説明

ブレーキシステム、発電機、及び風車

【課題】風車のための有利なブレーキシステムを提供する。
【解決手段】ロータアセンブリ8が、ステータアセンブリ7の半径方向外側に配置された外側部分11を有しており、該外側部分11がブレーキディスク12を有しており、ステータアセンブリ7が、ブレーキディスク12の少なくとも一部と係合した摩擦を生ずるように作用的に形成された少なくとも1つの摩擦部材13を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に発電機のためのブレーキシステム、発電機、特に直接駆動発電機、及び風車に関する。
【背景技術】
【0002】
原理的には、風車の直接駆動形式に関連して風車の2つの主な形式が存在する。風車の第1の形式は、主軸と風車の発電機との間に配置されたギヤボックスを有する、より従来形式の風車である。風車の第2の形式は、ギヤレス形式であり、ギヤボックス及び慣用の発電機の代わりに、多極発電機、いわゆる直接駆動式又は直接駆動される発電機が用いられる。このような直接駆動発電機は、風力ロータ又はロータに取り付けられた永久磁石を備えた同期発電機として形成することができるか、又は発電機の択一的な形式として設計することができる。直接駆動発電機に関する課題の1つは、機械的なブレーキシステムである。ブレーキシステムは、ギヤボックスが用いられていないため、減速する回転軸に配置される必要がある。ブレーキシステムは、大きな制動モーメントに耐える必要があり、大型のブレーキディスクとキャリパとが必要である。
【0003】
米国特許出願公開第2005/230979号明細書には、メンテナンス作業中に構成部材への十分なアクセス性を提供しつつ、ナセルの寸法を最小化する風車が記載されている。風車は、ナセルと、前記ナセルに隣接した羽根ロータハブと、前記ハブ及び前記ナセルに連結された主軸とを有している。発電機は、前記ナセルと前記ハブとの間において前記軸に連結されており、前記発電機は、前記軸に隣接した発電機ロータと、前記発電機ロータに隣接してかつ発電機ロータより半径方向外側に配置されたステータと、前記発電機と前記軸とに連結されたブレーキとを有しており、ブレーキは前記ロータより半径方向内側に配置されている。この発明は、システムを多かれ少なかれ発電機に一体化することができるのでブレーキシステムを最小化する解決手段を示している。しかしながら、提案された解決手段は、構造の寸法を最小化し、ブレーキシステムの寸法をも制限する。ブレーキシステムの寸法の制限は、ロータの低速の回転速度による高い制動モーメントに耐えるためにキャリヤ及びブレーキディスクの寸法ができるだけ大きくなければならない直接駆動式風車にとって望ましくない。米国特許出願公開第2005/230979号明細書に示されたブレーキシステムは、発電機の通過も妨げ、ナセル/発電機からハブ内へ入り込むこともできない。さらに、この発明は、内側ロータ構成を備える発電機に関し、外側ロータ構成を備えるブレーキシステムのための構成を用いることはできない。
【0004】
米国特許出願公開第2009/0026771号明細書において、ロータアセンブリを備える発電機を有する風車が開示されている。風車は、風力ロータ及びロータアセンブリの回転を減速させ、停止させ又は停止させたまま保つための摩擦ブレーキシステムを有している。1つの実施形態において、風車/発電機セットは、ステータアセンブリと、回転軸線を中心にして回転可能なロータアセンブリとを備える発電機を有している。ロータアセンブリは、アクティブ部分と、アクティブ部分を支持するアクティブ部分支持体とを有している。風車/発電機セットは、さらに、ロータアセンブリに連結された風力ロータと、ステータアセンブリを固定して支持しかつロータアセンブリを回転可能に支持する発電機支持体とを有している。さらに、風車/発電機セットは、少なくとも、発電機支持体に対して固定されたブレーキ装置を有している。ブレーキ装置は、アクティブ部分支持体の少なくとも一部に係合して摩擦を生じるように作用的に構成された少なくとも1つの摩擦部材を有している。ロータアセンブリは、概して、ステータアセンブリの半径方向内側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/230979号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0026771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の課題は、有利なブレーキシステムを提供することである。本発明の第2の課題は、有利な発電機を提供することであり、本発明の第3の課題は、有利な風車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の課題は、請求項1に記載のブレーキシステムによって解決される。第2の課題は、請求項13に記載の発電機によって解決され、第3の課題は、請求項15に記載の風車によって解決される。従属請求項は、発明の別の発展態様を定義している。
【0008】
本発明によるブレーキシステムは、ロータアセンブリと、ステータアセンブリと、回転軸とを有することができる。ロータアセンブリは、ステータアセンブリの半径方向外側に配置された外側部分を有していてよい。外側部分はブレーキディスクを有していてよい。ステータアセンブリは少なくとも1つの摩擦部材を有していてよい。摩擦部材は、ブレーキディスクの少なくとも一部に係合して摩擦を生じるように作用的に構成されている。本発明によるブレーキシステムは、特に発電機のために使用されてよい。
【0009】
本発明によるブレーキシステムは、ブレーキディスクを外側ロータの円筒状の支持構造に取り付けることができるという利点を有する。この場合、機械の可能な大きな直径を、可能な限り大きな直径を備えたブレーキディスクを使用するために完全に使用することができる。このことはブレーキの効率を高める。さらに、より大きなブレーキディスクと、より大きなブレーキキャリパとを使用することができ、このことは、より大きな有効接触面を提供する。大きな有効接触面は、例えばロータを停止位置に保つために必要である。別の利点は、より小さなブレーキディスクと比べ、大きなブレーキディスクにおいてはより多くの熱を吸収及び分散させることができるということである。
【0010】
一般的に、本発明によるブレーキシステムは、直接駆動発電機の一部であることができるか又は直接駆動発電機に結合することができる。発電機は、外側ロータ構成又は内側ロータ構成を有していてよい。
【0011】
有利には、ブレーキディスクは、ロータアセンブリの外側部分から回転軸線に向かって半径方向内方へ延びている。この場合、本発明によるブレーキシステムは、直接駆動発電機のために使用することができる。さらに、本発明によるブレーキシステムは、外側ロータ構成を備えた直接駆動風車の一部であってよい。
【0012】
さらに、ロータアセンブリはフランジを有していてよい。ブレーキディスクはフランジに固定されてよい。例えば、フランジは、多数の穴、好適にはボルト穴を有してもよい。穴は半径方向に間隔を置いて配置されていてよい。好適には、ブレーキディスクは、ボルト又はねじによってフランジに固定されている。
【0013】
ブレーキシステムは、ハブを備えた風車の一部であってよい。この場合、ブレーキシステム、特にブレーキシステムのロータアセンブリが、ハブに面した近位端部と、ハブとは反対側に配置された遠位端部とを有してよい。好適には、ブレーキディスクが固定されたフランジは、ロータアセンブリの遠位端部に、つまりハブとは反対側に配置されていてよい。
【0014】
本発明によるブレーキシステムは、ロータ支持体を含んでいてよい。この場合、ブレーキディスクは、例えばボルト又はねじによってロータ支持体のフランジに固定されてよい。
【0015】
ステータアセンブリは、定置の軸を含んでいてよい。少なくとも1つの摩擦部材は、定置の軸に結合されていてよい。ステータアセンブリは、風車のベッドフレームを含んでいてよい。少なくとも1つの摩擦部材は、風車のベッドフレームに結合されていてよい。ステータアセンブリは、ステータ支持構造を含んでいてよい。少なくとも1つの摩擦部材はステータ支持構造に結合されていてよい。例えば、少なくとも1つの摩擦部材、例えば少なくとも1つのブレーキキャリパは、定置の軸又は風車のベッドフレーム又はステータ支持構造に直接に取り付けられていてよい。
【0016】
好適には、少なくとも1つの摩擦部材は、回転軸線に対して半径方向外方へ延びていてよい。例えば、少なくとも1つの摩擦部材は、ステータ支持構造から、又は風車の定置の軸又はベッドフレームから、半径方向外方へ延びていてよい。
【0017】
特に、摩擦部材は、少なくとも1つのブレーキキャリパを含んでいてよい。好適には、摩擦部材は、好適にはブレーキディスクを包囲するように、ブレーキディスクのそれぞれの側に設けられた少なくとも1つのブレーキキャリパを含む。有利には、少なくとも1つの摩擦部材は、少なくとも1つのブレーキキャリパシステムを含む。少なくとも1つのキャリパシステムは、ブレーキディスクのそれぞれの側に互いに向き合って配置された少なくとも2つのブレーキキャリパを有していてよい。例えば、ブレーキキャリパシステムは、少なくとも1つのキャリパブラケットを有していてよい。キャリパブラケットは、キャリパ及び/又はブレーキキャリパシステムを、例えば定置の軸に取り付けるためのブレーキシステムの別の構成部材に取り付けるために使用されてよい。各ブレーキキャリパシステムはキャリパブラケットに結合されていてよい。
【0018】
有利には、ブレーキキャリパシステムは、ブレーキキャリパシステムの固定箇所において曲げモーメント、特に軸方向曲げモーメントが生じないように、軸方向でブレーキディスクと整列されるように設計されていてよい。例えば、ブレーキキャリパシステムは、軸方向でブレーキディスクと整列させられているか、又はキャリパブラケットへのブレーキキャリパシステムの固定箇所において曲げモーメントが生じないか又は実質的に曲げモーメントが生じないように構成されていてよい。
【0019】
さらに、本発明によるブレーキシステムは、ロータロックシステムを有している。好適には、ロータロックシステムはブレーキシステムに一体化されている。好適には、ロータロックシステムは自動アクチュエータを有している。例えば、ロータロックシステムは、インターロック、スナップインロック、ブロック、アレスト、又はバリケードを含んでいてよく、好適には多数の前記構成部材を含んでいてよい。
【0020】
ロータロックシステムは、ブレーキディスクが多数の凹所を、好適にはブレーキディスクの内面において、例えば半径方向に及び/又は対称に間隔を置いて有するように、実現することができる。ステータアセンブリは、少なくとも1つのピストン、好適には多数のピストンを有していてよい。好適には、1つ又は複数のピストンは、1つ又は複数の凹所と係合するように配置されている。例えば、1つ又は複数のピストンは、ロータを停止位置にロックするために、ブレーキディスクに設けられた対応する凹所と係合するように構成されている。
【0021】
好適には、ロックシステムは、自動アクチュエータを有していてよい。自動アクチュエータは、有利には1つ又は複数のピストンを対応する凹所に押し込むように構成することができる。アクチュエータは、液圧式手段又は電気的手段、例えば液圧式シリンダを含んでいてよい。この場合、ピストンを、液圧式手段又は電気的手段によってブレーキディスクの対応する凹所に押し込むことができる。これにより、ロータを自動化された形式でロックすることができる。
【0022】
さらに、ブレーキディスクは、多数の半径セグメントを有していてよい。ブレーキディスクが半径セグメントに分割されている場合、大きなブレーキディスクを容易に交換することができる。
【0023】
本発明による発電機は、前述のような本発明によるブレーキシステムを有する。本発明による発電機は、本発明によるブレーキシステムと同じ利点を有する。
【0024】
一般的に、発電機は、発電機のステータエレメントとロータエレメントとの間に配置された空隙を有してよい。ロータエレメントは例えば永久磁石を有するのに対し、ステータエレメントは、ステータコイルの少なくとも1つの巻線を支持する積み重ねられた積層板を有する。
【0025】
空隙は、発電機の高い効率を保証するため、比較的小さいのが望ましい。従って、空隙は、僅か数ミリメートルの範囲であるのが望ましい。直接駆動又は直接被駆動発電機のような発電機の場合、このことは、その寸法により極めて困難である。直接駆動発電機は数メートルの直径を有する。
【0026】
ロータエレメント及びステータエレメントは、通常、互いに向き合って配置されており、空隙は、発電機の運転中にロータエレメントとステータエレメントとが接触しないことを保証しなければならない。従って、空隙は、機械的な損傷を回避するために空隙の所定の幅が必要とされる一方で、発電機の効率を保証するために極めて小さいのが望ましい。
【0027】
特に直接駆動発電機の場合、空隙を僅か数ミリメートルの範囲に保つことは困難である。従って、このことは、ステータエレメント及びロータエレメントのための、極めて剛性の、大きな、重い支持構造を必要とする。
【0028】
発電機の空隙は、ロータの部分である永久磁石の公差、ステータの部分である積み重ねられた積層板の公差、及び/又はステータコイルの部分であるコイル巻線の公差によって、決定することができる。発電機のその他のエレメントも、空隙の寸法に影響する。空隙は、ロータが固有の回転軸線を中心にして回転する時にロータのエレメントとステータのエレメントとが接触しないように設計されてよい。
【0029】
本発明による発電機は、ロータとステータとを有していてよい。有利には、ブレーキディスクと摩擦部材との間の半径方向の距離(半径距離)は、ロータとステータとの間の半径方向の距離(半径距離)よりも小さい。摩擦部材は、ブレーキキャリパ又はブレーキキャリパシステム又はブレーキキャリパシステムの部分、例えばブラケットであることができる。例えば、ブレーキディスクと摩擦部材との間の半径距離は、1mm〜5mm、好適には2mm〜4mmであることができる。ロータとステータとの間の半径距離は、4mm〜10mm、好適には5mm〜7mmであることができる。
【0030】
ブレーキディスクと摩擦部材との間の半径距離が、ロータとステータとの間の半径距離よりも小さい場合、ブレーキディスクは、ステータがロータに衝突する前に、摩擦部材、例えばブレーキキャリパシステムのブラケットに衝突する。これにより、発電機への損傷が回避され、システムの安全性を高める。ロータとステータとの間の半径距離は、空隙とも呼ばれる。発電機は、片側軸受を備える直接駆動風車の部分であってよい。発電機は、軸受が配置されているのとは反対側の端部である不支持端部を有していてよい。本発明による発電機により、不支持端部における空隙を狭い公差の範囲に維持することができる。
【0031】
本発明による風車は、上述のような本発明によるブレーキシステム及び/又は本発明による発電機を有している。本発明による風車は、本発明によるブレーキシステム及び/又は本発明による発電機と同じ利点を有する。好適には、本発明による風車は、直接駆動風車であってよい。さらに、本発明による風車は、外側ロータ構成を有してよい。
【0032】
本発明による風車は、ナセルと、ハブと、発電機とを有していてよい。発電機は、ナセルの内側又はナセルとハブとの間に配置されていてよい。ブレーキシステムは、発電機及び/又はハブに接続されていてよい。例えば、ブレーキシステムは、発電機の一体化された部分及び/又はハブの一体化された部分であってよい。
【0033】
発電機は、ハブに面した近位側と、ハブとは反対側の遠位側とを有していてよい。好適には、ブレーキシステム及び/又はロックシステムは、ハブとは反対側の遠位側に配置されていてよい。
【0034】
本発明によるブレーキシステムは、多かれ少なかれ発電機の一体化された部分であってよいので、ナセルの内部の余分な空間を占有しない。さらに、発電機、特にステータを通って進入することができ、このことは大きな利点である。このことは、ハブへの容易なアクセスを提供する。さらに、特にブレーキシステムがハブとは反対側の発電機の遠位側に配置されている場合、ブレーキシステムの部分への容易なアクセスが提供される。これは、メンテナンス及び保守を容易にする。
【0035】
本発明の別の特徴、特性及び利点は、添付の図面に関連した実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。全ての特徴は、それ自体で又は互いに組み合わせても有利である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】風車を概略的に示す図である。
【図2】本発明によるブレーキシステムを備えた本発明による発電機の部分を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明によるブレーキシステムを概略的に示す正面図である。
【図4】本発明によるブレーキシステムの部分を概略的に示す、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】本発明によるブレーキシステムのロータロックシステムの部分を概略的に示す、V−V線に沿った断面図である。
【図6】ロックされた位置における図5のロータロックシステムを概略的に示す図である。
【図7】本発明による風車の部分を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここで本発明の実施形態を図1から図7を参照して説明する。図1は風車1を概略的に示している。風車1は、タワー2と、ナセル3と、ハブ4とを有している。ナセル3はタワー2の上部に配置されている。ハブ4は、多数の風車羽根5を有している。ハブ4はナセル3に取り付けられている。さらに、ハブ4は、回転軸線9を中心にして回転することができるように取り付けられている。発電機6はナセル3の内部に配置されている。風車1は直接駆動風車である。発電機6は、ハブ4に面した近位側19と、ハブ4とは反対側の遠位側20とを有している。
【0038】
図2は、外側ロータ構成を備えた発電機6の一部を断面図で概略的に示している。発電機6は、ステータアセンブリ7と、ロータアセンブリ8とを有している。ステータアセンブリ7は、回転軸線9の近くに配置された定置の軸10を有している。ロータアセンブリ8は、ステータアセンブリ7の半径方向外側に配置された外側ロータ部分11を有している。ロータアセンブリ8は、さらにブレーキディスク12を有している。ブレーキディスク12は、外側ロータ部分11の一部であるか、外側ロータ部分11に結合されていてよい。ブレーキディスク12は、外側部分11から回転軸線9に向かって半径方向内方へ延びている。ロータアセンブリ8の外側部分11と、ブレーキディスク12とは、回転軸線9を中心に回転可能に取り付けられている。
【0039】
ステータアセンブリ7はさらに、摩擦部材、この実施形態においてはブレーキキャリパシステム13を有している。ブレーキキャリパシステム13は、少なくともブレーキディスク12の一部に係合して摩擦を生じるように作用的に構成されている。ブレーキキャリパシステム13は、定置の軸10からブレーキディスク12に向かって半径方向外方へ延びている。ブレーキキャリパシステム13は、ブレーキディスク12を包囲するように、ブレーキディスク12のそれぞれの側において少なくとも1つのブレーキキャリパを有している。
【0040】
ブレーキディスク12とブレーキキャリパシステム13との間の半径距離22は、外側ロータ部分11とステータアセンブリ7との間の半径距離23(空隙)よりも小さい。有利には、半径距離22は、1mm〜5mm、好適には2mm〜4mmである。好適には、空隙23は、4mm〜10mm、有利には5mm〜7mmの幅を有している。
【0041】
図3は、発電機6の本発明によるブレーキシステムの正面図を示している。前述の図面のエレメントに対応するエレメントは、同じ参照符号で示されており、改めて詳細に説明しない。ブレーキディスク12は内面21を有している。ブレーキディスク12の内面12は、多数の凹所(切欠き)15を有している。好適には、凹所15は、内面21において、半径方向に及び/又は対称に間隔を置いて配置されている。
【0042】
概して、ブレーキディスク12は、半径セグメント12a,12b,12cに分割されている。ブレーキディスク12は、その他のあらゆる数の半径セグメントに分割することもできる。これにより、大きなブレーキディスク12を容易に交換することができる。
【0043】
ブレーキシステムはさらに、多数の中央取付けフランジ14、この実施形態においては3つの中央取付けフランジ14を有している。フランジ14は、定置の軸10に取り付けられている。フランジ14は、定置の軸10の円周に関して120゜の角度でずらされている。択一的に、その他のあらゆる数のフランジ14が可能である。好適には、フランジ14は、互いに隣接するフランジが互いに等しい距離を有するように、定置の軸10の円周の周囲に配置されている。
【0044】
ブレーキシステムは少なくとも1つのロータロックシステム17を有している。ロータロックシステム17は少なくとも1つのピストン16を有している。ピストンは、フランジ14の内部に配置されているか、ロックケーシングの内部に配置されている。ロックケーシングはフランジ14に結合することができる。択一的に、ブレーキシステムは、ピストンを収容するための又はロータロックシステム17の少なくとも1つのロックケーシングに結合されるための別個のフランジを有することができ、別個のフランジ14は、ブレーキシステム、特にブレーキキャリパシステム13と結合されている。
【0045】
ピストン16は、ブレーキディスク12の内面21に設けられた凹所15と係合するように配置されている。好適には、ロータロックシステム17は自動アクチュエータを有している。自動アクチュエータは、ロータロックを作動させるように構成されていてよい。特に、ロータロックシステム17は、ピストン16を対応する凹所15に押し込むための自動アクチュエータを有していてよい。好適には、アクチュエータは、液圧式手段又は電気的手段、例えば液圧式シリンダを含む。凹所の代わりに、ブレーキディスク12に穴を設けることができ、ピストンの代わりにピンを使用してもよい。
【0046】
多数のピストン16を有する前述のロータロックシステム17の代わりに、インターロック、スナップインロック、ブロック、アレスト、バリケード、又は同様の手段を含むロックシステムを使用してもよい。
【0047】
図4は、本発明によるブレーキシステムの一部を図3のIV−IV線に沿った断面図で概略的に示している。図4において、ブレーキディスク12のそれぞれの側に、2つのブレーキキャリパ13a及び13bが、互いに向き合って配置されている。2つのブレーキキャリパ13a及び13bは、中央取付けフランジ14に結合されている。フランジ14は定置の軸10に結合されている。図4において、ブレーキディスクは外側ロータ部分11の一体化された部分である。択一的に、ブレーキディスク12は、外側ロータ部分11に結合された別個のエレメントであってもよい。例えば、ブレーキディスク12は、例えばボルト又はねじによってロータ支持体のフランジに固定することができる。
【0048】
ブレーキキャリパ13a及び13bを作動させるための作動力は、矢印18によって示されている。ブレーキキャリパ13a及び13bが作動させられると、ブレーキキャリパは、ブレーキディスク12の一部に係合して摩擦を生ずる。
【0049】
風車1は、ベッドフレーム又はステータの支持構造を有していてよい。この場合、ブレーキキャリパシステム13は、風車1のベッドフレーム又はステータの支持構造に直接に取り付けることができる。
【0050】
図5及び図6は、本発明によるブレーキシステムの一部を図3のV−V線に沿った断面において概略的に示している。この実施形態において、ロータロックシステム17はブレーキシステムに一体化されている。図5は、ロックされていない状態におけるロータロックシステムを示している。図6は、ロックされた状態におけるロータロックシステムを示している。図5において、ピストン16は、フランジ14の内部又はロータロックシステム17の別の構成部材、例えばロックケーシングの内部に完全に配置されている。図6において、ピストン16はブレーキディスク12の対応する凹所15に押し込まれている。この位置において、ロータは停止位置にロックされている。ピストン16を、液圧式手段又は電気的手段によってブレーキディスク12の対応する凹所15へ押し込むことができる。
【0051】
好適には、本発明によるブレーキシステムは、ハブ4とは反対側の発電機6の遠位側に配置されている。これにより、特にメンテナンス及び保守のための、ブレーキシステム及び一体化されたロータロックシステムへの容易なアクセスが提供される。択一的に、本発明によるブレーキシステムはハブに配置されてよい。例えば、本発明によるブレーキシステムはハブに直接に結合されてよい。
【0052】
図7は、本発明による風車301の一部を概略的に示している。風車は、典型的な公知の「一軸受」配列を有している。風車301は、風車301のタワー303の上流側に配置された直接駆動発電機302を有している。
【0053】
タワーフランジ304はタワー303の上部に配置されている。台板305はタワーフランジ304に取り付けられている。風車401は、風車301の台板305を軸線300を中心にして回転させるために使用されるヨーシステム(図示せず)を有している。
【0054】
風車301は、定置の軸306を有しており、軸306は中心軸線200を有している。定置の軸306の後側は、保持装置307に取り付けられている。定置の軸306の前側には、直接駆動発電機302のステータ装置308が配置されている。ステータ装置308は、ステータ支持構造309と、積層板310とを有している。積層板310は巻線311を支持している。
【0055】
ステータ支持構造309は、積層板310の2側支持のための2つの支持エレメント312を有している。支持エレメント312は環状である。支持エレメント312は、定置の軸306の外側に取り付けられている。中空円筒状の支持エレメント313は、環状の支持エレメント312の外端に取り付けられている。中空円筒状の支持エレメント313は、環状の積層板310と、巻線311とを支持している。
【0056】
ロータ装置314は、ステータ装置308の周囲に配置されている。ロータ装置314は、前側端板315と、円筒エレメント317とを有している。前側端板315は環状であり、円筒エレメント317は中空である。
【0057】
円筒エレメント317は、中空の円筒エレメント317の内側に取り付けられた複数の永久磁石318を有している。永久磁石318は、積層板310及び支持された巻線と向き合って配置されている。約6mmの幅を備えた空隙319は、永久磁石318と積層板310との間に配置されている。好適には、空隙319は、4mm〜10mm、有利には5mm〜7mmの幅を有している。ブレーキディスク12は、ロータの円筒エレメント317に結合されている。ブレーキキャリパシステム13は、定置の軸306に結合されている。ブレーキキャリパシステム13とブレーキディスク12との間の半径距離22は、空隙319よりも小さい。有利には、半径距離22は、1mm〜5mm、好適には2mm〜4mmである。
【0058】
前側端板315は、軸受320を介して定置の軸306に配置されている。軸受320は、中心軸線Aの両方向の軸方向荷重を変換することができる。適切な軸受は、例えば独国実用新案第20116649号明細書に開示されている。
【0059】
軸受320の定置部分321は定置の軸306に取り付けられている。軸受320の回転部分322は取付けリング323に結合されている。前側端板315及びハブ324は取付けリング323に取り付けられている。ハブ324は、風車ロータ羽根(図示せず)のための取付け装置325を有している。
【0060】
ここで示された空隙319は、ロータのエレメントとステータのエレメントとの間の一定の距離を達成するために均一である。一軸受構成は、容易な構成により極めて魅力的である。
【符号の説明】
【0061】
1 風車、 2 タワー、 3 ナセル、 4 ハブ、 5 風車羽根、 6 発電機、 7 ステータアセンブリ、 8 ロータアセンブリ、 9 回転軸線、 10 定置の軸、 11 外側ロータ部分、 12 ブレーキディスク、 12a,12b,12c 半径セグメント、 13 ブレーキキャリパシステム、 13a,13b ブレーキキャリパ、 14 中央取付けフランジ、 15 凹所、 16 ピストン、 17 ロータロックシステム、 19 近位側、 20 遠位側、 21 内面、 22 半径距離、 23 空隙、 301 風車、 302 直接駆動発電機、 303 タワー、 304 タワーフランジ、 305 台板、 306 軸、 307 保持装置、 308 ステータ装置、 309 ステータ支持構造、 310 積層板、 311 巻線、 312 環状の支持エレメント、 313 中空円筒状の支持エレメント、 314 ロータ装置、 315 前側端板、 317 円筒エレメント、 318 永久磁石、 319 空隙、 320 軸受、 321 定置部分、 322 回転部分、 323 取付けリング、 324 ハブ、 325取付け装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステムにおいて、ロータアセンブリ(8)と、ステータアセンブリ(7)と、回転軸線(9)とを有しており、
ロータアセンブリ(8)が、ステータアセンブリ(7)の半径方向外側に配置された外側部分(11)を有しており、該外側部分(11)がブレーキディスク(12)を有しており、ステータアセンブリ(7)が、ブレーキディスク(12)の少なくとも一部と係合して摩擦を生ずるように作用的に構成された少なくとも1つの摩擦部材(13)を有することを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項2】
ブレーキディスク(12)が、ロータアセンブリ(8)の外側部分(11)から回転軸線(9)に向かって半径方向内方へ延びている、請求項1記載のブレーキシステム。
【請求項3】
ロータアセンブリ(8)がフランジ(14)を有しており、ブレーキディスク(12)がフランジ(14)に固定されている、請求項1又は2記載のブレーキシステム。
【請求項4】
ステータアセンブリ(7)が、定置の軸(10)又は風車(1)のベッドフレーム又はステータ支持構造を含んでおり、少なくとも1つの摩擦部材(13)が、定置の軸(10)又はベッドフレーム又はステータ支持構造に結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの摩擦部材(13)が、回転軸線(9)に関して半径方向外方へ延びている、請求項1から4までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項6】
摩擦部材(13)が、少なくとも1つのブレーキキャリパを含む、請求項2から5までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの摩擦部材(13)が、少なくとも1つのブレーキキャリパシステムを含み、該ブレーキキャリパシステムが、ブレーキディスク(12)のそれぞれの側に互いに向き合って配置された少なくとも2つのブレーキキャリパを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項8】
ブレーキキャリパシステム(13)の固定箇所において曲げモーメントが生じないように、少なくとも1つのブレーキキャリパシステム(13)が軸方向でブレーキディスク(12)と整列させられている、請求項7記載のブレーキシステム。
【請求項9】
ブレーキキャリパシステムが、ロータロックシステム(17)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項10】
ブレーキディスク(12)が多数の凹所(15)を有しており、ステータアセンブリ(7)が、凹所(15)に係合するように配置された少なくとも1つのピストン(16)を有する、請求項9記載のブレーキシステム。
【請求項11】
ロックシステム(17)が、ピストン(16)を対応する凹所(15)に押し込むための自動アクチュエータを有する、請求項10記載のブレーキシステム。
【請求項12】
ブレーキディスク(12)が、多数の半径セグメント(12a,12b,12c)を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載のブレーキシステムを有することを特徴とする発電機(6)。
【請求項14】
発電機(6)が、ロータとステータとを有しており、ブレーキディスク(12)と摩擦部材(13)との間の半径距離(22)が、ロータとステータとの間の半径距離(23)よりも小さい、請求項13記載の発電機(6)。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項記載のブレーキシステム及び/又は請求項13又は14記載の発電機を有することを特徴とする風車(1)。
【請求項16】
風車(1)が、発電機(6)及び/又はハブ(4)を有しており、ブレーキシステムが、発電機(6)及び/又はハブ(4)に結合されている、請求項15記載の風車(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112227(P2011−112227A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−263889(P2010−263889)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】