説明

プローブカーシステム並びにプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作する車載空調システム及びナビゲーションシステム

【課題】プローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集しながら内外気切り換え機能を持つ空調システムや経路探索機能を持つナビゲーションシステムを搭載する車両に有用な情報を配信するプローブカーシステムを提供すること。
【解決手段】自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置V3を備えたプローブカーVから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステム100は、大気汚染物質に関する情報に基づいて、所定範囲内を走行する車両の空調システムV5が外気取り込みを内気循環に切り換えるべき地点、内気循環を維持すべき区間、又は、内気循環を外気取り込みに切り換えるべき地点を決定する内気循環区間決定手段C11と、内気循環区間決定手段C11が決定した地点又は区間に関する情報を配信する大気汚染情報配信手段C12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置を備えたプローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステム並びにそのプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作する車載空調システム及びナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両周辺の大気汚染物質の濃度上昇を検知して空調システムの動作モードを外気取り込みモードから内気循環モードに切り換える車両が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、自車両周辺に漂うにおいの分析結果と位置情報とを関連付けて情報通信センタに送信する車載の大気成分情報取り扱い装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−100815号公報
【特許文献2】特開2006−118981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、大気汚染物質に関する情報を他車両との間で共有することについては開示しておらず、大気汚染物質の濃度を検知する装置を搭載しない車両のことを考慮していない。
【0005】
また、特許文献2は、可燃性ガスが発するにおいを検知して地図情報を参照しながらその発生源の位置を推定したり、可燃性ガスのにおいを検知した位置を情報通信センタに通知したりする車載装置を開示するだけで、情報通信センタが収集した情報の利用方法の詳細を開示していない。
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、プローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集しながら内外気切り換え機能を持つ車載空調システムや経路探索機能を持つナビゲーションシステムを搭載する車両に有用な情報を配信するプローブカーシステム並びにそのプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作する車載空調システム及びナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係るプローブカーシステムは、自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置を備えたプローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステムであって、収集した大気汚染物質に関する情報に基づいて、所定範囲内を走行する車両の空調システムが外気取り込みを内気循環に切り換えるべき地点、内気循環を維持すべき区間、又は、内気循環を外気取り込みに切り換えるべき地点を決定する内気循環区間決定手段と、前記内気循環区間決定手段が決定した地点又は区間に関する情報を前記車両に配信する大気汚染情報配信手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第二の発明は、第一の発明に係るプローブカーシステムであって、前記内気循環区間決定手段は、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点を、外気取り込みを内気循環に切り換えるべき地点として決定し、或いは、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点を含む若しくは該地点から所定範囲内にあるリンク、又は、該リンクを含む所定数の隣接するリンク群を、内気循環を維持すべき区間として決定することを特徴とする。
【0009】
また、第三の発明に係る車載空調システムは、自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置を備えたプローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作する車載空調システムであって、配信される前記大気汚染物質に関する情報に基づいて外気取り込みと内気循環とを切り換える内外気切り換え手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第四の発明に係るナビゲーションシステムは、自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置を備えたプローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作するナビゲーションシステムであって、配信される前記大気汚染物質に関する情報に基づいて、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点を回避する推奨経路を探索する経路探索手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の手段により、本発明は、プローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集しながら内外気切り換え機能を持つ車載空調システムや経路探索機能を持つナビゲーションシステムを搭載する車両に有用な情報を配信するプローブカーシステム並びにそのプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作する車載空調システム及びナビゲーションシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係るプローブカーシステムの構成例を示すブロック図であり、プローブカーシステム100は、大気汚染情報を収集、配信するシステムであって、大気汚染情報をアップロードするプローブカーV、大気汚染情報を収集、配信する情報通信センタC、及び、大気汚染情報をアップロードすることなく大気汚染情報の配信を受ける受信専用車両VNから構成される。
【0014】
また、プローブカーシステム100は、プローブカーVがアップロードする大気汚染情報に加えて、自動車排出ガス測定局VMや一般環境大気測定局GMが測定する値を収集するようにしてもよい。
【0015】
ここで、「大気汚染情報」は、大気汚染に関する情報であって、例えば、自動車の排出ガスに含まれる大気汚染物質(窒素酸化物NOx、粒子状物質PM、炭化水素HC、一酸化炭素CO等である。)や工場等が排出する煤煙に含まれる大気汚染物質(硫黄酸化物SOx、煤塵、煤等である。)の大気中の濃度を含む。
【0016】
プローブカーVは、自身が検出した大気汚染情報を情報通信センタCにアップロードする車両であり、制御装置V1、通信装置V2、大気汚染物質検出装置V3、ナビゲーションシステムV4及び車載空調システムV5を搭載する。
【0017】
制御装置V1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等を備えたコンピュータであって、例えば、大気汚染情報取得手段V10及び配信情報利用手段V11のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶し、大気汚染情報ローカルデータベースV15(以下、「大気汚染情報LDB(V15)」とし、詳細を後述する。)をRAMやハードディスクに保持しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0018】
通信装置V2は、プローブカーVと情報通信センタCとの間の無線通信を制御するための車載装置であり、例えば、携帯電話周波数や特定小電力無線周波数を介してプローブカーVと情報通信センタCとの間の情報のやり取りを可能にする。
【0019】
大気汚染物質検出装置V3は、大気汚染物質を検出するための車載装置であり、例えば、車室内へ空気を取り込むための空気取り込み口付近に取り付けられ、車両周辺の大気中に含まれる窒素酸化物の濃度を検出するジルコニア式のNOxセンサがあり、検出結果を制御装置V1に出力する。
【0020】
また、大気汚染物質検出装置V3は、車両周辺の大気中に含まれる一酸化炭素の濃度を検出するCOセンサ、又は、車両周辺の大気中に含まれる炭化水素の濃度を検出するHCセンサ等であってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0021】
ナビゲーションシステムV4は、GPS(Global Positioning System)機能により取得される車両の現在位置情報(緯度、経度、高度)と、目的地の位置情報と、ハードディスクやDVD等に記憶された地図情報とに基づいて目的地までの経路を探索する経路探索手段を備え、その経路探索手段が探索した経路をディスプレイに表示しながら車両を目的地まで誘導するための車載システムである。
【0022】
車載空調システムV5は、車室内の温度、湿度又は空気清浄度等を制御するための車載システムであり、車室内の空気を循環させるか(以下、「内気循環モード」という。)外気を取り込むか(以下、「外気取り込みモード」という。)を自動又は手動で切り換えられるようにする内外気切り換え機能を有する。
【0023】
内外気切り換え機能は、例えば、制御装置V1が大気汚染物質検出装置V3の出力に基づいて所定レベル以上の大気汚染物質が車両周辺の大気に含まれると判定した場合に、制御装置V1が出力する制御信号に応じて、外気取り込みモードを内気循環モードに切り換えるようにする。
【0024】
次に、制御装置V1が有する各種手段について説明する。
【0025】
大気汚染情報取得手段V10は、大気汚染情報を取得するための手段であり、例えば、大気汚染物質検出装置V3が出力する値(例えば、濃度値である。)を監視し、その出力値が所定レベル以上となった場合に、現在時刻、現在位置(緯度、経度、高度)、リンクID(リンクを特定するための識別番号である。)及びその出力値を含む大気汚染情報を大気汚染情報LDB(V15)に記録し、かつ、通信装置V2を介してその大気汚染情報を情報通信センタCにアップロードする。
【0026】
なお、大気汚染情報取得手段V10は、蓄積した大気汚染情報を周期的(例えば、5分毎である。)に一括して情報通信センタCにアップロードしてもよい。アップロードするデータの情報量を抑えるためである。
【0027】
図2は、大気汚染情報LDB(V15)の構成例を示す図であり、大気汚染情報LDB(V15)は、所定濃度以上の大気汚染物質を検出した位置(緯度、経度及び高度)を記憶する位置情報欄、その検出時刻を記憶する検出時刻欄、各種大気汚染物質の濃度値を記憶するNOx濃度欄、HC濃度欄及びCO濃度欄、並びに、その検出位置を含むリンクのリンクIDを記憶するリンクID欄を有する。
【0028】
図2は、大気汚染情報取得手段V10が、経度x、緯度y、高度zの位置で時刻00:00にNOx濃度が0.5ppm、HC濃度が1.6ppm、CO濃度が1.5ppmとなり、HC濃度が所定レベル(例えば、1.5ppm)以上になったと判定したため、その時刻における大気汚染情報を記録したことを示す。なお、図2は、経度x、緯度y、高度zで示される位置がリンクID=001のリンクに含まれることを示す。
【0029】
配信情報利用手段V11は、情報通信センタCが配信する大気汚染情報を利用するための手段であり、例えば、情報通信センタCが定期的(例えば、5分毎である。)に配信する大気汚染情報に基づいて大気汚染情報LDB(V15)を更新し、ナビゲーションシステムV4が現在地から目的地までの推奨経路を導き出す場合に大気汚染情報LDB(V15)を参照して大気汚染物質の濃度が所定レベル以上の地点を回避する経路を選択できるようにする。
【0030】
具体的には、ナビゲーションシステムV4は、経路探索手段により、大気汚染情報LDB(V15)を参照して大気汚染物質の濃度が所定レベル以上の地点を含むリンクのリンクIDを取得し、そのリンクIDが示すリンクのリンクコスト(リンクを通過するために要する時間、費用等の度合いをいう。)を増大させた上で、経路探索アルゴリズムとしてダイクストラ法を用い推奨経路を探索する。
【0031】
なお、ナビゲーションシステムV4は、推奨経路の探索を開始する際に、通信装置V2を介して大気汚染情報の配信を要求する信号を情報通信センタCに送信し、大気汚染情報LDB(V15)を更新させるようにしてもよい。最新の大気汚染情報に基づいて推奨経路を探索できるようにするためである。
【0032】
また、ナビゲーションシステムV4は、既に探索した推奨経路の中に大気汚染物質の濃度が所定レベル以上の地点を含むリンクがあると事後的に判定した場合、アラームと共にディスプレイに「推奨ルート上に空気の汚れた地域があります。推奨ルートを変更しますか?」といった確認メッセージを表示させ、車両搭乗者に推奨ルートの変更を促すようにしてもよい。
【0033】
また、ナビゲーションシステムV4は、確認メッセージを表示させることなく、自動的に推奨ルートを変更するようにしてもよい。
【0034】
また、ナビゲーションシステムV4は、大気汚染物質の濃度に応じてリンクを色分けしながら、大気汚染マップを表示させるようにしてもよい。これにより、車両搭乗者は、大気汚染状況を道路毎に細かく把握でき、車両搭乗者自身の判断で大気汚染物質の濃度が高い地域を迂回することができる。
【0035】
また、配信情報利用手段V11は、情報通信センタCが配信する大気汚染情報とナビゲーションシステムV4におけるGPSが出力する現在位置情報とに基づいて、大気汚染物質の濃度が所定レベル以上の地点を含むリンクにプローブカーVが進入すると判定した場合に車載空調システムV5に制御信号を出力し、車載空調システムV5の動作モードを外気取り込みモードから内気循環モードに切り換えさせるようにする。
【0036】
この場合、ナビゲーションシステムV4は、アラームと共にディスプレイに「外気が汚れているおそれがあるため、エアコンの外気取り込みモードを内気循環モードに切り換えます」といったメッセージを表示させ、切り換えが行われる旨を車両搭乗者に通知するようにしてもよい。
【0037】
また、配信情報利用手段V11は、大気汚染物質の濃度が所定レベル以上の地点を含むリンクからプローブカーVが退出したと判定した場合に車載空調システムV5に制御信号を出力し、車載空調システムV5の動作モードを内気循環モードから外気取り込みモードに切り換えさせるようにしてもよく、大気汚染物質の濃度が所定レベル以上の地点からプローブカーVが所定距離以上離れたと判定した場合に車載空調システムV5の動作モードを内気循環モードから外気取り込みモードに切り換えさせるようにしてもよい。
【0038】
この場合、ナビゲーションシステムV4は、アラームと共にディスプレイに「エアコンの内気循環モードを外気取り込みモードに切り換えます」といったメッセージを表示させ、切り換えが行われる旨を車両搭乗者に通知するようにしてもよい。
【0039】
また、ナビゲーションシステムV4は、内気循環モードと外気取り込みモードとを切り換える地点を地図上に表示させるようにしてもよい。
【0040】
次に、大気汚染情報を収集する情報通信センタCについて説明する。
【0041】
情報通信センタCは、複数のプローブカーVが発信する大気汚染情報を受信、収集する固定施設であり、制御装置C1及び通信装置C2を含む。
【0042】
制御装置C1は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えたコンピュータであって、例えば、大気汚染情報収集手段C10、内気循環区間決定手段C11及び大気汚染情報配信手段C12のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶し、大気汚染情報メインデータベースC15(以下、「大気汚染情報MDB(C15)」とする。)をRAMやハードディスクに保持しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0043】
通信装置C2は、通信装置V2と同様、プローブカーVと情報通信センタCとの間の無線通信を制御するために固定施設に設置される装置である。
【0044】
また、通信装置C2は、自動車排出ガス測定局VMや一般環境大気測定局GMと情報通信センタCとの間の無線通信又は有線通信を制御し、自動車排出ガス測定局VMや一般環境大気測定局GMと情報通信センタCとの間の情報のやり取りを可能にする。
【0045】
次に、制御装置C1が有する各種手段について説明する。
【0046】
大気汚染情報収集手段C10は、大気汚染情報を収集するための手段であり、例えば、情報通信センタCが管理する所定の範囲内を走行するプローブカーVがアップロードする大気汚染情報を受信した場合に、その受信した大気汚染情報を大気汚染情報MDB(C15)に記憶する。なお、大気汚染情報MDB(C15)は、例えば、大気汚染情報LDB(V15)と同様の構成を有する。
【0047】
また、大気汚染情報収集手段C10は、検出後所定時間(例えば、15分である。)が経過したレコードを削除するようにしてもよい。古い情報は、現状を反映していない場合があるからである。
【0048】
また、大気汚染情報収集手段C10は、大気汚染情報を統計的に解析し、大気汚染物質の濃度が高くなる時期(時間帯、曜日、季節等である。)、又は、気象条件等を導き出すようにしてもよい。
【0049】
大気汚染情報(統計値)を地図データベース等に含めて配布できるようにするためであり、通信装置V2を搭載しない車両のナビゲーションシステムV4や車載空調システムV5を動作させる上で有用な大気汚染情報を提供できるようにするためである。
【0050】
内気循環区間決定手段C11は、車載空調システムV5が外気取り込みモードを内気循環モードに切り換えるべき地点、内気循環を維持すべき区間、又は、内気循環モードを外気取り込みモードに切り換えるべき地点(以下、「内気循環区間等」とする。)を決定するための手段であり、例えば、大気汚染情報収集手段C10が収集した大気汚染情報に基づいて内気循環区間等を決定し、内外気切り換え機能を有する車載空調システムV5を搭載する車両に向けて配信する内気循環区間通知信号を生成する。
【0051】
図3は、内気循環区間通知信号の構成例を示す図であり、内気循環区間通知信号は、位置情報(緯度、経度、高度)、大気汚染物質検出時刻及びリンクIDを一単位の情報としながら、一又は複数単位の情報をその一つの信号に含めるようにする。なお、内気循環区間通知信号は、位置情報(緯度、経度、高度)及び大気汚染物質検出時刻を1単位の情報としてもよく、位置情報(緯度、経度、高度)、大気汚染物質検出時刻、NOx濃度、HC濃度、CO濃度及びリンクIDを1単位の情報としてもよい。
【0052】
なお、内気循環を維持すべき区間は、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点を含むリンク、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点から所定距離範囲内にあるリンク、又は、それらのリンクを含む所定数の隣接するリンク群を含むものとする。
【0053】
大気汚染情報配信手段C12は、内気循環区間決定手段C11が生成する内気循環区間通知信号をプローブカーV及び受信専用車両VNに配信するための手段であり、例えば、情報通信センタCが管理する所定の範囲内を走行する不特定多数のプローブカーV及び受信専用車両VNに対して所定間隔(例えば、5分毎である。)で内気循環区間通知信号を配信する。
【0054】
また、大気汚染情報配信手段C12は、プローブカーV及び受信専用車両VNからの送信要求に応じて、プローブカーV及び受信専用車両VNを特定しながら、内気循環区間通知信号を個別に返信するようにしてもよい。
【0055】
この場合、大気汚染情報配信手段C12は、特定した車両から所定距離の範囲にある内気循環区間情報だけをその特定した車両に返信するようにしてもよく、それらの車両が既に設定している推奨経路に関する情報を得ながら、その特定した車両がこれから走行しようとする経路に関する内気循環区間情報だけをその特定した車両に返信するようにしてもよい。
【0056】
また、大気汚染情報配信手段C12は、前回配信時刻からの差分情報のみを含む内気循環区間通知信号を配信するようにしてもよい。配信される情報の量を抑えるためである。この場合、大気汚染情報配信手段C12は、配信間隔(例えば、5分毎である。)よりも長い所定の間隔(例えば、30分毎である。)で情報通信センタCが保持する全ての大気汚染情報に基づく内気循環区間通知信号を送信するようにしてもよく、或いは、プローブカーV及び受信専用車両VNからの送信要求があった場合にだけ、全ての大気汚染情報に基づく内気循環区間通知信号を送信し、その後、所定の配信間隔で差分情報のみを含む内気循環区間通知信号を配信するようにしてもよい。
【0057】
次に、大気汚染情報の配信を受ける受信専用車両VNについて説明する。
【0058】
受信専用車両VNは、大気汚染物質検出装置V3を搭載せず、制御装置V1に大気汚染情報取得手段V10を有さず、大気汚染情報を情報通信センタCにアップロードできない点を除き、プローブカーVと共通する。
【0059】
受信専用車両VNは、プローブカーVが大気汚染情報取得手段V10により大気汚染情報LDB(V15)を更新するのと異なり、配信情報利用手段V11により情報通信センタCが配信する内気循環区間通知信号に基づいて大気汚染情報LDB(V15)を更新する。
【0060】
これにより、受信専用車両VNは、自ら大気汚染物質の濃度を検出できなくても、情報通信センタCが配信する内気循環区間通知信号を利用して、大気汚染物質検出装置V3を搭載するプローブカーVと同様に、車載空調システムV5に動作モードを切り換えさせたり、ナビゲーションシステムV4に大気汚染物質の濃度が所定レベル以上となる地点を回避した経路を探索させたりすることができる。
【0061】
次に、図4〜図7を参照しながら、プローブカーシステム100が大気汚染情報を収集し、配信する処理について説明する。
【0062】
図4は、プローブカーVが大気汚染情報を情報通信センタCにアップロードする処理(以下、「アップロード処理」とする。)の流れを示すフローチャートであり、プローブカーVの制御装置V1は、所定周期で繰り返しこのアップロード処理を実行する。
【0063】
最初に、制御装置V1は、大気汚染情報取得手段V10により大気汚染物質検出装置V3が出力する大気汚染物質の濃度データを取得し(ステップS1)、取得した大気汚染物質濃度と所定値T1とを比較する(ステップS2)。
【0064】
大気汚染物質濃度が閾値T1未満の場合(ステップS2のNO)、制御装置V1は、大気汚染情報を情報通信センタCにアップロードすることなく処理を終了させる。
【0065】
一方、大気汚染物質濃度が閾値T1以上の場合(ステップS2のYES)、制御装置V1は、車載空調システムV5に制御信号を出力し外気取り込みモードを内気循環モードに切り換えさせる(ステップS3)。汚れた空気を車室内に取り込むことがないようにするためである。
【0066】
その後、制御装置V1は、自身が現に取得した大気汚染情報(大気汚染物質濃度の値、取得時刻、ナビゲーションシステムV4のGPSが出力する現在位置情報、及び、自車両が位置するリンクのリンクIDである。)を大気汚染情報LDB(V15)に記録し(ステップS4)、その大気汚染情報を情報通信センタCにアップロードする(ステップS5)。
【0067】
図5は、情報通信センタCが大気汚染情報を収集、配信する処理(以下、「大気汚染情報収集配信処理」とする。)の流れを示すフローチャートであり、情報通信センタCの制御装置C1は、所定周期で繰り返しこの大気汚染情報収集配信処理を実行する。
【0068】
制御装置C1は、プローブカーVから大気汚染情報が送信されてくるのを監視し(ステップS11)、大気汚染情報を受信した場合(ステップS11のYES)、大気汚染情報収集手段C10により、受信した大気汚染情報で大気汚染情報MDB(C15)を更新する(ステップS12)。
【0069】
大気汚染情報を受信しない場合(ステップS11のNO)、制御装置C1は、大気汚染情報MDB(C15)を更新することなくステップS13に進む。
【0070】
その後、制御装置C1は、内気循環区間決定手段C11により、所定間隔(例えば、5分毎である。)で、受信した大気汚染情報に基づいて内気循環区間等を決定し、大気汚染情報配信手段C12により、情報通信センタCから所定範囲内の位置にある道路を走行する不特定多数のプローブカーV又は受信専用車両VNに対して、内気循環区間通知信号を配信する(ステップS13)。
【0071】
図6は、配信された内気循環区間通知信号に応じてプローブカーV又は受信専用車両VNが車載空調システムV5における外気取り込みモードを内気循環モードに切り換える処理(以下、「内外気切り換え処理」とする。)の流れを示すフローチャートであり、プローブカーV又は受信専用車両VNの制御装置V1は、所定周期で繰り返しこの内外気切り換え処理を実行する。
【0072】
制御装置V1は、情報通信センタCから内気循環区間通知信号が送信されてくるのを監視し(ステップS21)、内気循環区間通知信号を受信した場合(ステップS21のYES)、受信した内気循環区間通知信号で大気汚染情報LDB(V15)を更新する(ステップS22)。
【0073】
内気循環区間通知信号を受信しない場合(ステップS21のNO)、制御装置V1は、大気汚染情報LDB(V15)を更新することなくステップS23に進む。
【0074】
その後、制御装置V1は、配信情報利用手段V11により大気汚染情報LDB(V15)とGPSの出力とを参照しながら自車両が内気循環区間等に進入したか否かを判定し(ステップS23)、自車両が内気循環区間等に進入したと判定した場合(ステップS23のYES)、車載空調システムV5に制御信号を出力して外気取り込みモードを内気循環モードに切り換えさせる(ステップS24)。
【0075】
図7は、配信された内気循環区間通知信号に応じてプローブカーV又は受信専用車両VNがナビゲーションシステムV4に推奨経路を変更させる処理(以下、「推奨経路変更処理」とする。)の流れを示すフローチャートであり、プローブカーV又は受信専用車両VNの制御装置V1は、所定周期で繰り返しこの推奨経路変更処理を実行する。
【0076】
制御装置V1は、情報通信センタCから内気循環区間通知信号が送信されてくるのを監視し(ステップS31)、内気循環区間通知信号を受信した場合(ステップS31のYES)、受信した内気循環区間通知信号で大気汚染情報LDB(V15)を更新する(ステップS32)。
【0077】
内気循環区間通知信号を受信しない場合(ステップS31のNO)、制御装置V1は、大気汚染情報LDB(V15)を更新することなくステップS33に進む。
【0078】
その後、制御装置V1は、配信情報利用手段V11により大気汚染情報LDB(V15)とナビゲーションシステムV4が既に探索した推奨経路とを比較しながら推奨経路に内気循環区間等が含まれるか否かを判定し(ステップS33)、推奨経路に内気循環区間等が含まれると判定した場合(ステップS33のYES)、ナビゲーションシステムV4に制御信号を出力して内気循環区間等を含まない推奨経路を再探索させる(ステップS34)。
【0079】
以上の構成により、プローブカーシステム100は、プローブカーVから大気汚染物質に関する情報を収集しながら、内外気切り換え機能を持つ車載空調システムV5や経路探索機能を持つナビゲーションシステムV4を搭載する他のプローブカーVや受信専用車両VNにも有用な情報を配信することができる。
【0080】
また、プローブカーVや受信専用車両VNに搭載されるナビゲーションシステムV4は、情報通信センタCから配信される情報に基づいて、大気が汚染された地域を回避する推奨経路を車両搭乗者に提示することができる。
【0081】
また、プローブカーVや受信専用車両VNに搭載される車載空調システムV5は、情報通信センタCから配信される情報に基づいて外気取り込みモードと内気循環モードとを切り換え、汚染された空気を車室内に取り込まないようにすることができる。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0083】
例えば、上述の実施例において、プローブカーシステム100は、内気循環区間決定手段C11を情報通信センタCの制御装置C1内に備えるが、プローブカーV又は受信専用車両VNにおける制御装置V1内に備えるようにしてもよい。
【0084】
この場合、プローブカーV又は受信専用車両VNは、情報通信センタCが配信する大気汚染情報を受信しながら各自で内気循環区間等を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係るプローブカーシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】大気汚染情報ローカルデータベースの構成例を示す図である。
【図3】内気循環区間通知信号の構成例を示す図である。
【図4】アップロード処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】大気汚染情報収集配信処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】内外気切り換え処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】推奨経路変更処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
100 プローブカーシステム
C 情報通信センタ
C1 制御装置
C2 通信装置
C10 大気汚染情報収集手段
C11 内気循環区間決定手段
C12 大気汚染情報配信手段
C15 大気汚染情報メインデータベース
GM 一般環境大気測定局
V プローブカー
V1 制御装置
V2 通信装置
V3 大気汚染物質検出装置
V4 ナビゲーションシステム
V5 車載空調システム
V10 大気汚染情報取得手段
V11 配信情報利用手段
V15 大気汚染情報ローカルデータベース
VN 受信専用車両
VM 自動車排出ガス測定局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置を備えたプローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステムであって、
収集した大気汚染物質に関する情報に基づいて、所定範囲内を走行する車両の空調システムが外気取り込みを内気循環に切り換えるべき地点、内気循環を維持すべき区間、又は、内気循環を外気取り込みに切り換えるべき地点を決定する内気循環区間決定手段と、
前記内気循環区間決定手段が決定した地点又は区間に関する情報を前記車両に配信する大気汚染情報配信手段と、
を備えることを特徴とするプローブカーシステム。
【請求項2】
前記内気循環区間決定手段は、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点を、外気取り込みを内気循環に切り換えるべき地点として決定し、或いは、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点を含む若しくは該地点から所定範囲内にあるリンク、又は、該リンクを含む所定数の隣接するリンク群を、内気循環を維持すべき区間として決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のプローブカーシステム。
【請求項3】
自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置を備えたプローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作する車載空調システムであって、
配信される前記大気汚染物質に関する情報に基づいて外気取り込みと内気循環とを切り換える内外気切り換え手段を備えることを特徴とする車載空調システム。
【請求項4】
自車両周辺の大気汚染物質を検出する装置を備えたプローブカーから大気汚染物質に関する情報を収集するプローブカーシステムが配信する情報に応じて動作するナビゲーションシステムであって、
配信される前記大気汚染物質に関する情報に基づいて、大気汚染物質の濃度が所定値以上の地点を回避する推奨経路を探索する経路探索手段を備えることを特徴とするナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−223514(P2009−223514A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66132(P2008−66132)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】