説明

ベルトループ用テープ供給装置

【課題】均一な長さのベルトループ用テープを供給することを可能とするとともに、ベルトループ用テープの供給異常時にいち早く復旧作業に取り掛かることができ、生産性の低下を防止することができるベルトループ用テープ供給装置を提供する。
【解決手段】ベルトループ用テープ供給装置1は、ベルトループ用テープTを繰り出す繰り出し手段と、テープ送り出し台3の終端部近傍に配設されベルトループ用テープTを切断する切断手段と、繰り出し経路上において、繰り出されているベルトループ用テープTの厚み部分の画像を連続的に撮像し、前後の画像を比較処理し、ベルトループ用テープTの移動量を検出して出力する移動量検出手段9と、移動量検出手段9から取得したベルトループ用テープTの移動量に基づいて、繰り出し手段や前記切断手段を制御することにより、均一な長さのベルトループ用テープTが供給されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトループ用テープを縫製物に縫い付けるミシンに配設されたベルトループ用テープ供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ズボンやスカートなどの腰部にあるベルトを通すためのベルトループを形成するベルトループ縫いミシンには、縫製中に、ベルトループの材料となるベルトループ用テープを供給するベルトループ用テープ供給装置が配設されている(例えば、特許文献1参照)。このベルトループ用テープ供給装置は、ベルトループ用テープを所定の経路に沿って繰り出し、前記所定の経路の終端部近傍において所望の長さに切断した後、切断されたベルトループ用テープをミシン本体の縫製位置に供給する装置である。
【0003】
従来のベルトループ用テープ供給装置は、ミシン本体の側部に配設され、ベルトループ用テープを繰り出す繰り出し手段、ベルトループ用テープの先端部を挟持して引き出す引き出し手段、ベルトループ用テープを切断する切断手段、切断されたベルトループ用テープをミシン本体の縫製位置に供給する供給手段などを備えている。
【0004】
図6は、上記のような従来のベルトループ用テープ供給装置1の要部を示すものである。図6において、前記繰り出し手段4は、ミシン本体の側部に配設されたテープ送り出し台3の上方において、図6における矢印Aの方向であるベルトループ用テープTの繰り出し方向と直交するようにして水平に配設された図示しない回転軸の一端部に取り付けられ、外周面に送り歯が形成された繰り出しローラ4aを有している。繰り出し手段4は、繰り出しローラ4aを図示しない繰り出しモータにより回転させて、ベルトループ用テープTを前記テープ送り出し台3の上部の繰り出し経路上に繰り出している。また、前記引き出し手段(図示せず)は図示しない把持アームを有し、この把持アームは、テープ送り出し台3の終端部近傍においてベルトループ用テープTの先端部を挟持し、そのままベルトループ用テープTの繰り出し方向に引き出してくるようになっている。また、前記切断手段6は、テープ送り出し台3の終端部近傍の上方に配設された可動刃6aと、当該可動刃6aを上下駆動させるための図示しないエアシリンダを備え、この可動刃6aを下降させることにより、ベルトループ用テープTを切断するようになっている。
【0005】
上記のような構成を備えたベルトループ用テープ供給装置1は、以下の一連の動作を繰り返す。まず、ベルトループ用テープTの繰り出し方向の延長上の後退位置にある前記引き出し手段の前記把持アームが、テープ送り出し台3の終端部近傍の把持位置まで前進すると同時に、ベルトループ用テープTが前記繰り出手段4によって、繰り出し方向に繰り出され、ベルトループ用テープTの先端部が切断位置から把持位置まで移動する。次に、前記把持アームが、把持位置まで繰り出されているベルトループ用テープTの先端部を挟持し、そのままベルトループ用テープTを繰り出し方向に引き出すのと同時に、前記繰り出しローラ4aの回転により繰り出すことによって、前記把持アームが前記後退位置に後退する。これにより、前記把持アームと繰り出しローラ4aとの間に所定の長さのベルトループ用テープTが掛け渡された状態になる。次に、この掛け渡されたベルトループ用テープTが、切断位置において可動刃6aにより切断される。そして、この切断されたベルトループ用テープTを挟んでミシン本体2に対向した位置である待機位置に待機している前記のフォーク8a,8aが、ベルトループ用テープTの繰り出し方向と直交する方向に前進してベルトループ用テープTを側部から挟持し、そのままミシン本体2の縫製位置まで前進することによってベルトループ用テープTを供給する。
【0006】
上述した一連の動作において、前記繰り出し手段4は、予め設定されているベルトループ用テープTの長さから算出された回転量に基づいて前記繰り出しモータを回転させるように制御されている。また、前記切断手段6は、前記繰り出しモータを所定の回転量だけだけ回転させると、ベルトループ用テープ材が所定長さだけ繰り出されたものとして、可動刃6aを所定のタイミングで下降するように、前記エアシリンダの切断用電磁弁を介して駆動制御されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−237481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のベルトループ用テープ供給装置1においては、ベルトループ用テープ材Tの材質によっては、前記繰り出しローラ4aがベルトループ用テープTの上面で滑り空回りして、繰り出しモータの回転量に対する実際の繰り出し量との間に誤差(繰り出し誤差ともいう)が発生してしまうことがあった。
【0009】
また、従来のベルトループ用テープ供給装置1においては、ベルトループ用テープ材Tが可動刃6aにより完全に切断しきれずに糸が解れて、各機構部に絡まったり、ベルトループ用テープTの両端部を縫製している糸が解れたベルトループ用テープTが繰り出し経路上に詰まるといったベルトループ用テープ材Tの供給異常が発生することがあった。
【0010】
しかし、従来のベルトループ用テープ供給装置1においては、上述したような一連の動作において、前記繰り出しモータの回転量に依存してベルトループ用テープTの繰り出し量を判断している。そのため、従来のベルトループ用テープ供給装置1は、ベルトループ用テープTの繰り出し誤差や繰り出し異常の発生を検出することができなかった。
【0011】
したがって、前記繰り出しモータが空回りして繰り出し誤差が発生した場合、実際にベルトループ用テープTが切断位置まで繰り出されていない状態で可動刃6aが下降し、所定の長さよりも短い長さに切断され、そのまま縫製物に縫製されることにより、不均一な長さのベルトループが形成されてしまうことがあった。
【0012】
また、ベルトループ用テープTが各機構に絡まったり、詰まったりするような供給異常が発生した場合でも、前記繰り出しモータが駆動し続けるためにベルトループ用テープTの詰まりが悪化し、その結果、復旧作業に手間が掛かり、生産性が低下していた。さらに、ベルトループ用テープTの詰まりが悪化した場合、前記引き出し手段を駆動している引き出しモータがベルトループ用テープTの詰まりによって脱調し、引き出し動作の移動途中で停止してしまうことがあった。これにより、停止してしまった前記引き出し手段と、所定のタイミングで前進してきた供給手段8のフォーク8a,8aが衝突して損傷してしまうおそれがあった。
【0013】
そこで、本発明はこのような点に鑑み、ベルトループ用テープの移動量を直接検出し、均一な長さのベルトループ用テープを供給することを可能とするとともに、ベルトループ用テープの供給異常が発生しても作業者がいち早く復旧作業に取り掛かることができ、生産性の低下を防止することができるベルトループ用テープ供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、請求項1に記載のベルトループ用テープ供給装置は、ベルトループ用テープを繰り出す繰り出しモータを有し、当該繰り出しモータの回転により所定の経路に沿ってベルトループ用テープを繰り出す繰り出し手段と、前記所定の経路の終端部近傍に設けられ、ベルトループ用テープを所定の長さに切断する切断手段と、を備え、ベルトループ用テープを縫製物に縫い付けるミシンに対して、所定の長さに切断されたベルトループ用テープを供給するベルトループ用テープ供給装置において、前記所定の経路において、繰り出されているベルトループ用テープの表面の画像を連続的に撮像し、撮像された前後の画像を比較処理し、ベルトループ用テープの移動量を検出する移動量検出手段と、前記移動量検出手段により検出されたベルトループ用テープの移動量に基づいて、前記ベルトループ用テープが前記所定長さで切断されるように、前記繰り出しモータ及び前記切断手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。これにより、例えば、ベルトループ用テープの実際の移動量に基づいて、当該移動量と予め設定されたベルトループの長さとが一致するように繰り出しモータの回転量と切断手段を制御することができるので、繰り出しローラの空回りなどにより繰り出しモータの回転量に対する実際の繰り出し量との間に繰り出し誤差が発生しても、正確で均一な長さのベルトループ用テープをミシン本体に供給することができる。
【0015】
請求項2に記載のベルトループ用テープ供給装置は、請求項1に記載のベルトループ用テープ供給装置であって、前記制御手段は、前記移動量からベルトループ用テープの移動速度を算出し、算出された移動速度に基づいて、ベルトループ用テープの供給異常を検出することを特徴とする。
【0016】
このように構成されたベルトループ用テープ供給装置によれば、制御手段は、移動量検出手段により検出されたベルトループ用テープの移動量から算出された移動速度に基づいて、ベルトループ用テープの供給異常検出することができる。これにより、例えば、ベルトループ用テープが各機構に詰まっている状態など、ベルトループ用テープの供給異常を検出することができる。
【0017】
請求項3に記載のベルトループ用テープ供給装置は、請求項2に記載のベルトループ用テープ供給装置であって、前記制御手段は、ベルトループ用テープの供給異常を検出すると、前記繰り出し手段の駆動を停止させることを特徴とする。
【0018】
このように構成されたベルトループ用テープ供給装置によれば、特に、ベルトループ用テープの供給異常がある場合、制御手段は繰り出し手段の駆動を停止させることにより、従来ベルトループ用テープ供給装置において生じていたトラブルを防止することができる。
【0019】
請求項4に記載のベルトループ用テープ供給装置は、請求項2または請求項3に記載のベルトループ用テープ供給装置であって、ベルトループ用テープの供給異常を作業者に通知するための警告手段を備え、前記制御手段は、ベルトループ用テープの供給異常を検出すると、前記警告手段を作動させることを特徴とする。
【0020】
このように構成されたベルトループ用テープ供給装置によれば、ベルトループ用テープの供給異常がある場合、制御手段は、前記警告手段を作動させてベルトループ用テープの供給異常を作業者に通知するため、作業者がいち早く復旧作業に取り掛かることができ、生産性の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のベルトループ用テープ供給装置によれば、ベルトループ用テープの移動量を直接検出するにより、正確で均一な長さのベルトループ用テープを供給することを可能とするとともに、ベルトループ用テープの供給状態に異常が発生しても作業者がいち早く復旧作業に取り掛かることができ、生産性の低下を防止することができるベルトループ用テープ供給装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のベルトループ用テープ供給装置の実施形態について説明する。本発明に係るベルトループ縫いミシンは、ベルトループを形成するベルトループ用テープTを被縫製物に縫い付けるミシンとしての基本構成を備えたものであるものとする。
【0023】
各実施形態のベルトループ用テープ供給装置1は、ベルトループ用テープ供給装置1の構成については、後述する移動量検出手段9および制御手段7を除いては、従来の構成と同様とし、以下には、図1および図2、図6を用いて、その要部のみを説明する。
【0024】
図1は、ベルトループ用テープ供給装置1の本実施形態を示す要部の平面図であり、後述する繰り出し手段4の繰り出しローラ4aと、引き出し手段の把持アーム5aとの間に、ベルトループ用テープTが掛け渡された状態を示す。また、図2は、図1のベルトループ用テープ供給装置1の要部と制御手段7との関係を示すブロック図である。
【0025】
ベルトループ用テープ供給装置1は、図1および図6に示すように、ベルトループ縫いミシンのミシン本体2の側部に配設され、ベルトループの材料となるベルトループ用テープTを繰り出し経路上に繰り出し、所定の長さに切断されたベルトループ用テープTをミシン本体2の縫製位置に供給する装置である。そして、このベルトループ用テープ供給装置1は、繰り出し手段4、図示しない引き出し手段、切断手段6、供給手段8、移動量検出手段9、光源10、制御手段7などから構成されている。
【0026】
前記繰り出し手段4は、ミシン本体2の側部に配設されたテープ送り出し台3の上部の繰り出し経路上にベルトループ用テープTを繰り出すもので、繰り出しローラ4a、当該繰り出しローラ4aを駆動するための繰り出しモータ4bなどを備えている。繰り出しローラ4aは、外周面全体に送り歯が形成された歯車状のものであり、図1における矢印Aの方向であるベルトループ用テープTの繰り出し方向と直交するようにして水平に配設された回転軸の一端部に取り付けられている。繰り出しローラ4aの下方には繰り出しモータ4bが配設されており、この繰り出しモータ4bの出力軸には、駆動用歯付きベルトプーリ(図示せず)が嵌着されている。また、前記回転軸の他端部には、従動用ベルトプーリ(図示せず)が嵌着されており、前記従動用ベルトプーリと前記駆動用歯付ベルトプーリとの間に、図示しないタイミングベルトが掛け渡され、前記繰り出しモータ4bの回転が繰り出しローラ4aに伝達するようになっている。前記繰り出しモータ4bは、後述する制御手段7により、所定の回転速度で所定の回転量だけ回転するように制御されている。
【0027】
前記引き出し手段は、テープ送り出し台3の終端部近傍(図1における把持アーム5aのつかみ位置)において、ベルトループ用テープTの先端部を挟持し、ベルトループ用テープTの繰り出し方向に引き出してくるものである。この引き出し手段は、固定アームと可動アームとからなる把持アーム5a、前記可動アームの鉛直方向の回動を駆動するための図示しないエアシリンダ、前記把持アーム5aの基端部に水平に接続された図示しない駆動ロッド、前記駆動ロッドを往復駆動するための把持アーム用モータ5aaなどを備えている。
【0028】
前記可動アームは前記固定アームの上部に平行に配置され、前記可動アームは、前記エアシリンダが往復動することにより、基端部を支点として鉛直方向に回動可能となっており、これにより、前記可動アームの先端部が前記固定アームの先端部に接離可能となっている。前記エアシリンダは、前記制御手段7により制御される把持アーム用電磁弁5abを介して駆動されるようになっている。
【0029】
前記把持アーム5aの基端部には前記駆動ロッドが固定されており、把持アーム用モータ5aaが回転することによって、ベルトループ用テープTの繰り出し方向および逆方向に往復移動するようになっている。前記把持アーム5aは、制御手段7による制御により、所定のタイミングで、把持アーム5aの前進位置まで前進し、把持位置に繰り出されているベルトループ用テープTの先端部を挟持する。そして、そのままベルトループ用テープTの繰り出し方向(図1における矢印Aの方向)に移動して、図1に示す、把持アーム5aの後退位置まで後退する。この把持アーム5aの動作により、図1に示すように、繰り出し手段4の繰り出しローラ4aと、前記引き出し手段の把持アーム5aとの間に、ベルトループ用テープTが所定の長さだけ掛け渡された状態になる。
【0030】
前記切断手段6は、可動刃6a、図示しない固定刃、前記可動刃6aを上下方向に駆動するためのエアシリンダ(図示しない)などから構成されている。可動刃6aは、テープ送り出し台3の終端部近傍の上方に配置され、シャフトを介して前記エアシリンダの駆動により上下動するようになっている。前記固定刃は、繰り出し経路の下方であって、可動刃6aに対向する位置に配置されており、この固定刃と下降してくる可動刃6aにより、ベルトループ用テープTを切断するようになっている。前記エアシリンダは、制御手段7により切断用電磁弁6aaを介して、ベルトループ用テープTが所定の長さだけ掛け渡された後の所定のタイミングで駆動されるようになっている。
【0031】
前記供給手段8は、先端部が二股状に分かれた一対のフォーク8a,8aを備え、モータやカム機構により駆動されながら、所定の長さに切断されたベルトループ用テープTの両端部を挟んで折り曲げ、そのままミシン本体2の縫製位置に供給するものである。このため、供給手段8は、前記供給用モータ8b、前記カム機構を駆動するエアシリンダ(図示せず)を備え、前記制御手段7により、供給用モータ8bおよび供給用電磁弁8cを介して一対のフォーク8a,8aが駆動されるようになっている。一対のフォーク8a,8aは、フォーク8a,8aの待機位置からベルトループ用テープTの繰り出し方向と直交する方向に移動し、ベルトループ用テープTの折込位置において、ベルトループ用テープTの両端部を挟持した後、そのまま270度自転することにより両端部を折り込むようになっている。さらに、フォーク8a,8aは、この状態で繰り出し方向と直交する方向に移動することで、ミシン本体2の縫製位置に切断されたベルトループ用テープTを供給するようになっている。
【0032】
前記移動量検出手段9は、繰り出されているベルトループ用テープTの表面の画像を連続的に撮像し、撮像された前後のフレームを比較処理することにより、ベルトループ用テープTの動きをベクトルとして取り出すものである。図3に、移動量検出手段9を上方から見た模式図を示す。
【0033】
図3に示すように、移動量検出手段9は、繰り出し経路における繰り出しローラ4aよりも上流側のベルトループ用テープTの側部に配設され、ベルトループ用テープTの厚み部分の画像を撮像し、その撮像結果によりベルトループ用テープTの移動量を検出するようになっている。この移動量検出手段9は、ベルトループ用テープTの厚み部分の表面に照射光を投光する光源10、ベルトループ用テープTとイメージセンサ12との間に配置されたレンズ11、ベルトループ用テープTの表面からの反射光を受光する受光素子が複数個並列配置されたイメージセンサ12、イメージセンサ12が受光した信号を画像データとして処理し、連続した前後のフレームの画像データを比較処理するための処理回路(図示せず)などから構成されている。本実施形態のイメージセンサ12の前記処理回路は、1秒間に7080フレーム処理することが可能であるものとする。
【0034】
本実施形態のイメージセンサ12としては、CMOSイメージセンサを備えており、白黒64階調で光を感知することが可能な受光素子が、縦横各30画素で合計900画素配列されて構成されている。1ピクセルは0.0127mmであるので、受光部の視野範囲は、0.381mm×0.381mmとなっている。なお、測定対象によっては、被写体の視野範囲をこれより広くしても、または、狭くしてもよい。
【0035】
また、移動量検出手段9は、図3に示すように、後述する制御手段のCPU7aとシリアル通信で接続されており、CPU7aから送信されるコマンドにより、移動量に関するデータを返信するようになっている。
【0036】
なお、この移動量検出手段9は、繰り出し経路上に繰り出されているベルトループ用テープTの上方や下方に配設され、ベルトループ用テープTの表面や裏面の縫い目がある部分の画像を撮像して、ベルトループ用テープTの移動量を検出するようになっていてもよい。
【0037】
以下に、本実施形態のベルトループ用テープ供給装置1の制御回路について、図2および図3により説明する。図2に示すように、本実施形態のベルトループ用テープ供給装置1の制御回路は、制御手段7と、I/Oインターフェイス7dを介して制御手段7に接続されている繰り出しモータ4b、把持アーム用モータ5aa、把持アーム用電磁弁5ab、供給用モータ8b、供給用電磁弁8c、切断用電磁弁6aa、イメージセンサ12、警告手段としての異常警告灯14、操作パネル15、スタートスイッチ16などから構成されている。
【0038】
前記異常警告灯14は、制御手段7がベルトループ用テープTの繰り出し異常が検出された場合に点滅して作業者に通知するようになっている。なお、警告手段として、アラームを備えていてもよい。
【0039】
前記制御手段7は、CPU7a、RAM7b、ROM7cなどを備えており、ROM7cの記憶部に格納された制御プログラムや制御データなどに基づいて、ベルトループ用テープ供給装置1の各機構部の駆動を制御するようになっている。
【0040】
CPU7aは、図2および図3に示すように、イメージセンサ12の前記処理回路とシリアル通信で接続されており、一定時間間隔(以下、問い合わせ周期とする)ごとに、CPU7aからイメージセンサ12の処理回路にコマンドが送信されるようになっている。CPU7aからコマンドが送られると、イメージセンサ12の処理回路は、それまでに撮像したベルトループ用テープTの移動量に関するデータをCPU7aに返信するようになっている。
【0041】
本実施形態のCPU7aからイメージセンサ12の前記処理回路への問い合わせ周期は、一例として450μsとされているが、この問い合わせ周期は、450μsよりも短くてしても長くしてもよい。ただし、長くする場合には、移動量のデータを蓄えておくイメージセンサ12の内部のバッファが溢れてしまう恐れがあるので、容量を超えない範囲内で設定する必要がある。
【0042】
CPU7aと接続されているROM7cには、CPU7aがベルトループ用テープTの供給異常を判定する際に用いる閾値が記憶されている。なお、この閾値は、操作パネル15により任意に設定可能である。
【0043】
CPU7aは、イメージセンサ12の処理回路から返信された移動量からベルトループ用テープTの移動速度を算出し、この移動速度と上記の閾値を比較することにより、ベルトループ用テープTの供給異常を判定する。具体的には、移動速度が閾値を下回る場合は供給異常であると判定し、CPU7aはこの判定結果に基づいて、繰り出しモータ4bの停止や異常警告灯14などの制御を行うようになっている。
【0044】
また、本実施形態のCPU7aは、イメージセンサ12の処理回路から返信された移動量に基づいてベルトループ用テープTが所定長さで切断されるように、繰り出しモータ4b及び可動刃6aを下降させる切断用電磁弁6aaを制御するようになっている。具体的には、CPU7aは、可動刃6aの下降によりベルトループ用テープTが一度切断されると、繰り出しモータ4bを回転させてベルトループ用テープTの繰り出しを行い、イメージセンサ12の処理回路から返信された移動量に基づいてベルトループ用テープTの実際の繰り出し量を取得し、取得されたベルトループ用テープTの実際の繰り出し量が、ミシン本体2に供給すべきベルトループの長さとして操作パネル15により予め設定された所定長さと一致するまで繰り出しモータ4bの回転を継続し、その後、繰り出しモータ4bを停止させてから可動刃6aを下降させる。
【0045】
以下に、イメージセンサ12の処理回路における画像処理と、CPU7aによるベルトループ用テープTの移動速度の算出の方法について、図4により説明する。図4は、イメージセンサ12で捉えたベルトループ用テープTの表面の画像データの連続したフレームの模式図を示すものである。
【0046】
各フレームには、ベルトループ用テープTの表面の微細な特徴点が捉えられているものとする。例えば、図4において、左側のフレームでは、座標(x,y)にあった特徴点が、一定の時間経過後の中央のフレームでは、座標(x+3,y+1)に移動したとする。この場合、イメージセンサ12の前記処理回路は、左側のフレームの画像データと、中央のフレームの画像データとを比較処理することにより、特徴点がx方向に3画素、y方向に1画素移動したと判断する。
【0047】
問い合わせ周期内に、図4の左側のフレームから中央のフレームに変化し、CPU7aからΔx,Δyのコマンドが送信された場合、イメージセンサ12の前記処理回路は、各方向の移動量をピクセル値(上記の場合は、それぞれ3,1)で返信する。
【0048】
イメージセンサ12の前記処理回路から移動量が返信されると、CPU7aは、問い合わせ周期当たりの移動量から、ベルトループ用テープTの移動が開始された時点からの累積された移動量とベルトループ用テープTの移動速度を算出する。移動速度の算出は、例えば、上記のように特徴点がx方向に3画素、y方向に1画素移動した場合は、まず、1ピクセル=0.0127mmに基づいて、返信された移動量のピクセル値をミリ単位に変換する。次に、ミリ単位に変換された移動量を問い合わせ周期の時間で割ることによりベルトループ用テープTの移動速度を求めることができる。すなわち、(移動量(Lmm))÷(問い合わせ周期(450μs))により、ベルトループ用テープTの移動速度を求めることができる。
【0049】
なお、画素の微少な速度変化による誤制御を防止したい場合は、制御手段7のRAM7bに移動量バッファを設け、移動量のデータを蓄積させ、この蓄積したデータから移動速度を算出することができる。例えば、RAM7bに2,000周期(=450μs×2,000周期=0.9s)分の移動量を蓄積し、ベルトループ用テープTの移動速度をその時間内に移動した移動量で割ることにより、移動速度を算出する。すなわち、Σ(Lmm)÷(0.9s)で算出することができる。
【0050】
上記のような構成を備える本実施形態のベルトループ用テープ供給装置1における制御について、図5のフローチャートにより説明する。
【0051】
まず、ベルトループ用テープ供給装置1に電源が投入されると、ステップST1において、CPU7aは、ROM7cからミシン本体2に供給すべきベルトループの長さとして操作パネル15により予め設定された所定長さLと、ベルトループ用テープTの供給異常を判定する際に用いるベルトループ用テープTの移動速度である閾値Dを読み込む。
【0052】
次いで、ステップST2で、CPU7aは、可動刃6aを自動的に下降させベルトループ用テープTの端部を切断する。これは、ベルトループ用テープTの端部位置を切断位置に一致させるための動作であり、電源投入直前に作業者により予めベルトループ用テープTの端部が可動刃6aの切断位置よりも下流側に位置するようにベルトループ用テープTを引き出しておき、電源投入直後にベルトループ用テープTを切断することにより行われる。
【0053】
次に、ステップST3で、ミシン本体2に被縫製物がセットされ縫製の準備ができた際に操作されるスタートスイッチ16が操作されたか否かを判定する。ステップST3で、スタートスイッチ16が操作されたと判定すると(ステップST3のYes)、CPU7aは、繰り出しモータ4bを駆動して繰り出しローラ4aを回転させて、ベルトループ用テープTを繰り出す。次いで、上述したように、CPU7aは移動量検出手段9に移動量を問い合わせ、返信された問い合わせ周期当たりの移動量から、ステップST3で移動が開始されてからそれまでのベルトループ用テープTの移動量Mを算出するとともに(ステップST4)、移動速度Vを算出する(ステップST5)。
【0054】
次いで、CPU7aは、ステップST6で算出されたベルトループ用テープTの移動速度Vと、ステップST1で読み込まれた閾値Dとを比較する(ステップST7)。
【0055】
前記ステップST7において、算出された移動速度Vが閾値Dを上回る場合(ステップST7のNo)には、ステップST8に移行し、ステップST5でイメージセンサ12の処理回路から返信されたベルトループ用テープTの移動量MがステップST1で読み込まれたミシン本体2に供給すべきベルトループの長さLと一致し、ベルトループ用テープTの繰り出しが完了したか否かを判定する。次いで、ステップST8において、繰り出しが完了していないと判定された場合(ステップST8のNo)には、ステップS4に戻って、引き続き、繰り出しモータ4bを駆動する。
【0056】
また、前記ステップST8で、ベルトループ用テープTの繰り出しが完了していると判定された場合(ステップST8のYes)は、ステップST9に移行し、繰り出しモータ4bの駆動を停止する。次いで、ステップST10において、可動刃6aを下降させてベルトループ用テープTを切断する。その後、待機位置に待機していたフォーク8a,8aがベルトループ用テープTの折込位置に前進し、所定の長さに切断されたベルトループ用テープTの両端部を挟持した後、そのまま270度自転することによりベルトループ用テープTの両端部を折り込む。さらに、フォーク8a,8aがそのまま前進し、両端部が折り込まれたベルトループ用テープTがミシン本体の縫製位置に供給され、一つのベルトループの形成に必要なベルトループ用テープTの一連の供給動作を終了し(ステップST11)、再度ステップST3に戻って、次の被縫製物に対するスタートスイッチ16の操作を待つ。
【0057】
一方、ステップST7において、ベルトループ用テープTの移動速度Vが閾値Dを下回る場合(ステップST7のYes)は、CPU7aは、ベルトループ用テープTの供給異常であると判定し、繰り出しモータ4bを停止させ(ステップST12)、異常警告灯14を点滅させる(ステップST13)。これにより、作業者は、ベルトループ用テープTの供給において、詰まりや空回りなどの供給異常の発生を確認し、ベルトループ用テープTの交換や、引き出し手段と衝突して損傷したフォーク8a,8aや各機構の復旧作業などを行う。
【0058】
以上のような本実施形態のベルトループ用テープ供給装置1によれば、ベルトループ用テープTの実際の移動量Mに基づいて、当該移動量Mと予め設定されたベルトループの長さLとが一致するように繰り出しモータ4bの回転量と可動刃6aが制御されるので、繰り出しローラ4aの空回りなどにより繰り出しモータの回転量に対する実際の繰り出し量との間に繰り出し誤差が発生しても、正確で均一な長さのベルトループ用テープをミシン本体2に供給することができる。また、ベルトループ用テープTの繰り出し経路上での詰まりなどの供給異常が発生した場合、速やかに繰り出しモータ4bの停止や供給異常の報知がなされるので、作業者はいち早く、手間を掛けずに復旧作業に取り掛かることができ、生産性の低下を防止することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更できるものとする。たとえば、ROM7cには、ベルトループ用テープTの移動量の判定値を記憶させておき、CPU7aは、イメージセンサ12から返信された移動量に基づいて、ベルトループ用テープの供給状態を判定するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、移動量検出手段を、繰り出されているベルトループ用テープTの表面の画像を連続的に撮像するイメージセンサ12と撮像された連続した前後のフレームの画像を比較処理して移動量を検出して検出された移動量に関するデータを出力する処理回路とで構成したが、CPU7aがイメージセンサにより撮像された画像から移動量を検出するようにして、イメージセンサとCPU7aとで移動量検出手段9を構成しても良いことは、勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るベルトループ用テープ供給装置の本実施形態を示す要部の上面図であり、繰り出しローラとつまみアームとの間にベルトループ用テープが掛け渡された状態を示す図
【図2】本実施形態のベルトループ用テープ供給装置の要部と制御手段との関係を示すブロック図
【図3】本実施形態の移動量検出手段を上方から見た模式図
【図4】本実施形態のイメージセンサで捉えたベルトループ用テープ表面の画像データの連続したフレームの模式図
【図5】本実施形態のベルトループ用テープ供給装置の制御処理のフローチャート
【図6】従来のベルトループ用テープ供給装置の要部を示す斜視図
【符号の説明】
【0062】
1 ベルトループ用テープ供給装置
2 ミシン本体
3 テープ送り出し台
4 繰り出し手段
4a 繰り出しローラ
4b 繰り出しモータ
5a 把持アーム
5aa 把持アーム用モータ
5ab 把持アーム用電磁弁
6 切断手段
6a 可動刃
6aa 切断用電磁弁
7 制御手段
7a CPU
7b RAM
7c ROM
7d I/Oインターフェイス
8 供給手段
8a フォーク
8b 供給用モータ
8c 供給用電磁弁
9 移動量検出手段
10 光源
11 レンズ
12 イメージセンサ
14 異常警告灯
15 操作パネル
16 スタートスイッチ
A 繰り出し方向
T ベルトループ用テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトループ用テープを繰り出す繰り出しモータを有し、当該繰り出しモータの回転により所定の経路に沿ってベルトループ用テープを繰り出す繰り出し手段と、
前記所定の経路の終端部近傍に設けられ、ベルトループ用テープを所定の長さに切断する切断手段と、を備え、
ベルトループ用テープを縫製物に縫い付けるミシンに対して、前記切断手段により所定の長さに切断されたベルトループ用テープを供給するベルトループ用テープ供給装置において、
前記所定の経路において、繰り出されているベルトループ用テープの表面の画像を連続的に撮像し、撮像された前後の画像を比較処理し、ベルトループ用テープの移動量を検出する移動量検出手段と、
前記移動量検出手段により検出されたベルトループ用テープの移動量に基づいて、前記ベルトループ用テープが前記所定長さで切断されるように、前記繰り出しモータ及び前記切断手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするベルトループ用テープ供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移動量からベルトループ用テープの移動速度を算出し、算出された移動速度に基づいて、ベルトループ用テープの供給異常を検出することを特徴とする請求項1に記載のベルトループ用テープ供給装置。
【請求項3】
前記制御手段は、ベルトループ用テープの供給異常を検出すると、前記繰り出し手段の駆動を停止させることを特徴とする請求項2に記載のベルトループ用テープ供給装置。
【請求項4】
ベルトループ用テープの供給異常を作業者に通知するための警告手段を備え、
前記制御手段は、ベルトループ用テープの供給異常を検出すると、前記警告手段を作動させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のベルトループ用テープ供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−247608(P2009−247608A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99248(P2008−99248)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】