説明

フォトマスクの洗浄装置およびフォトマスクの洗浄システム

【課題】装置の大型化を招くことなくパーティクルやミストの再付着を抑制するフォトマスクの洗浄装置を提供する。
【解決手段】処理槽12の内側において、壁部21の周方向に複数の第一案内翼24を設ける。この第一案内翼24は、その上端と下端とを周方向にずらしつつ、中央部を周方向に湾曲した曲面状に形成する。これにより、フォトマスク19の洗浄時に供給され、フォトマスク19の回転により壁部21方向に移動したクリーンエアおよび処理液を、第一案内翼24により下方に導く。また、第一案内翼24の下方において、壁部21の周方向に複数の第二案内翼25を設ける。第二案内翼25は、第一案内翼24により導かれたクリーンエアを、処理槽12の底部22に接続さている排出管部15に導く。これにより、パーティクルやミストなどを含むクリーンエアを処理槽12から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィプロセスに用いるフォトマスクを洗浄するフォトマスクの洗浄装置およびフォトマスクの洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスクは、半導体ウェハや液晶あるいはカラーフィルタなどの製造プロセスにおいて広く利用されている。フォトマスクは、フォトリソグラフィプロセス、より具体的には露光プロセスにおいて、露光パターンを形成する上で非常に重要な部材である。このフォトマスクにゴミやホコリなどが付着すると、露光不良を引き起こすおそれがある。そのため、フォトマスクは、使用前又は使用後の洗浄が必須である。
【0003】
フォトマスクは、一般的に、例えば図9(A)に示すような洗浄装置100により洗浄される。洗浄装置100は、フォトマスク101を回転可能に支持する回転支持部102と、回転支持部102に支持されたフォトマスク101の外周を覆う壁部103を有する処理槽104と、処理槽104から排出される気体および液体が流れる排出管部105とから主に構成されている。フォトマスク101は、処理槽104の内側において、回転支持部102により支持された状態で回転する。その状態で例えば洗剤やリンスなどの液体、あるいは例えば窒素ガスや空気などの清浄な気体を供給することにより、フォトマスク101の洗浄が行われる。また、洗浄後には、フォトマスク101の回転を継続させることにより、フォトマスク101の乾燥も行われる。フォトマスク101を洗浄した後の気体および液体は、排出管部105から外部に排出される。このような洗浄装置100は、スピン洗浄装置などとも呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。以下、液体を処理液と称し、気体をクリーンエアと称する。
【0004】
さて、洗浄時に供給された処理液は、フォトマスク101が回転していることから、遠心力によってフォトマスクから飛散する。この飛散した処理液は、フォトマスク101の外周において壁部103に衝突する。このとき、衝突した処理液の一部は、微細なパーティクルやミストになる。このパーティクルやミストは、フォトマスク101に付着すると、上記した露光不良などの原因になる。そのため、壁部103をフォトマスク101に対して傾斜して設けることにより、処理液の反射方向を制限している。例えば図9(A)の場合、処理液が壁部103に衝突したときの跳ね返り方向は、矢印Xで示すように、下向きすなわち排出管部105側になる。つまり、パーティクルやミストのフォトマスク101側への移動は、壁部103を傾斜させることによりある程度制限される。
【0005】
しかしながら、壁部103を傾斜させたとしても、パーティクルやミストは、壁部103とフォトマスク101の外縁との水平距離Hが短い場合、フォトマスク101に再付着するおそれがある。換言すると、パーティクルやミストのフォトマスク101への再付着を抑制するためには、例えば図9(B)に示すように、壁部103とフォトマスク101の外縁との水平距離Hをある程度大きくする必要がある。この場合、洗浄装置100の体格の大型化を回避するためには、壁部103とフォトマスク101の外縁との直線距離Lをなるべく短くすることが望ましい。
【0006】
一方、壁部103とフォトマスク101の外縁との直線距離Lを短くした場合、他の問題が引き起こされる。フォトマスク101の洗浄時には、処理液に加えてクリーンエアYも供給される。このため、直線距離Lを短くすると、フォトマスク101の外縁付近におけるクリーンエアYの流速は上昇する。そして、流速の上昇は、フォトマスク101の外縁付近の圧力の低下や乱流状態を引き起こす。その結果、本来であれば排出管部105に向かうはずのパーティクルやミストは、乱流などにより巻き上げられる。つまり、直線距離を短くした場合、パートティクルやミストがフォトマスク101に再付着するおそれは高くなる。そのような状況を回避するためには、例えば図9(C)に示すように、壁部103とフォトマスク101の外縁との直線距離Lを大きくすることが考えられる。しかし、直線距離Lを大きくすると、フォトマスク101の回転により上昇気流を伴った随伴流Zが発生し易くなる。その結果、パーティクルやミストが随伴流Zによってフォトマスク101側に移動する可能性が高くなる。さらに、直線距離Lを大きくすると、洗浄装置100の体格の大型化を招くことにもなる。
【0007】
このように、従来構成の洗浄装置は、フォトマスクへのパーティクルやミストの再付着を防止するためにはある程度の大型化が不可避である一方、大形化した場合にはパーティクルやミストが再付着する可能性が高くなるという背反する問題があった。また、近年、液晶パネルやカラーフィルタの大形化に伴ってフォトマスク自体も大形化している。その結果、洗浄装置もさらに大型化してしまう傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−260522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、装置の大型化を招くことなくパーティクルやミストの再付着を抑制するフォトマスクの洗浄装置およびフォトマスクの洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明は、フォトリソグラフィプロセスに用いるフォトマスクを洗浄するフォトマスクの洗浄装置であって、天地方向に延びる回転軸を中心に、前記フォトマスクを前記回転軸の上端側に支持した状態で回転する回転支持部と、上端が開口し、前記回転支持部に支持された前記フォトマスクの外周を覆う壁部を有する処理槽と、前記処理槽の下端側に接続され、前記処理槽から排出される気体および液体が流れる排出管部と、前記処理槽の内側において前記壁部の周方向に複数固定され、前記処理槽から排出される気体および液体を前記排出管側に導く複数の第一案内翼と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した発明は、前記第一案内翼は、前記処理槽の前記壁部の上端から下端まで延びており、上端部と下端部とが周方向にずれつつ、中央部が周方向に湾曲する曲面状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載した発明は、前記第一案内翼の前記下端部よりも下方において前記壁部の周方向に複数固定され、前記第一案内翼により導かれた気体および液体を前記排出管部に案内する第二案内翼をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載した発明は、前記排出管部に接続され、前記処理槽内の気体および液体を強制的に排出する強制排出部をさらに備えることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、前記排出管部は、前記第二案内翼の下方において前記処理槽に接続していることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載した発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のフォトマスクの洗浄装置を用いるフォトマスクの洗浄システムであって、前記回転支持部の回転数を取得する回転数取得部と、前記前記排出管部を流れる気体の流量を取得する流量取得部と、前記前記排出管部を流れる気体の流量を調整する流量調整部と、前記回転数取得部で取得する前記回転支持部の回転数および前記フォトマスクの大きさに基づいて、前記流量取得部により取得される前記排出管部を流れる気体の流量が前記処理槽に吸引される気体の流量以上になるように前記流量調整部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載した発明によれば、処理槽から排出される気体および液体は、処理槽の壁部に設けられた第一案内翼により排出管部側に導かれる。上記したように、洗浄時に供給される液体は、処理槽の壁部に衝突することによりパーティクルやミストを発生させる。このパーティクルやミストは、微細であることから、処理槽に供給される気体によって運ばれる。このとき、気体の流れ方向によっては、パーティクルやミストがフォトマスクに再付着する可能性がある。そのため、第一案内翼を設けることにより、フォトマスクの洗浄に用いられた後に処理槽から排出される液体および気体は、排出管部側に導かれる。これにより、パーティクルやミストを含む気体の流れは、フォトマスク側ではなく、排出管部側に向かう。したがって、パーティクルやミストのフォトマスクへの再付着を抑制することができる。
また、この場合、パーティクルやミストを第一案内翼によって排出管部側に導くことから、壁部を傾斜させる必要がない。そのため、壁部を略円筒形状に形成することができる。したがって、処理槽の大形化を招くことがない。
【0016】
請求項2に記載した発明によれば、第一案内翼は、処理槽の壁部の上端から下端まで延びている。つまり、第一案内翼は、処理槽に収納された状態のフォトマスクの上面側および下面側の双方において、気体および液体を排出管部側に導いている。これにより、フォトマスクの上面および下面の双方に対してパーティクルやミストが再付着することを抑制することができる。
また、フォトマスクから飛散する液体は、フォトマスクの回転に伴って生じる回転方向の成分と遠心力による径方向外側に向かう成分とのベクトル和で示される合成ベクトル方向に飛び出して、壁部へ移動する。つまり、液体は、壁部に対して斜め方向から衝突する。このため、壁部に衝突した液体は、一旦第一案内翼に向かって跳ね返った後、第一案内翼において下方すなわち排出管部側に跳ね返される。これにより、液体がフォトマスク側に跳ね返ることを効率良く抑制することができる。
【0017】
請求項3に記載した発明によれば、第一案内翼よりも下方に第二案内翼を設けている。第一案内翼により処理槽の下方に導かれた気体および液体は、処理槽の底部に衝突して巻き上げられる可能性がある。そこで、第二案内翼を設けることにより、フォトマスクの下方における気体および液体を排出管部側に導いている。これにより、フォトマスク洗浄後の気体および液体を確実に排出管部から排出することができる。
【0018】
請求項4に記載した発明によれば、処理槽内の気体および液体を強制的に排出する強制排出部を設けている。処理槽の上部の開口は、フォトマスクを出し入れするためにフォトマスクの外径よりも大きく形成されている。一方、排出管部は、上部の開口に対して小さく形成されていることが多い。そのため、上部の開口からの気体および液体の供給量が排出管部からの排出量よりも多い場合、パーティクルやミストを含んだ気体が処理槽内に滞留する可能性がある。そこで、強制排出部によって処理槽内の気体および液体を強制的に排出する。これにより、処理槽内における気体の滞留を防止することができる。
【0019】
請求項5に記載した発明によれば、排出管部は第二案内翼の下方において処理槽に接続している。すなわち、第二案内翼は、接続配管部の開口の上方に位置している。このため、排出管部には、第二案内翼に導かれた気体および液体が流れ込む。そのため、強制排出部により処理槽内の気体および液体を排出する場合であっても、第一案内翼および第二案内翼を経由する気体および液体の流れを妨げることがない。したがって、処理槽内における乱流などの発生を防止することができる。
【0020】
請求項6に記載した発明によれば、制御部は、処理槽内に吸引される気体の流量を、回転支持部の回転数すなわちフォトマスクの回転数と、フォトマスクの大きさとに基づいて取得する。そして、制御部は、排出管部を流れて処理槽から排出される気体の流量が処理槽内に吸引される気体の流量以上になるように制御を行う。これにより、処理槽内に吸引された気体が排出管部以外から排出されること、および、処理槽内に吸引された気体が処理槽内に滞留することが抑制される。したがって、パーティクルやミストがフォトマスクに再付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態によるフォトマスクの洗浄装置の概略を示す図
【図2】第1実施形態による処理槽の外観の概略を示す斜視図
【図3】第1実施形態による処理槽の外観の概略を示す平面図
【図4】第1実施形態による第一案内翼により導かれるクリーンエアの流れを模式的に示す断面図
【図5】第1実施形態による第二案内翼により導かれるクリーンエアの流れを模式的に示す図で、(A)は断面図、(B)は処理槽を展開した状態を示すモデル図
【図6】第1実施形態による処理槽内のクリーンエアの流れを模式的に示す斜視図
【図7】第2実施形態によるフォトマスクの洗浄システムの概略を示す図
【図8】第2実施形態によるクリーンエアの流れを模式的に示す図で、(A)はQ0>Q1の状態を示す図、(B)はQ0≦Q1の状態を示す図
【図9】従来構成のフォトマスクの洗浄装置の概略を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態によるフォトマスクの洗浄装置について図1から図6を参照して説明する。フォトマスクの洗浄装置は、図1に示すように、回転支持部11、処理槽12、処理液供給部13、エア供給部14、排出管部15および排気ユニット16を備えている。以下、フォトマスクの洗浄装置を単に洗浄装置10と称する。
回転支持部11は、回転軸17および支持台18を有している。回転軸17は、天地方向に延びる棒状に形成されている。以下、本明細書では、図1に示すように、天地方向を上下方向とする。支持台18は、回転軸17の上端に取り付けられている。支持台18は、その上面側にフォトマスク19を支持している。回転軸17は、下端が駆動部20に接続している。駆動部20は、図示しないモータにより回転軸17を回転させる。これにより、回転支持部11は、フォトマスク19を支持した状態で回転軸17を中心に回転する。本実施形態では、回転支持部11およびフォトマスク19は、洗浄装置10を上方から見た場合において右回りに回転する。
【0023】
処理槽12は、フォトマスク19の外周を覆う壁部21を有している。壁部21は、上下方向すなわちフォトマスク19の上面側および下面側に延びている。壁部21は、その上端側および下端側が径方向内側に若干傾斜している。つまり、壁部21は、回転支持部11の回転軸17を中心とした概ね円筒状に形成されている。壁部21の下端には、底部22が接続している。底部22は、処理槽12の下端を塞いでいる。壁部21の上端は、さらに上方へ延びており、開口23を形成している。つまり、処理槽12は、上方が開口した概ね有底円筒状に形成されている。この処理槽12は、その内側において、壁部21の周方向に複数設けられた第一案内翼24を有している。また、処理槽12は、第一案内翼24よりも下方において、壁部21に複数設けられた第二案内翼25を有している。各第一案内翼24および各第二案内翼25は、例えば溶接やねじ止めなどにより壁部21に固定されている。
【0024】
フォトマスク19は、フォトリソグラフィプロセスの露光プロセスに用いられる。フォトマスク19は、例えば長方形や正方形などの四角形に形成されている。このフォトマスク19は、回転支持部11に支持された状態で回転する。このため、回転時におけるフォトマスク19の外縁は、回転軸17を中心とした円形の軌跡になる。処理槽12には、外縁の軌跡の直径が開口23の直径よりも小さいフォトマスク19が収容される。
【0025】
排出管部15は、処理槽12の底部22に接続している。排出管部15は、処理槽12の周方向に複数設けられている。なお、図1では、簡略化のため2本の排出管部15を示している。この排出管部15は、処理槽12内に連通している。このため、排出管部15は、処理槽12内の気体および液体が流れる。具体的には、排出管部15は、フォトマスク19の洗浄に使用される例えば洗浄液、リンス、純水などの液体や、フォトマスク19の洗浄や乾燥などに用いられる例えば窒素ガスや空気などの気体が流れる。以下、処理槽12に供給される洗浄液、リンス、純水などの液体を処理液と称し、窒素ガスや空気などの気体を便宜的にクリーンエアと称する。
【0026】
排出管部15は、処理槽12と反対側の端部が強制排気手段としての排気ユニット16に接続している。排気ユニット16は、例えば電動送風機などにより構成されている。排気ユニット16は、排出管部15から吸入した気体を外部へ排出する。また、排出管部15は、処理槽12と排気ユニット16との間に、気液分離部26を有している。気液分離部26は、処理槽12から排出される気体と液体とを分離する。気液分離部26により分離された気体は、排出管部15を通り、排気ユニット16から排出される。一方、気液分離部26により分離された液体は、図示しない排水管部を流れ、排液タンクなどに貯えられる。
これら回転支持部11、処理槽12、排出管部15、第一案内翼24および第二案内翼25などは、処理液などに対する耐腐食性を高めるために、例えばステンレスやフッ素含有樹脂などにより形成されている。
【0027】
処理液供給部13は、処理槽12の上方に設けられている。処理液供給部13は、アーム部27およびノズル28を有している。アーム部27は、中空のパイプ状に形成されている。アーム部27は、その内側に処理液が流れる。この処理液は、ノズル28からフォトマスク19に供給される。なお、処理液供給部13は、供給する処理液の種類ごとに複数設けてもよい。エア供給部14は、処理槽12の上方に設けられている。エア供給部14は、アーム部29およびノズル30を有している。アーム部29は、中空のパイプ状に形成されている。アーム部29は、その内側にクリーンエアが流れる。クリーンエアは、ノズル30からフォトマスク19に供給される。処理液供給部13およびエア供給部14は、処理槽12の上方、より厳密には開口23の上方から外れた待避位置に移動可能に構成されている。なお、処理液供給部13のアーム部27およびエア供給部14のアーム部29は、液体または気体を供給するホースやパイプを保持する保持部とする構成であってもよい。その場合、処理液供給部13のノズル28およびエア供給部14のノズル30にホースを接続すればよい。
【0028】
このような構成の処理槽12は、クリーンルームに設けられた装置内の図示しないユニットボックス内に設置される。そして、このユニットボックス内には、処理槽12の上方に位置して、処理槽12にクリーンエアを供給する例えばHEPAフィルタやULPAフィルタなどを備えたファンフィルターユニット31が設けられている。処理槽12には、主としてこのファンフィルターユニット31からクリーンエアが供給される。そして、フォトマスク19の回転に伴ってクリーンエアの流れにおける特異点となるフォトマスク19の回転中心に対して、エア供給部14のノズル30から強制的にクリーンエアが供給される。これにより、フォトマスク19が乾燥される。なお、装置内には、例えばフォトマスク19を搬送するための図示しないロボットなども設けられている。
【0029】
ここで、第一案内翼24および第二案内翼25について図2および図3を参照しながら詳細に説明する。なお、図2および図3は、回転支持部11及びフォトマスク19の図示を省略している。
処理槽12に設けられている第一案内翼24は、図2に示すように、処理槽12の内側において壁部21の周方向に第一案内翼241、242、243、244、245、246の順に設けられている。以下、第一案内翼241〜246に共通の説明をする場合には単に第一案内翼24と称する。第一案内翼24は、上下の傾斜面を含む壁部21の上端から下端まで延びている。第一案内翼24は、その上端部と下端部とが、処理槽12を上方から視た場合に右回りすなわちフォトマスク19の回転方向にずれている。すなわち、第一案内翼24は、上下方向に対して傾斜して設けられている。また、第一案内翼24は、その中央部が周方向に湾曲している。
【0030】
この第一案内翼24は、図3に示すように、壁部21の径方向外側の外縁部から処理槽12の開口23までの幅を有している。第一案内翼24は、下端部と隣接する第一案内翼24の上端部とが平面視において近接した位置に設けられている。また、第一案内翼24は、幅方向の外側が壁部21にそって湾曲し、幅方向の内側が開口23に沿って湾曲している。つまり、第一案内翼24は、例えば送風機のガイドあるいはディフューザに用いられるような、三次元的なねじれを有する曲面状に形成されている。
【0031】
第二案内翼25は、図2に示すように、処理槽12の内側において壁部21の周方向に第二案内翼251、252、253、254、255、256の順で設けられている。以下、第二案内翼251〜256に共通の説明をする場合には単に第二案内翼25と称する。第二案内翼251〜256は、それぞれ第一案内翼241〜246の下方に設けられている。具体的には、第二案内翼251は、第一案内翼241の下方に設けられている。以下、第二案内翼252〜256と第一案内翼242〜246との位置関係も同様である。第二案内翼25は、フォトマスク19の回転方向において上流側の端部が、下流側の端部よりも上方に位置している。つまり、第二案内翼25は、フォトマスク19の回転方向において下流側が徐々に下方に向かって設けられている。また、第二案内翼25は、その下端側が底部22よりも上方に位置している。このため、第二案内翼25と底部22との間には、空間部が形成されている。この空間部は、上記したように第二案内翼25が周方向に傾斜して設けられていることから、フォトマスク19の回転方向において上流側のほうが下流側よりも大きく形成されている。
【0032】
また、第二案内翼25は、周方向に間隔をおいて複数設けられている。つまり、各第二案内翼25の間には、隙間が形成されている。この隙間は、各第一案内翼24の下端部位置するように配置されている。具体的には、第一案内翼241の下端部は、第二案内翼251と第二案内翼252との間に位置している。また、第二案内翼25は、その中央部が上方に湾曲した形状に形成されている。
【0033】
排出管部15は、図3に示すように、処理槽12の内側において底部22の周方向に排出管部151、152、153、154、155、156の順に接続されている。以下、排出管部151〜156に共通の説明をする場合には単に排出管部15と称する。排出管部151〜156は、第二案内翼251〜256の下方において処理槽12の底部22にそれぞれ接続している。具体的には、排出管部151は、第二案内翼251の下方において処理槽12の底部22に接続している。以下、排出管部152〜156と第二案内翼252〜256との位置関係も同様である。上記したように第二案内翼251〜256が周方向に傾斜して設けられていることから、例えば排出管部151には、第二案内翼256と第二案内翼251との隙間からのクリーンエア、および、第二案内翼256の上面からその隙間に流れ込む処理液が流れることになる。
【0034】
次に、上記した構成の洗浄装置10の作用について図4および図5を参照しながら説明する。
フォトマスク19は、図4に模式的に示すように、処理槽12の上下方向における中央付近に支持されている。つまり、フォトマスク19は、第一案内翼24の上下方向における中央付近において回転する。エア供給部14から供給されるクリーンエアYは、回転するフォトマスク19の上面で周方向に移動する。周方向に移動したクリーンエアYは、フォトマスク19の外周側において第一案内翼24に接触する。そして、クリーンエアYは、第一案内翼24の傾斜に沿って下方に導かれる。つまり、フォトマスク19の上面に供給されたクリーンエアYは、第一案内翼24によって下方に向かって整流される。
【0035】
第一案内翼24により整流されたクリーンエアYは、図5に模式的に示すように、第二案内翼25により排出管部15の開口に導かれる。このとき、上記したように、第一案内翼24の下端が第二案内翼25間の隙間に位置している。このため、第一案内翼24により導かれたクリーンエアYは、第二案内翼25の下方にまず流れ込む。また、上記したように、第二案内翼25の下方の空間部は、フォトマスク19の回転方向において上流側が大きく形成されている。このため、クリーンエアYは、第二案内翼25の下方の空間部に流れ込むとき、その流れが妨げられることがない。つまり、処理槽12に供給されたクリーンエアYは、各第一案内翼24および各第二案内翼25によって、スムーズに排出管部15に導かれる。
【0036】
次に、処理液および処理液が壁部21に衝突することにより発生するパーティクルやミストについて説明する。処理液は、上記したように、フォトマスク19の回転にともなって壁部21に向かって飛散する。このとき、壁部21に付着した処理液は、重力によって下方に移動する。ここで、排出管部15は、図4に示すように、底部22の最下端において処理槽12に接続している。つまり、排出管部15の開口は、底部22において最も下方に位置している。このため、壁部21に衝突したときに液状を保ったままの処理液は、排出管部15に流れ込む。一方、壁部21への衝突によりパーティクルやミストとなった処理液は、クリーンエアYとともに移動する。つまり、パーティクルやミストは、上記したクリーンエアYの排出管部15への移動に伴って、排出管部15に導かれる。
【0037】
このように、クリーンエアYは、第一案内翼24および第二案内翼25により排出管部15に導かれる。この場合、図6に示すように、例えば第一案内翼244により処理槽12の下方に導かれたクリーンエアYは、第二案内翼254および第二案内翼255の間の隙間に導かれる。そして、この隙間に導かれたクリーンエアYは、第二案内翼255により、排出管部155に導かれる。そして、クリーンエアYは、排出管部155を経由して処理槽12から排出される。また、パーティクルやミストもクリーンエアYとともに処理槽12から排出される。なお、図6は、説明の簡略化のためフォトマスク19の図示を省略している。
【0038】
このとき、排出管部15は、第二案内翼25の下方において処理槽12に接続している。このため、処理槽12からクリーンエアYを強制的に排出する場合であっても、排出管部15には、第二案内翼25ひいては第一案内翼24に導かれたクリーンエアYが流れ込む。すなわち、排出管部15の上方且つフォトマスク19の下方に位置する空間において、強制排出される気体の流れによる乱流や気圧の低下などが発生することがない。
【0039】
以上説明した洗浄装置10によれば、次のような効果を得ることができる。
処理槽12から排出されるクリーンエアは、処理槽12の壁部21に設けられた第一案内翼24により排出管部15側に導かれる。また、処理液が壁部21に衝突することにより発生するパーティクルやミストは、クリーンエアによって排出管部15側に導かれる。これにより、パーティクルやミストを含むクリーンエアの流れは、フォトマスク19側ではなく、排出管部15側に向かうことになる。つまり、フォトマスク19の上部へのパーティクルやミストの戻りを抑制することができる。したがって、パーティクルやミストのフォトマスク19への再付着を抑制することができる。
【0040】
第一案内翼24を設けたことにより、パーティクルやミストを含むクリーンエアの流れを整流している。このため、処理液が衝突する壁部21は、傾斜させる必要がない。これにより、処理槽12を略円筒形状に形成することが可能となる。したがって、処理槽12の大形化を招くことがない。この場合、洗浄装置10を設置する例えばクリーンルームにおいて、洗浄装置10が占有する床面積を低減することができる。このため、洗浄装置10の運用に掛かる費用を低減することが可能になる。
【0041】
第一案内翼24は、処理槽12の上端から下端まで延びている。このため、第一案内翼24は、処理槽12に収納されたフォトマスク19の上面側および下面側の双方において、クリーンエアを排出管部15側に導くことが可能になる。したがって、フォトマスク19の上面および下面に対するパーティクルやミストの再付着を抑制することができる。
第一案内翼24は、その上端部と下端部とが周方向にずれつつ、中央部が周方向に湾曲した3次元的な曲面を有する形状に形成されている。このため、第一案内翼24に沿って流れるクリーンエアの流れを妨げるおそれがない。さらに、処理液は、一旦壁部21に衝突した後に第一案内翼24側に跳ね返ったとしても、第一案内翼24において下方に向かって跳ね返る。したがって、処理液がフォトマスク19側に跳ね返ることを防止することができる。
【0042】
また、第一案内翼24は、平面視において処理槽12の壁部21のほぼ全周に形成されている。これにより、フォトマスク19の外周側全域において、例えば随伴流によるパーティクルやミストの巻き上げを抑制することができる。
処理槽12には、第一案内翼24に加えて、第二案内翼25を設けている。これにより、第一案内翼24によって整流され処理槽12の下方側に導かれたクリーンエアは、さらに第二案内翼25によって整流される。このとき、第二案内翼25をクリーンエアの流れ方向に向かって徐々に傾斜させていることから、クリーンエアは、その流れを妨げられることなく排出管部15に導かれる。これにより、処理槽12内のクリーンエアの流れをさらにスムーズに整流することができる。
【0043】
第二案内翼25は、処理槽12の周方向に間隔をおいて設けられている。このとき、第一案内翼24の下端部を、第二案内翼25間の隙間に対応する位置に設けている。これにより、第一案内翼24に導かれたクリーンエアは、その流れを妨げられることなく第二案内翼25の下方側に流れ込む。したがって、処理槽12から排出されるクリーンエアの流れをさらにスムーズにすることができる。
【0044】
第二案内翼25は、第一案内翼24により処理槽12の下方に導かれたクリーンエアおよび処理液を排出管部15側に導く。この場合、壁部21に衝突した場合に液状を保ったままの処理液は、自重により下方に移動した後、第二案内翼25の上面を流れて排出管部15に導かれる。さらに、処理液が壁部21に衝突することにより発生したパーティクルやミストは、クリーンエアの流れに沿って排出管部15に流れ込む。これにより、フォトマスク19を洗浄したクリーンエアおよび処理液を確実に排出管部15から排出することができる。
【0045】
パーティクルやミストを含んだクリーンエアは、排気ユニット16により処理槽12から強制的に排出される。これにより、パーティクルやミストを含んだクリーンエアが処理槽12内に滞留することが防止される。したがって、パーティクルやミストがフォトマスク19へ再付着することを防止できる。
また、排気ユニット16を設けたことにより、排出管部15から排出される気体の流量は、エア供給部14から供給されるクリーンエアの流量よりも大きくすることが可能になる。このため、処理槽12に供給されるクリーンエアは、排出管部15の内径が小さい場合であっても、その流れが滞ることがない。さらに、排出管部15は、第二案内翼25の下方において処理槽12に接続しているので、処理槽12内の空気の流れを乱すことがない。
【0046】
第一案内翼24および第二案内翼25は、処理槽12の壁部21に固定されている。つまり、第一案内翼24および第二案内翼25は、可動部位を有していない。このため、第一案内翼24および第二案内翼25は、修理や清掃などを容易に行うことができる。さらに、第一案内翼24あるいは第二案内翼25が壁部などと摩擦などにより微粒子などが発生するおそれがない。つまり、第一案内翼24および第二案内翼25と設けたとしても、フォトマスク19が汚染される可能性はない。
【0047】
(第2実施形態)
次に、上記した第1実施形態で説明したフォトマスクの洗浄装置を用いたフォトマスクの洗浄システムについて図7および図8を参照して説明する。以下、フォトマスクの洗浄装置を単に洗浄システムと称する。
図7に示すように、洗浄システム50は、第1実施形態で説明した回転支持部11、処理槽12および排出管部15などに加えて、回転計51、流量計52、バルブ53および制御部54を備えている。回転計51は、駆動部20に内蔵され、回転軸17の回転数を取得する。回転数取得部としての回転計51は、回転軸17の回転数を取得することにより、回転支持部11に支持されたフォトマスク19の回転数を取得する。なお、回転計51は、駆動部20に内蔵するのではなく、回転軸17の回転数を直接取得する構成でもよく、あるいは、フォトマスク19の回転数を直接取得する構成であってもよい。
【0048】
流量取得部としての流量計52は、各排出管部15の合流部Pと排気ユニット16の吸気側との間の排出管部15に設けられている。流量計52は、処理槽12から排出され、排出管部15を流れるクリーンエアの流量を取得する。流量計52は、例えば熱線風速計などにより直接クリーンエアの流量を取得してもよいし、あるいは、ピエゾ型やダイアフラム型などの圧力センサを用い、間接的にクリーンエアの流量を取得してもよい。このような場合、流量計52の正確な取り付け位置は、日本であれば日本工業規格により規定されている。ただし、フォトマスクの洗浄装置においてはそのほとんどが乱流域であるため、おおよその流量を知るのであれば、合流部Pと排気ユニット16の吸気側との間に例えば1メートル程度の直管部を設け、その中間部に流量計52を設けてもよい。流量調整部としてのバルブ53は、排気ユニット16の排気側に設けられ、排気ユニット16から排出される気体の流量を調整する。すなわち、バルブ53の開度を制御することにより、排出管部15を流れるクリーンエアの流量を調整することができる。
【0049】
制御部54は、回転計51で取得したフォトマスク19の回転数と、流量計52で取得した排出管部15を流れるクリーンエアの流量とに基づいて、バルブ53および排気ユニット16を制御することにより、クリーンエアの流量を調整する。制御部54は、図示しない入力部を有している。制御部54には、入力部からフォトマスク19の大きさが入力される。入力部としては、例えば洗浄システム50を操作するための操作パネルや外部の制御装置に接続した通信回線などが想定される。作業者は、この入力部から、例えばフォトマスク19の大きさなどのデータを入力する。
【0050】
次に、上記した構成の洗浄システム50の作用および効果について説明する。
処理槽12には、第1実施形態で説明したように、主としてファンフィルターユニット31から、また、エア供給部14からクリーンエアが供給される。ファンフィルターユニット31は、開口23よりもやや大きい範囲にクリーンエアを供給する。このため、供給されるクリーンエアは、その一部、より厳密にはその大部分が、開口23を介して処理槽12内に吸引されることになる。ここで、開口23から処理槽12内に吸引されたクリーンエアの流量を吸引流量Q0とし、処理槽12から排出管部15を流れて排出されるクリーンエアの流量の全量を排気流量Q1とする。この場合、各排出管部15には、図7に示すように、それぞれΔQ1のクリーンエアが流れることになり、排気流量Q1は、各排出管部15を流れるクリーンエアの流量ΔQ1の合計となる。即ち、排気流量Q1=ΣΔQ1で算出される。このとき、吸引流量Q0と排気流量Q1との大小関係によっては、処理槽12内に吸引されたクリーンエアは、排出管部15を流れることなく処理槽12から排出されることがある。
【0051】
具体的には、吸引流量Q0>排気流量Q1の関係が成り立つとき、クリーンエアの一部は、図8(A)に示すように、処理槽12の開口23から排出される。つまり、吸引流量Q0が排気流量Q1を越えると、クリーンエアは、開口23すなわち排出管部15以外の部位から、排出される。この場合、クリーンエアの流れには、処理槽12内から開口23に向かう上昇流が発生する。この上昇流は、処理液やミスト、パーティクルなどの巻き上げを引き起こし、その結果、ミストやパーティクルがフォトマスク19に再付着する要因となる。
【0052】
一方、吸引流量Q0≦排気流量Q1の関係が成り立つとき、処理槽12内に吸引されたクリーンエアは、図8(B)に示すように、その全量が排出管部15を流れて排出される。この場合、処理槽12内に吸引されたクリーンエアは、上記した上昇流を発生させることがない。このため、ミストやパーティクルがフォトマスク19に再付着することを抑制できる。換言すると、ミストやパーティクルがフォトマスク19に再付着することを抑制するためには、吸引流量Q0≦排気流量Q1の関係が成り立つように調整する必要がある。
【0053】
さて、洗浄対象となるフォトマスク19が1種類の場合、その大きさや、洗浄あるいは乾燥に最適な回転数などが予め決まっていることから、排気流量Q1を予め設定しておくことができる。しかし、一台の洗浄装置10で複数種類のフォトマスク19の洗浄を行う場合、洗浄対象となるフォトマスク19の大きさや最適な回転数が変わることがある。この場合、クリーンエアの吸引流量Q0は、フォトマスク19の大きさや回転数によって変化する。このため、排気流量Q1を予め設定することが困難である。
【0054】
そこで、本実施形態の洗浄システム50は、フォトマスク19の回転数に応じて変化する吸引流量Q0に基づいて、排気流量Q1を制御する。制御部54は、フォトマスク19の大きさおよび回転数と吸引流量Q0の関係とを、予め例えば実験などによりテーブルとして記憶している。あるいは、制御部54は、フォトマスク19の大きさおよび回転計51で取得したフォトマスク19の回転数に基づいて、吸引流量Q0を算出する。吸引流量Q0を算出する場合、一般的には、フォトマスク19が大きいほど、そして、その回転数が高いほど、吸引流量Q0は大きくなる。そこで、制御部54は、例えば流体力学に基づく理論式や、理論式を補正係数などで補正した補正式などの関数により、吸引流量Q0を算出する。
【0055】
続いて、制御部54は、テーブルから取得、あるいは関数により算出した吸引流量Q0に基づいて、排気ユニット16の排気側に接続されたバルブ53の開度を調整する。このとき、制御部54は、上記したように、吸引流量Q0≦排気流量Q1の関係が成立するようにバルブ53の開度を調整する。これにより、排気ユニット16から排出されるクリーンエアの流量すなわち排出管部を流れる排気流量Q1は、吸引流量Q0よりも多くなるように制御される。なお、排気ユニット16が例えば単純な排気ファンで構成されている場合には、バルブ53がないことから、制御部54は、排気ファンの回転数を調整することにより排気流量Q1を制御すればよい。
【0056】
このように、洗浄システム50では、制御部54は、処理槽12内に吸引されるクリーンエアの吸引流量Q0を、回転支持部11の回転数すなわちフォトマスク19の回転数と、フォトマスク19の大きさとに基づいて取得または算出する。そして、制御部54は、吸引流量Q0よりも排気流量Q1が多くなるように制御を行う。これにより、処理槽12内に吸引された気体が排出管部15以外の部位から排出されること、および、処理槽12内に吸引された気体が処理槽12内に滞留することが抑制される。したがって、パーティクルやミストがフォトマスクに再付着することを抑制することができる。
【0057】
フォトマスク19の回転数とフォトマスク19の大きさとに基づいて吸引流量Q0を取得しているので、処理槽12内に流量計などをもうける必要がない。このため、一般的な洗浄システムであれば既設の回転計51や流量計52を用いて吸引流量Q0を取得することができ、処理槽12内に余分な計測器を設置する必要がない。このため、メンテナンスなどが容易なことからコストの増加を抑制することができるとともに、フォトマスク19が汚染される可能性を低減することができる。
入力部を設け、洗浄対象となるフォトマスク19の大きさなどを作業者が設定できるようにしたので、大きさが異なるフォトマスク19を洗浄する場合であっても、容易に対応することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した一実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲において次のように変形または拡張することができる。
第一案内翼24および第二案内翼25は、設置する枚数、形状、傾き加減および板厚などを処理槽12の仕様に応じて適宜設定すればよい。処理槽12の仕様は、例えば洗浄対象となるフォトマスク19の大きさ、フォトマスク19の回転速度、フォトマスク19の回転に伴い発生する随伴流の大きさ、エア供給部14から供給されるクリーンエアの流量などが挙げられる。第一案内翼24および第二案内翼25は、例えば流体力学に基づくシミュレーションなどにより、処理槽12の仕様に応じて設計すればよい。なお、洗浄対象となるフォトマスク19の種類が複数ある場合には、第一案内翼24および第二案内翼25は、個別に設計してもよいし、最も頻繁に洗浄されるフォトマスク19の大きさに合わせて設計してもよい。また、排出管部15の数、内径の大きさ、あるいは取り付け部位などは、第一案内翼24および第二案内翼25の設置状況に応じて、適宜変更すればよい。
【0059】
第2実施形態では単に吸引流量Q0≦排気流量Q1の関係式を満たすように制御を行ったが、例えば処理液の量や乾燥時間などを考慮した制御を行ってもよい。例えば、吸引流量Q0と排気流量Q1との差分が大きくなるように、すなわち、吸引流量Q0<<排気流量Q1の関係となるようにすることなどが考えられる。
【0060】
第2実施形態では、各排出管部15の合流点よりもクリーンエアの流れ方向において下流側に流量計52を設けたが、流量計52の位置はこれに限定されない。例えば、各排出管部15それぞれに流量計および流量調整弁を設け、フォトマスク19の形状に応じて流量を増減する構成としてもよい。これにより、例えば長方形のフォトマスク19を洗浄するとき、フォトマスク19と壁部21との間の距離の変化に応じて排出管部15の流量を制御することが可能になる。これにより、フォトマスク19の外周側全域において、クリーンエアの流れをよりスムーズにすることができる。
【符号の説明】
【0061】
図面中、10、100はフォトマスクの洗浄装置、11、102は回転支持部、12、104は処理槽、15、151、152、153、154、155、156は排出管部、17は回転軸、19、101はフォトマスク、21、103は壁部、24、241、242、243、244、245、246は第一案内翼、25、251、252、253、254、255、256は第二案内翼、50はフォトマスクの洗浄システム、51は回転計(回転数取得部)、52流量計(流量取得部)、53はバルブ(流量調整部)、54は制御部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィプロセスに用いるフォトマスクを洗浄するフォトマスクの洗浄装置であって、
天地方向に延びる回転軸を中心に、前記フォトマスクを前記回転軸の上端側に支持した状態で回転する回転支持部と、
上端が開口し、前記回転支持部に支持された前記フォトマスクの外周を覆う壁部を有する処理槽と、
前記処理槽の下端側に接続され、前記処理槽から排出される気体および液体が流れる排出管部と、
前記処理槽の内側において前記壁部の周方向に複数固定され、前記処理槽から排出される気体および液体を前記排出管側に導く複数の第一案内翼と、
を備えることを特徴とするフォトマスクの洗浄装置。
【請求項2】
前記第一案内翼は、前記処理槽の前記壁部の上端から下端まで延びており、上端部と下端部とが周方向にずれつつ、中央部が周方向に湾曲する曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクの洗浄装置。
【請求項3】
前記第一案内翼の前記下端部よりも下方において前記壁部の周方向に複数固定され、前記第一案内翼により導かれた気体および液体を前記排出管部に案内する第二案内翼をさらに備えることを特徴とする請求項2記載のフォトマスクの洗浄装置。
【請求項4】
前記排出管部に接続され、前記処理槽内の気体および液体を強制的に排出する強制排出部をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のフォトマスクの洗浄装置。
【請求項5】
前記排出管部は、前記第二案内翼の下方において前記処理槽に接続していることを特徴とする請求項4記載のフォトマスクの洗浄装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のフォトマスクの洗浄装置を用いるフォトマスクの洗浄システムであって、
前記回転支持部の回転数を取得する回転数取得部と、
前記前記排出管部を流れる気体の流量を取得する流量取得部と、
前記前記排出管部を流れる気体の流量を調整する流量調整部と、
前記回転数取得部で取得する前記回転支持部の回転数および前記フォトマスクの大きさに基づいて前記処理槽に吸引される気体の流量を取得し、前記流量取得部により取得される前記排出管部を流れる気体の流量が前記処理槽に吸引される気体の流量以上になるように前記流量調整部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするフォトマスクの洗浄システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−47793(P2012−47793A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187092(P2010−187092)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(594191434)東朋テクノロジー株式会社 (9)
【Fターム(参考)】