説明

プレート回転装置、排気路開閉度変更装置、被排気装置、搬送装置、ビーム装置、及び、ゲートバルブ

【課題】動体を筐体の内部に収納可能な機構を有するゲートバルブを提供すること。
【解決手段】ゲートバルブは、スライドプレートと、スライドプレートの径方向及び軸方向の位置を変化させる移動機構を備えている。シャフトは、軸方向駆動機構により軸方向の移動量が制御され、径方向駆動機構により回転角が制御される回転軸であり、磁気軸受、及び円錐コイルばねからなる軸支持ばねにより筐体内に回動可能に支持されている。電磁石におけるバランスウェイトの吸引力を制御することにより、シャフトを径方向に移動させることができる。また、電磁石における電磁石ターゲットの吸引力を制御することにより、シャフトを軸方向に移動させることができる。気体の流路を閉じる場合には、スライドプレートを、流出孔を完全に覆う位置に移動させた後、軸方向駆動機構を作動させてスライドプレートをOリングと密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回転軸の回転によりプレートの位置を変化させる技術を用いた、プレート回転装置、排気路開閉度変更装置、被排気装置、搬送装置、ビーム装置、及び、ゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置では、プロセスチャンバーなどの真空容器の排気処理をターボ分子ポンプなどの真空ポンプを用いて行う。
真空ポンプの吸気口は、気体の流路の開閉を行うゲートバルブを介して、真空容器の排気口に接続されている。
ゲートバルブは、気体の流路の開閉処理だけでなく、気体の流路の開口度を調整することによって、排気されるガス(気体)のコンダクタンスを制御する働きを有している。
真空装置で用いられるゲートバルブとしては、下記の特許文献で提案されているような、バルブプレートを摺動させて気体の流路の開口面積を変化させるスライドバルブが知られている。
【0003】
特許文献1には、先端にスライドプレートが設けられたハンドルを、サーボモータの作用で回転駆動するシャフトに固定し、このシャフトの回転角によって開口領域に対するスライドプレートの位置、即ち、気体の流路の開口度を調整するスライドバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−178000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されているスライドバルブにおいては、スライドプレートの駆動機構や開閉処理機構が非常に複雑な構造となっている。また、スライドプレートを駆動させるためのサーボモータが、ハウジング(筐体)の外部、即ち大気領域に配設されている。
そのため、シャフトが真空領域と大気領域に渡って存在するため、境界部に真空シール機構を設ける必要がある。
真空シール機構としては、例えば、真空グリスやOリング、ベローズが用いられている。
しかしながら、真空グリスを用いた場合は、そこから蒸気圧が発生するおそれがあり、Oリングを用いた場合には、シャフトとの摩擦によって塵(ゴミ)が発生するおそれがある。また、真空グリスやOリングによる真空シール機構は、高い真空精度を維持する上で、十分な信頼性を有するものではない。
ベローズは、高い真空シール機能を有するものの、対象物がシャフトのような動体(可動体)である場合には、その耐久性に関する寿命が期待できない。
【0006】
そこで本発明は、簡単な構造で開閉処理を行う機構を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、動体を筐体の内部に収納可能な機構を有するゲートバルブを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、磁極を有する回転体と、前記回転体を回転可能に支持する回転支持手段と、前記磁極に磁力を作用させる電磁石と、前記回転体に固定され、前記回転体の回転により移動するプレートと、前記電磁石の励磁制御を行うことにより前記回転体の回転角を調整する制御手段と、
を備えたことを特徴とするプレート回転装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記回転体の回転角を検出する位置検出手段を備え、前記励磁制御は、前記位置検出手段により検出された回転角に基づいて、前記電磁石の巻線の電流値を制御することを特徴とする請求項1に記載のプレート回転装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記電磁石は、複数設けられ、前記励磁制御は、前記複数の電磁石から少なくとも1の電磁石を選択し、該選択された電磁石の巻線に電流を供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレート回転装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記電磁石は、前記回転体を介して対峙するように対で設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプレート回転装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、前記電磁石は、配置位置の調整が可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置を提供する。
請求項6に記載の発明では、被排気室の排気経路に設けられる排気路開閉度変更装置であって、請求項1から請求項5のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置を備え、前記プレートは、その移動経路が、前記排気経路と交わるように配置され、前記制御手段は、前記回転体の回転角を調整することにより、前記排気経路の開閉度を制御することを特徴とする排気路開閉度変更装置を提供する。
請求項7に記載の発明では、被排気室から気体を排気する真空ポンプと、前記被排気室の排気経路に設けられた、請求項6に記載の排気路開閉度変更装置、及び、前記被排気室内の水蒸気を排気する水蒸気排出ポンプと、前記真空ポンプ、前記排気路開閉度変更装置、及び前記水蒸気排出ポンプを一元管理する制御ユニットと、を備えたことを特徴とする被排気装置を提供する。
請求項8に記載の発明では、被排気室と、前記被排気室から気体を排気する真空ポンプと、前記被排気室の排気経路に配置された、請求項6に記載の排気路開閉度変更装置と、前記被排気室内の気体の圧力を検出する圧力検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記圧力検出手段により検出された気体の圧力に基づいて、前記排気路開閉度変更装置における前記排気経路の開閉度を調整することを特徴とする被排気装置を提供する。
請求項9に記載の発明では、被搬送部材を搬送する搬送装置であって、請求項1から請求項5のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置を備え、前記被搬送部材は、前記プレートに載置され、前記制御手段は、前記回転体の回転角を調整することにより、前記プレートを搬送先まで移動させることを特徴とする搬送装置を提供する。
請求項10に記載の発明では、ビームをターゲットに向けて照射する照射手段を有するビーム装置であって、請求項1から請求項5のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置を備え、前記プレートは、その主面が前記ビームの照射経路と交わるように配置され、前記制御手段は、前記回転体の回転角を調整することにより、前記プレートにより遮られる前記ビームの量を変化させ、前記ターゲットに照射される前記ビームの照射面積を制御することを特徴とするビーム装置を提供する。
前記第2の目的を達成するために、請求項11に記載の発明では、真空ポンプの吸気口の上流に設けられ、前記真空ポンプに流入する気体の流路の開閉を行うゲートバルブであって、気体の流路を形成する開口部を有する筐体と、前記筐体内に収納される回転軸と、前記回転軸を前記筐体内で支持するばねと、前記回転軸に対して固定され、前記回転軸の回転角により気体の流路の開口面積を決定するスライドプレートと、前記回転軸を回転駆動するアクチュエータと、を備えたことを特徴とするゲートバルブを提供する。
請求項12に記載の発明では、前記ばねは、円錐コイルばねであることを特徴とする請求項11に記載のゲートバルブを提供する。
請求項13に記載の発明では、前記回転軸は、前記ばねと、磁気軸受によって支持されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のゲートバルブを提供する。
請求項14に記載の発明では、前記アクチュエータは、電磁石で得られる動力を利用するソレノイドアクチュエータで構成されていることを特徴とする請求項11、請求項12又は請求項13に記載のゲートバルブを提供する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、回転軸に磁極を設け、その磁極を電磁石で吸引することにより、回転軸の回転角、即ち、プレートの位置を制御することができる。
また、請求項11に記載の発明によれば、ばねを用いることにより、バルブの開閉処理時に駆動する動体を筐体内に容易に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は第1実施形態に係るスライド式のゲートバルブの概略構成を示した図であり、(b)は気体の流路を閉じた状態におけるゲートバルブの様子を示した図である。
【図2】(a)は気体の流路の全開状態を示した図であり、(b)は気体の流路の半開状態を示した図であり、(c)は気体の流路の全閉状態を示した図である。
【図3】(a)は、シャフトに作用する力の様子を示した図であり、(b)はシャフトに作用する力とシャフトの軸方向の変位との関係を示したグラフである。
【図4】(a)はシャフトの径方向の位置の設定方法を説明するための図であり、(b)はシャフトの径方向の位置の設定方法の変形例を示した図である。
【図5】シャフトの径方向の位置の設定方法の他の変形例を示した図である。
【図6】シャフトの径方向の位置の設定方法の他の変形例を示した図である。
【図7】シャフトの支持方法の変形例を示した図である。
【図8】シャフトの支持方法の他の変形例を示した図である。
【図9】気体の流路の開口面積の調整方法の変形例を示した図である。
【図10】第2の実施形態に係るスライド式のゲートバルブの概略構成を示した図である。
【図11】(a)は第2の実施形態に係るゲートバルブにおけるシャフトの径方向駆動機構の概略構成を示した図であり、(b)は電磁石の位置を変更するための調整機構の概略構成を示した図である。
【図12】(a)はシャフトの径方向の位置の設定方法の変形例を示した図であり、(b)は永久磁石の磁極の位置を検出する位置センサを備えたゲートバルブの概略構成を示した図である。
【図13】真空システムの一例を示した図である。
【図14】排気システムの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1〜図14を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1(a)は、第1の実施形態に係るスライド式のゲートバルブ1の概略構成を示した図である。
図1(a)に示すように、ゲートバルブ1は、真空容器2の排気口と真空ポンプ3の間に配設され、真空容器2から真空ポンプ3へ流れる気体の流路の開閉を行う開閉弁である。
なお、真空容器2は、例えば、半導体製造装置で使用されるプロセス室により構成され、真空ポンプ3は、真空容器2の排気を行う、例えば、ターボ分子ポンプにより構成されている。
また、ゲートバルブ1は、気体の流路の開口面積を変化させることによって、気体のコンダクタンスを調整することができるように構成されている。つまり、ゲートバルブ1は、開閉弁としてだけではなく、コンダクタンスバルブとしての機能も有している。
【0011】
ゲートバルブ1は、例えば、アルミニウムなど非磁性の金属により形成された筐体10を備えている。
筐体10には、円形の気体の流入孔11と流出孔12が、対向する位置に形成されている。流入孔11は、気体の流路の上流側に設けられ、真空容器2の排気口は、この流入孔11と連接(連通)するよう固定されている。また、流出孔12は、気体の流路の下流側に設けられ、真空ポンプ3の吸気口は、この流出孔12と連接(連通)するよう固定されている。
【0012】
ゲートバルブ1は、スライドプレート(シャッター)13と、このスライドプレート13の径方向及び軸方向の位置を変化させる移動機構(シャッター駆動機構)を備えている。
スライドプレート13は、気体の流路、詳しくは、流出孔12の開口部の開閉を行う弁体として機能する金属製の円板であり、流入孔11や流出孔12の開口面に対して平行となる向きに筐体10の内部に収納されている。
ゲートバルブ1は、スライドプレート13の移動機構として、アーム14、シャフト15、バランスウェイト16、磁気軸受17、軸支持ばね18、軸方向駆動機構19、電磁石20を備えている。
【0013】
アーム14は、長方形の板状部材であり、一端がシャフト15に固定され、他端にスライドプレート13が取り付けられ(固定され)ている。
また、スライドプレート13とアーム14は、一体の部材で形成(一体形成)するようにしてもよい。
シャフト15は、軸方向駆動機構19により軸方向の移動量が制御され、また、径方向駆動機構(電磁石20とバランスウェイト16)により回転角が制御される回転軸(可動体)である。
シャフト15は、磁気軸受17及び軸支持ばね18により筐体10内に回動可能に支持されている。
なお、シャフト15は、支持軸として機能する。
磁気軸受17は、シャフト15に設けられた複数の可動側永久磁石17aと、筐体10に対して固定され、シャフト15の周囲に配設された複数の固定側永久磁石17bとにより構成された反発型受動磁気軸受装置である。磁気軸受17は、対向する可動側永久磁石17aと固定側永久磁石17bの反発力を利用してシャフト15を支持する。
【0014】
軸支持ばね18は、帯状の板又はコイルを渦巻(ぜんまい)状に巻き、円錐状に成形した渦巻ばね(円錐コイルばね)である。軸支持ばね18は、例えば、ばね鋼、ピアノ線、りん青銅などの金属部材により形成されている。
軸支持ばね18は、ばねの中心端がシャフト15に固定され、外周端が筐体10側に固定されている。
但し、第1の実施形態では、シャフト15の軸方向の位置設定を行う軸方向位置決め機構21が設けられているため、この軸方向位置決め機構21を介して軸支持ばね18は、固定側に取り付けられている。
軸支持ばね18は、軸方向の位置を制御するスプリングばねとして機能する。
バランスウェイト16は、スライドプレート13の重量に対するバランス(釣り合い)を取るための錘であり、シャフト15におけるアーム14の延長上に(スライドプレート13の軸対象位置に)固定されている。
バランスウェイト16は、磁石に吸引される部材(例えば鉄など)によって構成されており、シャフト15の回転角の制御(径方向の移動量の制御)を行う際には、径方向駆動機構を構成する電磁石20のターゲット部(電磁石ターゲット)として機能する。
【0015】
シャフト15の径方向駆動機構は、バランスウェイト16の上下方向(真空容器2側と真空ポンプ3側)に設けられた電磁石20と、電磁石ターゲットとして機能するバランスウェイト16によって構成されている。
なお、シャフト15の径方向駆動機構は、電磁石で得られる動力を利用するソレノイドアクチュエータとして機能する。
第1の実施形態では、一対の電磁石20が、バランスウェイト16を介して対向するように配設されている。
電磁石20におけるバランスウェイト16の吸引力を制御することにより、シャフト15を径方向に移動(回動)させることができる。
軸方向駆動機構19は、シャフト15の下端部(真空ポンプ3側の端部)に設けられた板状の電磁石ターゲット19aと、この電磁石ターゲット19aと対向する位置に配設された電磁石19bによって構成されている。
電磁石19bにおける電磁石ターゲット19aの吸引力を制御することにより、シャフト15を軸方向に移動させることができる。
【0016】
ゲートバルブ1には、軸方向位置決め機構21、ベローズ22が設けられている。
軸方向位置決め機構21は、筐体10に対して固定された装置であり、シャフト15の軸方向の基準位置の初期設定を行う装置である。そのため、軸方向位置決め機構21は、基本的にゲートバルブ1の稼働中は動作せず、筐体10に対して固定された状態にある。
軸方向位置決め機構21は、外部からの調整を容易にするために、装置の一部が筐体10の外部に設けられている。そのため、筐体10の内部と外部、即ち、真空領域と大気領域との境界部に真空シール機構として機能するベローズ22が設けられている。
なお、上述したように、軸方向位置決め機構21は、基本的に固定された状態にあるため、ベローズ22における寿命が期待できる。つまり、ベローズ22のシール対象物が固定体であるため高い耐久性を長期間維持することができる。
【0017】
なお、軸支持ばね18のみで十分にシャフト15の軸方向の位置精度が維持できる場合には、軸方向位置決め機構21を用いずに、直接、軸支持ばね18を筐体10内に固定するようにしてもよい。この場合、真空領域と大気領域とに渡って配設される部材が存在しないため、簡単なシール構造によって真空精度を保つことができる。
第1の実施形態では、真空領域内に配設した場合蒸気圧を発生する可能性を有する電磁石(電磁石19b、20等)を全て大気領域、即ち筐体10の外部に配設するように構成されている。
【0018】
また、ゲートバルブ1には、Oリング23が設けられている。
Oリング23は、筐体10の内側面における流出孔12の外側の領域に、その周方向に沿って連続して形成された嵌め込み溝に装着された環状のシール部材である。
Oリング23は、気体の流路を閉じる際に、スライドプレート13に押しつぶされることによって、流出孔12を密封(シール)する機能を有する。
つまり、スライドプレート13をシャフト15の軸方向に向かって移動させることにより簡易シール機構を実現させることができる。
なお、本実施形態では、Oリング23をゲートバルブ1の筐体に設けられているが、Oリング23の配設位置はこれに限定されるものではない。例えば、Oリング23をスライドプレート13の下面(真空ポンプ3側面)に設けるようにしても、同様のシール効果を得ることができる。
【0019】
図1(b)は、気体の流路を閉じた状態におけるゲートバルブ1の様子を示した図である。
ゲートバルブ1によって気体の流路を閉じる(完全に密閉する)場合には、スライドプレート13を、流出孔12を完全に覆う位置に移動させた後、軸方向駆動機構19を作動させる。詳しくは、電磁石19bで電磁石ターゲット19aを吸引させて、シャフト15を軸線下向きに移動させる。
すると、図1(b)に示すように、スライドプレート13が真空ポンプ3方向(流出孔12方向)に移動し、Oリング23と密着する。
このようにして、スライドプレート13によって、気体の流路(流出孔12)が閉じられる。
なお、気体の流路の開閉は、上述した方法に限定されるものではない。例えば、スライドプレート13を真空容器2側に移動させて、流入孔11を開閉させるように構成してもよい。この場合は、軸方向駆動機構19と同様のスライドプレート13の駆動機構を真空容器2側に設ける。シール用のOリング23もまた、筐体10の真空容器2側、又は、スライドプレート13の上面(真空容器2側面)に設けるようにする。
また、スライドプレート13により開閉される開口部を、流入孔11及び流出孔12のいずれかを任意に選択できるように構成してもよい。この場合には、流入孔11及び流出孔12双方の開閉機構、シール機構を予め設けておく。
【0020】
次に、スライドプレート13と流出孔12の位置関係について説明する。
図2(a)は、気体の流路の全開状態を示した図である。
図2(a)に示すように、気体の流路を全開状態にする場合には、スライドプレート13を流出孔12と重ならない位置まで移動させる。
図2(b)は、気体の流路の半開状態を示した図である。
図2(b)に示すように、スライドプレート13を流出孔12と重なる位置において流出孔12の開口面積(開度)を調整することによって、気体のコンダクタンスを制御することができる。
なお、スライドプレート13における、流出孔12の全閉位置と全開位置との中間位置の制御は、所定の制御装置において、真空容器2内で必要とする圧力に合わせた開口位置をフィードバックすることにより行う。即ち、当該真空システムは、APC(オートマティック・プレッシャー・コントロール)機能を備えている。
図2(c)は、気体の流路の全閉状態を示した図である。
図2(c)に示すように、気体の流路を全閉状態にする場合には、スライドプレート13を流出孔12と完全に重なり合う位置まで移動させる。
【0021】
なお、図2(c)に示すように、気体の流路を全閉状態にする場合には、スライドプレート13を移動させた後、図1(b)に示すように、スライドプレート13をさらに真空ポンプ3(流出孔12)方向に移動させ、Oリング23によって気体の流路を密封(シール)する。
図2に示すように、ゲートバルブ1では、スライドプレート13の径方向の位置を制御することによって気体の流路の開度を調整するように構成されている。
スライドプレート13の位置制御は、シャフト15の回転角を制御することによって行われる。シャフト15の回転角の制御方法については、後述する。
【0022】
次に、磁気軸受17及び軸支持ばね18により支持されるシャフト15の軸方向の位置について説明する。
なお、ここでは、図1(b)に示すような、軸方向駆動機構19を駆動させてスライドプレート13を流出孔12に押しつけた状態ではなく、気体の流路の全開時又は半開時、スライドプレート13の開閉動作時(移動時)におけるシャフト15の軸方向の位置について説明する。
図3(a)は、シャフト15に作用する力の様子を示した図である。
図3(a)に示すように、磁気軸受17及び軸支持ばね18により支持されるシャフト15には、磁気軸受17における可動側永久磁石17aのS極と固定側永久磁石17bのS極との反発力Fkuが、軸支持ばね18の配設方向に働く。
また、シャフト15には、軸支持ばね18の復元力Fksがシャフト15の配設方向に働く。
【0023】
図3(b)は、シャフト15に作用する力とシャフト15の軸方向の変位との関係を示したグラフである。
図3(b)に示すように、シャフト15は、磁気軸受17の反発力Fkuと軸支持ばね18の復元力Fksが等しくなる(釣り合う)状態における変位、つまりシャフト15の軸方向の安定化位置に設定される。
第1の実施形態では、スライドプレート13が流入孔11と流出孔12との中間近傍に配設される位置に、シャフト15の軸方向の安定化位置が設定されるように、磁気軸受17の磁力や軸支持ばね18のばね定数が設定されている。
つまり、安定化位置では、電磁石19bに通電しない(軸方向駆動機構19を動作させない)。
安定化位置のばらつきを許容範囲にすることが困難である場合には、軸方向位置決め機構21を利用してシャフト15の軸方向の位置を設定するようにしてもよい。
【0024】
続いて、スライドプレート13の位置を設定するためのシャフト15の回転角の制御方法、即ち、シャフト15における径方向の位置の設定方法について説明する。
第1の実施形態では、シャフト15に対して径方向に力が働いていない(径方向駆動機構が作用していない)状態に、即ち、軸支持ばね18に巻き方向の負荷力(荷重)が作用していない自然長の状態の基準角(回転角=0°)において、スライドプレート13が図2(c)に示す気体の流路の全閉状態の位置に配設されるように設定されている。
つまり、第1の実施形態では、径方向駆動機構を駆動させることによって、気体の流路の開度を設定するように構成されている。
【0025】
図4(a)は、シャフト15の径方向の位置の設定方法を説明するための図である。
なお、図4(a)は、シャフト15を図1(a)に示すゲートバルブ1の上方、即ち、真空容器2側からみた平面図を示す。
例えば、ゲートバルブ1において、スライドプレート13を全閉位置から半開位置又は全開位置まで移動させる場合、径方向駆動機構を駆動しシャフト15を回転させる。
詳しくは、電磁石20に電流を供給し、電磁石20のターゲット部(電磁石ターゲット)として機能するバランスウェイト16を吸引する力、即ち、電磁石20の引っ張り力Fkcを電磁石20方向に作用させて、シャフト15を電磁石20方向に回転させる。
すると、シャフト15には、シャフト15を支持する軸支持ばね18により、シャフト15の回転により巻き上げられたコイルを元の位置に戻そうとする復元力Fksrが、電磁石20の引っ張り力Fkcと反対方向に作用する。
【0026】
このように、径方向駆動機構を駆動させると、シャフト15には、それぞれ反対方向に、引っ張り力Fkcと復元力Fksrが作用する。
そして、シャフト15の回転角(アーム14の回転角)、即ちスライドプレート13の径方向の移動位置は、引っ張り力Fkcと復元力Fksrの釣り合い(合力)によって決定(設定)される。
なお、第1の実施形態では、バランスウェイト16の中心と電磁石20の中心とが重なり合う(軸線方向に並ぶ)位置において、スライドプレート13が図2(a)に示す気体の流路の全開位置となるように、電磁石20の配設位置が設定されている。
つまり、軸支持ばね18の復元力Fksrが無視できる程度の電磁石20の引っ張り力Fkcが作用すると、スライドプレート13が全開位置に配設されるように構成されている。
【0027】
また、第1の実施形態では、径方向駆動機構の駆動処理、即ち、電磁石20への電流供給を停止すると、復元力Fksrの作用により、スライドプレート13を半開位置又は全開位置から全閉位置まで自動的に戻すことができる。
なお、実際には、径方向の駆動機構の安定性(不安定性)を考慮して、設計(軸支持ばね18のばね定数の設定など)を行う。
このように、第1の実施形態によれば、軸支持ばね18の復元力Fksrを利用することによって、容易にスライドプレート13を基準位置(全閉位置)にまで戻すことができる。
【0028】
上述したシャフト15の径方向の位置の設定方法では、図4(a)に示すように、一対の電磁石20を用いた場合における設定方法について説明した。しかしながら、シャフト15の径方向の位置の設定方法はこれに限定されるものではない。
図4(b)は、シャフト15の径方向の位置の設定方法の変形例を示した図である。
例えば、図4(b)に示すように、さらにもう一対の電磁石120を設け、電磁石20、及び電磁石120を用いてシャフト15の径方向の位置設定を行うようにしてもよい。
詳しくは、バランスウェイト16の中心と電磁石120の中心とが重なり合う(軸線方向に並ぶ)位置において、スライドプレート13が図2(c)に示す気体の流路の全閉位置となるように、電磁石120を配設する。
なお、電磁石120は、電磁石20と同様に、バランスウェイト16を介して対向するように配設されている。
【0029】
そして、ゲートバルブ1を全開状態にする場合には、軸支持ばね18の復元力Fksrが無視できる程度の電磁石20の引っ張り力Fkcaを作用させる電流を電磁石20に供給する。
一方、ゲートバルブ1を全閉状態にする場合には、電磁石20への電流供給を停止し、電磁石120への電流供給を開始する。するとバランスウェイト16が電磁石120に吸引されることによって、つまり、電磁石120の引っ張り力Fkcbを作用させることによって、シャフト15(アーム14)は速やかに基準角(回転角=0°)まで戻される。
このように電磁石120を設けることにより、経年劣化や製造精度などにより軸支持ばね18に誤差(位置ずれ誤差、変形誤差など)が生じた場合であっても、シャフト15を適切な基準角(基準位置)にまで、より短時間で戻すことができる。
【0030】
また、図2(b)に示すような気体の流路の半開状態の位置にスライドプレート13を移動させることによって、気体のコンダクタンスを調整(制御)する場合には、電磁石20及び電磁石120双方に調整用電流を供給する。
すると、スライドプレート13は、調整用電流の値に対応した位置、即ち、電磁石20の引っ張り力Fkca、電磁石120の引っ張り力Fkcb、及び軸支持ばね18の復元力Fksrの釣り合い(合力)によって決定(設定)される位置に移動する。
なお、軸支持ばね18の復元力Fksrを無視できる程度に、電磁石20及び電磁石120の出力を十分に大きな値とすることにより、調整用電流のバランスを考慮するだけで容易にシャフト15の回転角の設定を行うことができる。
このように電磁石120を設けることにより、精度の高いコンダクタンス制御(スライドプレート13の位置制御)を行うことができる。
【0031】
図5は、シャフト15の径方向の位置の設定方法の他の変形例を示した図である。
また、ゲートバルブ1において単純な気体の流路の開閉動作のみを行う場合には、図5に示すように、例えば、バランスウェイト16の外側端に永久磁石161を設け(又はバランスウェイト16を永久磁石で構成し)、さらにバランスウェイト16の外部に永久磁石162、163を配設する。
永久磁石162は、ゲートバルブ1の閉状態におけるバランスウェイト16の回転角の延長上に配設し、永久磁石163は、開状態におけるバランスウェイト16の回転角の延長上に配設する。
永久磁石161は、ラジアル方向(放射方向)に沿って磁極(S極/N極)が連接(隣接)する向きに配設する。
永久磁石162、163もまたラジアル方向(放射方向)に沿って磁極(S極/N極)が連接(隣接)する向きに配設する。永久磁石162、163は、その磁極の向きが180°反転可能な可動体であり、その向きは、気体の流路の開閉動作を行う際に変化するように構成されている。
【0032】
そして、ゲートバルブ1を開状態とする場合、図5(a)に示すように、永久磁石163は、バランスウェイト16の永久磁石161を吸引する向きに設定され、一方、永久磁石162は、バランスウェイト16の永久磁石161と反発する向きに設定される。
これにより、バランスウェイト16の永久磁石161が永久磁石163に吸引されることにより、スライドプレート13が速やかに全閉位置に移動する。
また、ゲートバルブ1を閉状態とする場合、図5(b)に示すように、永久磁石162は、バランスウェイト16の永久磁石161を吸引する向きに設定され、一方、永久磁石163は、バランスウェイト16の永久磁石161と反発する向きに設定される。
これにより、バランスウェイト16の永久磁石161が永久磁石162に吸引されることにより、スライドプレート13が速やかに全開位置に移動する。
また、永久磁石162、163を反転する代わりに、電磁石として電流を反転させても同様の動作が可能である。
【0033】
図6は、シャフト15の径方向の位置の設定方法の他の変形例を示した図である。
その他、スライドプレート13の位置制御の精度をより向上させるために、図6に示すように複数の巻線(コイル101〜105)を配設し、そして、電流を流す巻線を変化させることによってシャフト15の回転角を制御するようにしてもよい。
例えば、図6(a)に示す位置にシャフト15の回転角を設定する場合には、コイル101に電流を供給してバランスウェイト16を吸引し、図6(b)に示す位置にシャフト15の回転角を設定する場合には、コイル105に電流を供給してバランスウェイト16を吸引する。
また、例えば、コイル101とコイル102との中間にバランスウェイト16を移動させる場合には、コイル101とコイル102の双方に電流を供給し、吸引力がコイル101とコイル102との中間位置で釣り合うように制御する。
なお、図6に示す変形例では、5つの巻線(コイル101〜105)を用いた場合について説明したが、配置する巻線の数は、要求されるスライドプレート13の位置精度に応じて変更することができる。
【0034】
上述した実施形態では、シャフト15は、磁気軸受17及び軸支持ばね18により筐体10内に回動可能に支持するように構成されているが、シャフト15の支持方法はこれに限定されるものではない。
図7は、シャフト15の支持方法の変形例を示した図である。
例えば、図7(a)に示すように、シャフト15の両端に設けられた軸支持ばね18及び軸支持ばね118によりシャフト15を筐体10内に回動可能に支持するように構成してもよい。
軸支持ばね118は、軸支持ばね18と同様に形成され、ばねの中心端がシャフト15に固定され、外周端が筐体10に固定されている。
このようにシャフト15を支持する場合、ラジアル荷重も軸支持ばね18、118で支えなければならない。そのため、軸支持ばね18、118は、ラジアル荷重を支持可能な程度の剛性を有するように構成する。
【0035】
図7(a)、(b)の変形例に示すゲートバルブ1では、シャフト15の両軸端に軸支持ばね18、118を設け、軸支持ばね18、118の径方向の求心機能と上下方向の求心機能の両方の機能を積極的に利用するように構成されている。
このように、シャフト15を軸支持ばね18、118により筐体10内に支持することにより、シャフト15の支持機構の簡素化(簡単化)を図ることができる。
なお、軸支持ばね18、118のみで十分にシャフト15の軸方向の位置精度が維持できる場合には、軸方向位置決め機構21を用いずに、直接、軸支持ばね18を筐体10内に固定するようにしてもよい。
また、図7(a)に示す変形例では、軸方向位置決め機構21と軸支持ばね18の外周端とを固定しているが、軸方向位置決め機構21の配設位置はこれに限定されるものではない。
軸方向位置決め機構21を、例えば、図7(b)に示すように、軸支持ばね118側に配設するようにしてもよい。
【0036】
図8は、シャフト15の支持方法の他の変形例を示した図である。
例えば、シャフト15の軸方向の支持にピボット軸受を用い、また、シャフト15の回転方向の復元用に平型のゼンマイバネ130を用いるようにしてもよい。
詳しくは、図8に示すように、シャフト15の端部にピボット軸41を設け、また、軸支持ばね119の端部に受け部42を設ける。
ピボット軸受は、先端に丸みの付いたピボット軸41と球形のくぼみをもつ受け部42から構成される軸受である。
ここでは、図8に示すように、軸支持ばね119を軸方向位置決め機構21とピボット軸受の受け部42との間に配置する。即ち、軸支持ばね119は、ピボット軸受を介してシャフト15を支持するように構成されている。
なお、ゼンマイバネ130は、シャフト15上に配置され、シャフト15が回転した時に復元力Fksrを発生するように構成されている。
【0037】
図8に示す変形例では、円錐コイルばねではなく、シャフト15の軸方向の復元力Fksのみを作用させる単純なコイルばねからなる軸支持ばね119を用いて、シャフト15を支持する。
なお、この変形例に示すような、回転方向の復元力Fksrを作用させるゼンマイバネ130を別途設ける構成は、軸方向の復元力Fksに関係なく回転方向の復元力Fksrを設定する場合に有効である。
ここでは、図8に示すように、磁気軸受17の反発力Fkuが軸支持ばね119の配設方向に働くように磁気軸受17が配置されている。
また、軸支持ばね119は、軸支持ばね119の軸方向の復元力Fksがシャフト15方向に働くように設けられている。つまり、ここでは、軸支持ばね119の圧縮力を利用して受け部42(ピボット軸受)を支持するように構成されている。
このように、点接触が可能なピボット軸受を用いることにより、シャフト15を容易に回転自在に支持することができる。
【0038】
また、第1の実施形態では、シャフト15の軸線と直行する向き、即ち、シャフト15の軸線を鉛直方向とした場合の水平方向にスライドプレート13を流出孔12に対してスライドさせることによって気体の流路の開口面積の調整を行うように構成されている。しかしながら、気体の流路の開口面積の調整方法はこれに限定されるものではない。
図9は、気体の流路の開口面積の調整方法の変形例を示した図である。
例えば、図9に示すように、スライドプレート13をシャフト15の軸方向に沿って平行移動させることによって、気体の流路の開口面積(開口度)を調整するようにしてもよい。
【0039】
詳しくは、図9(a)に示すように、スライドプレート13を流出孔12方向に移動させ、Oリング23に押しつけ気体の流路を密閉する。
また、図9(b)に示すように、スライドプレート13を流出孔12と反対方向に移動させることによって、気体の流路を開放する。
また、第1の実施形態では、筐体10’における流出孔12の外周壁部を、図9に示すように、流出孔12に向かって厚みが減少するように断面をくさび形に形成することによって、気体の流路の開口度の微調整を行うことができるように構成されている。
スライドプレート13をシャフト15の軸線方向に移動させることによって気体の流路を開閉する場合は、軸方向駆動機構19を用いて行い、径方向駆動機構は設けない。
なお、このような開閉構造を用いる場合には、シャフト15の軸方向の可動範囲を広げることによって、気体の流路の開口度制御の精度を向上させることができる。
【0040】
第1の実施形態によれば、Oリングやベローズをスライドプレート13の駆動力伝達に用いないように構成することにより、従来のように駆動部材を導入するための真空シール機構を排除することができる。これにより、機械的に摩耗、接触する部品(部材)に起因する耐久性の劣化や製品寿命の短縮化を適切に抑制することができる。
また、第1の実施形態では、グリスの塗布が必要とされる構造を用いないことにより、グリスから発生する蒸気圧に起因する不具合を解消することができる。
第1の実施形態によれば、ゲートバルブ1を単純な機構(例えば、簡易アクチュエータや簡易シール機構)で構成することができるため、製造コストの低減化を図ることができる。
【0041】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態及び各変形例では、バランスウェイト16やバランスウェイト16に配設された磁石を、吸引動作のターゲット部として機能させた径方向駆動機構について説明した。しかしながら、バルブの径方向駆動機構におけるターゲット部の配置方法は、これに限定されるものではない。
そこで、第2の実施形態では、径方向駆動機構における吸引動作のターゲット部を、シャフト15の軸線方向の中間に設けたスライド式のゲートバルブ1’について説明する。
図10は、第2の実施形態に係るスライド式のゲートバルブ1’の概略構成を示した図である。
なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態及び変形例と重複する部分(例えば、スライドプレート13、アーム14、磁気軸受17、軸方向駆動機構19、軸方向位置決め機構21、真空シール機構等)には同一の符号を用い、詳細な説明については省略する。
但し、第2の実施形態におけるゲートバルブ1’では、バランスウェイト16を用いないため、シャフト15’のバランスが十分に保てる程度の強度を磁気軸受17に持たせるように構成する。
【0042】
図10に示すように、ゲートバルブ1’におけるシャフト15’の径方向駆動機構は、電磁石ターゲットとして機能する永久磁石50と、永久磁石50のS極側に設けられた電磁石60、N極側に設けられた電磁石61によって構成されている。
永久磁石50は、シャフト15’の軸線方向の中程に、シャフト15’の周りにN極とS極が180°ごとに配置されるように固着されている。
電磁石60、61は、筐体10’の外部、即ち、大気領域において、シャフト15’を介して対峙するように設けられている。
電磁石60、61による永久磁石50の吸引力を制御することにより、シャフト15’を径方向に移動(回動)させることができる。
このように、第2の実施形態においても、ゲートバルブ1’を真空領域内に配設した場合に蒸気圧を発生する可能性を有する電磁石(電磁石19b、60、61)を全て大気領域に配設するように構成されている。
【0043】
図11(a)は、第2の実施形態に係るゲートバルブ1’におけるシャフト15’の径方向駆動機構の概略構成を示した図である。
第2の実施形態に係るゲートバルブ1’では、シャフト15’の径方向の位置の設定方法の一例として、全閉・半開・全開の3ポジションの設定を行う方法について説明する。
図11(a)に示すように、ゲートバルブ1’には、シャフト15’の径方向の回転位置を設定する電磁石60を構成する、電磁石60a、60b、60c、及び、電磁石61を構成する電磁石61a、61b、61cを備えている。
なお、電磁石60a、60b、60cは、永久磁石50のS極側に設けられ、電磁石61a、61b、61cは、永久磁石50のN極側に設けられている。
電磁石60aと電磁石61a、電磁石60bと電磁石61b、電磁石60cと電磁石61cは、それぞれ、シャフト15’の中心軸を介して対峙するように設けられている。
第2の実施形態に係るゲートバルブ1’では、電磁石60aと電磁石61aに電流を供給した場合に全閉状態となり、電磁石60bと電磁石61bに電流を供給した場合に半開状態となり、電磁石60cと電磁石61cに電流を供給した場合に、全開状態となる位置に、各電磁石が配設されている。
【0044】
なお、ゲートバルブ1’の半開状態における開口面積は、当該ゲートバルブ1’を用いた真空システムにおけるプロセス毎に予め設定されており、電磁石60b及び電磁石61bの位置(配置角)は、設定された開口面積に基づいて決められている。
ゲートバルブ1’の半開状態における開口面積は、プロセスが異なる毎に変化するものであるため、電磁石60b及び電磁石61bの位置を変更するための調整機構が設けられている。
【0045】
ここで、電磁石60b及び電磁石61bの位置を変更するための調整機構について説明する。
図11(b)は、電磁石60b及び電磁石61bの位置を変更するための調整機構の概略構成を示した図である。
図11(b)に示すように、電磁石60b及び電磁石61bの位置を調整可能に構成する場合には、電磁石60a、60c及び電磁石61a、61cからなる固定側電磁石と、電磁石60b及び電磁石61bからなる可動側電磁石を軸方向にずらして配置する。つまり、固定側電磁石と可動側電磁石を軸方向に2段に並べて配置する。
また、永久磁石50を、固定側永久磁石50aと可動側永久磁石50bから構成する。そして、固定側永久磁石50aと固定側電磁石、可動側永久磁石50bと可動側電磁石が互いに作用するように配置する。
本実施形態では、固定側電磁石を上段に、可動側電磁石を下段に配置する。可動側電磁石は、電磁石60b及び電磁石61bを円環状の回転板140上にシャフト15’を介して対峙するように配置する。そして、回転板140を回転させることによって、電磁石60b及び電磁石61bの位置を調整することができる。
【0046】
図11(a)に示すような、径方向の駆動機構を設けることにより、電流を流す(駆動する)電磁石を選択するだけで、全閉・半開・全開の3ポジションの切替をオープンループ制御により、容易に行うことができる。
但し、この場合にも、図示されていないが、シャフト15’の回転時に、軸支持ばね18を使用することもできる。その場合には、軸支持ばね18の復元力Fksrが作用する。そのため、ゲートバルブ1’を半開又は全開状態とする場合には、軸支持ばね18の復元力Fksrが無視できる程度の引っ張り力を作用させるための電流を電磁石60、61に供給するようにする。
【0047】
上述したシャフト15’の径方向の位置の設定方法では、図11(a)に示すように、3対の電磁石(電磁石60a〜c、61a〜c)を用いた場合における設定方法について説明した。しかしながら、シャフト15’の径方向の位置の設定方法はこれに限定されるものではない。
図12(a)は、シャフト15’の径方向の位置の設定方法の変形例を示した図である。
例えば、図12(a)に示すように、電磁石60a、61a、及び電磁石60c、61cの双方に供給する電流を調整することによって、ゲートバルブ1’を半開状態(中間位置)にするようにしてもよい。
【0048】
この場合、図12(a)に示すように、シャフト15’の回転角、即ち、永久磁石50の磁極の位置を検出する位置センサ70を設けるようにする。
ここで、永久磁石50の磁極の位置を検出する位置センサ70について説明する。
図12(b)は、永久磁石50の磁極の位置を検出する位置センサ70を備えたゲートバルブ1’の概略構成を示した図である。
図12(b)に示すように、位置センサ70は、ゲートバルブ1’の筐体10の外側、即ち、大気側の領域に設けられている。
また、シャフト15’には、位置センサ70のターゲット部を構成するセンサターゲット71が設けられている。センサターゲット71は、永久磁石50の回転と連動するように構成されている。位置センサ70は、検出したセンサターゲット71の回転角に基づいて永久磁石50の磁極の位置を出力するように構成されている。
【0049】
そして、位置センサ70の出力に基づいて、電磁石60a、61a、及び電磁石60c、61cに供給する電流の調整、即ち、フィードバック制御を行う。
これにより、半開状態におけるゲートバルブ1’の開口面積の調整を精度よく行うことができる。
フィードバック制御における目標値の設定を変更するだけで、容易に半開状態におけるゲートバルブ1’の開口面積(シャフト15’の回転角)の設定を行うことができる。
図11、図12に示すシャフト15’の径方向駆動機構では、シャフト15’の主軸の位置が一方側に寄らないようにするために、永久磁石50を電磁石60、61を用いて、両側から吸引するように構成している。
しかしながら、磁気軸受17によるシャフト15’の支持強度が十分に保持できるのであれば、永久磁石50を電磁石60のみで吸引することによってシャフト15’を回転させるようにしてもよい。
なお、ここでは永久磁石50の磁極位置の検出方法の一例として、回転位置センサを用いた場合について説明した。しかしながら、永久磁石50の磁極位置の検出方法は、これに限定されるものではなく、他のエンコーダや位置センサなどを用いるようにしてもよい。
【0050】
なお、上述した第2の実施形態、及び各変形例に示すゲートバルブ1’においても、シャフト15’の軸支は、円錐状の軸支持ばね18を用いる方法に限定されるものではなく、図8に示すピボット軸受を用いるようにしてもよい。
この場合においても、回転方向の復元力Fksrを作用させるゼンマイバネ130を別途設けるようにしてもよい。
【0051】
次に、上述した第1実施形態、第2実施形態、及び各変形例に示したゲートバルブを使用した、例えば、半導体製造装置などの真空システムについて説明する。
図13は、真空システムの一例を示した図である。
なお、上述した実施形態及び変形例と重複する部分には同一の符号を用い、詳細な説明については省略する。
図13に示すように、真空システムは、ゲートバルブ1、真空容器2、真空ポンプ3、圧力センサ4、及び制御装置5を備えている。
圧力センサ4は、真空容器2内の圧力を検出するセンサである。
制御装置5は、真空システムにおいてAPC(オートマティック・プレッシャー・コントロール)機能を実現させるための制御を行う装置であり、ゲートバルブ1に接続され、また、圧力センサ4を介して真空容器2に接続されている。
【0052】
図13に示す真空システムでは、制御装置5において、真空容器2の内部圧力が所定の設定値となるように、圧力センサ4で検出された値に基づいて、ゲートバルブ1における半開位置(中間位置)のフィードバック制御を行う。
つまり、真空容器2の内部圧力が所定の設定値となるように、例えば、上述した電磁石20やコイル101〜105、電磁石60、61に供給する電流を制御してゲートバルブ1の開口面積の調整を行う。
なお、この真空システムにおけるAPC機能は、ゲートバルブ1におけるスライドプレート13の角度、即ち、気体流路の開口度を制御する機能である。そして、このAPC機能は、真空容器2の内圧制御(圧力系のトータル制御)を行うCPC(チャンバ・プレッシャー・コントロール)機能の一部を構成する。
【0053】
次に、上述した第1実施形態、第2実施形態、及び各変形例に示したゲートバルブ1を、真空ポンプ3に組み合わせた排気システムの一例について説明する。
図14は、排気システムの一例を示した図である。
例えば、ゲートバルブ1及びウォータポンプ6を、真空ポンプ3に組み付けることによって、真空容器2の排気システムを構成する。
ウォータポンプ6は、真空容器2内の水蒸気を高速排気するポンプであり、例えば、クライオポンプなどで構成されている。
真空容器2の真空排気の性能は、水蒸気の排気に大きく依存している。そのため、排気システムにウォータポンプ6を組み込むことにより、真空容器2の真空排気時間を大幅に短縮することがでる。
なお、排気システムを構成するゲートバルブ1、ウォータポンプ6、真空ポンプ3は、制御ユニット7によって一元管理されている。
【0054】
排気システムには、真空ポンプ3の吸気口の上流側にウォータポンプ6とゲートバルブ1が設けられている。
排気システムにおけるゲートバルブ1は、図14(a)に示すように、ウォータポンプ6の上流側に設けるようにしてもよいし、図14(b)に示すように、ウォータポンプ6の下流側に設けるようにしてもよい。
排気性能を優先する場合には、図14(a)に示すように、ゲートバルブ1をウォータポンプ6の上流側に設けることが好ましい。また、排気精度を優先する場合には、図14(b)に示すように、ゲートバルブ1をウォータポンプ6の下流側に設けることが好ましい。
【0055】
図14(a)に示す排気システムにおいて、ゲートバルブ1とウォータポンプ6を一体形成するようにしてもよい。具体的には、ゲートバルブ1とウォータポンプ6の筐体の一部を兼用するように構成してもよい。
また、図14(b)に示す排気システムにおいて、ゲートバルブ1と真空ポンプ3を一体形成するようにしてもよい。具体的には、ゲートバルブ1と真空ポンプ3の筐体の一部を兼用するように構成してもよい。また、ゲートバルブ1、ウォータポンプ6、真空ポンプ3の各筐体を兼用するように構成してもよい。
このように、筐体を兼用することにより、真空容器2から排気される気体の流路の長さをより短く構成することができる。これにより、気体の排気性能をより向上させることができる。
【0056】
なお、上述した第1の実施形態、第2の実施形態、及び各変形例で説明したスライドプレート13の駆動機構は、気体の流路の開閉度(開口面積)を調節するためのゲートバルブ1にのみ用いられるものではない。
このようなスライドプレート13の駆動機構を、例えば、半導体製造装置における半導体ウェハの移動装置に用いるようにしてもよい。具体的には、スライドプレート13の上面に半導体ウェハを載置し、次行程に送る搬送装置に適用する。この場合には、スライドプレート13の大きさを搬送するウェハサイズに応じて設定し、スライドプレート13の駆動範囲(移動範囲)も搬送経路に応じて広げるようにする。さらに必要に応じて、スライドプレート13を直線移動させるためのアクチュエータを設ける。
【0057】
また、スライドプレート13の駆動機構を、例えば、ビーム装置のシャッター機能として用いるようにしてもよい。具体的には、レーザービーム、量子ビーム、電子ビームなどを所定のターゲットに照射するビーム装置において、ビームの照射経路上にスライドプレート13をその主面が該ビームの照射方向と交わるように配置する。そして、このスライドプレート13を径方向に移動させることによって、スライドプレート13により遮られるビームの量を変化させ、ターゲットに照射されるビームの照射面積を制御したり、ビーム照射のオン/オフを行う。但し、この場合には、スライドプレート13をビームを透過しない部材で構成する。
このように、スライドプレート13の駆動機構を用いることにより、複雑な構成を有するアクチュエータを用いることなく、簡素な構成で搬送装置やビーム装置のシャッターなどを構成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ゲートバルブ
2 真空容器
3 真空ポンプ
4 圧力センサ
5 制御装置
6 ウォータポンプ
7 制御ユニット
10 筐体
11 流入孔
12 流出孔
13 スライドプレート
14 アーム
15 シャフト
16 バランスウェイト
17 磁気軸受
17a 可動側永久磁石
17b 固定側永久磁石
18 軸支持ばね
19 軸方向駆動機構
19a 電磁石ターゲット
19b 電磁石
20、60、61 電磁石
21 軸方向位置決め機構
22 ベローズ
23 Oリング
41 ピボット軸
42 受け部
50 永久磁石
70 位置センサ
71 センサターゲット
101〜105 コイル
120 電磁石
130 ゼンマイバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極を有する回転体と、
前記回転体を回転可能に支持する回転支持手段と、
前記磁極に磁力を作用させる電磁石と、
前記回転体に固定され、前記回転体の回転により移動するプレートと、
前記電磁石の励磁制御を行うことにより前記回転体の回転角を調整する制御手段と、
を備えたことを特徴とするプレート回転装置。
【請求項2】
前記回転体の回転角を検出する位置検出手段を備え、
前記励磁制御は、前記位置検出手段により検出された回転角に基づいて、前記電磁石の巻線の電流値を制御することを特徴とする請求項1に記載のプレート回転装置。
【請求項3】
前記電磁石は、複数設けられ、
前記励磁制御は、前記複数の電磁石から少なくとも1の電磁石を選択し、該選択された電磁石の巻線に電流を供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレート回転装置。
【請求項4】
前記電磁石は、前記回転体を介して対峙するように対で設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプレート回転装置。
【請求項5】
前記電磁石は、配置位置の調整が可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置。
【請求項6】
被排気室の排気経路に設けられる排気路開閉度変更装置であって、
請求項1から請求項5のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置を備え、
前記プレートは、その移動経路が、前記排気経路と交わるように配置され、
前記制御手段は、前記回転体の回転角を調整することにより、前記排気経路の開閉度を制御することを特徴とする排気路開閉度変更装置。
【請求項7】
被排気室から気体を排気する真空ポンプと、
前記被排気室の排気経路に設けられた、請求項6に記載の排気路開閉度変更装置、及び、前記被排気室内の水蒸気を排気する水蒸気排出ポンプと、
前記真空ポンプ、前記排気路開閉度変更装置、及び前記水蒸気排出ポンプを一元管理する制御ユニットと、
を備えたことを特徴とする被排気装置。
【請求項8】
被排気室と、
前記被排気室から気体を排気する真空ポンプと、
前記被排気室の排気経路に配置された、請求項6に記載の排気路開閉度変更装置と、
前記被排気室内の気体の圧力を検出する圧力検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段により検出された気体の圧力に基づいて、前記排気路開閉度変更装置における前記排気経路の開閉度を調整することを特徴とする被排気装置。
【請求項9】
被搬送部材を搬送する搬送装置であって、
請求項1から請求項5のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置を備え、
前記被搬送部材は、前記プレートに載置され、
前記制御手段は、前記回転体の回転角を調整することにより、前記プレートを搬送先まで移動させることを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
ビームをターゲットに向けて照射する照射手段を有するビーム装置であって、
請求項1から請求項5のうちのいずれか1に記載のプレート回転装置を備え、
前記プレートは、その主面が前記ビームの照射経路と交わるように配置され、
前記制御手段は、前記回転体の回転角を調整することにより、前記プレートにより遮られる前記ビームの量を変化させ、前記ターゲットに照射される前記ビームの照射面積を制御することを特徴とするビーム装置。
【請求項11】
真空ポンプの吸気口の上流に設けられ、前記真空ポンプに流入する気体の流路の開閉を行うゲートバルブであって、
気体の流路を形成する開口部を有する筐体と、
前記筐体内に収納される回転軸と、
前記回転軸を前記筐体内で支持するばねと、
前記回転軸に対して固定され、前記回転軸の回転角により気体の流路の開口面積を決定するスライドプレートと、
前記回転軸を回転駆動するアクチュエータと、
を備えたことを特徴とするゲートバルブ。
【請求項12】
前記ばねは、円錐コイルばねであることを特徴とする請求項11に記載のゲートバルブ。
【請求項13】
前記回転軸は、前記ばねと、磁気軸受によって支持されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のゲートバルブ。
【請求項14】
前記アクチュエータは、電磁石で得られる動力を利用するソレノイドアクチュエータで構成されていることを特徴とする請求項11、請求項12又は請求項13に記載のゲートバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−527507(P2010−527507A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539545(P2009−539545)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【国際出願番号】PCT/JP2008/058291
【国際公開番号】WO2008/139939
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508275939)エドワーズ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】