説明

ビームを用いた表面状態測定方法

【課題】測定値からノイズの影響を除去する。
【解決手段】測定対象物上に複数の測定点P1〜PNを設定し、測定点P1〜PNの並ぶ方向に沿って振動させながら測定ビームを照射する。測定ビームの振幅Wの範囲にM個の測定点P4〜P8が含まれているとすると、M個の測定点P4〜P8から得られる2M個の測定値f1〜f2Mから、下記(7a)(7b)式、


に従って、フーリエ係数b1(振幅が測定ビーム径の1/2の場合)、又はb2(振幅が測定ビーム径と等しい場合)を求め各測定点のフーリエ係数b1又はb2の推移を求め、微小領域の分析を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームや電子ビーム等のビームを用いた表面状態測定方法に関し、特に、測定対象物表面の微小なダストや、構成材料の微小な変化等の表面状態を測定するのに適した表面状態測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビームスキャニング方式で測定対象物の表面状態を測定・観察する装置の一例として、半導体ウェハ等の測定対象物表面に付着した微細なダストを検出するダストモニター装置や、測定対象物表面の構成物質変化等を測定するオージェ電子分光分析装置がある。
ダストモニター装置では、ウェハ等の半導体基板が測定対象物となり、その表面に光ビームを照射し、返光される散乱光の光強度を検出しており、測定対象物表面に照射された測定光の照射スポットの位置をゆっくり移動させ、検出される散乱光の光強度変化から、付着したダスト数を計数したり、検出されたダストの粒径を求めている。
他方、オージェ電子分光分析装置では、測定対象物表面に電子ビームを照射し、放出されたオージェ電子のエネルギー値を検出しており、電子ビームの照射スポットをゆっくり移動させたとき、検出されるオージェ電子のエネルギー値の変化量から、測定対象物の組成変化や化学結合状態の変化を求めている。
【0003】
ところが、近年では半導体装置等の微細化が進んでおり、測定対象物表面の一層微細な状態を測定できる技術が求められている。例えばダストモニター装置の場合では、半導体装置の生産現場において、ウェハ表面に付着した粒径0.1μm以下の微小なダストの検出が求められている。また、オージェ電子分光分析装置の場合でも、超格子層の断面観察等、数原子程度の幅の検出感度が求められている。
【0004】
かかる場合、光ビームや電子ビームを小径化することが考えられるが、ビームの小径化は困難である。更に、ビームを小径化したとしても、微小なダストや、極めて薄い超格子層の元素(微量元素)に関する信号は微小であり、検出が極めて困難である。
検出感度を上げたとしても、ウェハ表面の荒さ等に起因する散乱光や迷光によるノイズも増大し、また、薄い超格子層に隣接する厚い超格子層の元素(メイン元素)から混入するノイズも増大するため、結局、有用な信号は、バックグラウンドノイズに埋もれてしまい、検出することができない。例えば、従来技術のダストモニター装置では、分解能0.1μm〜0.08μm程度が限界であり、それより微小なダストの存在は検出できない。
【0005】
上記問題点を解決するため、従来技術では、測定対象物上を測定ビームでスキャニングし、返光光の状態からウェハ表面のダストを検出する際に、測定ビーム照射位置をその進行方向と平行な方向に微小振動させ、微小振動の周波数の二倍(振動距離が測定ビーム直径と等しい場合)、又は一倍(振動距離が測定ビーム直径の半分)の周波数の信号の有無によって、ダストの有無を判断している(ビーム振動方式)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−132960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら近年では、半導体デバイスや液晶表示装置等のパターンが微細化し、非常に小さなダストを精度よく検出する技術が求められているが、電源ノイズ等の影響により、同期検波回路では、振動周波数の一倍又は二倍の周波数の信号成分を精度よく抽出することができず、検出感度を向上させることが困難になっている。
本発明は上述の従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、ビーム振動方式の測定装置の検出感度を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先ず、ビーム振動方式の測定装置の原理を説明する。
一般に、測定ビームの直径に比べて微小なダストや超格子構造にビームを照射した場合、返光される散乱光強度や放出されるオージェ電子強度は、照射されるビームの強度に比例して変化する。
また、光ビームや電子ビーム等の測定ビームの断面強度分布はガウス分布に従い、中心では強く、周辺では弱くなっている。
【0009】
そのような測定ビームの照射スポットが一定方向に移動しながら、その方向と平行に小さく振動移動し、振幅に比べて微小なダストや超格子構造等の微細構造物に測定ビームが照射されると、散乱光やオージェ電子強度等の微細構造物に測定ビームが照射されたことによって検出される物理量には、振幅がビーム径の1/2の場合は、振動移動の周波数の一倍の周波数の変化成分が含まれ、振幅がビーム径と同じ場合は、振動移動の周波数の二倍の周波数の変化成分が含まれる。
照射スポットの微小振動の移動範囲は非常に狭いので、バックグラウンドノイズの原因となるウエハー上の微小な凹凸の状態は、照射スポットが同一範囲内を微小振動している間は変化がなく、直流成分と見なすことができる。
【0010】
従って、振幅が測定ビーム径の1/2の場合には振動移動の周波数の1倍、振幅が測定ビーム径と同じ場合には振動移動の周波数の2倍の成分を抽出すれば、微細構造に測定ビームが照射されたことに起因する物理量を抽出することができる。
【0011】
以上のような表面状態の測定方法において、測定ビームとして光ビームを用い、検出する物理量を返光される散乱光強度とした場合、散乱光強度の変化が抽出すべき変化成分となり、変化成分の有無によってダストの有無が分かる。従って、この場合の測定すべき表面状態は、測定対象物上に存するダストの状態となる。
クリーンルーム内で問題となるダストの直径は、ビーム直径に比べて微小であり、微小なダストに光ビームが照射された場合、返光される散乱光強度とダスト径とは比例することが知られている。
【0012】
従って、予め、照射する光ビームのピーク強度、返光される散乱光強度、及びダスト径との組合せを決定しておき、変化成分の最大値を検出するようにすると、検出したダストの直径も算出することが可能となる。
他方、測定ビームとして電子ビームを用い、検出すべき物理量を測定対象物から放射されるオージェ電子強度とすると、そのオージェ電子の強度変化が抽出すべき変化成分となる。変化成分の状態から、測定対象物表面の組成変化や化学結合状態の変化を測定することが可能となる。
【0013】
上記のように、測定値から、特定の周波数の信号を抽出するためには同期検波回路が用いられていたが、電源ノイズ等の影響を受ける。
【0014】
本発明の発明者等は、同期検波回路やフィルタに替え、離散フーリエ変換を行なうと電源ノイズ等の影響を効果的に除去できることを見出した。
連続関数f(t)のフーリエ級数は、下記(1)式、
【0015】
【数1】

【0016】
で表わせる。(1)式中、a0,an,bnはフーリエ係数と呼ばれており、それぞれ下記(2)〜(4)式で表わされる。
【0017】
【数2】

【0018】
測定値は離散的であり、測定点が2M個の離散フーリエ変換の場合にはフーリエ係数は、下記(2a)〜(4a)式のように書き換えられる。fjは2M個(j=1〜2M)の測定値である。
【0019】
【数3】

【0020】
但し、ω0、Δtの内容は下記(5)、(6)式の通りである。
【0021】
【数4】

【0022】
測定値から振動移動の周波数と同じ周波数の変化成分を抽出するためにはk=1として下記係数a1又は係数b1
【0023】
【数5】

【0024】
のうちの少なくとも一方を求めればよく、各測定点の求めた係数a1又はb1を比較すれば、その周波数の変化成分の推移が分かる。また、振動移動の周波数の二倍の周波数の変化成分を抽出するためには、k=2として係数a2,b2
【0025】
【数6】

【0026】
のうちの少なくとも一方を求めればよい。
予め第一の閾値を設定しておき、フーリエ係数が第一の閾値を超える測定点を検出し、その測定点をダスト付着位置とするダスト測定方法等では、2・Δt/Tは定数であるから、三角関数(fjsin(jω0))の値に乗算しなくても、係数a2、b2と第一の閾値との比較はできる。
また、予め第二の閾値を設定しておき、隣接する測定点間の前記フーリエ係数の差を算出し、差の値が第二の閾値を超える測定点を検出し、その測定点を出すと付着位置とするダスト測定方法などの場合も、2・Δt/Tを乗算しなくても測定点間の差と第二の閾値との比較も行なうことができる。
【0027】
本発明は、上記原理に基づいて創作されたものであり、測定ビームの照射スポットを、測定対象物上に並ぶ複数の測定点を通るように、前記測定点が並ぶ方向に沿って通過移動させ、検出された物理量から前記測定対象物の表面状態を分析する表面状態測定方法であって、前記通過移動の際に、前記照射スポットを前記測定点が並ぶ方向に沿って振動移動させ、前記物理量のフーリエ係数から、前記測定対象物の表面状態を分析する表面状態測定方法である。
また、本発明は、前記各測定点を中心とする前記振動を1.5回以上行ない、前記各測定点毎に、前記フーリエ係数の平均値を求める表面状態測定方法である。
また、本発明は、予め第一の閾値を設定しておき、前記フーリエ係数が前記第一の閾値を超える前記測定点を検出する表面状態測定方法である。
また、本発明は、予め第二の閾値を設定しておき、隣接する前記測定点間の前記フーリエ係数の差を算出し、前記差の値が前記第二の閾値を超える前記測定点を検出する表面状態測定方法である。
また、本発明は、円形基板上の前記測定点は、渦巻き状に配置する表面状態測定方法である。
【発明の効果】
【0028】
ノイズの影響が除去され、測定対象物の表面状態の検出感度が向上する。
同期検波回路が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の測定装置の概要を示す図
【図2】(a):照射スポットの振動移動と直線移動とダストの関係を示す図 (b):測定ビームの走査状態を説明するための図
【図3】測定点と振動移動の関係を説明するための図面
【図4】本発明がオージェ電子を測定するオージェ分光分析の場合の動作原理を説明するための図面
【図5】測定点が行列状に並べられた場合を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1の符号1は、本発明の一実施形態の測定装置である。
この測定装置1は、半導体ウエハー等の測定対象物10表面に付着した極めて微小なダストの状態を検出するダストモニタであり、載置台8と、走査機構6と照射手段2を有している。走査機構6は載置台8を水平面内で回転移動させながら水平方向にゆっくり直線移動させるように構成されている。
測定対象物10は、載置台8上に水平に吸着されており、載置台8が回転及び直線移動をすると、載置台8と一緒に回転及び直線的にスキャニング移動する。
【0031】
照射手段2は、レーザの測定ビーム11を照射するレーザ光源16と、レーザ光源16から照射された測定ビーム11を、載置台8方向に反射する振動ミラー17とを有している。
照射手段2からは、振動ミラー17で反射された測定ビーム12が射出され、載置台8上の測定対象物10の表面に照射される。測定ビーム12のビーム径(ビーム径は照射スポット径と同じ大きさである)は、0.1mm〜1mm程度の円形である。
【0032】
振動ミラー17のレーザ光源16に対する角度は振動しており、測定対象物10上の照射スポットは、振動の中心点を中心として、一定周波数で繰り返し微小に振動するように構成されている。
振動の方向は、振動の中心点の回転の接線方向であり、微小な振動の範囲では回転移動は直線移動と見なせるから、振動方向は、近似的な直線移動の方向と平行である。
【0033】
図2(a)は、測定ビーム12の照射スポットの振動移動と近似的な直線移動を説明するための図面である。同図符号511、513は振動移動の両端に位置する照射スポットであり、符号512は、その中央に位置する照射スポットを示している。また、符号55は、振動移動の中心点である。
測定対象物10は、スキャニング移動により、回転移動しながら、回転の中心点がビーム振動の中心点を通るように直線的に移動する。従って、振動の中心位置は、図2(b)に示すように、測定対象物10の表面上で渦巻き状に外側から中心方向(又は中心から外側)に向かって移動する。
測定対象物10は、1回転する間にビーム直径(ビームスポットの直径)分だけスキャニング移動するものとすると、振動の中心点が、測定対象物10の回転中心から外周に向け、又は外周から回転中心に向けて移動すると、測定対象物10がその半径距離だけスキャニング移動する間に、測定対象物10は測定ビーム12によって隈無く走査されることになる。
【0034】
測定ビーム12がレーザ光の場合、測定対象物10に測定ビーム12が照射されると反射光13と散乱光19とが発生する。
反射光13の射出方向は、入射角と等しい角度であって逆方向であり、散乱光19の射出方向は、それ以外の方向である。
この測定装置1では、レンズ14と、スリット22と、フォトダイオード等からなる光電変換部24とが、反射光13が入射しない位置に設けられており、レンズ14が散乱光19だけを集光し、スリット22によって迷光が除去された状態で、光電変換部24に入射するようになっている。
測定対象物10が回転した角度と、スキャニング移動した距離は分かるから、測定ビームの照射スポットの測定対象物10上の位置は算出することができる。
この測定装置1では、照射スポットの渦巻き状の移動経路の上に複数個の測定点が等間隔に設定されており、振動の中心点が各測定点に位置したときの散乱光19の光強度が測定されるようになっている。
【0035】
図3の符合P1〜PNは、照射スポットの移動経路に沿って測定対象物10上に並んだ測定点中のN個の測定点を示している。測定点は、渦巻き状に配置されていても、微小距離の範囲内では直線状に並んでいると近似できる。
測定ビーム12の照射スポットは、振動ミラー17の振動によって振動しながら、測定対象物10の回転によって、図面左方から右方に向けて測定点P1〜PN上を近似的に直線移動すると、照射スポットは、直線移動と振動移動を合成した移動になる。
測定点の間隔は、照射スポットの振動の中心が、上記いずれかの測定点を中心にしているとき、振幅の範囲に予め設定されたサンプル個数Mの測定点が含まれるように設定されている(振動中心の測定点の両側(照射スポットの直線移動の移動元側と移動先側の両方)には、それぞれ(M−1)/2個の測定点が含まれている)。
【0036】
図3中、符合59は、測定点P6を中心として、振幅Wの範囲に5個の測定点P4〜P8が含まれる一振動の測定スポットの軌跡を模式的に示しており、照射スポットが一振動する間には、振動の範囲に含まれる測定点P4〜P8には、一振動で二回ずつ測定ビームが照射されるから、振幅の範囲にM個の測定点が含まれていれば、2×M個の測定値f1〜f2×Mが得られる。
照射スポットの直径は測定ビーム12の直径とほぼ等しく、一般に0.1mm〜1mm程度であるのに対し、現在のクリーンルームでは清浄度が向上しているため、検出すべきダスト径は0.1μm以下となっている。
照射スポットの振動速度は、近似的な直線移動の速度に比べて十分に速く設定されており、照射スポットが一測定点を通過する間に、複数回振動するように設定されおり、振動の回数をRとすると、一測定点を中心とした2M個の測定値の組がR組得られるようになっている。
【0037】
光電変換部24は、入射した散乱光19の光強度に応じた信号を、測定値としてデータ処理系15に出力しており、データ処理系15は、入力された測定値と、回転角度やスキャン移動の距離から求めた位置情報とから、照射スポットが測定点P4〜P8上に位置するときの測定値を抽出し、測定された位置と対応付けて記憶する。
そして、一測定点当たり、2M×R個の測定値から、各式に従って、フーリエ係数a1又はb1の少なくとも一方を求めることにより、各測定点で測定された物理量の平均値の推移の一次微分量が求められ、a2、b2の少なくとも一方から、平均値の推移の二次微分量が求められる。
フーリエ係数b1又はb2は、測定値中の振動周波数と同じ周波数(b1の場合)又は振動周波数の二倍の周波数(b2の場合)の変化成分の強度を示しており、一測定点当たり複数回の振動によって平均値が求められているので、ノイズの影響が除去されている。
【0038】
データ処理系15には、予め第一の閾値が記憶されており、算出されたフーリエ係数b1又はb2の平均値が第一の閾値を超える測定点が特定されると、その測定点にダストが付着していると判断される。
データ処理系15には、第二の閾値を記憶させておき、隣接する測定点間のフーリエ係数b1又はb2の平均値の差の絶対値が、第二の閾値を超えたときに、その測定点(測定した順番が遅い方)にダストが付着していると判断してもよい。
ダストの付着が特定された測定点の位置は、表示装置30によって表示される。
【0039】
なお、測定ビーム12のビーク強度をI、光電変換部24に入射した散乱光19の最大強度をImax、ダスト径をdとした場合、ビームの波長λに対し、ダスト径dが十分小さい場合、次式、
【0040】
max ∝d6・I
【0041】
が成立するから、測定値から、ダスト50の径を求めることもできる。
【0042】
以上説明したように、本発明の測定装置1では、ダスト50から返光される散乱光19の離散フーリエ変換から、振動の振幅に応じた周波数の変化成分が抽出されており、検出感度が高くなっている。
なお、上記実施例では、測定対象物を回転させながら直線的にスキャニング移動させたが、測定ビーム12を測定対象物10上で渦巻き状にスキャンする方式としては、測定対象物10を回転移動させ、測定ビーム12の照射スポットを往復移動させながら、一方向にゆっくり直線移動させてもよい。
【0043】
なお、振動ミラー17に替え、回転するポリゴンミラーを用い、測定対象物10表面で光ビームの照射スポットを微小に移動させることもできる。この場合、照射スポットの微小移動は、往復移動でなはく、往動又は復動のいずれか一方になる。
また、音響光学的光変調器(AOM)を用い、電気的に照射スポットを振動移動させることもできる。
【0044】
次に、本発明の測定方法を、オージェ電子分光分析装置により、超格子層の構成成分の分析を行う場合について説明する。
図4において、符号67は、電子ビームからなる測定ビームであり、符号69は測定ビーム67が測定対象物60に照射され、その表面から飛び出してきたオージェ電子である。符号Aと符号Bは、それぞれ異なる物質から成る超格子の構成層であり、測定ビーム67の径より十分に薄い層であり、B層はA層に比べて十分に厚い層であるものとする。
測定ビーム67の照射スポットを、測定対象物60上でゆっくり移動させた場合、ごく薄いA層からのオージェ電子の信号は僅かであり、A層の両脇に位置する厚いB層からの信号に埋没し、A層の信号を抽出することは困難である。
【0045】
本発明では、上述の検出方法を適用して、電子ビームからなる測定ビーム67を、A層とB層を横断する方向に、ゆっくり直線移動させると共に、直線移動よりも高速に、微小に振動移動させ、(4a)式からフーリエ係数b1又はb2の値、又はその平均値を求めると、薄いA層の構成成分を高感度で分析することが可能である。
更にまた、本発明は測定対象物を回転させて測定する場合に限定されるものではない。例えば、ガラス基板のように測定対象物が大型基板の場合には、測定対象物を測定台上に載置しておき、測定対象物上に行列状に位置する測定点上に、電子ビームを照射することができる。
【0046】
図5の符号60は、そのような矩形の測定対象物であり、行方向をx、列方向をy(x、yは自然数)で表わすと、測定対象物表面の行列状の位置に測定点Qx,yが設定されている。
このように測定点Qx,yが行列状に配置されている場合、行方向を走査するか、列方向を走査するか決めておき、行方向を走査する場合、一行の一端から他端まで、行方向に沿って照射スポット位置を振動移動させながら、一端から他端まで照射スポットを直線的に通過移動させ、照射スポットが測定点Qx,y上に位置するときに測定される物理量のフーリエ級数を求める。
一行中の各測定点Qx,yを中心に複数回振動させ、各測定点Qx,y毎に平均値を算出し、未測定の隣接する一行の測定を行ない、行列状の測定点Qx,yの測定を行なうことができる。
【0047】
列方向を走査する場合も、一列の一端から他端まで列方向に沿って振動移動させながら、一端から他端まで照射スポットを直線的に通過移動させ、照射スポットが測定点Qx,y上に位置するときに測定される物理量のフーリエ級数を求める。
なお、照射スポットを行方向に沿って直線移動させる際の行の端部付近に位置する測定点Qx,yは、振動移動の中心に置けないので、各測定点Qx,y毎に求めた測定結果から除外することができる。
【符号の説明】
【0048】
1……測定装置
2……照射手段
6……走査機構
10……測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ビームの照射スポットを、測定対象物上に並ぶ複数の測定点を通るように、前記測定点が並ぶ方向に沿って通過移動させ、検出された物理量から前記測定対象物の表面状態を分析する表面状態測定方法であって、
前記通過移動の際に、前記照射スポットを前記測定点が並ぶ方向に沿って振動移動させ、前記物理量のフーリエ係数から、前記測定対象物の表面状態を分析する表面状態測定方法。
【請求項2】
前記各測定点を中心とする前記振動を1.5回以上行ない、前記各測定点毎に、前記フーリエ係数の平均値を求める請求項1記載の表面状態測定方法。
【請求項3】
予め第一の閾値を設定しておき、前記フーリエ係数が前記第一の閾値を超える前記測定点を検出する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の表面状態測定方法。
【請求項4】
予め第二の閾値を設定しておき、隣接する前記測定点間の前記フーリエ係数の差を算出し、前記差の値が前記第二の閾値を超える前記測定点を検出する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の表面状態測定方法。
【請求項5】
円形基板上の前記測定点は、渦巻き状に配置する請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の表面状態測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80830(P2011−80830A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232370(P2009−232370)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】