説明

プラズマ発生装置およびCVD装置

【課題】発生したプラズマ励起ガスを効率的に取り出すことができる、簡易な構成のプラズマ発生装置を提供する。
【解決手段】プラズマ発生装置は、電極セルと、当該電極セルに交流電圧を印加する電源部17と、前記電極セルを囲繞する筐体と、当該筺体外部から前記電極セルの外周部へと原料ガスを供給する原料ガス供給部とを、備えている。前記電極セルは、低圧電極1と高圧電極3と誘電体2a,2bとを備え、誘電体バリア放電空間6を有し、貫通口PHを有するドーナツ形状である。また、プラズマ発生装置は、貫通口PHの内部に配設されている円筒形状の側面部に噴出孔21xを有する絶縁筒部21と、絶縁筒部21の空洞部21A内の圧力を減圧する、減圧装置とをさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原料ガスから高エネルギーを有するプラズマ励起ガス(活性ガス、ラジカルガス)を高濃度で、多量に生成することができるプラズマ発生装置、および生成したプラズマ励起ガスを減衰量を抑制し、有効にCVD装置に供給できるようにした当該プラズマ発生装置を含むCVD装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、半導体チップ内で、回路配線相当になる低インピーダンスの高導電膜、回路の配線コイル機能や磁石機能を有する高磁性膜、回路のコンデンサ機能を有する高誘電体膜および電気的な漏洩電流の少ない高絶縁機能を有する酸化や窒化による高絶縁膜などの高機能膜の成膜方法には、熱CVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)装置、光CVD装置またはプラズマCVD装置が用いられており、特に、プラズマCVD装置が多々使用されている。例えば、熱・光CVD装置よりも、プラズマCVD装置の方が、成膜温度を低くでき、かつ、成膜速度が大きく短時間の成膜処理ができるなどの利点がある。
【0003】
たとえば、窒化膜(SiON、HfSiONなど)や酸化膜(SiO2,HfO2)などのゲート絶縁膜を半導体基板に成膜する場合には、プラズマCVD装置を用いた以下の技術が一般的に採用されている。
【0004】
つまり、NH3(アンモニア)やN2、O2、O3(オゾン)などのガスとシリコンやハフニウム物質の前駆体ガスとが、CVD処理装置などの成膜処理チャンバーに直接供給され、熱や触媒等による化学反応を促進させ、前駆体ガスを解離させ、解離させた前駆体からの金属粒子を添加したNH3(アンモニア)やN2、O2、O3(オゾン)などのガスによって酸化や窒化物にして、被処理体である半導体ウェハー上に堆積させることで、高機能膜を成膜している。そのため、CVD処理装置では、処理チャンバー内で直接的に、高周波プラズマやマイクロ波プラズマが発生させられ、ウェハー基板はラジカルガスや高エネルギーを有したプラズマイオンや電子に晒された状態で、当該ウェハー基板上には、窒化膜や酸化膜等の高機能膜が成膜されている。
【0005】
なお、プラズマCVD装置の構成が開示されている先行文献として、たとえば特許文献1が存在する。
【0006】
しかしながら、プラズマCVD装置内の成膜処理では、上記のように、ウェハー基板がプラズマに直接晒される。したがって、当該ウェハー基板は、プラズマ(イオンや電子)により、半導体機能の性能を低下させる等のダメージを大きく受ける、という問題が常に生じていた。
【0007】
他方、熱・光CVD装置を用いた成膜処理では、ウェハー基板はプラズマ(イオンや電子)によるダメージを受けず、高品質の窒化膜や酸化膜等の高機能膜が成膜される。しかしながら、当該成膜処理では、高濃度で、かつ多量の窒素ラジカルガス源や酸素ラジカル源を得ることが困難であり、結果として、成膜時間が非常に長く要するという問題がある。
【0008】
最近の熱・光CVD装置では、原料ガスとして、熱や光の照射によって解離しやすい、NH3ガスやO3ガスの高濃度のものを用い、CVDチャンバー内に加熱触媒体を設けている。これにより、当該熱・光CVD装置では、触媒作用でチャンバー内のガスの解離が促進し、窒化膜や酸化膜等の高機能膜の成膜時間の短縮化も図れているが、大幅な成膜時間の改善は困難である。
【0009】
そこで、プラズマによるウェハー基板に対するダメージを軽減でき、成膜時間の短縮化が可能な装置として、リモートプラズマ型成膜処理装置が存在する(たとえば、特許文献2参照)。
【0010】
当該特許文献2に係る技術では、プラズマ生成領域と被処理材処理領域とが、隔壁(プラズマ閉込電極)により分離されている。具体的に、特許文献2に係る技術では、高周波印加電極とウェハー基板が設置された対向電極との間に、当該プラズマ閉込電極を設けることで、中性活性種だけをウェハー基板上に供給させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−266489号公報
【特許文献2】特開2001−135628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に係る技術では、被処理材(ウェハー基板)に対するプラズマダメージの抑制は完全ではなく、また装置構成が複雑になる。
【0013】
また、一般的にリモートプラズマ型成膜処理装置では、プラズマ発生場所と反応室とが離れており、プラズマ励起ガスの寿命が短いため、発生したプラズマ励起ガスが元の原料ガスに戻るため、高濃度で、かつ多量のプラズマ励起ガスを反応室に供給することが困難である。つまり、効率的にプラズマ励起ガスを反応室に供給することが、困難である。
【0014】
そこで、本発明は、発生したプラズマ励起ガスを効率的に取り出すことができる、簡易な構成のプラズマ発生装置を、提供することを目的とする。さらには、当該プラズマ発生装置を用いて、被処理材に対する成膜時のプラズマ(イオンや電子)によるダメージを完全になくすことができ、成膜時間の短縮化が図れる、CVD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るプラズマ発生装置は、電極セルと、前記電極セルに交流電圧を印加する電源部と、前記電極セルを囲繞する筐体と、前記筐体に形成され、前記筺体外部から前記筐体内における前記電極セルの外周部へと原料ガスを供給する原料ガス供給部とを、備えており、前記電極セルは、第一の電極と、放電空間を形成するように、前記第一の電極と対面している第二の電極と、前記放電空間に面する前記第一の電極の主面および前記放電空間に面する前記第二の電極の主面の少なくとも何れか一方に配置される誘電体と、平面視において中央部に形成され、前記第一の電極と前記第二の電極とが対面する対面方向に貫通している貫通口とを、有しており、円筒形状であり、前記貫通口の内部に配設されており、当該円筒形状の側面部に噴出孔を有する、絶縁筒部と、前記絶縁筒部の空洞部内の圧力を減圧する、減圧装置とをさらに備えている。
【0016】
また、本発明に係るCVD装置は、前記プラズマ発生装置と、当該プラズマ発生装置に接続されるCVDチャンバーとを、備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るプラズマ発生装置は、電極セルと、前記電極セルに交流電圧を印加する電源部と、前記電極セルを囲繞する筐体と、前記筐体に形成され、前記筺体外部から前記筐体内における前記電極セルの外周部へと原料ガスを供給する原料ガス供給部とを、備えており、前記電極セルは、第一の電極と、放電空間を形成するように、前記第一の電極と対面している第二の電極と、前記放電空間に面する前記第一の電極の主面および前記放電空間に面する前記第二の電極の主面の少なくとも何れか一方に配置される誘電体と、平面視において中央部に形成され、前記第一の電極と前記第二の電極とが対面する対面方向に貫通している貫通口とを、有しており、円筒形状であり、前記貫通口の内部に配設されており、当該円筒形状の側面部に噴出孔を有する、絶縁筒部と、前記絶縁筒部の空洞部内の圧力を減圧する、減圧装置とをさらに備えている。
【0018】
したがって、本発明は、プラズマ励起ガスを発生させている放電空間とプラズマ励起ガスを出力する空洞部に至るまでの供給距離が最短になる構造になり、かつ、減圧装置により、放電空間と絶縁筒部の空洞部との間に圧力差を、生じさせることができる。よって、当該圧力差を利用して、絶縁筒の噴出孔から断熱膨張で、プラズマ励起ガスを噴出させ、放電空間から減圧された空洞部に効率良く誘導できる。よって、放電空間から空洞部に至るまでの間に、当該プラズマ励起ガス同士の衝突を抑制し、かつ、壁等に当該プラズマ励起ガスが衝突することも抑制できる。よって、プラズマ励起ガスの各種衝突による減衰量を抑制することができ、より効率良く当該空洞部内にプラズマ励起ガスを導けることができる。
【0019】
また、放電空間部の圧力は、絶対圧30kPa以下の減圧状態での誘電体バリア放電では、ガス密度が低いため、高エネルギー密度の放電プラズマを安定に得ることが難しいことが分かっている。そこで、本発明では、高エネルギー密度の放電エネルギーを注入できる誘電体バリア放電を利用して、プラズマ励起ガスを生成する構成において、絶対圧30kPa以下の減圧状態の空洞部と放電空間との間に、上記絶縁筒の噴出孔を介して、で圧力差を持たせる構造にしている。したがって、本発明に係るプラズマ装置では、高エネルギー密度の放電エネルギーを注入できる絶対圧30kPa以上での誘電体バリア放電が可能となり、プラズマ発生装置をコンパクト(簡易)にして、高濃度、かつ多量のプラズマ励起ガスを発生できる。
【0020】
さらに、本発明では、誘電体バリア放電を発生させる電極セルを、多段に積層した構成を採用することもできる。当該多段構成を採用した場合には、各電極セル内の放電空間で発生したプラズマ励起ガスを、それぞれの絶縁筒の噴出孔で、減圧状態である空洞部に噴出させた後、減圧状態である空洞部で、噴出したプラズマ励起ガスを合流させ、CVD装置などに合流したプラズマ励起ガスを導く構成にできる。このように、多段構成を採用した本発明では、減圧状態である空洞部において、プラズマ励起ガスを合流させプラズマ励起ガス量を高める手段を講じたため、プラズマ励起ガスの各種衝突による減衰量を抑制して、より高濃度で、かつ多量のプラズマ励起ガスをCVD装置などに導くことが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るCVD装置では、原料ガスからプラズマ励起ガスを生成するプラズマ発生装置と、当該生成したプラズマ励起ガスを用いて被処理材に対して成膜処理を行うCVDチャンバーとは、別個独立の装置である。
【0022】
このように、プラズマ発生源と処理領域とは完全に分離しているので、プラズマ源において電離して生成したイオンが、当該処理領域に配置された被処理材に衝突することを防止できる。これにより、被処理材に対するプラズマによるダメージを完全になくすことができる。さらに、CVDチャンバーでは、より高濃度で、かつ多量のプラズマ励起ガスが供給され、プラズマCVD処理が実施されるので、被処理材に対する成膜時間のさらなる短縮化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係るCVD装置300の全体構成を示す断面図である。
【図2】電極セルの構成を示す拡大断面図である。
【図3】ガス出力フランジ14cの構成を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0025】
<実施の形態>
図1は、本実施の形態に係るCVD装置300の構成を示す断面図である。また、図1の一点破線で囲まれた領域の拡大断面図を、図2に示す(図1では簡素化した電極セル構成が、図2では電極セルの詳細な断面構成が、開示されている)。
【0026】
図1に示すように、CVD装置300は、プラズマ発生装置100、CVDチャンバー200および排気ガス分解処理装置28を備えている。
【0027】
まず、本実施の形態に係るプラズマ発生装置100の構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、プラズマ発生装置100において、複数の電極セルは、図面の上下方向に積層されている。図2の拡大断面図には、2つの電極セルが示されている。図2を用いて、積層構造の電極セルの構成を説明する。
【0029】
図1,2の上下方向から眺めた各電極セルの平面形状はドーナツ形状である。つまり、当該電極セルの平面視外形は略円盤状(ここで、円盤状以外に、四角盤状形状であっても良い)であり、当該電極セルの中心部には、当該上下方向(電極セルの積層方向)に貫通した貫通口PHが穿設されている。
【0030】
各電極セルは、低圧電極1、誘電体2a,2b、高圧電極3、絶縁板4、および高圧冷却板5から構成されている。そして、図1,2の上下方向(高圧電極3と低圧電極1とが対面する方向)に、複数の電極セルが積層している。
【0031】
ここで、各電極セルの平面視形状は、上記の通り、貫通口PHを有する円形である。したがって、各部材1,2a,2b,3,4,5は、平面視外形が円形である板状であり、各部材1,2a,2b,3,4,5の中央部には、上記貫通口PHが各々設けられている。
【0032】
図2に示すように、低圧電極1および高圧電極3には、交流電源17による交流電圧が印加される。ここで、低圧電極1は、後述する、連結ブロック9、高圧冷却板5および筺体16と共に、固定電位(接地電位)となる。
【0033】
低圧電極1の主面上には、誘電体2aが配置されている。つまり、低圧電極1の主面上には、誘電体2aの一方の主面が接している。なお、誘電体2aの当該一方の主面には、導電体が塗布・印刷・蒸着等されている。また、誘電体2aと放電空間6だけ隔てて、当該誘電体2aと対面して、誘電体2bが配置されている。つまり、誘電体2aの他方の主面は、放電空間6だけ隔てて、誘電体2bの一方の主面と対面している。ここで、誘電体2aと誘電体2bとの間には、図示していない複数のスペーサが存在しており、当該スペーサにより、放電空間6の空隙が保持・固定されている。なお、放電空間6の図2の上下方向の寸法は、たとえば0.05mm〜数mm程度である。
【0034】
また、誘電体2bの他方の主面上には、高圧電極3が配置されている。つまり、誘電体2bの他方の主面上には、高圧電極3の一方の主面が接している。なお、誘電体2bの当該他方の主面には、導電体が塗布・印刷・蒸着等されている。また、高圧電極3の他方の主面上には、絶縁板4の一方の主面が接している。さらに、当該絶縁板4の他方の主面には、高圧冷却板5が接している。但し、本願では、絶縁板4や高圧冷却板5を設けた積層構成の1実施例を示したが、絶縁板4や高圧冷却板5を省いた構成で積層する構成も当然容易に想定できる。
【0035】
ここで、導電体が塗布等された誘電体2a、図示していないスペーサおよび導電体が塗布等された誘電体2bは、一体構成のものを採用できる。
【0036】
なお、図2に示すように、各電極セルにおいて、低圧電極1と高圧電極3とは、各誘電体2a,2bと放電空間6を介して、対面している。つまり、放電空間6に面する低圧電極1の主面および放電空間6に面する高圧電極3の主面の各々に、各誘電体2a,2bが配置されている。これは、放電空間6の両面を放電によって、耐スパッタ性かつ非導電性の高い物質として、誘電体物質は有効であるため、本願の実施例では、低圧電極1と高圧電極3との両側に各誘電体2a,2bを設けた構成を採用している。なお、図2の構成と異なり、誘電体2aおよび誘電体2bの何れか一方のみは、省略することも可能ではある。
【0037】
各構成1,2a,2b,3,4,5を有する電極セルは、上記の通り、当該各構成の積層方向に、貫通口PHが穿設されている。ここで、各電極セルが有する貫通口PHが、電極セルの積層方向に連結され、一続きの貫通孔が形成されている。本願明細書では、当該一続きの貫通孔を、「貫通連孔」と称することとする。上記から分かるように、貫通連孔は、前記積層方向に延設している。
【0038】
また、図2に示すように、本実施の形態では、上下に隣接する電極セルにおいて、1つの低圧電極1は共通の構成要素となっている(当該、一つの低圧電極1を共通の構成要素とする二つの電極セルを、電極セル対と称する)。上下に隣接する電極セルにおいて1つの低圧電極1を共通の構成にすることで、部品数を削減することのみで、上下に隣接する電極セルにおいて1つの低圧電極1を共通に使用しない構成は、容易に採用できる。
【0039】
図2の構成では、1つの電極セル対の構造が開示されており、当該電極セル対が、図2の上下方向に、複数積層されている。なお、各低圧電極1と各高圧冷却板5との間には、各連結ブロック9が介在している。つまり、各電極セルの側方には、各連結ブロック9が存在している。当該連結ブロック9の存在により、各電極セルにおいて、低圧電極1から高圧冷却板5までの寸法を一定に保持することができる。ここで、連結ブロック9は、電極セルの全側方に配設されているのではなく、図2に示すように、電極セルの一部の側方(図2の断面図の左側)にのみ配設されている。
【0040】
また、プラズマ発生装置100では、図2に示すように、上記貫通連孔の内部において、絶縁筒部21が配設されている。当該絶縁筒部21は、上記図2の上下方向に貫通した空洞部21Aを有する円筒形状である。つまり、絶縁筒部21の円筒軸方向は、電極セルの積層方向と平行となるように、絶縁筒部21は、貫通連孔内に配置されている(より具体的には、貫通連孔の軸方向と絶縁筒部21の円筒軸方向とは、一致している)。
【0041】
また、絶縁筒部21の側面部には、複数の微細な噴出孔(ノズル孔)21xが設けられている。ここで、図2の構成例では、各噴出孔21xは、放電空間6に面するように、絶縁筒部21に設けられている。また、各噴出孔21xの開口径は、たとえば放電空間6の積層方向の寸法より小さい。ここで、絶縁筒部21は、石英またはアルミナ等製である。この実施例では、複数の微細な噴出孔21xを設けた1本の絶縁筒部21を示している。しかし、複数の微細な噴出孔21xを設けたリング状の構造物を貫通口PH内に積層することにより、複数の微細な噴出孔21xを設けた一続き構成の絶縁筒部21を構成することもできる。
【0042】
なお、放電空間6と空洞部21Aとの間に所望の圧力差を設定するという観点において、噴出孔21xは、孔径0.05mm〜0.3mm、孔長(絶縁筒部21の厚さと把握できる)0.3mm〜3mm、程度であることが望ましい。
【0043】
また、図2に示すように、前記貫通連孔の孔内部周側面部と絶縁筒部21の外側の周側面部とは、所定の間隔だけ離れている。つまり、電極セルの貫通口PH(または貫通連孔)の側面部と絶縁筒部21の側面部との間には、図2に示すように、管路22が設けられている。当該管路22を図2の上下方向から眺めると、環状の形状を有している。つまり、平面視における電極セルの貫通口PH(または貫通連孔)の側面部が外周となり、平面視における絶縁筒部21の側面部が内周となり、当該外周と当該内周との間が、平面視における環状の管路22となる。
【0044】
ここで、当該管路22は、前記外周側において各放電空間6と接続されている。そして、当該管路22の端部側は、筺体16の上面の内部を通って、当該筺体16の外部に存在する後述の自動圧力制御装置(Auto Pressure Controler:APC)26に接続される(図1参照)。
【0045】
また、高圧冷却板5、高圧電極3および低圧電極1は、導電体である。そして、高圧冷却板5の絶縁筒部21に対面する部分には、絶縁体5aが形成されている。また、高圧電極3の絶縁筒部21に対面する部分には、絶縁体3aが形成されている。また、低圧電極1の絶縁筒部21に対面する部分には、絶縁体1aが形成されている。
【0046】
つまり、各電極セルにおいて、絶縁筒部21に対面する部分は、部材4,2a,2bを含め、全て絶縁性材料となっている。このように、各電極セルの貫通連孔内に形成された管路22の内面は、全て絶縁性を有する。これにより、当該管路22内における放電空間6以外の放電(異常放電)等が防止される。
【0047】
また、図1,2の上下方向に積層している各連結ブロック9内には、冷媒が通る流路(図示せず)が形成されており、また、各高圧冷却板5内部および低圧電極1内部においても、流路(図示せず)が形成されている。外部から供給される冷媒は、連結ブロック9内の流路を流れ、各高圧冷却板5内部の流路および各低圧電極1内部の流路を循環し、当該連結ブロック9内の他の流路を介して、外部へと出力される。
【0048】
高圧冷却板5内の流路に一定温度に調整された冷媒が流れることにより、絶縁板4を介して、高圧電極3は一定温度に冷却される。また、高圧冷却板5、低圧電極1内の流路に一定温度に調整された冷媒が流れることにより、高圧冷却板5自身および低圧電極1自身が一定温度に冷却・保持され、間接的に放電空間6内のガス温度も一定温度に保持することができる。なお、冷媒は、たとえば、数℃〜25℃程度の範囲で一定温度に温度調整される。
【0049】
なお、各流路の気密性を担保するために、連結ブロック9と高圧冷却板5との接続部および連結ブロック9と低圧電極1との接続部には、Oリング等の気密手段が配設されている。また、流路が形成された高圧冷却板5自身および流路が形成された低圧電極1は各々、ハーフエッチングにより溝が形成された部材を、当該溝が合致(当該合致により、流路が構成される)するように貼り合わせることにより、構成させることができる。
【0050】
図1に示すように、プラズマ発生装置100は、筺体16を備えている。当該筺体16は、たとえばアルミニウム製またはSUS製である。そして、内部の気密性が担保された筺体16の内部に、複数の電極セルが積層された状態で配置される。つまり、積層状態の各電極セルは、筺体16の上下面および側面により覆われている。なお、筺体16の側面部と各電極セルの側面部との間には、空間が存在する。また、筺体16の底面部と各電極セルの最下部との間にも、空間が存在する。そして、図1に示すように、積層された電極セルは、締め付け部材8を用いて、筺体16の上面に固着されている。
【0051】
また、プラズマ発生装置100は、図2で示した交流電源17を備えており、図1に示すように、当該交流電源17は、インバータ17aと高圧トランス17bとから構成されている。
【0052】
インバータ17aでは、入力される60Hzの交流電圧に対して、周波数変換処理実施し、15kHzの交流電圧として、高圧トランス17bに対して出力する。そして、当該高圧トランス17bでは、入力される200〜300Vの交流電圧に対して、昇電圧処理を実施し、数kV〜数十kVの交流電圧を出力する。
【0053】
高圧トランス17bの一方端は、電気供給端子15を介して、各高圧電極3に接続される。他方、高圧トランス17bの他方端は、筺体16に接続される。なお、筺体16と高圧冷却板5と連結ブロック9と低圧電極1とは、電気的に接続されており、固定電位(接地電位)に設定されている。なお、図2の構成からも分かるように、高圧冷却板5と高圧電極3とは、絶縁板4により電気的に絶縁されている。
【0054】
また、図1に示すように、プラズマ発生装置100は、原料ガス供給部20、原料ガス用MFC(Mass Flow Controller)24およびサブガス用MFC25を、備えている。
【0055】
原料ガス供給部20は、筺体16の側面に設けられている。当該原料ガス供給部20は、筺体16外部から当該筐体16内に、原料ガスを供給する。具体的に、原料ガスは、原料ガス供給部20を通って、電極セルの外周部(つまり、筺体16内における、積層状態の電極セルが配置されていない領域)へと供給される。
【0056】
原料ガス用MFC24からは、窒素ガスおよび酸素ガス等の原料ガスが出力され、サブガス用MFC25からは、希ガス(ヘリウムガスやアルゴンガスなど)が出力される。図1に示すように、途中の管路において原料ガスと希ガスとが混合する。そして、原料ガスおよび希ガスは、原料ガス供給部20に入力される。
【0057】
なお、本実施の形態では、原料ガス供給部20は、原料ガスを希ガスと共に、筺体16内に供給するが、原料ガスのみを筺体16に供給する場合であっても良い。
【0058】
また、図1に示すように、プラズマ発生装置100は、自動圧力制御装置26を備えている。上述したように、自動圧力制御装置26は、図2で示した管路22と接続されている。さらに、上述したように、環状の管路22の外周側の側面部は、放電空間6と接続されている。当該構成により、管路22を介して、自動圧力制御装置26により、各放電空間6は、一定の圧力に保持されている。たとえば、当該自動圧力制御装置26により、各放電空間6は、0.03MPa(メガパスカル)〜0.3MPaの圧力範囲内において、圧力が一定に保持されている。
【0059】
さらに、本実施の形態では、プラズマ発生装置100は、減圧装置27を備えている。図1の構成では、減圧装置27は、CVDチャンバー200を介して、絶縁筒部21の空洞部21Aと接続されている。当該減圧装置27は、たとえば真空ポンプを採用できる。当該構成により、減圧装置27は、絶縁筒部21の空洞部21A内の圧力を減圧(たとえば、1〜5000Pa(パスカル))することができる。なお、図1の構成例では、上記の通り、減圧装置27はCVDチャンバー200にも接続されているので、当該減圧装置27により、当該CVDチャンバー200内部の圧力も、たとえば1〜5000Pa程度に減圧される。
【0060】
上記構成のプラズマ発生装置100において、二つのガス出力フランジ14b,14cを介して、絶縁筒部21の端部は、CVDチャンバー200の上面(被処理材18の処理面と対面する面)と接続される(図1参照)。つまり、ガス出力フランジ14b,14cは、絶縁筒部21の空洞部21AとCVDチャンバー200内との繋手となる。当該構成から分かるように、絶縁筒部21の空洞部21A内のガス等は、ガス出力フランジ14b,14cを介して、CVDチャンバー200内に供給可能である(当該ガスの流れは、減圧装置27の吸引力により、発生可能である)。
【0061】
CVDチャンバー200内部の反応室には、半導体ウェハーなどの被処理材18が載置される。CVDチャンバー200内で被処理材18は、絶縁筒部21の空洞部21A内から伝搬されたガスにより、晒される。これにより、被処理材18の表面に、所望の高機能膜を成膜することができる。
【0062】
また、CVDチャンバー200の側面部には、排気ガス出力口30が設けられており、当該排気ガス出力口30は、さらに、減圧装置27に接続されている。減圧装置27は、絶縁筒部21の空洞部21A内およびCVDチャンバー200内を減圧する。また、当該減圧の動作により、絶縁筒部21の空洞部21A→ガス出力フランジ14b,14c内→CVDチャンバー200内→排気ガス出力口30→減圧装置27という、ガスや粒子等の流れを発生させることもできる。
【0063】
また、図1に示すように、減圧装置27および自動圧力制御装置26は、排気ガス分解処理装置28に接続されている。したがって、減圧装置27および自動圧力制御装置26から出力されたガス等は、排気ガス分解処理装置28によって分解処理される。なお、当該分解処理されたガスは、処理ガス301として、排気ガス分解処理装置28から排気される。
【0064】
次に、プラズマ発生装置100の動作を含む本実施の形態に係るCVD装置300の動作について説明する。
【0065】
図1において、原料ガス用MFC24からは、プラズマ励起ガス用の原料ガスが出力され、サブガス用MFC25からは、希ガスが出力される。当該出力された原料ガスおよび希ガスは、原料ガス供給部20に入力する前に、合流し混合される。そして、当該混合された原料ガスおよび希ガスは、原料ガス供給部20から、プラズマ発生装置100の筺体16内部へと供給される。
【0066】
そして、当該供給された原料ガスおよび希ガスは、当該筺体16内に拡散する。当該筺体16内に拡散した原料ガス等は、平面視外形が円形である電極セルの外周方向から、各電極セルに形成された各放電空間6内に侵入する。
【0067】
一方、図2に示すように、各電極セルにおいて、高圧電極3と低圧電極1との間には、交流電源17による高周波の交流電圧が印加されている。電極1,3に対する当該交流電圧の印加により、各電極セルにおける各放電空間6内に、高周波プラズマから成る誘電体バリア放電(無声放電)が均一に発生する。
【0068】
誘電体バリア放電が発生している各放電空間6において、上記のように、電極セルの外周方向から原料ガス等が侵入する。すると、当該誘電体バリア放電により、各放電空間6内に侵入した原料ガスは励起され、プラズマ励起ガス(活性ガスまたはラジカルガス等とも称する)が生成される。
【0069】
さて、自動圧力制御装置26により、各放電空間6は一定の圧力Paに保持されており、他方で、真空ポンプ等の減圧装置27により、絶縁筒部21の空洞部21A内の圧力Pbは、放電空間6内の圧力Paよりも小さく設定されている(Pa>Pb)。
【0070】
このように、減圧装置27により空洞部21A内の圧力Pbが減圧されているので、絶縁筒部21の微細な噴出孔21xを介して、各放電空間6と空洞部21Aとの間に圧力差(Pa−Pb)が発生し、当該圧力差により、噴出孔21xを介した、放電空間6から空洞部21Aへのガスの噴出する流れを発生させることができる。したがって、各放電空間6で生成されたプラズマ励起ガスは、管路22および絶縁筒部21に穿設された複数の噴出孔21xを通って、絶縁筒部21の空洞部21Aに誘導することができる。
【0071】
つまり、平面視外形が円形である電極セルの外周部から放電空間6内に侵入した原料ガスは、当該電極セルの中心部へ向かって逆放射状に進み、当該進む間に、当該原料ガスからプラズマ励起ガスが生成され、当該生成されたプラズマ励起ガスは、減衰量を極力抑制した状態で、電極セルの中心部である絶縁筒部21の空洞部21A内に噴出され、空洞部21A内で合流される。
【0072】
ここで、絶縁筒部21の厚みの薄い壁に微細な噴出孔21xを設け、圧力差を設ける構成にすると、微細な噴出孔21xを通過するガスは、当該通過中において噴出孔21xの壁面と接触する時間が非常に短くなり、また当該通過中において噴出孔21x内でのガス同士の接触面積が極小に出来る。また、本発明では、噴出孔21xをノズル構成で、断熱膨張効果を利用して、ガスを空洞部21Aに噴出させている。したがって、噴出孔21x内の壁でのプラズマ励起ガスの各種衝突による減衰量や発熱による減衰量を極力抑制して、プラズマ励起ガスを空洞部21Aに導ける。
【0073】
また、空洞部21Aでは、CVDチャンバー200内で成膜処理を行うのに有効な真空度に減圧されている。よって、当該減圧された空洞部21Aにて、複数の噴出孔21xから噴出したプラズマ励起ガスが合流するため、合流による減衰量は、大気中での合流よりも、ガス粒子間衝突が非常に少なく押えられ、数段の減衰量の抑制が図れる。
【0074】
当該空洞部21A内で合流したプラズマ励起ガスは、減圧装置27による吸引力により、空洞部21Aおよびガス出力フランジ14b,14c内を通って、CVDチャンバー200内へと放出される。上記のように、CVDチャンバー200内には、被処理材18が載置されている。
【0075】
ここで、図1,2に示すプラズマ発生装置100は、「1.ドーナツ形状の電極セルにおける放電空間6内で」、「2.電極セルの積層構造で、多量のプラズマ励起ガスを発生させた上」、「3.微細のノズル構成にした複数の噴出孔21xでプラズマ励起ガスを空洞部21A内へ噴出させ」、「4.噴出させたプラズマ励起ガスを減圧された空洞部21A内で合流させる」構成を有しており、プラズマ励起ガスの減衰量を最大限、抑制している(つまり、高濃度かつ多量のプラズマ励起ガスが生成される)。よって、当該構成を有するプラズマ発生装置100では、CVDチャンバー200内に配置された当該被処理材18に対して、高濃度かつ多量のプラズマ励起ガスを供給することができる。当該プラズマ励起ガスの供給により、当該被処理材18に対して、原料ガスの種類に応じた所定の表面処理(成膜処理)が実施されることになる。
【0076】
たとえば、原料ガスとして、窒素ガスが採用された場合には、各放電空間6では窒素ラジカルが生成し、前駆体ガスが介在した窒化反応がなされ、被処理材18には窒化膜の高機能膜が成膜される。また、原料ガスとして、酸素ガスが採用された場合には、各放電空間6では酸素ラジカル(O原子等)が生成し、前駆体ガスが介在した酸化反応がなされ、被処理材18には酸化膜お高機能膜が成膜される。
【0077】
上記までの記載から分かるように、プラズマ発生装置100とCVDチャンバー200とにより、リモートプラズマ型成膜処理装置(リモートプラズマ型CVD装置)が構成されている。
【0078】
次に、本実施の形態に係る発明の効果を説明する。
【0079】
プラズマ励起ガスの寿命は、非常に短い場合が多い。したがって、プラズマ励起ガスを通常のガス配管に通して被処理体まで送ると、短時間および短い配管長であっても、プラズマ励起ガスが減衰してしまい、高濃度で多量のプラズマ励起ガスを被処理体まで導くことが非常に困難であった。つまり、従来の技術では、生成されたプラズマ励起ガスを効率的に取り出し、CVDチャンバーに供給する自身が困難である。
【0080】
そこで、本実施の形態では、平面視外形が円形である電極セルの外周部から原料ガスを取り込み、当該電極セルに交流電圧を印加し、ガス圧力0.03〜0.3MPa下での誘電体バリア放電により放電空間6において(さらに好ましくは、電極セルの積層構造を採用して)、高濃度で多量のプラズマ励起ガスを生成している。そして、微細のノズル構成にした複数の噴出孔21xを介して、放電空間6と空洞部21Aとの間で圧力差(Pa−Pb)を発生させ、当該圧力差により、電極セルの中心領域に存在する絶縁筒部21の空洞部21A内に、生成したプラズマ励起ガスを噴出させている。
【0081】
このように、プラズマ励起ガスの放電空間6内の移動距離を、電極セルの中心領域までと最短距離に設定されている。したがって、放電空間6で生成したプラズマ励起ガスは、減衰量が抑制された状態で、当該最短距離にて上記空洞部21A内に取り出すことでき、かつ、減衰発生の少ない減圧状態の空洞部21A内で合流される。よって、効率良く当該空洞部21A内に、プラズマ励起ガスを取り出すことができ、プラズマ発生装置100にCVDチャンバー200が取り付けられているCVD装置300においては、効率良くCVDチャンバー200内においてプラズマ励起ガスが供給される。
【0082】
さらに、プラズマ発生装置100では、上記圧力差(Pa−Pb)を利用してプラズマ励起ガスを、放電空間6から空洞部21Aに誘導している。したがって、放電空間6から空洞部21Aに至るまでの間に、当該プラズマ励起ガス同士の衝突を抑制し、かつ、壁等に当該プラズマ励起ガスが衝突することも抑制できる。よって、プラズマ励起ガスの各種衝突による減衰量を抑制することができ、より効率良く当該空洞部21A内にプラズマ励起ガスを取り出すことができる。
【0083】
また、本実施の形態に係る発明では、減圧装置27により、絶縁筒部21の空洞部21A内の圧力を、数千Pa以下に設定できる。したがって、当該空洞部21A内に噴出されたプラズマ励起ガスを、当該プラズマ励起ガス同士の衝突を抑制しつつ、CVDチャンバー200内に供給できる。よって、プラズマ励起ガス同士の衝突による減衰量を少なくでき、結果として、CVDチャンバー200内の被処理材18に晒さすプラズマ励起ガスを、高濃度および大流量に維持することができる。
【0084】
また、本実施の形態に係る発明では、高エネルギー密度の放電エネルギーを注入できる誘電体バリア放電を利用して、プラズマ励起ガスを生成している。ここで、放電空間6の圧力は、絶対圧30kPa以下の減圧状態での誘電体バリア放電では、ガス密度が低いため、高エネルギー密度の放電プラズマを安定に得ることが難しいことが分かっている。そこで、本実施の形態に係る発明では、絶対圧30kPa以下の減圧状態の空洞部21Aと放電空間6との間に、絶縁筒部21の噴出孔21xを介して、圧力差を持たせる構造にしている。したがって、本実施の形態に係る発明では、高エネルギー密度の放電エネルギーを注入できる絶対圧30kPa以上での誘電体バリア放電が可能となり、プラズマ発生装置100をコンパクト(簡易)にして、高濃度かつ多量のプラズマ励起ガスを発生できる。
【0085】
さらに、本実施の形態に係る発明では、誘電体バリア放電を発生させる電極セルを多段に積層した構成にし、かつ各電極セル内の放電空間6で発生したプラズマ励起ガスを、絶縁筒部21の噴出孔21xを介して、減圧状態である空洞部21Aに噴出させている。そして、減圧状態である空洞部21Aで、噴出したプラズマ励起ガスを合流させた後、CVDチャンバー200に向けて、当該合流したプラズマ励起ガスを導く構成を、本実施の形態に係る発明は採用している。したがって、減圧状態である空洞部21Aにおいて、プラズマ励起ガスを合流させ、プラズマ励起ガス量を高める構成が講じられているため、プラズマ励起ガスの各種衝突による減衰量を抑制して、より高濃度でかつ多量のプラズマ励起ガスをCVDチャンバー200に供給することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、絶縁筒部21には、小さな噴出孔21xが穿設されている。したがって、放電空間6で発生した荷電粒子(イオン、電子)を、絶縁筒部21の空洞部21A内に侵入することを抑制できる。
【0087】
また、本願発明では、リモートプラズマ型成膜処理装置を提供している。つまり、原料ガスからプラズマ励起ガスを生成するプラズマ発生装置100と、当該生成したプラズマ励起ガスを用いて被処理材18に対して成膜処理を行うCVDチャンバー200とは、別個独立の装置である。
【0088】
このように、プラズマ発生源と処理領域とは完全に分離しているので、プラズマ源において電離して生成したイオンや電子が、当該処理領域に配置された被処理材18に衝突することを防止できる。これにより、被処理材18に対するプラズマ(高エネルギーを有した電子やイオン)によるダメージを完全になくすことができる。さらに、CVDチャンバー200では、プラズマ発生装置100側で生成された高濃度でかつ多量のプラズマ励起ガスが供給され、プラズマCVD処理が実施されるので、被処理材18に対する成膜時間のさらなる短縮化を図ることもできる。
【0089】
また、本実施の形態に係るプラズマ発生装置100は、各放電空間6は、絶縁筒部21と各放電空間6の出口側端部との間に存在する管路22を介して、自動圧力制御装置26に接続されている。
【0090】
したがって、プラズマ発生装置100は、各放電空間6の圧力を、容易に一定値に管理。保持することができる。このように、プラズマ発生装置100は、放電空間6の圧力を所望圧力に管理出来る構成であるため、生成されるプラズマ励起ガスの発生性能が最適になるように、容易に管理・設定・維持することができる。また、プラズマ発生装置100では、各放電空間6内の圧力を一定にした状態で、より安定な誘電体バリア放電を発生させることができる。よって、各放電空間6において、励起準位が揃ったプラズマ励起ガスが生成される。これにより、CVDチャンバー200内の被処理材18において、より良質な機能膜が成膜される。
【0091】
また、本実施の形態に係るプラズマ発生装置100では、低圧電極1内には、温度調整された一定温度の冷媒が流れる流路が形成されている。
【0092】
したがって、誘電体バリア放電により電極セルで発生した熱を、当該冷媒を介して放熱することができ、低圧電極1自身を一定温度に容易に管理・保持できる。さらに、当該低圧電極1が一定温度に保持されることに起因して、各放電空間6内におけるガス温度も、ほぼ一定温度に容易に管理・保持することが可能となる。たとえば、各放電空間6内のガス温度は、プラズマ励起ガスの発生性能が最適になるように、管理・設定される。また、プラズマ発生装置100では、各放電空間6内のガス温度を一定にした状態で、誘電体バリア放電を発生させることができる(特に、低温にすると、高濃度のプラズマ励起ガスを発生させることができることが、実験により確認された)。また、ガス温度やガス圧等のプラズマ発生条件を一定にした各放電空間6においては、励起準位(エネルギー準位)が比較的揃ったプラズマ励起ガスが生成される。これにより、CVDチャンバー200内の被処理材18において、より良質な機能膜が成膜される。
【0093】
また、本実施の形態に係るプラズマ発生装置100では、原料ガス用MFC24のみならず、希ガスを出力するサブガス用MFC25をも備えている。そして、原料ガス供給部20から筺体16内に、原料ガスと希ガスとを混合して供給している。
【0094】
したがって、原料ガスとして種々の混合ガスを採用したとしても、誘電体バリア放電によるプラズマ励起ガスを効率良く生成できる効果があり、より多岐の機能物質粒子ガスを得ることが容易となる。また、希ガスも放電空間6を介して、空洞部21Aに誘導される。したがって、プラズマ励起ガスの移動経路において、プラズマ励起ガス同士の衝突による活性種の減衰が、希ガスによって抑制される。よって、CVDチャンバー200内に供給されるプラズマ励起ガスの濃度・ガス流量が高められる。つまり、プラズマ励起ガスを効率的に取り出すことができる。
【0095】
また、本実施の形態に係るプラズマ発生装置100では、電極セルは複数であり、各電極セルは、対面方向に積層している。そして、当該電極セルの積層により、当該電極セルの中心領域に、積層方向に延設した上記貫通連孔が構成されている。また、当該貫通連孔内には、当該積層方向に延請した上記絶縁筒部21が配置されている。
【0096】
したがって、複数の電極セルからプラズマ励起ガスを生成させることができ、当該生成したプラズマ励起ガスを、絶縁筒部21内の空洞部21Aで合流させることができる。よって、当該空洞部21Aにおいて、大流量のプラズマ励起ガスを取り出すことができるので、当該大流量のプラズマ励起ガスを被処理材18に晒すことが可能となる。なお、電極セルは図1,2の上下方向に積層されているので、プラズマ発生装置100の占有面積を増大させることなく、プラズマ励起ガスの生成量を大幅に増大させることができる。
【0097】
なお、絶縁筒部21の端部側において、シャワープレートを配設しても良い。より具体的には、CVDチャンバー200側に接続される、図1に示すガス出力フランジ14cとして、図3の拡大斜視図に示す構成のものを採用しても良い。
【0098】
図3に示すように、ガス出力フランジ14cは、シャワープレート14Sが設けられている。ここで、当該シャワープレート14Sには、複数の噴出孔14tが穿設されている。
【0099】
プラズマ発生装置100で発生したプラズマ励起ガスは、絶縁筒部21の空洞部21Aに噴出され、当該空洞部21Aおよびプラズマ発生装置100側のガス出力フランジ14bを通って、CVDチャンバー200側のガス出力フランジ14cに到達する。
【0100】
一方、当該ガス出力フランジ14c内には、シャワープレート14Sに隣接して、大容量のバッファ室が設けられている。つまり、図3において、バッファ室の上面がシャワープレート14Sとなる。
【0101】
当該ガス出力フランジ14cに到達したプラズマ励起ガスは、当該ガス出力フランジ14c内において一旦、大容量の当該バッファ室に充満する。そして、当該バッファ室から、シャワープレート14Sに設けられた複数の噴出孔14tを介して、プラズマ励起ガスは、CVDチャンバー200内に供給される。
【0102】
図3に示す構成のガス出力フランジ14cを採用することにより、シャワープレート14Sの各噴出孔14tからCVDチャンバー200内へ、均一に、プラズマ励起ガスを供給できる。したがって、CVDチャンバー200内に大面積の被処理材18を載置したとしても、当該大面積の被処理材18の表面に対して、均一に、プラズマ励起ガスを晒す(噴出する)ことができる。当該均一なプラズマ励起ガスの噴出により、大面積の被処理材18の表面には、均一で良質な膜が成膜される。
【符号の説明】
【0103】
1 低圧電極
1a,3a,5a 絶縁体
2a,2b 誘電体
3 高圧電極
4 絶縁板
5 高圧冷却板
6 放電空間
8 締め付け板
9 連結ブロック
PH 貫通口
14b,14c ガス出力フランジ
14S シャワープレート
14t 噴出孔
15 電気供給端子
16 筺体
17 交流電源
17a インバータ
17b 高圧トランス
18 被処理材
20 原料ガス供給部
21 絶縁筒部
21A 空洞部
21x 噴出孔
22 管路
24 原料ガス用MFC
25 サブガス用MFC
26 自動圧力制御装置
27 減圧装置
28 排気ガス分解処理装置
30 排気ガス出力口
100 プラズマ発生装置
200 CVDチャンバー
300 CVD装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極セルと、
前記電極セルに交流電圧を印加する電源部と、
前記電極セルを囲繞する筐体と、
前記筐体に形成され、前記筺体外部から前記筐体内における前記電極セルの外周部へと原料ガスを供給する原料ガス供給部とを、
備えており、
前記電極セルは、
第一の電極と、
放電空間を形成するように、前記第一の電極と対面している第二の電極と、
前記放電空間に面する前記第一の電極の主面および前記放電空間に面する前記第二の電極の主面の少なくとも何れか一方に配置される誘電体と、
平面視において中央部に形成され、前記第一の電極と前記第二の電極とが対面する対面方向に貫通している貫通口とを、
有しており、
円筒形状であり、前記貫通口の内部に配設されており、当該円筒形状の側面部に噴出孔を有する、絶縁筒部と、
前記絶縁筒部の空洞部内の圧力を減圧する、減圧装置とを、
さらに備えている、
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記放電空間の圧力を一定に保つ圧力制御装置を、
さらに備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記第二の電極内には、
冷媒が流れる流路が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記原料ガス供給部は、
前記原料ガスを希ガスと共に、供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記電極セルは、
複数であり、
各前記電極セルは、
前記対面方向に積層している、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記絶縁筒部の端部側に配設されるシャワープレートを、
さらに備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
プラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生装置に接続されるCVDチャンバーとを、
備えており、
前記プラズマ発生装置は、
電極セルと、
前記電極セルに交流電圧を印加する電源部と、
前記電極セルを囲繞する筐体と、
前記筐体に形成され、前記筺体外部から前記筐体内における前記電極セルの外周部へと原料ガスを供給する原料ガス供給部とを、
備えており、
前記電極セルは、
第一の電極と、
放電空間を形成するように、前記第一の電極と対面している第二の電極と、
前記放電空間に面する前記第一の電極の主面および前記放電空間に面する前記第二の電極の主面の少なくとも何れか一方に配置される誘電体と、
平面視において中央部に形成され、前記第一の電極と前記第二の電極とが対面する対面方向に貫通している貫通口とを、
有しており、
円筒形状であり、前記貫通口の内部に配設されており、当該円筒形状の側面部に噴出孔を有する、絶縁筒部と、
前記絶縁筒部の空洞部内の圧力を減圧する、減圧装置とを、
さらに備えており、
前記CVDチャンバーは、
前記絶縁筒部の端部側に接続されている、
ことを特徴とするCVD装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4474(P2013−4474A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137661(P2011−137661)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】