説明

ノズル洗浄ユニット

【課題】より効率的にノズル洗浄でき得るノズル洗浄ユニットを提供する。
【解決手段】分注装置に搭載されたノズル洗浄ユニット20は、洗浄槽22と、当該洗浄槽22内において洗浄液を噴射する洗浄液噴射器44と、ノズルに付着した洗浄液を洗浄槽22内に吹き飛ばすべくエアを噴射する乾燥用噴射器50と、ノズル12を昇降させる移動機構と、これらを制御する制御部と、を備えている。制御部は、ノズル12を下降させつつ洗浄液を噴射させる洗浄工程と、洗浄工程の後でノズル12を上昇させつつエアを噴射させる乾燥工程と、をセットにしたセット動作を2回以上繰り返させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の吸引吐出に用いられるノズルを洗浄するノズル洗浄ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体試薬や液体検体(例えば血液など)などの分注対象液体をノズルによって吸引した後、子検体容器に小分け分注する分注装置が広く知られている。こうした分注装置の中には、使用のたびにノズルを廃棄交換するディスポーザブル式のものと、一つのノズルを繰り返し使用するノンディスポーザブル式のものとがある。ノンディスポーザブル式の分注装置においては、ノズルは使用のたびに洗浄されており、当該分注装置には、通常、ノズル洗浄のためのノズル洗浄ユニットが搭載される。
【0003】
このノズル洗浄ユニットにおいて、ノズルの内側面は、当該ノズルの内部に洗浄液を流すことで洗浄されることが多い。また、ノズルの外側面は、洗浄液を貯留した洗浄槽に当該ノズルを浸したり(例えば下記特許文献1,2など)、当該ノズルの外側面に洗浄液を噴霧または噴射したり(例えば特許文献3,4など)、あるいは、浸漬と噴霧の両方を組み合わせたり(特許文献5など)することで洗浄される。また、適宜、洗浄されたノズルにエアを送り、当該ノズルを乾燥させる機能を備えたノズル洗浄ユニットも知られている(例えば特許文献4,5など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−283246号公報
【特許文献2】実開昭62−179084号公報
【特許文献3】特開平3−251732号公報
【特許文献4】実用新案登録第3125364号公報
【特許文献5】特開昭62−242858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来のノズル洗浄技術は、いくつかの問題があり、効率的とは言い難かった。例えば、洗浄槽に貯留された洗浄液にノズルを浸漬させる方式の場合、多量の洗浄液が必要になるという問題がある。また、洗浄(浸漬)に先立ってノズルに残存している残液を洗浄槽とは別の場所に排出するための処理が必要であり、結果として、洗浄のために必要な時間が長くなりがち、という問題もあった。洗浄液を噴霧または噴射する方式の場合は、こうした問題が多少は低減される。しかし、特許文献3,4記載の技術は、洗浄液の噴霧または噴射の際、ノズルを静止させており、細長いノズル全体が効率的に洗浄されているとは言い難かった。特許文献5記載の技術は、浸漬と噴霧の両方を組み合わせている関係上、上述した浸漬方式の問題(多量の洗浄液が必要、処理に時間がかかる)と同様の問題があった。また、従来、複数種類の洗浄液(例えば洗剤液と当該洗剤液を洗い流すためのすすぎ液など)を用いる場合、第一の洗浄液をノズルに供給した後、そのまま、第二の洗浄液(例えば水など)をノズルに供給している。この場合、ノズルに残存した第一の洗浄液の影響により、第二の洗浄液での洗浄効果(あるいは、すすぎ効果)が低減するという問題もあった。つまり、従来、より効率的にノズルを洗浄でき得るノズル洗浄ユニットはなかった。
【0006】
そこで、本発明では、より効率的にノズル洗浄でき得るノズル洗浄ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のノズル洗浄ユニットは、液体の吸引吐出に用いられるノズルを洗浄するノズル洗浄ユニットであって、前記ノズルのうち少なくとも洗浄対象部分が収容される洗浄槽と、前記洗浄槽内において、洗浄液を噴射する洗浄液噴射手段と、前記ノズルの外側面に付着した洗浄液を前記洗浄槽内に吹き飛ばすべくエアを噴射する乾燥用噴射手段と、前記ノズルを前記洗浄液噴射手段および前記乾燥用噴射手段に対して相対的に昇降させる移動手段と、少なくとも、前記洗浄液噴射手段、乾燥用噴射手段、および、移動手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ノズルを前記洗浄液噴射手段に対して少なくとも下降させつつ前記洗浄液噴射手段に洗浄液を噴射させる洗浄工程と、前記洗浄工程の後に前記ノズルを前記乾燥用噴射手段に対して少なくとも上昇させつつ前記乾燥用噴射手段にエアを噴射させる乾燥工程と、をセットにしたセット動作を行わせる、ことを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記乾燥用噴射手段は、略円筒状下向きの気流を発生させるエア噴射器を備え、前記移動手段は、前記円筒状下向きの気流の略中心軸線に沿って前記ノズルを昇降させる。この場合、さらに、前記乾燥用噴射手段によるエア噴射時に、前記洗浄槽内の過剰エアを吸引して外部に排出する排気用噴射手段も備える、ことが望ましい。
【0009】
他の好適な態様では、さらに、前記ノズルの内部に洗浄液を送る送液手段と、前記ノズルの内部にエアを送る送風手段と、を備え、前記制御手段は、前記洗浄工程実行時に前記洗浄液噴射手段による洗浄液噴射と並行して前記送液手段によるノズル内部への洗浄液送液も行わせ、前記乾燥工程実行時に前記乾燥用噴射手段によるエア噴射と並行して前記送風手段によるノズル内部へのエア送風も行わせる。
【0010】
他の好適な態様では、前記制御手段は、少なくとも、洗浄液として洗剤液を用いるセット動作と、洗浄液としてすすぎ液を用いるセット動作と、を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄液を噴射させる洗浄工程と、エアを噴射させる乾燥工程と、をセットにしたセット動作を行わせている。このセット動作においては、ノズルの昇降と連動して洗浄液の噴射とエアの噴射とが行われるため、ノズル全体を短時間で満遍なく洗浄、乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態であるノズル洗浄ユニットが搭載された分注装置の斜視図である。
【図2】ノズル洗浄ユニットの概略構成図である。
【図3】乾燥用噴射器の上面図および断面図である。
【図4】洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】洗浄処理の様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるノズル洗浄ユニット20が搭載された分注装置10の斜視図である。また、図2は、この分注装置10に搭載されているノズル洗浄ユニット20の概略構成図である。
【0014】
この分注装置10は、親検体容器100に収容された液体試薬や液体検体(例えば血液など)などの分注対象液体をノズル12で吸引し、子検体容器110に小分け分注(吐出)する装置である。液体を吸引吐出するためのノズル12は、金属製で、使用のたびに洗浄されて繰り返し使用される、いわゆる、ノンディスポーザブルのノズル12である。このノンディスポーザブルのノズル12を洗浄するために、本実施形態の分注装置10には、ノズル洗浄ユニット20が搭載されている。以下、この分注装置10について詳説する。
【0015】
分注装置10の基本的な構成、すなわち、分注対象液体を吸引吐出するための構成は、従来から広く知られているため、ここでは、簡単に説明する。金属製のノズル12は、ノズルヘッド14により保持されている。このノズルヘッド14は、モータなどを備えた移動機構16により水平X方向、および、垂直Z方向に移動自在となっている。この移動機構16は、後述する洗浄ユニットの移動機構16としても用いられる。ノズル12は、配管を介して分注ポンプ(図示せず)に接続されている。この分注ポンプの駆動に応じて、ノズル12内の内圧が可変することで、液体の吸引吐出が実行されるようになっている。なお、ここで説明した構成は、あくまで、一例であり、ノンディスポーザブルのノズル12を用いて液体を吸引吐出するのであれば、当然、他の構成、例えば、水平二方向(X方向およびY方向)に移動したり、複数のノズル12を設けていたりしてもよい。
【0016】
次に、このノズル12を適宜、洗浄するノズル洗浄ユニット20の構成を説明する。ノズル洗浄ユニット20は、洗浄処理時にノズル12を収容する洗浄槽22、ノズル12内部に洗浄液を流し込む内部洗浄機構、ノズル12内部にエアを流し込む内部乾燥機構、ノズル12外部に洗浄液を噴射する外部洗浄機構、ノズル12外部にエアを噴射する外部乾燥機構、ノズル12を洗浄槽22に対して相対移動させる移動機構16、および、これら各機構の動作を制御する制御部(図示せず)などを備えている。
【0017】
洗浄槽22は、洗浄時にノズル12を収容し、洗浄液や廃液を受け止める容器である。この洗浄槽22は、ノズル12の移動経路上に設けられている。本実施形態では、液体の吸引位置(親検体容器100の停止位置)、吐出位置(子検体容器110の停止位置)、洗浄槽22がX方向に一列に並ぶような配置としている。この洗浄槽22の上面は、専用の蓋体22aで覆われており、液体の飛散が防止されている。洗浄槽22の底面には、廃液のための廃液孔22bおよび排気のための排気孔22cが形成されている。廃液孔22bは、配管を介して廃液タンク26に接続されている。また、排気孔22cには、後述する排気用噴射器52が接続されており、当該排気用噴射器52を通じて、洗浄槽22内の排気が図られる。なお、廃液の一部は、廃液孔22bだけでなく、この排気用噴射器52にも流れ込むが、この流れ込んだ廃液は、配管を介して廃液タンク26に送られる。
【0018】
内部洗浄機構は、洗浄処理時に、ノズル12の内部に洗浄液を流し込む機構である。ここで、洗浄液とは、洗浄のために用いられる液体全般を意味しており、ノズル12に付着した汚れを除去するための洗剤液(例えばアルカリ性洗剤液、酸性洗剤液、水など)のほか、ノズル12内外表面に付着した菌やウィルスなどの殺菌や失活のための消毒液(次亜塩素酸ナトリウム、熱湯など)や、ノズル12に付着した洗剤液を除去するためのすすぎ液(水など)なども含む。
【0019】
本実施形態の内部洗浄機構は、ノズル12の内部に三種類の洗浄液、すなわち、洗剤液、すすぎ液(水)、および、消毒液(次亜塩素酸ナトリウム、熱湯など)を択一的に送る。そのため、内部洗浄機構には、この三種類の洗浄液それぞれを貯留した洗浄液タンク30a,30b,30cが設けられている。各洗浄液タンク洗浄液タンク30a,30b,30cは、配管を介してシリンジポンプ32に接続されている。シリンジポンプ32は、配管を介してノズル12や、内部乾燥機構の配管にも接続されている。これら配管上には複数の電磁弁33が設けられており、シリンジポンプ32の連通先を択一的に切り替えられるようになっている。
【0020】
ノズル12の内部に洗浄液を流し込む際には、電磁弁33を駆動して、所望の洗浄液タンク30a,30b,30cとシリンジポンプ32とを連通させた上で、シリンジポンプ32で所望の洗浄液を吸引する。次いで、電磁弁33を駆動して、シリンジポンプ32とノズル12とを連通させた後、シリンジポンプ32を駆動して吸引した洗浄液をノズル12に流し込めばよい。なお、このとき、洗浄液は流し続けてもよいし、ノズル12の送液を停止し、ノズル12内部に洗浄液を停滞させるようにしてもよい。洗浄液を流し続ける場合、ノズル12内面は、常に、清潔な洗浄液に接触するため、高い洗浄効果が得られる。一方、ノズル12内部に洗浄液を停滞させた場合には、洗浄液の消費量を効果的に減らすことができる。したがって、洗浄液を流し続けるか否かは、望まれる洗浄能力やランニングコストに応じて選択するようにすればよい。
【0021】
内部乾燥機構は、ノズル12の内部にエアを送り込み、乾燥させる機構である。この内部乾燥機構は、ノズル12の内部にエアを送り込む送風ポンプ36、送風ポンプ36とノズル12とを接続する配管、配管上に設けられた電磁弁34、送風ポンプ36から送り込まれたエアの速さを調整するスピードコントローラ38などを備えている。ノズル12内部を乾燥させる際には、電磁弁34を駆動して、送風ポンプ36とノズル12とを連通させたうえで、当該送風ポンプ36からエアをノズル12に送り込む。なお、この送風ポンプ36は、ノズル12の内面に付着した液滴を吹き飛ばせる流量のエアを送り込める能力があるのであれば、その種類等は特に限定されない。よって、送風ポンプ36として専用のポンプを設けてもよいし、液体の吸引吐出動作に用いられる分注ポンプや、洗浄液を送り込むためのシリンジポンプ32を送風ポンプ36として兼用してもよい。
【0022】
外部洗浄機構は、ノズル12の外側面に洗浄液を噴射して洗浄する機構である。この外部洗浄機構は、ノズル12の外部に三種類の洗浄液、すなわち、アルカリ性洗剤液、酸性洗剤液、および、すすぎ液(水)を択一的に送れるようになっている。そのため、内部洗浄機構には、この三種類の洗浄液それぞれを貯留した洗浄液タンク40a,40b,40cが設けられている。なお、当然ながら、各洗浄液タンク40a,40b,40cは、外部洗浄機構専用に設けられてもよいし、内部洗浄機構に設けられた洗浄液タンク30a,30b,30cと兼用されてもよい。
【0023】
各洗浄液タンク40a,40b,40cは、配管を介してシリンジポンプ42に接続されている。シリンジポンプ42は、配管を介して洗浄液噴射器44にも接続されている。これら配管上には複数の電磁弁46が設けられており、シリンジポンプ42の連通先を択一的に切り替えられるようになっている。
【0024】
洗浄液噴射器44は、シリンジポンプ42から供給された洗浄液を霧化して噴射するものある。本実施形態では、この洗浄液噴射器44を、洗浄槽の上部の周縁近辺に二つ、180度対称位置に設けている。各洗浄液噴射器44は、液体の噴射方向がやや斜め下方向、かつ、洗浄槽22の中央方向になるような姿勢で取り付けられている。洗浄処理時、この洗浄液噴射液から噴霧された洗浄液によりノズル12の外表面が洗浄される。なお、この洗浄液噴射器44は、供給された洗浄液の液圧のみによって洗浄液を噴霧する一流体式のものであってもよいし、圧縮空気などの高速気流で供給された洗浄液を粉砕し微粒化する二流体式のものであってもよい。二流体式の洗浄液噴射器44を用いる場合には、当該洗浄液噴射器44に圧縮空気を送り込むエア・コンプレッサなどを設けておけばよい。また、本実施形態では、洗浄液噴射器44を二つとしているが、その個数は適宜変更されてもよい。
【0025】
外部乾燥機構は、ノズル12の外側面に付着した洗浄液を吹き飛ばして、当該ノズル12外側面を乾燥させるための機構である。この外部乾燥機構は、実際にノズル12にエアを吹き付ける乾燥用噴射器50や、洗浄槽22からの排気を促す排気用噴射器52、乾燥用噴射器50および排気用噴射器52に接続されたエアポンプ64などを備えている。
【0026】
乾燥用噴射器50は、洗浄槽22の上部略中央に設置されるエア噴射器である。この乾燥用噴射器50について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態で用いる乾燥用噴射器50の概略上面図およびX−X断面図である。本実施形態では、より効率的かつ効果的な乾燥を行うために、乾燥用噴射器50として円筒状あるいは円錐状(以下「略円筒状」という)の気流を生じさせるエア噴射器、例えば、サンワ・エンタープライズ社から提供されている「サークル・ブロー」などを用いている。
【0027】
かかる略円筒状の気流を生じさせる乾燥用噴射器50の構成を簡単に説明すると次のとおりである。乾燥用噴射器50は、略環状の環状本体53を有しており、この環状本体53の内側面には、当該環状本体53を軸方向に二分割する薄い横溝54が全周にわたって形成されている。換言すれば、環状本体53は、横溝54により、前部56と後部58とに区分される。このうち前部56の内周面には、横溝54と環状本体53の底面とを滑らかに接続する凸円弧面56aが形成されている。また、後部58の内周面には、凸円弧面56aに連続するような形状の凹円弧面58aが形成されている。
【0028】
環状本体53の外側面には、この横溝54に連通する横孔60が形成されており、当該横孔60を通じて圧縮空気が横溝54へと供給されるようになっている。横溝54に供給された圧縮空気は、当該横溝54の内側端部(環状本体53の内周面)から吹き出す。この吹き出した空気流れは、コアンダ効果により、前部56内周面に設けられた凸円弧面56aに沿った向きに変換される。そして、最終的に、当該環状本体53の中心軸に平行な気流、あるいは、下流側に近づくほど中心軸に近づくように僅かに傾いた気流が、全周にわたって形成され、結果として略円筒状の気流が形成されることになる。
【0029】
また、この略円筒状気流に誘引されて、後部58周辺には、強力なバキューム圧が発生する。このバキューム圧により、横溝54より後方に位置する空気が吸引され、新たな空気流れが形成される。換言すれば、この乾燥用噴射器50は、供給された圧縮空気を吐き出すだけでなく、当該乾燥用噴射器50の後方に位置する空気も吸引し、吐き出すエア吸引器としても機能する。なお、ここで例示した乾燥用噴射器50の構成は一例であり、略円筒状の気流を発生できるのであれば、他の構成であってもよい。
【0030】
本実施形態では、この乾燥用噴射器50を、洗浄槽22の上部中央であって、その中心軸がノズル12の中心軸と平行になるように設置している。そして、ノズル12を乾燥させる際には、当該乾燥用噴射器50に圧縮空気を供給して略円筒状気流を噴射させつつ、ノズル12を当該略円筒状気流の略中心軸線に沿って移動させる。円筒状気流の略中心軸上にノズル12を位置させることで、ノズル12の外周囲に、均一にエアを当てることができ、より効率的かつ効果的な乾燥が可能となる。
【0031】
ここで、この乾燥用噴射器50は、洗浄槽22内にエア噴射する。洗浄槽22は、洗浄液の飛散防止などのために蓋体22aで覆われており、排気されにくい構成となっている。かかる洗浄槽22に多量のエアが噴射されると、当該洗浄槽22内の気圧が急激に上昇するという問題がある。そこで、本実施形態では、洗浄槽22内の底面に排気用噴射器52を設けている。
【0032】
排気用噴射器52は、洗浄槽22内のエアを吸引し、外部に噴射するエア吸引器である。本実施形態では、上述した乾燥用噴射器50とほぼ同様の構成のエア噴射器を、排気用噴射器52として用いている。すなわち、上述したとおり、略円筒状気流を生じさせる際、乾燥用噴射器50(排気用噴射器52)の後方には強力なバキューム圧が生じる。本実施形態では、このバキューム圧を利用して、洗浄槽22内の過剰エアを吸引、排気している。なお、排気用噴射器52の後部58は、管体などを介して洗浄槽22の内部と連通されている。この管体を通じて、洗浄槽内に残存している廃液が排気用噴射器52に流れ込むことがある。この流れ込んだ廃液を廃液タンク26に導くために、排気用噴射器52の前部56は、配管を介して廃液タンク26に連通されている。
【0033】
エアポンプ64は、乾燥用噴射器50および排気用噴射器52に圧縮空気を送るためのポンプである。このエアポンプ64は、配管を介して乾燥用噴射器50および排気用噴射器52に接続されており、当該配管上には電磁弁51などが設けられている。
【0034】
移動機構16は、ノズル12を洗浄槽22に対して相対移動させる機構である。かかる移動機構16は、公知の周知技術を用いて構成できるため、ここでの詳説は省略する。本実施形態では、分注処理のために設けられている移動機構16、すなわち、ノズル12を水平X方向および垂直Z方向に移動させる移動機構16を、当該洗浄ユニットの移動機構16としても用いている。洗浄処理時、この移動機構16は、ノズル12を、洗浄槽22の略中央真上位置(すなわち乾燥用噴射器50の真上位置)に位置させた後、乾燥用噴射器50の中心軸に沿ってノズル12を昇降させる。そして、洗浄処理が全て終われば、再び、分注処理のために必要な移動処理を行う。
【0035】
制御部は、上述した各種機構の動作を制御するものである。より具体的には、制御部は、分注処理が一回終わるごとに、ノズル12を下降させつつ洗浄液噴射器44からの洗浄液噴射とノズル12内部への洗浄液送液とを実行させる洗浄工程と、ノズル12を上昇させつつ乾燥用噴射器50からのエア噴射とノズル12内部へのエア送風とを実行させる乾燥工程と、をセットにしたセット動作を繰り返し実行させる。そして、こうした手順を踏むことにより、本実施形態では、より短時間で、より効果的な洗浄効果を得ることができる。以下、この洗浄処理の具体的な流れについて図4〜図6を参照して説明する。
【0036】
図4、図5は、洗浄処理の流れを示すフローチャートである。また、図6は、洗浄処理の様子を示すイメージ図である。通常、分注処理が一回終わるごとに、洗浄処理が実行される。洗浄処理では、まず、移動機構16によりノズル12が乾燥用噴射器50の真上位置に移動させられる(S10)。その後、ノズル12を乾燥用噴射器50の中心軸に沿って上側基準高さまで下降させる(S12)。ここで、上側基準高さとは、後述する洗浄動作が開始でき得る高さであり、具体的には、ノズル12の先端が乾燥用噴射器50の上端近傍に位置する高さである。
【0037】
ノズル12が上側基準高さに到達すれば、分注ポンプを駆動し、分注処理後もノズル12内に残っている分注対象液体を洗浄槽22に吐出させる(S14)。この吐出された分注対象液体(廃液)は、洗浄槽22の下部に設けられた廃液孔22bを介して、廃液タンク26に排出される。
【0038】
ところで、従来多用されていた浸漬式、すなわち、ノズル12を薬液に浸して洗浄する方式の場合、洗浄槽22には予め洗浄液が貯留されているため、洗浄槽22内に廃液を吐出することはできない。そのため、浸漬式の従来技術においては、まず、ノズル12を廃液タンク26側へ移動させて、残液の吐出を行った後に、改めて、当該ノズル12を洗浄槽22に移動させて洗浄処理を開始していた。換言すれば、浸漬式の従来技術においては、廃液タンク26へのノズル12移動動作が必須であった。一方、本実施形態では、洗浄液をノズル12に吹き付けるようにしているため、洗浄槽22内に、残液を吐出したとしても、洗浄液の汚染といった問題は生じない。その結果、廃液タンク26へのノズル12移動動作は不要となり、結果として、洗浄処理全体に要する時間を短縮することができる。
【0039】
残液の吐出が完了すれば、続いて、第一回すすぎ動作を実行する(S16)。このすすぎ動作は、ノズル12の内外側面に付着している分注対象液体を除去し、この後に実行する洗浄動作(S18)の洗浄効果を高めるために行われる。
【0040】
すすぎ動作は、ノズル12の内外をすすぎ液で洗う洗浄工程と、ノズルの内外にエアを噴射して乾燥させる乾燥工程と、をセットで行う。より具体的には、まず、図6(a)に示すように、移動機構16によりノズル12を乾燥用噴射器50の中心軸線上に沿って徐々に下降させ、洗浄槽22の内部に、徐々に進入させる。そして、下側基準高さまで到達すれば、ノズル12の下降を停止する。ここで、下側基準高さとは、ノズル12の洗浄対象部分の上端付近にすすぎ液が噴射でき得る高さであり、後述のエア噴射動作を開始し得る高さである。
【0041】
また、このノズル12の下降と並行して、ノズル12の外側面へのすすぎ液の噴射も実行する。すなわち、電磁弁46やシリンジポンプ42を駆動して、すすぎ液タンク40aに貯留されているすすぎ液を洗浄液噴射器44に供給する。洗浄液噴射器44は、供給されたすすぎ液を霧化したうえで、斜め下方向に噴射する。この噴射の際、ノズル12は、上側基準高さから下側基準高さまで下降している。この下降により、ノズル12の外側面のうち、すすぎ液が吹き付けられる位置が、ノズル12先端から上方に徐々に移動していく。そして、最終的には、長尺なノズル12の外側面に満遍なくすすぎ液を吹き付けることができる。そして、その結果、長尺なノズル12の外側面に残存、付着していた分注対象液が効果的に除去される。
【0042】
さらに、本実施形態では、このノズル12の下降およびすすぎ液噴射と並行して、ノズル12の内部へのすすぎ液の送液も行う。すなわち、電磁弁33やシリンジポンプ32を駆動して、すすぎ液タンク30aに貯留されているすすぎ液をノズル12に供給する。ノズル12内部に供給されたすすぎ液は、当該ノズル12内部に残存、付着していた分注対象液とともに流れ落ちて、ノズル12の外部に排出される。
【0043】
このように、本実施形態では、ノズル12の内外を同時にすすいでおり、すすぎに要する時間を短縮することができる。また、本実施形態では、ノズル12のすすぎに寄与したすすぎ液は、そのまま廃液として排出される。したがって、浸漬式のように、すすぎ液が過度に汚染されてしまうキャリーオーバなどの心配が生じない。
【0044】
ノズル12が下側基準高さまで到達すれば、ノズル12の下降、ノズル12外側面へのすすぎ液の噴射、ノズル12内部へのすすぎ液の送液を中止する。その後、今度は、図6(b)に示すように、移動機構16を駆動して、ノズル12を乾燥用噴射器50の中心軸に沿って徐々に上昇させる。また、このノズル12上昇と並行して、ノズル12外側面にエアを噴射する。すなわち、電磁弁51やエアポンプ64を駆動して、乾燥用噴射器50から略円筒状の気流を生じさせる。この略円筒状気流を吹き付けた状態でノズル12を徐々に上昇させることにより、長尺なノズル12の外側面に満遍なくエアを吹き付けることができる。このようにエアを万遍なく吹き付けることにより、長尺なノズル12の外側面に残存、付着していたすすぎ液が効果的に除去され、ノズル12が効果的に乾燥される。
【0045】
また、ノズル12外側面へのエア噴射と並行して、ノズル12内部へのエア送風も行われる。すなわち、送風ポンプ36や電磁弁34を駆動して、ノズル12の上端から下向きに流れるエアを送風する。このエアの送風により、ノズル12の内側面に付着していたすすぎ液が下方に吹き飛ばされ、除去され、ノズル12が効果的に乾燥される。
【0046】
このように、すすぎ液ですすいだ後に、当該すすぎ液を除去する乾燥工程を行うことにより、この後に行う洗浄動作の洗浄効果をより向上することができる。すなわち、すすぎ液を除去しないまま、洗剤液を用いる洗浄動作を実行した場合、ノズル12の内外側面に残存したすすぎ液により、洗剤液のノズル12内外側面への付着が妨害されたり、洗剤液が薄まったりするおそれがある。これらは、洗浄効果の低減を招く。もちろん、こうした問題を避けるために、洗剤液の使用量や洗浄時間を増加することも考えられるが、これは、時間や洗剤液の無駄になる。一方、本実施形態のように、すすぎ工程の後に乾燥工程を実行(換言すれば、洗剤液での洗浄工程の前に乾燥工程を実行)することにより、洗剤液をノズル12の内外側面に効果的に付着、拡散させることができ、洗浄効果を向上することができる。
【0047】
ノズル12が上側基準高さまで到達すれば、ノズル12の上昇、ノズル12外側面へのエア噴射、ノズル12内部へのエア送風を中止する。その後、今度は、洗浄動作を実行する(S18)。この洗浄動作は、すすぎ液に替えて洗剤液を用いる点を除けば、第一回すすぎ動作と同じ手順で行われる。すなわち、まず、ノズル12を下降させつつ、ノズル12の外側面への洗剤液の噴射、および、ノズル12内部への洗剤液の送液を行う。次いで、ノズル12を上昇させつつ、ノズル12の外側面へのエアの噴射、および、ノズル12の内部へのエアの送風を行う。ここで、洗剤液を用いた洗浄工程の後にも乾燥工程を設けることにより、次に行う第二回すすぎ動作の効率を向上させることができる。すなわち、第二回すすぎ動作で除去すべき洗剤液を予め、洗浄動作におけるエア噴射・送風により大幅に除去しておくことにより、少量のすすぎ液でも十分なすすぎ効果を得ることができる。
【0048】
洗浄動作が終了すれば、続いて、第二回すすぎ動作が実行される(S20)。第二回すすぎ動作は、第一回すすぎ動作と同じ手順で行われる。第二回すすぎ動作が終了すれば、続いて、消毒液を用いた消毒動作を実行する(S22)。消毒動作は、すすぎ液に替えて消毒液を用いる点を除けば、第一回すすぎ動作と同じ手順で行われる。この消毒動作の後には、第三回すすぎ動作が、第一回すすぎ動作と同じ手順で実行される(S24)。その後、ノズル12が洗浄槽22から完全に離脱する離脱高さまで、ノズル12を上昇させれば、洗浄処理は終了となる。洗浄処理終了後は、必要に応じて、次の分注処理を行う。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、洗浄動作や消毒動作、すすぎ動作のたびに、ノズル12を乾燥させている。その結果、より少量の洗浄液(洗剤液や消毒液、すすぎ液)でより高い洗浄効果が得られる。また、本実施形態では、ノズル12を乾燥させるために略円筒状気流を用いている。そのため、ノズル12の周囲に均等にエアを吹き付けることが可能となり、より効果的にノズル12を乾燥させることができる。
【0050】
なお、上述した手順は一例であり、ノズル12に洗浄液を噴射する洗浄工程とノズル12に付着した洗浄液を吹き飛ばす乾燥工程とを含むのであれば、その他の手順は適宜、変更されてもよい。例えば、本実施形態では、洗浄動作に先立って第一回すすぎ動作を行っているが、この第一回すすぎ動作は省略されてもよい。また、本実施形態では、ノズル12を、上側基準高さから下側基準高さまで下降させている間だけ、洗浄液を噴射しているが、強固な汚れがある場合は、上側基準高さから下側基準高さまでの間をN+0.5往復(Nは整数)させるようにしてもよい。なお、いずれの場合であっても、洗浄工程と乾燥工程とをセットにしたセット動作を二回以上繰り返すことが望ましい。さらに、本実施形態では、ノズル12を昇降させているが、当然ながら、ノズル12を静止させて、洗浄槽22を昇降させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 分注装置、12 ノズル、14 ノズルヘッド、16 移動機構、20 ノズル洗浄ユニット、22 洗浄槽、26 廃液タンク、30a,30b,30c,40a,40b,40c 洗浄液タンク、32,42 シリンジポンプ、33,34,46,51 電磁弁、36 送風ポンプ、38 スピードコントローラ、44 洗浄液噴射器、50 乾燥用噴射器、52 排気用噴射器、53 環状本体、54 横溝、60 横孔、64 エアポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の吸引吐出に用いられるノズルを洗浄するノズル洗浄ユニットであって、
前記ノズルのうち少なくとも洗浄対象部分が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内において、洗浄液を噴射する洗浄液噴射手段と、
前記ノズルの外側面に付着した洗浄液を前記洗浄槽内に吹き飛ばすべくエアを噴射する乾燥用噴射手段と、
前記ノズルを前記洗浄液噴射手段および前記乾燥用噴射手段に対して相対的に昇降させる移動手段と、
少なくとも、前記洗浄液噴射手段、乾燥用噴射手段、および、移動手段の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ノズルを前記洗浄液噴射手段に対して少なくとも下降させつつ前記洗浄液噴射手段に洗浄液を噴射させる洗浄工程と、前記洗浄工程の後に前記ノズルを前記乾燥用噴射手段に対して少なくとも上昇させつつ前記乾燥用噴射手段にエアを噴射させる乾燥工程と、をセットにしたセット動作を行わせる、
ことを特徴とするノズル洗浄ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル洗浄ユニットであって、
前記乾燥用噴射手段は、略円筒状下向きの気流を発生させるエア噴射器を備え、
前記移動手段は、前記円筒状下向きの気流の略中心軸線に沿って前記ノズルを昇降させる、
ことを特徴とするノズル洗浄ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のノズル洗浄ユニットであって、さらに、
前記乾燥用噴射手段によるエア噴射時に、前記洗浄槽内の過剰エアを吸引して外部に排出する排気用噴射手段も備える、ことを特徴とするノズル洗浄ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のノズル洗浄ユニットであって、さらに、
前記ノズルの内部に洗浄液を送る送液手段と、
前記ノズルの内部にエアを送る送風手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記洗浄工程実行時に前記洗浄液噴射手段による洗浄液噴射と並行して前記送液手段によるノズル内部への洗浄液送液も行わせ、前記乾燥工程実行時に前記乾燥用噴射手段によるエア噴射と並行して前記送風手段によるノズル内部へのエア送風も行わせる、
ことを特徴とするノズル洗浄ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のノズル洗浄ユニットであって、
前記制御手段は、少なくとも、洗浄液として洗剤液を用いるセット動作と、洗浄液としてすすぎ液を用いるセット動作と、を行うことを特徴とするノズル洗浄ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−78881(P2011−78881A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231810(P2009−231810)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】