説明

フレキシブルプリント配線板及びその製造方法

【課題】有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示素子パネルに接続する、透明性の高いフレキシブルプリント配線板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】透明ガラス層1と透明プラスチック層2との積層体を基材とし、そのガラス層1を貫通する溝14内に配線3有するフレキシブルプリント配線板10により、上記課題を解決する。このとき、配線の幅Wを1μm〜2mmとし、配線の高さHを5μm〜200μmとすることができる。こうした配線板10は、エッチャントに対して異なる被エッチング能を持つ少なくとも2種の透明層1,2が積層されてなる積層体を準備する工程と、そのエッチャントでエッチングされる側の透明層1を所定パターンでエッチングを行って貫通させる工程と、その貫通した溝14内に導電材3’を形成する工程とを有する方法で製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示素子パネルに接続する、透明性の高いフレキシブルプリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及び電子ペーパー等の表示装置は、より一層の薄型化・フレキシブル化が検討されている。それら表示装置を構成する表示素子パネルも同様、薄膜化・フレキシブル化が検討されている。表示素子パネルには、画素をON/OFFさせるための駆動素子又は駆動用電極が設けられている。画素をON/OFFさせる駆動方式として、パッシブマトリクス型駆動方式とアクティブマトリクス型駆動方式とがあり、いずれの駆動方式とするかは、コスト、表示性能、表示面積、電流、スイッチング速度等、様々な要素を加味して選択されている。
【0003】
パッシブマトリクス型駆動方式とアクティブマトリクス型駆動方式のいずれも、上記表示素子パネルの縦横に配線が設けられている。例えば、パッシブマトリクス型駆動方式は、各表示装置において、X配線(走査線)とY配線(データ線)との間に液晶層、有機EL層又はマイクロカプセル層を挟むと共に、両配線が直交する形態となっている。また、アクティブマトリクス型駆動方式は、液晶ディスプレイと電子ペーパーでは、TFT素子と画素電極とを備えた基板にX配線(走査線)とY配線(データ線)が縦横に配線された形態となっている。一方、有機ELディスプレイでは、TFT素子と有機EL素子とを備えた基板にX配線(走査線)及びY配線(データ線、電流供給線)が縦横に配線された形態となっている。
【0004】
図7は、パッシブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネル100の一例を示す斜視図である。図7に例示する有機EL素子パネル100は、基材101と、基材101上に設けられ且つY方向にストライプ状に並設されているY配線(データ線)103と、そのストライプ状のY配線103の上に積層された有機EL層104と、Y配線103及び有機EL層104からなるストライプ状積層体の間に設けられた絶縁層105と、ストライプ状の積層体と絶縁層との上に設けられ且つX方向にストライプ状に並設されているX配線(走査線)102と、そのX配線102を覆うように設けられた封止層106とを有している。この有機EL素子パネル100において、X配線102とY配線103がそれぞれ延びる方向の周縁部107には封止層106が設けられておらず、フレキシブルプリント配線板に接続することになる取出電極108,109が露出した形態で設けられている。取出電極108,109は、X配線102とY配線103にそれぞれ接続している。なお、アクティブマトリクス型駆動方式の場合(図示しない)も同様であり、周縁部の取出電極部でFPCに電気的に接続される。
【0005】
露出した取出電極108,109は、図8に示すように、フレキシブルプリント配線板110に電気的に接続される。一般的なフレキシブルプリント配線板110としては、接着剤付き銅箔とポリイミドフィルム111で作製されたTCP(Tape Carrier Package)、めっき法で形成した銅箔付きポリイミドフィルム111で作製されたCOF(Chip on Film)がある。銅箔を所定パターンの配線112に加工する方法は、通常、ウエットエッチングを使用したフォトリソグラフィ法が適用されている。なお、図8において、符号113はバンプ等の接続材を示している。
【0006】
関連する技術としては、特許文献1には、有機EL素子パネルを構成するガラス基板の表面にUVパルスレーザー光を照射してその表面に配線溝を形成し、その配線溝内に導電性の配線材料をインクジェット法で充填して配線を形成する方法が記載されている。また、特許文献2には、薄膜トランジスタを構成するプラスチック基板の表面にエキシマレーザー又はYAGレーザーを照射したレーザーアブレーション法によってその表面に凹部を形成し、その凹部内に導電性物質を含む溶液をインクジェット法で充填して配線を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−308832号公報
【特許文献2】特開2009−105413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フレキシブルプリント配線板は、ポリイミドフィルムを基材として用いているが、このポリイミドフィルムは、茶褐色状に着色しているとともに透明性にやや劣る。フレキシブルプリント配線板を単にフレキシブルな配線材として用いている場合であれば問題にならない。しかしながら、有機EL素子パネル、液晶ディスプレイ、電子ペーパー等の表示素子パネルに接続する場合は、そうしたフレキシブルプリント配線板を構成するポリイミドフィルムの着色と透明性が問題になることがある。例えば、フレキシブルプリント配線板が表示部にかかる場合や、透過型パネルの透過部にかかる場合には、フレキシブルプリント配線板が目立ってしまい、表示性能が劣ってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであって、その目的は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示素子パネルに接続する、透明性の高いフレキシブルプリント配線板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るフレキシブルプリント配線板は、透明ガラス層と透明プラスチック層との積層体を基材とし、前記ガラス層を貫通する溝内に配線を有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、透明ガラス層と透明プラスチック層との積層体を基材とするので、透明性に優れたフレキシブルプリント配線板とすることができる。また、ガラス層を貫通する形態で配線が設けられているので、ガラス層の厚さ分の導電材をその貫通溝内に設けることができ、導体抵抗を下げることができる。その結果、配線パターンが平面視で目立たない程度に配線幅を狭めることができる。また、ガラス層に積層されるプラスチック層は、割れやすいガラス層の保護層としても機能するので、配線形成工程時のハンドリングを容易なものとすることができる。こうした本発明に係るフレキシブルプリント配線板は、透明性が重視される表示素子パネルへの接続部材として好ましく用いることができる。なお、透明ガラス層と透明プラスチック層とが無着色であることが好ましく、その結果、フレキシブルプリント配線板をより一層目立たなくさせることができる。
【0012】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板において、前記配線の幅が1μm〜2mmであり、前記配線の高さが5μm〜200μmである。
【0013】
この発明によれば、配線の幅と高さが上記範囲内であるので、配線幅が平面視で目立たず、且つ配線として十分な導体抵抗となる。なお、導体抵抗は、配線材料が一定であれば配線の幅と高さ(ガラス層の厚さ)で調整できるので、設定する配線幅に応じて所定厚さのガラス層を採用すればよい。
【0014】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板において、前記配線が、銅又は銅合金からなる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、エッチャントに対して異なる被エッチング能を持つ少なくとも2種の透明層が積層されてなる積層体を準備する工程と、前記エッチャントでエッチングされる側の透明層を所定パターンでエッチングを行って貫通させる工程と、貫通した溝内に導電材を充填して配線を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、透明積層体の一方の層に貫通溝を形成するので、所定の深さの溝を形成する場合に比べてエッチング時間の管理が容易になる。そして、その貫通溝内に導電材を形成するので、貫通溝を設ける透明層の厚さ分の導電材を貫通溝内に設けることができ、導体抵抗を下げることができる。その結果、配線パターンが平面視で目立たない程度に配線幅を狭めることができる。また、透明積層体を基材とするので、透明性に優れたフレキシブルプリント配線板を製造できる。こうして製造されたフレキシブルプリント配線板は、透明性が重視される表示素子パネルへの接続部材として好ましく用いることができる。なお、透明積層体は無着色であることが好ましく、その結果、フレキシブルプリント配線板をより一層目立たなくさせることができる。
【0017】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法において、前記2種の透明層がガラス層とプラスチック層であり、前記エッチャントで該ガラス層をエッチングして貫通させる。
【0018】
この発明によれば、ガラス層に積層されるプラスチック層は、割れやすいガラス層の保護層としても機能するので、製造工程時のハンドリングを容易なものとすることができる。
【0019】
前記の場合において、前記ガラス層と前記プラスチック層とを接着剤を介して貼り合わせる、又は、前記ガラス層に前記プラスチック層を塗布形成することが好ましい。
【0020】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法において、前記貫通した溝内への導電材の形成工程が、無電解めっきした後に電解めっきする。
【0021】
この発明によれば、貫通した溝内に、生産性のよいめっき手段を用いて導電材を充填することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板及びその製造方法によれば、(1)所定の深さの溝を形成する場合に比べてエッチング時間の管理が容易になり、(2)貫通溝を設ける透明層の厚さ分の導電材を貫通溝内に設けて導体抵抗を下げることができ、配線パターンが平面視で目立たない程度に配線幅を狭めることができ、(3)透明性に優れたフレキシブルプリント配線板を製造できる。こうして製造されたフレキシブルプリント配線板は、透明性が重視される表示素子パネルへの接続部材として好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るフレキシブルプリント配線板の一例を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1のフレキシブルプリント配線板の配線部分を拡大した模式的な断面図である。
【図3】本発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法の説明図である。
【図4】貫通溝内に導電材を充填する手段の一例を示す工程説明図である。
【図5】貫通溝内に導電材を充填する手段の他の一例を示す工程説明図である。
【図6】フレキシブルプリント配線板を表示素子パネルに装着する態様の説明図である。
【図7】パッシブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネルの一例を示す斜視図である。
【図8】図7に示す表示素子パネルの露出した取出電極にフレキシブルプリント配線板を電気的に接続した態様を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係るフレキシブルプリント配線板及びその製造方法について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0025】
[フレキシブルプリント配線板]
本発明に係るフレキシブルプリント配線板10は、図1、図2及び図6に示すように、透明ガラス層1と透明プラスチック層2との積層体を基材とし、そのガラス層1を貫通する溝14内に配線3を有する。以下、本発明の構成を詳しく説明する。
【0026】
(基材)
基材は、透明ガラス層1と透明プラスチック層2との積層体で構成される。この積層体は、従来のポリイミドフィルムを用いたフレキシブルプリント配線板と同様、柔軟でフレキシブルである。基材の厚さは、透明ガラス層1と透明プラスチック層2との積層体がフレキシブルであるようにそれぞれの厚さが設定される。
【0027】
透明ガラス層1は、無アルカリガラス、ソーダガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス基材を挙げることができる。本願では、「ガラス層」と言っているが、薄ガラス又はガラスシートと呼ばれるものも含む意味で用いている。上記基材において、その基材を構成するガラス層1の厚さは、5μm〜200μmであることが好ましい。この範囲のガラス層1は、フレキシブル性がよいので好ましく用いられる。ガラス層1の厚さが5μm未満では、薄すぎて入手やハンドリングが困難な場合がある。また、ガラス層1の厚さが200μmを超えると、フレキシブル性が乏しくなることがある。
【0028】
透明プラスチック層2は、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。また、上記の他にも所定のフレキシブル性を満たす高分子材料であれば使用可能であり、2種類以上の共重合体を用いることもできる。また、ゾル−ゲル反応で成膜できる有機−無機系材料等を用いることもできる。
【0029】
本願では、「プラスチック層」と言っているが、プラスチックフィルム又はプラスチックシートと呼ばれるものも含む意味で用いている。上記厚さ範囲の基材において、その基材を構成するプラスチック層2の厚さは、5μm〜500μmであることが好ましい。この範囲のプラスチック層2は、フレキシブル性がよいので好ましく用いられる。プラスチック層2の厚さが5μm未満では、薄すぎてハンドリングが困難な場合がある。また、プラスチック層2の厚さが500μmを超えると、フレキシブル性が乏しくなることがある。なお、プラスチック層2は、脆く割れやすいガラス層1を保護する保護層としての役割もあり、その結果、製造工程時のハンドリングを容易なものとすることができる。
【0030】
なお、「透明」とは、全光線透過率の値が30〜100%の範囲程度のことをいう。なお、全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。全光線透過率は、例えば紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所社製、UVPC3100)を用いて測定することができる。また、ヘイズ値(曇り)で評価した値で表せば、0%〜10%であることが望ましい。なお、ヘイズ値は、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000、光源:D65)を用いて測定することができる。これらの範囲の全光線透過率及びヘイズ値を有する基材であれば、有機EL表示素子パネル、液晶表示素子パネル、電子ペーパー表示素子パネル等に重ね合わさるように適用した場合であっても、フレキシブルプリント配線板の存在が目立たない。
【0031】
基材は、ガラス層1上に接着剤層11を介してプラスチック層2を設けて形成することができる(図3(A)(B)の(i)参照)。通常は、薄ガラス板上に、接着剤層11を設けたプラスチックフィルム(シート)を貼り合わせて形成する。接着剤層11は、通常、硬化性樹脂からなる層を設ける。硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系、エポキシ系の紫外線硬化樹脂やエポキシ系の熱硬化性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されず、各種の接着剤を用いることができる。接着剤層11は、種々のコーティング法で形成でき、その厚さは、通常、1μm〜100μm程度である。
【0032】
また、基材は、ガラス層1上に樹脂組成物を塗布形成して、ガラス層1とプラスチック層2からなる積層体を形成してもよい(図3(A)(B)の(ii)参照)。塗布する樹脂組成物は、上記した各種の樹脂成分と溶剤成分とからなる組成物が用いられる。
【0033】
(配線)
配線3は、図1及び図2に示すように、ガラス層1を貫通する溝14内に設けられている。その溝14内には導電材3’が充填されて配線3を構成するので、その溝14の幅が配線の幅(配線幅W)となり、その溝14の深さが配線の高さ(配線高さH)となる。したがって、下記の溝14内への導電材3’の充填は、後述する方法によって行われる。
【0034】
配線幅Wは、1μm〜2mmであることが好ましい。この範囲内の配線幅Wとすることにより、フレキシブルプリント配線板10を平面視したときの配線3を目立たなくすることができる。配線幅Wが2mmを超えると、平面視での配線3が目立つようになる。配線幅Wが1μm未満では、必要とする導体抵抗を得るための配線高さHを大きくしなければならず、配線の形成が難しくなる。
【0035】
配線高さHは、5μm〜200μmであることが好ましい。この範囲内の配線高さHとすることにより、フレキシブルプリント配線板10を平面視したときの配線3を目立たなくすることができる態様における導体抵抗の値をフレキシブルプリント配線板として適当な範囲とすることができる。配線高さHが5μm未満では、フレキシブルプリント配線板10を平面視したときの配線3を目立たなくすることができる態様における導体抵抗の値が低くなりすぎてしまう。配線高さHが200μmを超えると、溝14を構成するガラス層1の厚さでフレキシブル性がなくなる。
【0036】
なお、配線ピッチは、2μm〜3mmであることが好ましい。また、上記配線3は、少なくとも平面視で目立たない配線幅Wとなることを前提として、配線高さHを所定の範囲とすることが望ましい。
【0037】
溝14は、ガラス層1に形成されている。溝14の形成は、フッ酸等のエッチャントでガラス層1が貫通するまでエッチングして形成する。貫通とは、ガラス層1の一方の面から他方の面までエッチングされていることをいい、プラスチック層2が露出するまでエッチングされていることをいう。又は、ガラス層1とプラスチック層2が接着剤層11を介して設けられている場合には、その接着剤層11が露出するまでガラス層1がエッチングされていることをいう。なお、エッチングを始めた側の面の溝幅W1と、エッチングが終わる側(プラスチック層2の露出側)の溝幅W2とは、W1/W2が0.005〜5程度の大きさでエッチングされている。したがって、配線幅Wとは、W1の値である。
【0038】
溝内には導電材3’が充填されている。導電材3’としては、銅、銅合金、金又は銀等を挙げることができる。銅合金を構成する他の金属としては、銀、金等の電気伝導性が高い金属を挙げることができる。通常は、電解めっき法で成膜された銅又は銅合金によって溝内を充填したり、銅ペーストで溝内に充填したりする。
【0039】
(その他)
本発明に係るフレキシブルプリント配線板10は少なくとも上記した構成を含めばよいが、そのフレキシブルプリント配線板10に電子部品が実装されていてもよい。実装部品としては、IC、抵抗部品、容量部品等を挙げることができる。
【0040】
図6に示すように、フレキシブルプリント配線板10は、有機EL素子パネル30の取出電極部33に接続される。フレキシブルプリント配線板10は、配線3が溝14内に設けられたガラス層1の側が有機EL素子パネル30の取出電極部33に対向するように配置し、フレキシブルプリント配線板10の配線3と有機EL素子パネル30の取出電極34とを、はんだバンプや異方性導電膜を間に介して接続する。なお、有機EL素子パネル30は、例えば図7に示す例と同様であるが、それ以外の構造であってもよく、少なくとも本発明に係るフレキシブルプリント配線板10と接続する取出電極部を有する表示素子パネルであればよい。表示素子パネルとしては、有機EL素子パネル30の他、液晶ディスプレイで用いる液晶表示素子パネルや、電子ペーパーで用いるマイクロカプセル層等を備えた電子ペーパー素子パネルであってもよい。
【0041】
以上説明したように、本発明のフレキシブルプリント配線板10は、透明ガラス層1と透明プラスチック層2との積層体を基材とするので、透明性に優れたフレキシブルプリント配線板10とすることができる。また、ガラス層1を貫通する形態で配線3が設けられているので、ガラス層1の厚さ分の導電材3’をその貫通溝14内に設けることができ、導体抵抗を下げることができる。その結果、配線パターンが平面視で目立たない程度に配線幅Wを狭めることができる。また、ガラス層1に積層されるプラスチック層2は、割れやすいガラス層1の保護層としても機能するので、配線形成工程時のハンドリングを容易なものとすることができる。こうした本発明に係るフレキシブルプリント配線板10は、透明性が重視される表示素子パネル30への接続部材として好ましく用いることができる。なお、透明ガラス層1と透明プラスチック層2とが無着色であることが好ましく、その結果、フレキシブルプリント配線板10をより一層目立たなくさせることができる。
【0042】
[フレキシブルプリント配線板の製造方法]
本発明に係るフレキシブルプリント配線板10の製造方法は、図3〜図5に示す方法で製造できる。具体的には、エッチャントに対して異なる被エッチング能を持つ少なくとも2種の透明層が積層されてなる積層体を準備する工程と、そのエッチャントでエッチングされる側の透明層を所定パターンでエッチングを行って貫通させる工程と、貫通した溝内に導電材を充填して配線を形成する工程と、を有する。
【0043】
(準備工程)
準備工程は、図3(A)(B)に示すように、エッチャントに対して異なる被エッチング能を持つ少なくとも2種の透明層が積層されてなる積層体を準備する工程である。積層体は、少なくとも2つの透明層で構成されており、その透明層は、図3(A)(B)の(i)に示すように、間に接着剤層11を介して貼り合わされていてもよいし、図3(A)(B)の(ii)に示すように、直接接触して積層されていてもよい。例えば、ガラス層1とプラスチック層2とを接着剤層11を介して貼り合わせる、又は、ガラス層1にプラスチック層2を塗布形成することが好ましい。
【0044】
そして、その少なくとも2種の透明層は、エッチャントに対して異なる被エッチング能を有する。エッチャントとしては、例えばフッ酸等を挙げることができる。エッチャントとしてフッ酸を用いる場合には、そのフッ酸に対する被エッチング能が異なるガラス層1とプラスチック層2とを2種の透明層として用いることができる。本発明では、エッチャントに対して異なる被エッチング能を有する透明層を積層させることにより、一方の透明層に貫通溝14を容易に形成できる。
【0045】
(エッチング工程)
エッチング工程は、図3(C)(D)に示すように、エッチャントでエッチングされる側の透明層(ガラス層1)を所定パターンでエッチングを行って貫通させる工程である。具体的には、エッチャントに対して被エッチング能を有する側の面にレジストマスクパターン12を形成し、エッチャントでエッチング処理することにより、マスクの開口部13に露出した部分をエッチングして溝14を形成する。
【0046】
エッチングは、エッチャントに対する被エッチング能が無い又は小さい他の透明層にまでエッチングが到達し、所定の溝幅になるまで行う。エッチャントに対する被エッチング能が無い又は小さい他の透明層を下層としているので、上層のエッチング時間の管理は厳格でなくてもよく、工程管理を簡易化することができる。なお、レジストマスクは、特に限定されず、エッチャントに対応したエッチングマスクとして一般に使用されているものを適用できる。
【0047】
例えば、ガラス層1とプラスチック層2との積層体の場合、エッチャントとしてフッ酸を用いれば、ガラス層1上にエッチングマスクパターン12を形成して、ガラス層1に貫通溝14を形成できる。
【0048】
エッチングで形成する配線幅Wは既述したとおりであるのでここではその説明を省略する。また、配線高さHはエッチングされる透明層の厚さと同じになるが、それについても既述したのでその説明を省略する。
【0049】
(導電材形成工程)
導電材形成工程は、図3(E)〜(G)に示すように、貫通した溝14内に導電材3’を充填して配線3を形成する工程である。導電材3’としては、銅又は銅合金を好ましく用いることができる。そうした銅又は銅合金は、めっき法やインクジェット法、真空蒸着法、印刷法、ディップコート法、ロールコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、LB法等で溝14内に充填し、配線3とすることができる。
【0050】
例えば、図3(E)〜(G)及び図4に示すように、めっき法で配線3を形成することができる。先ず、図4(B)に示すように、溝14が形成されたガラス層1側の全面に、無電解めっき触媒層21を形成する。次いで、図4(C)に示すように、無電解めっき層22を形成する。次いで、図4(D)に示すように、電解めっき層23を形成する。次いで、図4(E)に示すように、溝14の上方にレジストマスクパターン15を形成した後、図4(F)に示すように、他の金属部分をエッチングして、溝内に導電材3’を残して配線3を形成する。
【0051】
なお、図4に示すめっき工程において、無電解めっき触媒層21は、無電解めっき層を形成するために事前に設ける層であり、通常、パラジウムを含有する溶液又はコロイド溶液を用いて形成できる。また、無電解めっき層22は、電解めっきを形成するための給電用導体として利用するための層であり、通常、銅層又は銅合金層を形成可能な無電解銅めっき液を用いて形成できる。また、電解めっき層23は、銅層又は銅合金層を形成可能な電解めっき溶液と接触させ、無電解めっき層22に給電して成膜できる。電解めっきは無電解めっきに比べてめっき層の析出速度が顕著に大きいので、成膜速度を著しく高めることができる。なお、銅層又は銅合金層のエッチングは、塩化第2鉄、塩化銅、水酸化アンモニウムの水溶液等のエッチング液を用いることが好ましい。
【0052】
また、図5に示す方法でも配線3を形成できる。先ず、図5(B)に示すように、ガラス層1の溝14内に導電ペースト等からなる導電材3’を充填する。次いで、図5(C)に示すように、必要に応じて加熱乾燥等を行って、配線3を溝14内に形成する。なお、図5に示す工程において、導電材3’の充填手段は特に限定されないが、一般的なインクジェット法で行うことができる。また、導電ペースト等も特に限定されないが、銅、銀、金等の導電性の高い粒子を含むペースト材料を適用することができる。
【0053】
以上説明したように、本発明に係るフレキシブルプリント配線板10の製造方法によれば、透明積層体の一方の層に貫通溝14を形成するので、所定の深さの溝(貫通しない溝)を形成する場合に比べてエッチング時間の管理が容易になる。そして、その貫通溝14内に導電材3’を形成するので、貫通溝14を設ける透明層の厚さ分の導電材3’を貫通溝14内に設けることができ、導体抵抗を下げることができる。こうして製造されたるフレキシブルプリント配線板10は、透明性が重視される表示素子パネル30への接続部材として好ましく用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【0055】
[実施例1]
透明ガラス層1として、厚さ100μmの無アルカリガラス(日本電気硝子株式会社製、商品名:OA−10G)を用いた。透明プラスチック層2として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。プラスチック層2上にエポキシ系樹脂からなる厚さ25μmの接着剤層11を形成し、その接着剤層11をガラス面に向けてプラスチック層2をガラス層1上に貼り合わせて接着させた。なお、ガラス層1の全光線透過率は90%以上であり、プラスチック層2の全光線透過率は90%以上であり、いずれも高い透明性を有するものを用いた。
【0056】
ガラス層1の上には、配線幅W1が1μmであり、配線ピッチが3mmとなるように感光性の(ポジ型)レジストをパターニングしたレジストマスクパターン12を形成した。その後、フッ酸でガラス層1の開口部13をエッチングした。エッチングが下層のプラスチック層2にまで到達するまでエッチングを続けた。
【0057】
次いで、パラジウム触媒層21、無電解銅めっき層22、電解銅めっき層23を順次形成して導電層を全面に形成した後、溝14の上部にレジストマスクパターン15を形成し、塩化第2鉄溶液でエッチングして溝14以外の金属部分を除去した。こうして、配線幅W1が1μmであり、配線ピッチが3mmの配線3を溝14内に形成した。こうして実施例1のフレキシブルプリント配線板10を作製した。得られたフレキシブルプリント配線板10を平面視したとき、その配線は目立たず、視認しにくかった。
【0058】
[実施例2]
実施例1において、配線幅W1を2mmとし、配線高さH(ガラス層1の厚さ)を50μmとした配線3を形成した他は、実施例1と同様にして、実施例2のフレキシブルプリント配線板10を作製した。得られたフレキシブルプリント配線板10を平面視したとき、その配線は目立たず、視認しにくかった。
【0059】
[実施例3]
実施例1において、形成した溝14にめっき法で配線を形成せず、その溝14内に銅粒子を含む導電ペーストを充填し、その後に乾燥して配線3を形成した他は、実施例1と同様にして、実施例3のフレキシブルプリント配線板10を作製した。得られたフレキシブルプリント配線板10を平面視したとき、その配線は目立たず、視認しにくかった。
【0060】
[実施例4]
実施例3において、銅粒子を含む導電ペーストに代えて、銅粒子と銀粒子を含む導電ペーストを用いた他は、実施例3と同様にして、実施例4のフレキシブルプリント配線板10を作製した。得られたフレキシブルプリント配線板10を平面視したとき、その配線は目立たず、視認しにくかった。
【0061】
[実施例5]
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルムを用いた他は、実施例1と同様にして、実施例5のフレキシブルプリント配線板10を作製した。得られたフレキシブルプリント配線板10を平面視したとき、その配線は目立たず、視認しにくかった。ここで用いたプラスチック層2の全光線透過率全光線透過率は90%以上であり、高い透明性を有していた。
【符号の説明】
【0062】
1 ガラス層
2 プラスチック層
3 配線
3’ 導電材
10 フレキシブルプリント配線板
11 接着剤層
12 マスク層
13 開口部
14 貫通溝
15 マスク層
21 触媒層
22 無電解めっき層
23 電解めっき層
24 導電ペースト層
30 表示素子パネル
31 基材
32 封止フィルム(封止層)
33 取出電極部
34 取出電極
W 配線幅
H 配線高さ
【0063】
100 有機EL素子パネル
101 基材
102 X配線
103 Y配線
104 有機EL層
105 絶縁層
106 封止層(封止フィルム)
107 周縁部(取出電極部)
108,109 取出電極
110 フレキシブルプリント配線板
111 ポリイミド基板
112 銅配線
113 はんだバンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ガラス層と透明プラスチック層との積層体を基材とし、前記ガラス層を貫通する溝内に配線を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記配線の幅が1μm〜2mmであり、前記配線の高さが5μm〜200μmである、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記配線が、銅又は銅合金からなる、請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
エッチャントに対して異なる被エッチング能を持つ少なくとも2種の透明層が積層されてなる積層体を準備する工程と、
前記エッチャントでエッチングされる側の透明層を所定パターンでエッチングを行って貫通させる工程と、
前記貫通した溝内に導電材を充填して配線を形成する工程と、を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記2種の透明層がガラス層とプラスチック層であり、前記エッチャントで該ガラス層をエッチングして貫通させる、請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス層と前記プラスチック層とを接着剤を介して貼り合わせる、又は、前記ガラス層に前記プラスチック層を塗布形成する、請求項5に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記貫通した溝内への導電材の形成工程が、無電解めっきした後に電解めっきする工程である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−187718(P2011−187718A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51945(P2010−51945)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】