説明

フェニル置換ピロリドン

本発明は、フェニル置換ピロリドンおよびフェニル置換ピロリドン関連化合物に関する。これらの化合物の1つの使用は、ウイルス、例えばHIVの阻止を目的とする。本発明はさらに、これらの化合物の製造方法、これらの化合物の効果の同定方法、ならびにHIV感染およびAIDSのような関連疾患状態を阻止または予防するためのこれらの化合物の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年1月28日に出願された米国仮特許出願第60/648,027号に優先権を主張し、それは全ての目的に関してその全体を参照により本明細書に包含される。
【0002】
発明の分野
本発明は、フェニル置換ピロリドンおよびフェニル置換ピロリドン関連化合物に関する。これらの化合物の1つの使用は、ウイルス、例えばHIVの阻止用である。本発明はさらに、これらの化合物の製造方法、これらの化合物の効果の同定方法、ならびにHIV感染およびAIDSのような関連疾患状態を阻止または予防するためのこれらの化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、世界全体で何百万の人々に感染する。世界中で成人および小児のHIV/AIDS感染者が4千万人に達することが、ほとんどの国で報告されている。2001年には、5百万人が新たにHIVに感染し、HIV/AIDSによって3百万人の成人および小児が死亡した。AIDS感染者の全体の3分の1が、15−24歳である(World Health Organization, 2001)。HIV/AIDS処置剤が存在するが、現在治療法において用いられる該薬剤は、多くの副作用を示し、しばしば薬剤耐性をもたらす長期にわたる処置を必要とし、身体からのウイルスの完全な除去をもたらさない。
【0004】
AIDS疾患は、HIV−1またはHIV−2ウイルスの、それ自体の複雑な生活環後の最終的な結果である。ウイルス生活環は、ウイルス保護膜の表面上の糖タンパク質と、リンパ球細胞上のCD4糖タンパク質との結合を介して、ウイルス自体が宿主であるヒトT−4リンパ球免疫細胞と結合することにより始まる。結合した後、ウイルスは、その糖タンパク被膜を剥がし、宿主細胞の膜内に侵入し、そのRNAを脱殻する。ウイルス酵素である逆転写酵素は、RNAを一本鎖DNAに転写する過程を誘導する。ウイルスRNAは分解され、第二のDNA鎖が作製される。ここで、二本鎖DNAはヒト細胞の遺伝子中に組み込まれ、それらの遺伝子はウイルス複製に用いられる。
【0005】
この時点で、RNAポリメラーゼは、組み込まれたDNAをウイルスRNAに転写する。該ウイルスRNAは、前駆体gag−pol融合ポリタンパク質に翻訳される。その後、ポリタンパク質は、HIVプロテアーゼ酵素によって切断され、成熟ウイルスタンパク質が得られる。故に、HIVプロテアーゼは、該ウイルス粒子の完全な感染能を有するウイルスへの成熟をもたらす切断事象のカスケードの制御に関与する。
【0006】
典型的なヒト免疫系応答である侵入ウイルスを殺す過程は、該ウイルスが免疫系のT細胞に感染してこれを殺すため、困難である。加えて、ウイルス逆転写酵素である新たなウイルス粒子を作製するのに用いられる酵素は、あまり特異的ではなく、ウイルス保護被膜の表面上に絶えず変化した糖タンパク質をもたらす転写ミスを引き起こす。この特異性の欠如は、ある糖タンパク質に対して特異的に作製される抗体が、別のものに対して無益であり得、故に、ウイルスに対抗するために利用可能な抗体の数が減少するため、免疫系の有効性を減ずる。ウイルスは、免疫応答系が弱化している間に複製を続ける。最終的に、HIVは、ほとんどが身体の免疫系から自由な状態であり、日和見感染が、抗ウイルス剤、免疫調節剤、または両方の投与なしで始まるのを可能にし、死に至り得る。
【0007】
抗ウイルス剤の可能性のある標的として同定されている、ウイルス生活環における少なくとも3つの重要な点:(1)T−4リンパ球またはマクロファージ部位へのウイルス粒子の最初の結合、(2)ウイルスRNAのウイルスDNAへの転写(逆転写酵素、RT)、および(3)HIVプロテアーゼによるgag−polタンパク質のプロセシングがある。
【0008】
第二の重要な点である、ウイルスRNAのウイルスDNAへの転写過程におけるウイルスの阻止は、AIDSの処置に用いられる多くの現在の治療を提供している。この転写は、ウイルス遺伝子がRNAにコードされ、宿主細胞がDNAのみを読み取るため、ウイルスの複製をもたらすはずである。ウイルスDNAの形成完了から逆転写酵素を阻害する薬剤の導入により、HIV−1複製を停止させ得る。
【0009】
ウイルス複製を干渉する多くの化合物が、AIDSを処置するために開発されている。例えば、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC)、2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、および2’,3’−ジデオキシ−3’−チア−シチジン(3TC)のようなヌクレオシド類似体が、逆転写酵素(RT)段階でのHIV複製の停止に比較的有効であることが示されている。
【0010】
ピロリドンの呼吸器疾患処置のための使用は、当技術分野で公知である。例えば、Keller et al., Chem. Pharm. Bull. 49(8): 1009−1017 (2001);および、Bacher et al., Bioinorg. Med. Chem. Lett. 8: 3229−3234 (1998)を参照のこと。開示したピロリドンのHIVおよび関連疾患の処置のための使用は、これらの参考文献のいずれにも示唆されていない。
【0011】
逆転写酵素阻害剤の現在の成功にもかかわらず、HIV患者が単一の阻害剤に耐性となり得ることが見出されている。故に、HIV感染にさらに対抗するためのさらなる阻害剤の開発が望まれる。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
現在、新規な構造を有するピロリドンが、HIVに対する有効な薬物であることが発見されている。本発明の選択されたピロリドンは、可能性のある逆転写酵素阻害剤である。従って、本発明は、医薬製剤、ならびに予防的および治療的処置、診断および予後診断の方法およびキット、ならびにピロリドンの抗HIV活性を利用する医薬スクリーニング法を提供する。
【0013】
本発明のピロリドンがHIV複製を阻止するため、予防的または治療的のどちらかでのヒトへのピロリドンの投与は、HIV感染の処置である。予防的処置は、とりわけHIV感染の危険性の高いヒトに有用である。本発明は、薬学的に有効量のピロリドンをヒトに投与することにより、該ヒトにおけるHIV複製を阻止する方法を提供する。本発明はまた、1個以上のピロリドンおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を提供する。
【0014】
上記のHIV複製を阻止する方法は、インビトロで培養される細胞にも同様に適用可能である。
【0015】
別の局面において、本発明は、少なくとも1個のピロリドンおよび第二の治療剤または治療剤類を含む組成物を提供する。1つの態様において、第二の治療剤を、HIV感染の予防または処置に用いる。別の態様において、第二の治療剤を、HIV感染と関係する日和見感染の処置に用いる。別の態様において、第二の治療剤は、プロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、抗レトロウイルスヌクレオシド、侵入阻害剤、またはHIV感染の阻止または処置に有効な何らかの他の抗ウイルス剤である。
【0016】
別の局面において、本発明は、ヒトにおけるHIV感染の処置または予防の方法であって、本発明のピロリドンを第二の治療剤(複数可)と併用してヒトに投与することを含む方法を提供する。1つの態様において、第二の治療剤を、HIV感染の予防または処置に用いる。別の態様において、第二の治療剤を、HIV感染と関係する日和見感染の処置に用いる。別の態様において、第二の治療剤は、プロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、抗レトロウイルスヌクレオシド、侵入阻害剤、またはHIV感染の阻止または処置に有効な何らかの他の抗ウイルス剤である。別の態様において、第二の治療剤は、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、インターフェロン、ラミブジン、アデフォビル、ネビラピン、デラビリジン(delaviridine)、ロビリド、サキナビル、インジナビル、およびAZTからなる群から選択される。別の態様において、第二の治療剤は、抗生物質またはアシクロビルである。
【0017】
別の局面において、本発明は、CD4培養においてHIV感染を阻止する方法であって、該細胞を、本発明のピロリドン単独とか、または第二の治療剤もしくは他の治療剤との組み合わせと接触させる段階を含む方法を提供する。1つの態様において、治療剤または治療剤類を、HIV感染の処置または予防に用いる。第二の態様において、治療剤は、プロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、抗レトロウイルスヌクレオシド、侵入阻害剤、およびHIV感染の阻止または処置に有効な何らかの他の抗ウイルス剤からなる群から選択される。第三の態様において、治療剤は、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、インターフェロン、ラミブジン、アデフォビル、ネビラピン、デラビリジン、ロビリド、サキナビル、インジナビル、およびAZTからなる群から選択される。
【0018】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の例示的化合物を示す表である。
【0019】
発明の詳細な説明および好ましい態様
I.
本発明は、新規の、ウイルス感染(例えば、HIV)を予防する方法、ウイルス感染細胞(例えば、HIV感染細胞)を殺す方法、および一般的にウイルス複製(例えば、HIV)を阻止する方法を提供する。本発明は、一部を、本発明のピロリドンが、HIV感染の阻止、HIV感染細胞の死滅、および/または個体におけるHIV感染の予防に有効であるという驚くべき発見に基づく。
【0020】
本発明は、化合物およびそれらの化合物を含む医薬製剤を提供する。さらに、本発明はまた、細胞においてHIVを阻止する方法、細胞において逆転写酵素を阻害する方法、ヒト対象においてHIV感染を処置する方法、および少なくとも1個の本発明の化合物をかかる処置を必要とする患者に投与することによりHIV感染に対する予防を提供する方法を提供する。
【0021】
II.定義
本明細書で用いる“反応性官能基”は、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、サルフェート、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミダート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸塩、エナミン、イナミン、尿素、偽尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびニトロソ化合物を含むが、これらに限定されない群を意味する。反応性官能基にはまた、生体複合体(bioconjugate)、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドなどを製造するのに用いられるものが含まれる。これらの官能基それぞれの製造方法は、当技術分野でよく知られており、特定の目的でのそれらの適用または修飾は、当業者の能力内である(例えば、Sandler and Karo, eds. ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS, Academic Press, San Diego, 1989を参照のこと)。
【0022】
“非共有タンパク質結合基(Non-covalent protein binding group)”は、結合方法において無傷または変性ポリペプチドと相互作用する部分である。該相互作用は、生物学的環境において可逆性または不可逆性のどちらかであり得る。キレート剤または本発明の複合体への“非共有タンパク質結合基”の組み込みは、非共有的方法でポリペプチドと相互作用する能力を有する該薬剤または複合体を提供する。非共有相互作用の例には、疎水性−疎水性相互作用および電子的相互作用が含まれる。“非共有タンパク質結合基”の例には、陰性基、例えば、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホネート、カルボキシレート、ボロネート、サルフェート、スルホン、チオサルフェート、およびチオスルフォネートが含まれる。
【0023】
本明細書で用いる“結合メンバー”とは、少なくとも1個のヘテロ原子を含む共有化学結合を意味する。結合メンバーの例には、−C(O)NH、C(O)O、NH、S、Oなどが含まれる。
【0024】
用語“標的基”とは、(1)それが結合する要素(例えば、造影剤)を積極的に標的領域、例えば腫瘍に誘導し得る部分;または、(2)選択的に受動的に、標的組織、例えば腫瘍内に吸収されるかまたは取り込まれる部分を意味することを意図する。標的基は、非ペプチドおよびペプチドの両方を含むことを意図する小分子であり得る。標的基は、単糖類、レクチン、受容体、受容体に対するリガンド、BSA、抗体、ポリ(エーテル)、デンドリマー、ポリ(アミノ酸)などのようなタンパク質を含むが、それらに限定されない高分子でもあり得る。
【0025】
用語“切断可能な基”とは、キレート(または、キレートリンカーアーム構築物)を複合体の残りの部分に結合する結合を切断することにより複合体の他の部分からのキレートの放出を可能にする部分を意味することを意図する。そのような切断は、自然に化学的に起こるか、または酵素的に仲介される。酵素的に切断可能な基の例には、天然アミノ酸または天然アミノ酸で終わるペプチド配列が含まれる。
【0026】
酵素的に切断可能な部分に加えて、酵素以外の物質の作用により切断される1箇所またはそれ以上が含まれることは、本発明の範囲内である。非酵素的切断物質の例には、酸、塩基、光(例えば、ニトロベンジル誘導体、フェナシル基、ベンゾインエステル)、および熱が含まれるが、これらに限定されない。多くの切断可能な基が、当技術分野で公知である。例えば、Jung et al., Biochem. Biophys. Acta, 761: 152−162 (1983); Joshi et al., J. Biol. Chem., 265: 14518−14525 (1990); Zarling et al., J. Immunol., 124: 913−920 (1980); Bouizar et al., Eur. J. Biochem., 155: 141−147 (1986); Park et al., J. Biol. Chem., 261: 205−210 (1986); Browning et al., J. Immunol., 143: 1859−1867 (1989)を参照のこと。さらに、広範囲の切断可能な、二官能性(ホモ−およびヘテロ−の両方の二官能性)スペーサーアームが、Pierceのような供給者から市販されている。
【0027】
結合として用いられるか、または結合に直角に示される記号
【化1】

は、示された部分が、分子の残りの部分である固体支持体などに結合する点を示す。
【0028】
本発明の任意の化合物は、非溶媒和物形態、ならびに水和物形態を含む溶媒和物形態で存在し得る。一般的に、溶媒和物形態は、非溶媒和物形態と同等であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の任意の化合物は、多数の結晶形態または非結晶形態で存在し得る。一般的に、全ての物理的形態は、本発明で意図される使用に相当し、本発明の範囲内であることが意図される。
【0029】
本発明の任意の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有する;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。
【0030】
本発明の化合物を、単一の異性体(例えば、エナンチオマー、シス−トランス、位置異性体、ジアステレオマー)として、または異性体の混合物として製造することができる。好ましい態様において、該化合物を、実質的に単一の異性体として製造する。実質的に異性体的に純粋な化合物を製造する方法は、当技術分野で公知である。例えば、エナンチオマーに富む混合物および純粋なエナンチオマー化合物を、エナンチオマー的に純粋な合成中間体を用いて、非荷電のキラル中心に立体化学を残すか、その完全な転換をもたらす反応を併用して製造し得る。あるいは、合成経路における最終生成物または中間体を、単一の立体異性体に分離することができる。非荷電の特定の立体中心を変換するかまたはそのままにするための技術、および立体異性体の混合物を分離するための技術は、当技術分野でよく知られており、特定の状況に適当な方法を選択することは、十分に当業者の能力内である。一般的に、Furniss et al. (eds.),VOGEL’S ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY 5TH ED., Longman Scientific and Technical Ltd., Essex, 1991, pp. 809−816;および、Heller, Acc. Chem. Res. 23: 128 (1990)を参照のこと。
【0031】
本発明の化合物はまた、かかる化合物を構築する原子の1個以上において、非天然割合の原子同位体を含み得る。例えば、該化合物を、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)のような放射性同位体を用いて放射標識し得る。放射性または非放射性のどちらかの、本発明の化合物の全ての同位体変形体が、本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0032】
置換基が、左から右へ記載されるそれらの従来の化学構造式により特定されるとき、それらには、同様に、右から左に構造を記載することにより生じ得る化学的に同一の置換基が包含され、例えば、CHOは、−OCHと読むことも意図される。
【0033】
それ自体または別の置換基の一部としての用語“アルキル”は、他にこれと異なる記載がない限り、完全飽和、モノ−またはポリ−不飽和であり得、二価および多価ラジカルを含み得る、示される炭素原子の数を有する(すなわち、C−C10は、1から10個の炭素を意味する)、直鎖もしくは分枝鎖、もしくは環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味する。飽和炭化水素ラジカルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、それらの相同体および異性体、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの基が含まれるが、それらに限定されない。不飽和アルキル基は、1個またはそれ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、および高級相同体および異性体が含まれるが、それらに限定されない。用語“アルキル”はまた、他に異なる記載がない限り、“ヘテロアルキル”のような下記により詳しく定義するアルキルの誘導体を含むことを意味する。炭化水素基に限定されるアルキル基は、“ホモアルキル”と称される。
【0034】
それ自体または別の置換基の一部としての用語“アルキレン”は、例えば−CHCHCHCH−であるが、これに限定されないアルカンに由来する二価ラジカルを意味し、さらに“ヘテロアルキレン”として以下に記載される基が含まれる。典型的に、アルキル(または、アルキレン)基は、1から24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基が本発明において好ましい。“低級アルキル”または“低級アルキレン”は、一般的に、8個以下の炭素原子を有する、より短鎖のアルキル基またはアルキレン基である。
【0035】
用語“アルコキシ”、“アルキルアミノ”および“アルキルチオ”(または、チオアルコキシ)は、それらの従来の意味で用いられ、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子それぞれを介して分子の残りの部分に結合するアルキル基を意味する。
【0036】
用語“ヘテロアルキル”自体または他の用語との組み合わせは、他にこれと異なる記載がない限り、指定された数の炭素原子、およびO、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなる、安定な直鎖もしくは分枝鎖、もしくは環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、ここで、窒素および硫黄原子は、所望により酸化されていてよく、窒素ヘテロ原子は、所望により四級化されていてよい。該ヘテロ原子であるO、N、SおよびSiは、ヘテロアルキル基の何れかの内部の位置に、またはアルキル基が分子の残りの部分に結合される位置に存在し得る。例には、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、および−CH=CH−N(CH)−CHが含まれるが、それらに限定されない。2個までのヘテロ原子は、例えば−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHのように連続的であり得る。同様に、それ自体または別の置換基の一部としての用語“ヘテロアルキレン”は、ヘテロアルキルに由来する二価ラジカルを意味し、例えば、−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−で例示されるが、それらに限定されない。ヘテロアルキレン基に関して、ヘテロ原子はまた、どちらかまたは両方の鎖末端に位置し得る(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン結合基に関して、結合基の方向は、結合基の式が記載される方向によって示されない。例えば、式−C(O)R’は、−C(O)R’および−R’C(O)の両方を意味する。
【0037】
用語“シクロアルキル”および“ヘテロシクロアルキル”自体、または他の用語との組み合わせは、他にこれと異なる記載がない限り、“アルキル”および“ヘテロアルキル”それぞれの環形を意味する。さらに、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、ヘテロ環が、分子の残りの部分に結合する位置に存在し得る。シクロアルキルの例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれるが、それらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例には、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
それ自体または別の置換基の一部としての用語“ハロ”または“ハロゲン”は、他にこれと異なる記載がない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。さらに、“ハロアルキル”のような用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語“ハロ(C−C)アルキル”は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むが、これに限定されないことを意味する。
【0039】
用語“アリール”は、他にこれと異なる記載がない限り、単環、または共に縮合するかもしくは共有結合する多重環(好ましくは、1から3環)であり得る、ポリ不飽和の芳香族性置換基を意味する。用語“ヘテロアリール”は、N、O、およびSから選択される1から4個のヘテロ原子を含むアリール基(または、環)を意味し、ここで、窒素および硫黄原子は、所望により酸化されていてよく、窒素原子は、所望により四級化されていてよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合し得る。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的例には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが含まれる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれについての置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。
【0040】
簡潔には、他の用語と組み合わせて用いる時、用語“アリール”(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)には、上記のアリールおよびヘテロアリール環の両方が含まれる。故に、用語“アリールアルキル”は、アリール基が、その炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子により置換されているアルキル基類(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)に結合するそのラジカルを含むことを意味する。
【0041】
上記の用語(例えば、“アルキル”、“ヘテロアルキル”、“アリール”および“ヘテロアリール”)はそれぞれ、示されたラジカルの置換および非置換形態の両方を含むことを意味する。それぞれのタイプのラジカルに好ましい置換基を、以下に記載する。
【0042】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカル(しばしば、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称される基を含む)についての置換基は、一般的に、“アルキル置換基”と称され、それらは、限定されないが、0から(2m’+1)の範囲の数(ここで、m’は、かかるラジカルにおける炭素原子の総数である。)の、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R'''、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R'''、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R''')=NR''''、−NR−C(NR’R”)=NR'''、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CNおよび−NOから選択される様々な基の1個またはそれ以上であり得る。R’、R”、R'''およびR''''はそれぞれ、好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例えば、1−3個のハロゲンで置換されたアリール、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を意味する。本発明の化合物が、2個以上のR基を含むとき、例えば、R基はそれぞれ、これらの基が2個以上存在するとき、各R’、R”、R'''およびR''''基として、独立して選択される。R’およびR”が、同じ窒素原子に結合するとき、それらは、窒素原子と一体となって5、6、または7員環を形成し得る。例えば、−NR’R”は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味するが、それらに限定されない。置換基についての上記の記載から、当業者は、用語“アルキル”が、水素基以外の、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど)のような基に結合する炭素原子を含む基を意味することを理解し得る。
【0043】
アルキルラジカルについて記載の置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基についての置換基は、一般的に、“アリール置換基”と称される。置換基は、0から芳香環系の置換され得る位置(open valence)の総数の範囲の数の、例えば、ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R'''、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R'''、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R''')=NR''''、−NR−C(NR’R”)=NR'''、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CNおよび−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C−C)アルコキシ、およびフルオロ(C−C)アルキルから選択され;ここで、R’、R”、R'''およびR''''は、好ましくは、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、および置換もしくは非置換ヘテロアリールから独立して選択される。本発明の化合物が、2個以上のR基を含むとき、例えば、R基はそれぞれ、これらの基が2個以上存在するとき、各R’、R”、R'''およびR''''基として、独立して選択される。
【0044】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の2個の置換基は、所望により式−T−C(O)−(CRR’)−U−(ここで、TおよびUは、独立して−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、qは、0から3の整数である。)の置換基で置換されていてよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の2個の置換基は、所望により式−A−(CH−B−(ここで、AおよびBは、独立して、−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−、または単結合であり、rは、1から4の整数である。)の置換基で置換されていてよい。そのように形成される新しい環の単結合の1つは、所望により二重結合で置換されていてよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の2個の置換基は、式−(CRR’)−X−(CR”R''')−(ここで、sおよびdは、独立して、0から3の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−S(O)NR’−の置換基で置換されていてよい。置換基R、R’、R”およびR'''は、好ましくは、水素、または置換もしくは非置換(C−C)アルキルから独立して選択される。
【0045】
本明細書で用いる用語“ヘテロ原子”は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびシリコン(Si)を含むことを意味する。
【0046】
本明細書で用いる“保護基”は、特定の反応条件下で実質的に安定であるが、異なる反応条件下で基質から切断される基質の一部を意味する。保護基を、それが、本発明の化合物の芳香環成分の直接的酸化に関与するように選択することもできる。有用な保護基の例は、例えば、Greene et al., PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照のこと。
【0047】
本明細書中、“HIV感染と関係する障害”または“HIV感染と関係する疾患”は、HIV感染を特徴とする疾患段階を意味する。そのようなHIV感染と関係する障害には、AIDS;カポジ肉腫;ニューモシスチス・カリニおよび結核菌により引き起こされるような日和見感染症;鵞口瘡、毛状白板症、およびアフター性潰瘍を含む口腔病変;全身性リンパ節筋腫脹;帯状疱疹;血小板減少症;無菌性髄膜炎;トキソプラズマ症、クリプトコッカス症、CMV感染症、原発性CNSリンパ腫、およびHIV関連認知症のような神経系の疾患;末梢神経障害、発作;ならびに、筋疾患が含まれるが、それらに限定されない。
【0048】
本明細書で用いる“HIV逆転写酵素阻害剤”は、HIV逆転写酵素(RT)のヌクレオシドおよび非ヌクレオシド阻害剤の両方を意味することを意図する。ヌクレオシドRT阻害剤の例には、AZT、ddC、ddI、d4T、および3TCが含まれるが、それらに限定されない。非ヌクレオシドRT阻害剤の例には、デラビルジン(Pharmacia and Upjohn、U90152S)、エファビレンツ(DuPont)、ネビラピン(Boehringer Ingelheim)、Ro18,893(Roche)、トロビルジン(Lilly)、MKC−442(Triangle)、HBY 097(Hoechst)、ACT(Korean Research Institute)、UC−781(Rega Institute)、UC−782(Rega Institute)、RD4−2025(Tosoh Co. Ltd.)、およびMEN 10979(Menarini Farmaceutici)が含まれるが、それらに限定されない。
【0049】
本明細書で用いる“HIVプロテアーゼ阻害剤”は、HIVプロテアーゼを阻害する化合物を意味することを意図する。例には、サキナビル(Roche、Ro31−8959)、リトナビル(Abbott、ABT−538)、インジナビル(Merck、MK−639)、アンプレナビル(Vertex/Glaxo Wellcome)、ネルフィナビル(Agouron、AG−1343)、パリナビル(Boehringer Ingelheim)、BMS−232623(Bristol-Myers Squibb)、GS3333(Gilead Sciences)、KNI−413(Japan Energy)、KNI−272(Japan Energy)、LG−71350(LG Chemical)、CGP−61755(Ciba-Geigy)、PD173606(Parke Davis)、PD177298(Parke Davis)、PD178390(Parke Davis)、PD178392(Parke Davis)、U−140690(Pharmacia and Upjohn)、およびABT−378が含まれるが、それらに限定されない。さらなる例には、WO93/07128、WO94/19329、WO94/22840、およびPCT出願番号US96/03426にて開示されるサイクリックプロテアーゼ阻害剤が含まれる。
【0050】
本明細書中、“治療的有効用量”とは、それが投与されるとき効果を生じる用量を意味する。正確な用量は、処置の目的に依存して変化してよく、公知の技術を用いて当業者により確認され得る(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);および、Pickar, Dosage Calculations (1999)を参照のこと)。
【0051】
III.化合物
第一の局面において、本発明は、ピロリドンおよび関連化合物を提供する。本発明の例示的化合物は、式:
【化2】

[式中、Aは、置換もしくは非置換アリール、および置換もしくは非置換ヘテロアリールから選択される環系を示す。記号Rは、置換もしくは非置換アリール、および置換もしくは非置換ヘテロアリールを示す。Xは、置換もしくは非置換炭素、または置換もしくは非置換窒素である。]
で示される。
【0052】
本発明の他の例示的化合物は、式:
【化3】


[式中、記号mおよびnは、0、1および2から独立して選択される整数を示す。Xは、実質的に上記の通りである。
【0053】
記号R、R、R、R、RおよびRは、H、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、または上記に定義の別の“アルキル置換基”から独立して選択されるメンバーを示す。記号Rは、置換もしくは非置換アリール、および置換もしくは非置換ヘテロアリールを示す。]
で示される。
【0054】
第二の局面において、本発明は、式I:
【化4】

[式中、記号RおよびYは、独立して、H、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換ヘテロアリールを示す。記号Rは、置換もしくは非置換アリール、および置換もしくは非置換ヘテロアリールを示す。]
で示される化合物を提供する。
【0055】
第三の局面において、本発明は、式II:
【化5】

[式中、RおよびRは、独立して、H、CN、ハロゲン、置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換C−CアルケニルおよびORから選択され得る。Rは、置換もしくは非置換C−CアルキルおよびC−Cハロアルキルであり得る。RおよびRは、H、ハロゲン、CN、および置換もしくは非置換C−Cアルキルから独立して選択され得る。Rは、H、CN、およびアルキルであり得る。Rは、縮合フェニルヘテロ環式環系、および下記:
【化6】

〔式中、RおよびR11は、H、置換もしくは非置換C−Cアルキル、ハロゲン、CN、C(O)NR1212、NR1212およびOR12から独立して選択され得る。R12は、H、置換もしくは非置換C−Cアルキルであり得る。R10は、H、CN、NR1314、SONHR13、NHSO13、SONH(CHOR13、SONH(CHNR1314、O(CHSONHR13、O(CHNR1314、O(CHSO15、SO15、SO(CHNR1314およびC(O)NR1314であり得る。R13およびR14は、Hおよび置換もしくは非置換C−Cアルキルであり得る。さらに、R13およびR14は、それらが結合する窒素と一体となって、所望により結合してヘテロ環式環を形成し得る。R15は、置換もしくは非置換C−Cアルキルであり得る。記号nは、1から8の整数であり得る。この態様において、R、R10およびR11から選択される少なくとも1個のメンバーは、H以外であり得る。〕であり得る。Rは、ハロゲン、C−Cアルキル、C−CアルケニルおよびC−Cアルキニルであり得る。]
で示される化合物を提供する。
【0056】
別の選択された態様において、Rは、縮合フェニルヘテロ環式環系である。この縮合フェニルヘテロ環式環系は、
【化7】

であり得る。ここで、R16は、H、C(O)NR1819、C(O)NR18(CHNR1819、C(O)NR18(CHOR18、C(O)NR18CH(CHOR18、C(O)NR18(CHC(O)NR1819、(CHSONR1819、S(O)20であり得る。R18およびR19は、H、および置換もしくは非置換C−Cアルキルから独立して選択され得る。さらに、R18およびR19は、それらが両方とも結合する窒素原子と一体となって、置換もしくは非置換ヘテロ環式環を形成し得る。記号nは、1から8の整数であり得る。R20は、置換もしくは非置換C−Cアルキル、および置換もしくは非置換フェニルであり得る。R17は、H、NH、(CHOH、C(O)NR2122、SO23、NHSO23、NHCOR23であり得る。R21およびR22は、H、置換もしくは非置換C−Cアルキル、および置換もしくは非置換フェニルから独立して選択され得る。さらに、R21およびR22は、それらが結合する窒素と一体となって、所望により結合して環を形成し得る。R23は、置換もしくは非置換C−Cアルキルであり得る。記号mは、1から5の整数であり得る。
【0057】
さらに別の選択された態様において、RおよびRは、水素、ハロゲン、CN、メチル、メトキシ、ビニルおよびトリフルオロメトキシから独立して選択され得る。
【0058】
さらに別の選択された態様において、Rは、
【化8】

であり得る。
【0059】
別の選択された態様において、R16は、C(O)NR1819およびS(O)20から選択されたメンバーであり得る。別の選択された態様において、R18およびR19は、Hであり得る。別の選択された態様において、R20は、CHであり得る。別の選択された態様において、R17は、NHである。別の選択された態様において、Rは、
【化9】

[式中、Rは、NHおよびC(O)NHから選択されるメンバーであり得る。R10は、C(O)NH、NHSOCHおよびSONHから選択されるメンバーであり得る。]
であり得る。
【0060】
別の例示的態様において、本発明の化合物は、下記:
【化10】

のうち1つから選択される式を有し得る。
【0061】
別の例示的態様において、置換基の少なくとも1つは、親化合物の水溶性を増加する部分である。化合物の水溶性を増すために用いる部分の例には、約60ダルトンから約10,000ダルトン、より好ましくは約100ダルトンから約1,000ダルトンの分子量を有する、エーテルおよびポリエーテル、例えば、エチレングリコール、およびエチレングリコールオリゴマーから選択されるメンバーが含まれる。
【0062】
代表的なポリエーテルベースの置換基には、下記の構造式:
【化11】

[式中、bは、好ましくは1から100(100を含む。)までの数である。]
で示されるものが含まれるが、これらに限定されない。他の官能性ポリエーテルは、当業者に公知であり、多くは、例えばShearwater Polymers, Inc. (Alabama)から市販されている。
【0063】
別の例示的態様において、R−Rのうち少なくとも1つは、別の分子または表面に化合物を結合するための反応性官能基を含むリンカー部分である。本発明の化合物に用いるリンカーにはまた、切断可能な基も含まれ得る。例示的態様において、切断可能な基は、ピロリドンコアと標的化物質または高分子骨格との間に介在する。代表的な有用な反応基を、下記により詳しく開示する。有用な反応基のさらなる情報は、当業者に公知である。例えば、Hermanson, BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press, San Diego, 1996を参照のこと。
【0064】
III.a)化合物の特定の部分
本節において、反応性官能基、標的化物質、高分子複合体、多糖類、デンドリマー−ベースの物質、およびポリ(エチレングリコール)−ベースの物質のような、本発明の化合物上の任意の部分に焦点を当てる。本節において、これらの部分を本発明の化合物に結合する方法を記載する。これらの方法において、本発明の化合物を前記の部分と反応させ、本発明の“複合体”を形成する。これらの“複合体”には、本明細書および特許請求の範囲で用いられる用語“化合物”および“本発明の化合物”が包含されることに注意して下さい。“複合体”は、本明細書中、 “本発明の化合物”であり得る、反応物質である“化合物”と、“本発明の化合物”でもあり得る生成物との区別にのみ用いられる。
【0065】
III.a1)反応性官能基
上記の通り、本発明の化合物のピロリドンコアは、所望により、ピロリドン上の反応性官能基またはピロリドンに結合したリンカーと、他の種上の相補的な反応性の反応性官能基との間に形成される結合を用いて他の種と結合されていてよい。説明を明確にするために、下記の議論は、本発明の代表的ピロリドンの、ポリ(エーテル)およびデンドリマーを含むポリマー、ならびにピロリドン標的化物質複合体の膜通過輸送に有用な標的化物質への結合に焦点を当てる。該焦点は、他のものが当業者により容易に推測される選択した本発明の態様を例示する。代表的態様の議論に焦点を当てることは、本発明を限定することを意図しない。
【0066】
本発明の例示的ピロリドンは、一般的に、ピロリドン環上または該環に結合する置換もしくは非置換アルキルもしくはヘテロアルキル鎖上に位置する、別の種とのそれらの容易な結合を可能にする反応性官能基を有する。反応性基に都合の良い位置は、ピロリドンコアのアルキルまたはヘテロアルキル置換基の末端位置である。
【0067】
本発明の実施に有用な反応基および反応クラスは、一般的に、生体複合体化学(bioconjugate chemistry)の分野でよく知られているものである。反応類似体を利用可能な現在好ましい反応クラスは、比較的穏和な条件下で進行するものである。これらには、求核置換反応(例えば、アミンおよびアルコールと、ハロゲン化アシル、活性エステルとの反応)、求電子置換反応(例えば、エナミン反応)、および炭素−炭素および炭素−ヘテロ原子多重結合の付加(例えば、ミカエル反応、ディールス・アルダー付加)が含まれるが、それらに限定されない。これらおよび他の有用な反応は、例えば、March, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, 1985; Hermanson, BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press, San Diego, 1996;および、Feeney et al., MODIFICATION OF PROTEINS; Advances in Chemistry Series, Vol. 198, American Chemical Society, Washington, D.C., 1982に開示される。
【0068】
反応基の例には、カルボキシル基と、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族性エステルを含むが、それらに限定されないそれらの様々な誘導体の反応が含まれる。ヒドロキシル基は、エステル、エーテル、アルデヒドなどに変換され得る。ハロアルキル基は、例えば、アミン、カルボン酸アニオン、チオールアニオン(thiol anion)、カルボアニオン、またはアルコキシドイオンとの反応により新しい種に変換される。ジエノフィル(例えば、マレイミド)基は、ディールス・アルダー反応に関与する。アルデヒドまたはケトン基は、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンまたはオキシムに変換され得るか、またはグリニャール付加またはアルキルリチウム付加のような機序により変換され得る。ハロゲン化スルホニルは、アミンと容易に反応し、例えば、スルホンアミドを形成する。アミンまたはスルフヒドリル基は、例えば、アシル化、アルキル化または酸化される。アルケンは、付加環化、アシル化、ミカエル付加などを用いて一連の新しい種に変換され得る。エポキシドは、アミンおよびヒドロキシル化合物と容易に反応する。
【0069】
本発明の化合物および標的部分(または、ポリマーまたはリンカー)上に見出される反応性官能基の組み合わせの例を、表1に記載する。該反応性官能基が、化学官能基1であるとき、標的部分は、化学官能基2であり、その逆もある。
【0070】
【表1】

【0071】
当業者は、これらの結合の多くが、様々な方法で、様々な条件を用いて形成され得ることを容易に理解するだろう。エステルの製造については、例えば、上記のMarchの1157頁を参照のこと;チオエステルについては、上記のMarchの362−363、491、720−722、829、941、および1172頁を参照のこと;カーボネートについては、上記のMarchの346−347頁を参照のこと;カルバメートについては、上記のMarchの1156−57頁を参照のこと;アミドについては、上記のMarchの1152頁を参照のこと;尿素およびチオ尿素については、上記のMarchの1174頁を参照のこと;アセタールおよびケタールについては、上記のGreene et al.の178−210頁および上記のMarchの1146頁を参照のこと;アシルオキシアルキル誘導体については、PRODRUGS: TOPICAL AND OCULAR DRUG DELIVERY, K. B. Sloan, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1992を参照のこと;エノールエステルについては、上記のMarchの1160頁を参照のこと;N−スルホニルイミダートについては、Bundgaard et al., J. Med. Chem., 31:2066 (1988)を参照のこと;無水物については、上記のMarchの355−56、636−37、990−91、および1154頁を参照のこと;N−アシルアミドについては、上記のMarchの379頁を参照のこと;N−マンニッヒ塩基については、上記のMarchの800−02、および828頁を参照のこと;ヒドロキシメチルケトンエステルについては、Petracek et al. Annals NY Acad. Sci., 507:353−54 (1987)を参照のこと;ジスルフィドについては、上記のMarchの1160頁を参照のこと;および、ホスホン酸エステルおよびホスホンアミデートについて。
【0072】
前記反応性官能基を、それらが、反応性リガンド類似体を集めるのに必要な反応に参加しないか、またはその反応を干渉しないように、選択することができる。あるいは、反応性官能基は、保護基の存在により反応への参加から保護され得る。当業者は、選択した一連の反応条件の妨害から特定の官能基を保護する方法を理解するだろう。有用な保護基の例は、Greene et al., PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照のこと。
【0073】
概して、リガンドと標的(または他の)物質、要すればリンカー基との間に結合を形成する前に、少なくとも1個の化学官能基が活性化され得る。当業者は、ヒドロキシ、アミノ、およびカルボキシ基を含む様々な化学官能基が、様々な標準方法および条件を用いて活性化され得ることを理解するだろう。例えば、リガンド(または、標的物質)のヒドロキシル基は、ホスゲンとの処理により活性化され、対応するクロロギ酸を形成し得るか、またはp−クロロギ酸ニトロフェニルとの処理により対応するカーボネートを形成し得る。
【0074】
例示的態様において、本発明は、カルボキシル官能基を含む標的物質を使用する。カルボキシル基は、例えば、対応するハロゲン化アシルまたは活性エステルに変換されることにより活性化され得る。この反応を、上記のMarchの388-89頁に記載の通りに多様な条件下で行うことができる。例示的態様において、ハロゲン化アシルは、カルボキシル含有基と塩化オキサリルとの反応により製造される。活性化された物質は、リガンドまたはリガンド−リンカーアーム結合体と結合し、本発明の複合体を形成する。当業者は、カルボキシル含有標的物質の使用が単に記載され、多くの他の官能基を有する物質が本発明のリガンドに結合され得ることを理解するだろう。
【0075】
III.a2)標的物質
本発明の化合物を、該化合物を特定の疾患組織または疾患領域に対して標的とする物質に結合することも可能である。標的物質には、能動的または受動的機序のどちらかを用いて細胞により取り込まれる種が含まれる。
【0076】
例えば、“膜輸送ポリペプチド”は、膜輸送担体として作用する能力を有する両親媒性または疎水性アミノ酸配列を有する。1つの態様において、ホメオドメインタンパク質は、細胞膜を越えて輸送するための能力を有する。ホメオドメインタンパク質の最も短い内在化可能ペプチドであるアンティナペディアは、該タンパク質の3番目のヘリックスであるアミノ酸43位から58位に見出された(例えば、Prochiantz, Current Opinion in Neurobiology 6:629-634 (1996)を参照のこと)。別のサブ配列であるシグナルペプチドのh(疎水性)ドメインは、同じ細胞膜輸送特性を有することが見出された(例えば、Lin et al., J. Biol. Chem. 270:1 4255−14258 (1995)を参照のこと)。
【0077】
ペプチド配列の例には、HIVのtatタンパク質の11アミノ酸ペプチド;p16タンパク質のアミノ酸84−103に対応する20残基ペプチド配列(Fahraeus et al., Current Biology 6:84 (1996)を参照のこと);アンティナペディアの60アミノ酸長のホメオドメインの3番目のヘリックス(Derossi et al., J. Biol. Chem. 269:10444 (1994));カポジ線維芽細胞増殖因子(K−FGF)h領域のようなシグナルペプチドの領域(上記の、Lin et al.,);または、HSV由来のVP22輸送ドメイン(Elliot & O’Hare, Cell 88:223−233 (1997))が含まれるが、それらに限定されない。増加した細胞取り込みを提供する他の適する化学的部分はまた、本発明の化合物に化学的に結合し得る。
【0078】
そのようなサブ配列を、細胞膜を横切って本発明の化合物を輸送するのに用い得る。本発明の化合物は、都合よくかかる配列と結合するかまたはかかる配列で誘導体化され得る。典型的に、該輸送配列は、融合タンパク質の一部として提供される。要すれば、本明細書に記載のリンカーを、本発明の化合物および輸送配列の結合に用い得る。何らかの適するリンカー、例えば、ペプチドリンカーまたは他の化学的リンカーを用いることができる。
【0079】
毒素分子も、細胞膜を横切って化合物を輸送する能力を有する。しばしば、そのような分子は、少なくとも2個の部分(“バイナリー・トキシン”と称される):輸送または結合ドメインまたはポリペプチド、および個々のトキシンドメインまたはポリペプチドからなる。典型的に、輸送ドメインまたはポリペプチドは、細胞受容体に結合し、その後、毒素が細胞内に輸送される。ウェルシュ菌イオタ毒素、ジフテリア毒素(DT)、シュードモナスエキソトキシンA(PE)、百日咳毒素(PT)、炭疽菌毒素、および百日咳菌アデニル酸シクラーゼ毒素(CYA)を含むいくつかの細菌毒素が、ペプチドを内部またはアミノ末端結合物として細胞質に送達するために用いられていた(Arora et al., J. Biol. Chem., 268:3334−3341 (1993); Perelle et al., Infect. Immun., 61:5147−5156 (1993); Stenmark et al., J. Cell Biol. 113:1025−1032 (1991); Donnelly et al., PNAS 90:3530−3534 (1993); Carbonetti et al., Abstr. Annu. Meet. Am. Soc. Microbiol. 95:295 (1995); Sebo et al., Infect. Immun. 63:3851−3857 (1995); Klimpel et al., PNAS U.S.A. 89:10277−10281 (1992);および、Novak et al., J. Biol. Chem. 267:17186−17193 1992))。
【0080】
非共有タンパク質結合基はまた、身体の特定の領域に本発明の化合物を標的化するため、およびタンパク質結合により該物質の半減期を増加するために用いる。
【0081】
III.a3)高分子複合体
例示的態様において、本発明は、ピロリドンコアと高分子種との結合により、高分子、すなわち、MW>1000Dを提供する。1つの態様において、本発明の高分子複合体は、ピロリドンを反応性官能基により高分子と共有結合することにより形成される。別の態様において、該高分子複合体は、ピロリドン誘導体と高分子、例えば血清タンパク質との非共有相互作用により形成される。
【0082】
下記の議論において、本発明は、本発明の新規のピロリドンコアを有する複合体を形成するために用いる特定の高分子への言及により記載される。当業者は、該議論の焦点が、説明を明確にする目的であって、発明の範囲を限定するものではないことを理解するだろう。本発明は、生体分子および合成分子に由来する構成成分を含む高分子複合体を提供する。生体分子の例には、ポリペプチド(例えば、抗体、酵素、受容体、抗原);多糖類(例えば、デンプン、インスリン、デキストラン);レクチン、非ペプチド抗原などが含まれる。合成ポリマーの例には、ポリ(アクリル酸)、ポリ(リシン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(エチレンイミン)などが含まれる。
【0083】
III.a3i)高分子複合体の共有結合
所望の高分子種を形成するための、本発明のピロリドンコア上の適当な反応性官能基の選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。本発明の共有複合体の形成に用いる反応性官能基の例は、上記に開示する。その結合パートナー上の反応基に相補的な反応性の適当な反応性官能基を有する本発明のピロリドンコアを選択および製造することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0084】
1つの態様において、高分子の反応性官能基と、ピロリドンのそれとの間に形成される結合は、要素間の“安定な結合”により本質的に不可逆的に高分子にピロリドンを結合する。本明細書で用いる“安定な結合”は、広範囲の状態(例えば、アミド、カルバメート、炭素−炭素、エーテルなど)でその化学的完全性を維持する結合である。別の態様において、該高分子および該ピロリドンは、“切断可能な結合”により連結される。本明細書で用いる“切断可能な結合”は、選択した条件下で切断される結合である。切断可能な結合には、ジスルフィド、イミン、カーボネートおよびエステル結合が含まれるが、それらに限定されない。前節に記載の通り、該反応性官能基は、ピロリドンの1箇所またはそれ以上に位置し得る。
【0085】
III.a4)多糖類
例示的態様において、本発明は、ピロリドンコアと単糖類、例えば多糖類との複合体を提供する。例示的態様において、本発明は、酸素供与体であるキレートとイヌリンとの複合体を提供する。イヌリンは、診断部分について担体として既に調査済みの天然に存在する多糖類である(Rongved, P. K., J. Carbohydr. Res. 1991, 214, 315; Corsi, D. M. V. E. et al., Chem. Eur. J. 2001, 7, 64)。イヌリンの構造は、その末端にα−D−グルコピラノシル単位を有する線状β−(2→1)−結合 α−D−フルクトフラノシル鎖の混合物として記載され得る。イヌリンは、多様な分子量および10から30までの様々な重合度で、その結果1500から5000Daの分子量分布で市販される。イヌリンの高い親水性、pH安定性、低い溶液粘度および生体適合性は、その複合体が、好ましい薬理学的特性を有することを確実にする。
【0086】
III.a5)デンドリマーベースの物質
別の局面において、本発明は、反応性官能基を介してデンドリマーに結合する上記のピロリドンを提供する。上記のポリマー基と同様に、デンドリマーは、少なくとも2個の反応性官能基を有する。1つの態様において、1個以上の形成したピロリドンは、デンドリマーに結合される。あるいは、ピロリドンは、デンドリマー上に直接形成される。
【0087】
例示的態様において、デンドリマー造影剤の水溶性および生体適合性ポリエステル(ポリプロピオナート)クラスは、好ましい薬物動態特性を提供するために設計されている。例えば、Ihre, H. et al., Macromolecules 1998, 31, 4061; Ihre, H. et al., J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 6388; Anders, H., Ihre, H., Patent W0/9900440 (Sweden)を参照のこと。1つの例示的態様において、デンドリマーの末端は、本発明のピロリドンコアに結合される。
【0088】
III.a6)ポリ(エチレングリコール)ベースの物質
別の例示的態様において、本発明は、本発明のピロリドンコアとポリ(エチレングリコール)との複合体を提供する。ポリ(エチレングリコール)(PEG)は、バイオテクノロジーおよび生物医学的適用に用いられる。この物質の使用は、(POLY(ETHYLENE GLYCOL) CHEMISTRY: BIOTECHNICAL AND BIOMEDICAL APPLICATIONS, J. M. Harris, Ed., Plenum Press, New York, 1992)に既報である。酵素(Chiu et al., J. Bioconjugate Chem., 4: 290−295 (1993))、RGDペプチド(Braatz et al., Bioconjugate Chem., 4: 262−267 (1993))、リポソーム(Zalipsky, S. Bioconjugate Chem., 4: 296−299 (1993))、およびCD4−IgG糖タンパク質(Chamow et al., Bioconjugate Chem., 4: 133−140 (1993))の改良は、ポリエチレングリコールの使用におけるいくつかの近年の進展である。PEGで処理した表面は、タンパク質沈殿に抗抵性であることが示され、血液接触生体材料を被覆したとき、血栓形成に対する改善された抵抗性を有する(Merrill, “Poly(ethylene oxide) and Blood Contact: A Chronicle of One Laboratory,” in POLY(ETHYLENE GLYCOL) CHEMISTRY: BIOTECHNICAL AND BIOMEDICAL APPLICATIONS, Harris, Ed., Plenum Press, New York, (1992), pp. 199−220)。
【0089】
多くの経路を、本発明のピロリドンコアをポリマー種またはオリゴマー種に結合させるために利用可能である。例えば、Dunn, R.L., et al., Eds. POLYMERIC DRUGS AND DRUG DE肝臓Y SYSTEMS, ACS Symposium Series Vol. 469, American Chemical Society, Washington, D.C. 1991; Herren et al., J. Colloid and Interfacial Science 115: 46−55 (1987); Nashabeh et al., J. Chromatography 559: 367−383 (1991); Balachandar et al., Langmuir 6: 1621−1627 (1990);および、Burns et al., Biomaterials 19: 423−440 (1998)を参照のこと。
【0090】
ポリ(エチレングリコール)の多くの活性化誘導体が市販されており、文献にて利用可能である。本発明に有用な複合体を製造するために、適当な活性化PEG誘導体を選択し、必要であれば合成することは、十分に当業者の能力の範囲内である。Abuchowski et al. Cancer Biochem. Biophys., 7: 175−186 (1984); Abuchowski et al., J. Biol. Chem., 252: 3582−3586 (1977); Jackson et al., Anal. Biochem., 165: 114−127 (1987); Koide et al., Biochem Biophys. Res. Commun., 111: 659−667 (1983))、トレシレート(Nilsson et al., Methods Enzymol., 104: 56−69 (1984); Delgado et al., Biotechnol. Appl. Biochem., 12: 119−128 (1990));N−ヒドロキシスクシンイミド由来活性エステル(Buckmann et al., Makromol. Chem., 182: 1379−1384 (1981); Joppich et al., Makromol. Chem., 180: 1381−1384 (1979); Abuchowski et al., Cancer Biochem. Biophys., 7: 175−186 (1984); Katre et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84: 1487−1491 (1987); Kitamura et al., Cancer Res., 51: 4310−4315 (1991); Boccu et al., Z. Naturforsch., 38C: 94−99 (1983)、カーボネート(Zalipsky et al., POLY(ETHYLENE GLYCOL) CHEMISTRY: BIOTECHNICAL AND BIOMEDICAL APPLICATIONS, Harris, Ed., Plenum Press, New York, 1992, pp. 347−370; Zalipsky et al., Biotechnol. Appl. Biochem., 15: 100−114 (1992); Veronese et al., Appl. Biochem. Biotech., 11: 141−152 (1985))、ギ酸イミダゾリル(Beauchamp et al., Anal. Biochem., 131: 25−33 (1983); Berger et al., Blood, 71: 1641−1647 (1988))、4−ジチオピリジン(Woghiren et al., Bioconjugate Chem., 4: 314−318 (1993))、イソシアネート(Byun et al., ASAIO Journal, M649−M−653 (1992))、およびエポキシド(米国特許番号第4,806,595号、Noishiki et al., (1989)により発行)を参照のこと。他の結合基には、アミノ基と活性化PEGとの間のウレタン結合が含まれる。Veronese, et al., Appl. Biochem. Biotechnol., 11: 141−152 (1985)を参照のこと。
【0091】
IV.ピロリドンの合成および精製
本発明の化合物は、一般的によく知られている合成法の適当な組み合わせにより合成される。本発明の化合物を合成するのに有用な技術は、関連分野の当業者に容易に明らかであり、利用可能である。下記の議論は、本発明の化合物の構築における使用に利用可能な任意の様々な方法の説明のために提供され、本発明の化合物の製造に有用である反応または反応順の範囲を定義することを意図しない。
【0092】
【化12】


反応剤および条件:a)臭化ベンジル、DMF中KCO;b)CHNO、NHOAc、AcOH、還流、3時間;c)3−アセチル−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オン、LDA、THF、−78℃、Py;d)ラネーNi/H、酸素および窒素下、50℃。
【0093】
本発明の化合物を合成する1つの方法を、スキーム1に示す。このスキームにおいて、ヒドロキシベンズアルデヒドを、2を提供するためにベンジル基と反応させる(反応a)。その後、2を、3を提供するために硝酸塩と反応させる。次いで、3を、4を提供するためにオキサゾリジノンと反応させる。ラネーニッケルを用いる4の還元により、分子内環化を誘導し、3,4−置換フェニル基を含むラクタムである5を得る。
【0094】
【化13】


反応剤および条件:e)CHCN、0.4N HCl、室温、1時間;f)Rh(cat)、(R)−BINAP、KCO、ジオキサン/HO、80℃、6時間;g)CAN、CHCN/HO、O℃、4時間。
【0095】
本発明の化合物の別の例示的経路を、スキーム2に記載する。それは、3,4−置換フェニル基を含むラクタム5の合成を説明する。ジヒドロフラン6を、8を提供するためにp−アニシジン7と反応させる(反応e)。次いで、8を、10を提供するためにホウ酸塩9と反応させる(反応f)。最後に、10のN−フェニル基を、5を製造するために除去する(反応g)。
【0096】
【化14】


反応剤および条件:h)CHCN、0.4N HCl、室温、1時間;i)Rh(cat)、(R)−BINAP、KCO、ジオキサン/HO、80℃、6時間。
【0097】
5を、スキーム3に従いさらに官能化する。5のベンジル保護基を、11を提供するために最初に除去する(反応h)。その後、11を、12を提供するために置換フェニル基と結合させる(反応i)。
【0098】
【化15】


反応剤および条件:j)CuI、KPO、1,2−シクロヘキサンジアミン;k)ヒドラジン;l)加熱;m)イソシアン化クロロスルホニル。
【0099】
さらなる例示的合成法において、スキーム1−3の最終生成物であるラクタムの窒素を、スキーム4−9に示す通り誘導体化し得る。スキーム4において、合成を12から開始する。この化合物を、22を製造するためにヨード置換アリール基と反応させる(反応j)。その後、22を、縮合環N−ピロリドン化合物23を製造するためにヒドラジンと反応させる。その後、無水フタル酸のような保護基を、25を得るために23上の遊離アミン基に付加する。その後、保護基を除去し26を得る(反応m)。
【0100】
【化16】


反応剤および条件:n)ピリジン、塩化メタンスルホニル、NHC。
【0101】
尿素を除く他の基を、25の環内窒素を用いて形成し得る。このタイプの反応例をスキーム5に示す。ここで、25を、30を製造するために塩化スルホニルと反応させる。当業者は、多様なN置換ラクタム誘導体が、例えば、アルキル、ヘテロアリール、アリールアルキル、およびヘテロシクロアルキルで様々に置換されたハロゲン化アリールを用いて得られることを認めるだろう。
【0102】
【化17】

反応剤および条件:o)CuI/KPO、1,2−シクロヘキサンジアミン;p)SnCl
【0103】
スキーム3からのラクタム生成物のN置換のさらなる例を、スキーム6に示す(スキーム1およびスキーム2の生成物に適用可能であるが)。12を、28を製造するために27のハロ置換フェニル基と反応させる(反応o)。その後、28は、新しく付加したフェニル環を官能化するために、様々な反応を受け得る。この官能化の例は、28から29の変換により示される(反応p)。
【0104】
【化18】


反応剤および条件:q)NaH;r)NaOH;s)(PMB)NH。
【0105】
本発明のいくつかの化合物を合成するために、いくつかの構成成分を合成し、分離し、その後ピロリドンと反応させなければならない。このストラテジーの例を、スキーム7−10に供する。スキーム7において、化合物13および化合物14を、化合物15を製造するために、条件q下で反応させる。次いで、ヒドリド還元により、化合物16を得る(反応r)。その後、16のカルボキシレート基を、化合物17を製造するために、反応の条件下で保護する。
【0106】
【化19】


反応剤および条件:t)KPO、CuI、トランス−シクロヘキサンジアミン;u)TFA。
【0107】
スキーム8は、スキーム3からのラクタム生成物の窒素を官能化する別の方法を説明する(これは、スキーム1の生成物にも適用可能である)。ここで、保護されたブロモまたはヨード置換化合物17を、化合物32を製造するために12に添加する(反応t)。その後、化合物32の保護基を、化合物33を得るために除去する(反応u)。
【0108】
【化20】


反応剤および条件:v)NaBH、EtOH;w)2−フルオロ−4−ブロモベンゼンスルホニルクロリド;x)4−メトキシベンジルアミン、DMF、KCO
【0109】
スキーム7の変法を、スキーム9に示す。ここで、化合物17および化合物18を、保護基19を製造するために、条件v下で反応させる。その後、19を、硫黄含有基16を保護するために、硫酸塩またはスルホン置換フェニル化合物と反応させる(反応w)。その後、化合物20を、21を製造するためにアミン基と反応させる(反応x)。
【0110】
【化21】


反応剤および条件:y)KCO、DMSO;z)KPO、CuI、トランス−シクロヘキサンジアミン;aa)TFA。
【0111】
スキーム10は、スキーム3からのラクタム生成物の窒素を官能化する別の方法を説明する(これは、スキーム1の生成物にも適用可能である)。初めに、化合物11のフェノール部分の酸素を、35を得るために34により官能化する(反応y)。その後、保護されたブロモまたはヨード置換化合物21を、化合物36を製造するために35に添加する(反応z)。その後、化合物36の保護基を、化合物37を得るために除去する(反応aa)。
【0112】
本発明の化合物を、当業者に周知の精製方法により反応混合物から単離および精製し得る。例えば、該化合物を、逆相HPLC、ゲル浸透、イオン交換、サイズ排除、親和性、分配、または向流分配のような公知のクロマトグラフ法を用いて精製することができる。
【0113】
V.医薬製剤
本発明の化合物を、多様な経口、非経腸および局所的投与量形態で製造および投与することができる。故に、本発明の化合物を、注射により、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内に投与することができる。また、本明細書に記載の化合物を、吸入により、例えば鼻内に投与することができる。さらに、本発明の化合物を、経皮的に投与することができる。従って、本発明は、薬学的に許容される担体または賦形剤および1個以上の本発明の化合物を含む医薬製剤を提供する。
【0114】
本発明の化合物から医薬製剤を製造するために、薬学的に許容される担体は、固体または液体のどちらかであり得る。固体形態の製剤には、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入剤としても作用し得る1個以上の物質であり得る。
【0115】
粉末において、担体は、微粉化活性成分との混合物である微粉化固体である。錠剤において、該活性成分を、適する割合で必要な結合特性を有する担体と混合し、所望の形状およびサイズに圧縮する。
【0116】
粉末および錠剤は、好ましくは、5%または10%から70%の活性化合物を含む。適する担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、スターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。用語“製剤”は、他の担体の有無に関わらず活性成分が担体により囲まれ、故にそれと結合しているカプセルを提供する、担体として封入物質を含む活性化合物の製剤を包含することを意図する。同様に、カシェ剤およびロゼンジが包含される。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ剤およびロゼンジを、経口投与に適する固体投与量形態として用い得る。
【0117】
坐剤を製造するために、脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物のような低融点ワックスを最初に融解し、活性成分を、撹拌することによりそこへ均一に分散させる。その後、該融解された均一混合物を、常套のサイズの型に注ぎ、冷却し、それにより凝固させる。
【0118】
液体形態製剤には、溶液、懸濁液、およびエマルジョン、例えば水または水/プロピレングリコール溶液が含まれる。非経腸注射剤について、液体製剤を、ポリエチレングリコール水溶液の溶液に製剤し得る。
【0119】
経口使用に適する水溶液を、水中に活性成分を溶解し、適する着色剤、香味剤、安定化剤および要すれば増粘剤を添加することにより製造することができる。経口使用に適する水性懸濁液を、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁化剤のような粘性物質と共に、水中に微粉化活性成分を分散させることにより製造することができる。
【0120】
また、経口投与のための液体形態製剤に使用直前に変換されることを意図される固体形態製剤が含まれる。かかる液体形態には、溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。これらの製剤には、活性成分、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝液、人工および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などがさらに含まれ得る。
【0121】
本発明において、患者に投与される用量は、長期にわたり患者に有益な治療効果をもたらすのに十分であるべきである。該用量は、用いる特定の化合物の効果、および患者の状態、ならびに処置すべき患者の体重または表面積により決定され得る。該用量サイズはまた、特定の患者における特定の化合物の投与を伴う、何らかの副作用の存在、性質、および程度により決定され得る。
【0122】
化合物はまた、微粒子およびリポソームおよび免疫リポソームのようなリポソーム誘導体により、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞中に導入され得る。用語“リポソーム”は、水相を封入する、1個以上の同心円状に並べられた脂質二重層からなるビヒクルを意味する。水相は、典型的に、細胞に送達されるべき化合物を含む。
【0123】
リポソームは、細胞膜と融合し、それにより、細胞質中に薬剤を放出する。あるいは、リポソームは、食作用を受けるか、または細胞により輸送ビヒクル中に取り込まれる。一旦エンドソームまたはファゴソーム中に取り込まれると、リポソームは、分解されるかまたは輸送ビヒクルの膜と融合し、その内容物を放出する。
【0124】
リポソームによる薬剤送達の現在の方法において、リポソームは、最終的に透過性となり、標的組織または細胞にて封入された化合物を放出する。全身的または組織特異的送達に関して、これは、例えば、リポソーム二重層が、体内の様々な物質の作用により時間をかけて分解される消極的な方法で達成され得る。あるいは、リポソームビヒクル中の透過性変化をもたらす物質の使用を伴う。リポソーム膜を、環境がリポソーム膜付近で酸性になるとき、それらが不安定になるように構築することができる(例えば、PNAS 84:7851 (1987); Biochemistry 28:908 (1989)を参照のこと)。リポソームが標的細胞により取り込まれるとき、例えば、それらは不安定になり、その内容物を放出する。この不安定化は、融合化(fusogenesis)と称される。ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE)は、多くの“融合”系の主成分である。
【0125】
そのようなリポソームは、典型的に、選択した化合物および脂質成分、例えば中性および/またはカチオン性脂質を含み、所望により、所定の細胞表面受容体またはリガンド(例えば、抗原)に結合する抗体のような受容体認識分子を含む。様々な方法が、例えば、Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980)、米国特許番号第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、同第4,946,787号、PCT公開番号WO91/17424、Deamer & Bangham, Biochim. Biophys. Acta 443:629−634 (1976); Fraley, et al., PNAS 76:3348−3352 (1979); Hope et al., Biochim. Biophys. Acta 812:55−65 (1985); Mayer et al., Biochim. Biophys. Acta 858:161−168 (1986); Williams et al., PNAS 85:242−246 (1988); Liposomes (Ostro (ed.), 1983, Chapter 1); Hope et al., Chem. Phys. Lip. 40:89 (1986); Gregoriadis, Liposome Technology (1984)、およびLasic, Liposomes: from Physics to Applications (1993))に記載の通りにリポソームを製造するために利用可能である。適する方法には、例えば、超音波処理、押し出し成形、高圧/均質化、微細流動化、界面活性剤透析法、小リポソームビヒクルのカルシウムにより誘導される融合、およびエーテル融合法が含まれ、それらは全て、当技術分野でよく知られている。
【0126】
本発明の任意の態様において、特定の細胞タイプ、組織などに特異的な標的部分を用いて本発明のリポソームを標的にするのが好ましい。多様な標的部分(例えば、リガンド、受容体、およびモノクローナル抗体)を用いるリポソームの標的化は、既述である(例えば、米国特許番号第4,957,773号および同第4,603,044号を参照のこと)。
【0127】
標的物質をリポソームに結合するための標準方法を用い得る。これらの方法は、一般的に、リポソーム脂質成分中への、例えばホスファチジルエタノールアミンへの取り込みを伴い、それは、標的物質の結合により活性化されるか、または脂質誘導体化ブレオマイシンのような親水性化合物を誘導体化し得る。抗体によって標的化されたリポソームを、例えば、プロテインAを取り込むリポソームを用いて構築することができる(Renneisen et al., J. Biol. Chem., 265:16337−16342 (1990)およびLeonetti et al., PNAS 87:2448−2451 (1990)を参照のこと)。
【0128】
HIV感染による状態の処置または予防において投与すべき化合物の有効量の決定において、医師は、化合物の循環血漿レベル、化合物の毒性、疾患の進行度、および化合物に対するウイルス抵抗性の産生を評価する。
【0129】
医薬製剤は、好ましくは、単位投与量形態である。かかる形態において、該製剤は、適当量の活性成分を含む単位用量に分割される。該単位投与量形態は、パッケージ化された製剤であり、バイアルまたはアンプル中パッケージ化された錠剤、カプセルおよび粉末のような個別の量の製剤を含むパッケージであり得る。また、該単位投与量形態は、カプセル、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジ自体であり得るか、またはパッケージ化された形態の、適当な数のこれらの何れかであり得る。単位用量製剤中の活性成分の量は、特定の適用および活性成分の効力に従って変更され得るか、または0.1mgから10g、より典型的には、1.0mgから1g、最も典型的には、10mgから500mgで調節され得る。組成物はまた、要すれば、他の適合性の治療剤または診断薬を含み得る。投与を、単回または分割用量で達成し得る。
【0130】
VI.方法
本発明はまた、HIV疾患および関連疾患を処置または改善するための方法を提供する。該方法には、少なくとも1個の本発明の化合物の治療的有効投与量を、HIV疾患またはHIV関連疾患を有する対象に投与することが含まれる。本発明はまた、少なくとも1個の本発明の化合物を、HIV疾患またはHIV関連疾患に対して活性を有する少なくとも1個の他の化合物と併用投与する、併用療法を提供する。
【0131】
VI.a)併用療法
多くの態様において、本発明の化合物は、1個以上のさらなる化合物または治療剤と合わせて投与され得る。例えば、複数の逆転写酵素阻害剤を共投与することができるか、または1個以上の本発明の化合物を、別の治療化合物と合わせて投与することができる。1つの態様において、他の治療剤は、HIV感染を予防または処置するために用いられるものである。別の態様において、他の治療剤は、HIV感染と関係する日和見感染を処置するため、および/またはHIV感染を処置もしくは予防するために用いられる薬剤である。
【0132】
本発明の化合物との併用に適する治療剤には、プロテアーゼ阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、抗レトロウイルスヌクレオシド、侵入阻害剤、ならびにHIV感染の阻止または処置に有効な他の抗ウイルス剤が含まれるが、それらに限定されない。適する治療剤のさらなる例には、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、インターフェロン、ラミブジン、アデフォビル、ネビラピン、デラビリジン、ロビリド、サキナビル、インジナビル、およびAZTが含まれるが、それらに限定されない。他の適する治療剤には、抗生物質または他の抗ウイルス剤、例えば、アシクロビルが賦含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
当業者に公知の他の併用療法を、本発明の組成物および方法と合わせて用いることができる。
【0134】
上記に説明する通り、現在、本発明のピロリドンは、抗ウイルス活性を有することが発見されている。そのようなものとして、本発明の化合物は、多様なウイルスの阻害に用られ、故に、多様なウイルス感染を処置することができる。本発明の化合物を用いて阻害され得るウイルスには、DNAウイルス、RNAウイルス、ならびにレトロウイルスが含まれるが、それらに限定されない。該化合物を用いて阻害され得るウイルスの例には、ヘルペスウイルス、肝炎(A、BおよびC)ウイルス、インフルエンザウイルス、POXウイルス、ライノウイルスおおびHTLV(ヒトT細胞白血病)ウイルス(例えば、HTLV1および2)が含まれるが、それらに限定されない。それらの抗ウイルス活性に基づき、当業者は、本発明の化合物を用いて処置され得る他のウイルスを認識するだろう。
【0135】
VI.b)逆転写酵素のモジュレーターについての分析
逆転写酵素の調節、およびHIVおよびウイルス感染の対応する調節、好ましくは阻止を、細胞ベースのモデルを含む、様々なインビトロおよびインビボ分析を用いて評価することができる。そのような分析を、逆転写酵素の阻害剤および活性化剤、ならびに結果として、HIV感染およびHIV関連疾患の阻害剤および活性化剤について試験するために用いることができる。そのような逆転写酵素のモジュレーターは、本明細書に記載の通り、HIV感染に関係する疾患の処置に有用である。逆転写酵素のモジュレーターは、組み換え的、化学合成的または天然に存在する逆転写酵素の何れかを用いて試験される。
【0136】
本発明の好ましいモジュレーターは、タンパク質レベルで逆転写酵素活性を減少するように作用するものである。好ましいモジュレーターには、核酸レベルで逆転写酵素の発現を減少するもの、例えば、逆転写酵素プロモーターの阻害剤、逆転写酵素遺伝子の染色体接近性を増加する化合物、逆転写酵素RNA安定性およびプロセシングを減少する化合物、および細胞質または核における逆転写酵素RNAレベルを減少する化合物が含まれる。
【0137】
逆転写酵素阻害剤を用いるHIV感染調節の測定を、本明細書に記載のインビトロ、インビボおよびエクスビボの様々な分析を用いて実行することができる。活性、例えば、酵素活性、細胞増殖(例えば、CD4+リンパ球増殖)、HIV複製、HIVタンパク質の発現、またはリガンドもしくは基質結合に影響を与える、適する物理的、化学的または形質的変化を、本発明のポリペプチドへの試験化合物の影響を評価するために用いることができる。機能的影響が、無傷の細胞または動物を用いて決定されるとき、血清におけるウイルスRNAレベルまたはウイルス力価、リガンド結合、公知のおよび特性化されていない遺伝子マーカーの両方の転写変化(例えば、ノーザンブロット)、細胞代謝の変化、細胞増殖、ウイルスマーカー発現、DNA合成に関係する変化、マーカーおよび色素希釈分析(例えば、GFPおよび細胞追跡分析)などのような様々な効果を測定することもできる。
【0138】
VI.c)インビトロ分析
逆転写酵素調節活性を有する化合物を同定する分析を、インビトロで実行することができる。以下に記載の通り、該分析は、固体状態または水溶液のどちらかであり得る。タンパク質は、固体支持体に共有的または非共有的のどちらかで結合し得る。しばしば、本発明のインビトロ分析は、非競合的または競合的な、基質もしくはリガンド結合分析または親和性分析である。他のインビトロ分析には、タンパク質の分光学的特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的特性(例えば、形状)、クロマトグラフィー特性、または溶解特性における変化の測定が含まれる。
【0139】
1つの態様において、ハイスループット結合分析を、逆転写酵素またはその断片を、可能性のあるモジュレーターと接触させ、適する時間の間インキュベートすることにより行う。1つの態様において、可能性のあるモジュレーターを固体支持体に結合し、逆転写酵素を添加する。別の態様において、逆転写酵素を固体支持体に結合させる。標識したタンパク質−タンパク質結合分析、電気泳動移動シフト、免疫分析、キナーゼ分析のような酵素的分析などを含む多様な分析を、逆転写酵素−モジュレーター結合を同定するために用い得る。いくつかの場合において、候補モジュレーターの結合は、公知のリガンドまたは基質の結合に対する干渉を可能性のあるモジュレーターの存在において測定する、競合的結合分析の使用により決定される。該モジュレーターまたは公知のリガンドもしくは基質の何れかを初めに結合させ、その後、競合物を添加する。逆転写酵素を洗浄後、可能性のあるモジュレーターまたは公知のリガンドもしくは基質の何れかの結合に対する干渉を決定する。しばしば、可能性のあるモジュレーターまたは公知のリガンドもしくは基質の何れかを標識する。
【0140】
VI.d)細胞ベースのインビボ分析
別の態様において、逆転写酵素を細胞中で発現させ、機能的、例えば物理的および化学的または形質的変化を、逆転写酵素のモジュレーター、ならびにHIV複製およびHIV感染細胞のモジュレーターを同定するために分析する。逆転写酵素を発現する細胞を、結合分析および酵素的分析にも用いることができる。何らかの適する機能的効果を、本明細書に記載の通りに測定することができる。例えば、細胞形態(例えば、細胞容量、核容量、細胞周長、および核周長)、リガンド結合、リンパ球増殖、アポトーシス、ウイルスマーカー発現、GFP陽性および色素希釈分析(例えば、細胞膜に結合する色素を用いる細胞追跡分析)、DNA合成分析(例えば、FACS分析でのH−チミジンおよびBrdUまたはヘキスト(Hoechst)色素のような蛍光DNA結合色素)は全て、細胞に基づく系を用いて可能性のあるモジュレーターを同定するのに適する分析である。そのような細胞に基づく分析に適する細胞には、PBMC、リンパ球(例えば、CD4+)、好中球、多形核白血球、および他の食細胞のような初代細胞、ならびに細胞系、例えばジャーカット細胞、BJAB細胞などの両方が含まれる。逆転写酵素は、天然に存在するかまたは組換え体であり得る。
【0141】
細胞逆転写酵素RNAおよびポリペプチドレベルを、タンパク質またはmRNAのレベルを測定することにより決定することができる。逆転写酵素のレベルまたは逆転写酵素と関係するタンパク質を、逆転写酵素ポリペプチドまたはその断片に選択的に結合する抗体を用いてウエスタンブロッティング、ELISAなどのような免疫分析を用いて測定する。mRNAの測定のために、例えばPCRを用いる増幅法、LCR、またはハイブリダイゼーション分析、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、RNAse保護、ドットブロッティングが好ましい。タンパク質またはmRNAのレベルを、本明細書に記載の、直接的または間接的に標識した検出剤、例えば、蛍光または放射活性標識した核酸、放射活性または酵素的に標識した抗体などを用いて検出する。
【0142】
あるいは、逆転写酵素発現を、例えば、逆転写酵素プロモーターと結合した融合タンパク質または遺伝子を用いて、レポーター遺伝子系を用いて測定し得る。そのような系を、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、蛍ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼのようなレポーター遺伝子と作動可能に連結された逆転写酵素タンパク質プロモーターを用いて考案することができる。さらに、目的のタンパク質を、赤色または緑色蛍光タンパク質のような二次レポーターへの結合による間接的レポーターとして用い得る(例えば、Mistili & Spector, Nature Biotechnology 15:961-964 (1997)を参照のこと)。レポーター構築物は、典型的に、細胞中にトランスフェクトされる。可能性のあるモジュレーターでの処理後、レポーター遺伝子の転写、翻訳、または活性の量を、当業者に公知の標準技術に従い測定する。
【0143】
VI.e)動物モデル
HIV感染の動物モデルはまた、逆転写酵素のモジュレーターについてのスクリーニングに使用される。同様に、例えば適当な遺伝子標的化ベクターを用いる相同的組換えの結果としての遺伝子ノックアウト技術、または遺伝子過剰発現を含む形質転換動物技術は、結果として、逆転写酵素の発現の不存在または増加した発現をもたらし得る。同様の技術を、ノックアウト細胞を作製するために用いることもできる。所望のとき、逆転写酵素タンパク質の組織特異的発現またはノックアウトが必要とされ得る。
【0144】
ノックアウト細胞および形質転換マウスを、相同的組換えによりマウスゲノム中の内生逆転写酵素遺伝子部位にマーカー遺伝子または他の異種遺伝子を挿入することにより作製し得る。そのようなマウスを、内生逆転写酵素を、内生逆転写酵素を変異させること、例えば発癌物質に暴露することによる逆転写酵素遺伝子の変異型で置換することによっても作製し得る。
【0145】
DNA構築物を、胚性幹細胞の核内に導入する。新しく作製された遺伝子損傷を含む細胞を、受容側のメスに再移植される宿主マウス胚に注入する。これらの胚のいくつかが、変異細胞株に一部由来する生殖細胞を有するキメラマウスになる。故に、キメラマウスを飼育することにより、導入された遺伝子損傷を含む新しいマウス系列の入手が可能である(例えば、Capecchi et al., Science 244:1288 (1989)を参照のこと)。キメラ標的マウスを、Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)およびTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, Robertson, ed., IRL Press, Washington, D.C., (1987)に従い得ることができる。
【0146】
VI.f)固体状態および水溶液のハイスループット分析
1つの好ましい態様において、ハイスループットスクリーニング法は、コンビナトリアル有機小分子、または多数の可能性のある治療化合物(可能性のあるモジュレーターまたはリガンド化合物)を含むペプチドライブラリーを提供することを伴う。故に、そのような“コンビナトリアル化学ライブラリー”または“リガンドライブラリー”を、本明細書に記載の1種以上の分析でスクリーニングし、所望の特徴的な活性を示すそれらのライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定する。そうして同定された化合物を、常套の“リード化合物”として用い得るか、またはそれら自体を、可能性のあるまたは実際の治療剤として用い得る。
【0147】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、反応剤のような多数の化学的“構成成分(building block)”を組み合わせることにより、化学合成または生物学的合成の何れかにより作製された異なる化合物の集合物である。例えば、ポリペプチドライブラリーのような線形コンビナトリアル化学ライブラリーを、所定の化合物長(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)について可能性のある全ての方法で一連の化学構成成分(アミノ酸)を結合することにより形成する。何百万の化学化合物を、化学構成成分のそのようなコンビナトリアル混合物を経て合成することができる。
【0148】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者によく知られている。かかるコンビナトリアル化学ライブラリーには、ペプチドライブラリーが含まれるが、これに限定されない(例えば、米国特許番号第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487−493 (1991)およびHoughton et al., Nature 354:84−88 (1991)を参照のこと)。化学的に多様なライブラリーを作製するための他の化学を用いることもできる。そのような化学には、ペプトイド(例えば、PCT公開番号WO91/19735)、コードされたペプチド(例えば、PCT公開番号WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT公開番号WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許番号第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドのようなダイバーソマー(diversomer)(Hobbs et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90:6909−6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmann et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:9217−9218 (1992))、小化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート(Cho et al., Science 261:1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59:658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel, Berger and Sambrookを参照のこと、全て上記)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許番号第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn et al., Nature Biotechnology, 14(3):309−314 (1996)およびPCT/US96/10287を参照のこと)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang et al., Science, 274:1520−1522 (1996)および米国特許番号第5,593,853号を参照のこと)、有機小分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C & EN, Jan 18, page 33 (1993);イソプレノイド、米国特許番号第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン(metathiazanone)、米国特許番号第5,549,974号;ピロリジン、米国特許番号第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許番号第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、同第5,288,514号などを参照のこと)が含まれるが、それらに限定されない。
【0149】
コンビナトリアルライブラリーの調製のための装置は、市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Woburn, MA, 433A Applied Biosystems, Foster City, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照のこと)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリーが、それ自体市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc., St. Louis, MO, ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MDなどを参照のこと)。
【0150】
1つの態様において、本発明は、天然に存在するかまたは組換え体の、逆転写酵素タンパク質、または逆転写酵素を発現する細胞もしくは組織を用いる溶解性分析を提供する。別の態様において、本発明は、逆転写酵素を固相に結合させる、ハイスループット形式の固相ベースのインビトロ分析を提供する。本明細書に記載の分析の何れか1つが、ハイスループットスクリーニングに適し得る。
【0151】
水溶性または固体状態の、本発明のハイスループット分析において、1日に数千までの異なるモジュレーターまたはリガンドをスクリーニングすることが可能である。この方法を、インビトロで逆転写酵素に、または逆転写酵素タンパク質を含む細胞ベース分析もしくは膜ベース分析に用いることができる。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルを、選択した可能性のあるモジュレーターに対して個別の分析を行うために用いることができるか、または濃度もしくはインキュベーション時間効果が観察されるとき、5−10ウェル毎に単一のモジュレーターを試験し得る。よって、単一の標準的マイクロタイタープレートは、約100(例えば、96)個のモジュレーターを分析し得る。その結果、1536ウェルプレートを用いるとき、単一のプレートは、約100−約1500個の異なる化合物を容易に分析し得る。1日当たり多くのプレートを分析することが可能であり;約6,000まで、20,000まで、50,000まで、または100,000以上の異なる化合物についてのスクリーニング分析が、本発明の統合系を用いて可能である。
【0152】
固体状態の反応に関して、目的のタンパク質もしくはその断片、例えば細胞外ドメイン、または融合タンパク質の一部としての目的のタンパク質もしくはその断片を含む細胞もしくは膜を、直接的または間接的に、共有または非共有結合により、固体状態の構成要素に結合することができる。共有または非共有結合のためのタグは、様々な成分の何れかであり得る。一般的に、タグ(タグ結合体)を結合する分子を固体支持体に結合させ、タグを付した目的の分子を、タグとタグ結合体の相互作用により固体支持体に結合させる。
【0153】
文献に十分に記載される公知の分子相互作用に基づく、多くのタグおよびタグ結合体を用いることができる。例えば、タグが、天然の結合体、例えばビオチン、プロテインA、またはプロテインGを有するとき、それを、適当なタグ結合体(アビジン、アスレプトアビジン、ニュートラアビジン、免疫グロブリンのFc領域など)と併せて用いることができる。ビオチンのような天然の結合体を有する分子に対する抗体はまた、広く利用可能であり、適当なタグ結合体については、SIGMA Immunochemicals 1998 catalogue SIGMA, St. Louis MO)を参照のこと。
【0154】
同様に、何らかのハプテン化合物または抗原化合物を適当な抗体と併用し、タグ/タグ結合体対を形成させ得る。数千種の抗体が市販されており、多くのさらなる抗体が文献に記載される。例えば、1つの通常の立体配置において、タグは一次抗体であり、タグ結合体は、一次抗体を認識する二次抗体である。抗体−抗原相互作用に加えて、受容体−リガンド相互作用はまた、タグおよびタグ結合体対として適当である。例えば、細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、トランスフェリン、c−kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体、および抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリーなどのような細胞受容体−リガンド相互作用;例えば、Pigott & Power, The Adhesion Molecule Facts Book I (1993)を参照のこと)。同様に、毒(toxin)および毒素(venom)、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、アヘン剤、ステロイドなど)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイド、およびビタミンD;ペプチドを含む様々な小さなリガンドの効果を仲介するもの)、薬物、レクチン、糖、核酸(線形および環状ポリマー構造の両方)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質および抗体は全て、様々な細胞受容体と相互作用し得る。
【0155】
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、およびポリアセテートのような合成ポリマーはまた、適当なタグまたはタグ結合体を形成し得る。多くの他のタグ/タグ結合体対はまた、本開示の検討により当業者に明らかとなり得るように、本明細書に記載の分析系において有用である。
【0156】
ペプチド、ポリエーテルなどのような常用のリンカーは、タグとしての役割も果たし得、約5から200アミノ酸のポリグリシン配列のようなポリペプチド配列が含まれる。かかるフレキシブルリンカーは、当業者に公知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Alabamaから市販されている。これらのリンカーは、所望により、アミド結合、スルフヒドリル結合、またはヘテロ官能基結合を有していてよい。
【0157】
タグ結合体を、現在利用可能な様々な方法の何れかを用いて固体支持体に結合する。固体基質は、通常、基質の全てまたは一部を、タグ結合体の一部と反応する表面に化学基を固定する化学反応剤に暴露することにより、誘導体化または官能化される。例えば、より長鎖部分への結合に適する基には、アミン、ヒドロキシル、チオール、およびカルボキシル基が含まれ得る。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランを、ガラス表面のような様々な表面を官能化するために用い得る。かかる固相生体高分子分析の構築は、文献に十分に記載される。例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149−2154 (1963)(例えば、ペプチドの固相合成を記載する);Geysen et al., J. Immun. Meth. 102:259−274 (1987)(ピン上の固相成分の合成を記載する);Frank & Doring, Tetrahedron 44:60316040 (1988)(セルロースディスク上の様々なペプチド配列の合成を記載する); Fodor et al., Science, 251:767−777 (1991); Sheldon et al., Clinical Chemistry 39(4):718−719 (1993);および、Kozal et al., Nature Medicine 2(7):753−759 (1996)(全て、固体基質に固定された生体高分子の分析を記載する)を参照のこと。タグ結合体を基質に固定するための非化学的アプローチには、加熱、UV照射による架橋形成などのような他の常套法が含まれる。
【実施例】
【0158】
実施例
下記の例は、説明の目的で用いられ、限定を目的としない。化合物は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI)から購入し、入手したまま用いた。シリカゲルプレートを、Analtech(Newark, DE)から入手した。NMRスペクトルを、300MHz Brucker 装置で記録した。化学シフトは、TMSからダウンフィールドへのppmであり、列記の溶媒において記録した。分裂パターンを、下記:s、一重線;d、二重線;t、三重線;m、多重線;br、広範として示す。
【0159】
実施例1
5の製造
1.1 2の合成
4−クロロ−3−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(1)を、O. Langer, et al., Bioorg. Med. Chem., 9:677-694 (2001)およびS. A. Adediran, et al., Bioorg. Med. Chem. 9:1175-1183 (2001)に従い、製造した。26mLのDMF中KCO(64mmol)および臭化ベンジル(15.3mmol)を、フェノール、1(12.9mmol)に添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。翌朝、反応混合物をろ過し、ろ液をEtOAc中に抽出し、飽和NHCl、HOおよび塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。シリカゲルを用いて精製し、所望の3−ベンジルオキシ−4−クロロ−ベンズアルデヒド化合物(2)を得た。
【0160】
1.2 結果
構造式2の分析データを、下記に示す。
【0161】
1.2a 3−ベンジルオキシ−4−クロロ−ベンズアルデヒド
1H NMR (CDCl3): 9.92 (s, 1H), 7.57 (d, 1H, J=8.0 Hz), 7.49 (d, 3H, J=7.2 Hz), 7.43−7.40 (m, 3H), 7.39−7.35 (m, 1H), 5.23 (s, 2H)。
【0162】
1.2 3の合成
3−ベンジルオキシ−4−クロロ−ベンズアルデヒド化合物(2)(20mmol)、酢酸アンモニウム(ニトロメタン中60mmolを22mL)および酢酸6mLの混合物を、3時間加熱した。反応混合物を、室温まで冷却し、一晩そのままにした。結晶物質が形成され、それをろ過し、少量のEtOAcおよびヘキサンで洗浄し、黄色生成物を得た。母液を濃縮し、クロロホルム中に溶解し、水および塩水で洗浄し、乾燥させた。母液から形成された物質を濃縮し、シリカゲルのクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン=1:3)により精製し、より多くの該黄色生成物2−ベンジルオキシ−1−クロロ−4−(2−ニトロ−ビニル)−ベンゼン(3)を淡黄色固体として得た。
【0163】
1.3 結果
構造式3の分析データを、下記に示す。
【0164】
1.3a 2−ベンジルオキシ−1−クロロ−4−(2−ニトロ−ビニル)−ベンゼン
1H NMR (CDCl3): 8.06 (d, 1H, J=13.6 Hz), 7.66−7.48 (m,7H), 7.26 (dd, 1H, J=2.0, 8.0 Hz), 7.21 (d, 1H, J=2.0 Hz), 5.35 (s, 2H)。LCMS m/z 290.20 [M+H]
【0165】
1.4 4の合成
無水THF中3−アセチル−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オン(1mmol)50mLを、−78℃にて、シリンジによりTHF中リチウムジイソプロピルアミド(1.0当量)に滴下し、1時間撹拌した。ニトロオレフィン(無水THF中1mmol)の溶液25mLを、該反応混合物にゆっくり添加した。反応物を1時間撹拌し、飽和NHCl水溶液でクエンチし、室温まで温めた。反応混合物をEtOAcで抽出し、乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残渣のシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン)により、所望の生成物4−ベンジル−3−[3−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−4−ニトロ−ブチリル]−オキサゾリジン−2−オン(4)を白色固体として得た。
【0166】
1.5 結果
構造式4の分析データを、下記に示す。
【0167】
1.5a 4−ベンジル−3−[3−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−4−ニトロ−ブチリル]−オキサゾリジン−2−オン
1H NMR (CDCl3): 7.48 (d, 2H, J=7.2 Hz), 7.40 (t, 2H, J=7.2 Hz), 7.36−7.28 (m, 5H), 7.17 (dd, 2H, J=1.6, 8.0), 6.90 (d, 1H, J=2.0 Hz), 6.83 (dd, 1H, J=2.0, 8.4 Hz), 5.16 (s, 2H), 4.69 (dd, 1H, J=6.8, 12.4 Hz), 4.62−4.54 (m, 2H), 4.18−4.07 (m, 3H), 3.51 (dd, 1H, J=7.6, 17.2 Hz), 3.30−3.21 (m, 2H), 2.74 (dd, 1H, J=9.6, 13.6 Hz); LCMS m/z 509.20 [M+H]
【0168】
1.6 5の合成
4を、EtOH中に溶解した(または部分的に溶解した)。この溶液に、ラネーニッケルを添加した。混合物を水素下に付し、10から24時間撹拌した。混合物を、セライトを通してろ過し、濃縮した。残渣をシリカゲルで精製し、純粋な生成物4−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−ピロリジン−2−オン(5)を白色固体として得た。
【0169】
1.7 結果
構造式5の分析データを、下記に示す。
【0170】
1.7a 4−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−ピロリジン−2−オン
1H NMR (CDCl3): 7.41 (d, 2H, J=7.6 Hz), 7.35 (t, 2H, J=6.8 Hz), 7.29 (d, 2H, J=8.0 Hz), 6.78 (d, 1H, J=2.0 Hz), 6.75 (dd, 1H, J=2.0, 8.0 Hz), 5.58 (brs, 1H), 5.11 (s, 2H), 3.70 (t, 1H, J=8.4 Hz), 3.62−3.56 (m, 1H), 2.27 (dd, 1H, J=6.8, 9.2 Hz), 2.66 (dd, 1H, J=8.8, 16.8 Hz), 2.36 (dd, 1H, J=9.2, 17.2 Hz); LCMS m/z 302.20 [M+H]
【0171】
実施例2
2.1 8の合成
アセトニトリル中p−アニシジン(7)(18.48g、0.15mol、1当量)および2,5−ジメトキシ−2,5−ジヒドロフラン(6)(39.04g、0.3mol、2当量)の溶液750mLに、0.4N HCl水溶液600mLを添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、NaHCO(40.32g、0.48mol、HClに対して2当量)でクエンチし、27℃にて減圧下で濃縮し、EtOAcとHOの間に分配させた。水相をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。粗残渣を、ヘキサン:EtOAc(1:1)の混合溶媒を用いてシリカカラムのクロマトグラフィーにより精製し、1−(4−メトキシ−フェニル)−1,5−ジヒドロ−ピロール−2−オン(8)(10.85g、38%)を得た。
【0172】
2.2 結果
構造式8の分析データを、下記に示す。
【0173】
2.2a 1−(4−メトキシ−フェニル)−1,5−ジヒドロ−ピロール−2−オン
1H NMR (CDCl3): δ 7.57 (2H, d, J=9.2 Hz), 7.14 (1H, dt, J=0.8, 6.0 Hz), .6.92 (2H, d, J=9.2 Hz), 6.26 (1H, dt, J=0.8, 6.0 Hz), 4.40 (2H, t, J=1.6), 3.80 (3H, s)。
【0174】
2.3 9の合成
2−ベンジルオキシ−4−ブロモ−1−クロロ−ベンゼン(120g、0.4mol)、二ホウ酸塩(107.5g、0.42mol)、KOAc(117.8g、3当量)、Pd(dppf)Cl(1%モル)および500mL DMFの混合物を、撹拌しながら脱気し、窒素で再充填した。混合物を80℃で3時間加熱した。DMFを真空下で除去した。残渣を酢酸エチルと混合した。ろ過後、固体を酢酸エチルで洗浄し(3×20mL)、酢酸エチル中で再結晶し、97gの純粋な生成物を得た。母液も濃縮した。残渣を、短いシリカカラム(10%酢酸エチル:ヘキサン)を洗浄することにより精製し、粗生成物を得、それを酢酸エチル中で再結晶し、2−(4−クロロ−3−ベンジルオキシ−フェニル)−4,4,5,5,−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボラン(9)を得た。
【0175】
2.4 結果
構造式9の分析データを、下記に示す。
【0176】
2.4a 2−(4−クロロ−3−ベンジルオキシ−フェニル)−4,4,5,5,−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボラン
1H NMR (CDCl3): δ 7.35 (2H, d, J=7.6 Hz), 7.28 (1H, br s), 7.17−7.26 (5H, m), 7.11 (1H, s), 5.02 (2H, s), 1.20 (12H, s)。
【0177】
2.5 10の合成
1−(4−メトキシ−フェニル)−1,5−ジヒドロ−ピロール−2−オン(8)(9g、47.57mmol、1当量)、2−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボラン(9)(32.8g、95.14mmol、2当量)、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体(352mg、0.7136mmol、0.015当量)、(R)−BINAP(1.04g、1.665mmol、0.035当量)およびKCO(3.3g、23.8mmol、0.5当量)の溶液を、ジオキサン(200mL)および水(20mL)の混合溶媒中に製造した。該溶液を窒素でパージし、油浴中で26時間80℃まで加熱した。反応混合物を、EtOAcと塩水の間に分配させた。水相をEtOAcで抽出し、合わせたEtOAc抽出物を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発させた。ヘキサン:EtOAc 5:4の溶離剤を用いて短いカラムを通してクロマトグラフィーし、固形生成物を得、それをEtOAcおよびヘキサン中で再結晶させ、(R)−4−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−1−(4−メトキシ−フェニル)−ピロリジン−2−オン(10)を得た。
【0178】
2.6 結果
構造式10の分析データを、下記に示す。
【0179】
2.6a (R)−4−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−1−(4−メトキシ−フェニル)−ピロリジン−2−オン
1H NMR (CDCl3): δ 7.48 (2H, d, J=9.2 Hz), 7.44 (2H, m), 7.32−7.39 (4H, m), 6.92 (2H, d, J=9.2 Hz), 6.86 (1H, d, J=1.6 Hz), 6.83 (1H, dd, J=0.8, 8.0 Hz), 5.16 (2H, s), 4.12 (1H, dd, J=8.0, 9.6 Hz), 3.81 (3H, s), 3.75 (1H, dd, J=6.8, 9.6 Hz), 3.63 (1H, dddd, J=8 Hz), 2.98 (1H, dd, J=8.8, 16.8 Hz), 2.68 (1H, dd, J=16.8, 8.4 Hz) ppm。
【0180】
2.7 5の合成
CHCN中4−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−1−(4−メトキシ−フェニル)−ピロリジン−2−オン(10)(16.5g、40mmol、1当量)の溶液1400mLに、50%CHCN水溶液中硝酸アンモニウムセリウム(CAN)(65.8g、0.12mol、3当量)の溶液を0℃で滴下した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、NaSO(45.4g、0.36mol、9当量)を添加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、セライトを通してろ過し、沈殿を除去した。母液を減圧下で濃縮し、残渣を、EtOAc中5%MeOHとHOの間に分配させた。水相を、EtOAc中5%MeOHを用いて抽出し、合わせた抽出物を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発させた。CHCl:MeOH 40:1の溶離剤を用いて短いカラムを通してクロマトグラフィーし、(R)−4−(3−ベンジルオキシ−4−クロロ−フェニル)−ピロリジン−2−オン(5)を得た。
【0181】
実施例3
12の製造
3.1 11の合成
5(10.5g、34.8mmol)およびPd/C(10%)3.2gの混合物に、500mL THF、およびジオキサン中4M HCl500μLを添加した。反応混合物を脱気し、水素で10回パージし、水素雰囲気下で19時間撹拌し、セライトを通してろ過した。ろ液を蒸発させ、粗生成物を得、それをEtOAcおよびヘキサン中で再結晶し、(R)−4−(4−クロロ−3−ヒドロキシ−フェニル)−ピロリジン−2−オン(11)を得た。
【0182】
3.2 12の合成
乾燥DMSO(125mL)中、11(3.57g、16.9mmol、1当量)および3−クロロ−2−フルオロベンゾニトリル(5.25g、33.74mol、2当量)の溶液に、KCO(7g、50.6mmol、3.1当量)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、EtOAcと塩水の間に分配させた。水相をEtOAcで抽出し、合わせたEtOAc抽出物を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発した。CHCl:MeOH 20:1の溶離剤を用いてシリカカラムでクロマトグラフィーし、(R)−3−クロロ−2−[2−クロロ−5−(5−オキソ−ピロリジン−3−イル)−フェノキシ]−ベンゾニトリル(12)を得た。
【0183】
2.4 結果
構造式9の分析データを、下記に示す。
【0184】
2.4a (R)−3−クロロ−2−[2−クロロ−5−(5−オキソ−ピロリジン−3−イル)−フェノキシ]−ベンゾニトリル
MS m/z 347.0 (M+1)。
【0185】
実施例4
26の製造
4.1 22の合成
乾燥丸底フラスコに、窒素下で、12(0.5mmol)、リン酸カリウム(0.9mmol)、2−フルオロ−5−ヨードベンゾニトリル(0.75mmol)、1,2−トランス−シクロヘキサンジアミン(60μL)およびCuI(80mg)を入れた。反応を、窒素、DMF(5mL)およびジオキサン(5mL)で充填した。混合物を撹拌し、110℃で20時間加熱し、その後室温まで冷却した。室温の溶液をEtOAcで希釈し、ろ過した。ろ液を飽和塩化アンモニウム、水および塩水で洗浄し、乾燥させた。濃縮および残渣のシリカゲルのクロマトグラフィーにより、純粋な3−クロロ−2−{2−クロロ−5−[1−(3−シアノ−4−フルオロ−フェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−フェノキシ}−ベンゾニトリル(22)を得た。
【0186】
4.2 結果
構造式22の分析データを、下記に示す。
【0187】
4.2a 3−クロロ−2−{2−クロロ−5−[1−(3−シアノ−4−フルオロ−フェニル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−フェノキシ}−ベンゾニトリル
MS m/z 466 (M+1)。
【0188】
4.3 23の合成
プロパノール(0.5mL)中、22(20mg、0.043mmol)の溶液に、ヒドラジン(17mg、0.344mmol)を添加した。混合物を100℃で14時間撹拌し、室温まで冷却した。溶媒を真空下で除去し、残渣を逆相LC/MSにより精製し、2−{5−[1−(3−アミノ−1H−インダゾール−5−イル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−2−クロロ−フェノキシ}−3−クロロ−ベンゾニトリル(23)を得た。
【0189】
4.4 結果
構造式23の分析データを、下記に示す。
【0190】
4.4a 2−{5−[1−(3−アミノ−1H−インダゾール−5−イル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−2−クロロ−フェノキシ}−3−クロロ−ベンゾニトリル
1H NMR 400 MHz (MeOD): δ 7.99 (1H, d), 7.94 (1H, dd), 7.85 (1H, dd), 7.78 (1H, dd), 7.56 (1H, d), 7.47 (1H, d), 7.43 (1H, t), 7.21 (1H, d), 6.64 (1H, d), 4.28 (1H, dd), 3.89 (1H, dd), 3.74 (1H, m), 3.01 (1H, dd), 2.67 (1H, dd); MS m/z 478 (M+1)。
【0191】
4.5 25の合成
2−{5−[1−(3−アミノ−1H−インダゾール−5−イル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−2−クロロ−フェノキシ}−3−クロロ−ベンゾニトリル(23)(80mg、0.167mmol)および無水フタル酸(30mg、0.2mmol)を、ジオキサン1mL中に添加し、120℃まで加熱した。3時間後、混合物を室温まで冷却し、溶媒を真空下で除去した。残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl中0−8%MeOH)により精製し、3−クロロ−2−(2−クロロ−5−{1−[3−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]−5−オキソ−ピロリジン−3−イル}−フェノキシ)−ベンゾニトリル(25)を淡黄色固体として得た。
【0192】
4.6 26の合成
無水CHCl(2mL)中、25(62mg、0.102mmol)を、クロロスルホニルイソシアニド(20μL)で処理した。室温で1時間撹拌後、溶媒を除去した。残渣を水(1mL)で処理し、室温で1時間撹拌した。その後、水を真空下で除去し、残渣が残った。該残渣を、EtOH(2mL)中に溶解し、ヒドラジン(60μL)で3時間処理した。その後、溶媒を真空下で除去し、残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl中0−5%MeOH)により精製し、3−アミノ−5−{4−[4−クロロ−3−(2−クロロ−6−シアノ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−インダゾール−1−カルボン酸アミド(26)を白色固体として得た。
【0193】
4.7 結果
構造式26の分析データを、下記に示す。
【0194】
4.7a 3−アミノ−5−{4−[4−クロロ−3−(2−クロロ−6−シアノ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−インダゾール−1−カルボン酸アミド
1H NMR 400 MHz (MeOD): δ 8.10 (1H, d), 7.83 (1H, d), 7.80 (1H, dd), 7.73 (1H, dd), 7.67 (1H, dd), 7.53 (1H, d), 7.37 (1H, t), 7.17 (1H, d), 6.58 (1H, d), 4.26 (1H, dd), 3.86 (1H, dd), 3.71 (1H, m), 3.00 (1H, dd), 2.61 (1H, dd); MS m/z 521 (M+1)。
【0195】
実施例5
29の製造
5.1 28の合成
12(200.0mg、0.58mmol)を、4−ブロモ−2−ニトロベンゾニトリル(27)(156.9mg、0.69mmol)と結合させ、(R)−3−クロロ−2−(2−クロロ−5−(1−(4−シアノ−3−ニトロフェニル)−5−オキソピロリジン−3−イル)フェノキシ)ベンゾニトリル(28)を淡黄色固体として得た。
【0196】
5.2 結果
構造式28の分析データを、下記に示す。
【0197】
5.2a (R)−3−クロロ−2−(2−クロロ−5−(1−(4−シアノ−3−ニトロフェニル)−5−オキソピロリジン−3−イル)フェノキシ)ベンゾニトリル
1H NMR 400 MHz (MeOD): δ 8.88 (1H, d), 7.99 (2H, m), 7.85 (1H, dd), 7.78 (1H, dd), 7.54 (1H, d), 7.44 (1H, t), 7.19 (1H, dd), 6.64 (1H, d), 4.30 (1H, dd), 3.88 (1H, dd), 3.72 (1H, m), 3.00 (1H, dd), 2.73 (1H, dd); MS m/z 493.0 (M+1)。
【0198】
5.3 29の合成
EtOH5.6mL中、28(277.7mg、0.56mmol)およびSnCl・2HO(393.8mg、1.75mmol)の混合物を、N雰囲気下で50℃にて2時間加熱した。その後、反応混合物を水6mLで希釈し、pHが9から10の間になるまで1N NaOH水溶液を用いてアルカリ性にした。その後、EtOAc6mLを添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、その後セライトを通してろ過した。ろ液を2層に分離し、水層をEtOAcで抽出した。合わせたEtOAc層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製し、(R)−2−アミノ−4−(4−(4−クロロ−3−(2−クロロ−6−シアノフェノキシ)フェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル)−ベンズアミド(29)を黄色固体として得た。
【0199】
5.4 結果
構造式29の分析データを、下記に示す。
【0200】
5.4a (R)−2−アミノ−4−(4−(4−クロロ−3−(2−クロロ−6−シアノフェノキシ)フェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル)−ベンズアミド
1H NMR 400 MHz (MeOD): δ 7.81 (1H, dd), 7.74 (1H, dd), 7.52 (2H, m), 7.39 (1H, t), 7.13 (1H, dd), 6.94 (1H, d), 6.83 (1H, dd), 6.51 (1H, d), 4.18 (1H, dd), 3.76 (1H, dd), 3.64 (1H, m), 2.97 (1H, dd), 2.55 (1H, dd); MS m/z 481.0 (M+1)。
【0201】
実施例6
30の製造
6.1 30の合成
25(10mg、0.016mmol)を、ピリジン0.5mL中に溶解し、塩化メタンスルホニル10μLを添加した。混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を飽和塩化アンモニウム(2mL)で処理し、次いで、抽出した(3mL×3)。抽出物を合わせ、濃縮し、EtOH0.5mL中に再溶解した。ヒドラジン5μLを添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を逆相LC/MSにより精製し、2−{5−[1−(3−アミノ−1−メタンスルホニル−1H−インダゾール−5−イル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−2−クロロ−フェノキシ}−3−クロロ−ベンゾニトリル(30)を得た。
【0202】
6.2 結果
構造式30の分析データを、下記に示す。
【0203】
6.2a 2−{5−[1−(3−アミノ−1−メタンスルホニル−1H−インダゾール−5−イル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−2−クロロ−フェノキシ}−3−クロロ−ベンゾニトリル
1H NMR 400 MHz (MeOD): δ 7.94 (1H, d), 7.81−7.95 (3H, m), 7.75 (1H, dd), 7.54 (1H, d), 7.39 (1H, t), 7.18 (1H, dd), 6.60 (1H, d), 4.28 (1H, dd), 3.88 (1H, dd), 3.72 (1H, m), 2.93 (3H, s), 3.00 (1H, dd), 2.64 (1H, dd); MS m/z 556 (M+1)。
【0204】
実施例7
31の製造
7.1 31の合成
実施例6および7の化合物30の製造方法と同じ方法により、表題化合物を製造した。
【0205】
7.2 結果
構造式31の分析データを、下記に示す。
【0206】
7.2a 2−{5−[1−(3−アミノ−1−メタンスルホニル−1H−インダゾール−5−イル)−5−オキソ−ピロリジン−3−イル]−2−クロロ−フェノキシ}−3−フルオロ−ベンゾニトリル
1H NMR 400 MHz (DMSO−d6): δ 7.85 (1H, d, J=2.0), 7.81 (1H, dd, J=2.4, 5.2 Hz), 7.65−7.69 (2H, m), 7.58 (1H, d, J=9.2 Hz), 7.46 (1H, d, J=8.0 Hz), 7.34 (1H, dt, J=4.8, 8.0 Hz), 7.14 (1H, dd, J=2.0, 8.4 Hz), 6.94 (1H, s), 6.40 (2H, s), 3.99 (1H, t, J=8.4 Hz), 3.66 (1H, t, J=8.0 Hz), 3.59 (1H, ddd, J=8.4 Hz), 3.15 (3H, s), 2.70 (1H, dd, J=8.4, 16.4 Hz), 2.55 (1H, dd, J=8.4, 16.4 Hz)。
【0207】
実施例8
17の製造
8.1 15の合成
無水DMF中、N−(4−メトキシ−ベンジル)−メタンスルホンアミド(14)(613mg、2.85mmol)の撹拌溶液を、氷水浴を用いて0℃まで冷却し、水素化ナトリウム(114mg、4.75mmol)の60%分散液で処理した。無水DMF中、2−フルオロ−5−ヨードベンゾニトリル(13)の溶液5mLを、反応混合物に添加した。得られる溶液を室温まで温め、80℃で1時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、飽和NHCl水溶液でクエンチし、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。クロマトグラフィー(SiO、Hex:EtOAc 3:1)により、N−(2−シアノ−4−ヨード−フェニル)−N−(4−メトキシ−ベンジル)−メタン−スルホンアミド(15)を白色固体として得た。
【0208】
8.2 16の合成
THF:MeOH:HO 3:2:1中、15(600mg、1.4mmol)の溶液6mLを、水酸化ナトリウム(1.0g、27.0mmol)で処理した。反応混合物を、12時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、エタノールで洗浄した。水層をpH1まで酸性化し、EtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、ろ過し、濃縮し、5−ヨード−2−[メタンスルホニル−(4−メトキシ−ベンジル)−アミノ]−安息香酸(16)を白色固体として得た。
【0209】
8.3 結果
構造式16の分析データを、下記に示す。
【0210】
8.3a 5−ヨード−2−[メタンスルホニル−(4−メトキシベンジル)−アミノ]−安息香酸
1H NMR (CDCl3): δ 8.34 (1H, d, J=2.0 Hz), 7.76 (1H, dd, J=2.0, 8.0 Hz), 7.15 (2H, d, J=8.8 Hz), 6.79 (3H, m), 4.51 (1H, br s), 3.78 (3H, s), 2.98 (3H, s)。
【0211】
8.4 17の合成
CHCl(10mL)中、16(366mg、0.79mmol)の溶液を0℃で撹拌し、塩化メタンスルホニル(183mg、1.6mmol)およびEtN(162mg、1.6mmol)で処理した。反応物を1時間撹拌し、ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−アミン(257mg、0.87mmol)で処理した。反応物を室温まで温め、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。クロマトグラフィー(SiO、Hex:EtOAc 1:1)により、5−ヨード−2−[メタンスルホニル−(4−メトキシ−ベンジル)−アミノ]−N,N−ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−ベンズアミド(17)を白色固体として得た。
【0212】
8.5 結果
構造式17の分析データを、下記に示す。
【0213】
8.5a 5−ヨード−2−[メタンスルホニル−(4−メトキシ−ベンジル)−アミノ]−N,N−ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−ベンズアミド
1H NMR (CDCl3): δ 7.63 (1H, d, J=2.0 Hz), 7.56 (1H, dd, J=2.0, 8.4 Hz), 7.30 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.18−7.21 (2H, m), 7.08 (2H, d, J=8.4 Hz), 6.91 (2H, d, J=8.4 Hz), 6.88 (2H, J=8.4 Hz), 6.38−6.55 (2H, m), 6.67−6.70 (1H, m), 5.36 (1H, m), 4.71 (2H, m), 4.42 (1H, m), 4.12 (1H, m), 3.96 (1H, m), 3.83 (3H, s), 3.81 (3H, s), 3.79 (3H, s)。
【0214】
実施例9
33の製造
9.1 32の合成
乾燥丸底フラスコに、窒素下で、0.5mmolの12、0.9mmolのリン酸カリウム、17(0.75mmol)、1,2−トランス−シクロヘキサンジアミン(60μL)およびCuI(80mg)を入れた。反応物を、窒素、DMF(5mL)およびジオキサン(5mL)で充填した。混合物を撹拌し、110℃で20時間加熱し、その後室温まで冷却した。室温の溶液をEtOAcで希釈し、ろ過した。ろ液を飽和塩化アンモニウム、水および塩水で洗浄し、乾燥させた。濃縮および残渣のシリカゲルのクロマトグラフィーにより、純粋な32を得た。
【0215】
9.2 33の合成
32(200mg)を、TFA3mL中に溶解し、得られる溶液を80℃にて4時間加熱し、その後室温まで冷却した。TFAを減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=20:1)により精製し、純粋な5−{4−[4−クロロ−3−(2−クロロ−6−シアノ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−2−メタンスルホニルアミノ−ベンズアミド(33)を得た。
【0216】
9.3 結果
構造式33の分析データを、下記に示す。
【0217】
9.3a 5−{4−[4−クロロ−3−(2−クロロ−6−シアノ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−2−メタンスルホニルアミノ−ベンズアミド
1H NMR 400 MHz (CDCl3): δ 10.9 (1H, br s), 7.88 (1H, dd), 7.86 (1H, br s), 7.81−7.74 (3H, m), 7.53 (1H, d), 7.46 (1H, d), 7.41 (1H, 見掛け上 t), 7.15 (1H, d), 7.06 (1H, br s), 6.75 (1H, s), 4.09 (1H, d), 3.74 (1H, dd), 3.61 (1H, m), 2.92 (3H, s), 2.73 (1H, dd), 2.48 (1H, dd); MS m/z 559.0 (M+1)。
【0218】
実施例10
21の製造
10.1 19の合成
エタノール(500mL)中、p−アニスアルデヒド(146mmol)の溶液に、4−メトキシベンジルアミン(146mmol)を添加した。その後、混合物を氷水浴中で冷却した。NaBH(294mmol)を少しずつ添加し、反応混合物を室温まで徐々に温めた。氷水スラッシュ(100mL)を添加し、混合物をその元の容量の半分まで濃縮した。その後、混合物をエーテルで抽出し、有機相を合わせ、塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。ヘキサン(〜50mL)を添加し、沈殿物をろ過し、35gのビス−(4−メトキシ−ベンジル)−アミン(19)を白色固体として得た。
【0219】
10.2 20の合成
19(9.41g)の溶液に、トリエチルアミン10.2mLおよびジクロロメタン100mLを添加した。その後、塩化2−フルオロ−4−ブロモベンゼンスルホニル10gを、撹拌しながら0℃にて少しずつ添加した。反応混合物を室温までゆっくり温め、一晩撹拌した。ジクロロメタン(100mL)を添加し、混合物を1N HCl溶液、飽和NaHCO、塩水で洗浄し、乾燥させた。溶媒を除去後、固体をヘキサンと共に混合し、ろ過し、純粋な4−ブロモ−2−フルオロ−N,N−ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−ベンゼンスルホンアミド(20)を得た。母液を濃縮し、精製し、より多くの生成物を得た。
【0220】
10.3 結果
構造式20の分析データを、下記に示す。
【0221】
10.3a 4−ブロモ−2−フルオロ−N,N−ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−ベンゼンスルホンアミド
1H NMR (CDCl3): δ 7.74 (1H, t, J=7.6 Hz), 7.36 (2H, dt, J=8.4, 1.6 Hz), 6.98(4H, d, J=8.4 Hz), 6.76 (4H, d, J=8.4 Hz), 4.33 (4H, s), 3.78 (6H, s)。
【0222】
10.4 21の合成
20mLのマイクロ波管に、KCO760mg、20(2g)、4−メトキシベンジルアミン660uL、およびDMF18mLを添加した。該管を、マイクロ波反応器中、180℃にて2500秒間加熱し、冷却した。この反応を、全量20gの2−フルオロ−スルホンアミドを用いるため10回行った。10回の反応からの有機相を合わせ、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化アンモニウム溶液および水で洗浄した。それを乾燥させ、濃縮し、残渣をヘキサン/酢酸エチルから再結晶し、所望の4−ブロモ−N,N−ビス−(4−メトキシベンジル)−2−(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−ベンゼンスルホンアミド(21)を得た。
【0223】
10.4 結果
構造式21の分析データを、下記に示す。
【0224】
10.4a 4−ブロモ−N,N−ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−2−(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−ベンゼンスルホンアミド
1H NMR (CDCl3): δ 7.60 (1H, d, J=8.4 Hz), 7.15 (2H, d, J=8.4 Hz), 6.94 (4H, d, J=8.4 Hz), 6.88 (1H, d, J=1.6 Hz), 6.80−6.85 (3H, m), 6.77 (4H, d, J=8.4 Hz), 6.35 (1H, t, J=4.8 Hz), 4.24 (2H, d, J=4.8 Hz), 4.18 (4H, s), 3.78 (9H, s)。
【0225】
実施例11
37の製造
11.1 35の合成
乾燥DMSO(125mL)中、11(3.57g、16.9mmol、1当量)および3−フルオロ−2−フルオロベンゾニトリル(5.25g、33.74mol、2当量)の溶液に、KCO(7g、50.6mmol、3.1当量)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、EtOAcと塩水の間に分配させた。水相をEtOAcで抽出し、合わせたEtOAc抽出物を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発させた。CHCl:MeOH 20:1の溶離剤を用いてシリカカラムのクロマトグラフィーにより、(R)−3−クロロ−2−[2−クロロ−5−(5−オキソ−ピロリジン−3−イル)−フェノキシ]−ベンゾニトリル(35)を得た。
【0226】
11.2 結果
構造式35の分析データを、下記に示す。
【0227】
11.2a 5−{4−[4−クロロ−3−(2−クロロ−6−シアノ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−2−メタンスルホニルアミノ−ベンズアミド
1H NMR (CDCl3): δ 7.51 (1H, dt, J=1.2, 7.6 Hz), 7.43 (1H, d, J=8.0 Hz), 7.42 (1H, dt, J=1.6, 10.4 Hz), 7.31 (1H, dd, J=4.8, 8.0 Hz), 7.00 (1H, dd, J=2.0, 8.0 Hz), 6.65 (1H, brs), 5.61 (1H, br s), 3.73 (1H, t, J=9.2 Hz), 3.60(1H, dddd, J=8.4 Hz), 3.31 (1H, dd, J=6.8, 9.2 Hz), 2.68 (1H, dd, J=9.2, 17.2 Hz), 2.37 (1H, dd, J=8.4, 16.8 Hz)。
【0228】
11.3 36の合成
乾燥丸底フラスコに、窒素下で、35(0.5mmole)、リン酸カリウム(0.9mmol)、21(0.75mmol)、1,2−トランス−シクロヘキサンジアミン(60マイクロL)およびCuI(80mg)を入れる。反応物を、窒素、DMF(5mL)およびジオキサン(5mL)で充填する。混合物を撹拌し、110℃で20時間加熱し、その後、室温まで冷却する。それをEtOAcで希釈し、ろ過する。ろ液を飽和塩化アンモニウム、水および塩水で洗浄し、その後乾燥させる。濃縮および残渣のシリカゲルのクロマトグラフィーにより、4−{4−[4−クロロ−3−(2−シアノ−6−フルオロ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−N,N−ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−2−(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−ベンゼンスルホンアミド(36)を得た。
【0229】
11.4 37の合成
36(120mg)を、2mLのTFA:ジクロロメタン 50:50中に溶解した。溶液を室温で一晩撹拌し、濃縮した。残渣をクロロホルム中に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で処理した。得られる混合物を10分間撹拌した。その後、有機層を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒の除去後、残渣をシリカゲル(EtOAc:MeOH=50:1)で精製し、純粋な2−アミノ−4−{4−[4−クロロ−3−(2−シアノ−6−フルオロ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−ベンゼンスルホンアミド(37)を得た。
【0230】
11.5 結果
構造式37の分析データを、下記に示す。
【0231】
11.5a 2−アミノ−4−{4−[4−クロロ−3−(2−シアノ−6−フルオロ−フェノキシ)−フェニル]−2−オキソ−ピロリジン−1−イル}−ベンゼンスルホンアミド
1H NMR (CDCl3): δ 7.55−7.60 (2H, m), 7.48 (1H, d, J=6.4 Hz), 7.46 (1H, d, J=6.4 Hz), 7.40 (1H, dt, J=4.8, 8.0 Hz), 7.17 (2H, m), 6.95 (1H, s), 6.83 (1H, dd, J=2.4, 9.2 Hz), 6.34 (2H, br s), 5.52 (2H, br s), 4.08 (1H, m), 3.59−3.70 (2H, m), 2.76 (1H, dd, J=8.4, 16.4 Hz), 2.51 (1H, dd, J=8.4, 16.4)。
【0232】
適当な出発物質を用いて、上記の実施例に記載の方法を繰り返すことにより、下記の本発明の化合物(表1に特定する。)を得た。
【0233】
実施例12
生物学的試験分析
本発明の化合物のHIVを阻止する能力を、下記の分析により試験した。水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(“VSV−g”)偽型HIV−1ルシフェラーゼレポーターウイルス(“HIV−1偽ウイルス”)を、この分析に用いた。該ウイルスを、3種のプラスミドである、VSV−gエンベロープ発現プラスミド、パッケージ化コンストラクト(デルタpsi)およびHIV−1 LTR:LucプラスミドからなるHIV−1レンチウイルスベクター系の三重一過性トランスフェクション(CaP, Clontech)後、ヒト胚性腎臓(HEK)293T生成細胞(“HEK293T”)から採取した。該VSV−gエンベロープ発現プラスミドは、指向性の範囲が広く、HEK293T標的細胞への侵入を仲介する偽ウイルス受容体を作製する。デルタpsiパッケージ化コンストラクトは、偽ウイルスの作製に必要な全ての構造遺伝子産物および調節遺伝子産物を提供する。HIV−1 LTR:Lucプラスミドから合成されるウイルスベクターRNAは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子およびHIV−1 LTRに加えて、シスRNAパッケージ化シグナル(psi配列)を有する。トランスフェクトされたプロデューサー細胞の上清は、ウイルスゲノム中にルシフェラーゼ遺伝子のみを担持するHIV−1偽ウイルス粒子を含む。293T標的細胞の形質転換により、ウイルスゲノムRNAは、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター)により作動される組み込まれたレシフェラーゼ遺伝子の逆転写、核転移、組み込み、および転写を受ける。感染後48時間で、ルシフェラーゼ活性を、EC50値を決定するために、CLIPRプレートリーダー(Molecular Devices)を用いてBright−Glo試薬(Promega)基質を用いて測定した。
【0234】
生物学的試験分析プロトコール
293T標的細胞における複製欠損HIVレポーターウイルスに対する活性(単一サイクル感染分析):
HEK293T細胞を、通常、10%FBS、1×Pen/Strep/グルタミン添加ダルベッコの修飾イーグルス培地(DMEM)中で培養する。プロトコールを下記に示す:
【0235】
1.293T細胞を、Aquamax(Molecular Devices)液体ディスペンサーを用いて、700細胞/ウェル(5μL容量)で1536ウェル型に播く。
2.細胞を、24時間、5%CO下、37℃にて培養する。
3.各化合物(DMSOで連続的に希釈)50nLを、PinTool(GNF)を用いて移す。
4.37℃で1時間インキュベート後、HIVレポーターウイルスを、約1.0の感染の多重度(MOI)に対応する2μL容量でAquamaxを用いて細胞に移す。
5.処理および感染細胞を、37℃でさらに48時間培養する。
6.ルシフェラーゼ活性を、Bright−Glo(Promega、カタログ番号E263BおよびE264B)ルシフェラーゼ試薬(5uL/ウェル、Aquamax)の添加により観察し、次いで、20秒のシャトルスピードを用いてCLIPR装置(Molecular Devices)でプレートを読み出す。
【0236】
細胞毒性分析(全ての感染阻止分析と同時に行う)
1.293T細胞を、Aquamax(Molecular Devices)液体ディスペンサーを用いて、700細胞/ウェル(5μL容量)で1536ウェル型に播く。
2.細胞を、24時間、5%CO下、37℃にて培養する。
3.各化合物(DMSOで連続的に希釈)50nLを、PinTool(GNF)を用いて移す。
4.処理および非感染細胞を、37℃でさらに48時間培養する。
5.細胞の生存を、DMEM中1:1希釈したAlamar Blue(Promega、カタログ番号00−100)1μLの添加により評価する。
6.細胞を、室温でさらに4時間インキュベートし、次いで、蛍光強度を、50/50ビームスプリッターでAcquest(TREKシステム)を用いて読み出す。
【0237】
本明細書に記載の実施例および態様は、説明のみを目的とし、それを踏まえた様々な修飾または変形が、当業者に提案され得、本明細書および特許請求の範囲の精神および範囲内に包含されることは、理解された。本明細書に引用される全ての文献、特許、および特許出願は、全ての目的に関してその全体が参照により本明細書中に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】図1は、本発明の化合物の例を記載する表である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図1I】

【図1J】

【図1K】

【図1L】

【図1M】

【図1N】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、
およびRは、H、CN、ハロゲン、置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換C−CアルケニルおよびORから独立して選択されるメンバーであり、
ここで、Rは、置換もしくは非置換C−CアルキルおよびC−Cハロアルキルから選択されるメンバーであり;
およびRは、H、ハロゲン、CN、および置換もしくは非置換C−Cアルキルから選択されるメンバーであり;
は、H、CNおよびアルキルから選択されるメンバーであり;
は、縮合フェニルヘテロ環式環系、および下記:
【化2】

から選択されるメンバーであり、
ここで、RおよびR11は、H、置換もしくは非置換C−Cアルキル、ハロゲン、CN、C(O)NR1212、NR1212およびOR12から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、R12は、H、置換もしくは非置換C−Cアルキルから選択されるメンバーであり;
10は、H、CN、NR1314、SONHR13、NHSO13、SONH(CHOR13、SONH(CHNR1314、O(CHSONHR13、O(CHNR1314、O(CHSO15、SO15、SO(CHNR1314およびC(O)NR1314から選択されるメンバーであり、
ここで、R13およびR14は、Hおよび置換もしくは非置換C−Cアルキルから選択されるメンバーであり、それらが結合する窒素と一体となって、所望により結合してヘテロ環式環を形成し;
15は、置換もしくは非置換C−Cアルキルであり;
nは、1から8の整数であり;
ここで、R、R10およびR11から選択される少なくとも1個のメンバーは、H以外であり;そして、
は、ハロゲン、C−Cアルキル、C−CアルケニルおよびC−Cアルキニルから選択されるメンバーである。]
で示される化合物。
【請求項2】
が、縮合フェニルヘテロ環式環系であり、該縮合フェニルヘテロ環式環系が、下記:
【化3】

から選択されるメンバーであり、
ここで、R16は、H、C(O)NR1819、C(O)NR18(CHNR1819、C(O)NR18(CHOR18、C(O)NR18CH(CHOR18、C(O)NR18(CHC(O)NR1819、(CHSONR1819、S(O)20から選択されるメンバーであり、
ここで、R18およびR19は、H、および置換もしくは非置換C−Cアルキルから独立して選択されるメンバーであるか;または、R18およびR19は、それらの両方が結合する窒素原子と一体となって、置換もしくは非置換ヘテロ環式環を形成し;
nは、1から8の整数であり;
20は、置換もしくは非置換C−Cアルキル、および置換もしくは非置換フェニルであり;そして、
17は、H、NH、(CHOH、C(O)NR2122、SO23、NHSO23、NHCOR23から選択されるメンバーであり、
21およびR22は、H、置換もしくは非置換C−Cアルキル、および置換もしくは非置換フェニルから独立して選択されるメンバーであり、それらが結合する窒素と一体となって、所望により結合して環を形成し;
23は、置換もしくは非置換C−Cアルキルであり;そして、
mは、1から5の整数である、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、水素、ハロゲン、CN、メチル、メトキシ、ビニルおよびトリフルオロメトキシから独立して選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が、
【化4】

である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
16が、C(O)NR1819およびS(O)20から選択されるメンバーである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
18およびR19がHである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
20がCHである、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
17がNHである、請求項4記載の化合物。
【請求項9】
が、
【化5】

であり、
ここで、Rは、NHおよびC(O)NHから選択されるメンバーであり;そして、
10は、C(O)NH、NHSOCHおよびSONHから選択されるメンバーである、
請求項1記載の化合物。
【請求項10】
下記:
【化6】

から選択される式で示される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
請求項1記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
細胞におけるHIVを阻止する方法であって、該細胞を、該HIVを阻止するのに十分量の請求項1記載の化合物と接触させることを含む、方法。
【請求項13】
該HIVが、薬剤耐性HIV株である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該細胞がヒトのものである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
細胞において逆転写酵素を阻害する方法であって、該細胞を、該逆転写酵素を阻害するのに十分量の請求項1記載の化合物と接触させることを含む、方法。
【請求項16】
該逆転写酵素がHIV逆転写酵素である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
該HIVが薬剤耐性HIV株である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該細胞がヒトのものである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
ヒト対象におけるHIV感染を処置する方法であって、該対象に、該HIV感染を処置するのに十分量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項20】
該HIV感染が、薬剤耐性HIV株により引き起こされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
HIV感染の予防のための方法であって、HIV感染の危険にあるヒトに、請求項1記載の化合物の予防的な量を投与することを含む、方法。
【請求項22】
該HIVが薬剤耐性HIV株である、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2008−528624(P2008−528624A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553324(P2007−553324)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/003217
【国際公開番号】WO2006/081554
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】