説明

ノズル、基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板上における液体の微粒子の密度を増大し、微粒子の基板への到達速度を調整可能とし、かつ、ノズルの内周面に微粒子が付着することを抑制する。
【解決手段】液滴を噴射する液滴生成ノズル部41の先端には筒状の補助ノズル部42が取り付けられる。補助ノズル部42では、加速ガス導入口426aを介して加速ガスが導入されるとともに、下側端部423にて液滴の噴射範囲が制限されることにより、基板上における液滴の密度を増大しつつ、液滴の基板への到達速度が調整可能となる。また、加速ガスが、中心軸J1に垂直な方向から下側端部423に向かって傾斜するとともに中心軸J1から逸れた方向に沿って内周面424の内部へと導入されることにより、加速ガスが内周面424に沿って旋回し、内周面424に液滴が付着することが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に向けて液体の微粒子を噴射するノズル、および、当該ノズルを用いて基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程において、供給される液体と気体とを混合して液滴を生成しつつ噴射する2流体ノズルを用いて、洗浄液の微小な液滴を基板に向けて噴射することにより基板の表面に付着したパーティクル等の異物を除去する(すなわち、基板を洗浄する)ことが行われている。基板洗浄に用いられる2流体ノズルとして、例えば、特許文献1では、供給される液体と気体とを混合して生成される液滴の導出路を有し、導出路の先端に、導出路の断面積よりも小さい断面積を有する噴射口を形成することにより、噴射口内を通過する液滴を再微粒化しつつ噴射するものが提案されている。また、特許文献2では、先端に円筒状の直流部を設けることにより、液滴の拡散を抑制しつつ液滴を基板上に到達させることが可能な内部混合型の2流体ノズルが開示されている。
【0003】
なお、特許文献3および4では、外部の液滴生成部にて生成される液滴(および、キャリアガス)と、加速ガスとが供給されることにより、液滴を加速ガスにて加速しつつ基板へと噴射する手法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−294819号公報
【特許文献2】特開2002−208579号公報
【特許文献3】特開2006−128332号公報
【特許文献4】特開2004−223378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、基板に形成されるパターンの微細化に伴って基板上の異物の除去率の向上、および、洗浄時における基板上のパターンへの影響の低減(すなわち、低ダメージ化)が求められている。一般的に、異物の除去率は、液滴の基板への到達速度を高くすることにより向上することが可能であるが、この場合、基板上のパターンへのダメージが増大してしまう。また、異物の除去率は、基板上に噴射される液滴の径(液滴の平均粒径)を小さくしつつ、液滴の密度(単位時間当たりに基板表面の単位面積に到達する液滴数)を高くすることによっても向上することが可能であるが、2流体ノズルから噴射される液滴の径を小さくするには、2流体ノズルに供給する気体の流量を増大しなければならず、液滴の基板への到達速度が高くなって基板上のパターンへのダメージが大きくなってしまう。
【0005】
さらに、2流体ノズルと基板との間の距離をある程度長くして液滴の基板への到達速度を低くすることも可能であるが、この場合、2流体ノズルからの噴射幅が広がって基板上における液滴の密度が低くなり、異物の除去率の向上を図ることができなくなる。特許文献2の手法を用いることにより、液滴の拡散を抑制して基板上における液滴の密度を増大することも考えられるが、円筒状の直流部の設計等によっては、液滴が直流部を通過する際に内周面に付着し、大きな液滴となって吐出され、異物の除去率を向上することができなくなる場合もある。
【0006】
特許文献3および4の手法を用いることにより、液滴の径を小さくして液滴の密度を増大しつつ、液滴の基板への到達速度を調整可能にすることも考えられるが、液滴を噴射する噴射ノズルとは別に液滴生成部を設ける必要が生じ、装置の構成が複雑化してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板上における液体の微粒子の密度を増大しつつ、微粒子の基板への到達速度が調整可能なノズルを提供するとともに、当該ノズルにおいて内周面に微粒子が付着することを抑制することを主たる目的とし、当該ノズルを用いて好ましい基板処理を容易に実現することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板に向けて液体の微粒子を噴射するノズルであって、気体および液体が導入され、前記液体の微粒子を前記気体と共に噴射する微粒子生成ノズル部と、前記微粒子生成ノズル部からの前記微粒子の噴射方向に沿って伸びる筒状の内周面を有し、一方の端部が前記微粒子生成ノズル部の噴射口の周囲を囲むとともに前記微粒子生成ノズル部に接続され、他方の端部が前記微粒子の基板上における被噴射範囲を制限する補助ノズル部とを備え、前記補助ノズル部が、前記内周面の中心軸に垂直かつ前記中心軸から逸れた方向、または、前記中心軸に垂直な方向から前記他方の端部に向かって傾斜するとともに前記中心軸から逸れた方向に沿って加速ガスを前記内周面の内部へと導入する導入口を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノズルであって、前記中心軸と前記加速ガスの導入方向とのなす角が30度以上90度以下である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のノズルであって、前記微粒子生成ノズル部からの微粒子の噴射範囲と前記内周面とが交差する位置よりも前記一方の端部側に前記導入口が配置される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のノズルであって、前記補助ノズル部が、前記導入口から導入される前記加速ガスの旋回に沿うように加速ガスを前記内周面の内部にさらに導入するもう1つの導入口を有する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のノズルであって、前記補助ノズル部の前記内周面の径が、前記他方の端部に向かうに従って漸次減小する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のノズルであって、前記微粒子生成ノズル部が、前記噴射口の外部にて前記気体および前記液体を混合して前記微粒子を生成する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のノズルであって、前記補助ノズル部が、前記微粒子生成ノズル部に対して着脱可能である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、基板を保持する保持部と、前記保持部にて保持される基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する請求項1ないし7のいずれかに記載のノズルとを備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、基板を保持する工程と、請求項1ないし7のいずれかに記載のノズルから前記基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板上における液体の微粒子の密度を増大しつつ、微粒子の基板への到達速度が調整可能であるとともに、加速ガスを補助ノズル部の内周面に沿って旋回させつつ微粒子を加速することにより、補助ノズル部の内周面に微粒子が付着することを抑制することができる。これにより、基板の損傷を防止しつつ液滴密度が求められる基板処理を容易に実現することができる。
【0018】
また、請求項3の発明では、微粒子が補助ノズル部の内周面に到達する前に微粒子を旋回する加速ガスの流れに乗せることができ、請求項4の発明では、補助ノズル部の内周面に微粒子が付着することをさらに抑制することができ、請求項5の発明では、微粒子の加速効率を増大することができる。
【0019】
また、請求項6の発明では、基板上における微粒子の密度を増大することができ、請求項7の発明では、別途設計された2流体ノズルを用いてノズルを容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板洗浄装置1の構成を示す図である。基板洗浄装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)の表面を洗浄し、基板9の表面に付着したパーティクル等の異物を除去する枚葉式の装置である。
【0021】
図1に示すように、基板洗浄装置1は、円板状の基板9を保持する基板保持部21、基板9を基板保持部21と共に基板9に垂直な中心軸を中心に回転する基板回転部22、基板9の洗浄用の微粒子である洗浄液(本実施の形態では、純水(脱イオン水(deionized water)))の液滴を生成しつつ基板9に向けて噴射する噴射ノズル4、噴射ノズル4に純水を供給する純水供給部31、噴射ノズル4に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部32、および、これらの機構を制御する制御部5を備える。
【0022】
基板保持部21は、基板9を下側から保持する略円板状のチャック211を備え、チャック211の外周上には、基板9を把持する複数のチャックピン212が設けられる。チャック211の下面には基板回転部22のシャフト221が設けられ、シャフト221はモータ222に接続される。基板9は、その中心がシャフト221の中心軸上に位置するようにチャック211に保持される。基板回転部22では、制御部5の制御によりモータ222が駆動されることによりシャフト221が回転し、基板9がチャック211およびシャフト221と共にシャフト221の中心軸を中心として回転する。なお、基板保持部21における基板9の保持は、例えば、基板9の下側(噴射ノズル4とは反対側)の主面の中央部のみを吸引吸着する等して実現されてもよい。
【0023】
噴射ノズル4は、液滴生成ノズル部41および補助ノズル部42を有し、液滴生成ノズル部41は、供給管311,321を介して純水供給部31および窒素ガス供給部32に接続される。供給管311,321には、開度調整が可能なバルブ312,322がそれぞれ設けられ、液滴生成ノズル部41へと供給される純水および窒素ガスのそれぞれの流量(単位時間当たりの供給量)が調整可能とされる。また、供給管321にはバルブ322と窒素ガス供給部32との間にて供給管323が分岐して設けられる。供給管323は窒素ガス供給部32とは反対側にて分岐しており、一方はバルブ324を介して補助ノズル部42における窒素ガスの一の導入管(後述の第1加速ガス導入管)に接続され、他方はバルブ325を介して補助ノズル部42における窒素ガスの他の導入管(後述の第2加速ガス導入管)に接続される。バルブ324,325は開度調整が可能とされ、補助ノズル部42の各導入管へと供給される窒素ガスの流量も調整可能とされる。
【0024】
後述するように、液滴生成ノズル部41は供給される液体と気体とを外部(液滴生成ノズル部41の外部)にて混合して液滴を生成する外部混合型の2流体ノズルであり、バルブ312,322が開放されて液滴生成ノズル部41から純水および窒素ガスが噴射されることにより外部にて(正確には、補助ノズル部42内にて)液滴が生成される。また、バルブ324,325が開放されて窒素ガスが補助ノズル部42に供給されることにより、補助ノズル部42内において液滴生成ノズル部41にて生成される液滴が加速される。噴射ノズル4は、アーム44を介して図示省略のノズル移動機構に接続されており、基板9の上方においてアーム44と共に移動可能とされる。以下の説明では、液滴生成ノズル部41に供給される窒素ガスを「液滴生成ガス」と呼び、補助ノズル部42に供給される窒素ガスを「加速ガス」と呼ぶ。
【0025】
図2は、噴射ノズル4を示す平面図であり、図3は、図2中の矢印A−Aの位置における噴射ノズル4の断面図である。なお、図2では、液滴生成ノズル部41の図示を省略しており、図3では、説明の都合上、図2中の断面の位置を示す一点鎖線において傾斜した線分(すなわち、中心軸J1を通る線分)の位置における噴射ノズル4の断面を当該線分に垂直な方向から見たものとして図示している。以下、最初に液滴生成ノズル部41の構成について説明し、その後、補助ノズル部42の構成について説明する。
【0026】
図3に示すように、噴射ノズル4の液滴生成ノズル部41は、略円筒状の外筒45、および、外筒45の内部に嵌め込まれた略円筒状の内筒46を備え、外筒45および内筒46は、中心軸J1を共有する同軸状に配置されている。
【0027】
内筒46の内部空間は、直線状の純水流路461となっており、純水流路461の基板9とは反対側(図3中の上側)の端部は、供給管311(図1参照)に接続される純水導入口462として開口している。純水流路461の基板9側(図3中の下側)の端部は、純水流路461に導入された純水を噴射する純水噴射口463として開口している。液滴生成ノズル部41では、内筒46により、純水の搬送方向が中心軸J1に沿う直線状に規制され、純水噴射口463から中心軸J1に沿う方向(以下、「噴射方向」という。)に純水が噴射される。基板9の処理時には、噴射ノズル4は、中心軸J1が基板9の噴射ノズル4側の主面に垂直になるように配置される。
【0028】
液滴生成ノズル部41では、外筒45はほぼ一定の内径を有する。一方、内筒46は、噴射方向の各部で外径が変化し、内筒46の噴射方向における中間部46aは、外筒45の内径より小さな外径を有する。内筒46の純水噴射口463側および純水導入口462側の端部近傍には、内筒46の外周面から張り出すように、内筒46と一体的に形成されたフランジ46b,46cがそれぞれ設けられている。フランジ46b,46cは外筒45の内径にほぼ等しい外径を有しているため、外筒45の内部に嵌め込まれた内筒46は、フランジ46b,46cの外周面にて外筒45の内周面に密接する。そして、内筒46の中間部46aと外筒45の内周面との間に、中心軸J1を中心とする略円筒状の間隙である円筒流路471が形成される。外筒45の噴射方向における中間近傍には、供給管321(図1参照)に接続される液滴生成ガス導入口451が形成されており、液滴生成ガスが液滴生成ガス導入口451を介して円筒流路471に導入される。
【0029】
図4および図5は、内筒46のフランジ46b近傍を拡大して示す正面図および底面図である。図4および図5に示すように、フランジ46bは、円筒状の部位の下側に中空の円錐台が設けられた形状を有しており、中心軸J1に対して略垂直に突出している。フランジ46bには、噴射方向にフランジ46bを貫通する6つのスリット464が形成されている。各スリット464は、フランジ46bの外周面からフランジ46bの内側に向かって、中心軸J1に略平行、かつ、中心軸J1を含まない平面に沿うように、互いにほぼ等角度間隔で形成されている。各スリット464は、噴射方向に見て、フランジ46bの外周面における開口(以下、「側面開口」という。)465と中心軸J1とを結ぶ径方向に対して所定の角度にて斜交しており、また、フランジ46bから下方に突出して設けられた円筒状の内筒先端部46dの外周面にほぼ接する。
【0030】
図3に示すように、外筒45は基板9側の先端に外筒先端部45aを備える。外筒先端部45aは、純水噴射口463側の先端に向かうに従って内径が漸次小さくなるテーパ状の内周面、および、テーパ状の内周面の下方に設けられる中心軸J1に平行な内周面を有する。液滴生成ノズル部41では、各スリット464の側面開口465(図5参照)が外筒45の内周面により閉塞され、側面開口465の下部が外筒先端部45aのテーパ状の内周面により閉塞されることにより、円筒流路471と連通するとともに円筒流路471からの液滴生成ガスの流れの方向を変更する方向変更部472が形成される。
【0031】
また、外筒先端部45aの内径は内筒先端部46dの外径よりも大きいため、外筒先端部45aと内筒先端部46dとの間に中心軸J1の周囲を囲む略円筒状の間隙であって、方向変更部472からの液滴生成ガスが導かれて旋回流を形成する旋回流形成部473が形成される。旋回流形成部473の基板9側の先端は、純水噴射口463の周囲を囲む円環状の液滴生成ガス噴射口474として、純水噴射口463に近接して開口している。上述のように、スリット464は内筒先端部46dの外周面にほぼ接するように形成されているため(図5参照)、液滴生成ノズル部41を基板9側から見た場合、方向変更部472の中心軸J1側の部位は、液滴生成ガス噴射口474と重なっている。
【0032】
液滴生成ノズル部41では、周囲にスリット464が形成された内筒46を外筒45の内部に嵌め込むことにより、液滴生成ガスが流れる円筒流路471、方向変更部472および旋回流形成部473(以下、これらをまとめて、「液滴生成ガス流路47」という。)が容易に形成される。
【0033】
図3の補助ノズル部42は、中心軸J1に沿って伸びる筒状となっており、一方の端部421(図3中の上側の端部であり、以下、「上側端部421」という。)には中心軸J1側に突出する環状突出部422が設けられる。噴射ノズル4では、外筒45の基板9側の部位が環状突出部422の内部に着脱可能に挿入されることにより、補助ノズル部42の上側端部421(近傍を含む。)が液滴生成ガス噴射口474および純水噴射口463の周囲を囲むとともに液滴生成ノズル部41に接続される。また、補助ノズル部42の他方の端部423(図3中の下側の端部であり、以下、「下側端部423」という。)には、中心軸J1を中心とする円形の開口428(後述するように、液滴が噴射される開口であるため、以下、「液滴噴射口428」という。)が形成される。補助ノズル部42の内周面424は中心軸J1に沿って伸びる筒状とされる。正確には、内周面424は、中心軸J1を中心とする回転面とされ、上側端部421側および中央の部分は直径が一定な円柱面とされ、円柱面よりも下側の部分は下側端部423に向かうに従って直径が漸次減小する略円錐面とされる。補助ノズル部42内では、上側端部421側から下側端部423へと至る流路425が形成され、流路425は液滴噴射口428にて開口する。
【0034】
図2および図3に示すように、補助ノズル部42には、窒素ガス供給部32(図1参照)からの加速ガスを内部へと導入する第1および第2加速ガス導入管426,427が設けられる。図3に示すように、第1および第2加速ガス導入管426,427は中心軸J1に対して傾斜した方向に伸びている。
【0035】
図6は、補助ノズル部42内における加速ガスの流れを説明するための図である。例えば、中心軸J1に垂直な面と第1加速ガス導入管426の中心線とのなす角(図6中にて符号θ1を付す角度であり、以下、「傾斜角θ1」という。)は5度以上30度以下とされ、中心軸J1に垂直な面と第2加速ガス導入管427の中心線とのなす角(図6中にて符号θ2を付す角度であり、以下、「傾斜角θ2」という。)も5度以上30度以下とされる。これにより、各加速ガス導入管426,427において、中心軸J1とのなす角が60度以上85度以下となる導入方向(図2および図6中にて、符号A1,A2を付す矢印にて示す方向であり、加速ガス導入管426,427の中心線上におけるものを指す。)に沿って加速ガスが流路425内に導入される。
【0036】
また、中心軸J1に沿う方向に関して、第1加速ガス導入管426の内周面424上における開口426a(以下、「第1加速ガス導入口426a」という。)は、液滴生成ノズル部41の噴射口(すなわち、図3中の液滴生成ガス噴射口474および純水噴射口463)の近傍に設けられ、第2加速ガス導入管427の内周面424上における開口427a(以下、「第2加速ガス導入口427a」という。)は、第1加速ガス導入口426aと液滴噴射口428との間のほぼ中央に設けられる。本実施の形態では、中心軸J1方向に関して、液滴生成ノズル部41の噴射口と液滴噴射口428との間の距離が、例えば50ミリメートル(mm)とされ、好ましくは、第1加速ガス導入口426aはその中心が液滴生成ノズル部41の噴射口に対して図6中の上側および下側のそれぞれに10mmの範囲内に配置され、第2加速ガス導入口427aはその中心と液滴生成ノズル部41の噴射口との間の距離が20〜30mmとなる位置に配置される。
【0037】
図2に示すように、各加速ガス導入管426,427は、加速ガス導入口426a,427aの位置における内周面424の接線にほぼ平行となるように補助ノズル部42に設けられる。詳細には、中心軸J1に垂直な断面上において、加速ガス導入管426,427から導入される加速ガスの流れの下流側における加速ガス導入口426a,427aのエッジ(図2中にて符号P1,P2を付して示す位置)での内周面424の接線と、加速ガス導入管426,427の中心線(または、加速ガスの導入方向A1,A2)とのなす角が、30度以下(好ましくは15度以下)とされる。
【0038】
以上のように、図2および図6に示す加速ガス導入口426a,427aでは、中心軸J1に垂直な方向から下側端部423に向かって傾斜するとともに、中心軸J1から逸れた方向に沿って加速ガスが内周面424の内部へと導入されることとなる。したがって、補助ノズル部42内において第1および第2加速ガス導入口426a,427aからの加速ガスは、図2および図6中に符号A3,A4を付す細い破線の矢印にてそれぞれ簡略化して示すように(後述の図9および図10において同様。ただし、図2および図10では矢印A3のみを示している。)、およそ螺旋状に旋回しつつ流路425に沿って基板9側へと導かれ、液滴噴射口428から噴射される。
【0039】
図7は、基板洗浄装置1が基板9を洗浄する処理の流れを示す図である。基板9を洗浄する際には、まず、外部の搬送装置により図1に示す基板保持部21上に基板9が載置されて保持される(ステップS11)。続いて、モータ222が制御部5により駆動されて基板9の回転が開始され(ステップS12)、その後、バルブ312,322が開放されることにより、液滴生成ノズル部41に純水と液滴生成ガスとが供給される。
【0040】
液滴生成ガスは、図3に示す円筒流路471内を液滴生成ガス流路47の母線方向(すなわち、噴射方向)に沿って下方に流れ、方向変更部472へと導かれる。方向変更部472では、各スリット464(図5参照)の外周側において下方へと流れる液滴生成ガスが、外筒先端部45aのテーパ状の内周面に沿って図5中の矢印Kにて示すフランジ46bの中心軸J1側に向かって流れつつ図3に示す旋回流形成部473へと導かれる。このように、方向変更部472では、液滴生成ガスの向き(すなわち、液滴生成ガスが流れる方向)が噴射方向から、中心軸J1を中心とする円周方向に沿う成分を有する方向へと変換される。
【0041】
方向変更部472の6つのスリット464を通過した液滴生成ガスは、旋回流形成部473において中心軸J1を中心とする円周方向に沿って、図5中における反時計回りに旋回しつつ下方へと流れる。液滴生成ガスは、中心軸J1を中心とする円周上において互いにほぼ等角度間隔に配列された6つのスリット464から旋回流形成部473へと導かれるため、円周方向(すなわち、旋回方向)に関して均一な旋回流となる。
【0042】
図3に示す旋回流形成部473を通過した液滴生成ガスは、液滴生成ガス噴射口474を介して純水噴射口463の周囲全周から旋回流として噴射される。純水噴射口463の周囲の各方向から噴射された液滴生成ガスは、純水噴射口463から噴射される純水の移動経路上において互いに衝突する。これにより、液滴生成ノズル部41の噴射口(すなわち、液滴生成ガス噴射口474および純水噴射口463)の外部かつ補助ノズル部42の内部にて純水と液滴生成ガスとが混合されて純水の液滴が効率よく生成されつつ、液滴および液滴生成ガスが中心軸J1に沿って基板9側に向かって移動する。すなわち、液滴生成ノズル部41から純水の液滴が液滴生成ガスと共に中心軸J1に沿う噴射方向に噴射される。
【0043】
実際には、液滴生成ガスの流量を可能な範囲で高くする(例えば、液滴生成ノズル部41である2流体ノズルの仕様における上限値に近い流量とする)ことにより、液滴生成ノズル部41にて微小な径(平均粒径)の液滴が生成される。このように、液滴生成ガスの流量を高くする場合でも、液滴生成ノズル部41の液滴生成ガス噴射口474と基板9との間には、補助ノズル部42を配置するための十分に長い距離が設けられるとともに、液滴生成ガス噴射口474から噴射される液滴生成ガスは補助ノズル部42の内周面に衝突して減速することにより(正確には、液滴生成ガスのうち高速の部分が減速され、速度が均一化される。)、液滴生成ガス噴射口474からの液滴生成ガスにより基板9上のパターンが損傷することはない。
【0044】
また、図1のバルブ324,325を開放することにより、液滴生成ノズル部41からの液滴の噴射と並行して、加速ガスが窒素ガス供給部32から図6の第1および第2加速ガス導入口426a,427aを介して補助ノズル部42内へと導入される。このとき、第1加速ガス導入口426aからの加速ガスは液滴生成ノズル部41から噴射された直後の液滴および液滴生成ガスの周囲を囲むように旋回しつつ基板9側へと移動する。また、第2加速ガス導入口427aからの加速ガスは第1加速ガス導入口426aからの加速ガスの旋回に沿うように(すなわち、中心軸J1を中心とする旋回方向が同じとなるように)補助ノズル部42の内周面424の内部に導入される。したがって、液滴生成ノズル部41から噴射されて内周面424へと向かう液滴の大部分は、旋回する加速ガスにより内周面424に付着することなく液滴噴射口428側へと運ばれるとともに、仮に、液滴が内周面424に付着した場合でも、内周面424に沿うように移動する加速ガスにより内周面424上から直ぐに剥離される。
【0045】
補助ノズル部42では、中心軸J1に沿う方向に関して各加速ガス導入口426a,427aと液滴噴射口428との間の距離を考慮しつつ傾斜角θ1,θ2が5度以上30度以下とされていることにより、加速ガス導入口426a,427aからの加速ガスは中心軸J1を中心として内周面424に沿って少なくとも1周するようになっており、内周面424の全周にて液滴の付着が抑制される。実際には、第1加速ガス導入口426aからの加速ガスの旋回は必ずしも液滴噴射口428まで持続されるわけではないが、中心軸J1方向に関して第1加速ガス導入口426aと液滴噴射口428との間のほぼ中央に第2加速ガス導入口427aが設けられることにより、内周面424において中心軸J1方向のほぼ全体にて液滴の付着が抑制される。
【0046】
噴射ノズル4では、補助ノズル部42の流路425内における窒素ガス(加速ガスおよび液滴生成ノズル部41からの液滴生成ガス)は液滴生成ガスのみの速度よりも高速にて移動する。このように、流路425内において液滴が加速ガスにより加速されつつ液滴噴射口428から基板9の噴射ノズル4側の主面に向けて噴射される(ステップS13)。このとき、補助ノズル部42の下側端部423により、基板9上における液滴の被噴射範囲が制限されるため(被噴射範囲の制限については後述する。)、基板9上における液滴の密度(単位時間当たりに基板表面の単位面積に到達する液滴数)を高くすることができる。また、バルブ324,325の開度を調整する(すなわち、加速ガスの流量を調整する)ことにより、液滴の基板への到達速度(または、液滴噴射口428における噴射速度)も調整可能とされる。実際には、加速ガスの流量は、基板9上のパターンが損傷せず、かつ、基板9上の異物を効率よく除去することが可能な大きさとされる。本実施の形態では、例えば、液滴噴射口428の直径は3〜10mm(好ましくは、4〜6mm)とされ、液滴の噴射速度は毎秒15〜80メートル(m)とされる。
【0047】
基板9への液滴の噴射が開始されると、図1に示す基板回転部22により回転する基板9の上方において、ノズル移動機構により噴射ノズル4が移動を開始し、基板9の中心と外周上の1点との間の上方にて、すなわち、図1中に実線にて示す位置と二点鎖線にて示す位置との間にて、往復移動を繰り返して基板9の上面全体(あるいは、所定の範囲)の洗浄が行われる。このようにして、噴射ノズル4からの液滴の噴出および噴射ノズル4の往復移動が所定時間だけ継続されると、噴射ノズル4に対する純水、液滴生成ガスおよび加速ガスの供給が停止され、噴射ノズル4の移動および基板9の回転も停止されて基板9の洗浄処理が終了する(ステップS14)。
【0048】
次に、補助ノズル部42が外されて液滴生成ノズル部41のみとされた比較例の噴射ノズルから噴射される液滴の基板9上における被噴射範囲について説明する。図8は、比較例の噴射ノズル90の液滴生成ガス噴射口474から噴射される液滴生成ガスの進行方向を示す斜視図である。図8中の矢印Nは、液滴生成ガスの理想的な進行方向を示す。比較例の噴射ノズル90では、旋回流形成部473(図3参照)において液滴生成ガスが純水流路461の周囲を均一に旋回しつつ流れることにより、液滴生成ガス噴射口474から噴射される液滴生成ガスが、液滴生成ガス噴射口474近傍にて旋回方向に均一な渦巻き気流となり、純水噴射口463から中心軸J1に沿って噴射される純水と混合され、純水の液滴が生成される。
【0049】
図5に示すように、液滴生成ノズル部41では、スリット464が内筒先端部46dの外周面(すなわち、図3に示す液滴生成ガス噴射口474の内周)にほぼ接するように形成されているため、液滴生成ガスが液滴生成ガス噴射口474の接線方向の成分を有する方向に向けて噴射される。その結果、図8に示すように、比較例の噴射ノズル90から噴射された純水の液滴および液滴生成ガスが流れる領域の輪郭(図8中において二点鎖線にて示す。)は、純水噴射口463の近傍に形成される絞り部L1と、絞り部L1から基板9の表面に向かうに従って側方に広がる拡散部M1とを有する形状となる。絞り部L1は、液滴の噴射方向に直交する略円形断面の径が、噴射方向に沿う各部で基板9に近づくに従って漸次減少する略逆円錐台形状を有している。拡散部M1では、液滴生成ガスは純水噴射口463からの純水と衝突して流れが乱されるが、絞り部L1の基板9側において、噴射方向に直交する略円形断面の径が基板9に近づくに従って漸次増大するように、液滴および液滴生成ガスが広がることとなる(すなわち、拡散部M1が略円錐台形状を有する。)。このように、絞り部L1と拡散部M1とにより、いわゆる鼓型の形状が形成される。比較例の噴射ノズル90を有する基板洗浄装置では、液滴生成ガスにより運ばれる液滴が、基板9上の略円状の被噴射範囲N1に衝突する。そして、被噴射範囲N1において、基板9に付着しているパーティクル等の異物が除去される(すなわち、基板9の被噴射範囲N1が洗浄される)。
【0050】
これに対し、図3の噴射ノズル4では、液滴生成ノズル部41に補助ノズル部42が取り付けられ、補助ノズル部42が、比較例の噴射ノズル90における基板9上の被噴射範囲N1よりも小さい断面積(噴射方向に垂直な断面積)の下側端部423を有し、下側端部423により液滴生成ノズル部41から噴射される液滴の基板9上における被噴射範囲が、比較例の噴射ノズル90における被噴射範囲N1よりも小さくされる(すなわち、被噴射範囲が制限される)。これにより、噴射ノズル4と比較例の噴射ノズル90とで同じ量の液滴が噴出されると仮定した場合に、噴射ノズル4において基板9上における液滴の密度を比較例の噴射ノズル90よりも高くすることが可能となる。実際には、補助ノズル部42内において、液滴生成ノズル部41から噴射される液滴および液滴生成ガスが流れる領域の輪郭は図6中に二点鎖線にて示すように広がり、液滴生成ノズル部41からの液滴の噴射範囲と内周面424とが交差する位置(図6中にて符号P3を付して示す位置)よりも上側端部421側に第1加速ガス導入口426aが配置されることにより、液滴が内周面424に到達する前に液滴を旋回する加速ガスの流れに乗せることが可能となる。
【0051】
また、通常の使用方法による2流体ノズル(すなわち、比較例の噴射ノズル)では、純水に混合される液滴生成用のガスの流量により液滴の粒径が決定され、さらに、基板9上における液滴の到達速度が決定される。一方、図1に示す基板洗浄装置1では、液滴の粒径は、噴射ノズル4の液滴生成ノズル部41に供給する液滴生成ガスの流量によりほぼ決定され、基板9上における液滴の到達速度の制御は、制御部5によりバルブ324,325が制御されて補助ノズル部42に対する加速ガスの流量が変更されることにより行われる。その結果、基板9上における液滴の到達速度を遅くして基板9上のパターンの損傷を抑制する場合に、比較例の噴射ノズル90では液滴の平均粒径が大きくなっていくのに対し、噴射ノズル4では液滴の粒径を微小かつほぼ一定の大きさに維持することができる。
【0052】
以上に説明したように、基板洗浄装置1の噴射ノズル4では、液滴生成ノズル部41により生成した純水の液滴を、補助ノズル部42を介して加速ガスにて加速しつつ基板9に向けて噴射することにより、基板9上における液滴の到達速度にほとんど依存することなく、液滴の粒径を微小な大きさにて均一化することができるとともに、噴射ノズル4と基板9との間において液滴の流れる領域が側方に大きく広がって基板9上における液滴の密度が低下してしまうことが抑制される。このように、基板洗浄装置1では、噴射ノズル4を用いて基板9上における液滴の密度を増大しつつ、液滴の基板への到達速度を調整可能にすることにより、基板9上の異物の除去率を向上するとともに、液滴が衝突する際に基板9に与える衝撃を軽減して基板9上のパターンへのダメージを低減する(すなわち、パターンへの影響を抑制する)ことが容易に実現される。
【0053】
また、噴射ノズル4では、仮に、補助ノズル部42の内周面424に多くの液滴が付着してしまうと、大きな液滴が基板上に吐出されてしまうが、補助ノズル部42において、中心軸J1に垂直な方向から下側端部423に向かって傾斜するとともに中心軸J1から逸れた方向に沿って加速ガスを導入することにより、加速ガスを補助ノズル部42の内周面424に沿って旋回させつつ液滴を加速することができ、これにより、補助ノズル部42の内周面424に液滴が付着することを抑制することができる。
【0054】
噴射ノズル4では、補助ノズル部42が液滴生成ノズル部41に対して着脱可能とされていることにより、別途設計された2流体ノズルである液滴生成ノズル部41に補助ノズル部42を取り付けるのみで噴射ノズル4を容易に作製することができるとともに、噴射ノズル4のメンテナンスの際には補助ノズル部42を取り外して液滴生成ノズル部41および補助ノズル部42の洗浄等の作業を容易に行うことができる。なお、噴射ノズルの設計によっては、液滴生成ノズル部と補助ノズル部とが一体的に形成されてもよい。
【0055】
図9は、噴射ノズルの他の例を示す図である。図9の噴射ノズル4aでは、下側端部423における内周面424の直径が、上側端部421におけるものと同じとされる。このように、図9の噴射ノズル4aでは内周面424の直径が一定とされる(例えば、25mmにて一定とされる。)ことにより、図3の噴射ノズル4に比べて、液滴生成ノズル部41から噴射されて内周面424近傍へと到達する液滴の量が少なくなる。また、内周面424に沿って旋回する加速ガスにより、内周面424近傍へと到達する液滴が内周面424に付着することを抑制することができる。
【0056】
ところで、図9の噴射ノズル4aでは、内周面424の直径が一定とされることにより、液滴噴射口428aの開口面積(中心軸J1に垂直な面における面積)が図3の噴射ノズル4の液滴噴射口428よりも大きくなるため、双方の噴射ノズル4,4aに同量の窒素ガス(液適生成ガスおよび加速ガス)を導入する場合に、図3の噴射ノズル4よりも液滴の噴射速度が低くなる。したがって、液滴が内周面424に付着することを抑制しつつ液滴の加速効率(噴射ノズル4に導入される窒素ガスの流量に対する液滴の噴射速度の比率)を増大するには、図3の噴射ノズル4や、図10に示す噴射ノズル4bのように、補助ノズル部42の内周面424の径を下側端部423に向かうに従って漸次減小させることにより、加速ガスを内周面424に沿いつつ基板9側に向かって円滑に旋回可能とするとともに、液滴噴射口428の開口面積を液滴生成ノズル部41の噴射口の近傍における内周面424の断面積(中心軸J1に垂直な断面積)よりも小さくすることが必要となる。この場合、液滴の被噴射範囲もさらに制限されることにより、基板9上における液滴の密度をさらに増大することができる。なお、図10の噴射ノズル4bでは、1つの加速ガス導入口426aのみが設けられるが、もちろん、複数の加速ガス導入口が設けられることにより、補助ノズル部42の内周面424に液滴が付着することがさらに抑制されてもよい。噴射ノズル4に導入される窒素ガスの流量調整用のバルブには、通常、流量の上限があるため、それぞれがバルブを有する供給管に接続される複数の加速ガス導入管を設けることにより、液滴の噴射速度を容易に増大することもできる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0058】
噴射ノズル4,4a,4bでは、第1加速ガス導入口426aが液滴生成ノズル部41の噴射口の近傍に配置されるが、加速ガス導入口を液滴生成ノズル部41の噴射口よりも上側(基板9とは反対側)に配置することも可能である。この場合に、仮に、加速ガスが中心軸J1に向かって導入されると、加速ガスが液滴生成ノズル部41に衝突して加速ガスの流れが乱されてしまい、補助ノズル部42の設計によっては、液滴が補助ノズル部42の内周面424に付着し易くなることがある。これに対し、加速ガス導入口を液滴生成ノズル部41の噴射口よりも上側に配置する場合においても、中心軸J1から逸れた方向に沿って加速ガスが導入されるように加速ガス導入管を設けることにより、液滴生成ノズル部41により加速ガスの流れが乱されることを防止し、液滴が補助ノズル部42の内周面424に付着することを抑制することができる。
【0059】
上記実施の形態では、加速ガス導入管426,427が中心軸J1に垂直な面に対して傾斜することにより、加速ガスが中心軸J1に沿って円滑に流れるが、噴射ノズルの設計によっては加速ガス導入管を中心軸J1に垂直な面に平行に設ける(すなわち、図6中の各傾斜角θ1,θ2を0度とする)場合でも、液滴が補助ノズル部42の内周面424に付着することは抑制される。以上のように、加速ガスを補助ノズル部42の内周面424に沿って旋回させつつ液滴を加速するには、内周面424の中心軸J1に垂直かつ中心軸J1から逸れた方向、または、中心軸J1に垂直な方向から下側端部423に向かって傾斜するとともに中心軸J1から逸れた方向に沿って加速ガスを内周面424の内部へと導入する加速ガス導入口が補助ノズル部42に設けられることが必要となる。
【0060】
ただし、加速ガス導入管の傾斜角θ1,θ2が必要以上に大きくなると、噴射ノズルの製造工程が煩雑となる。したがって、補助ノズル部を容易に製造するには、加速ガス導入管の傾斜角θ1,θ2が0度以上60度以下、すなわち、中心軸J1と加速ガスの導入方向とのなす角が30度以上90度以下とされることが好ましい。また、θ1,θ2が0度以上30度以下、すなわち、中心軸J1と加速ガスの導入方向とのなす角が60度以上90度以下とされることがさらに好ましい。
【0061】
上記実施の形態における噴射ノズル4では、液滴生成ノズル部41の先端が環状突出部422よりも下側に突出しているが、環状突出部422が液滴生成ノズル部41の先端の極近傍に位置するように、補助ノズル部42が液滴生成ノズル部41に固定されてもよい。
【0062】
図3の噴射ノズル4では、液滴生成ノズル部41が外部混合型の2流体ノズルとされるが、内部混合型の2流体ノズルに補助ノズル部42を取り付けることにより、噴射ノズルが作製されてもよい。ただし、一般的には、外部混合型の2流体ノズルでは、内部混合型の2流体ノズルよりも微小な粒径の液滴が生成可能であるため、外部混合型の2流体ノズル(もちろん、図3に示す構成以外のものであってもよい。)を液滴生成ノズル部41として用いることにより、基板9上における液滴の密度をさらに増大して、基板9上の異物の除去効率をより向上することが可能となる。
【0063】
液滴生成ノズル部41では、純水以外の液体が供給されることにより、当該液体の微粒子が生成されてもよく、さらに、液滴生成ノズル部41および補助ノズル部42に供給される気体も、窒素ガス以外であってもよい。もちろん、液滴生成ノズル部41と補助ノズル部42とに異なる気体が供給されてもよい。
【0064】
基板洗浄装置1は、プリント配線基板やフラットパネル表示装置に使用されるガラス基板等、半導体基板以外の様々な基板の洗浄に利用されてよい。なお、基板の種類や大きさ等に合わせて、基板の洗浄時における回転は省略されてもよい。
【0065】
上記実施の形態では、基板を洗浄する基板洗浄装置について説明したが、上述の構成を備える装置は、基板表面へ様々な処理液の液滴を噴射して基板に処理を行う基板処理装置として利用されてよい。例えば、基板処理装置により、基板表面の露光済みのレジスト膜を現像する現像液の塗布が行われる場合、図1に示す噴射ノズル4には現像液、液滴生成ガスおよび加速ガスが供給され、現像液の微粒子が加速ガスと共に基板9に対して噴射されて基板9の現像が行われる。また、基板処理装置は、液体の微粒子の噴射による表面処理等に利用されてもよい。噴射ノズル4を有する基板処理装置では、基板上における液体の微粒子の密度を増大しつつ、微粒子の基板への到達速度が調整可能となり、さらに、補助ノズル部の内周面に微粒子が付着することが抑制されるため、基板の損傷を防止しつつ液滴密度が求められる基板処理を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】基板洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】噴射ノズルを示す平面図である。
【図3】噴射ノズルを示す断面図である。
【図4】内筒のフランジ近傍を拡大して示す正面図である。
【図5】内筒のフランジ近傍を拡大して示す底面図である。
【図6】補助ノズル部内における加速ガスの流れを説明するための図である。
【図7】基板を洗浄する処理の流れを示す図である。
【図8】比較例の噴射ノズルから噴射される液滴生成ガスの進行方向を示す斜視図である。
【図9】噴射ノズルの他の例を示す図である。
【図10】噴射ノズルのさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板洗浄装置
4,4a,4b 噴射ノズル
9 基板
21 基板保持部
41 液滴生成ノズル部
42 補助ノズル部
421 上側端部
423 下側端部
424 内周面
426a,427a 加速ガス導入口
463 純水噴射口
474 液滴生成ガス噴射口
A1,A2 導入方向
J1 中心軸
S11,S13 ステップ
θ1,θ2 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に向けて液体の微粒子を噴射するノズルであって、
気体および液体が導入され、前記液体の微粒子を前記気体と共に噴射する微粒子生成ノズル部と、
前記微粒子生成ノズル部からの前記微粒子の噴射方向に沿って伸びる筒状の内周面を有し、一方の端部が前記微粒子生成ノズル部の噴射口の周囲を囲むとともに前記微粒子生成ノズル部に接続され、他方の端部が前記微粒子の基板上における被噴射範囲を制限する補助ノズル部と、
を備え、
前記補助ノズル部が、前記内周面の中心軸に垂直かつ前記中心軸から逸れた方向、または、前記中心軸に垂直な方向から前記他方の端部に向かって傾斜するとともに前記中心軸から逸れた方向に沿って加速ガスを前記内周面の内部へと導入する導入口を備えることを特徴とするノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルであって、
前記中心軸と前記加速ガスの導入方向とのなす角が30度以上90度以下であることを特徴とするノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズルであって、
前記微粒子生成ノズル部からの微粒子の噴射範囲と前記内周面とが交差する位置よりも前記一方の端部側に前記導入口が配置されることを特徴とするノズル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のノズルであって、
前記補助ノズル部が、前記導入口から導入される前記加速ガスの旋回に沿うように加速ガスを前記内周面の内部にさらに導入するもう1つの導入口を有することを特徴とするノズル。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のノズルであって、
前記補助ノズル部の前記内周面の径が、前記他方の端部に向かうに従って漸次減小することを特徴とするノズル。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のノズルであって、
前記微粒子生成ノズル部が、前記噴射口の外部にて前記気体および前記液体を混合して前記微粒子を生成することを特徴とするノズル。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のノズルであって、
前記補助ノズル部が、前記微粒子生成ノズル部に対して着脱可能であることを特徴とするノズル。
【請求項8】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板を保持する保持部と、
前記保持部にて保持される基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する請求項1ないし7のいずれかに記載のノズルと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
基板を処理する基板処理方法であって、
基板を保持する工程と、
請求項1ないし7のいずれかに記載のノズルから前記基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−159989(P2008−159989A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349322(P2006−349322)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】