ハイブリッド車両の制御装置
【課題】 適切な走行シーンにおいて第1クラッチの学習補正を行うことが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】 第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われる走行モードの遷移であっても、第1クラッチの締結・開放以外の要因でモータトルク変動が生じる場合には、第1クラッチの学習補正を禁止することとした。
【解決手段】 第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われる走行モードの遷移であっても、第1クラッチの締結・開放以外の要因でモータトルク変動が生じる場合には、第1クラッチの学習補正を禁止することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源にエンジンとモータを備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両として特許文献1の技術が開示されている。この公報には、エンジンとモータとを断接する第1クラッチと、モータと駆動輪とを断接する第2クラッチとを備えるハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両は、第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われるときは、第1クラッチのストロークと締結トルク容量との関係を学習補正することで、安定した第1クラッチ制御を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われたときに、モータのトルク変動がそのまま第1クラッチの締結容量として反映できない場合があり、そのような走行シーンで学習補正すると、誤ったデータに基づいて学習補正されるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、適切な走行シーンにおいて第1クラッチの学習補正を行うことが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われる走行モードの遷移であっても、第1クラッチの締結・開放以外の要因でモータトルク変動が生じる場合には、第1クラッチの学習補正を禁止することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の後輪駆動のハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の統合コントローラにおける演算処理プログラムを示す制御ブロック図である。
【図3】図2の目標駆動力演算部にて目標駆動力演算に用いられる目標駆動力マップの一例を示す図である。
【図4】図2のモード選択部にてモードマップと推定勾配との関係を表す図である。
【図5】図2のモード選択部にて目標モードの選択に用いられる通常モードマップを示す図である。
【図6】図2のモード選択部にて目標モードの選択に用いられるMWSC対応モードマップを示す図である。
【図7】図2の目標充放電演算部にて目標充放電電力の演算に用いられる目標充放電量マップの一例を示す図である。
【図8】WSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図である。
【図9】WSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
【図10】車速を所定状態で上昇させる際のエンジン回転数の変化を表すタイムチャートである。
【図11】実施例1のクラッチ制御装置が適用された第1クラッチコントローラ5にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。
【図12】実施例1の第1クラッチコントローラ5の学習許可判定ブロック51と基準トルク点検出ブロック52とCL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53にて実行される学習補正制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施例1のFRハイブリッド車両のクラッチ制御装置においてエンジン始動シーンでのモード選択特性・学習許可フラグ特性・Eng回転特性・MG目標回転特性・MG回転特性・MGトルク特性・変速段特性・CL1ストローク特性(CL1トルク特性)・CL2トルク特性・CL2差回転特性の一例を示すタイムチャートである。
【図14】WSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。
【図15】MG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。図1は、実施例1のクラッチ制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(クラッチ)と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RLと、右後輪RRと、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0010】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。
【0011】
前記モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータジェネレータMGのロータは、ダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
【0012】
前記第2クラッチCL2は、前記モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0013】
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択している。そして、前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0014】
前記第1クラッチCL1としては、例えば、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14により締結・開放が制御される乾式単板クラッチが用いられる。前記第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。このハイブリッド駆動系は、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)とハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)の2つの走行モードを有する。「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、エンジンEngとモータジェネレータMGの動力で走行するモードである。
【0015】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0016】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0017】
前記モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いられると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
【0018】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0019】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ・スイッチ類18からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。なお、シフトマップとは、アクセル開度と車速に応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。上記自動変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。
さらに、走行モード切り替え制御時等において、統合コントローラ10から目標変速段指令を入力した場合、通常の自動変速制御での変速指令に優先し、目標変速段への変速制御や目標変速段を維持する変速段固定制御を行う。
【0020】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22等からの情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令および目標変速段指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0021】
図2は、実施例1のクラッチ制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。図3は、FRハイブリッド車両の統合コントローラ10でのモード選択処理を行う際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。以下、図2及び図3に基づき、実施例1の統合コントローラ10にて実行される演算処理を説明する。
【0022】
統合コントローラ10は、図2に示すように、目標駆動力演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400とを有する。目標駆動力演算部100では、目標駆動力マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、目標駆動力tFoOを演算する。モード選択部200では、図3に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、「EVモード」または「HEVモード」を目標走行モードとして選択する。但し、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。目標充放電演算部300では、目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
モード選択部200は、Gセンサ10bの検出値に基づいて路面勾配を推定する路面勾配推定演算部201を有する。路面勾配推定演算部201は、車輪速センサ19の車輪速加速度平均値等から実加速度を演算し、この演算結果とGセンサ検出値との偏差から路面勾配を推定する。また、車両停止状態であってエンジン駆動状態において、エンジンEの回転数をエンジン自体で制御するE/ISCモードと、モータジェネレータMGにより制御するMG/ISCモードとを有する。これらモードについては後述する。
【0023】
更に、モード選択部200は、推定された路面勾配に基づいて、後述する二つのモードマップのうち、いずれかを選択するモードマップ選択部202を有する。図4はモードマップ選択部202の選択ロジックを表す概略図である。モードマップ選択部202は、通常モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g2以上になると、MWSC対応モードマップに切り換える。一方、MWSC対応モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g1(<g2)未満になると、通常モードマップに切り換える。すなわち、推定勾配に対してヒステリシスを設け、マップ切り換え時の制御ハンチングを防止する。
【0024】
次に、モードマップについて説明する。モードマップとしては、推定勾配が所定値未満のときに選択される通常モードマップと、推定勾配が所定値以上のときに選択されるMWSC対応モードマップとを有する。図5は通常モードマップ、図6はMWSCモードマップを表す。
通常モードマップ内には、EVモードと、WSC走行モードと、HEVモードとを有し、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標モードを演算する。但し、EVモードが選択されていたとしても、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標モードとする。
【0025】
図5の通常モードマップにおいて、HEV→WSC切換線は、所定アクセル開度APO1未満の領域では、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEのアイドル回転数よりも小さな回転数となる下限車速VSP1よりも低い領域に設定されている。また、所定アクセル開度APO1以上の領域では、大きな駆動力を要求されることから、下限車速VSP1よりも高い車速VSP1'領域までWSC走行モードが設定されている。尚、バッテリSOCが低く、EVモードを達成できないときには、発進時等であってもWSC走行モードを選択するように構成されている。
【0026】
アクセルペダル開度APOが大きいとき、その要求をアイドル回転数付近のエンジン回転数に対応したエンジントルクとモータジェネレータMGのトルクで達成するのは困難な場合がある。ここで、エンジントルクは、エンジン回転数が上昇すればより多くのトルクを出力できる。このことから、エンジン回転数を引き上げてより大きなトルクを出力させれば、例え下限車速VSP1よりも高い車速までWSC走行モードを実行しても、短時間でWSC走行モードからHEVモードに遷移させることができる。この場合が図5に示す下限車速VSP1'まで広げられたWSC領域である。
【0027】
MWSCモードマップ内には、EVモード領域が設定されていない点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域として、アクセルペダル開度APOに応じて領域を変更せず、下限車速VSP1のみで領域が規定されている点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域内にMWSC走行モード領域が設定されている点で通常モードマップとは異なる。MWSC走行モード領域は、下限車速VSP1よりも低い所定車速VSP2と所定アクセル開度APO1よりも高い所定アクセル開度APO2とで囲まれた領域に設定されている。尚、MWSC走行モードの詳細については後述する。
【0028】
目標充放電演算部300では、図7に示す目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
動作点指令部400では、アクセルペダル開度APOと、目標駆動力tFoOと、目標モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標モータジェネレータトルクと目標第2クラッチ伝達トルク容量と自動変速機ATの目標変速段と第1クラッチソレノイド電流指令を演算する。また、動作点指令部400には、EVモードからHEVモードに遷移するときにエンジンEを始動するエンジン始動制御部が設けられている。
変速制御部500では、シフトマップに示すシフトスケジュールに沿って、目標第2クラッチ伝達トルク容量と目標変速段を達成するように自動変速機AT内のソレノイドバルブを駆動制御する。尚、シフトマップは、車速VSPとアクセルペダル開度APOに基づいて予め目標変速段が設定されたものである。
【0029】
〔WSC走行モードについて〕
次に、WSC走行モードの詳細について説明する。WSC走行モードとは、エンジンEが作動した状態を維持している点に特徴があり、要求駆動力変化に対する応答性が高い。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、第2クラッチCL2を要求駆動力に応じた伝達トルク容量としてスリップ制御し、エンジンE及び/又はモータジェネレータMGの駆動力を用いて走行する。
【0030】
実施例1のハイブリッド車両では、トルクコンバータのように回転数差を吸収する要素が存在しないため、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2を完全締結すると、エンジンEの回転数に応じて車速が決まってしまう。エンジンEには自立回転を維持するためのアイドル回転数による下限値が存在し、このアイドル回転数は、エンジンの暖機運転等によりアイドルアップを行っていると、更に下限値が高くなる。また、要求駆動力が高い状態では素早くHEVモードに遷移できない場合がある。
一方、EVモードでは、第1クラッチCL1を解放するため、上記エンジン回転数による下限値に伴う制限はない。しかしながら、バッテリSOCに基づく制限によってEVモードによる走行が困難な場合や、モータジェネレータMGのみで要求駆動力を達成できない領域では、エンジンEによって安定したトルクを発生する以外に手段がない。
そこで、上記下限値に相当する車速よりも低車速領域であって、かつ、EVモードによる走行が困難な場合やモータジェネレータMGのみでは要求駆動力を達成できない領域では、エンジン回転数を所定の下限回転数に維持し、第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジントルクを用いて走行するWSC走行モードを選択する。
【0031】
図8はWSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図、図9はWSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
WSC走行モードにおいて、運転者がアクセルペダルを操作すると、図9に基づいてアクセルペダル開度に応じた目標エンジン回転数特性が選択され、この特性に沿って車速に応じた目標エンジン回転数が設定される。そして、図8に示すエンジン動作点設定処理によって目標エンジン回転数に対応した目標エンジントルクが演算される。
ここで、エンジンEの動作点をエンジン回転数とエンジントルクにより規定される点と定義する。図8に示すように、エンジン動作点は、エンジンEの出力効率が高い動作点を結んだ線(以下、α線)上で運転することが望まれる。
しかし、上述のようにエンジン回転数を設定した場合、運転者のアクセルペダル操作量(要求駆動力)によってはα線から離れた動作点を選択することとなる。そこで、エンジン動作点をα線に近づけるために、目標エンジントルクは、α線を考慮した値にフィードフォワード制御される。
【0032】
一方、モータジェネレータMGは、設定されたエンジン回転数を目標回転数とする回転数フィードバック制御が実行される。今、エンジンEとモータジェネレータMGは直結状態とされていることから、モータジェネレータMGが目標回転数を維持するように制御されることで、エンジンEの回転数も自動的にフィードバック制御されることとなる。
このとき、モータジェネレータMGが出力するトルクは、α線を考慮して決定された目標エンジントルクと要求駆動力との偏差を埋めるように自動的に制御される。モータジェネレータMGでは、上記偏差を埋めるように基礎的なトルク制御量(回生・力行)が与えられ、更に、目標エンジン回転数と一致するようにフィードバック制御される。
【0033】
あるエンジン回転数において、要求駆動力がα線上の駆動力よりも小さい場合、エンジン出力トルクを大きくした方がエンジン出力効率は上昇する。このとき、出力を上げた分のエネルギをモータジェネレータMGにより回収することで、第2クラッチCL2に入力されるトルク自体は運転者の要求トルクとしつつ、効率の良い発電が可能となる。
ただし、バッテリSOCの状態によって発電可能なトルク上限値が決定されるため、バッテリSOCからの要求発電出力(SOC要求発電電力)と、現在の動作点におけるトルクとα線上のトルクとの偏差(α線発電電力)との大小関係を考慮する必要がある。
【0034】
図8(a)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも大きい場合の概略図である。SOC要求発電電力以上にはエンジン出力トルクを上昇させることができないため、α線上に動作点を移動させることはできない。ただし、より効率の高い点へ移動させることで燃費効率を改善する。
図8(b)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも小さい場合の概略図である。SOC要求発電電力の範囲内であれば、エンジン動作点をα線上に移動させることができるため、この場合は、最も燃費効率の高い動作点を維持しつつ発電することができる。
図8(c)は、エンジン動作点がα線よりも高い場合の概略図である。要求駆動力に応じた動作点がα線よりも高いときは、バッテリSOCに余裕があることを条件として、エンジントルクを低下させ、不足分をモータジェネレータMGの力行により補う。これにより、燃費効率を高くしつつ要求駆動力を達成することができる。
【0035】
次に、WSC走行モード領域を、推定勾配に応じて変更している点について説明する。図10は車速を所定状態で上昇させる際のエンジン回転数マップである。
平坦路において、アクセルペダル開度がAPO1よりも大きな値の場合、WSC走行モード領域は下限車速VSP1よりも高い車速領域まで実行される。このとき、車速の上昇に伴って図9に示すマップのように徐々に目標エンジン回転数は上昇する。そして、VSP1'に相当する車速に到達すると、第2クラッチCL2のスリップ状態は解消され、HEVモードに遷移する。
推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きい勾配路において、上記と同じ車速上昇状態を維持しようとすると、それだけ大きなアクセルペダル開度となる。このとき、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2は平坦路に比べて大きくなる。この状態で、仮に図9に示すマップのようにWSC走行モード領域を拡大してしまうと、第2クラッチCL2は強い締結力でのスリップ状態を継続することとなり、発熱量が過剰となるおそれがある。そこで、推定勾配が大きい勾配路のときに選択される図6のMWSC対応モードマップでは、WSC走行モード領域を不要に広げることなく、車速VSP1に相当する領域までとする。これにより、WSC走行モードにおける過剰な発熱を回避する。
【0036】
〔MWSC走行モードについて〕
次に、MWSC走行モード領域を設定した理由について説明する。推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きいときに、例えば、ブレーキペダル操作を行うことなく車両を停止状態もしくは微速発進状態に維持しようとすると、平坦路に比べて大きな駆動力が要求される。自車両の荷重負荷に対向する必要があるからである。
第2クラッチCL2のスリップによる発熱を回避する観点から、バッテリSOCに余裕があるときはEVモードを選択することも考えられる。このとき、EVモード領域からWSC走行モード領域に遷移したときにはエンジン始動を行う必要があり、モータジェネレータMGはエンジン始動用トルクを確保した状態で駆動トルクを出力するため、駆動トルク上限値が不要に狭められる。
また、EVモードにおいてモータジェネレータMGにトルクだけを出力し、モータジェネレータMGの回転を停止もしくは極低速回転すると、インバータのスイッチング素子にロック電流が流れ(電流が1つの素子に流れ続ける現象)、耐久性の低下を招くおそれがある。
また、1速でエンジンEのアイドル回転数に相当する下限車速VSP1よりも低い領域(VSP2以下の領域)において、エンジンE自体は、アイドル回転数より低下させることができない。このとき、WSC走行モードを選択すると、第2クラッチCL2のスリップ量が大きくなり、第2クラッチCL2の耐久性に影響を与えるおそれがある。
【0037】
特に、勾配路では、平坦路に比べて大きな駆動力が要求されていることから、第2クラッチCL2に要求される伝達トルク容量は高くなり、高トルクで高スリップ量の状態が継続されることは、第2クラッチCL2の耐久性の低下を招きやすい。また、車速の上昇もゆっくりとなることから、HEVモードへの遷移までに時間がかかり、更に発熱するおそれがある。
そこで、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2の伝達トルク容量を運転者の要求駆動力に制御しつつ、モータジェネレータMGの回転数が第2クラッチCL2の出力回転数よりも所定回転数高い目標回転数にフィードバック制御するMWSC走行モードを設定した。
【0038】
言い換えると、モータジェネレータMGの回転状態をエンジンのアイドル回転数よりも低い回転数としつつ第2クラッチCL2をスリップ制御するものである。同時に、エンジンEはアイドル回転数を目標回転数とするフィードバック制御に切り換える。WSC走行モードでは、モータジェネレータMGの回転数フィードバック制御によりエンジン回転数が維持されていた。これに対し、第1クラッチCL1が解放されると、モータジェネレータMGによってエンジン回転数をアイドル回転数に制御できなくなる。よって、エンジンE自体によりエンジン回転数フィードバック制御を行う。
【0039】
MWSC走行モード領域の設定により、以下に列挙する効果を得ることができる。
1)エンジンEが作動状態であることからモータジェネレータMGにエンジン始動分の駆動トルクを残しておく必要が無く、モータジェネレータMGの駆動トルク上限値を大きくすることができる。具体的には、要求駆動力軸で見たときに、EVモードの領域よりも高い要求駆動力に対応できる。
2)モータジェネレータMGの回転状態を確保することでスイッチング素子等の耐久性を向上できる。
3)アイドル回転数よりも低い回転数でモータジェネレータMGを回転することから、第2クラッチCL2のスリップ量を小さくすることが可能となり、第2クラッチCL2の耐久性の向上を図ることができる。
【0040】
〔MG/ISCモード及びE/ISCモードについて〕
車両停止状態において、例えば、バッテリSOCが所定値よりも小さいときは、発電要求がなされる。この場合には、エンジンEをトルク制御により駆動し、エンジン回転数をモータジェネレータMGによって回転数制御するMG/ISCモードが選択される。これにより、エンジン側では発電要求等に基づいて必要なトルクを出力し、モータジェネレータ側ではエンジン自立回転が可能な低い回転数に維持しつつ、余剰トルクを発電トルクとして利用することになる。この場合、第1クラッチCL1は完全締結状態である。
一方、車両停止状態において、発電要求は無いが、他の補機類からの要求によりエンジン作動状態の維持が要求される場合がある。このときは、第1クラッチCL1を開放し、エンジンの吸入空気量等を調整して所定回転数に回転数制御するE/ISCモードが選択される。このとき、第1クラッチCL1は開放状態である。
【0041】
すなわち、車両停止状態であって、エンジンEが作動状態を維持している場合であっても、第1クラッチCL1が締結しているモードと開放しているモードがあり、これらモード遷移が生じるときは、第1クラッチCL1の締結と開放が実施される。
【0042】
図11は、実施例1のクラッチ制御装置が適用された第1クラッチコントローラ5にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。
第1クラッチコントローラ5は、図11に示すように、学習許可判定ブロック51と、基準トルク点検出ブロック52と、CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53と、ストローク差演算ブロック54と、制御指令演算ブロック55と、を備えている。
【0043】
学習許可判定ブロック51は、モード情報(走行モード切り替えによるエンジン始動シーン抽出)と、エンジン回転数情報と、目標MG回転数情報と、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報と、CL2差回転情報を入力する。そして、これらの情報に基づいて、エンジン始動指令が出されてから複数の学習許可判定条件が共に成立するか否かを判断する。そして、複数の学習許可判定条件が共に成立すると学習許可フラグを立てる。
【0044】
基準トルク点検出ブロック52は、学習許可判定ブロック51からの学習許可フラグと、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報を入力する。そして、実施例1では、学習許可フラグが入力された後、MGトルク値が立ち上がったと判断された時点での第1クラッチストロークセンサ15からの第1クラッチストローク情報を入力する。
そして、入力した第1クラッチストローク値SCL1を第1クラッチCL1の締結開始点学習値とする。さらに、学習許可フラグの入力により上昇させるMGトルクが上昇途中の所望の値となった時点を瞬時値トルク学習点とし、この瞬時値トルク学習点で第1クラッチトルクTCL1の演算情報を取得すると共に、第1クラッチストロークセンサ15からの第1クラッチストローク情報を入力する。そして、取得した演算情報に基づいて第1クラッチCL1の伝達トルクを推定演算し、この対応関係にある第1クラッチストローク値SCL1と第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1をクラッチトルク学習値として出力する。
【0045】
CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53は、第1クラッチトルクと第1クラッチストロークの関係を特性化したCL1トルク-ストロークマップを設定すると共に、基準トルク点検出ブロック52により取得された情報を学習値とし、CL1トルク-ストロークマップに反映させる。一方、CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53に対し、統合コントローラ10から目標CL1トルク指令が入力されると、そのとき設定されているCL1トルク-ストロークマップを検索することにより、目標CL1トルク指令に対応する目標CL1ストロークが求められる。
【0046】
ストローク差演算ブロック54は、CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53からの目標CL1ストロークと、第1クラッチストロークセンサ15からの実CL1ストロークを入力し、目標CL1ストロークと実CL1ストロークのストローク差を演算する。
制御指令演算ブロック55は、ストローク差演算ブロック54からのストローク差を入力し、実CL1ストロークを目標CL1ストロークに一致させる制御指令を演算する。そして、この演算により得られた制御指令を第1クラッチ油圧ユニット6に対し出力する。
【0047】
図12は、実施例1の第1クラッチコントローラ5の学習許可判定ブロック51と基準トルク点検出ブロック52とCL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53にて実行される学習補正制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
ステップS101では、所定の走行モード遷移以外であって、かつ、走行モード切り替え判断に基づき、エンジン始動指令が出されてから4つの学習許可判定条件が共に成立するか否か、つまり、学習許可判定が出たか否かを判断し、Yes(学習許可判定有り)の場合は学習許可フラグを立ててステップS102へ移行し、No(学習許可判定無し)の場合はステップS101での判断を繰り返す。
ここで、所定の走行モード遷移以外か否かの判断は、WSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移、もしくはMG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移、もしくはEVモードとWSC走行モードとの間の遷移以外を指す。また、4つの学習許可判定条件は、MG回転数安定条件、MGトルク安定条件、ロー側変速段条件、CL2伝達トルク安定条件である。また、エンジン始動指令が出された時点t1から、4つの学習許可判定条件が共に成立しているとの判断に基づき学習許可フラグを立てられる時点t2までの時間を、「学習許可判定時間」という。
【0048】
ステップS102では、ステップS101での学習許可判定が出たとの判断に続き、学習許可フラグの入力開始された後、MGトルク値が立ち上がったか否かを判断し、Yes(MGトルク値の立ち上がり)の場合はステップS103へ移行し、No(MGトルク値の維持)の場合はステップS102での判断を繰り返す。
ステップS103では、ステップS102でのMGトルク値の立ち上がり判断に続き、MGトルク値が立ち上がった時点での第1クラッチストロークセンサ15により検出される第1クラッチストローク値SCL1を検出し、ステップS104へ移行する。
ステップS104では、ステップS103での第1クラッチストローク値SCL1の検出に続き、上昇しているMGトルク値が上昇途中の所望の値となったか否かを判断し、Yes(MGトルク値≧所望の値)の場合はステップS105へ移行し、No(MGトルク値<所望の値)の場合はステップS104での判断を繰り返す。
【0049】
ステップS105では、ステップS104でのMGトルク値が所望の値になったとの判断に続き、この判断時点を瞬時値トルク学習点とし、この瞬時値トルク学習点での第1クラッチ伝達トルクTCL1を演算するために必要な演算情報を取得し、ステップS106へ移行する。
ここで、第1クラッチ伝達トルクTCL1の演算情報としては、MGトルク値が所望の値になったとの判断前後での実MG回転差情報と、学習許可判定時間内でのMGトルク値の平均値情報と、変速段情報が取得される。
ステップS106では、ステップS105での第1クラッチ伝達トルクTCL1の演算情報取得に続き、第1クラッチストロークセンサ15により検出される第1クラッチストローク値SCL1を検出し、ステップS107へ移行する。
ステップS107では、ステップS106での第1クラッチストローク値SCL1の検出に続き、取得した演算情報に基づいて、第1クラッチCL1の伝達トルクである第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を演算し、ステップS108へ移行する。なお、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の詳しい演算手法については、後述する。
【0050】
ステップS108では、ステップS107での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算に続き、学習値をCL1トルク-ストロークマップに反映させて学習補正する。つまり、ステップS103において、MGトルク値が立ち上がった時点で検出された第1クラッチストローク値SCL1を、第1クラッチCL1の締結開始点学習値とし、CL1トルク-ストロークマップの締結開始点SSを学習補正する。そして、ステップS106において、MGトルクが所望の値となった時点で第1クラッチストローク値SCL1が検出され、ステップS107において、MGトルクが所望の値となった時点での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1が演算されると、対応関係にある2つの値をクラッチ学習値とし、CL1トルク-ストロークマップの特性を学習補正する。
【0051】
次に、作用を説明する。実施例1のFRハイブリッド車両のクラッチ制御装置における作用を、「エンジン始動シーンでの駆動系構成要素の状態変遷作用」、「学習許可判定作用」、「第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算手法」、「学習補正制御作用」に分けて説明する。
【0052】
[エンジン始動シーンでの駆動系構成要素の状態変遷作用]
図13は、実施例1のFRハイブリッド車両のクラッチ制御装置において、EVモードからHEVモードへのモード遷移指令が出力された場合の、エンジン始動シーンでのモード選択特性・学習許可フラグ特性・Eng回転特性・MG目標回転特性・MG回転特性・MGトルク特性・変速段特性・CL1ストローク特性(CL1トルク特性)・CL2トルク特性・CL2差回転特性の一例を示すタイムチャートである。
図13において、t1はエンジン始動指令が出された時点を示し、t2はMGトルク立ち上がりポイントを示し、t3はEng回転立ち上がりポイントを示し、t4はEng回転一定値ポイント(火入れ前)を示し、t5はHEV移行指令が出された時点を示す。以下、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、エンジンEng、モータジェネレータMGの各状態変遷について説明する。
(第1クラッチCL1の状態変遷)
第1クラッチCL1は、時刻t1までの「EVモード」では開放、時刻t1〜t2間は開放(ストローク中)、時刻t2〜t3間は中間容量、時刻t3〜t4間は中間容量、時刻t4〜t5間は中間容量、時刻t5以降は完全締結へ移行し、「HEVモード」で締結される。
(第2クラッチCL2の状態変遷)
第2クラッチCL2は、時刻t1までの「EVモード」では締結、時刻t1〜t2間はスリップ締結、時刻t2〜t3間はスリップ締結、時刻t3〜t4間はスリップ締結、時刻t4〜t5間はスリップ締結、時刻t5以降は締結へ移行し、「HEVモード」で締結される。
(エンジンEngの状態変遷)
エンジンEngは、時刻t1までの「EVモード」では停止、時刻t1〜t2間は停止、時刻t2〜t3間は停止であるが第1クラッチCL1からトルク受け取り中、時刻t3〜t4間はクランキング中、時刻t4〜t5間は運転へ移行、時刻t5以降は「HEVモード」を含めて運転状態とされる。
(モータジェネレータMGの状態変遷)
モータジェネレータMGは、時刻t1までの「EVモード」では目標トルクを得るトルク制御、時刻t1〜t2間は目標回転数を得る回転数制御、時刻t2〜t3間は回転数制御、時刻t3〜t4間は回転数制御、時刻t4〜t5間は回転数制御、時刻t5以降は回転数制御から「HEVモード」での目標トルクを得るトルク制御に移行する。
【0053】
上記のように、走行中に走行モードを「EVモード」から「HEVモード」に切り替えるエンジン始動シーンでは、エンジンEngを停止し第1クラッチCL1を開放している「EVモード」から、過渡期モードとしての「エンジン始動中モード」を経過し、エンジンEngを運転し第1クラッチCL1を締結している「HEVモード」へと切り替えられる。
このエンジン始動シーンでは、「エンジン始動中モード」において、第2クラッチCL2をスリップ締結状態とし、モード切り替えに伴い変動するトルクが駆動輪へ伝達されることでのモード切り替えショックを抑えている。
【0054】
一方、エンジン始動シーンでは、「エンジン始動中モード」において、第1クラッチCL1を開放状態から中間容量を保つ半クラッチ状態とし、モータジェネレータMGをトルク制御から回転数制御に切り替えている。これによって、第1クラッチCL1を介してモータジェネレータMGからトルクを受け取ることでエンジンEngを始動しながら、自動変速機ATの入力軸回転を一定に保つようにしている。つまり、「エンジン始動中モード」においては、モータジェネレータMGのトルクを上昇させつつ、回転数を目標回転数に一致させる回転数制御を行っている。
そして、「EVモード」から「HEVモード」に切り替えるエンジン始動シーンでは、エンジンEngを停止し第1クラッチCL1を開放している「EVモード」から、第1クラッチCL1を中間容量に締結する「エンジン始動中モード」へと移行する。このため、締結時MGトルク値と開放時MGトルク値の差に基づき、中間容量で締結される第1クラッチCL1の第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を演算するのに好適なシーンとなる。
【0055】
[学習許可判定作用]
図12のフローチャートにおいて、ステップS101で学習許可判定が出ない限り、ステップS102に進むことが無い。つまり、図11の学習許可判定ブロック51から学習許可フラグが出ない限り、基準トルク点検出ブロック52にて第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算等が行われることがない。以下、学習許可判定ブロック51での学習許可判定作用について説明する。
【0056】
学習許可判定ブロック51では、「EVモード」から「HEVモード」への走行モード切り替えによるエンジン始動シーン抽出によるモード情報と、エンジン回転数情報と、目標MG回転数情報と、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報と、CL2差回転情報を入力する。ここで、モード情報は、統合コントローラ10から得る。エンジン回転数情報は、エンジン回転数センサ12から得る。目標MG回転数情報は、統合コントローラ10からの目標MG回転数指令から得る。実MG回転数情報は、モータ回転数センサ21から得る。MGトルク値情報は、モータジェネレータMGへの印加電流値に基づく演算により得る(モータジェネレータトルク値検出手段)。変速段情報は、ATコントローラ7での変速指令により得る。CL2差回転情報は、モータ回転数センサ21からの変速機入力軸回転数と第2クラッチ出力回転数センサ22からの第2クラッチ出力回転数N2outに基づく演算により得る。
そして、これらの情報に基づいて、エンジン始動指令が出されてから4つの学習許可判定条件が共に成立するか否かが判断される。ここで、4つの学習許可判定条件は、図6に示すように、
(A)エンジン回転数が停止状態で、目標MG回転数と実MG回転数の偏差が、一定時間以上の間、所定の幅範囲内に収まっていること(MG回転数安定条件)。
(B)MGトルク値が一定時間以上の間、所定の幅範囲内に収まっていること(MGトルク安定条件)。
(C)変速段が一定以下のローギア段(例えば、1速段、2速段、3速段)であること(ロー側変速段条件)。
(D)第2クラッチCL2の差回転が、一定時間以上の間、所定の幅範囲内に収まっていること(CL2伝達トルク安定条件)。
である。
【0057】
このように、エンジン始動指令が出された時刻t1から、4つの学習許可判定条件が共に成立し、第2クラッチCL2の伝達トルクが安定していると判断されると、時刻t1から時刻t2までの時間を、「学習許可判定時間」とし、学習許可判定時間の経過時点からエンジンEngへの火入れ前の時刻t4までの間、学習許可フラグを立てられる。
【0058】
[第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算手法]
図12のフローチャートにおいて、ステップS101で学習許可判定が出ると、ステップS102→ステップS103→ステップS104→ステップS105→ステップS106→ステップS107へと進み、ステップS107にて、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算が実行される。つまり、図11の学習許可判定ブロック51から学習許可フラグが出たことで、基準トルク点検出ブロック52にて第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算が行われる。以下、基準トルク点検出ブロック52での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算手法について説明する。
【0059】
まず、時刻t1〜t2までの学習許可判定時間での運動方程式は、
TMG=TCL2+I・ω'MG+FMG…(1)
TMG:MGトルク値、TCL2:第2クラッチトルク推定値、I:変速段毎の回転慣性、ω'MG:モータジェネレータMGの回転角加速度、FMG:モータフリクション
であらわされる。
ここで、モータジェネレータMGの回転変動が一定幅にあるならば、ω'MG=0となり、(I・ω'MG)の項は無視できる。モータフリクションは微小なので(FMG)の項は無視できる。したがって、上記(1)式は、
TMG≒TCL2…(1')
であらわされる。つまり、学習許可判定時間領域では、第2クラッチトルク推定値TCL2を、MGトルク値TMGで代用することができる。
【0060】
次に、MGトルク値が所望の値になる時間領域(時刻t2〜t4)での運動方程式は、
TMG=TCL1+TCL2+I・ω'MG+FMG…(2)
であらわされる。ここで、モータフリクションは微小なので(FMG)の項は無視できる。
したがって、上記(2)式は、
TMG≒TCL1+TCL2+I・ω'MG…(2')
であらわされる。
そして、上記(1')式と(2')式により、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1は、
TCL1≒TMG(締結時MGトルク値)−TMG(開放時MGトルク値)−I・ω'MG…(3)
であらわされる。
【0061】
ここで、TMG(締結時MGトルク値)は、所望のMGトルクであり(図13の(G))、TMG(開放時MGトルク値)は、学習許可判定時間領域でのMGトルク値の平均値である(図13の(I))。また、変速段毎の回転慣性Iは、変速段情報が分かれば既知であり、ω'MGは、図13の(E)に示すように、MGトルク値が所望の値になる前後でのモータジェネレータMGの回転差により演算できる。したがって、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1は、TMG(締結時MGトルク値)とTMG(開放時MGトルク値)の差に基づく上記(3)式を用いて求めることができる。
【0062】
すなわち、第1クラッチCL1を開放した状態で検出されたTMG(開放時MGトルク値)は、第2クラッチトルク推定値TCL2であり、モータジェネレータMGから駆動輪までの駆動系負荷に相当する値となる。一方、エンジンEngの火入れ前で第1クラッチCL1を締結した状態で検出されたTMG(締結時MGトルク値)は、駆動系負荷に相当する値に、第2クラッチ負荷(=第2クラッチ伝達トルク)を加えた値となる。
したがって、締結時と開放時のMGトルク値の差は、回転慣性力やフリクション等の影響を無視すると、第1クラッチ伝達トルクに相当する値となる。このため、TMG(締結時MGトルク値)とTMG(開放時MGトルク値)の差に基づく上記(3)式を用いることで、精度の良い第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を得ることができる。
そして、TMG(締結時MGトルク値)は、実施例1では、所望の値としているため、特定のトルク点だけでのクラッチ伝達トルクの推定というような推定条件の制約を受けないで、瞬時値にて第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を求めることができる。
【0063】
[学習補正制御作用]
図12のフローチャートにおいて、ステップS101で学習許可判定が出ると、ステップS102→ステップS103→ステップS104→ステップS105→ステップS106→ステップS107→ステップS108へと進み、ステップS108にて、学習値をCL1トルク-ストロークマップに反映させて学習補正される。
すなわち、ステップS103において、MGトルク値が立ち上がった時点で検出された第1クラッチストローク値SCL1は(図13の(F))、第1クラッチCL1の締結開始点学習値とされ、図11に示すCL1トルク-ストロークマップの締結開始点SSが学習補正される。なお、図11において、CL1トルク-ストロークマップの「FS」は、フルストローク点であり、「0」はストローク原点である。したがって、第1クラッチCL1にて伝達トルクの発生が開始される第1クラッチストローク値SCL1は、部品や組み付けバラツキやクラッチフェーシングの摩耗等の経年劣化により変化する。しかし、伝達トルクの発生が開始される第1クラッチストローク値SCL1の変化に追従する締結開始点SSの学習補正により、確実に伝達トルクの発生が開始されるストローク位置に合わせ込むことができる。
そして、ステップS106において、MGトルクが所望の値となった時点(図13の(G))で第1クラッチストローク値SCL1が検出され(図13の(H))、ステップS107において、MGトルクが所望の値となった時点での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1が演算されると、対応関係にある2つの値がクラッチ学習値とされ、図11に示すように、CL1トルク-ストロークマップの特性が学習補正される。
【0064】
したがって、第1クラッチCL1は、図13に示すように、エンジン始動中モードにおいて、所望の中間容量に固定される。しかし、所望の中間容量を得る第1クラッチストローク値SCL1は、部品や組み付けバラツキやクラッチフェーシングの摩耗等の経年劣化により変化する。これに対し、所望の中間容量を得る第1クラッチストローク値SCL1の変化に追従するCL1トルク-ストロークマップの特性の学習補正により、確実に所望の中間容量を得るストローク位置に合わせ込むことができる。
【0065】
上述したように、EVモードとHEVモードとの間のモード遷移時には、上述の第1クラッチCL1に関する学習補正制御処理が有効である。しかし、ステップS101で示すように、所定の走行モード遷移以外か否かの判断は、WSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移、もしくはMG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移、もしくはEVモードとWSC走行モードとの間の遷移のときは、例え第1クラッチCL1の締結・開放がなされたとしても、適切な学習補正制御処理が困難である。
【0066】
図14はWSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。WSC走行モードからMWSC走行モードに遷移するときは、第1クラッチCL1を開放するとともに、モータジェネレータMGの回転数をエンジンアイドル回転数よりも低い回転数に低下させることになる。この場合、回転数制御に伴って、負荷の変動によるトルク変動に加え、回転数変動によるトルク変動が加わり、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。同様に、MWSC走行モードからWSC走行モードに遷移するときも、やはり、回転数変動に伴ってトルク変動が生じ、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。
【0067】
図15はMG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。この場合もやはり、エンジンEがトルク制御と回転数制御との間で切り換わる際、モータジェネレータMGにトルク変動が生じ、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。
【0068】
また、図示はしないが、EVモードとWSC走行モードとの間の遷移についても、同様に、第1クラッチCL1の締結・開放に伴って、第1クラッチCL1以外の要因でモータジェネレータにトルク変動が生じやすく、このような場合にも、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。
よって、これらのモード遷移時には、第1クラッチCL1の学習補正制御を禁止することで、誤学習を防止することができる。
【0069】
以上説明したように、実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)エンジンEと、車両の駆動力を出力すると共にエンジンEの始動を行うモータジェネレータMG(モータ)と、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されエンジンEとモータジェネレータMGとを断接する第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと駆動輪との間に介装されモータジェネレータMGと前記駆動輪とを断接する第2クラッチCL2と、エンジンEと、モータジェネレータMGと、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2との制御状態に基づく複数の走行モードのうち、走行状態に応じた走行モードを選択するモード選択部200(モード選択手段)と、第1クラッチCL1の締結・開放が生じるモード遷移時に第1クラッチCL1の締結状態を学習補正する第1クラッチコントローラ5(学習補正手段)と、を備え、モード選択部200の選択結果に基づいてモード遷移するときであって、かつ、モータジェネレータトルクが変動する場合は、学習補正を禁止するステップS101(学習補正禁止手段)と、を備えた。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0070】
(2)エンジンEが作動状態で、第1クラッチCL1を締結し、第2クラッチCL2をスリップ制御し、モータジェネレータMGを回転数制御するWSC走行モード(エンジン併用モータ走行モード)と、エンジンEが作動状態で、第1クラッチCL1を開放し、第2クラッチCL2をスリップ制御し、モータジェネレータMGを回転数制御するMWSC走行モード(エンジン作動モータ走行モード)と、を有し、ステップS101は、WSC走行モードとWSC走行モードとの間で遷移するときは、学習補正を禁止する。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0071】
(3)車両停止状態で、第1クラッチCL1を開放し、エンジンEにおいて回転数制御するE/ISCモード(エンジン回転数制御モード)と、車両停止状態で、第1クラッチCL1を締結し、エンジンEをトルク制御し、モータジェネレータMGにおいて回転数制御するMG/ISCモード(モータ回転数制御モード)と、を有し、ステップS101は、E/ISCモードとMG/ISCモードとの間で遷移するときは、学習補正を禁止する。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0072】
(4)エンジンEを停止し、第1クラッチCL1を開放し、第2クラッチCL2を締結し、モータジェネレータMGをトルク制御するEVモード(モータ走行モード)と、エンジンEが作動状態で、第1クラッチCL1を締結し、第2クラッチCL2をスリップ制御し、モータジェネレータMGを回転数制御するWSC走行モード(エンジン併用モータ走行モード)と、を有し、ステップS101は、EVモードとWSC走行モードとの間で遷移するときは、学習補正を禁止する。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0073】
以上、本発明を実施例1に基づいて説明したが、具体的な構成は他の構成であってもよい。例えば、実施例1では、車両負荷として路面勾配を検出又は推定することとしたが、車両牽引等の有無を検出するようにしてもよいし、車載荷重を検出してもよい。このように車両負荷が大きい場合には車速の上昇が遅く、第2クラッチCL2が発熱しやすいからである。また、実施例1では、FR型のハイブリッド車両について説明したが、FF型のハイブリッド車両であっても構わない。
【符号の説明】
【0074】
E エンジン
CL1 第1クラッチ
MG モータジェネレータ
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
24 ブレーキ油圧センサ
100 目標駆動力演算部
200 モード選択部
300 目標充放電演算部
400 動作点指令部
500 変速制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源にエンジンとモータを備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両として特許文献1の技術が開示されている。この公報には、エンジンとモータとを断接する第1クラッチと、モータと駆動輪とを断接する第2クラッチとを備えるハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両は、第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われるときは、第1クラッチのストロークと締結トルク容量との関係を学習補正することで、安定した第1クラッチ制御を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われたときに、モータのトルク変動がそのまま第1クラッチの締結容量として反映できない場合があり、そのような走行シーンで学習補正すると、誤ったデータに基づいて学習補正されるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、適切な走行シーンにおいて第1クラッチの学習補正を行うことが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、第2クラッチをスリップ制御してモータを回転数制御しているときに、第1クラッチの締結・開放が行われる走行モードの遷移であっても、第1クラッチの締結・開放以外の要因でモータトルク変動が生じる場合には、第1クラッチの学習補正を禁止することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の後輪駆動のハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の統合コントローラにおける演算処理プログラムを示す制御ブロック図である。
【図3】図2の目標駆動力演算部にて目標駆動力演算に用いられる目標駆動力マップの一例を示す図である。
【図4】図2のモード選択部にてモードマップと推定勾配との関係を表す図である。
【図5】図2のモード選択部にて目標モードの選択に用いられる通常モードマップを示す図である。
【図6】図2のモード選択部にて目標モードの選択に用いられるMWSC対応モードマップを示す図である。
【図7】図2の目標充放電演算部にて目標充放電電力の演算に用いられる目標充放電量マップの一例を示す図である。
【図8】WSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図である。
【図9】WSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
【図10】車速を所定状態で上昇させる際のエンジン回転数の変化を表すタイムチャートである。
【図11】実施例1のクラッチ制御装置が適用された第1クラッチコントローラ5にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。
【図12】実施例1の第1クラッチコントローラ5の学習許可判定ブロック51と基準トルク点検出ブロック52とCL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53にて実行される学習補正制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施例1のFRハイブリッド車両のクラッチ制御装置においてエンジン始動シーンでのモード選択特性・学習許可フラグ特性・Eng回転特性・MG目標回転特性・MG回転特性・MGトルク特性・変速段特性・CL1ストローク特性(CL1トルク特性)・CL2トルク特性・CL2差回転特性の一例を示すタイムチャートである。
【図14】WSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。
【図15】MG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。図1は、実施例1のクラッチ制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(クラッチ)と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RLと、右後輪RRと、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0010】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。
【0011】
前記モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータジェネレータMGのロータは、ダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
【0012】
前記第2クラッチCL2は、前記モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0013】
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択している。そして、前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0014】
前記第1クラッチCL1としては、例えば、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14により締結・開放が制御される乾式単板クラッチが用いられる。前記第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。このハイブリッド駆動系は、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)とハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)の2つの走行モードを有する。「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、エンジンEngとモータジェネレータMGの動力で走行するモードである。
【0015】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0016】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0017】
前記モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いられると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
【0018】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0019】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ・スイッチ類18からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。なお、シフトマップとは、アクセル開度と車速に応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。上記自動変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。
さらに、走行モード切り替え制御時等において、統合コントローラ10から目標変速段指令を入力した場合、通常の自動変速制御での変速指令に優先し、目標変速段への変速制御や目標変速段を維持する変速段固定制御を行う。
【0020】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22等からの情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令および目標変速段指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0021】
図2は、実施例1のクラッチ制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。図3は、FRハイブリッド車両の統合コントローラ10でのモード選択処理を行う際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。以下、図2及び図3に基づき、実施例1の統合コントローラ10にて実行される演算処理を説明する。
【0022】
統合コントローラ10は、図2に示すように、目標駆動力演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400とを有する。目標駆動力演算部100では、目標駆動力マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、目標駆動力tFoOを演算する。モード選択部200では、図3に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、「EVモード」または「HEVモード」を目標走行モードとして選択する。但し、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。目標充放電演算部300では、目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
モード選択部200は、Gセンサ10bの検出値に基づいて路面勾配を推定する路面勾配推定演算部201を有する。路面勾配推定演算部201は、車輪速センサ19の車輪速加速度平均値等から実加速度を演算し、この演算結果とGセンサ検出値との偏差から路面勾配を推定する。また、車両停止状態であってエンジン駆動状態において、エンジンEの回転数をエンジン自体で制御するE/ISCモードと、モータジェネレータMGにより制御するMG/ISCモードとを有する。これらモードについては後述する。
【0023】
更に、モード選択部200は、推定された路面勾配に基づいて、後述する二つのモードマップのうち、いずれかを選択するモードマップ選択部202を有する。図4はモードマップ選択部202の選択ロジックを表す概略図である。モードマップ選択部202は、通常モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g2以上になると、MWSC対応モードマップに切り換える。一方、MWSC対応モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g1(<g2)未満になると、通常モードマップに切り換える。すなわち、推定勾配に対してヒステリシスを設け、マップ切り換え時の制御ハンチングを防止する。
【0024】
次に、モードマップについて説明する。モードマップとしては、推定勾配が所定値未満のときに選択される通常モードマップと、推定勾配が所定値以上のときに選択されるMWSC対応モードマップとを有する。図5は通常モードマップ、図6はMWSCモードマップを表す。
通常モードマップ内には、EVモードと、WSC走行モードと、HEVモードとを有し、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標モードを演算する。但し、EVモードが選択されていたとしても、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標モードとする。
【0025】
図5の通常モードマップにおいて、HEV→WSC切換線は、所定アクセル開度APO1未満の領域では、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEのアイドル回転数よりも小さな回転数となる下限車速VSP1よりも低い領域に設定されている。また、所定アクセル開度APO1以上の領域では、大きな駆動力を要求されることから、下限車速VSP1よりも高い車速VSP1'領域までWSC走行モードが設定されている。尚、バッテリSOCが低く、EVモードを達成できないときには、発進時等であってもWSC走行モードを選択するように構成されている。
【0026】
アクセルペダル開度APOが大きいとき、その要求をアイドル回転数付近のエンジン回転数に対応したエンジントルクとモータジェネレータMGのトルクで達成するのは困難な場合がある。ここで、エンジントルクは、エンジン回転数が上昇すればより多くのトルクを出力できる。このことから、エンジン回転数を引き上げてより大きなトルクを出力させれば、例え下限車速VSP1よりも高い車速までWSC走行モードを実行しても、短時間でWSC走行モードからHEVモードに遷移させることができる。この場合が図5に示す下限車速VSP1'まで広げられたWSC領域である。
【0027】
MWSCモードマップ内には、EVモード領域が設定されていない点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域として、アクセルペダル開度APOに応じて領域を変更せず、下限車速VSP1のみで領域が規定されている点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域内にMWSC走行モード領域が設定されている点で通常モードマップとは異なる。MWSC走行モード領域は、下限車速VSP1よりも低い所定車速VSP2と所定アクセル開度APO1よりも高い所定アクセル開度APO2とで囲まれた領域に設定されている。尚、MWSC走行モードの詳細については後述する。
【0028】
目標充放電演算部300では、図7に示す目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
動作点指令部400では、アクセルペダル開度APOと、目標駆動力tFoOと、目標モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標モータジェネレータトルクと目標第2クラッチ伝達トルク容量と自動変速機ATの目標変速段と第1クラッチソレノイド電流指令を演算する。また、動作点指令部400には、EVモードからHEVモードに遷移するときにエンジンEを始動するエンジン始動制御部が設けられている。
変速制御部500では、シフトマップに示すシフトスケジュールに沿って、目標第2クラッチ伝達トルク容量と目標変速段を達成するように自動変速機AT内のソレノイドバルブを駆動制御する。尚、シフトマップは、車速VSPとアクセルペダル開度APOに基づいて予め目標変速段が設定されたものである。
【0029】
〔WSC走行モードについて〕
次に、WSC走行モードの詳細について説明する。WSC走行モードとは、エンジンEが作動した状態を維持している点に特徴があり、要求駆動力変化に対する応答性が高い。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、第2クラッチCL2を要求駆動力に応じた伝達トルク容量としてスリップ制御し、エンジンE及び/又はモータジェネレータMGの駆動力を用いて走行する。
【0030】
実施例1のハイブリッド車両では、トルクコンバータのように回転数差を吸収する要素が存在しないため、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2を完全締結すると、エンジンEの回転数に応じて車速が決まってしまう。エンジンEには自立回転を維持するためのアイドル回転数による下限値が存在し、このアイドル回転数は、エンジンの暖機運転等によりアイドルアップを行っていると、更に下限値が高くなる。また、要求駆動力が高い状態では素早くHEVモードに遷移できない場合がある。
一方、EVモードでは、第1クラッチCL1を解放するため、上記エンジン回転数による下限値に伴う制限はない。しかしながら、バッテリSOCに基づく制限によってEVモードによる走行が困難な場合や、モータジェネレータMGのみで要求駆動力を達成できない領域では、エンジンEによって安定したトルクを発生する以外に手段がない。
そこで、上記下限値に相当する車速よりも低車速領域であって、かつ、EVモードによる走行が困難な場合やモータジェネレータMGのみでは要求駆動力を達成できない領域では、エンジン回転数を所定の下限回転数に維持し、第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジントルクを用いて走行するWSC走行モードを選択する。
【0031】
図8はWSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図、図9はWSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
WSC走行モードにおいて、運転者がアクセルペダルを操作すると、図9に基づいてアクセルペダル開度に応じた目標エンジン回転数特性が選択され、この特性に沿って車速に応じた目標エンジン回転数が設定される。そして、図8に示すエンジン動作点設定処理によって目標エンジン回転数に対応した目標エンジントルクが演算される。
ここで、エンジンEの動作点をエンジン回転数とエンジントルクにより規定される点と定義する。図8に示すように、エンジン動作点は、エンジンEの出力効率が高い動作点を結んだ線(以下、α線)上で運転することが望まれる。
しかし、上述のようにエンジン回転数を設定した場合、運転者のアクセルペダル操作量(要求駆動力)によってはα線から離れた動作点を選択することとなる。そこで、エンジン動作点をα線に近づけるために、目標エンジントルクは、α線を考慮した値にフィードフォワード制御される。
【0032】
一方、モータジェネレータMGは、設定されたエンジン回転数を目標回転数とする回転数フィードバック制御が実行される。今、エンジンEとモータジェネレータMGは直結状態とされていることから、モータジェネレータMGが目標回転数を維持するように制御されることで、エンジンEの回転数も自動的にフィードバック制御されることとなる。
このとき、モータジェネレータMGが出力するトルクは、α線を考慮して決定された目標エンジントルクと要求駆動力との偏差を埋めるように自動的に制御される。モータジェネレータMGでは、上記偏差を埋めるように基礎的なトルク制御量(回生・力行)が与えられ、更に、目標エンジン回転数と一致するようにフィードバック制御される。
【0033】
あるエンジン回転数において、要求駆動力がα線上の駆動力よりも小さい場合、エンジン出力トルクを大きくした方がエンジン出力効率は上昇する。このとき、出力を上げた分のエネルギをモータジェネレータMGにより回収することで、第2クラッチCL2に入力されるトルク自体は運転者の要求トルクとしつつ、効率の良い発電が可能となる。
ただし、バッテリSOCの状態によって発電可能なトルク上限値が決定されるため、バッテリSOCからの要求発電出力(SOC要求発電電力)と、現在の動作点におけるトルクとα線上のトルクとの偏差(α線発電電力)との大小関係を考慮する必要がある。
【0034】
図8(a)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも大きい場合の概略図である。SOC要求発電電力以上にはエンジン出力トルクを上昇させることができないため、α線上に動作点を移動させることはできない。ただし、より効率の高い点へ移動させることで燃費効率を改善する。
図8(b)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも小さい場合の概略図である。SOC要求発電電力の範囲内であれば、エンジン動作点をα線上に移動させることができるため、この場合は、最も燃費効率の高い動作点を維持しつつ発電することができる。
図8(c)は、エンジン動作点がα線よりも高い場合の概略図である。要求駆動力に応じた動作点がα線よりも高いときは、バッテリSOCに余裕があることを条件として、エンジントルクを低下させ、不足分をモータジェネレータMGの力行により補う。これにより、燃費効率を高くしつつ要求駆動力を達成することができる。
【0035】
次に、WSC走行モード領域を、推定勾配に応じて変更している点について説明する。図10は車速を所定状態で上昇させる際のエンジン回転数マップである。
平坦路において、アクセルペダル開度がAPO1よりも大きな値の場合、WSC走行モード領域は下限車速VSP1よりも高い車速領域まで実行される。このとき、車速の上昇に伴って図9に示すマップのように徐々に目標エンジン回転数は上昇する。そして、VSP1'に相当する車速に到達すると、第2クラッチCL2のスリップ状態は解消され、HEVモードに遷移する。
推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きい勾配路において、上記と同じ車速上昇状態を維持しようとすると、それだけ大きなアクセルペダル開度となる。このとき、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2は平坦路に比べて大きくなる。この状態で、仮に図9に示すマップのようにWSC走行モード領域を拡大してしまうと、第2クラッチCL2は強い締結力でのスリップ状態を継続することとなり、発熱量が過剰となるおそれがある。そこで、推定勾配が大きい勾配路のときに選択される図6のMWSC対応モードマップでは、WSC走行モード領域を不要に広げることなく、車速VSP1に相当する領域までとする。これにより、WSC走行モードにおける過剰な発熱を回避する。
【0036】
〔MWSC走行モードについて〕
次に、MWSC走行モード領域を設定した理由について説明する。推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きいときに、例えば、ブレーキペダル操作を行うことなく車両を停止状態もしくは微速発進状態に維持しようとすると、平坦路に比べて大きな駆動力が要求される。自車両の荷重負荷に対向する必要があるからである。
第2クラッチCL2のスリップによる発熱を回避する観点から、バッテリSOCに余裕があるときはEVモードを選択することも考えられる。このとき、EVモード領域からWSC走行モード領域に遷移したときにはエンジン始動を行う必要があり、モータジェネレータMGはエンジン始動用トルクを確保した状態で駆動トルクを出力するため、駆動トルク上限値が不要に狭められる。
また、EVモードにおいてモータジェネレータMGにトルクだけを出力し、モータジェネレータMGの回転を停止もしくは極低速回転すると、インバータのスイッチング素子にロック電流が流れ(電流が1つの素子に流れ続ける現象)、耐久性の低下を招くおそれがある。
また、1速でエンジンEのアイドル回転数に相当する下限車速VSP1よりも低い領域(VSP2以下の領域)において、エンジンE自体は、アイドル回転数より低下させることができない。このとき、WSC走行モードを選択すると、第2クラッチCL2のスリップ量が大きくなり、第2クラッチCL2の耐久性に影響を与えるおそれがある。
【0037】
特に、勾配路では、平坦路に比べて大きな駆動力が要求されていることから、第2クラッチCL2に要求される伝達トルク容量は高くなり、高トルクで高スリップ量の状態が継続されることは、第2クラッチCL2の耐久性の低下を招きやすい。また、車速の上昇もゆっくりとなることから、HEVモードへの遷移までに時間がかかり、更に発熱するおそれがある。
そこで、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2の伝達トルク容量を運転者の要求駆動力に制御しつつ、モータジェネレータMGの回転数が第2クラッチCL2の出力回転数よりも所定回転数高い目標回転数にフィードバック制御するMWSC走行モードを設定した。
【0038】
言い換えると、モータジェネレータMGの回転状態をエンジンのアイドル回転数よりも低い回転数としつつ第2クラッチCL2をスリップ制御するものである。同時に、エンジンEはアイドル回転数を目標回転数とするフィードバック制御に切り換える。WSC走行モードでは、モータジェネレータMGの回転数フィードバック制御によりエンジン回転数が維持されていた。これに対し、第1クラッチCL1が解放されると、モータジェネレータMGによってエンジン回転数をアイドル回転数に制御できなくなる。よって、エンジンE自体によりエンジン回転数フィードバック制御を行う。
【0039】
MWSC走行モード領域の設定により、以下に列挙する効果を得ることができる。
1)エンジンEが作動状態であることからモータジェネレータMGにエンジン始動分の駆動トルクを残しておく必要が無く、モータジェネレータMGの駆動トルク上限値を大きくすることができる。具体的には、要求駆動力軸で見たときに、EVモードの領域よりも高い要求駆動力に対応できる。
2)モータジェネレータMGの回転状態を確保することでスイッチング素子等の耐久性を向上できる。
3)アイドル回転数よりも低い回転数でモータジェネレータMGを回転することから、第2クラッチCL2のスリップ量を小さくすることが可能となり、第2クラッチCL2の耐久性の向上を図ることができる。
【0040】
〔MG/ISCモード及びE/ISCモードについて〕
車両停止状態において、例えば、バッテリSOCが所定値よりも小さいときは、発電要求がなされる。この場合には、エンジンEをトルク制御により駆動し、エンジン回転数をモータジェネレータMGによって回転数制御するMG/ISCモードが選択される。これにより、エンジン側では発電要求等に基づいて必要なトルクを出力し、モータジェネレータ側ではエンジン自立回転が可能な低い回転数に維持しつつ、余剰トルクを発電トルクとして利用することになる。この場合、第1クラッチCL1は完全締結状態である。
一方、車両停止状態において、発電要求は無いが、他の補機類からの要求によりエンジン作動状態の維持が要求される場合がある。このときは、第1クラッチCL1を開放し、エンジンの吸入空気量等を調整して所定回転数に回転数制御するE/ISCモードが選択される。このとき、第1クラッチCL1は開放状態である。
【0041】
すなわち、車両停止状態であって、エンジンEが作動状態を維持している場合であっても、第1クラッチCL1が締結しているモードと開放しているモードがあり、これらモード遷移が生じるときは、第1クラッチCL1の締結と開放が実施される。
【0042】
図11は、実施例1のクラッチ制御装置が適用された第1クラッチコントローラ5にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。
第1クラッチコントローラ5は、図11に示すように、学習許可判定ブロック51と、基準トルク点検出ブロック52と、CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53と、ストローク差演算ブロック54と、制御指令演算ブロック55と、を備えている。
【0043】
学習許可判定ブロック51は、モード情報(走行モード切り替えによるエンジン始動シーン抽出)と、エンジン回転数情報と、目標MG回転数情報と、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報と、CL2差回転情報を入力する。そして、これらの情報に基づいて、エンジン始動指令が出されてから複数の学習許可判定条件が共に成立するか否かを判断する。そして、複数の学習許可判定条件が共に成立すると学習許可フラグを立てる。
【0044】
基準トルク点検出ブロック52は、学習許可判定ブロック51からの学習許可フラグと、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報を入力する。そして、実施例1では、学習許可フラグが入力された後、MGトルク値が立ち上がったと判断された時点での第1クラッチストロークセンサ15からの第1クラッチストローク情報を入力する。
そして、入力した第1クラッチストローク値SCL1を第1クラッチCL1の締結開始点学習値とする。さらに、学習許可フラグの入力により上昇させるMGトルクが上昇途中の所望の値となった時点を瞬時値トルク学習点とし、この瞬時値トルク学習点で第1クラッチトルクTCL1の演算情報を取得すると共に、第1クラッチストロークセンサ15からの第1クラッチストローク情報を入力する。そして、取得した演算情報に基づいて第1クラッチCL1の伝達トルクを推定演算し、この対応関係にある第1クラッチストローク値SCL1と第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1をクラッチトルク学習値として出力する。
【0045】
CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53は、第1クラッチトルクと第1クラッチストロークの関係を特性化したCL1トルク-ストロークマップを設定すると共に、基準トルク点検出ブロック52により取得された情報を学習値とし、CL1トルク-ストロークマップに反映させる。一方、CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53に対し、統合コントローラ10から目標CL1トルク指令が入力されると、そのとき設定されているCL1トルク-ストロークマップを検索することにより、目標CL1トルク指令に対応する目標CL1ストロークが求められる。
【0046】
ストローク差演算ブロック54は、CL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53からの目標CL1ストロークと、第1クラッチストロークセンサ15からの実CL1ストロークを入力し、目標CL1ストロークと実CL1ストロークのストローク差を演算する。
制御指令演算ブロック55は、ストローク差演算ブロック54からのストローク差を入力し、実CL1ストロークを目標CL1ストロークに一致させる制御指令を演算する。そして、この演算により得られた制御指令を第1クラッチ油圧ユニット6に対し出力する。
【0047】
図12は、実施例1の第1クラッチコントローラ5の学習許可判定ブロック51と基準トルク点検出ブロック52とCL1トルク-ストロークマップ学習補正ブロック53にて実行される学習補正制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
ステップS101では、所定の走行モード遷移以外であって、かつ、走行モード切り替え判断に基づき、エンジン始動指令が出されてから4つの学習許可判定条件が共に成立するか否か、つまり、学習許可判定が出たか否かを判断し、Yes(学習許可判定有り)の場合は学習許可フラグを立ててステップS102へ移行し、No(学習許可判定無し)の場合はステップS101での判断を繰り返す。
ここで、所定の走行モード遷移以外か否かの判断は、WSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移、もしくはMG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移、もしくはEVモードとWSC走行モードとの間の遷移以外を指す。また、4つの学習許可判定条件は、MG回転数安定条件、MGトルク安定条件、ロー側変速段条件、CL2伝達トルク安定条件である。また、エンジン始動指令が出された時点t1から、4つの学習許可判定条件が共に成立しているとの判断に基づき学習許可フラグを立てられる時点t2までの時間を、「学習許可判定時間」という。
【0048】
ステップS102では、ステップS101での学習許可判定が出たとの判断に続き、学習許可フラグの入力開始された後、MGトルク値が立ち上がったか否かを判断し、Yes(MGトルク値の立ち上がり)の場合はステップS103へ移行し、No(MGトルク値の維持)の場合はステップS102での判断を繰り返す。
ステップS103では、ステップS102でのMGトルク値の立ち上がり判断に続き、MGトルク値が立ち上がった時点での第1クラッチストロークセンサ15により検出される第1クラッチストローク値SCL1を検出し、ステップS104へ移行する。
ステップS104では、ステップS103での第1クラッチストローク値SCL1の検出に続き、上昇しているMGトルク値が上昇途中の所望の値となったか否かを判断し、Yes(MGトルク値≧所望の値)の場合はステップS105へ移行し、No(MGトルク値<所望の値)の場合はステップS104での判断を繰り返す。
【0049】
ステップS105では、ステップS104でのMGトルク値が所望の値になったとの判断に続き、この判断時点を瞬時値トルク学習点とし、この瞬時値トルク学習点での第1クラッチ伝達トルクTCL1を演算するために必要な演算情報を取得し、ステップS106へ移行する。
ここで、第1クラッチ伝達トルクTCL1の演算情報としては、MGトルク値が所望の値になったとの判断前後での実MG回転差情報と、学習許可判定時間内でのMGトルク値の平均値情報と、変速段情報が取得される。
ステップS106では、ステップS105での第1クラッチ伝達トルクTCL1の演算情報取得に続き、第1クラッチストロークセンサ15により検出される第1クラッチストローク値SCL1を検出し、ステップS107へ移行する。
ステップS107では、ステップS106での第1クラッチストローク値SCL1の検出に続き、取得した演算情報に基づいて、第1クラッチCL1の伝達トルクである第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を演算し、ステップS108へ移行する。なお、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の詳しい演算手法については、後述する。
【0050】
ステップS108では、ステップS107での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算に続き、学習値をCL1トルク-ストロークマップに反映させて学習補正する。つまり、ステップS103において、MGトルク値が立ち上がった時点で検出された第1クラッチストローク値SCL1を、第1クラッチCL1の締結開始点学習値とし、CL1トルク-ストロークマップの締結開始点SSを学習補正する。そして、ステップS106において、MGトルクが所望の値となった時点で第1クラッチストローク値SCL1が検出され、ステップS107において、MGトルクが所望の値となった時点での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1が演算されると、対応関係にある2つの値をクラッチ学習値とし、CL1トルク-ストロークマップの特性を学習補正する。
【0051】
次に、作用を説明する。実施例1のFRハイブリッド車両のクラッチ制御装置における作用を、「エンジン始動シーンでの駆動系構成要素の状態変遷作用」、「学習許可判定作用」、「第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算手法」、「学習補正制御作用」に分けて説明する。
【0052】
[エンジン始動シーンでの駆動系構成要素の状態変遷作用]
図13は、実施例1のFRハイブリッド車両のクラッチ制御装置において、EVモードからHEVモードへのモード遷移指令が出力された場合の、エンジン始動シーンでのモード選択特性・学習許可フラグ特性・Eng回転特性・MG目標回転特性・MG回転特性・MGトルク特性・変速段特性・CL1ストローク特性(CL1トルク特性)・CL2トルク特性・CL2差回転特性の一例を示すタイムチャートである。
図13において、t1はエンジン始動指令が出された時点を示し、t2はMGトルク立ち上がりポイントを示し、t3はEng回転立ち上がりポイントを示し、t4はEng回転一定値ポイント(火入れ前)を示し、t5はHEV移行指令が出された時点を示す。以下、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、エンジンEng、モータジェネレータMGの各状態変遷について説明する。
(第1クラッチCL1の状態変遷)
第1クラッチCL1は、時刻t1までの「EVモード」では開放、時刻t1〜t2間は開放(ストローク中)、時刻t2〜t3間は中間容量、時刻t3〜t4間は中間容量、時刻t4〜t5間は中間容量、時刻t5以降は完全締結へ移行し、「HEVモード」で締結される。
(第2クラッチCL2の状態変遷)
第2クラッチCL2は、時刻t1までの「EVモード」では締結、時刻t1〜t2間はスリップ締結、時刻t2〜t3間はスリップ締結、時刻t3〜t4間はスリップ締結、時刻t4〜t5間はスリップ締結、時刻t5以降は締結へ移行し、「HEVモード」で締結される。
(エンジンEngの状態変遷)
エンジンEngは、時刻t1までの「EVモード」では停止、時刻t1〜t2間は停止、時刻t2〜t3間は停止であるが第1クラッチCL1からトルク受け取り中、時刻t3〜t4間はクランキング中、時刻t4〜t5間は運転へ移行、時刻t5以降は「HEVモード」を含めて運転状態とされる。
(モータジェネレータMGの状態変遷)
モータジェネレータMGは、時刻t1までの「EVモード」では目標トルクを得るトルク制御、時刻t1〜t2間は目標回転数を得る回転数制御、時刻t2〜t3間は回転数制御、時刻t3〜t4間は回転数制御、時刻t4〜t5間は回転数制御、時刻t5以降は回転数制御から「HEVモード」での目標トルクを得るトルク制御に移行する。
【0053】
上記のように、走行中に走行モードを「EVモード」から「HEVモード」に切り替えるエンジン始動シーンでは、エンジンEngを停止し第1クラッチCL1を開放している「EVモード」から、過渡期モードとしての「エンジン始動中モード」を経過し、エンジンEngを運転し第1クラッチCL1を締結している「HEVモード」へと切り替えられる。
このエンジン始動シーンでは、「エンジン始動中モード」において、第2クラッチCL2をスリップ締結状態とし、モード切り替えに伴い変動するトルクが駆動輪へ伝達されることでのモード切り替えショックを抑えている。
【0054】
一方、エンジン始動シーンでは、「エンジン始動中モード」において、第1クラッチCL1を開放状態から中間容量を保つ半クラッチ状態とし、モータジェネレータMGをトルク制御から回転数制御に切り替えている。これによって、第1クラッチCL1を介してモータジェネレータMGからトルクを受け取ることでエンジンEngを始動しながら、自動変速機ATの入力軸回転を一定に保つようにしている。つまり、「エンジン始動中モード」においては、モータジェネレータMGのトルクを上昇させつつ、回転数を目標回転数に一致させる回転数制御を行っている。
そして、「EVモード」から「HEVモード」に切り替えるエンジン始動シーンでは、エンジンEngを停止し第1クラッチCL1を開放している「EVモード」から、第1クラッチCL1を中間容量に締結する「エンジン始動中モード」へと移行する。このため、締結時MGトルク値と開放時MGトルク値の差に基づき、中間容量で締結される第1クラッチCL1の第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を演算するのに好適なシーンとなる。
【0055】
[学習許可判定作用]
図12のフローチャートにおいて、ステップS101で学習許可判定が出ない限り、ステップS102に進むことが無い。つまり、図11の学習許可判定ブロック51から学習許可フラグが出ない限り、基準トルク点検出ブロック52にて第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算等が行われることがない。以下、学習許可判定ブロック51での学習許可判定作用について説明する。
【0056】
学習許可判定ブロック51では、「EVモード」から「HEVモード」への走行モード切り替えによるエンジン始動シーン抽出によるモード情報と、エンジン回転数情報と、目標MG回転数情報と、実MG回転数情報と、MGトルク値情報と、変速段情報と、CL2差回転情報を入力する。ここで、モード情報は、統合コントローラ10から得る。エンジン回転数情報は、エンジン回転数センサ12から得る。目標MG回転数情報は、統合コントローラ10からの目標MG回転数指令から得る。実MG回転数情報は、モータ回転数センサ21から得る。MGトルク値情報は、モータジェネレータMGへの印加電流値に基づく演算により得る(モータジェネレータトルク値検出手段)。変速段情報は、ATコントローラ7での変速指令により得る。CL2差回転情報は、モータ回転数センサ21からの変速機入力軸回転数と第2クラッチ出力回転数センサ22からの第2クラッチ出力回転数N2outに基づく演算により得る。
そして、これらの情報に基づいて、エンジン始動指令が出されてから4つの学習許可判定条件が共に成立するか否かが判断される。ここで、4つの学習許可判定条件は、図6に示すように、
(A)エンジン回転数が停止状態で、目標MG回転数と実MG回転数の偏差が、一定時間以上の間、所定の幅範囲内に収まっていること(MG回転数安定条件)。
(B)MGトルク値が一定時間以上の間、所定の幅範囲内に収まっていること(MGトルク安定条件)。
(C)変速段が一定以下のローギア段(例えば、1速段、2速段、3速段)であること(ロー側変速段条件)。
(D)第2クラッチCL2の差回転が、一定時間以上の間、所定の幅範囲内に収まっていること(CL2伝達トルク安定条件)。
である。
【0057】
このように、エンジン始動指令が出された時刻t1から、4つの学習許可判定条件が共に成立し、第2クラッチCL2の伝達トルクが安定していると判断されると、時刻t1から時刻t2までの時間を、「学習許可判定時間」とし、学習許可判定時間の経過時点からエンジンEngへの火入れ前の時刻t4までの間、学習許可フラグを立てられる。
【0058】
[第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算手法]
図12のフローチャートにおいて、ステップS101で学習許可判定が出ると、ステップS102→ステップS103→ステップS104→ステップS105→ステップS106→ステップS107へと進み、ステップS107にて、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算が実行される。つまり、図11の学習許可判定ブロック51から学習許可フラグが出たことで、基準トルク点検出ブロック52にて第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算が行われる。以下、基準トルク点検出ブロック52での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1の演算手法について説明する。
【0059】
まず、時刻t1〜t2までの学習許可判定時間での運動方程式は、
TMG=TCL2+I・ω'MG+FMG…(1)
TMG:MGトルク値、TCL2:第2クラッチトルク推定値、I:変速段毎の回転慣性、ω'MG:モータジェネレータMGの回転角加速度、FMG:モータフリクション
であらわされる。
ここで、モータジェネレータMGの回転変動が一定幅にあるならば、ω'MG=0となり、(I・ω'MG)の項は無視できる。モータフリクションは微小なので(FMG)の項は無視できる。したがって、上記(1)式は、
TMG≒TCL2…(1')
であらわされる。つまり、学習許可判定時間領域では、第2クラッチトルク推定値TCL2を、MGトルク値TMGで代用することができる。
【0060】
次に、MGトルク値が所望の値になる時間領域(時刻t2〜t4)での運動方程式は、
TMG=TCL1+TCL2+I・ω'MG+FMG…(2)
であらわされる。ここで、モータフリクションは微小なので(FMG)の項は無視できる。
したがって、上記(2)式は、
TMG≒TCL1+TCL2+I・ω'MG…(2')
であらわされる。
そして、上記(1')式と(2')式により、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1は、
TCL1≒TMG(締結時MGトルク値)−TMG(開放時MGトルク値)−I・ω'MG…(3)
であらわされる。
【0061】
ここで、TMG(締結時MGトルク値)は、所望のMGトルクであり(図13の(G))、TMG(開放時MGトルク値)は、学習許可判定時間領域でのMGトルク値の平均値である(図13の(I))。また、変速段毎の回転慣性Iは、変速段情報が分かれば既知であり、ω'MGは、図13の(E)に示すように、MGトルク値が所望の値になる前後でのモータジェネレータMGの回転差により演算できる。したがって、第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1は、TMG(締結時MGトルク値)とTMG(開放時MGトルク値)の差に基づく上記(3)式を用いて求めることができる。
【0062】
すなわち、第1クラッチCL1を開放した状態で検出されたTMG(開放時MGトルク値)は、第2クラッチトルク推定値TCL2であり、モータジェネレータMGから駆動輪までの駆動系負荷に相当する値となる。一方、エンジンEngの火入れ前で第1クラッチCL1を締結した状態で検出されたTMG(締結時MGトルク値)は、駆動系負荷に相当する値に、第2クラッチ負荷(=第2クラッチ伝達トルク)を加えた値となる。
したがって、締結時と開放時のMGトルク値の差は、回転慣性力やフリクション等の影響を無視すると、第1クラッチ伝達トルクに相当する値となる。このため、TMG(締結時MGトルク値)とTMG(開放時MGトルク値)の差に基づく上記(3)式を用いることで、精度の良い第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を得ることができる。
そして、TMG(締結時MGトルク値)は、実施例1では、所望の値としているため、特定のトルク点だけでのクラッチ伝達トルクの推定というような推定条件の制約を受けないで、瞬時値にて第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1を求めることができる。
【0063】
[学習補正制御作用]
図12のフローチャートにおいて、ステップS101で学習許可判定が出ると、ステップS102→ステップS103→ステップS104→ステップS105→ステップS106→ステップS107→ステップS108へと進み、ステップS108にて、学習値をCL1トルク-ストロークマップに反映させて学習補正される。
すなわち、ステップS103において、MGトルク値が立ち上がった時点で検出された第1クラッチストローク値SCL1は(図13の(F))、第1クラッチCL1の締結開始点学習値とされ、図11に示すCL1トルク-ストロークマップの締結開始点SSが学習補正される。なお、図11において、CL1トルク-ストロークマップの「FS」は、フルストローク点であり、「0」はストローク原点である。したがって、第1クラッチCL1にて伝達トルクの発生が開始される第1クラッチストローク値SCL1は、部品や組み付けバラツキやクラッチフェーシングの摩耗等の経年劣化により変化する。しかし、伝達トルクの発生が開始される第1クラッチストローク値SCL1の変化に追従する締結開始点SSの学習補正により、確実に伝達トルクの発生が開始されるストローク位置に合わせ込むことができる。
そして、ステップS106において、MGトルクが所望の値となった時点(図13の(G))で第1クラッチストローク値SCL1が検出され(図13の(H))、ステップS107において、MGトルクが所望の値となった時点での第1クラッチ伝達トルク推定値TCL1が演算されると、対応関係にある2つの値がクラッチ学習値とされ、図11に示すように、CL1トルク-ストロークマップの特性が学習補正される。
【0064】
したがって、第1クラッチCL1は、図13に示すように、エンジン始動中モードにおいて、所望の中間容量に固定される。しかし、所望の中間容量を得る第1クラッチストローク値SCL1は、部品や組み付けバラツキやクラッチフェーシングの摩耗等の経年劣化により変化する。これに対し、所望の中間容量を得る第1クラッチストローク値SCL1の変化に追従するCL1トルク-ストロークマップの特性の学習補正により、確実に所望の中間容量を得るストローク位置に合わせ込むことができる。
【0065】
上述したように、EVモードとHEVモードとの間のモード遷移時には、上述の第1クラッチCL1に関する学習補正制御処理が有効である。しかし、ステップS101で示すように、所定の走行モード遷移以外か否かの判断は、WSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移、もしくはMG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移、もしくはEVモードとWSC走行モードとの間の遷移のときは、例え第1クラッチCL1の締結・開放がなされたとしても、適切な学習補正制御処理が困難である。
【0066】
図14はWSC走行モードとMWSC走行モードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。WSC走行モードからMWSC走行モードに遷移するときは、第1クラッチCL1を開放するとともに、モータジェネレータMGの回転数をエンジンアイドル回転数よりも低い回転数に低下させることになる。この場合、回転数制御に伴って、負荷の変動によるトルク変動に加え、回転数変動によるトルク変動が加わり、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。同様に、MWSC走行モードからWSC走行モードに遷移するときも、やはり、回転数変動に伴ってトルク変動が生じ、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。
【0067】
図15はMG/ISCモードとE/ISCモードとの間の遷移におけるモータジェネレータトルクの変化を表すタイムチャートである。この場合もやはり、エンジンEがトルク制御と回転数制御との間で切り換わる際、モータジェネレータMGにトルク変動が生じ、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。
【0068】
また、図示はしないが、EVモードとWSC走行モードとの間の遷移についても、同様に、第1クラッチCL1の締結・開放に伴って、第1クラッチCL1以外の要因でモータジェネレータにトルク変動が生じやすく、このような場合にも、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を適正に判断することが困難である。
よって、これらのモード遷移時には、第1クラッチCL1の学習補正制御を禁止することで、誤学習を防止することができる。
【0069】
以上説明したように、実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)エンジンEと、車両の駆動力を出力すると共にエンジンEの始動を行うモータジェネレータMG(モータ)と、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されエンジンEとモータジェネレータMGとを断接する第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと駆動輪との間に介装されモータジェネレータMGと前記駆動輪とを断接する第2クラッチCL2と、エンジンEと、モータジェネレータMGと、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2との制御状態に基づく複数の走行モードのうち、走行状態に応じた走行モードを選択するモード選択部200(モード選択手段)と、第1クラッチCL1の締結・開放が生じるモード遷移時に第1クラッチCL1の締結状態を学習補正する第1クラッチコントローラ5(学習補正手段)と、を備え、モード選択部200の選択結果に基づいてモード遷移するときであって、かつ、モータジェネレータトルクが変動する場合は、学習補正を禁止するステップS101(学習補正禁止手段)と、を備えた。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0070】
(2)エンジンEが作動状態で、第1クラッチCL1を締結し、第2クラッチCL2をスリップ制御し、モータジェネレータMGを回転数制御するWSC走行モード(エンジン併用モータ走行モード)と、エンジンEが作動状態で、第1クラッチCL1を開放し、第2クラッチCL2をスリップ制御し、モータジェネレータMGを回転数制御するMWSC走行モード(エンジン作動モータ走行モード)と、を有し、ステップS101は、WSC走行モードとWSC走行モードとの間で遷移するときは、学習補正を禁止する。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0071】
(3)車両停止状態で、第1クラッチCL1を開放し、エンジンEにおいて回転数制御するE/ISCモード(エンジン回転数制御モード)と、車両停止状態で、第1クラッチCL1を締結し、エンジンEをトルク制御し、モータジェネレータMGにおいて回転数制御するMG/ISCモード(モータ回転数制御モード)と、を有し、ステップS101は、E/ISCモードとMG/ISCモードとの間で遷移するときは、学習補正を禁止する。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0072】
(4)エンジンEを停止し、第1クラッチCL1を開放し、第2クラッチCL2を締結し、モータジェネレータMGをトルク制御するEVモード(モータ走行モード)と、エンジンEが作動状態で、第1クラッチCL1を締結し、第2クラッチCL2をスリップ制御し、モータジェネレータMGを回転数制御するWSC走行モード(エンジン併用モータ走行モード)と、を有し、ステップS101は、EVモードとWSC走行モードとの間で遷移するときは、学習補正を禁止する。
よって、第1クラッチの締結容量を適正に推定できない場合における誤学習を防止することができ、安定した第1クラッチ締結制御を実現することができる。
【0073】
以上、本発明を実施例1に基づいて説明したが、具体的な構成は他の構成であってもよい。例えば、実施例1では、車両負荷として路面勾配を検出又は推定することとしたが、車両牽引等の有無を検出するようにしてもよいし、車載荷重を検出してもよい。このように車両負荷が大きい場合には車速の上昇が遅く、第2クラッチCL2が発熱しやすいからである。また、実施例1では、FR型のハイブリッド車両について説明したが、FF型のハイブリッド車両であっても構わない。
【符号の説明】
【0074】
E エンジン
CL1 第1クラッチ
MG モータジェネレータ
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
24 ブレーキ油圧センサ
100 目標駆動力演算部
200 モード選択部
300 目標充放電演算部
400 動作点指令部
500 変速制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
車両の駆動力を出力すると共に前記エンジンの始動を行うモータと、
前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンと前記モータとを断接する第1クラッチと、
前記モータと駆動輪との間に介装され前記モータと前記駆動輪とを断接する第2クラッチと、
前記エンジンと、前記モータと、前記第1クラッチと、前記第2クラッチとの制御状態に基づく複数の走行モードのうち、走行状態に応じた走行モードを選択するモード選択手段と、
前記第1クラッチの締結・開放が生じるモード遷移時に前記第1クラッチの締結状態を学習補正する学習補正手段と、
を備え、
前記モード選択手段の選択結果に基づいてモード遷移するときであって、かつ、前記モータトルクが変動する場合は、前記学習補正を禁止する学習補正禁止手段と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジンが作動状態で、前記第1クラッチを締結し、前記第2クラッチをスリップ制御し、前記モータを回転数制御するエンジン併用モータ走行モードと、
前記エンジンが作動状態で、前記第1クラッチを開放し、前記第2クラッチをスリップ制御し、前記モータを回転数制御するエンジン作動モータ走行モードと、
を有し、
前記学習補正禁止手段は、前記エンジン併用モータ走行モードと前記エンジン作動モータ走行モードとの間で遷移するときは、前記学習補正を禁止することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
車両停止状態で、前記第1クラッチを開放し、前記エンジンにおいて回転数制御するエンジン回転数制御モードと、
車両停止状態で、前記第1クラッチを締結し、前記エンジンをトルク制御し、前記モータにおいて回転数制御するモータ回転数制御モードと、
を有し、
前記学習補正禁止手段は、前記エンジン回転数制御モードと前記モータ回転数制御モードとの間で遷移するときは、前記学習補正を禁止することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジンを停止し、前記第1クラッチを開放し、前記第2クラッチを締結し、前記モータをトルク制御するモータ走行モードと、
前記エンジンが作動状態で、前記第1クラッチを締結し、前記第2クラッチをスリップ制御し、前記モータを回転数制御するエンジン併用モータ走行モードと、
を有し、
前記学習補正禁止手段は、前記モータ走行モードと前記エンジン併用モータ走行モードとの間で遷移するときは、前記学習補正を禁止することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、
車両の駆動力を出力すると共に前記エンジンの始動を行うモータと、
前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンと前記モータとを断接する第1クラッチと、
前記モータと駆動輪との間に介装され前記モータと前記駆動輪とを断接する第2クラッチと、
前記エンジンと、前記モータと、前記第1クラッチと、前記第2クラッチとの制御状態に基づく複数の走行モードのうち、走行状態に応じた走行モードを選択するモード選択手段と、
前記第1クラッチの締結・開放が生じるモード遷移時に前記第1クラッチの締結状態を学習補正する学習補正手段と、
を備え、
前記モード選択手段の選択結果に基づいてモード遷移するときであって、かつ、前記モータトルクが変動する場合は、前記学習補正を禁止する学習補正禁止手段と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジンが作動状態で、前記第1クラッチを締結し、前記第2クラッチをスリップ制御し、前記モータを回転数制御するエンジン併用モータ走行モードと、
前記エンジンが作動状態で、前記第1クラッチを開放し、前記第2クラッチをスリップ制御し、前記モータを回転数制御するエンジン作動モータ走行モードと、
を有し、
前記学習補正禁止手段は、前記エンジン併用モータ走行モードと前記エンジン作動モータ走行モードとの間で遷移するときは、前記学習補正を禁止することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
車両停止状態で、前記第1クラッチを開放し、前記エンジンにおいて回転数制御するエンジン回転数制御モードと、
車両停止状態で、前記第1クラッチを締結し、前記エンジンをトルク制御し、前記モータにおいて回転数制御するモータ回転数制御モードと、
を有し、
前記学習補正禁止手段は、前記エンジン回転数制御モードと前記モータ回転数制御モードとの間で遷移するときは、前記学習補正を禁止することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジンを停止し、前記第1クラッチを開放し、前記第2クラッチを締結し、前記モータをトルク制御するモータ走行モードと、
前記エンジンが作動状態で、前記第1クラッチを締結し、前記第2クラッチをスリップ制御し、前記モータを回転数制御するエンジン併用モータ走行モードと、
を有し、
前記学習補正禁止手段は、前記モータ走行モードと前記エンジン併用モータ走行モードとの間で遷移するときは、前記学習補正を禁止することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−86722(P2012−86722A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236366(P2010−236366)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]