説明

フォトレジスト除去装置

【課題】高濃度オゾン水を用いたフォトレジスト除去装置において、基板表面の洗浄領域へのフォトレジストとオゾンの反応生成物の再付着を防止する。
【解決手段】洗浄対象の基板を支持して回転する支持台と、支持台の上方に、注水口を下方に向けて配設された洗浄ノズルと、洗浄ノズルに高濃度オゾン水を供給する高濃度オゾン水供給装置とを備えたフォトレジスト除去装置において、洗浄ノズルを、基板の回転中心からそれぞれ所定の距離をおいて配置された複数の単位洗浄ノズルで構成し、各単位洗浄ノズルを、各単位洗浄ノズルから吐出された高濃度オゾン水の基板上における流れの方向の重なりが少なくなるように基板の周方向にずらして配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の不要なフォトレジストを除去する装置に係り、特に、半導体製造工程において、ドライエッチング処理や高電流イオン注入処理が施された基板表面に残存するフォトレジストを、高濃度オゾン水により均一に除去することのできるフォトレジスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、ドライエッチング処理や高電流イオン注入処理が施されたシリコン基板の表面に残存する不要なフォトレジストを除去するために、回転する支持台上に支持させたシリコン基板の表面に洗浄ノズルから、溶剤や薬品を吐出して残存するフォトレジストを溶解除去することが行われている。
しかし、この方法では、溶剤や薬品を含む大量の廃液が生じる上に、これらの溶剤や薬品は一般に排出規制があるため、特別の処理施設を必要とし、コスト面及び環境面の両面で大きい負担となっていた。
【0003】
このため、近時、不要なフォトレジストが残存するシリコン基板の表面に排出規制のないオゾン水を供給して、オゾンの酸化力により残存するフォトレジストを除去する方法が検討されている(特許文献1参照)。
しかしながら、オゾンは従来から使用されていた、たとえば、硫酸と過酸化水素水の混合液と比べれば強い酸化力を持つものの、自己分解性があるため溶剤や薬品を使用するものと比べれば、剥離作用において、なお不十分であるという難点がある。
【0004】
特に、回転する支持台上に、フォトレジストが残存するシリコン基板を支持させ、その表面中心部にノズルからオゾン水を吐出させると、基板の表面の単位面積あたりを流れるオゾン水の流量は、中心部から離れるにつれて、基板の半径の二乗に反比例して少なくなるため、300mmφのような大径の基板では特に周縁部に対するオゾンの供給量が少なくなってしまうため、周縁部のフォトレジストの剥離が難しくなる。
【0005】
さらに、高濃度オゾン水は、その強い酸化力のため、除去されたフォトレジストの溶解物が酸化して沈着性の反応生成物が生じ、それが基板の周縁部に沈着して、まだ剥離していないフォトレジストとオゾンとの接触を阻害し、このため周縁部のフォトレジストの除去が一層難しくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−295091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のオゾン水によるフォトレジストの除去方法では、基板の周縁部へのオゾンの供給が不十分な上に、基板の周縁部に除去されたフォトレジストの溶解物とオゾンの反応生成物が沈着して、剥離されていないフォトレジストとオゾンの接触を阻害するため、周縁部のフォトレジストの除去が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、シリコン基板表面に残存する不要なフォトレジストを、高濃度オゾン水によって均一に除去するフォトレジスト除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフォトレジスト除去装置の一つの実施形態は、洗浄対象の基板を支持して回転する支持台と、前記支持台の上方に、注水口を下方に向けて配設された洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルに高濃度オゾン水を供給する高濃度オゾン水供給装置とを備えたフォトレジスト除去装置であって、前記洗浄ノズルは、前記支持台の回転中心からそれぞれ所定の距離をおいて配置された複数の単位洗浄ノズルからなり、少なくとも前記基板の周縁部における前記各単位洗浄ノズルが、前記各単位洗浄ノズルから吐出された高濃度オゾン水の前記基板上における流れの方向の重なりが少なくなるよう前記支持台の周方向にずらして配置されていることを特徴とする。
【0010】
本実施形態で用いる高濃度オゾン水は、たとえばGRシリーズとして市販されているGR−RB(ガス流量4L/min(N))、GR−RC(ガス流量6L/min(N))、GR−RD(ガス流量8L/min(N))、GR−RE(ガス流量10L/min(N))、GR−RF(ガス流量12L/min(N))、GR−RG(ガス流量14L/min(N))[いずれも住友精密工業社商品名、ガス圧力0.2MPa]として知られるオゾナイザーで生成したオゾンガスを、所定の濃度(例えば140ppm)で超純水に溶解させたものを使用することができる。
また、この実施形態で用いる支持台としては、2000〜6000r.p.mで回転する汎用の回転支持台を使用することができる。
【0011】
本発明のフォトレジスト除去装置は、基本的に洗浄ノズルが、支持台の回転中心からそれぞれ所定の距離をおいて配置された複数の単位洗浄ノズルからなり、少なくとも周縁部における各単位洗浄ノズルが、各単位洗浄ノズルから吐出された高濃度オゾン水の前記基板上における流れの方向の重なりが少なくなるよう支持台の周方向にずらして配置されている。
これによって、従来、中心部側だけに配設されていたため、周縁部のオゾン水の水量が少なくなり、これに起因して生じていた、剥離の不均一が改善される。
フォトレジスト除去のための回転する支持台では、剥離されたフォトレジストを遠心力で除去するために、2000〜6000r.p.mのような高速で回転しており、ノズルから吐出された高濃度オゾン水は、遠心力により、ほとんど半径方向に飛散し、このため、複数の単位洗浄ノズルを基板の中心部から基板の周縁部にかけて直線的に配置すると、各単位洗浄ノズルから吐出された高濃度オゾン水は、周縁部へ向かう流れが重なってしまい、その結果、周縁部に反応生成物が沈着しやすくなる。
本発明によれば、複数の独立した単位洗浄ノズルを、例えば、基板の中心部から周縁部に至る360°以下の開螺旋をなすよう配置することによって解消される。
各単位洗浄ノズルをこのように配置すると、各単位洗浄ノズルと基板の中心を結ぶ線の重なりはなくなり、周縁部における反応生成物の沈着は減少する。
なお、各単位洗浄ノズルを多数設ける場合には、それぞれ隣接する単位洗浄ノズルどうしを連通させた一連のスリット状に形成するようにしてもよい。
また、基板に沈着したフォトレジストとオゾンの反応生成物を除去するために、支持台上に単位洗浄ノズルの配置のない扇形の領域を作り、ここにエアナイフを配置して吐出された高濃度オゾン水の層をエアナイフで直ちに除去することにより、周縁部における沈着防止をより確実にすることができる。
さらに、単位洗浄ノズル、特に支持台の周縁部に配置される単位洗浄ノズルに超音波振動子を取り付け、吐出する高濃度オゾン水に超音波を印加して反応生成物の基板への沈着をより確実に防止することもできる。
超音波振動子の周波数は、100kHz〜1MHzで入力パワーは30〜200W程度が好ましい。
回転する支持台に支持された基板の中心に高濃度オゾン水を供給した場合、周縁部の基板表面に供給される単位面積あたりのオゾン量(高濃度オゾン水の量)は半径の2乗に反比例して減少する。
したがって、基板の周縁部に供給されるオゾンの量(高濃度オゾン水の量)を多くすることにより、より一層、基板周縁部の沈着物の生成を防止することができる。
基板の周縁部に供給されるオゾンの量を多くする方策としては、(1)基板の半径方向に配設する単位洗浄ノズルの数を、中心部側から周縁部側に向かって多くなるようにする、(2)基板の半径方向に配設する単位洗浄ノズルから吐出する高濃度オゾン水の流量を、中心部側から周縁部側に向かって多くなるようにする、(3)基板の半径方向に配設する単位洗浄ノズルから吐出する高濃度オゾン水のオゾン濃度を、中心部側から周縁部側に向かって高濃度とする、(4)これらの方法を組み合わせる、等の方法をとることができる。
【0012】
(1)の単位洗浄ノズルの数を、中心部側から周縁部側に向かって多くするには、例えば、洗浄ノズルを基板の半径方向に、複数区画に区分し、各区分に属する環状(中心部は円状)の各領域に、中心に1個、中心から次の同心円上に2個、その次の同心円上には3個、……というように、周縁部にいくにしたがって単位洗浄ノズルの数が多くなるようにする。このとき、環状の領域の幅を等しくすると、周縁部にいくにしたがって同心円の円周方向の間隔が広くなるので、中心部側では、環状の領域の幅を広く、周縁部側の方で狭くすることが望ましい。この方式は、本発明において単位洗浄ノズルを開螺旋状に配置する場合に、隣接する単位洗浄ノズルの距離を調整することにより容易に実現することができる。(2)の方法は、ノズルの間隔を変える代わりに、各単位洗浄ノズルの流量を周縁部側で多くなるようにする方法であり、例えば単位洗浄ノズルの穴径を周縁部側に向けて順次大きくすることにより実現できる。(3)の方法は、洗浄ノズルの数を周縁部側で多くする代わりに、周縁部側のオゾン濃度を高くする方法である。(4)の方法は、これらの方法を組み合わせたもので、例えば(1)のと(2)の方法を組み合わせることにより、使用する単位洗浄ノズル数(ノズルの孔数)を少なくすることができる。
【0013】
なお、本発明においても、高濃度オゾン水の吐出された基板表面に、紫外線やエキシマレーザー光等の高エネルギー線を照射してオゾンの反応性を高めることも可能である。
さらに、一定以上のオゾン濃度が維持できる高濃度高温オゾン水製造装置から供給される高温のオゾン水、たとえば、70℃以上のオゾン水を使用して、フォトレジストとの反応速度を高めることも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各単位洗浄ノズルから吐出される高濃度オゾン水の前記基板上における流れの方向の重なりが少なくなるよう、少なくとも周縁部に配置する各単位洗浄ノズルを支持台の周方向にずらして配置するので、オゾン水のフォトレジストへの反応効率を高めて均一にフォトレジストを除去することができ、薬品を使用しないフォトレジスト除去を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の実施形態の要部の構成を概念的に示す図である。
【図3】図2の要部のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の要部の構成を概略的に示す拡大断面である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態の要部の構成を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るフォトレジスト除去装置を実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例1】
【0017】
図1乃至図3は、本発明の一実施形態を説明するための図である。
図に示すように、この実施例のフォトレジスト除去装置1は、モータ2で駆動され水平面内を2000〜6000r.p.mで回転する支持台3と、高濃度オゾン水供給装置4と、支持アーム5に取り付けられて支持台3上に配置された洗浄ノズル7を備えている。
高濃度オゾン水供給装置4は、オゾナイザーで生成されたオゾンガスを供給するオゾンガス供給管4aからの濃度210g/mのオゾンガスを、超純水供給管4bから供給される超純水に溶解させて140ppmの濃度の高濃度オゾン水を調整し、この高濃度オゾン水を管路6を介して洗浄ノズル7に供給する。
洗浄ノズル7は、支持台3の回転中心部から周縁部にかけて、複数の単位洗浄ノズル7a,7a,……を回転方向に変位する開螺旋状に配列し、洗浄ノズル7の支持台3における回転方向後方に高圧空気を下方に向けて噴出するエアナイフ8が、支持台3の半径方向に配設されている。
複数の単位洗浄ノズル7a,7a,……の開螺旋状の曲線は、各単位洗浄ノズル7aから吐出される高濃度オゾン水が、基板9に接触して、ほぼ半径方向(径方向の遠心力と基板の回転力に由来する接線方向の力の合成力の方向)に飛散する際、それぞれの単位洗浄ノズル7aから吐出された高濃度オゾン水の流れが重ならないような曲線とされている。符号10は高濃度オゾン水の単位洗浄ノズル7aへ供給される高濃度オゾン水の開閉バルブ、Cは排液受けである。
この実施例のフォトレジスト除去装置によれば、周縁部に流れる高濃度オゾン水の水流が均一になり、フォトレジストとオゾンの反応生成物が周縁部に沈着しにくくなる。
さらに、この実施例では、洗浄ノズル7の回転方向後方に、エアナイフ8を配置して、各単位洗浄ノズル7aから高濃度オゾン水が吐出する前に、基板の表面に沈着したフォトレジストとオゾンの反応生成物を高圧空気で除去するようにしたので、周縁部に残存するフォトレジストも完全に除去することができる。
【0018】
この実施例の装置を用いて不要のフォトレジスト(ノボラック樹脂系フォトレジスト)が残存する300mmφのシリコン基板10に70ppm、70℃の高濃度オゾン水を5L/minで30秒間、3000rpmで回転しながら吐出させたところフォトレジストは完全に除去することができた。
これに対して、基板11の中心に配置した円筒管から高濃度オゾン水を同量吐出させるようにした従来のフォトレジスト除去装置では、30秒間の洗浄では、基板表面の周縁部部にフォトレジストの未剥離部分が残った。
【実施例2】
【0019】
図4は、洗浄ノズル7の各単位洗浄ノズル7a,7a,……に超音波振動子を取り付けた実施形態の単位洗浄ノズル7aを示したものである。
同図において、単位洗浄ノズル7aは、高濃度オゾン水10と接して振動板11が配置され、その振動板11の上に超音波振動子12が配置されている。
なお、洗浄ノズル7以外の構成は、図1乃至図3と同一である。
そして、高濃度オゾン水実施形態では、高濃度オゾン水10を吐出口13から吐出するにあたって超音波振動子12に100kHz〜1MHzで30〜200Wの高周波の電圧を印加して超音波を発生させ、この超音波は吐出される高濃度オゾン水10を介して基板の洗浄面に振動エネルギーを伝播し、反応生成物の基板への沈着を防止するとともにフォトレジストの剥離を促進する。
なお、超音波振動子12は、全ての単位洗浄ノズル7aに設ける必要はなく、特に剥離が不完全になりがちな基板周縁部の単位洗浄ノズルにのみ設けるようにしてもよい。
【実施例3】
【0020】
図5は、洗浄ノズル7の各単位洗浄ノズル7a,7a,……を360°の開螺旋状に配列した実施形態の洗浄ノズル7を模式的に示したものであり、洗浄ノズル7以外の部分は、エアナイフがないことを除いて実施例1に示した装置と同様である。
この実施例では、基板の周方向に均一に、かつ周縁部にいくほど高濃度オゾン水の吐出水量が多くなるので、より均一なフォトレジストの剥離が可能になる。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組合せたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1……フォトレジスト除去装置
2……モータ
3……回転する支持台
4……高濃度オゾン水供給装置
5……支持アーム
7……洗浄ノズル
7a……単位洗浄ノズル
8……エアナイフ
9……開閉バルブ
10……高濃度オゾン水
11……振動板
12……超音波振動子
13……吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象の基板を支持して回転する支持台と、前記支持台の上方に、注水口を下方に向けて配設された洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルに高濃度オゾン水を供給する高濃度オゾン水供給装置とを備えたフォトレジスト除去装置であって、
前記洗浄ノズルは、前記支持台の回転中心からそれぞれ所定の距離をおいて配置された複数の単位洗浄ノズルからなり、
高濃度オゾン水の前記基板上における流れの方向の重なりが少なくなるよう前記基盤の半径方向に重ならない様に配置されていることを特徴とするフォトレジスト除去装置。
【請求項2】
洗浄対象の基板を支持して回転する支持台と、前記支持台の上方に、注水口を下方に向けて配設された洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルに高濃度オゾン水を供給する高濃度オゾン水供給装置とを備えたフォトレジスト除去装置であって、
前記洗浄ノズルは、前記支持台の回転中心からそれぞれ所定の距離をおいて配置された複数の単位洗浄ノズルからなり、少なくとも前記基板の周縁部における前記各単位洗浄ノズルが、前記各単位洗浄ノズルから吐出された高濃度オゾン水の前記基板上における流れの方向の重なりが少なくなるよう前記支持台の周方向にずらして配置されていることを特徴とする請求項1記載のフォトレジスト除去装置。
【請求項3】
前記複数の単位洗浄ノズルは、前記支持台の中心部側を基点とする開螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の請求項1又は2記載のフォトレジスト除去装置。
【請求項4】
前記基板の洗浄前の領域へ、吐出された高濃度オゾン水が流入するのを防ぐエアナイフを配設してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトレジスト除去装置。
【請求項5】
前記洗浄ノズルから吐出される高濃度オゾン水に超音波振動を伝播させる超音波振動素子を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトレジスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−245239(P2010−245239A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91584(P2009−91584)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】