説明

プラズマ処理装置

【課題】ガス流の圧力損失を制御することにより、被処理物に対する処理レートを調整可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】内部を真空とすることが可能な処理室1内に、被処理物Sに対向して、プラズマ処理用のガスの流路を構成する穴30を有する第1のガスノズル3と、穴40を有する第2のガスノズル4とが、互いの間に隙間を保持した状態で重なり合う位置に配置され、第2のガスノズル4は、穴30及び穴40を通過するガスの圧力損失が変化するように、駆動機構6によって回動可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、処理室内に反応ガスを導入し、電極間の放電により発生したプラズマによって、被処理物のエッチングやアッシングを行うためのプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物に対するエッチングやアッシングを行う装置として、プラズマ処理装置が広く用いられている。プラズマ処理装置は、真空とすることが可能な処理室内に設けられたテーブルを一方の電極とし、これに対向して他方の電極を設けたものである。かかるプラズマ処理装置においては、処理室内に反応ガスを導入して、高周波電源により電極に電圧を印加することによりプラズマを発生させて、テーブルに載置した被処理物に対して、所望の処理を行うことができる。
【0003】
プラズマ処理装置の代表例としては、半導体ウェーハ等の基板をエッチングするためのエッチング装置がある。例えば、特許文献1には、基板側に直接プラズマを生成せずに、処理室に接続された配管内においてプラズマを生成し、そこで生じたラジカルを処理室内に導入して、エッチングを行うリモートプラズマエッチング装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−227375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、半導体ウェーハの大型化に伴い、半導体ウェーハ面に対する処理の均一性に対する要求が厳しくなってきている。処理の均一性を図るためには、反応ガス流の制御が重要となる。しかし、従来から、反応ガスは、所定の位置に形成されたノズル穴を介して供給されていたため、被処理面の位置に応じてガス流を制御して、処理レートを調整することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、ガス流の圧力損失を制御することにより、被処理物に対する処理レートを調整可能なプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような目的を達成するため、請求項1の発明は、内部を真空とすることが可能な処理室内に、被処理物に対向して配置され、プラズマ処理用のガスの流路を構成する穴が形成されたガスノズルを有するプラズマ処理装置において、前記ガスノズルは、互いの間に隙間を保持可能な状態で重なり合う位置に、複数配置され、複数の前記ガスノズルは、穴を通過するガスの圧力損失が変化するように、相対的に変位可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
以上のような請求項1の発明では、複数のガスノズルを備え、これを変位させることにより、穴を通過するガスの圧力損失を変化させることができるので、処理が均一となるようにガス流を制御できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1のプラズマ処理装置において、第1のガスノズルと、これに隣接して回動可能に設けられた第2のガスノズルとを有し、前記第1のガスノズルにおける穴は、その回動中心と同心の円上に形成され、前記第2のガスノズルにおける穴は、前記第1のガスノズルの穴に対応する円上に形成され、前記第1のガスノズルにおける穴と前記第2のガスノズルにおける穴とが、周方向にずれた部分を有することを特徴とする。
【0009】
以上のような請求項2の発明では、第1のガスノズル及び第2のガスノズルの穴が周方向にずれた部分を有しているので、第1のガスノズルの回動角度によって、中心側の穴によって構成されるガス流路と外周側の穴によって構成されるガス流路の広狭を変化させることができ、内周側と外周側との処理速度を調節できる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1のプラズマ処理装置において、少なくとも一つのガスノズルと隣接するガスノズルとの間隔が、可変に設けられていることを特徴とする。
以上のような請求項3の発明では、両ガスノズルの穴の位置が接近している場合、圧力損失が大きくガスが流れ難くなり、穴の位置が離れている場合、圧力損失が小さくガスが流れ易くなるので、ガスノズルの間隔を変えることにより、処理速度を制御できる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項のプラズマ処理装置において、前記処理室には、ガスの排気部が設けられ、前記ガスノズルの少なくとも一つを駆動する駆動機構が、被処理物の被処理面から前記排気部側にあることを特徴とする。
以上のような請求項4の発明では、駆動機構が、被処理物の被処理面から排気部側にあるため、駆動時に発生するパーティクル等によって被処理面が汚染されることが防止される。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4のプラズマ処理装置において、前記被処理物の被処理面から前記排気部側において、駆動機構とガスノズルを接続する支持部を有し、前記支持部は、処理室の内壁の少なくとも一部を覆う位置に設けられていることを特徴とする。
以上のような請求項5の発明では、処理室の内壁を覆う支持部によって、処理時のガスから内壁が保護される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガス流の圧力損失を制御することにより、被処理物に対する処理レートを調整可能なプラズマ処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[第1の実施形態]
[全体構成]
本発明の第1の実施形態の構成を、図1〜図3を参照して説明する。本実施形態は、図1に示すように、処理室1、載置部2、第1のガスノズル3、第2のガスノズル4、支持部5、駆動機構6等を有している。
【0015】
処理室1は、図示しない真空源に接続され、内部を真空とすることが可能なチャンバである。この処理室1には、図示はしないが、上部に、図示しない放電管に連通したガス輸送管が設けられ、放電管で生成された中性活性種などを含むガスが導入されるようになっている。また、処理室1の下部には、排気ポート10(排気部)が設けられ、図示しないポンプに接続されることにより、ガスを排気可能に設けられている。
【0016】
載置部2は、被処理物S(例えば、半導体ウェーハ等)を載置するためのテーブルである。この載置部2は、静電チャックを備え、被処理物Sを保持可能に設けられている。
【0017】
第1のガスノズル3及び第2のガスノズル4は、載置部2上の被処理物Sに対向して配置された円形のプレートである。第1のガスノズル3は、処理室1の上部に固定されている。第2のガスノズル4は、第1のガスノズル3の下部に、間隔を空けて設けられている。これらの第1のガスノズル3及び第2のガスノズル4には、後述するように、ガスが流通する穴30,40が形成されている。
【0018】
支持部5は、第2のガスノズル4に固定され、これを支持する有底円筒形状の部材である。この支持部5の側面は、載置部2の周囲における処理室1の内壁に近接し、これをカバーしている。駆動機構6は、処理室1の排気側(下部側)における外部に設けられ、出力用の軸60を介して支持部5に接続されている。この駆動機構6は、モータ等の駆動源を備え、軸60を回動させることにより、支持部5を回動させる機構である。
【0019】
駆動機構6の作動で第2のガスノズル4が回動すると、第2のガスノズル4及びその穴40は、第1のガスノズル3及びその穴30に対して相対的に変位する。なお、支持部5及び軸60は、処理室1との間の摺動部分が、シールされている。
【0020】
上記の真空源、ガス供給源、バルブ、ポンプ、駆動機構6等は、制御装置によって制御される。この制御装置は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。従って、以下に説明する手順で本装置の動作を制御するためのコンピュータプログラム及びこれを記録した記録媒体も、本発明の一態様である。
【0021】
[ガスノズルの構成]
次に、上記の第1のガスノズル3及び第2のガスノズル4に形成された穴30,40の詳細を説明する。すなわち、第1のガスノズル3の穴30は、図2(A)に示すように、第2のガスノズル4の回動中心と同心の複数の円上に、複数形成されている。これらの穴30は、周方向に等間隔で並んでいる。また、各穴30は、周方向に長く形成されている。
【0022】
第2のガスノズル4の穴40は、図2(B)に示すように、第1のガスノズル3の穴30が形成された同心円と重なる同心円上に、複数形成されている。これらの穴40は、周方向に等間隔で並んでいる。また、各穴40は、円形となっている。
【0023】
さらに、第1のガスノズル3の穴30と、第2のガスノズル4の穴40は、周方向にずれた部分を有している。例えば、本実施形態では、第1のガスノズル3においては、図2(A)に示すように、各同心円間の穴30は、径方向の直線(図中、一点鎖線で示す)に対して、斜め方向に並んだ部分を有している。一方、第2のガスノズル4においては、図2(B)に示すように、各同心円間の穴40は、径方向の直線上に並んでいる。なお、穴40が完全に塞がる状態を生じさせるためには、穴30同士の周方向の間隔が、穴40の直径よりも空いていることが望ましいが、必ずしもこれには限定されない。
【0024】
穴30及び穴40の配列が上記のようになっているため、第2のガスノズル4の回動位置に応じて、ガス流路となる開口は、以下のように変化する。すなわち、図3(A)に示すように、第2のガスノズル4の穴40が、第1のガスノズル3の穴30に対して、時計回りで考えて遅れている(図中、右寄りにある)ときには、中心側の開口が狭く、外周側の開口が広くなる(図中、黒塗りの部分)。
【0025】
一方、図3(B)に示すように、第2のガスノズル4の穴40が、第1のガスノズル3の穴30に対して、時計回りで進んでいる(図中、左寄りにある)ときには、中心側の開口が広く、外周側の開口が狭くなる(図中、黒塗りの部分)。
【0026】
[作用]
以上のような本実施形態の動作について説明する。
[基本動作]
プラズマ処理装置としての基本的な動作は、従来技術と同様である。ここでは、リモートプラズマ型のエッチング装置を例にとって説明する。まず、図示しない搬送部により被処理物Sが処理室1に搬入され、載置部2上に載置、保持される。次に、処理室1内がポンプ等の減圧手段により所定圧力まで減圧される。この際、図示しない圧力制御器により、処理室1内の圧力が調整される。また、処理室1に連通した図示しない放電管も減圧、圧力調整される。
【0027】
次に、図示しない放電管内部に所定量のプロセスガス(例えば、CF、NFなど)が導入される。一方、図示しないマイクロ波発生手段から、所定のパワーのマイクロ波が図示しない導入導波管を介して放射される。マイクロ波が放射されると、プラズマが発生し、プロセスガスが励起、活性化されて中性活性種、イオンなどのプラズマ生成物が生成される。生成されたプラズマ生成物を含むガスは、図示しないガス輸送管を介して処理室1に導入される。この際、寿命の短いイオンなどは処理室1まで到達できず、寿命の長い中性活性種のみが処理室1に到達することになる。導入された中性活性種を含むガスは、第1のガスノズル3、第2のガスノズル4を通過して、被処理物Sの表面に到達し、エッチング処理などのプラズマ処理が行われる(図1)。
【0028】
処理室1内のガス流は、上部側のガス導入路から、第1のガスノズル3の穴30及び第2のガスノズル4の穴40を通過して、下部側の排気ポート10へと流れ、上流側と下流側に圧力差が生じている。
【0029】
[ガス流量の調整]
次に、被処理物Sに対するガス流量の調整方法を説明する。まず、ガス流量の大小は、処理速度に影響を与える。例えば、エッチングの形状は、概ね同心円状であり、中心側の円から外周側の円にかけて、処理レートが異なる場合が多い。
【0030】
そこで、外周側の処理レートを速くしたい場合には、図3(A)に示すように、第2のガスノズル4を回動させて、中心側の開口が狭く、外周側の開口が広くなるようにする。これにより、中心側のガス流の圧力損失が大きく、外周側のガス流の圧力損失が小さくなるので、中心側よりも外周側のガス流量が増えて、外周側の処理レートが速くなる。
【0031】
一方、中心側の処理レートを速くしたい場合には、図3(B)に示すように、第2のガスノズル4を回動させて、中心側の開口が広く、外周側の開口が狭くなるようにする。これにより、中心側のガス流の圧力損失が小さく、外周側のガス流の圧力損失が大きくなるので、外周側よりも中心側のガス流量が増えて、中心側の処理レートが速くなる。
【0032】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、第1のガスノズル3及び第2のガスノズル4という複数のガスノズルを備え、第2のガスノズル4を回動させることにより、穴30及び穴40を通過するガスの圧力損失を変化させることができるので、第2のガスノズル4の回動位置を調節することにより、処理が均一となるようにガス流を制御できる。
【0033】
特に、周方向にずれて配設された穴30及び穴40は、その重ね合わせ量に応じて、中心側から外周側にかけて開口が広くなるようにしたり、外周側から中心側にかけて開口が広くなるようにすることができるので、例えば、エッチングのように処理レートが同心円状に変化する処理に対応して、処理レートが均一になるように調整できる。
【0034】
また、第1のガスノズル3及び第2のガスノズル4との間には、隙間が設けられているので、第2のガスノズル4の回転時に、第1のガスノズル3と擦れ合うことがなく、パーティクル等の発生を防止できる。そして、支持部5の側面によって、載置部2の周囲の処理室1の内壁が、処理時のガスによる影響から保護される。
【0035】
さらに、第2のガスノズル4を回動させる駆動機構6が、処理室1の排気側の外部に設けられ、ガス流が高圧の上部から低圧の下部へ流れるように設定されているので、駆動機構6から発生するパーティクル等が逆流することがなく、処理室1内の汚染が防止できる。
【0036】
[第2の実施形態]
[構成]
本発明の第2の実施形態の構成を、図4及び図5を参照して説明する。すなわち、本実施形態は、図4に示すように、基本的には、第1の実施形態と同様の構成である。但し、本実施形態では、処理室1に固定された第1のガスノズル3の下部に、第2のガスノズル4が昇降可能に設けられている点が異なっている。
【0037】
すなわち、本実施形態においては、第2のガスノズル4に固定された支持部5を、上下に駆動する駆動機構7が、処理室1の排気側(下部側)における外部に設けられている。この駆動機構7としては、シリンダによるもの、モータ駆動の送りネジによりスライダを昇降させるもの、モータ駆動のギア機構によりラックを昇降させるもの等、支持部5を直線上に進退させる機構であれば、周知のあらゆる技術を適用可能である。なお、支持部5は、処理室1との間の摺動部分が、シールされている。
【0038】
また、第1のガスノズル3に形成された穴31と、第2のガスノズル4に形成された穴41とは、全て同径のものが均等に形成されている。但し、穴31と穴41は、左右にずれて形成されている。
【0039】
[作用]
以上のような本実施形態の動作について説明する。なお、基本動作は、上記の実施形態で説明した通りであるため、ガス流量の調整についてのみ説明する。
【0040】
まず、第1のガスノズル3の穴31と、第2のガスノズル4の穴41とは、ずれた位置に形成されているので、第1のガスノズル3と第2のガスノズル4との間の空間の広狭が、ガス流の圧力損失に大きな影響を与える。
【0041】
つまり、図5(A)に示すように両者が接近した場合、ガス流路が狭まり圧力損失が増すので、ガスGの流量が制限される。一方、図5(B)に示すように、両者が離れた場合、ガス流路が広がり、圧力損失が低下するので、ガスGの流量が増える。
【0042】
したがって、処理レートを速くしたい場合には、駆動機構7によって第2のガスノズル4を下降させてガス流路を拡大し、ガス流量を増やす。処理レートを遅くしたい場合には、駆動機構7によって第2のガスノズル4を上昇させてガス流路を狭め、ガス流量を制限する。
【0043】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、第2のガスノズル4は昇降させるので、回転等させるよりも、ガス流路の圧力損失の調整が容易となる。また、処理室1のシール構造も簡略化できる。
【0044】
[第3の実施形態]
[構成]
本発明の第3の実施形態の構成を、図6を参照して説明する。すなわち、本実施形態は、基本的には、第2の実施形態と同様の構成である。但し、本実施形態においては、第2のガスノズル4の下部に配置された第3のガスノズル8が、支持部51を介して、駆動機構9により第2のガスノズル4とは独立に昇降可能に設けられている点が異なっている。
【0045】
そして、第1のガスノズル3に形成された穴32と、第2のガスノズル4に形成された穴42とは、中心側の領域で左右にずれていて、外周側の領域で上下の位置が一致している。第2のガスノズル4に形成された穴42と第3のガスノズル8に形成された穴82とは、中心側の領域で上下の位置が一致していて、外周側の領域で左右にずれている。
【0046】
[作用]
以上のような本実施形態の動作について説明する。なお、基本動作は、上記の実施形態で説明した通りであるため、ガス流量の調整についてのみ説明する。
【0047】
すなわち、第1のガスノズル3の穴32と、第2のガスノズル4の穴42は、中心側においてずれているので、両者が接近した場合、中心側の流路が狭まり、圧力損失が増して、ガス流量が制限される。一方、両者が離れた場合、中心側の流路が広がり、圧力損失が低下するので、ガス流量が増える。外周側では、穴32と穴42のずれはないので、第1のガスノズル3と第2のガスノズル4との間の広狭は、ガス流量の増減にあまり影響を与えない。
【0048】
また、第2のガスノズル4の穴42と、第3のガスノズル8の穴82は、外周側においてずれているので、両者が接近した場合、外周側の流路が狭まり、圧力損失が増して、ガス流量が制限される。一方、両者が離れた場合、外周側の流路が広がり、圧力損失が低下するので、ガス流量が増える。中心側では、穴42と穴82のずれはないので、第2のガスノズル4と第3のガスノズル8との間の広狭は、ガス流量の増減にあまり影響を与えない。
【0049】
したがって、中心側の処理レートを速くしたい場合には、駆動機構9によって第2のガスノズル4を下降させてガス流路を拡大し、ガス流量を増やす。逆に、中心側の処理レートを遅くしたい場合には、第2のガスノズル4を上昇させてガス流路を狭め、ガス流量を制限する。
【0050】
一方、外周側の処理レートを速くしたい場合には、駆動機構9によって第3のガスノズル8を下降させてガス流路を拡大し、ガス流量を増やす。逆に、外周側の処理レートを遅くしたい場合には、第3のガスノズル8を上昇させてガス流路を狭め、ガス流量を制限する。
【0051】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、第2のガスノズル4を昇降させることによって、中心側のガス流量を制御でき、第3のガスノズル8を昇降させることによって、外周側のガス流量を制御できるので、より詳細な処理レートの調節が可能となる。
【0052】
[他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。例えば、ガスノズルに形成する穴の大きさ、形状及び位置は、上記の実施形態で例示したものには限定されない。例えば、同一のガスノズルに形成する穴の大きさは、一致していても、異なっていてもよい。異なるガスノズル同士の穴の大きさも、一致していても、異なっていてもよい。穴の大きさを厚さ方向で変化させてもよい。穴の形状は、円形、長円形には限定されず、楕円、多角形等、どのような形状であってもよい。穴の方向も、傾斜を持たせてもよいし、湾曲部分や屈曲部分を設けてもよい。
【0053】
穴の配列も、同心円状には限定されず、放射状、マトリクス状、螺旋状等、どのような配列で形成してもよい。異なるガスノズル同士の穴のずれの程度も自由である。ずれ量を、中心側と外周側で序々に変えてもよい。第3の実施形態では、第2のガスノズルは中心側、第3のガスノズルは外周側にずれを設けたが、逆に、第2のガスノズルには外周側、第3のガスノズルには中心側にずれを設けてもよい。
【0054】
上記の実施形態では、上部のガスノズルを固定として、下部のガスノズルを変位させていたが、上部のガスノズルを変位させて、下部を固定としてもよいし、上部、下部ともに変位させてもよい。ガスノズル間に間隔を空けた状態で、ガスノズルを横方向にスライドさせることによって、圧力損失を変化させてもよい。
【0055】
請求項における「間隔を保持可能な」とは、ガスノズルを回転させる場合には、一対のガスノズルに所定の間隔が空けられていることを言い、ガスノズルを昇降させる場合には、一対のガスノズルが接触する状態と離れる状態との間を相対的に変位可能に設けられていること、若しくは一対のガスノズルが接触することなく相対的に変位可能に設けられていることが含まれる。
【0056】
ガスノズルの駆動機構も、被処理面から排気側にあれば、パーティクル等による汚染を防止できる。ガスノズルの数も、2つ及び3つには限定されず、これより多くすることにより、より詳細に流量を制御することも可能である。ガスノズルを回動可能に設けるとともに、昇降可能に設けてもよい。
【0057】
ガスノズルの形状や厚さも特定のものには限定されない。一枚のガスノズルに凹部を形成し、この凹部に別のガスノズルを入れ子状に配置するようにしてもよい。ガスノズルに傾斜を持たせてもよいし、ガスノズル自体を、例えば山形やすり鉢状とするなど、平板以外の形状としてもよい。支持部についても、処理室の内壁の全周を覆う形でも、一部を覆う形でもよい。さらに、本発明は、エッチング装置、アッシング装置等を含むプラズマ処理装置として広く適用可能であり、処理対象となる被処理物も自由である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の実施形態における第1のガスノズルの穴(A)、第2のガスノズルの穴(B)を示す平面図である。
【図3】図1の実施形態におけるガスノズルの外周側の開口を広くした例(A)、中心側の開口を広くした例(B)を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】図4の実施形態における第1のガスノズルと第2のガスノズルの間隔を狭めた場合のガス流(A)、間隔を広げた場合のガス流(B)を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…処理室
2…載置部
3…第1のガスノズル
4…第2のガスノズル
5,52…支持部
6,7,9…駆動機構
8…第3のガスノズル
10…排気ポート
30,31,32,40,41,42,82…穴
52…支持部
60…軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空とすることが可能な処理室内に、被処理物に対向して配置され、プラズマ処理用のガスの流路を構成する穴が形成されたガスノズルを有するプラズマ処理装置において、
前記ガスノズルは、互いの間に隙間を保持可能な状態で重なり合う位置に、複数配置され、
複数の前記ガスノズルは、穴を通過するガスの圧力損失が変化するように、相対的に変位可能に設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
第1のガスノズルと、これに隣接して回動可能に設けられた第2のガスノズルとを有し、
前記第1のガスノズルにおける穴は、その回動中心と同心の円上に形成され、
前記第2のガスノズルにおける穴は、前記第1のガスノズルの穴に対応する円上に形成され、
前記第1のガスノズルにおける穴と前記第2のガスノズルにおける穴とが、周方向にずれた部分を有することを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
少なくとも一つのガスノズルと隣接するガスノズルとの間隔が、可変に設けられていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記処理室には、ガスの排気部が設けられ、
前記ガスノズルの少なくとも一つを駆動する駆動機構が、被処理物の被処理面から前記排気部側にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記被処理物の被処理面から前記排気部側において、駆動機構とガスノズルを接続する支持部を有し、
前記支持部は、処理室の内壁の少なくとも一部を覆う位置に設けられていることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−118628(P2010−118628A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292798(P2008−292798)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】