説明

ハイブリッド自動車

【課題】内燃機関の始動制御中に内燃機関の停止が要求されたときでも内燃機関をよりスムーズに停止させる。
【解決手段】エンジンの始動制御を実行している最中にその停止が要求されたときには(S110)、停止制御開始回転数に基づいてレートリミットTlimを設定すると共にエンジンの現在の回転数Neに基づいて停止時基本トルクTsbを設定し、前回のモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)からレートリミットTlimを減じたトルクと停止時基本トルクTsbとのうち大きい方をモータMG1から出力すべきトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御する(S170〜S230)。これにより、エンジンの回転数Neをスムーズに減少させ、ショックを伴うことなくエンジンを目標停止位置により正確に停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と、前記内燃機関の出力軸にトルクの入出力が可能な電動機と、前記内燃機関の始動が要求されたときには該内燃機関の回転数を引き上げるトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御すると共に該内燃機関の回転数が所定回転数以上に至ったときに燃料噴射と点火とが開始されるよう該内燃機関を制御する始動制御を実行し、前記内燃機関の停止が要求されたときには該内燃機関の燃料噴射が停止されるよう該内燃機関を制御すると共に該内燃機関の回転数を引き下げるトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する停止制御を実行する始動停止制御手段とを備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、第1の回転電機MG1と、サンギヤに第1の回転電機MG1の回転軸が接続されキャリアにエンジンの出力軸が接続されリングギヤに駆動軸が接続された遊星歯車装置と、駆動軸に接続された第2の回転電機MG2とを備え、エンジンを停止させる際には、目標停止位置に向かって次第にエンジンの回転速度を低減させるように第1の回転電機MG1を制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、第1の回転電機MG1の慣性モーメントにより生じる慣性トルクを打ち消すための補正トルクを設定し、設定した補正トルクで第1の回転電機MG1から出力するトルクを補正することにより、エンジンを目標停止位置に高い精度で停止させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−167908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したハイブリッド自動車では、エンジンが自立運転している状態から停止させることを前提としているため、例えばエンジンを始動している最中にイグニッションオフされるなど自立運転していない状態からエンジンの停止が要求されると、適切でないトルクが第1の回転電機MG1から出力される結果、エンジンが目標停止位置からずれて停止したり、エンジンの回転がアンダーシュートしショックが生じたりする場合が考えられる。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、内燃機関の始動制御中に内燃機関の停止が要求されたときでも内燃機関をよりスムーズに停止させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、前記内燃機関の出力軸にトルクの入出力が可能な電動機と、前記内燃機関の始動が要求されたときには該内燃機関の回転数を引き上げるトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御すると共に該内燃機関の回転数が所定回転数以上に至ったときに燃料噴射と点火とが開始されるよう該内燃機関を制御する始動制御を実行し、前記内燃機関の停止が要求されたときには該内燃機関の燃料噴射が停止されるよう該内燃機関を制御すると共に該内燃機関の回転数に基づいて該内燃機関の回転数を引き下げるトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する停止制御を実行する始動停止制御手段とを備えるハイブリッド自動車において、
前記始動停止制御手段は、前記始動制御が実行されている最中に前記内燃機関の停止が要求されたときには、前記始動制御の実行が完了した以降に該内燃機関の停止が要求されたときに用いられるトルクよりも絶対値が小さくなるよう制限したトルクを用いて前記内燃機関の回転数が引き下げられるよう前記電動機を制御する手段である
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、内燃機関の始動が要求されたときには内燃機関の回転数を引き上げるトルクが電動機から出力されるよう電動機を制御すると共に内燃機関の回転数が所定回転数以上に至ったときに燃料噴射と点火とが開始されるよう内燃機関を制御する始動制御を実行し、内燃機関の停止が要求されたときには内燃機関の燃料噴射が停止されるよう内燃機関を制御すると共に内燃機関の回転数に基づいて内燃機関の回転数を引き下げるトルクが電動機から出力されるよう電動機を制御する停止制御を実行するものにおいて、始動制御が実行されている最中に内燃機関の停止が要求されたときには、始動制御の実行が完了した以降に内燃機関の停止が要求されたときに用いられるトルクよりも絶対値が小さくなるよう制限したトルクを用いて内燃機関の回転数が引き下げられるよう電動機を制御する。これにより、始動制御を実行している最中に内燃機関の停止が要求されたときでも内燃機関の回転数をスムーズに引き下げて停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン始動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】レートリミット設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】停止時基本トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22を始動している最中にその停止が要求されたときのエンジン22の回転数NeとモータMG1のモータトルクTm1*の時間変化の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量制御などにより運転するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にねじれ要素としてのフライホイールダンパ(以下、ダンパという)28を介してキャリアが接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバーのポジションを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジション,車速センサ88からの車速Vなどを入力すると共にエンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信して車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられたクランクポジションセンサ23により検出されたクランク角CAを入力すると共に入力したクランク角CAに基づいてクランクシャフト26の回転数即ちエンジン22の回転数Neも演算している。また、モータECU40は、モータMG1,MG2の回転位置を検出する回転位置検出センサからの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。さらに、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づい残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)とバッテリ50の温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。
【0012】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、基本的には、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される以下に説明する駆動制御によって走行する。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに応じて走行のために駆動軸32に要求される要求トルクTr*を設定し、要求トルクTr*に駆動軸32の回転数(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算する。続いて、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて設定されるバッテリ50を充放電するのに必要なパワーとしての充放電要求パワーPb*と走行用パワーPdrv*と損失Lossとの和としてエンジン22から出力すべき要求パワーPe*を計算する。そして、エンジン22の運転を停止しているときには要求パワーPe*をエンジン22を始動するための始動閾値と比較し、要求パワーPe*が始動閾値以上となったときにはエンジン22を始動する。一方、エンジン22を運転しているときには要求パワーPe*を始動閾値よりも小さな値の停止閾値と比較し、要求パワーPe*が停止閾値未満となったときにはエンジン22の運転を停止する。
【0013】
エンジン22の運転を継続しているときやエンジン22を始動した後は、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数とトルクとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数と目標トルクとを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22の回転数Neが目標回転数となるようにするための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令を設定する。次に、要求トルクTr*からモータMG1をトルク指令で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸32に作用するトルクを減じて得られるトルクをモータMG2のトルク指令として設定する。そして、設定したエンジン22の目標回転数と目標トルクとについてはエンジンECU24に送信し、モータMG1,MG2のトルク指令についてはモータECU40に送信する。目標回転数と目標トルクとを受信したエンジンECU24は、目標回転数と目標トルクとによってエンジン22が運転されるようエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを実行し、モータMG1,MG2のトルク指令を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御する。これにより、アクセル開度Accに対応する走行用パワーPdrv*を出力して要求トルクTr*により走行すること(以下、ハイブリッド走行という)ができる。
【0014】
一方、エンジン22の運転停止を継続しているときやエンジン22の運転を停止した後は、モータMG1のトルク指令に値0を設定すると共にバッテリ50の入出力制限の範囲内で要求トルクTr*をモータMG2のトルク指令に設定し、設定したモータMG1,MG2のトルク指令をモータECU40に送信する。モータMG1,MG2のトルク指令を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御する。これにより、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの動力のみを用いて要求トルクTr*により走行すること(以下、モータ走行という)ができる。実施例のハイブリッド自動車20は、こうした制御により、エンジン22の間欠運転を伴ってバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でバッテリ50を充放電しながらアクセル開度Accに対応する走行用パワーPdrv*を駆動軸32に出力して要求トルクTr*により走行する。
【0015】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、エンジン22を始動している最中にその停止が要求された際の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン始動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、前述したように、要求パワーPe*が始動閾値以上となったときに実行される。
【0016】
エンジン始動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、エンジン22の回転数NeをエンジンECU24から通信により入力し(ステップS100)、停止要求がなされているか否かを判定する(ステップS110)。いま、エンジン22の始動制御が実行されている最中を考えているから、通常、停止要求がなされることはないが、例えば、始動制御を実行している最中にイグニッションオフされたときなどの特殊な条件が成立したときには停止要求がなされる場合が生じる。停止要求がなされていないと判定されると、予め定められた始動時のトルクマップとエンジン22の始動開始からの経過時間tとに基づいて得られるトルクをモータMG1から出力すべきトルク指令Tm1*に設定し(ステップS120)、設定したトルク指令Tm1*をモータECU40に送信する(ステップS130)。これにより、トルク指令Tm1*を受信したモータECU40は、モータMG1がトルク指令Tm1*で駆動されるようインバータ41のスイッチング素子をスイッチング制御する。なお、図示しないが、モータMG2については、モータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸32に作用するトルクをキャンセルするトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定し、モータMG2が設定したトルク指令Tm2*で駆動されるようインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御する。そして、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以上か否かを判定する(ステップS140)。エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref未満のときには、ステップS100に戻ってステップS100〜S140の処理を繰り返し実行し、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以上のときには、燃焼噴射制御と点火制御とが開始されるようエンジンECU24に指令信号を送信する(ステップS150)。エンジン22の燃料噴射制御と点火制御とが開始されると、エンジン22が完爆したと判定されるまで(ステップS160)、ステップS100に戻ってステップS100〜S160の処理を繰り返し実行し、エンジン22が完爆すると、これで本ルーチンを終了する。
【0017】
ステップS110で始動制御を実行している最中に停止要求がなされると、燃料噴射中であれば燃焼噴射が停止されるようエンジンECU24に制御指令を送信し(ステップS170)、ステップS100で入力したエンジン22の回転数Neを停止制御を開始する時点のエンジン22の回転数(停止制御開始回転数)として用いてレートリミットTlimを設定する(ステップS180)。ここで、レートリミットTlimは、モータMG1に対して許容されるトルクの最大減少幅を定めたものであり、実施例では、停止制御開始回転数とレートリミットTlimとの関係を予め求めてレートリミット設定用マップとしてROMに記憶しておき、停止制御開始回転数が与えられるとマップから対応するレートリミットTlimを導出して設定するものとした。レートリミット設定用マップの一例を図3に示す。レートリミットTlimは、図示するように、停止制御開始時回転数が低いほど減少幅が狭くなるよう設定される。そして、エンジン22の現在の回転数Neを入力し(ステップS190)、入力したエンジン22の回転数Neに基づいて停止時基本トルクTsbを設定する(ステップS200)。ここで、停止時基本トルクTsbは、エンジン22を自立運転している状態から目標停止位置で停止させる場合に適合したトルクであり、実施例では、エンジン22の回転数Neと停止時基本トルクTsbとの関係を予め求めて停止時基本トルク設定用マップとしてROMに記憶しておき、エンジン22の回転数Neが与えられるとマップから対応する停止時基本トルクTsbを導出して設定するものとした。停止時基本トルク設定用マップの一例を図4に示す。停止時基本トルクTsbは、図示するように、エンジン22の回転数Neが停止直前の回転数N1に至るまでは回転数Neが低いほど絶対値が大きく(負の値が小さく)なる傾向に設定され、回転数N1未満となると、エンジン22を目標停止位置で停止させるためのトルクが設定される。
【0018】
こうしてレートリミットTlimと停止時基本トルクTsbとを設定すると、前回このルーチンで設定したモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)からレートリミットTlimを減じたトルクと停止時基本トルクTsbとのうち大きい方をモータMG1から出力すべきトルク指令Tm1*に設定し(ステップS210)、設定したトルク指令Tm1*をモータECU40に送信する(ステップS220)。そして、エンジン22が完全に停止するまで(ステップS230)、ステップS190に戻ってステップS190〜S230の処理を繰り返し実行し、エンジン22が完全に停止すると、これで本ルーチンを終了する。
【0019】
図5は、エンジン22を始動している最中にその停止が要求されたときのエンジン22の回転数NeとモータMG1のモータトルクTm1の時間変化の様子を示す説明図である。なお、図中、実線は、レートリミットTlimによる制限前のモータトルク(停止時基本トルクTsb)でエンジン22を停止させる様子を示し(比較例)、破線は、レートリミットTlimによる制限後のモータトルクでエンジン22を停止させる様子を示す(実施例)。図示するように、時刻t1に、モータMG1からモータトルクTm1を出力してエンジン22をクランキングしたが、その途中の時刻t2にエンジン22の停止が要求されると、低い回転数Neからエンジン22の停止制御を開始することになり、図4のマップにより停止時基本トルクTsbとして値の小さな負のトルク(絶対値の大きなトルク)が設定される。このため、停止時基本トルクTsbをトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御する比較例では、モータMG1からのトルクが強すぎてエンジン22の回転数Neが急減してアンダーシュートし、目標停止位置からずれる場合やショックが生じる場合がある。これに対して、実施例では、停止時基本トルクTsbに対して停止制御開始回転数に応じたレートリミットTlimにより制限を施したものをトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御するから、エンジン22の回転数Neはスムーズに減少し、ショックを伴うことなくエンジン22を目標停止位置により正確に停止させることができる。
【0020】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の始動制御を実行している最中にその停止が要求されたときには、停止制御開始回転数に基づいてレートリミットTlimを設定すると共にエンジン22の現在の回転数Neに基づいて停止時基本トルクTsbを設定し、前回のモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)からレートリミットTlimを減じたトルクと停止時基本トルクTsbとのうち大きい方をモータMG1から出力すべきトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御するから、エンジン22の回転数Neをスムーズに減少させ、ショックを伴うことなくエンジン22を目標停止位置により正確に停止させることができる。
【0021】
実施例のハイブリッド自動車20では、停止制御開始回転数に基づいてレートリミットTlimを設定し、前回のモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)からレートリミットTlimを減じたトルクと停止時基本トルクTsbとのうち大きい方をモータMG1のトルク指令Tm1*に設定するものとしたが、これに限定されるものではなく、エンジン22の現在の回転数Neに基づいて補正トルクを設定し、設定した補正トルクを停止時基本トルクTsbに加えたものをトルク指令Tm1*に設定したり、エンジン22の現在の回転数Neに基づいて補正係数を設定し、設定した補正係数を停止時基本トルクTsbに乗じたものをトルク指令Tm1*に設定したりするなど、停止時基本トルクTsbよりも値の大きな負のトルク(絶対値の小さなトルク)を設定するものであれば、如何なる設定手法によるものとしてもよい。
【0022】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「電動機」に相当し、エンジン22の始動が要求されたときには、始動時のトルクマップとエンジン22の始動開始からの経過時間tとに基づいて得られるトルクをモータMG1から出力すべきトルク指令Tm1*に設定してモータECU40に送信し、エンジン22の回転数Neが所定回転数Nrefに至ったときに燃料噴射制御と点火制御とを開始するようエンジンECU24に指令信号を送信し、エンジン22の始動制御を実行している最中にその停止が要求されたときには、燃焼噴射が停止されるようエンジンECU24に指令信号を送信し、停止制御開始回転数に基づいてレートリミットTlimを設定し、前回のモータMG1のトルク指令(前回Tm1*)からレートリミットTlimを減じたトルクと停止時基本トルクTsbとのうち大きい方をモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータECU40に送信する図2のエンジン始動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とトルク指令Tm1*でモータMG1を制御するモータECU40と指令信号に応じてエンジン22を制御するエンジンECU24とが「始動停止制御手段」に相当する。
【0023】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0024】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランクポジションセンサ、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 フライホールダンパ(ダンパ)、30 プラネタリギヤ、32 駆動軸、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、80 イグニッションスイッチ、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関の出力軸にトルクの入出力が可能な電動機と、前記内燃機関の始動が要求されたときには該内燃機関の回転数を引き上げるトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御すると共に該内燃機関の回転数が所定回転数以上に至ったときに燃料噴射と点火とが開始されるよう該内燃機関を制御する始動制御を実行し、前記内燃機関の停止が要求されたときには該内燃機関の燃料噴射が停止されるよう該内燃機関を制御すると共に該内燃機関の回転数に基づいて該内燃機関の回転数を引き下げるトルクが前記電動機から出力されるよう該電動機を制御する停止制御を実行する始動停止制御手段とを備えるハイブリッド自動車において、
前記始動停止制御手段は、前記始動制御が実行されている最中に前記内燃機関の停止が要求されたときには、前記始動制御の実行が完了した以降に該内燃機関の停止が要求されたときに用いられるトルクよりも絶対値が小さくなるよう制限したトルクを用いて前記内燃機関の回転数が引き下げられるよう前記電動機を制御する手段である
ことを特徴とするハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171394(P2012−171394A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32894(P2011−32894)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】