説明

ハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法

【課題】 過給器が備わるハイブリッド車両において内燃機関を効率良く動作させる。
【解決手段】 ハイブリッドシステム10において、制御装置100のトルク算出部100bはモータジェネレータMG1のトルク反力からエンジン200のトルクを算出することが可能に構成されている。また、燃料消費率算出手段100cは、係る算出されたエンジントルクと、燃料噴射量及びエンジン回転数とに基づいて、エンジン200における瞬間的な燃料消費率を算出することが可能に構成されている。動作線更新部100dは、この算出された燃料消費率に基づいて動作点学習処理を実行し、エンジン200の動作点を燃費率最小動作点に設定する。この際、排気バルブの開きタイミングを制御してターボ231のばらつきや経時変化を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として、例えばターボチャージャーなどの過給器及びVVT(Variable Valve Timing)などの可変動弁機構を備える内燃機関並びにモータジェネレータを備えるハイブリッド車両において内燃機関の動作状態を制御する、ハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1に開示された車両の駆動力制御装置(以下、「従来の技術」と称する)がある。従来の技術によれば、ハイブリッド車において、予め設定された最適燃費線に基づいてエンジンの動作状態が制御されるため、目標となるエンジン回転数に応じて、燃料消費率が最小となるようなエンジントルクを求めることが可能であるとされている。
【0003】
尚、ハイブリッド車において、駆動パワー要求値に対し、予め記憶されたエンジン特性マップより最適効率点となる動作点を取得し、この動作点が維持されるようにスロットル開度を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、ハイブリッド車において、消費電力と蓄電状態とに基づいて、運転領域全体でエンジンの燃料消費率が最小となるように内燃機関及び電動機の動作状態を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
更に、ディーゼルエンジンにおいて、燃料の噴射量と走行距離から瞬間的な燃料消費率を算出する技術も提案されている(例えば、特許文献4又は5参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−179371号公報
【特許文献2】特開平10−98803号公報
【特許文献3】特開2002−171604号公報
【特許文献4】特開平8−334052号公報
【特許文献5】特開平8−334051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
内燃機関における最適燃費線は、例えば大気圧や湿度などの環境条件によって変化する。然るに、従来の技術においてはこのような変化が考慮されていない為、予め設定された最適燃費線に基づいて燃料消費率が最小となるように内燃機関を動作させても、効率が最適化されずに燃料が無駄に消費されることがある。
【0008】
特に、内燃機関がターボチャージャーなどの過給器を備える場合、係る過給器の製造上のばらつき或いは経時変化などによって、燃料消費率は大きく変わる可能性がある。
【0009】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、過給器を備えるハイブリッド車両において内燃機関を効率良く動作させ得るハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置は、動力源として(i)過給器を備えると共に吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開閉時期が可変である内燃機関及び(ii)モータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定手段と、該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出手段と、前記過給器の作動期間において前記燃料消費率算出手段により前記吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新手段と、該更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明におけるモータジェネレータは、バッテリから供給される電気エネルギを機械エネルギに変換することによって、電動機として動作する機能と、機械エネルギを電気エネルギに変換することによって、例えばバッテリ等に電力を供給する発電機として動作する機能とを有する。尚、モータジェネレータは予め、主として電動機(モータ)として使用されるモータジェネレータと、主として発電機(ジェネレータ)として使用されるモータジェネレータの二種類搭載されていてもよい。このような内燃機関とモータジェネレータとを具備する本発明に係るハイブリッド車両においては、モータジェネレータによって適宜内燃機関の動力をアシストすることが可能な所謂パラレル方式の制御が好適に行われる。
【0012】
本発明における「内燃機関」とは、燃料の燃焼を動力に変換する機関を総称するが、好適にはガソリン、ディーゼル、LPG等を燃料とするエンジンなどを指す。
【0013】
本発明に係る内燃機関においては特に吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開閉時期が可変である。吸気及び排気弁(バルブ)の開閉時期(バルブタイミング)は、一般に内燃機関におけるクランクシャフトの回転角或いはクランク位相に対応付けられて制御されている。従って、ここで述べられる「時期」とは、単なる時刻概念であると言うよりは、クランクシャフトの回転角或いはクランク位相を基準とする相対的な時刻概念である。従って、係る開閉時期を規定する表現として、「遅角」或いは「進角」なる単語を含む用語(例えば、「遅角量」、「遅角制御」など)が好適に使用される。例えば、「遅角制御」された状態とは、即ち、バルブの開く或いは閉じる時期が、クランクシャフトの回転に対応付けられて設定された基準となる位相に対し相対的に遅れるように制御された状態であり、例えば「遅角量」とは、その際の角度或いは位相値である。また、「進角制御」された状態とは、その逆であって、バルブの開く或いは閉じる時期がクランクシャフトの回転角に対応付けられて設定された基準となる位相に対し相対的に進むように制御された状態を指す。このような開閉時期を可変とする手段としては、例えば、ヘリカルギア制御方式、ベーン制御方式、或いは電磁制御方式など公知の可変動弁機構が使用される。尚、吸気及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開閉時期が可変である限りにおいて、例えば、VVTLなどのようにバルブのリフト量が可変であってもよい。
【0014】
尚、「開閉時期が可変である」とは、バルブの開弁時期或いは閉弁時期を、その開弁期間或いは閉弁期間を維持したまま全体的に進角側或いは遅角側に制御可能である他に、例えば閉弁時期を固定したまま開弁時期を変化させることによって開弁期間或いは閉弁期間を可変とするような作用角制御が可能である場合を含む趣旨である。
【0015】
本発明に係る内燃機関には過給器が備わっている。本発明に係る「過給器」とは、内燃機関に対し、大気圧によって規定される自然的な吸気量の限界を超えて空気又は混合気を供給することを可能とする機構を総称する概念であり、好適には排気の一部を利用してタービン及びコンプレッサを駆動するターボチャージャーを指す。
【0016】
内燃機関には予め動作線が設定されており、制御手段は、この動作線に従って内燃機関の動作状態を制御している。ここで、本発明における「動作線」とは、内燃機関のトルク及び内燃機関の回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で内燃機関の動作状態を規定する線であり、予め内燃機関の出力値に対応付けられて設定された複数の動作点によって規定される線を表す。制御手段は、より具体的には、動作線上で動作点を決定し、内燃機関を該決定された動作点によって規定される動作状態に制御している。
【0017】
尚、動作線は、好適には、これら予め設定された動作点を相互に繋げて得られる線である。この際、個々の出力値に対応する動作点間は適当に補間されていてもよい。また、動作線を規定する個々の動作点は、通常、対応関係にある内燃機関の出力値において燃料消費率(以下、適宜「燃費率」と称する)が最小となる、即ち効率が最大となるトルクと回転数との組み合わせを表す点(燃費率最小動作点)として設定されている。
【0018】
ここで、理論的には、膨張比を可能な限り大きく設定することによって燃料消費率は小さくなる。そのために、通常、排気弁の開弁時期は可能な限り遅角側に設定されている。
【0019】
然るに、過給器を備える内燃機関においては、燃費率最小動作点が過給器の状態に大きな影響を受ける。尚、ここで述べる「過給器の状態」とは、過給器の製造上のばらつき又は過給器に生じる物理的若しくは機械的な経時変化を指す概念であり、例えば、タービンの形状のばらつきや、過給圧を調整するために設けられたウェストゲートバルブの開度のばらつきなどを指す。これら過給器の状態によっては、排気圧の影響が大きくなって、場合によっては、予め設定された動作点は燃費率最小動作点からずれてしまうのである。従って、従来の技術の如く、動作線が予め設定された固定な動作線である場合、内燃機関は、燃料消費率が最小とならない動作点で使用される可能性がある。
【0020】
そこで、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置(以下、適宜「内燃機関制御装置」と称する)によれば、以下に説明する如く動作線の更新が可能となっている。即ち、本発明に係る内燃機関制御装置によれば、その動作時には、先ずトルク特定手段により内燃機関のトルクが特定される。更に、燃料消費率算出手段により、この特定されたトルク、内燃機関の回転数及び内燃機関の燃料噴射量に基づいて内燃機関の瞬間的な燃料消費率が算出される。
【0021】
本発明における「トルク特定手段」とは、例えば、直接的又は間接的に内燃機関のトルクを測定又は検出する態様を有していてもよいし、これら測定又は検出されたトルクを単に電気信号として数値的に取得する態様を有していてもよいし、或いは、直接的又は間接的に測定又は検出された、トルク又はトルクとの関連性を有する何らかの物理量、電気量、又は化学量からトルクを数値演算的に算出する態様を有していてもよく、最終的に内燃機関のトルクを特定可能である限りにおいてその態様は自由に決定されてよい趣旨である。尚、直接的又は間接的にトルクを測定又は検出する際には、例えば公知である接触式又は非接触式のトルクセンサが使用されてもよい。尚、ハイブリッド車両が、ハイブリッド車両に備わるモータジェネレータによって、内燃機関のトルクを所謂トルク反力と称される形で検出することが可能に構成されている場合には、トルクセンサ等を別個に設ける必要はなく極めて効率的である。
【0022】
本発明における「燃料消費率」とは、内燃機関における単位電力量(例えば、単位はkWh)当りの燃料噴射量を表す指標値である。内燃機関の出力(即ち、電力)は、内燃機関のトルクと回転数との積に比例する。尚、「瞬間的な」とは、予め定められた条件下において、固定又は可変である所定種類の周期毎に訪れる時刻に、或いは全く任意の時刻において燃料消費率を算出することが可能であることを表す趣旨である。
【0023】
本発明に係る動作線更新手段は、過給器の作動期間において燃料消費率算出手段により吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて動作線の更新を行うことが可能に構成されている。
【0024】
ここで、「過給器の作動期間」とは、過給器が作動している期間、即ち、内燃機関が作動している期間と等価な概念であるが、狭義には、内燃機関がアイドリングしている状態や、内燃機関が低回転域で作動している状態を除く、過給器が比較的定常的に作動している期間を指す概念である。但し、過給器が作動している期間である限りにおいて、動作線の更新は如何なるタイミングで実施されてもよい。
【0025】
動作線更新手段は、吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて動作線の更新を行う。この際、動作線の更新は、算出された燃料消費率を反映する限りにおいてどのように行われてもよいが、例えば、動作線を規定する動作点の燃料消費率が小さくなるように更新されるのが好適である。尚、動作点は動作線を規定するものであるから、動作点を更新することによって動作線は更新される。但し、同様に瞬間的な燃料消費率に基づいて動作線が更新され、その結果として動作点が更新されてもよい。
【0026】
尚、「吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開閉時期に対応付けられて」とは、算出される燃料消費率と吸気弁又は排気弁の開閉時期との間に、後々参照可能な何らかの対応関係が存在することを指す概念である。このような概念が担保される限りにおいてその態様は限定されないが、好適には、吸気弁又は排気弁の開閉時期を、遅角側に或いは進角側に、一定間隔或いはその都度決定される適当な間隔で変化させる毎に燃料消費率が算出されることを指す。
【0027】
尚、上述したような、過給器の状態に起因して燃費率最小動作点が変化することに対処する場合には、好適には排気弁の開弁時期が遅角或いは進角側に変更され、この排気弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて動作線の更新が行われるが、何らの対処が行われない場合と比較して燃料消費率を改善可能である限りにおいて、動作線の更新は、吸気弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて行われてもよいし、吸気弁及び排気弁各々の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて行われてもよい。
【0028】
本発明において、制御手段は、このようにして更新が行われた動作線或いは動作点に従って、吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期を係る動作線或いは動作点に対応する開弁時期に制御し、内燃機関の動作状態を制御する。即ち、本発明に係る内燃機関制御装置によれば、従来固定されていた動作線(動作点)を自由に設定し直し、内燃機関を効率良く動作させることが可能となっているのである。
【0029】
尚、ここで述べられる「動作線の更新」とは、動作線を単に変更するのみに限らず、変更された動作線を随時記憶することも含む趣旨である。このように変更された動作線を記憶することにより、動作線を常に最適な形に維持することも容易にして可能である。尚、この際、動作線は、更新が行われた際の条件を示す何らかの情報と対応付けられる形で記憶されてもよい。また、このように動作線の変更を記憶しておく期間は何ら限定されない。例えば、ハイブリッド車両が一定期間不使用状態であれば記憶内容が消去されて、再び動作点が予め設定されていた初期値に戻ってもよい。この場合には、次回ハイブリッド車両が運転される際に、その時の状況に応じて動作線が更新されることとなる。一方、動作線はハイブリッド車両の使用環境、使用目的、又は使用頻度などに適応する形で常にアクティブに更新され続けてもよい。即ち、動作線の更新を何ら行わない場合と比較して、燃料の消費量を幾らかなりとも低減し得る(効率を改善し得る)限りにおいて、動作線の更新は一時的なものであっても永続的なものであってもよい。
【0030】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記トルク特定手段は、前記モータジェネレータを介して検出される前記内燃機関のトルク反力に基づいて前記トルクを特定する。
【0031】
この態様によれば、内燃機関のトルクは、ハイブリッド車両に備わるモータジェネレータによってトルク反力として検出される。従って、トルク特定手段はこの検出されたトルクに基づいてトルクを特定すればよいのに加えて、既に述べたように、トルクセンサなどのトルク検出手段を別途設置する必要もなくなり、極めて効率的且つ経済的である。
【0032】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記動作線の更新の少なくとも一部として、(i)前記座標平面で前記内燃機関の一の出力値について前記トルクと前記回転数との相互関係を表してなる等出力線上において、前記内燃機関の動作点を前記予め設定された動作線上における前記一の出力値に対応する動作点から前記吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けて離散的又は連続的に変化させる第1処理、(ii)前記第1処理において前記動作点を離散的又は連続的に変化させた結果として得られる複数の動作点各々について前記燃料消費率算出手段により算出される燃料消費率各々を比較することにより前記燃料消費率が最小となる燃費率最小動作点を特定する第2処理、及び(iii)前記一の出力値についての等出力線上において、前記一の出力値に対応する動作点を前記燃費率最小動作点に更新する第3処理を含んでなる学習処理を行う。
【0033】
第1処理は、動作線が規定されている座標平面上において、内燃機関の等出力線上で吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けて動作点を変化させる処理である。ここで、「等出力線」とは、内燃機関の一の出力値について、トルクと回転数との相互関係を表した曲線であり、係る座標平面上で、内燃機関の出力値に応じて複数規定することができる。等出力線上で動作点を変化させる際には、例えばスロットルバルブの開度などが制御され一の出力値が維持される。
【0034】
動作線更新手段は、動作線上でこの一の出力値に対応する動作点から吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けて離散的又は連続的に動作点を変化させる。この際、動作点を離散的に変化させるか、連続的に変化させるかは逐次選択されてよい。また、離散的に変化させる際に、等出力線上で如何なる動作点を選択するのかも自由に決定されてよい。更に、等出力線上で動作点を変化させる範囲も自由に設定されてよい。或いは、動作点を変化させる範囲は、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって決定されていてもよい。
【0035】
第2処理は、動作点を等出力線上で離散的又は連続的に変化させた結果としての動作点各々に対して燃料消費率算出手段が算出した燃料消費率を相互に比較し、燃料消費率が最小となる動作点(即ち、燃費率最小動作点)を特定する処理である。この際、燃料消費率算出段は、前述した、一の出力値に対応する動作点に対しても燃料消費率を算出している。この一の出力値に対応する動作点に対して算出された燃料消費率は、言わばリファレンスとしての燃料消費率となる。また、動作点は第1処理において吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けられて変化させられているから、燃費率最小動作点の特定に伴って、係る燃費率最小動作点を規定する吸気弁又は排気弁の開弁時期も特定される。このようにして、一の出力値毎に吸気弁又は排気弁の適切な開弁時期が決定される。
【0036】
尚、第2処理においては、燃料消費率が算出された複数の動作点の中に、等出力線上で真に燃料消費率が最小となる動作点が含まれていなくてもよい。即ち、あくまで比較された動作点の中から燃費率最小動作点が特定されればよい。但し、燃料消費率が算出されていない動作点であっても、相前後する他の動作点の燃料消費率から経験的に、或いはシミュレーションなどによって燃料消費率が最小となる動作点を推定し得る場合には、係る動作点が燃費率最小動作点として特定されてもよい。
【0037】
第3処理においては、このようにして特定された動作点が、新たに一の出力値に対応する動作点、即ち動作線を規定する動作点として設定され、動作点が更新される。この更新された動作点は、次回学習処理が行われる際の「一の出力値に対応する動作点」となる。この動作点の更新によって、結果的に動作線は更新される。次回、この動作線について学習処理が行われる場合における「予め設定された動作線」とは、この更新された動作線となる。尚、第3処理に際して、一の出力値に対応する動作点のみが更新されてもよいし、この動作点の更新を反映して、他の出力値に対して適当に動作点が更新されてもよい。尚、このようにして更新された動作点は、例えば、学習処理が行われた際の環境条件や制御条件と対応付けられて記憶されていてもよい。
【0038】
この態様によれば、等出力線上で燃費率最小動作点が特定され、動作点が更新されるため、内燃機関の出力が変化することがない。内燃機関の出力が変化しなければ、ハイブリッド車両を運転する運転者に与える違和感は比較的小さくて済むと共に比較的正確に燃料消費率の算出を行うことが可能となり、比較的正確に動作点の更新を行うことが可能となる。
【0039】
尚、学習処理において、第1処理、第2処理及び第3処理は、夫々並列処理されてもよいし、順次行われてもよい。順次行われる際には、第1処理において変化させた動作点各々における燃料噴射量が然るべき記憶手段に一時的に記憶されていればよい。
【0040】
学習処理を行う本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記内燃機関は、吸気弁及び排気弁の開閉時期が夫々可変に構成されており、前記動作線更新手段は、前記排気弁の開弁時期に対応付けて前記学習処理が行われた結果、前記燃費率最小動作点に対応する前記排気弁の開弁時期が予め定められた基準となる開弁時期に対し遅れている場合に、前記排気弁の開弁時期を前記燃費率最小動作点に対応する開弁時期に維持した状態で、前記吸気弁の開弁時期に対応付けて前記学習処理を行う。
【0041】
排気弁の開弁時期を遅角制御すると、吸気弁の開弁時期に何らかの変化がない限り、排気弁と吸気弁とが同時に開いている期間(オーバーラップ)が長くなる。オーバーラップが長くなると、排気弁を通って排気ポートへ排気されるはずの燃焼ガスの一部は、吸気弁を介して吸気ポート側へ逆流する。外部経路を介して排気ガスの一部を吸気ポートに戻す、所謂EGR(Exhaust Gas Recirculation)と称される機構は、内燃機関の燃焼室における燃焼温度を低減させ、窒素酸化物の生成を抑制する上で有効であり、本発明に係る内燃機関制御装置においても好適に使用されるが、このような言わば内部的なEGRが発生すると、とりわけリーンバーン(希薄燃焼)制御が行われている場合には、燃料消費率に与える悪影響を無視し得ない。
【0042】
この態様によれば、排気弁の開弁時期が、予め排気弁の開弁時期に対応付けて行われた学習処理において決定された燃費率最小動作点を与える開弁時期に固定された状態で、動作線更新手段が更に吸気弁の開弁時期に対応付けて学習処理を行う。即ち、最適化された排気弁の開弁時期に対して、最適な吸気弁の開弁時期が決定される。従って、一層効率良く内燃機関を動作させることが可能となるのである。
【0043】
尚、吸気弁の開弁時期が遅角側に制御された場合、吸気弁の閉弁時期もそれに伴って遅角側に移行することになるが、吸気弁の作用角を維持したまま閉弁時期を遅角側に移行すると、内燃機関における吸入工程においてピストンが上死点に近付いても吸気弁が開弁していることになる。通常、吸気量がなるべく増えるように、吸気弁は下死点を過ぎても開弁しているが、余りに上死点近くまで吸気弁が開弁していると、逆に吸気量は減少し、実圧縮比が低減して好ましくない。従って、好適に吸気弁は、開弁時期が遅角制御されつつ、閉弁時期は固定されるように制御されるのが好ましい。従って、この態様において吸気弁の開弁時期を可変とする機構は、好適には、吸気弁の作用角を可変とし得る機構である。
【0044】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記内燃機関は、少なくとも排気弁の開閉時期が可変に構成されており、前記動作線更新手段は、前記過給器の過給圧が予め定められた上限値を超えた場合に、前記過給圧が前記上限値以下に維持されるように前記排気弁の開弁時期を制御すると共に、前記上限値以下の過給圧が維持される前記排気弁の開弁時期の範囲内で前記動作線の更新を行う。
【0045】
過給器には通常、予め過給圧の上限値が設定されている。この上限値を超える過給圧で混合気或いは空気が供給された場合、シリンダ内の圧力が大きくなり過ぎて、燃焼温度が上昇し、シリンダ内部がプレイグニッション温度に達してノックが発生し易くなる上、内燃機関が物理的に破損する可能性が生じ得る。従って、通常、過給圧が上限値を超える場合には、ウェストゲートバルブなどによって、過給された混合気或いは空気が外部へリリースされる。但し、排気弁の開弁時期が余りに進角側に設定されていると、排気温度が高くなり、当然ながら排気圧も高くなって過給圧が上昇する。従って、排気弁の開弁時期は過給器の過給圧を考慮して決定される必要がある。
【0046】
この態様によれば、動作線更新手段は、過給圧が上限値以下となるように、排気弁の開弁時期を制御すると共に、そのような過給圧が維持される範囲で動作線の更新を行うため、このような不具合が発生する可能性は著しく低くなっている。従って、内燃機関を効率良く動作させつつ高い信頼性が担保される。
【0047】
尚、本発明に係る内燃機関制御装置においては、過給器の過給圧が予め定められた設定値よりも高い場合に、単に内燃機関保護の目的から排気弁の開弁時期が遅角制御されてもよい。
【0048】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御方法は、動力源として(i)過給器を備えると共に吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開閉時期が可変である内燃機関及び(ii)モータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御方法であって、前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定工程と、該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出工程と、前記過給器の作動期間において前記燃料消費率算出手段により前記吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新工程と、該更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御工程とを具備することを特徴とする。
【0049】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御方法によれば、その動作時には、上述した本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置における動作を実現する各工程により、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置と同様の効果を得ることが可能である。
【0050】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
<1−1−1:ハイブリッドシステムの構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステム10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッドシステム10のブロック図である。
【0052】
図1において、ハイブリッドシステム10は、制御装置100、エンジン200、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2、動力分割機構300、インバータ400、バッテリ500、及び車速センサ600を備え、ハイブリッド車両20を制御するシステムである。
【0053】
制御装置100は、動作状態制御部100a、トルク算出部100b、燃費率算出部100c、動作線更新部100d、記憶部100eを備えると共に、ハイブリッドシステム10の動作全体を制御する、例えばECU(Engine Controlling Unit)等の制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の内燃機関制御装置」の一例として機能する。
【0054】
動作状態制御部100aは、エンジン200、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2各々の動作状態を制御することが可能に構成された、本発明に係る「制御手段」の一例である。
【0055】
トルク算出部100bは、エンジン200のトルクを算出することが可能に構成された、本発明に係る「トルク特定手段」の一例である。
【0056】
燃費率算出部100cは、エンジン200の燃料消費率を算出することが可能に構成された、本発明に係る「燃料消費率算出手段」の一例である。
【0057】
動作線更新部100dは、記憶部100eに格納される制御プログラムに従って、本発明に係る「動作線の更新」の一例たる動作点学習処理を実行することが可能に構成された、本発明に係る「動作線更新手段」の一例である。尚、動作点学習処理については後述する。
【0058】
記憶部100eは、例えばROM(Read Only Memory)などで構成された不揮発性記憶領域と、RAM(Random Access Memory)などで構成された揮発性記憶領域を有する記憶媒体である。記憶部100eにおいて、不揮発性領域には、予め定められた各種制御プログラムや、後述する制御マップなどが格納されている。また、揮発性領域には、後述する動作点学習処理が行われた際の学習結果が適宜記憶される。
【0059】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両20の主たる動力源として機能する。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。
【0060】
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「モータジェネレータ」の一例であり、バッテリ500を充電するための発電機として、或いはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。
【0061】
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「モータジェネレータ」の他の一例であり、エンジン200の出力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
【0062】
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
【0063】
動力分割機構300は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。これら各ギアのうち、内周にあるサンギアの回転軸はモータジェネレータMG1に連結されており、外周にあるリングギアの回転軸は、モータジェネレータMG2に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジン200に連結されており、エンジン200の回転は、このプラネタリキャリアと更にピニオンギアとによって、サンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割されるように構成されている。ハイブリッド車両20において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド車両20における伝達機構21に連結されており、この伝達機構21を介して車輪22に駆動力が伝達される。
【0064】
インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成されている。
【0065】
バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。バッテリ500には、バッテリ500の残容量を検出するSOCセンサ510が設置されており、制御装置100と電気的に接続されている。
【0066】
車速センサ600は、ハイブリッド車両20の速度を検出するセンサであり、制御装置100と電気的に接続されている。
【0067】
<1−1−2:エンジンの詳細構成>
次に、図2を参照して、エンジン200の詳細な構成をその基本的な動作と共に説明する。ここに、図2は、エンジン200の半断面システム系統図である。
【0068】
図2において、エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を説明する。
【0069】
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、燃料(ガソリン)が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料を、制御装置100の制御に従って吸気管206内に噴射することが可能に構成されている。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
【0070】
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して開閉する排気バルブ209を通過して排気管210を介して排気される。
【0071】
尚、本実施形態においては特に、吸気バルブ208及び排気バルブ209は夫々、その開閉時期が可変に構成されている。吸気バルブ208は、吸気用カムシャフト227に不図示の油圧系を介して固定された吸気用カム229のカムプロフィール(カムの形状)によって、その開閉時期が決定される。この油圧系は制御部100と電気的に接続されており、この油圧系が、制御部100から供給される制御信号に従ってカムを相対的に遅角又は進角させることによって、吸気バルブ208の開閉時期が可変となっている。また、排気バルブ209も同様に、排気用カムシャフト228に不図示の油圧系を介して固定された排気用カム230のカムプロフィールによってその開閉時期が決定される。この油圧系は制御部100と電気的に接続されており、この油圧系が、制御部100から供給される制御信号に従ってカムを相対的に遅角又は進角させることによって、排気バルブ209の開閉時期が可変となっている。尚、吸気バルブ208及び排気バルブ209は夫々、電磁式の可変動弁機構であってもよい。
【0072】
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
【0073】
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルポジションセンサ215が電気的に接続されており、その開度が検出可能に構成されている。更に、スロットルバルブ214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットルバルブ214を駆動するスロットルバルブモータ217も配設されている。
【0074】
本実施形態においては特に、吸気管206上に本発明に係る過給器の一例たるターボチャージャー(以下、適宜「ターボ」と称する)231が設置されている。ターボ231は、排気管210を通過する排気ガスの一部によって不図示のタービンホイールを作動させ、タービンホイールと同軸に回動可能に固定された不図示のコンプレッサホイールを作動させることにより、吸気管206内の空気を圧縮してシリンダ201内に送り込むシステムである。ターボ231には、その過給圧を検出する過給圧センサ232が設けられている。
【0075】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の位置を検出することが可能に構成されたセンサであり、制御部100は、クランクポジションセンサ218の出力信号に基づいてピストン203の位置及びエンジン200の回転数などを取得することが可能に構成されている。このピストン203の位置は、前述した点火プラグ202における点火時期の制御などに使用される。点火プラグ202における点火時期は、例えば、ピストン203の位置に対応付けられて予め設定される基本値に対し遅角又は進角制御される。
【0076】
また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定することが可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
【0077】
排気管210には、三元触媒222が設置されている。三元触媒222は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。排気管210における三元触媒222の上流側には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。
【0078】
<1−2:実施形態の動作>
<1−2−1:ハイブリッドシステムの基本動作>
図1のハイブリッドシステム10においては、主として発電機として機能するモータジェネレータMG1と、主として電動機として機能するモータジェネレータMG2と、エンジン200とのそれぞれの駆動力配分が動作状態制御部100a及び動力分割機構300により制御されてハイブリッド車両20の走行状態が制御される。以下に、幾つかの状況に応じたハイブリッドシステム10の動作について説明する。
【0079】
<1−2−1−1:始動時>
例えば、ハイブリッド車両20の始動時においては、バッテリ500の電気エネルギを用いて駆動されるモータジェネレータMG1が電動機として機能する。この動力によって、エンジン200がクランキングされエンジン200が始動する。
【0080】
<1−2−1−2:発進時>
発進時には、バッテリ500の蓄電状態に応じて2種類の態様を採り得る。バッテリ500の蓄電状態は、SOCセンサ510の出力信号に基づいて動作状態制御部100aによって把握されている。例えば、通常の(即ち、SOCが良好な)発進時においては、モータジェネレータMG1によってバッテリ500を充電する必要は生じないため、エンジン200は暖機のためだけに始動し、ハイブリッド車両20は、モータジェネレータMG2による駆動力により発進する。一方、蓄電状態が良好ではない(即ち、SOCが低下している)場合、エンジン200の動力によりモータジェネレータMG1が発電機として機能し、バッテリ500が充電される。
【0081】
<1−2−1−3:軽負荷走行時>
例えば、低速走行や緩やかな坂を下っている場合には、比較的エンジン200の効率が悪い為、エンジン200は停止され、ハイブリッド車両20は、モータジェネレータMG2による駆動力のみで走行する。尚、この際、SOCが低下していれば、エンジン200はモータジェネレータMG1を駆動するために始動し、モータジェネレータMG1によりバッテリ500の充電が行われる。
【0082】
<1−2−1−4:通常走行時>
エンジン200の効率が比較的良好な運転領域においては、ハイブリッド車両20は主としてエンジン200の動力によって走行する。この際、エンジン200の動力は、動力分割機構300によって2系統に分割され、一方は、伝達機構21を介して車輪22に伝達され、他方は、モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。更に、この発電された電力により、モータジェネレータMG2が駆動され、モータジェネレータMG2によりエンジン200の動力がアシストされる。尚、この際、SOCが低下している場合には、エンジン200の出力を上昇させて、モータジェネレータMG1により発電された電力の一部がバッテリ500へ充電される。
【0083】
<1−2−1−5:制動時>
減速が行われる際には、車輪22から伝達される動力によってモータジェネレータMG2を回転させ、発電機として動作させる。これにより、車輪22の運動エネルギが電気エネルギに変換され、バッテリ500が充電される、所謂「回生」が行われる。
【0084】
<1−2−2:実施形態におけるエンジンの基本制御動作>
次に、エンジン200の基本的な制御動作について説明する。
【0085】
動作状態制御部100aは、エンジン200に要求される出力であるエンジン要求出力を一定の周期で繰り返し演算している。動作状態制御部100aは、スロットルポジションセンサ215及び車速センサ600の出力信号に基づいてアクセル開度と車速とを取得し、記憶部100eの不揮発性領域に記録されたマップを参照してアクセル開度及び車速に対応した出力軸トルク(伝達機構21に出力されるべきトルク)を求める。また、動作状態制御部100aはSOCセンサ510の出力信号に基づいて要求発電量を求める。そして、要求発電量と各種の補機類(A/Cやパワーステアリングなど)の要求量とを参照して出力軸トルクを補正することにより、エンジン要求出力を求める。なお、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更してよい。
【0086】
<1−2−3:動作点学習処理>
<1−2−3−1:動作線及び動作点>
次に、図3を参照して、本発明の動作点学習処理に係る動作線及び動作点について説明する。ここに、図3は、制御マップ30の模式図である。
【0087】
図3において、制御マップ30は、縦軸(即ち、本発明に係る「第1軸」の一例)にエンジン200のトルクTe、横軸(即ち、本発明に係る「第2軸」の一例)にエンジン200の回転数Neを表してなる座標平面であり、本発明に係る「座標平面」の一例である。制御マップ30は、予め制御装置100の記憶部100eにおける不揮発性領域に格納されている。
【0088】
制御マップ30上には、様々なパラメータに対するエンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係を表すことが可能である。このうち、等出力線Pi(i=1,2,・・・,9)はエンジン200の出力値を一定とした場合の、エンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係線である。尚、本実施形態中においては、等出力線Piに対応するエンジン200の出力を適宜「出力Pi」と称することとする。また、図3においては、説明の簡略化のため、等出力線は9本しか描かれていないが、実際にはより細かく設定することが可能である。
【0089】
動作状態制御部100aは、エンジン200を動作させる際、エンジン200が、その都度求められる要求出力値に対応する等出力線上で予め設定されている動作点によって表されるエンジントルクTe及びエンジン回転数Neの組み合わせとなるように動作状態を決定する。動作線は、これら動作点を繋げたものとして規定される。
【0090】
図3において、動作線Qは、初期値として設定された動作線であり、等出力線Piに対応する動作点Qi(i=1,2,・・・,9)によって規定されている。夫々の等出力線上において、動作点Qiは、予め燃料消費率が最小となる(即ち、最も効率が高い)点に設定されており、例えば、工場出荷時などにおいて、標準的な環境条件で最適化されている。
【0091】
しかしながら、ハイブリッド車両20の使用条件は、画一的なものとなり得ないから、このように予め設定された動作点でエンジン200を動作させる場合には、エンジン200の燃費率は必ずしも最小とはならない。これは、制御マップ30上で燃費率が等しい領域を表した等燃費率線Sの分布が、エンジン200の環境条件や制御条件に応じて変化してしまうことによる。等燃費率線Sの分布が変化した結果、例えば、夫々の等出力線Piにおける動作点は、動作点Ri(i=1,2,・・・,9)へと変化する。その結果、エンジン200を効率良く動作させ得る動作線は動作線Rへと変化する。
【0092】
ここで、図4を参照して、燃料消費率を決定する一の要素である、排気バルブ209の開きタイミング(以下、適宜「EXO(EXhaust Open)タイミング」と称することとする)について説明する。ここに、図4は、EXOタイミングとエンジン200の排気温度との関係を表す模式図である。
【0093】
図4において、縦軸はエンジン200の排気温度を表し、横軸はEXOタイミングを表している。横軸において、EXOタイミングは図中右方向へ向う程相対的に遅角し、図中左へ向う程相対的に進角するものとする。図4にて明らかなように、EXOタイミングが遅角する程、エンジン200の排気温度は低下する。これは、EXOタイミングが遅角する程、燃焼ガスがシリンダ201内で膨張できる(即ち、膨張比が上がる)からである。この際、燃焼ガスは断熱的に膨張するため、EXOタイミングを遅角する程排気温度は下がることになる。
【0094】
燃料消費率は、基本的に膨張比が大きい程小さくなるが、EXOタイミングを遅角し過ぎると逆に悪化する。本実施形態において、EXOタイミングの初期値は、例えば、図中「初期設定」と示されるポイントに決定されている。これは、例えば、工場出荷時などにおいて燃料消費率が最小となるタイミングとして決定されている。
【0095】
一方、本実施形態においては特に、エンジン200がターボ231を備えている。ターボ231の特性的にみれば、排気温度が高い程排気圧が得られるために効率は高くなる。ここで、排気圧は、ターボ231の製造上のばらつきや、経時変化などに影響を受け易い。排気圧が影響を受けることによって、実際のEXOタイミングは、燃費率を最小とし得るタイミングとは異なってしまうことがある。EXOタイミングは、エンジン200の動作点を規定する一要素であるから、即ち、ターボ231の影響によって、エンジン200の動作点を更新する必要が生じることになる。
【0096】
そこで、本実施形態に係るハイブリッドシステム10においては、動作線更新部100dによって動作点学習処理が行われ、効率良くエンジン200を動作させることが可能となっている。
【0097】
<1−2−3−2:動作点学習処理の概要>
本実施形態に係る動作点学習処理は、以下(1)〜(3)の工程を備える。
【0098】
(1)等出力線Pi上でEXOタイミングに対応付けてエンジン200の動作点を変化させる工程(即ち、本発明に係る「第1処理」の一例)。
【0099】
(2)変化させた動作点各々における燃費率を算出する工程(即ち、本発明に係る「第2処理」の一例)。
【0100】
(3)最も燃費率が小さい動作点(燃費率最小動作点)を確定して当該等出力線Pi上の動作点として再設定(即ち、更新)する工程(即ち、本発明に係る「第3処理」の一例)。
【0101】
本実施形態において、動作状態制御部100aは、制御マップ30を記憶部100eの不揮発性領域から揮発性領域へとコピーし、このコピーされた制御マップ30を使用してエンジン200の制御を行っている。動作点学習処理は、この揮発性領域上で適宜制御マップ30を書き換える処理である。上記(1)〜(3)の工程が行われることにより、一の等出力線Pi上においてエンジン200を動作させる際の動作点が、燃費率最小動作点に更新される。従って、エンジン200は比較的効率の良い状態を、或いは最も効率の良い状態を維持し続けることが可能となる。尚、本実施形態においては、一旦動作点学習処理が行われれば、エンジン200においてバッテリ500がリセットされるまで動作点の更新結果は保存される。但し、動作点学習処理の効力が及ぶ時間範囲は上述のものに限定されない。例えば、運転者の要求に応じて、或いはエンジン200が停止する毎に、動作線はリセットされ初期状態(記憶部100eの不揮発性領域に格納される制御マップ30によって規定される状態)に復帰してもよい。
【0102】
<1−2−3−3:動作点学習処理の詳細>
次に、図5を参照して、本実施形態に係る動作点学習処理の詳細について説明する。ここに図5は、動作点学習処理のフローチャートである。
【0103】
図5において、動作線更新部100dは、例えばハイブリッド車両20の通常走行中にエンジン200の動作点を現在の等出力線Pi上で比較対象の一となる動作点に設定する(ステップA11)。この際、動作線更新部100dは、EXOタイミングに対応付けて動作点を設定する。即ち、動作線更新部100dは、ステップA11において、EXOタイミングの値(位相制御値)をパラメータとして、等出力線Pi上で動作点を設定する。これに応じて、EXOタイミングは動作状態制御部100aによって設定されたタイミングに変更され、エンジン200の制御状態は、動作状態制御部100aにより、この設定された動作点によって規定される動作状態に制御される。ここで、「比較対象の一となる動作点」とは、動作点学習処理を行うための燃費率の比較対象となる動作点のうちの一つを指す。動作点学習処理が開始されて最初に訪れるステップA11においては、その時点で等出力線Pi上で動作点として設定されている動作点(即ち、前回の動作点学習処理による更新値又は初期値Qi)が動作点として設定される。この時のEXOタイミングは、例えば、図4における初期設定値に相当するタイミングである。
【0104】
次に、燃費率算出部100cが、設定された動作点におけるエンジン200の燃費率を算出する(ステップA12)。燃費率は、エンジン200の単位電力量当りの燃料噴射量である。従って、インジェクタ207の燃料噴射量を、エンジン200の出力値(kW)から算出される電力量(kWh)で除算したものと等価である。
【0105】
燃料噴射量は、動作状態制御部100aが、エンジン200の回転数及び負荷率から記憶部100eの不揮発性領域に格納される基本噴射量マップに基づいて決定する基本噴射量に対して更に様々な補正を行った結果として得られる。燃費率算出部100cは、この燃料噴射量を動作状態制御部100aから取得する。
【0106】
一方、トルク算出部100bは、モータジェネレータMG1を介して検出されるエンジン200のトルク反力からエンジン200のトルクを算出する。燃費率算出部100cは、この算出されたトルクを取得すると共に、クランクポジションセンサ218の出力値に基づいて算出されるエンジン200の回転数を動作状態制御部100aから取得して、これらの値からエンジン200の出力を算出する。
【0107】
燃費率算出部100cは、このエンジン200における燃料噴射量とエンジン200の出力とに基づいて、現在設定されている動作点における燃費率を算出する。
【0108】
一の動作点について燃費率が算出されると、動作線更新部100dは、燃費率最小動作点が確定したか否かを判別する(ステップA13)。
【0109】
この判別は、予め実験的、経験的、或いはシミュレーションなどにより与えられてなる判断基準に基づいてなされる。例えば、等出力線上で一定の方向に動作点を動かした際に、燃費率が徐々に小さくなり、ある動作点を境に徐々に大きくなっている場合には、図3における等燃費率線Sの形状から言っても、係る動作点を燃費率最小動作点と考えてよい。
【0110】
従って、ステップA13に係る判別は、明確に何らかの閾値と比較して大小関係を判別すると言うよりも、燃費率の算出値の前後関係から判断されるべきものであり、一の動作点学習処理毎に態様は異なるものである。但し、動作点学習処理の開始後最初に訪れるステップA13に係る処理では、比較対象は存在しないので、条件分岐は「NO」となる。
【0111】
燃費率最小動作点が確定しない場合には(ステップA13:NO)、動作線更新部100dは、処理をステップA11に戻し、燃費率最小動作点が確定するまでステップA11からステップA13に係る処理を繰り返す。
【0112】
この際、ステップA11において設定される動作点は、例えば、等出力線上における離散的な、即ち、適当に距離の離れた動作点であってもよいし、連続的な、即ち極めて近接した動作点であってもよい。これら動作点をどのように変化させるかについては、例えば予め実験的、経験的、或いはシミュレーションなどによりその手法が与えられていてもよいし、その都度、動作線更新部100dが動作点学習処理の進捗に鑑みて決定してもよい。但し、変化させた動作点各々に対応するEXOタイミング各々は、常に動作線更新部100dによって把握されている。尚、動作点は、EXOタイミングを所定間隔で変化させた結果として得られる動作点として設定されてもよい。
【0113】
このような過程を繰り返した結果、燃費率最小動作点が確定されると(ステップA13:YES)、動作線更新部100dは動作点を更新する(ステップA14)。この際、揮発性領域にコピーされた制御マップ30において、この動作点学習処理が行われた等出力線上における動作点が書き換わり、動作線がそれに応じて変化する。また、動作線更新部100dは、制御マップ30に対応付ける形で、この時のEXOタイミングを記憶部100eの揮発性領域に記憶する。次回から、ハイブリッド車両20が係る等出力線に対応する出力要求を受けた際には、動作状態制御部100aは、排気バルブ209を更新された動作点に対応するEXOタイミングで開き、エンジン200の動作状態を制御する。
【0114】
EXOタイミングを変化させることによって動作点が更新されると、次に、更新された動作点に対応するEXOタイミングが初期設定値に対して遅角側であるか否かが判別される(ステップA15)。ここで、図6を参照して、EXOタイミングとエンジン200の内部状態との関係について説明する。ここに、図6は、EXOタイミングと、吸気バルブ208の開きタイミング(以下、適宜、「INO(INteak Open)タイミング」と称する)とのタイミング図である。
【0115】
図6(a)には、初期設定時のタイミングが示される。図6(a)によれば、INOタイミングとEXOタイミングとは、上死点付近において若干オーバーラップしている。ここで、上述したような動作点学習処理の結果、EXOタイミングが図6(b)のように変更されたとする。この状態においては、排気側のバルブタイミングが全体的に遅角側に移行しており、従って、上死点付近のオーバーラップは初期設定時よりも大きくなっている。このようにオーバーラップが大きくなると、排気バルブ209から排出されるべき排気ガスの一部は、吸気バルブ208側で逆流し、内部EGRが発生する。内部EGRが発生すると、燃焼温度が高くなってノックが発生易くなる。とりわけ、リーンバーンのように、希薄状態の燃焼制御が行われている場合には、内部EGRは少ないことが望ましい。そこで、動作点学習処理の結果、EXOタイミングが遅角側に変更された場合には、相応の対処が必要になる。
【0116】
図5に戻り、EXOタイミングが遅角側に更新されなかった場合(ステップA15:NO)には、動作点学習処理は終了する。EXOタイミングが遅角側に更新された場合(ステップA15:YES)、動作線更新部100dは、EXOタイミングを固定したままINOタイミングに対応付けて動作点を変化させる(ステップA16)。
【0117】
ここで、EXOタイミングを変更させる際には、EXOタイミングに応じて排気バルブ209の閉じタイミング(EXC(EXhaust Close)タイミング)は遅角側或いは進角側に変化するが、吸気バルブ208においてそのように閉じ時期(INC(INteak Close)タイミング)が移行すると、吸入される空気量が減少し、実圧縮比が低下してしまう。そこで、吸気バルブ208を、動作線更新部100dによって設定されたINOタイミングで開く場合、動作状態制御部100aは、INCタイミングについては固定する。即ち、吸気バルブ208の作用角を変更する。図6(c)にはこの様子が示されている。図6(c)において、INOタイミングのみが変化することによって、吸気バルブ208が開いている期間(INO期間)は初期設定時よりも短くなっている。そして、オーバーラップは初期設定時と同程度まで小さくなっている。
【0118】
再び図5に戻って、ステップA16以下、ステップA17において、ステップA12と同様に燃費率の算出が行われ、ステップA18において、ステップA13と同様に燃費率最小動作点が確定したか否かの判別が行われる。また、EXOタイミングに対応付けて動作点を変化させた場合と同様に、ステップA16からステップA18に至るステップが繰り返される。燃費率最小動作点が確定すると(ステップA18:YES)、動作点が更新される。この際、動作線更新部100dは、制御マップ30に対応付ける形で、この時のINOタイミング及びINO期間(即ち吸気バルブ208の作用角)を記憶部100eの揮発性領域に記憶する。次回から、ハイブリッド車両20が係る等出力線に対応する出力要求を受けた際には、動作状態制御部100aは、吸気バルブ208を更新された動作点に対応するINOタイミングで開き、エンジン200の動作状態を制御する。ステップA19において動作点が更新されると、動作点学習処理が終了する。
【0119】
このように、ハイブリッドシステム10においては、動作線更新部100dが動作点学習処理を行うことによって、ハイブリッド車両20が走行中であってもエンジン200の動作点を燃費率が最小となる点に設定することが可能であり、ターボ231のばらつきや経時変化を吸収し、エンジン200を効率良く動作させることが容易にして可能となっているのである。
【0120】
<第2実施形態>
ターボ231の過給圧は、エンジン200が高回転領域で動作する程高くなるが、過給圧が高過ぎると、燃焼温度が高くなり過ぎてノックの発生を誘発し易い。更に、エンジン200に係る物理的な負荷が大きくなり過ぎて好ましくない。そのような場合に好適な本発明に係る第2実施形態について、図7を参照して説明する。ここに、図7は、本発明の第2実施形態に係る動作点学習処理のフローチャートである。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
図7において、動作線更新部100dは、例えば、ハイブリッド車両20の走行中に、ターボ231の過給圧が予め設定された上限値を超えたか否かを判別する(ステップB11)。ここで、ターボ231の過給圧は、一定の周期毎に検出される過給圧センサ232の出力値によって取得することが可能である。
【0122】
過給圧が上限値を超えていない場合(ステップB11:NO)、動作線更新部100dは動作線の更新を行わない。過給圧が上限値を超えた場合には(ステップB11:YES)、動作線更新部100dは、EXOタイミングを遅角するように動作状態制御部100aを制御して、EXOタイミングを、過給圧が上限値以下となるタイミングに設定する(ステップB12)。この段階で、ターボ231の過給圧は上限値以下となり、エンジン200の信頼性は担保されるが、このままでは、第1実施形態で述べたように、オーバーラップ期間が大きくなり過ぎて内部EGRの影響が大きくなるため、動作線更新部100dは、第1実施形態と同様にステップA16からステップA18に至るループ処理を行い、最終的に、動作点を燃費率最小動作点に更新する(ステップA19)。この際、燃費率最小動作点を規定するINOタイミング及び吸気バルブ208の作用角は、制御マップ30に対応付けられる形で記憶部100eの揮発性領域に記憶される。動作点が更新されると、第2実施形態に係る動作点学習処理は終了する。
【0123】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。
【図2】図1のハイブリッドシステムにおけるエンジンの半断面システム系統図である。
【図3】図1のハイブリッドシステムにおける制御マップの模式図である。
【図4】図2のエンジンにおける排気バルブの開きタイミングと排気温度との関係を表す模式図である。
【図5】図1のハイブリッドシステムにおける動作点学習処理のフローチャートである。
【図6】図1のハイブリッドシステムにおける排気バルブの開きタイミング及び吸気バルブの開きタイミングのタイミング図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る動作点学習処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0125】
10…ハイブリッドシステム、11…ハイブリッドシステム、20…ハイブリッド車両、21…伝達機構、22…車輪、30…制御マップ、100…制御装置、200…エンジン、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、231…ターボチャージャー、300…動力分割機構、400…インバータ、500…バッテリ、510…SOCセンサ、600…車速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として(i)過給器を備えると共に吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開閉時期が可変である内燃機関及び(ii)モータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定手段と、
該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出手段と、
前記過給器の作動期間において前記燃料消費率算出手段により前記吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新手段と、
該更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御手段と
を具備することを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記トルク特定手段は、前記モータジェネレータを介して検出される前記内燃機関のトルク反力に基づいて前記トルクを特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記動作線更新手段は、前記動作線の更新の少なくとも一部として、(i)前記座標平面で前記内燃機関の一の出力値について前記トルクと前記回転数との相互関係を表してなる等出力線上において、前記内燃機関の動作点を前記予め設定された動作線上における前記一の出力値に対応する動作点から前記吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けて離散的又は連続的に変化させる第1処理、(ii)前記第1処理において前記動作点を離散的又は連続的に変化させた結果として得られる複数の動作点各々について前記燃料消費率算出手段により算出される燃料消費率各々を比較することにより前記燃料消費率が最小となる燃費率最小動作点を特定する第2処理、及び(iii)前記一の出力値についての等出力線上において、前記一の出力値に対応する動作点を前記燃費率最小動作点に更新する第3処理を含んでなる学習処理を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、吸気弁及び排気弁の開閉時期が夫々可変に構成されており、
前記動作線更新手段は、前記排気弁の開弁時期に対応付けて前記学習処理が行われた結果、前記燃費率最小動作点に対応する前記排気弁の開弁時期が予め定められた基準となる開弁時期に対し遅れている場合に、前記排気弁の開弁時期を前記燃費率最小動作点に対応する開弁時期に維持した状態で、前記吸気弁の開弁時期に対応付けて前記学習処理を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は、少なくとも排気弁の開閉時期が可変に構成されており、
前記動作線更新手段は、前記過給器の過給圧が予め定められた上限値を超えた場合に、前記過給圧が前記上限値以下に維持されるように前記排気弁の開弁時期を制御すると共に、前記上限値以下の過給圧が維持される前記排気弁の開弁時期の範囲内で前記動作線の更新を行う
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項6】
動力源として(i)過給器を備えると共に吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開閉時期が可変である内燃機関及び(ii)モータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御方法であって、
前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定工程と、
該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出工程と、
前記過給器の作動期間において前記燃料消費率算出手段により前記吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方の弁の開弁時期に対応付けられて算出される燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新工程と、
該更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御工程と
を具備することを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−170054(P2006−170054A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362956(P2004−362956)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】