説明

プラズマエッチング方法

【課題】マスクをプラズマから保護することができ、形成する穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできるプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】上方にパターニングされたシリコン酸化膜が形成されてなる被処理基板におけるシリコン層を第1の処理ガスによりエッチングして穴部を形成するプラズマエッチング方法において、一酸化炭素ガスを含む第2の処理ガスによりシリコン酸化膜の表面に保護膜を堆積させる第1の堆積ステップS11と、第1の処理ガスによりシリコン層をエッチングする第1のエッチングステップS12と、穴部の側壁に第2の処理ガスにより保護膜を堆積させる第2の堆積ステップS13と、第1の処理ガスによりシリコン層を更にエッチングする第2のエッチングステップS14とを有し、第2の堆積ステップS13と第2のエッチングステップS14とを少なくとも2回ずつ交互に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマによりエッチングを行うプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野では、半導体装置の微細化により集積度を上げる試みが多く行われてきた。また、近年では三次元実装と呼ばれる半導体装置の積層によって単位面積あたりの集積度を上げる試みが盛んに行われている。
【0003】
積層された半導体装置は、例えばシリコン層よりなる基板を貫通して形成された電極を具備しており、この電極を介して電気的に接続されるようになっている。このような基板を貫通する電極を形成する際には、塗布装置を用いて基板にレジストを塗布し、露光装置を用いて露光を行った後、現像装置により現像を行ってレジスト膜よりなるレジストパターンを形成する。そして、形成したレジストパターンをマスクとして、例えばプラズマエッチング装置を用いて基板をエッチングすることによって、貫通孔又はビアホール等よりなる穴部を形成することがある。
【0004】
例えば基板に貫通孔として穴部を形成する場合、穴部の深さが深いため、プラズマエッチングを長時間行う必要がある。しかし、半導体装置の微細化に伴って、形状精度を確保するために、レジスト膜の厚さを薄くしなくてはならない。また、レジスト膜のエッチング速度に対するシリコン層のエッチング速度、すなわち選択比は、あまり高くない。そのため、プラズマエッチングを長時間行うと、マスクが除去されてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、小さな内径寸法と大きな深さ寸法を有し、内径寸法に対する深さ寸法の比であるアスペクト比が大きな穴部を形成する場合には、マスクとして、レジスト膜に代え、シリコン酸化膜を用いることがある(例えば、特許文献1参照。)。シリコン酸化膜は、シリコン層に対してレジスト膜よりも高い選択比を有するため、プラズマエッチングを長時間行っても、マスクが除去されることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−97414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、シリコン層をエッチングして穴部を形成するプロセスでは、マスクとして、例えば低温で形成されたシリコン酸化膜、すなわち低温酸化膜が用いられることがある。低温酸化膜等のシリコン酸化膜は、緻密な膜でなく、表面上に微小な格子欠陥が存在することがある。このようなシリコン酸化膜をマスクとして、フッ素原子を含む処理ガスのプラズマによりエッチングを行うと、これら微小な格子欠陥が、プラズマに含まれるフッ素ラジカル(F)により局所的にエッチングされることがある。そして、シリコン酸化膜の表面に例えばピットが発生することがある。シリコン酸化膜の表面にピットが発生すると、シリコン酸化膜の下層膜まで到達する貫通孔が形成されるおそれがあり、シリコン酸化膜がマスク膜としての機能を損なうおそれがある。
【0008】
また、形成される穴部のアスペクト比が大きくなると、形成される穴部の上面部よりも少し下の部分であるボーイング部における開口径が、上面部の開口径よりも大きくなる。更にボーイング部よりも下の部分では、開口径は穴部の底に近づくにつれて徐々に小さくなり、穴部の底で最も小さくなる。その結果、穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできない。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、シリコン酸化膜をマスクとしてシリコン層をエッチングして穴部を形成する際に、マスクをプラズマから保護することができるとともに、形成する穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできるプラズマエッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一実施例によれば、シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に所定のパターンにパターニングされたシリコン酸化膜が形成されてなる被処理基板における前記シリコン層を、前記シリコン酸化膜をマスクとして、第1の処理ガスのプラズマによりエッチングして穴部を形成するプラズマエッチング方法において、一酸化炭素ガスを含む第2の処理ガスのプラズマにより、前記シリコン酸化膜の表面に保護膜を堆積させる第1の堆積ステップと、表面に前記保護膜が堆積された前記シリコン酸化膜をマスクとして、前記第1の処理ガスのプラズマにより前記シリコン層をエッチングする第1のエッチングステップと、前記第1のエッチングステップの後、形成された前記穴部の側壁に、前記第2の処理ガスのプラズマにより前記保護膜を堆積させる第2の堆積ステップと、表面に前記保護膜が堆積された前記シリコン酸化膜をマスクとして、前記第1の処理ガスのプラズマにより前記シリコン層を更にエッチングする第2のエッチングステップとを有し、前記第2の堆積ステップと前記第2のエッチングステップとを少なくとも2回ずつ交互に繰り返す、プラズマエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリコン酸化膜をマスクとしてシリコン層をエッチングして穴部を形成する際に、マスクをプラズマから保護することができるとともに、形成する穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法に好適なプラズマエッチング装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1のプラズマエッチング装置に取り付けられるダイポールリング磁石の構成を模式的に示す横断面図である。
【図3】図1のプラズマエッチング装置のチャンバ内で形成される電界及び磁界を説明するための図である。
【図4】図1のエッチング装置における処理ガス供給系の構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その1)である。
【図7】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その2)である。
【図8】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その3)である。
【図9】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その4)である。
【図10】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その5)である。
【図11】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その6)である。
【図12】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その7)である。
【図13】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その8)である。
【図14】第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その9)である。
【図15】比較例に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図である。
【図16】第2の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を含む半導体装置の製造方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その1)である。
【図17】第2の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を含む半導体装置の製造方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
始めに、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法に好適なプラズマエッチング装置の構成を示す概略断面図である。図2は、ダイポールリング磁石24の構成を模式的に示す横断面図である。図3は、チャンバ1内で形成される電界及び磁界を説明するための図である。図4は、処理ガス供給系23の構成を示す図である。
【0016】
プラズマエッチング装置は、マグネトロン反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)型のプラズマエッチング装置として構成されており、例えばアルミニウム又はステンレス鋼等の金属よりなるチャンバ(処理容器)1を有している。
【0017】
チャンバ1内には、被処理基板として例えばシリコンウェハ(以下、単に「ウェハ」という。)Wを載置するためのテーブル又はサセプタ2が設けられている。サセプタ2は、例えばアルミニウムからなり、絶縁部材3を介して導体よりなる支持部4に支持されている。サセプタ2の上面の周囲には、例えば石英よりなるフォーカスリング5が配置されている。サセプタ2の上面には、ウェハWを静電吸着力により保持するための静電チャック6が設けられている。サセプタ2と支持部4は、ボールネジ7を含む昇降機構により昇降可能となっており、支持部4の下方に設けられる昇降駆動部(図示せず)は、ステンレス鋼よりなるベローズ8で覆われている。ベローズ8の外側にはベローズカバー9が設けられている。フォーカスリング5の下面はバッフル板10に接続されており、フォーカスリング5は、バッフル板10、支持部4及びベローズ8を介してチャンバ1と導通している。チャンバ1は接地されている。
【0018】
なお、サセプタ2及び支持部4は、本発明における支持部に相当する。
【0019】
チャンバ1の一部であって相対的に大きな径を有する部分である下部1bの側壁には排気口11が形成され、排気口11に排気管を介して排気系12が接続されている。排気系12の真空ポンプを作動させることにより、チャンバ1内の処理空間を所定の真空度まで減圧できるようになっている。チャンバ1の下部1bの側壁には、ウェハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ13も取り付けられている。
【0020】
サセプタ2には、整合器14を介してプラズマ生成および反応性イオンエッチング(RIE)用の第1の高周波電源15が電気的に接続されている。第1の高周波電源15は、例えば40MHzの第1の周波数を有する第1の高周波電力を、下部電極すなわちサセプタ2に供給する。
【0021】
チャンバ1の天井部には、後述するシャワーヘッド20が接地電位に保持された上部電極として設けられている。従って、第1の高周波電源15からの第1の高周波電力は、サセプタ2とシャワーヘッド20との間に供給される。
【0022】
サセプタ2には、第1の高周波電源15と並列に、第2の高周波電源26も別個の整合器25を介して電気的に接続されている。第2の高周波電源26は、第1の高周波電源15が供給する第1の高周波電力の第1の周波数よりも低い、例えば3.6MHzの第2の周波数を有する第2の高周波電力を、サセプタ2に重畳的に供給する。第2の高周波電源26からの第2の高周波電力は、後述するように、穴部を形成する際に、穴部の側壁荒れが発生することを防止するためのものである。
【0023】
静電チャック6は、導電膜よりなる電極6aを一対の絶縁シート6bの間に挟み込んだものであり、電極6aには直流電源16が電気的に接続されている。直流電源16からの直流電圧により、静電引力によりウェハWを吸着保持することができる。
【0024】
サセプタ2の内部には、例えば円周方向に延在する冷媒室17が設けられている。この冷媒室17には、外付けのチラーユニット(図示せず)より配管17a、17bを介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によってサセプタ2上のウェハWの処理温度を制御できる。エッチングにより形成される穴部の側壁形状を垂直にするために、サセプタ2の温度は低いほど好ましく、たとえば−30℃程度の冷媒を用いてよい。
【0025】
更に、ガス導入機構18からの冷却ガスたとえばHeガスが、ガス供給ライン19を介して静電チャック6の上面とウェハWの裏面との間に供給される。ガス導入機構18は、エッチング加工のウェハ面内均一性を高めるため、ウェハ中心部とウェハ周縁部とでガス圧つまり背圧を独立的に制御できるようになっている。
【0026】
天井部のシャワーヘッド20は、サセプタ2の上面と平行に対向する下面に多数のガス吐出口22を設けている。ガス吐出面の内側にバッファ室21が設けられ、バッファ室21のガス導入口20aには、処理ガス供給系23からのガス供給配管23aが接続されている。
【0027】
チャンバ1の一部であって相対的に小さな径を有する部分である上部1aの周囲には、環状または同心状に延在するダイポールリング磁石24が配置されている。ダイポールリング磁石24は、図2の横断面図に示すように、リング状の磁性体からなるケーシング32内に、複数個例えば16個の異方性セグメント柱状磁石31を周方向に一定間隔で配列してなる。図2において、各異方性セグメント柱状磁石31の中に示す矢印は磁化の方向を示しており、図示のように各異方性セグメント柱状磁石31の磁化の方向を周方向に沿って少しずつずらすことで、全体として一方向に向う一様な水平磁界Bを形成することができる。
【0028】
従って、サセプタ2とシャワーヘッド20との間の空間には、図3に模式的に示すように、第1の高周波電源15により鉛直方向のRF電界ELが形成されるとともに、ダイポールリング磁石24により水平磁界Bが形成される。これらの直交電磁界を用いるマグネトロン放電により、サセプタ2の表面近傍に高密度のプラズマを生成することができる。
【0029】
処理ガスとして、フッ化硫黄又はフッ化炭素よりなるフッ素化合物ガスと、酸素(O)ガスとの混合ガスを処理ガスに用いることができる。フッ素化合物ガスとして、1分子に存在するフッ素の数が多いガス、例えば六フッ化硫黄(SF)ガスや十フッ化硫黄(S10)ガスを用いることが好ましい。また、フッ素化合物ガスとして、フッ化ケイ素ガス例えば四フッ化ケイ素(SiF)ガスを処理ガスに加えてもよい。従って、処理ガス供給系23は、図4に模式的に示すように、例えばSFガス源35、Oガス源36及びSiFガス源37を有し、それぞれの流量を流量制御弁35a、36a、37aによって個別に制御可能に設けられている。
【0030】
本実施の形態では、更にマスク膜の表面に保護膜を堆積させるためのガスとして、一酸化炭素(CO)ガスを用いることができる。従って、処理ガス供給系23は、図4に示すように、例えばCOガス源38を有し、その流量を流量制御弁38aによって個別に制御可能に設けられている。
【0031】
上記構成のプラズマエッチング装置は、制御部40によって、その動作が統括的に制御される。この制御部40には、CPUを備えプラズマエッチング装置の各部を制御するプロセスコントローラ41と、ユーザインターフェース42と、記憶部43とが設けられている。
【0032】
ユーザインターフェース42は、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0033】
記憶部43には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ41の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース42からの指示等にて任意のレシピを記憶部43から呼び出してプロセスコントローラ41に実行させることで、プロセスコントローラ41の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したりすることも可能である。或いは、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0034】
このように構成されたプラズマエッチング装置において、プラズマエッチングを行うには、先ずゲートバルブ13を開にして被処理基板であるシリコン層よりなるウェハWをチャンバ1内に搬入して、サセプタ2の上に載置する。次いで、ウェハWが載置されたサセプタ2を図示の高さ位置まで上昇させ、排気系12の真空ポンプにより排気口11を介してチャンバ1内を排気する。そして、処理ガス供給系23より処理ガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。更に、第1の高周波電源15より所定のパワーで高周波電力をサセプタ2に印加する。また、直流電源16より直流電圧を静電チャック6の電極6aに印加し、ウェハWをサセプタ2に固定することによって支持する。シャワーヘッド20より吐出された処理ガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。そして、照射したプラズマに含まれるラジカルやイオンによりウェハWがエッチングされる。
【0035】
次に、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0036】
図5は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図6から図14は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図である。なお、図6から図14では、ウェハW上における一つの開口部の付近の領域を拡大して示している。
【0037】
先ず、プラズマエッチング方法が適用されるウェハWの構成の一例について説明する。ウェハWは、図6に示すように、例えば単結晶シリコン(Si)層よりなる基体51上に、第1のマスク膜52、第2のマスク膜53及びレジスト膜54が、下側からこの順番で積層されてなる。第1のマスク膜52として、例えば厚さ寸法t1を有する窒化シリコン(SiN)膜を用いることができ、厚さ寸法t1を例えば0.5μmとすることができる。第2のマスク膜53として、例えば厚さ寸法t2を有する酸化シリコン(SiOx)膜を用いることができ、厚さ寸法t2を例えば0.5μmとすることができる。
【0038】
なお、第1のマスク膜52及び第2のマスク膜53は、第1のマスク膜52が酸化シリコン(SiOx)膜であり、第2のマスク膜53が窒化シリコン(SiN)膜であってもよい。また、マスク膜の最上層としては、酸化シリコン(SiOx)膜、窒化シリコン(SiN)膜に限られず、各種の絶縁膜、無機膜を用いることができる。
【0039】
また、本発明におけるシリコン酸化膜とは、酸化シリコン膜その他シリコンを主成分として含む元素の酸化膜を意味する。
【0040】
レジスト膜54には、予めフォトリソグラフィ工程を行うことで、例えば円形の開口部54aが、複数箇所にパターニングされている。このようなウェハWを、後述するプラズマエッチングを行うチャンバ1と同一又は別に設けられたチャンバ内に搬入して、サセプタの上に載置する。以下では、後述するプラズマエッチングを行うチャンバ1と同一のチャンバ1内に搬入する例について説明する。
【0041】
排気系12の真空ポンプによりチャンバ1内を排気した状態で、処理ガス供給系23より処理ガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。処理ガスとして、SFガス及びOガスを所定の流量でチャンバ1内に導入する。必要に応じて、フッ化シリコン(SiF)ガス及び臭化水素(HBr)ガスを処理ガスに加えてもよい。また、直流電源16によりウェハWをサセプタ2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源15により第1の高周波電力をサセプタ2に供給する。すると、シャワーヘッド20より吐出された処理ガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。
【0042】
そして、プラズマをウェハWに照射することで、図6に示すように、レジスト膜54の各々の開口部54aにおいて、下層側の第2のマスク膜53及び第1のマスク膜52にそれぞれ開口部53a、52aが形成される。
【0043】
ウェハWの表面を図6に示す状態とした上で、先ず、ステップS10では、レジスト膜54を、例えばOガスを含む処理ガスをプラズマ化したプラズマによりアッシングする。
【0044】
排気系12の真空ポンプによりチャンバ1内を排気した状態で、処理ガス供給系23より処理ガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。処理ガスとして、Oガスを所定の流量でチャンバ1内に導入する。また、直流電源16によりウェハWをサセプタ2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源15により第1の高周波電力をサセプタ2に供給する。すると、シャワーヘッド20より吐出された処理ガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。
【0045】
そして、プラズマをウェハWに照射することで、図7に示すように、レジスト膜54がアッシング(灰化)されて除去される。なお、次のステップS11で、第2のマスク膜53上のレジスト膜54を完全に除去して第2のマスク膜53の表面を清浄化することができるため、ステップS10では、第2のマスク膜53の表面が露出するまでアッシングを行わなくてもよい。
【0046】
次いで、ステップS11では、レジスト膜54がアッシングされた後、一酸化炭素ガス(COガス)を含む処理ガスをプラズマ化したプラズマにより、保護膜55を堆積させる(第1の堆積ステップ)。
【0047】
排気系12の真空ポンプによりチャンバ1内を排気した状態で、処理ガス供給系23より処理ガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。処理ガスとして、COガスを所定の流量でチャンバ1内に導入する。また、直流電源16によりウェハWをサセプタ2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源15により第1の高周波電力をサセプタ2に供給する。すると、シャワーヘッド20より吐出された処理ガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。
【0048】
そして、プラズマをウェハWに照射することで、図8に示すように、第2のマスク膜53の表面に保護膜55を堆積させる。このとき、保護膜55は、第2のマスク膜53に形成されている開口部53aの側面、及び、第1のマスク膜52に形成されている開口部52aの側面にも堆積する。
【0049】
例えば、ステップS11でCOガスを処理ガスとして用いる場合、処理ガスがプラズマ化する際に炭素ラジカルCが生成する。生成した炭素ラジカルCが第2のマスク膜53の表面に到達すると、例えばアモルファスカーボン等の炭素を含んだ堆積物が堆積する。本実施の形態では、これが後述するエッチングステップにおける保護膜として機能すると考えられる。
【0050】
なお、後述するように、炭素ラジカルCが生成するとともにフッ素ラジカルFが生成しないことが好ましい。従って、COガスに代え、二酸化炭素(CO)ガスを用いてもよい。
【0051】
また、前述したように、ステップS10で第2のマスク膜53の表面が露出するまでアッシングを行わなかったときは、ステップS10の後、ステップS11において、残ったレジスト膜54を、プラズマにより除去してもよい。このとき、ステップS11では、生成した炭素ラジカルCが第2のマスク膜53の表面に到達すると、残ったレジスト膜54をアッシングして除去するとともに、炭素を含んだ堆積物として堆積する。
【0052】
あるいは、ステップS10のOガスを含む処理ガスのプラズマによるアッシングを省略し、最初からステップS11を行ってもよい。すなわち、レジスト膜54を、全てCOガスを含む処理ガスのプラズマにより除去してもよい。
【0053】
次いで、ステップS12では、表面に保護膜55が堆積された第2のマスク膜53をマスクとして、SFガスを含む処理ガスをプラズマ化したプラズマにより、シリコン層51をエッチングする(第1のエッチングステップ)。
【0054】
排気系12の真空ポンプによりチャンバ1内を排気した状態で、処理ガス供給系23より処理ガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。処理ガスとして、SFガス及びOガスを所定の流量でチャンバ1内に導入する。必要に応じて、フッ化シリコン(SiF)ガス及び臭化水素(HBr)ガスを処理ガスに加えてもよい。また、直流電源16によりウェハWをサセプタ2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源15により第1の高周波電力をサセプタ2に供給する。すると、シャワーヘッド20より吐出された処理ガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。
【0055】
そして、プラズマをウェハWに照射することで、図9に示すように、第2のマスク膜53、第1のマスク膜52の各々の開口部53a、52aにおいて、下層側のシリコン層51に第1の深さH1まで穴部51aが形成される。
【0056】
例えばSFガスを処理ガスとして用いる場合、処理ガスがプラズマ化する際にフッ素ラジカルFが生成する。生成したフッ素ラジカルFがシリコン層51に到達すると、下記反応式(1)
4F+Si→SiF (1)
に示すように、フッ素ラジカルFがSiと反応することによってSiFが生成される。そして、生成されたSiFが排出されることにより、シリコン層51がエッチングされる。
【0057】
次いで、ステップS13では、形成された穴部51aの側壁に、COガスを含む処理ガスのプラズマにより保護膜55を堆積させる(第2の堆積ステップ)。
【0058】
排気系12の真空ポンプによりチャンバ1内を排気した状態で、処理ガス供給系23より処理ガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。処理ガスとして、COガスを所定の流量でチャンバ1内に導入する。また、直流電源16によりウェハWをサセプタ2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源15により第1の高周波電力をサセプタ2に供給する。すると、シャワーヘッド20より吐出された処理ガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。
【0059】
そして、プラズマをウェハWに照射することで、図10に示すように、穴部51aの側壁に保護膜55を堆積させる。このとき、保護膜55は、第2のマスク膜53の上面、第2のマスク膜53に形成されている開口部53aの側面、及び第1のマスク膜52に形成されている開口部52aの側面にも堆積する。
【0060】
例えば、ステップS13でCOガスを処理ガスとして用いる場合、ステップS11と同様に、処理ガスがプラズマ化する際に炭素ラジカルCが生成する。生成した炭素ラジカルCが第2のマスク膜53の表面に到達すると、例えばアモルファスカーボン等の炭素を含んだ堆積物が堆積する。本実施の形態では、エッチングステップにおける保護膜として機能すると考えられる。
【0061】
または、例えばステップS12で式(1)の反応が進行する場合、又は、処理ガスがSiFガスを含む場合、SiFガスがプラズマ化する際にシリコンラジカルSiが生成する。従って、例えばステップS13でCOガスを処理ガスとして用いる場合、処理ガスがプラズマ化する際に生成した炭素ラジカルCが、シリコンラジカルSiと反応することによって、Si−C結合を有する堆積物が堆積する。本実施の形態では、これもエッチングステップにおける保護膜として機能すると考えられる。
【0062】
なお、ステップS13では、形成された穴部51aの底まで、側壁に保護膜55を堆積させてもよい。これにより、穴部の底面をエッチングする際に、穴部の側壁がエッチングされることを、穴部の底に至るまで抑制することができる。
【0063】
次いで、ステップS14では、表面に保護膜55が堆積された第2のマスク膜53をマスクとして、SFガスを含む処理ガスをプラズマ化したプラズマにより、シリコン層51をエッチングする(第2のエッチングステップ)。
【0064】
排気系12の真空ポンプによりチャンバ1内を排気した状態で、処理ガス供給系23より処理ガスを所定の流量でチャンバ1内に導入し、チャンバ1内の圧力を設定値にする。処理ガスとして、SFガス及びOガスを所定の流量でチャンバ1内に導入する。必要に応じて、フッ化シリコン(SiF)ガス及び臭化水素(HBr)ガスを処理ガスに加えてもよい。また、直流電源16によりウェハWをサセプタ2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源15により第1の高周波電力をサセプタ2に供給する。すると、シャワーヘッド20より吐出された処理ガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウェハWに照射される。
【0065】
そして、プラズマをウェハWに照射することで、図11に示すように、第2のマスク膜53、第1のマスク膜52の各々の開口部53a、52aにおいて、下層側のシリコン層51に第2の深さH2まで穴部51bが形成される。
【0066】
なお、ステップS14では、SFガスを含む処理ガスのプラズマによりシリコン層51をエッチングする前に、形成された穴部51aの側壁に、SFガス及びOガスを含む処理ガスのプラズマにより第2の保護膜を堆積させてもよい。このとき、処理ガスがプラズマ化する際に、酸素ラジカルO及びフッ化シリコンのラジカルSiFxが生成される。そして、酸素ラジカルOがフッ化シリコンのラジカルSiFxと反応することによって、第2の保護膜が堆積する。
【0067】
本実施の形態では、ステップS13(第2の堆積ステップ)とステップS14(第2のエッチングステップ)とを少なくとも2回ずつ交互に繰り返す。
【0068】
2回目のステップS13では、1回目のステップS13と同様に、形成された穴部51bの側壁に、COガスを含む処理ガスのプラズマにより保護膜55を堆積させる(第2の堆積ステップ)。これにより、図12に示すように、穴部51bの側壁に保護膜55を堆積させる。このとき、保護膜55は、第2のマスク膜53の上面、第2のマスク膜53に形成されている開口部53aの側面、及び第1のマスク膜52に形成されている開口部52aの側面にも堆積する。また、形成された穴部51bの底まで、側壁に保護膜55を堆積させてもよい。
【0069】
2回目のステップS14では、1回目のステップS14と同様に、表面に保護膜55が堆積された第2のマスク膜53をマスクとして、SFガスを含む処理ガスをプラズマ化したプラズマにより、シリコン層51をエッチングする(第2のエッチングステップ)。これにより、図13に示すように、第2のマスク膜53、第1のマスク膜52の各々の開口部53a、52aにおいて、下層側のシリコン層51に第3の深さH3まで穴部51cが形成される。
【0070】
以下、ステップS13とステップS14とを交互に繰り返すことによって、図14に示すように、下層側のシリコン層51に所望の深さHまで穴部51dが形成される。ステップS13とステップS14とを交互に繰り返すことにより、マスク膜をプラズマから保護することができるとともに、形成する穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできる。
【0071】
なお、本実施の形態では、ダイポールリング磁石24により水平磁界Bをウェハ表面付近に印加する。ウェハ表面付近での磁界の大きさを増加させると、電子が磁力線の周りにらせん運動する際の回転半径(ラーマー半径)が小さくなり、ウェハ表面付近に存在する電子が常にウェハ表面に近い領域に束縛されるため、ウェハ表面付近での電子密度が上がる。また、同様に、ウェハ表面付近でのプラズマ密度も増加する。そのため、シリコン層51のエッチング速度を増加させることができる。
【0072】
本実施の形態では、ステップS12において、供給する第1の高周波電力の電力を段階的に増加させながら、シリコン層51をエッチングしてもよい。また、ステップS14をステップS13と交互に繰り返す度に、ステップS14において供給する第1の高周波電力の電力を増加させてもよい。このような工程の例を、実施例1として、表1に示す。
【0073】
【表1】

表1におけるステップS12−1、ステップS12−2は、前述したステップS12に相当する。表1におけるステップS13、ステップS23、ステップS33、ステップS43は、それぞれ1回目、2回目、3回目、4回目のステップS13に相当する。表1におけるステップS14−2、ステップS24−2、ステップS34−2、ステップS44−2は、それぞれ1回目、2回目、3回目、4回目のステップS14に相当する。
【0074】
なお、表1におけるステップS14−1、ステップS24−1、ステップS34−1、ステップS44−1は、それぞれ1回目、2回目、3回目、4回目のステップS14において、シリコン層51をエッチングする前に、第2の保護膜を堆積させるステップである。
【0075】
実施例1では、ステップS12−1で、第1の高周波電力を2200Wとし、ステップS12−2で、第1の高周波電力を2300Wとしている。すなわち、供給する第1の高周波電力の電力を段階的に増加させている。ステップS12において、供給する第1の高周波電力の電力を段階的に増加させることにより、エッチングの進行に伴ってプラズマのエネルギーを増加させることができる。従って、時系列と共に増長するHに対しエッチングに必要とされるラジカルを穴底へ届かせる事が可能となる。
【0076】
実施例1では、ステップS14−2で、第1の高周波電力を2400Wとし、ステップS24−2で、第1の高周波電力を2550Wとし、ステップS34−2で、第1の高周波電力を2700Wとし、ステップS44−2で、第1の高周波電力を2800Wとしている。すなわち、ステップS14をステップS13と交互に繰り返す度に、ステップS14−2〜ステップS44−2において供給する第1の高周波電力の電力を段階的に増加させている。ステップS14−2〜ステップS44−2において供給する第1の高周波電力の電力を増加させることにより、穴底へのラジカルの供給数を確保できる。従って、第2のマスク膜53の開口部53a、第1のマスク膜52の開口部52aの形状をシリコン層51に形成される穴部に転写するときに、形状が異常になることを抑制することができる。
【0077】
以上の工程を行うことによって、シリコン層51のエッチングが終了し、図14に示すように、所望の深さHまで穴部51dが形成される。
【0078】
次に、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法によれば、マスクをプラズマから保護することができるとともに、形成する穴部の側壁をウェハの表面に対して垂直にできることを、比較例を参照しながら説明する。
【0079】
図15は、比較例に係るプラズマエッチング方法の各工程におけるウェハWの状態を模式的に示す断面図である。
【0080】
また、比較例に係るシリコン層をエッチングする工程は、例えば、表1のステップS11、ステップS13、ステップS23、ステップS33、ステップS43を除いたものとすることができる。
【0081】
アスペクト比が大きな穴部51eを形成する場合には、図15に示すように、例えば酸化シリコン膜その他のシリコン酸化膜を含む第2のマスク膜53よりなるパターンをマスクとしてシリコン層51をエッチングする。シリコン酸化膜は、シリコン層に対してレジスト膜よりも高い選択比を有するため、プラズマエッチングを長時間行っても、マスクが除去されることを防止できる。
【0082】
しかし、シリコン層をエッチングして穴部を形成するプロセスにおいては、第2のマスク膜53として、プロセス温度の制約等により低温で形成されたシリコン酸化膜が用いられることがある。低温で形成されたシリコン酸化膜は、緻密な膜でなく、表面上に微小な格子欠陥が存在することがある。このようなシリコン酸化膜を第2のマスク膜53として、フッ素原子を含む処理ガスのプラズマによりエッチングを行うと、プラズマに含まれるフッ素ラジカル(F)により、これら微小な格子欠陥が局所的にエッチングされることがある。そして、第2のマスク膜53の表面に例えばピットが発生することがある。第2のマスク膜53の表面にピットが発生すると、第2のマスク膜53の下層膜まで到達する貫通孔53bが形成されるおそれがあり、第2のマスク膜53がマスク膜としての機能を損なうおそれがある。
【0083】
また、形成される穴部51eのアスペクト比が大きくなると、形成される穴部51eの上面部51fよりも少し下の部分であるボーイング部51gにおける開口径が、上面部51fの開口径よりも大きくなる。更にボーイング部51gよりも下の部分51hでは、開口径は穴部51eの底に近づくにつれて徐々に小さくなり、穴部51eの底で最も小さくなる。その結果、穴部51eの側壁をウェハWの表面に対して垂直にできない。
【0084】
また、式(1)を用いて前述したように、シリコン層51がエッチングされる際に、穴部51eの内部ではSiFが生成され、生成されたSiFは、穴部51eの外部へ排出される必要がある。しかし、形成される穴部51eのアスペクト比が大きく、シリコン層51のエッチング速度が数十μm/分になると、SiFの生成量が多くなり、穴部51eの内部に供給されるフッ素ラジカルFの量と、穴部51eの外部へ排出される反応生成物SiFの量とが略等しくなる。よって、穴部51eの内部におけるSiFの分圧が高くなり、フッ素ラジカルFの分圧が高くなることが抑制され、結果として、シリコン層51のエッチング速度を増加させることができないという問題がある。
【0085】
一方、本実施の形態では、第2のマスク膜53をマスクとしてシリコン層51のプラズマエッチングを行う際に、第2のマスク膜53上に、COガスを含む処理ガスのプラズマにより保護膜55が堆積されており、第2のマスク膜53の表面が露出していない。従って、フッ素原子を含む処理ガスによりシリコン層51のエッチングを行う際に、第2のマスク膜53の表面に存在する微小な格子欠陥が局所的にエッチングされることを防止でき、第2のマスク膜53の表面にピットが発生することを防止できる。
【0086】
また、COガスを含む処理ガスにより保護膜55を堆積させる際も、処理ガスがフッ素原子を含まないため、第2のマスク膜53の表面に存在する微小な格子欠陥が局所的にエッチングされることを防止でき、第2のマスク膜53の表面にピットが発生することを防止できる。
【0087】
従って、第2のマスク膜53の下層膜まで到達する貫通孔53bが形成されるおそれがなく、第2のマスク膜53及び第1のマスク膜52をプラズマから保護することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、COガスを含む処理ガスのプラズマにより、穴部51dの側壁に保護膜55を堆積するため、エッチングが進行して形成される穴部51dの深さ寸法が大きくなった場合でも、側壁がエッチングされることを抑制することができる。よって、ボーイング部の発生を抑制することができる。また、開口径が穴部51dの底に近づくにつれて徐々に小さくなることを防止でき、穴部51dの側壁をウェハWの表面に対して垂直にすることができる。
【0089】
更に、本実施の形態では、穴部51dの側壁がエッチングされることを防止できるため、形成する穴部51dのアスペクト比が大きな場合でも、穴部51dの内部で生成されるSiFの量を少なくすることができる。このため、穴部51dの内部におけるSiFの分圧が高くなることを抑制でき、穴部51d内のフッ素ラジカルFの分圧を高くすることができ、結果として、シリコン層51のエッチング速度を増加させることができる。
【0090】
ここで、ステップS10〜ステップS12−2を行った後、ステップS14(第2のエッチングステップ)を4回繰り返す場合において、各々のステップS14のいずれかの前のステップS13を省略することで、合計0〜3回ステップS13を行うエッチングを行った。そして、実施例1に示した4回ステップS13を行った場合と合わせ、ステップS13を0〜4回行った場合について、第1のマスク膜52、第2のマスク膜53の開口部52a、53aの側壁が側方へエッチングされ、侵食される侵食深さD(図15参照)を測定した。その結果を、表2に示す。
【0091】
【表2】

表2に示すように、ステップS13の回数の増加に伴って、侵食深さDが減少する。従って、本実施の形態によれば、COガスを含む処理ガスのプラズマにより保護膜を堆積させることによって、マスク膜が側方にエッチングされ、侵食されることを抑制する効果があることが確認された。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0092】
本実施の形態に係るプラズマエッチング方法では、第1の実施の形態に係るプラズマエッチング装置と同一の装置を用いることができる。従って、本実施の形態に係るエッチング装置については、説明を省略する。
【0093】
また、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法は、三次元実装される半導体装置に貫通電極を形成するために、TSV(Through-Silicon Via)技術を用いてウェハに貫通孔を形成するものである。従って、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法は、貫通孔を形成するためのウェハ(以下、「デバイスウェハ」ともいう。)がサポートウェハに接着剤を介して貼り合わされた貼り合わせウェハをエッチングする点で、第1の実施の形態と相違する。
【0094】
図16及び図17は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法を含む半導体装置の製造方法の各工程におけるウェハの状態を模式的に示す断面図である。
【0095】
貼り合わせウェハは、図16(c)に示すように、デバイスウェハWと、サポートウェハSWを有する。デバイスウェハWは、表面Waにトランジスタ等の半導体装置が形成された基板である。サポートウェハSWは、デバイスウェハWを、裏面Wbを研削して薄化したときに、薄化されたデバイスウェハWを補強するための基板である。デバイスウェハWは、接着剤Gを介してサポートウェハSWに貼り合わされている。
【0096】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、始めに、シリコンウェハ等よりなるデバイスウェハWの表面にトランジスタ101を形成し、トランジスタ101が形成されたデバイスウェハW上に層間絶縁膜102を形成する(図16(a))。
【0097】
次いで、層間絶縁膜102上に、配線構造103を形成する。層間絶縁膜102上に、配線層104、絶縁膜105を交互に積層するとともに、絶縁膜105を貫通して上下の配線層104間を電気的に接続するビアホール106を形成する(図16(b))。
【0098】
次いで、デバイスウェハWを上下反転させ、デバイスウェハWの表面Waを、接着剤Gを介してサポートウェハSWと貼り合わせることによって、貼り合わせウェハを準備する。サポートウェハSWは、デバイスウェハWを、裏面Wbを研削して薄化したときに、薄化されたデバイスウェハWを補強し、反りを防ぐ支持体となる基板であり、例えばシリコンウェハ等よりなる。そして、貼り合わせウェハを、例えば研削装置に備えられた支持部に支持し、ウェハWの裏面Wb側を研削し、研削前の厚さT1が所定厚さT2になるように薄化する(図16(c))。所定厚さT2を、例えば50〜200μmとすることができる。
【0099】
なお、図16では、図示を容易にするために、層間絶縁膜102及び配線構造103の厚さが誇張して描かれているが、実際は、層間絶縁膜102及び配線構造103の厚さは、ウェハWの基体自体の厚さに比べ極めて小さい(図17においても同様)。
【0100】
次いで、ウェハWの裏面Wbに図示しない例えば第1のマスク膜と第2のマスク膜よりなるマスク膜を形成する。そして、マスク膜上にレジストを塗布し、露光し、現像することによって、図示しないレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしてマスク膜に開口部を形成し、残存するレジストを、第1の実施の形態と同様にアッシングして除去する。引き続き、第1の実施の形態と同様のプラズマエッチングを行い、マスク膜をマスクとしてウェハWの裏面Wbをエッチングして貫通孔Vを形成する。そして、貫通孔Vが形成されたウェハWの裏面Wbに残存するマスク膜を例えばエッチングにより除去する(図17(a))。貫通孔Vの径を、例えば1〜10μmとすることができる。また、貫通孔Vの深さは、ウェハWの裏面Wbを研削して薄化した後のウェハWの基体自体の厚さに相当するものであり、例えば50〜200μmとすることができる。
【0101】
次いで、貫通孔Vの内周面を被覆するように、例えばポリイミド等の絶縁膜107を形成し、内周面が絶縁膜107で被覆された貫通孔V内に、電解めっき法等により貫通電極108を形成する(図17(b))。
【0102】
次いで、サポートウェハSWをウェハWから剥がすことによって、薄化され、貫通電極108が形成されたウェハWを得る。例えば紫外光(UV光)を照射することによって、光反応性の接着剤Gの接着力を低下させて剥がすことができる(図17(c))。
【0103】
本実施の形態でも、図17(a)に示したプラズマエッチングを、第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法により行うことができる。すなわち、シリコン層の上に、第1のマスク膜、第2のマスク膜を形成し、その上に形成されたレジスト膜をマスクとして第2のマスク膜及び第1のマスク膜をエッチングして開口部を形成し、第2のマスク膜及び第1のマスク膜をマスクとして、シリコン層をエッチングする。そして、その際に、第2のマスク膜の表面又は形成された穴部の側壁に、COガスを含む処理ガスのプラズマにより保護膜を堆積させる。これにより、第2のマスク膜及び第1のマスク膜をプラズマから保護することができ、形成する穴部の側壁を基板の表面に対して垂直にできるとともに、シリコン層のエッチング速度を高めることができる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 チャンバ(処理容器)
2 サセプタ
4 支持部
15 第1の高周波電源
20 シャワーヘッド
23 処理ガス供給系
26 第2の高周波電源
35 SFガス源
36 Oガス源
38 COガス源
40 制御部
51 基体(シリコン層)
51a 穴部
51b 側壁
52 第1のマスク膜
53 第2のマスク膜
54 レジスト膜
55 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン層よりなるとともに、前記シリコン層の上方に所定のパターンにパターニングされたシリコン酸化膜が形成されてなる被処理基板における前記シリコン層を、前記シリコン酸化膜をマスクとして、第1の処理ガスのプラズマによりエッチングして穴部を形成するプラズマエッチング方法において、
一酸化炭素ガスを含む第2の処理ガスのプラズマにより、前記シリコン酸化膜の表面に保護膜を堆積させる第1の堆積ステップと、
表面に前記保護膜が堆積された前記シリコン酸化膜をマスクとして、前記第1の処理ガスのプラズマにより前記シリコン層をエッチングする第1のエッチングステップと、
前記第1のエッチングステップの後、形成された前記穴部の側壁に、前記第2の処理ガスのプラズマにより前記保護膜を堆積させる第2の堆積ステップと、
表面に前記保護膜が堆積された前記シリコン酸化膜をマスクとして、前記第1の処理ガスのプラズマにより前記シリコン層を更にエッチングする第2のエッチングステップと
を有し、
前記第2の堆積ステップと前記第2のエッチングステップとを少なくとも2回ずつ交互に繰り返す、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記第2の堆積ステップは、形成された前記穴部の底まで、前記穴部の側壁に前記保護膜を堆積させるものである、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記被処理基板は、前記シリコン酸化膜上にレジスト膜が形成されてなるものであり、
前記第1の堆積ステップは、前記第2の処理ガスのプラズマにより前記レジスト膜を除去するとともに、前記第2の処理ガスのプラズマにより前記シリコン酸化膜の表面に前記保護膜を堆積させるものである、請求項1又は請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記第1の堆積ステップは、酸素ガスを含む第3の処理ガスのプラズマにより、前記レジスト膜を灰化した後、残った前記レジスト膜を前記第2の処理ガスのプラズマにより除去するものである、請求項3に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記第1のエッチングステップは、前記被処理基板を支持する支持部に、第1の周波数を有する第1の高周波電力を供給するとともに、供給する前記第1の高周波電力の電力を段階的に増加させながら、前記シリコン層をエッチングするものである、請求項1から請求項4のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記第2のエッチングステップを前記第2の堆積ステップと交互に繰り返す度に、前記第2のエッチングステップにおいて供給する前記第1の高周波電力の電力を増加させる、請求項1から請求項5のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−21192(P2013−21192A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154175(P2011−154175)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】