを駆動する。最後の報知ポイントTdでは、直前の報知ポイントTcより長い駆動時間P3で最も強くバイブレータVを駆動する。
【0061】
尚、最初の2つの報知ポイントTaにおいて左右の振動体VL、VRに供給される電圧が5Vに設定され、次の2つの報知ポイントTbにおいて振動体VL、VRに供給される電圧が6Vに設定され、次の3つの報知ポイントTcにおいて振動体VL、VRに供給される電圧が6.5Vに設定され、最後の報知ポイントTdにおいて振動体VL、VRに供給される電圧が7Vに設定されている。これにより案内ポイントGPに車体が接近するほど振動体VL、VRの振動強度が高くなる。
【0062】
短縮出力モードでは図7に示すタイミングチャートが設定される。具体的には、高速走行時においては、案内ポイントGPを基準から500m手前側に最初の報知開始ポイントTsが設定され、短縮報知領域に複数の報知ポイントTb〜Tdが設定される。初期の2つの報知ポイントTbのうち最初のものが報知開始ポイントTsと一致する。
【0063】
この短縮出力モードでは、案内ポイントGPの手前側の1000mの位置に前記予備報知ポイントTxが設定される。この予備報知ポイントTxは、基準出力モードにおける報知開始ポイントTsと一致する。
【0064】
この短縮出力モードのタイミングチャートでは、前記基準出力モードのタイミングチャートから初期の2つの報知ポイントTaを取り除き、次の報知ポイントTbから最後の報知ポイントTdとの距離を短縮した構造となっており、対応する各報知ポイントTでのバイブレータVの駆動時間と駆動の強度は基準出力モードにおいて対応するものと等しく設定されている。
【0065】
同図に示す如く、先頭の2つの報知ポイントTbの相対的な報知間隔W4が75mに設定され、これに続く次の3つの報知ポイントTcの相対的な報知間隔W5が50mに設定されている。
【0066】
〔制御形態・サブルーチン・基本出力モード〕
基本出力モードでの報知処理ルーチン(#100ステップ)では、報知開始ポイントTsを車体が通過している場合を除いて、車体が報知開始ポイントTsに達したか否かを判定し、報知開始ポイントTsに達したことを判定して場合にのみ、最初の報知を行う(#101〜#103ステップ)。尚、この処理では、案内ポイントGPにおいて車体を右側(右折方向)に案内するものとして説明する。
【0067】
この最初の報知出力(#103ステップ)では、音声によって「およそ1km先、右方向です」とのメッセージを出力し、拡大地図をディスプレイ15に表示し、案内方向に対応して右側の振動体VRを設定時間(P1)だけ、設定強度で駆動する。
【0068】
この後(車体が報知開始ポイントTsを車体が既に通過している場合)には、車体が報知ポイントTに達する毎に報知出力を行う(#104、#105ステップ)。
【0069】
この報知出力(#105ステップ)では、各報知ポイントTに達する毎に右側の振動体VRを設定時間だけ、設定強度で駆動し、複数の報知ポイントTのうち中間に存在する報知ポイントTにおいて、音声によって「まもなく右方向です」とのメッセージを出力し、最後の報知ポイントTdにおいて側の振動体VRを設定時間(P3)だけ、設定強度で駆動すると同時に、前記スピーカ16から電子音(チャイム)を出力する。
【0070】
〔制御形態・サブルーチン・短縮出力モード〕
短縮出力モードでの報知処理ルーチン(#200ステップ)では、予備報知ポイントTxを既に通過している場合を除いて、予備報知ポイントTxに達したか否かを判定し、予備報知ポイントTxに達したことを判定した場合にのみ、予備報知出力を行う(#201〜#203ステップ)。尚、この処理でも、案内ポイントGPにおいて車体を右側(右折方向)に案内するものとして説明する。
【0071】
この予備報知出力(#203ステップ)では、前記スピーカ16から音声によって「およそ1km先、右方向です」とのメッセージを出力し、ディスプレイ15の画面の一部に案内ポイントGPの拡大地図を表示する。尚、この予備報知出力(#203ステップ)では、直前の(先の)案内ポイントGPに対する報知出力が継続されていることが想定されるので、バイブレータVは駆動せず、また、直前の(先の)案内ポイントGPに対して拡大画面がディスプレイ15に表示されていることも想定されるので、この拡大画面は先に表示されたものと重ならない位置に表示する。
【0072】
次に、予備報知ポイントTxを車体が既に通過している場合には、報知開始ポイントTsを既に通過して場合を除いて、報知開始ポイントTsに達したかを判定し、報知開始ポイントTsに達したことを判定して場合にのみ、最初の報知を行う(#204〜#206ステップ)。
【0073】
この最初の報知出力(#206ステップ)では、音声によって「まもなく右側です」とのメッセージを出力し、右側の振動体VRを設定時間(P1)だけ、設定強度で駆動する。
【0074】
この後(車体が報知開始ポイントTsを車体が既に通過している場合)には、車体が各報知ポイントTに達する毎に報知出力を行う(#207、#208ステップ)。
【0075】
この報知出力(#208ステップ)では、報知ポイントTに達する毎に右側の振動体VRを設定時間だけ、設定強度で駆動し、最後の報知ポイントTdにおいて側の振動体VRを設定時間(P3)だけ、設定強度で駆動すると同時に、前記スピーカ16から電子音(チャイム)を出力する。
【0076】
このように本発明によると、ナビゲーション装置Nに走行経路Rを設定し、この走行経路Rに車体を走行させる場合には、車体の走行速度に基づいて案内モードを設定することにより、高速道路を走行する場合と、一般道を走行する場合との何れの場合でも、報知ポイントTでの報知の間隔に違和感のないものにしている。また、報知ポイントTにおいては、左振動体VLと右振動体VRとの何れか一方を駆動することにより、車体の案内方向を運転者の脚に対して複数回、直接的に振動によって伝え、案内方向を適正に把握できるものにしている。
【0077】
特に、案内ポイントGPが比較的短い距離で連続する場合には、先の案内ポイントGPに対する報知が継続する状況でも、次の案内ポイントGPに対する音声によるメッセージの出力だけは先に行い、この後、先の案内ポイントGPを通過した後に、これに続く案内ポイントGPに対する報知が各報知ポイント毎に行われる。
【0078】
つまり、対象とする案内ポイントGPの基本報知領域F(手前側の1000m以内)に先の案内ポイントGPが存在しない場合には、基本出力モードが設定されることにより、その案内ポイントGPの1000m手前から基本報知領域Fに設定した複数の報知ポイントT毎に報知を行う。対象とする案内ポイントGPの基本報知領域Fに先の案内ポイントGPが存在する場合には、短縮出力モードを設定し、バイブレータVの重複した報知を排除する。この短縮出力モードでは、前述したように、音声による報知を先に行っておき、対応する短縮報知領域Cにおいて、基本報知領域Fと略等しい数の報知ポイントTを設定する。夫々の報知ポイントTの間隔を短く設定することにより、報知ポイントTの低減に伴う誤認識を排除して適正に案内方向を把握できるものにしている。
【0079】
この実施形態では、高速走行時に先の案内ポイントGPと次の案内ポイントGPとの距離Dが550mを超える場合には、出力モードとして短縮出力モードが設定されない。しかし、対象とする案内ポイントGPの基本報知領域Fの各報知ポイントTに車体が達した場合でも、先の案内ポイントGPに対応して設定された基本報知領域F又は短縮報知領域Cを通過するまでは、バイブレータVでの報知出力を制限するように、前記案内処理手段26の処理形態が設定されている。
【0080】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い。
【0081】
(a)図8の#02ステップでの処理では、車体の走行速度に基づいて、2つの案内モードの何れか一方を選択していたが、これに代えて、3つ以上の案内モードを設定しておき、車体の走行速度に対応する1つを選択することで3つ以上の報知開始ポイントTsを設定するように処理形態を設定することや、走行速度に基づいて、無段階に短縮報知領域C(案内ポイントGPと報知開始ポイントTs)の距離を設定するように処理形態を設定しても良い。
【0082】
このように案内モードを設定することにより、案内ポイントGPを基準にした報知開始ポイントTsが走行速度に対応するものとなり、報知タイミングを適正にできる。
【0083】
(b)図8の#03ステップでの処理では1つの基本出力モードと、1つの短縮出力モードとの何れか一方を選択する処理であったが、これに代えて、複数の短縮出力モードを設定しておき、案内処理手段26が、案内ポイント同士の距離Dに応じて複数の短縮出力モードの中から、1つを選択するように処理形態を設定しても良い。
【0084】
このように出力モードを選択によって設定することにより、距離Dに対応した最適な報知形態を設定して、運転者に対して案内ポイントGPの位置を確実に対して確実に認識させ得るものとなる。
【0085】
(c)実施形態では、短縮出力モードを設定する際の判別基準として高速走行時には550mの距離を用いていたが、高速走行時における判別の基準として800mや700mのように1000m未満の距離であれば良く、この距離を運転者が任意に設定できるように構成しても良い。
【0086】
(d)実施形態では、車速センサ14からの車速情報に基づいて案内モードを設定していたが、特にこれに限定する必要はなく、例えば、ナビゲーション装置Nが有する、或いは、ナビゲーション装置Nが情報センター等から取得する道路種別判定信号から、案内モードを設定するようにしても良い。
【0087】
(e)実施形態では、案内処理等の各種処理をナビコントローラ20で行っていたが、特にこれに限定する必要なはく、例えば、案内処理についてはナビコントローラ20とは別のコントローラにおいて処理しても良い。
【0088】
(f)実施形態では、#206ステップにおいて、音声出力と振動体の駆動を行っていたが、特にこれに限定する必要はなく、例えば、音声出力と振動体の駆動とに加えて、画面を拡大するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】乗用車の運転座席の近傍位置の平面図
【図2】乗用車の運転座席の近傍位置の斜視図
【図3】制御系のブロック回路図
【図4】ナビコントローラの構成を示すブロック図
【図5】走行経路と案内ポイントとを模式的に示す図
【図6】基本報知領域における報知形態を示す図
【図7】短縮報知領域における報知形態を示す図
【図8】ナビゲーション処理のフローチャート
【図9】基本出力モードで報知処理ルーチンを示すフローチャート
【図10】短縮出力モードで報知処理ルーチンを示すフローチャート
【符号の説明】
【0090】
1 運転座席
16 報知機構・スピーカ
25 案内モード設定手段
26 案内処理手段
C 短縮報知領域
V 報知機構・バイブレータ
VL 左振動体
VR 右振動体
D 設定距離
F 基本報知領域
GP 案内ポイント
R 走行経路
T 報知ポイント
Ta〜Td 報知ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位情報に基づいて車体の現在位置を取得し、この現在位置が走行経路上の案内ポイントに接近したことを判別した際に、報知出力を行うことで運転者に案内ポイントを認識させる案内処理手段を備えると共に、
この案内処理手段は、前記案内ポイントの手前側の走行経路上に基本報知領域を設定し、この基本報知領域に設定された複数の報知ポイントに前記車体が達する毎に前記報知出力を行う基本出力モードと、
先に通過する案内ポイントから次の案内ポイントまでの距離が前記基本報知領域より短いことを判別した際に、この基本報知領域より短い短縮報知領域を設定し、この短縮報知領域に対して前記基本報知領域における報知ポイントの数と一致する数又は近似する数の報知ポイントを設定し、この複数の報知ポイントに前記車体が達する毎に、前記報知出力を行う短縮出力モードとを備えているナビゲーション装置。
【請求項2】
前記短縮出力モードとして、前記短縮報知領域として異なる距離のものが複数準備され、前記案内処理手段は、この複数の短縮報知領域の中から、前記先に通過する案内ポイントから次の案内ポイントまでの距離に対応した1つを選択する請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記基本報知領域と短縮報知領域とに設定される複数の報知ポイント同士の間隔が、前記案内ポイントに近いほど短く設定されている請求項1又は2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記報知出力を行う報知機構として、振動を運転者に伝えるバイブレータを備えると共に、前記案内処理手段は、前記複数の出力ポイントのうち前記案内ポイントに近いものほど前記バイブレータを強く駆動する請求項1から3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記バイブレータが、運転座席の左側に備えた左振動体と、右側に備えた右振動体とで構成され、前記案内処理手段は、前記左振動体と右振動体のうち、案内ポイントでの前記車体の案内方向に対応した側を前記出力ポイント毎に駆動する請求項1から4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−249356(P2008−249356A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87733(P2007−87733)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】