説明

ポジ型感光性組成物、該ポジ型感光性組成物に用いられる高分子化合物、該高分子化合物の製造方法及びポジ型感光性組成物を用いたパターン形成方法

【課題】半導体製造等の微細なパターン形成に用いられる、従来品よりも、高感度で、パターン倒れが改良されたポジ型感光性組成物、該ポジ型感光性組成物に使用される高分子化合物、該高分子化合物の製造方法及びポジ型感光性組成物を用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】末端に特定の一般式で表される構造を有する高分子化合物及び活性光線又は放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤を含有するポジ型感光性組成物、該ポジ型感光性組成物に使用される高分子化合物、該高分子化合物の製造方法及びそのポジ型感光性組成物を用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにその他のフォトファブリケーション工程に使用されるポジ型感光性組成物、該ポジ型感光性組成物に用いられる高分子化合物、該高分子化合物の製造方法及びポジ型感光性組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。さらに詳しくは250nm以下、好ましくは220nm以下の遠紫外線などの露光光源、および電子線などによる照射源とする場合に好適なポジ型感光性組成物、該ポジ型感光性組成物に用いられる高分子化合物、該高分子化合物の製造方法及びポジ型感光性組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学増幅系感光性組成物は、遠紫外光等の放射線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする反応によって、活性放射線の照射部と非照射部の現像液に対する溶解性を変化させ、パターンを基板上に形成させるパターン形成材料である。
【0003】
KrFエキシマレーザーを露光光源とする場合には、主として248nm領域での吸収の小さい、ポリ(ヒドロキシスチレン)を基本骨格とする樹脂を主成分に使用するため、高感度、高解像度で、且つ良好なパターンを形成し、従来のナフトキノンジアジド/ノボラック樹脂系に比べて良好な系となっている。
【0004】
一方、更なる短波長の光源、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を露光光源として使用する場合は、芳香族基を有する化合物が本質的に193nm領域に大きな吸収を示すため、上記化学増幅系でも十分ではなかった。
このため、脂環炭化水素構造を有する樹脂を含有するArFエキシマレーザー用レジストが開発されてきている。特開2003―167347号公報(特許文献1)、特開2003―223001号公報(特許文献2)には、多環酸分解繰り返し単位と、非酸分解繰り返し単位とを有する樹脂を含有する組成物が記載されている。これらの樹脂は、いずれも酸によって解離する、酸に対して不安定な保護基を有する化学増幅型レジストであるが、レジストパターンの一層の微細化が求められるなか、これらの保護基だけでは十分なレジスト性能を得ることが困難になってきている。
【0005】
そこで、特開2000−214587号公報(特許文献3)、特開2001−106737号公報(特許文献4)では、 酸解離性保護基を有する繰り返し単位を含む樹脂に、酸により解離する架橋部位を、その側鎖に導入したレジストポリマーも検討されている。これは、酸触媒により架橋結合が切断されることによって、露光領域と未露光領域の間の溶解コントラストが向上するものであるが、該ポリマーの重合には、ジアクリレート等の2官能性単量体を使用し、高分子鎖の側鎖での架橋反応を伴うが故に、生成するポリマーの分子量分布が極めて大きいために溶解性が悪く、且つ、超高分子量のポリマーが生成しやすいため、酸で分解した後でもアルカリ現像液に溶解しにくい難溶解性の高分子量成分が存在し、この溶け残りによって、微細なパターン形成時に欠陥が生じるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2003―167347号公報
【特許文献2】特開2003―223001号公報
【特許文献3】特開2000−214587号公報
【特許文献4】特開2001−106737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、主鎖末端に酸解離性の構造を導入した高分子化合物を含有することにより、高感度で、パターン倒れが改良されたポジ型感光性組成物、該ポジ型感光性組成物に使用される高分子化合物、該高分子化合物の製造方法及びポジ型感光性組成物を用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の通りである。
【0009】
(1) (A)主鎖末端に下記一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤
を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(1)に於いて、
1は、1価の有機基を表す。
2は、2価の連結基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
3又はR4は、R1上の炭素原子と結合し、環構造を形成してもよい。
【0012】
(2) 一般式(1)に於いて、R1が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価のチアゾリン環基、1価のオキサゾリン環基、1価のイミダゾリン環基又はこれらの少なくとも2つが結合して形成される1価の有機基を表し、R2が、アルキレン基、シクロアルキレン基、オキシアルキレン基、アリーレン基、2価のチアゾリン環基、2価のオキサゾリン環基、2価のイミダゾリン環基又はこれらの少なくとも2つが結合して形成される2価の連結基を表し、且つR3及びR4が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表すことを特徴とする(1)に記載のポジ型感光性組成物。
【0013】
(3) (A)主鎖末端に下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする高分子化合物。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(1)に於いて、
1は、1価の有機基を表す。
2は、2価の連結基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
3又はR4は、R1上の炭素原子と結合し、環構造を形成してもよい。
【0016】
(4) 下記一般式(2)で表される化合物と重合開始剤とを使用してエチレン性二重結合を有する重合性化合物の重合を行い、得られた高分子化合物にビニルエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物を反応させることを特徴とする高分子化合物の製造方法。
【0017】
【化3】

【0018】
一般式(2)に於いて、
2は、2価の連結基を表す。
【0019】
(5) (4)に記載の製造方法で得られた、主鎖末端に下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする高分子化合物。
【0020】
【化4】

【0021】
一般式(1)に於いて、
1は、1価の有機基を表す。
2は、2価の連結基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
3又はR4は、R1上の炭素原子と結合し、環構造を形成してもよい。
【0022】
(6) (1)又は(2)に記載のポジ型感光性組成物により、感光性膜を形成し、該感光性膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、酸触媒によって切断され親水基部位を発現させる主鎖末端を有する高分子化合物を含有することにより、露光領域と未露光領域の間の溶解コントラストの向上によって高感度とされ、且つ、露光領域と未露光領域境界面に於けるレジストパターンの平坦化によってパターン倒れが改良されたポジ型感光性組成物、該ポジ型感光性組成物に用いられる高分子化合物、該高分子化合物の製造方法及びポジ型感光性組成物を用いたパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0025】
(A)主鎖末端に一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物
本発明のポジ型感光性組成物は、主鎖末端に下記一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物を含有する。
【0026】
【化5】

【0027】
一般式(1)に於いて、
1は、1価の有機基を表す。
2は、2価の連結基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
3又はR4は、R1上の炭素原子と結合し、環構造を形成してもよい。
【0028】
一般式(1)に於いて、R1の1価の有機基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価のチアゾリン環基(チアゾリンから水素原子が1個除かれた基、以下、同様)、1価のオキサゾリン環基、1価のイミダゾリン環基又はこれらの少なくとも2つが結合して形成される1価の有機基であることが好ましく、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられ、更により好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアリール基が挙げられ、特に好ましくは、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基が挙げられる。その中でもドライエッチング耐性の点で炭素数6〜20のシクロアルキル基、例えばシクロヘキシル基、ノルボルナン基、アダマンタン基が好適に用いられる。R1の1価の有機基は、内部に、オキシ基、カルボニル基等を有していてもよい。
2の2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、オキシアルキレン基、アリーレン基、2価のチアゾリン環基(チアゾリンから水素原子が2個除かれた基、以下、同様)、2価のオキサゾリン環基、2価のイミダゾリン環基又はこれらの少なくとも2つが結合して形成される2価の連結基であることが好ましく、より好ましくは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基が挙げられ、更により好ましくは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、炭素数1〜10のアリーレン基が挙げられ、特に好ましくは、炭素数6〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、炭素数4〜10のオキシアルキレン基が挙げられる。R2の2価の連結基の好ましい具体例として、エチレン基、フェニレン基が挙げられる。R2の2価の連結基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等で置換されていてもよい。
3及びのR4が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基であることが好ましく、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、熱安定性の点で、R3及びR4の少なくとも一方が水素原子で、他方がメチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基あることが特に好ましい。
3又はR4と、R1上の炭素原子とが結合して環構造を形成する際に、R3又はR4と、R1とが結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基を挙げることができる。
【0029】
以下、本発明の高分子化合物が、主鎖末端に有する、一般式(1)で表される構造の具体例(S1〜S24)を示すが、これらに限定されるものではない。
【0030】
【化6】

【0031】
本発明の、主鎖末端に一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物は、新規化合物である。
次に本発明の高分子化合物の製造方法について説明する。
本発明の高分子化合物は、ヒドロキシル基、フェノール基等の水酸基を有するチオール化合物と重合開始剤を用いてエチレン性二重結合を有する重合性化合物を重合して得られた、水酸基を末端に有する高分子化合物(X)にビニルエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物を反応させることにより、製造することができる。
【0032】
まず、高分子化合物(X)の合成に使用される重合開始剤に関して説明する。
重合開始剤は、一般にラジカル発生剤として用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を単独若しくは混合して用いることができる。
【0033】
次に、高分子化合物(X)の合成に使用されるチオール化合物について説明する。
チオール化合物は、ヒドロキシル基、フェノール基等の水酸基を有するチオール化合物が使用され、ArFエキシマレーザー用レジストに使用する場合は、ヒドロキシル基を有していることが好ましい。
【0034】
チオール化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
【化7】

【0036】
一般式(2)に於いて、
2は、2価の連結基を表し、一般式(1)に於けるR2と同義である。
【0037】
チオール化合物の特に好ましい例として、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール等が挙げられる。
【0038】
次に、本発明の高分子化合物の合成方法について説明する。
本発明の高分子化合物は、前述の高分子化合物(X)に好ましくは酸触媒を用いてビニルエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物を反応(アセタール化反応)させることで製造することができる。
本発明の高分子化合物の合成に用いられる酸触媒としては、無機酸、有機酸の何れも用いることができる。有機酸は残留金属不純物が無いことから好ましく、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩等がより好ましい。
【0039】
アセタール化反応を停止させる目的で、塩基化合物による中和を行うことが好ましい。中和を行うことにより、酸が残存し、ポジ型感光性組成物の貯蔵安定性が損なわれることを防ぐことができる。用いる塩基化合物としては、添加した触媒としての酸を中和し、水
洗工程で塩が除去されればよく、特に限定されない。なかでも、有機塩基化合物は残留金属不純物が無いことから好ましく、具体的にはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、アミノピリジン、ピペラジン、イミダゾール等が挙げられ、トリエチルアミン、ピリジンが特に好ましい。アセタール化反応を完了し、中和した後は、超純水等を用いて系中に残存している塩を除去することが好ましい。
【0040】
反応に用いられる有機溶媒としては、不活性溶媒であれば特に制限されないが、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、2−ヘプタノン、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。なかでも、PGMEA、2−ヘプタノンが好ましい。
反応溶媒は、高分子化合物(X)100質量部に対して、通常100〜1000質量部用いられる。
【0041】
本発明で用いられるビニルエーテル化合物及びハロメチルエーテル化合物は、特に限定されないが、好ましい具体例としては、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキシルエチルビニルエーテル、フェノキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルフェノキシエチルビニルエーテル、4−カルボニルシクロヘキシルフェノキシエチルビニルエーテル、t−ブチルシクロヘキシルカルボニルオキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルチオエチルビニルエーテル、n−ブチルシクロヘキシルカルボニルオキシエチルビニルエーテル等が挙げられるが、実質的にポリマー中の水酸基との間でアセタール化反応をおこすものであればよく、上記のものに限定されない。
特に好ましい具体例としては以下の化合物が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0042】
【化8】

【0043】
高分子化合物(X)の製造方法においては、チオール化合物(S)と重合開始剤(I)の使用量は、添加モル比(I/S)が10.0以下であることが好ましい。添加モル比(I/S)が10.0以下とすることにより、主鎖末端に重合開始剤由来の残基が導入された高分子化合物の割合が減り、露光部に於いて、末端に導入された酸分解基の溶解促進効果を十分に引き出すことができる。
【0044】
一般にメルカプト化合物等の連鎖移動剤を利用したテロマー化反応は、以下の式に従って反応が進行するため、高分子末端に導入される単位は最初の重合開始剤と連鎖移動剤のモル比が重要になる。
【0045】
【化9】

【0046】
本発明に於いては、高分子化合物の末端の酸分解基が切断される必要があるので、チオール化合物(連鎖移動剤)の割合が重合開始剤よりもモル比で多いことが好ましいことが分かる。本発明に於いては、I/S値が10.0以下、好ましくは5.0以下、上記スキームを鑑みると好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.5以下である。特に1.0以下の場合に、主鎖末端に一般式(1)で表される構造(酸分解末端構造)が導入された高分子化合物の割合が、重合開始剤由来の残基が導入された高分子化合物の割合よりも多くなるため特に好ましい。従って、本発明の製造方法により合成された高分子化合物をレジスト組成物として用いた場合には、末端酸切断による溶解促進効果がより大きく発揮されることになり、露光領域と未露光領域の間の溶解コントラストが向上し、従来品よりもレジスト感度を高めることができる。又、露光部と未露光部境界面におけるレジストパターンの平坦化によるパターン倒れの改善効果をより顕著に発揮することができる。
また、チオール化合物の使用量は、原料モノマーの全モル数に対し、0.1〜50モル%、好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは2.5〜10モル%の範囲で好適に使用される。チオール化合物の添加量が多いほど高分子化合物中に一般式(1)で表される構造の含有量が多くなるが、得られる高分子化合物の分子量が小さくなるので、レジスト組成物として本発明の高分子化合物を使用する際には、上記範囲の添加量が好ましい。また、重合開始剤は、重合反応に用いる原料モノマーや、連鎖移動剤の種類、量及び重合温度や重合溶媒の重合条件により異なるので、一概に規定することはできないが、前述I/S比を満たした上で、連鎖移動剤1モルに対して0.1〜120モル%(I/S比で表すと0.001〜1.2)、好ましくは1〜50モル%(I/S比で表すと0.01〜0.5)、より好ましくは10〜30モル%(I/S比で表すと0.1〜0.3)の範囲から選択される。
【0047】
高分子化合物(X)を製造する際に用いられる原料モノマーとしては、反応的にはエチレン性二重結合を有する重合性化合物(モノマー)であれば特に限定されないが、高分子化合物が、酸の作用によって酸解離性保護基が解離し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大するポジ型感光性樹脂であるためには、少なくとも、酸の作用によって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有する繰り返し単位(酸分解性繰り返し単位)(A)を必須成分として有する。
【0048】
酸の作用によって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有する繰り返し単位(A)は、従来よりレジストとして一般的に用いられている構造を意味し、酸に
よって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有するモノマーを重合させるか、アルカリ可溶性の構造を有するモノマーを重合させた後、アルカリ可溶性基を酸解離性基で保護することにより得ることができる。
【0049】
酸の作用によって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有する繰り返し単位(A)としては、下記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位及び下記一般式(II−AB)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
【化10】

【0051】
一般式(pI)〜(pV)中、
11は、アルキル基を表す。
Zは、炭素原子とともにシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0052】
【化11】

【0053】
一般式(II−AB)中、
11'及びR12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z'は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
但し、Z’は、少なくとも1つの酸の作用により解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(酸分解性基)を有する。
【0054】
上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが好ましい。
【0055】
【化12】

【0056】
一般式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
13'〜R16'は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−COOH、−COOR5、酸分解性基、−C(=O)−X−A'−R17'、アルキル基あるいはシクロアルキル基を表す。但し、R13'〜R16'の内の少なくとも1つは、酸分解性基を表す。Rl3'〜R16'のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
ここで、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO2−又は−NHSO2NH−を表す。
A'は、単結合又は2価の連結基を表す。
17'は、−COOH、−COOR5、−CN、水酸基、アルコキシ基、−CO−NH−R6、−CO−NH−SO2−R6又はラクトン構造を有する基を表す。
6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0057】
一般式(pI)〜(pV)において、R11〜R25におけるアルキル基としては、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。
【0058】
12〜R25におけるシクロアルキル基或いはZと炭素原子が形成するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。
【0059】
好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基等を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。
【0060】
上記のアルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
アルキル基、シクロアルキル基の置換基としては、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が、更に有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0061】
上記樹脂における一般式(pI)〜(pV)で示される構造は、アルカリ可溶性基の保護に使用することができる。アルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
【0062】
具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基、チオール基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造などが挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
【0063】
一般式(pI)〜(pV)で示される構造で保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位は、酸分解性繰り返し単位であり、下記一般式(pA)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0064】
【化13】

【0065】
一般式(pA)中、
Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを表す。好ましくは単結合である。
Rp1は、上記一般式(pI)〜(pV)のいずれかの基を表す。
【0066】
一般式(pA)で表される繰り返し単位は、好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
【0067】
以下、一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0068】
【化14】

【0069】
前記一般式(II−AB)に於ける、R11'及びR12'のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子等を挙げることができる。
【0070】
11'及びR12'におけるアルキル基としては、炭素数1〜10個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0071】
Z'の脂環式構造を形成するための原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭
化水素の繰り返し単位を樹脂に形成する原子団であり、中でも有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成する有橋式脂環式構造を形成するための原子団が好ましい。
【0072】
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pV)に於けるR12〜R25のシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0073】
Z'の脂環式構造を形成するための原子団は、少なくとも1つの酸分解性基を有する。
酸分解性基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基等のアルカリ可溶性基の水素原子が、酸の作用により脱離する基で保護された基を挙げることができる。
酸の作用により脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0074】
上記脂環式炭化水素の骨格には置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、前記一般式(II−AB1)あるいは(II−AB2)中のR13'〜R16'を挙げることができる。
【0075】
本発明に係る高分子化合物においては、酸分解性繰り返し単位は、前記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び後記共重合成分の繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位として有することができる。
酸分解性繰り返し単位は1種を用いてもよいが、酸脱離基の炭素数の異なる2種以上の酸分解性繰り返し単位を併用することが好ましい。これにより解像力、露光ラチチュードのバランスが良好になる。
【0076】
一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)におけるR13'〜R16'の各種置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造を形成するための原子団ないし有橋式脂環式構造を形成するための原子団Zの置換基ともなり得る。
【0077】
一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)で表される繰り返し単位として、下記具体例が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0078】
【化15】

【0079】
繰り返し単位(A)としては、単環の脂環炭化水素基を有する繰り返し単位が好ましい。
【0080】
また、発明の製造方法により製造される高分子化合物は、ラクトン基を有することが好ましい。ラクトン基としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0081】
【化16】

【0082】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する(Rb2)は同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0083】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を有するもの(例えば−COOR5のR5が一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を表す)、又は下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0084】
【化17】

【0085】
一般式(AI)中、
Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rb0は、水素原子及びメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される連結基である。Ab1は、直鎖若しくは分岐状アルキレン基又は単環若しくは多環のシクロアルキレン基を表し、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のうちのいずれかで表される構造を有する基を表す。
【0086】
ラクトン構造を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0087】
ラクトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
【0088】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0089】
【化18】

【0090】
【化19】

【0091】
【化20】

【0092】
特に好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン構造を選択することにより、パターンプロファイル、粗密依存性が良好となる。
【0093】
【化21】

【0094】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物は、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としては水酸基、シアノ基が好ましい。好ましい極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0095】
【化22】

【0096】
一般式(VIIa)〜(VIIc)中、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つは水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c〜R4cのうち1つまたは2つが水酸基で残りが水素原子である。一般式(VIIa)において、更に好ましくはR2c〜R4cのうち2つが水酸基で残りが水素原子である。
【0097】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB)2中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有するもの(例えば−COOR5のR5が一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を表す)、又は下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0098】
【化23】

【0099】
一般式(AIIa)〜(AIId)中、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つは水酸基又はシアノ基を表す。R2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於けるR2c〜R4cと同義である。
【0100】
極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは10〜25mol%である。
【0101】
一般式(AIIa)〜(AIIb)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0102】
【化24】

【0103】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0104】
【化25】

【0105】
一般式(VIII)に於いて、
2は、−O−又は−N(R41)−を表す。R41は、水素原子、水酸基、アルキル基又は−OSO2−R42を表す。R42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R41及びR42のアルキル基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等で置換されていてもよい。
【0106】
一般式(VIII)で表される繰り返し単位として、以下の具体例が挙げられるが、
本発明は、これらに限定されない。
【0107】
【化26】

【0108】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子吸引性基で置換された脂肪族アルコール(好ましくは下記一般式(F1)で表される構造)が挙げられ、カルボキシル基、スルホンアミド基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0109】
【化27】

【0110】
一般式(F1)中、
50〜R55は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R50〜R55の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R50〜R55の全てがフッ素原子であることが好ましい。
【0111】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環または多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0112】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜20mol%が好ましく、より好ましくは3〜15mol%、更に好ましくは5〜10mol%である。
【0113】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0114】
【化28】

【0115】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物は、更に脂環炭化水素構造を有し、酸
分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0116】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0117】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
これにより、高分子化合物に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移点)、
(3)アルカリ現像性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、
等の微調整が可能となる。
【0119】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0120】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0121】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0122】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物の好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。
(1) 上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位を含有するもの(側鎖型)。
好ましくは(pI)〜(pV)の構造を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を有するもの。
(2) 一般式(II−AB)で表される繰り返し単位を有するもの(主鎖型)。
但し、(2)においては例えば、更に以下のものが挙げられる。
(3) 一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、無水マレイン酸誘導体による繰り返し単位及び(メタ)アクリレートによる繰り返し単位を有するもの(ハイブリッド型)。
【0123】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物中、酸分解性繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0124】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物中、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中20〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0125】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物中、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜55モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0126】
また、上記更なる共重合成分の単量体に基づく繰り返し構造単位の樹脂中の含有量も、所望のレジストの性能に応じて適宜設定することができるが、一般的に、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し構造単位と一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の合計した総モル数に対して99モル%以下が好ましく、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
【0127】
本発明のポジ型感光性組成物がArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0128】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位、メタクリレート系繰り返し単位/アクリレート系繰り返し単位混合のいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。
【0129】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物としてより好ましくは、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30モル%有する共重合ポリマー、または更にその他の繰り返し単位を0〜20モル%有する共重合ポリマーである。
【0130】
特に好ましい高分子化合物としては、下記一般式(ARA-1)〜(ARA-5)で表される酸分解性繰り返し単位20〜50モル%、下記一般式(ARL-1)〜(ARL-6)で表されるラクトン基を有する繰り返し単位20〜50モル%、下記一般式(ARH-1)〜(ARH-3)で表される極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30モル%有する共重合ポリマー、または更にカルボキシル基、あるいは一般式(F1)で表される構造を有する繰り返し単位、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を5〜20モル%有する共重合ポリマーである。
式中、Rxy1は、水素原子またはメチル基、Rxa1及びRxb1は、各々独立に、メチル基またはエチル基を表す。
【0131】
【化29】

【0132】
【化30】

【0133】
本発明の高分子化合物に於ける、前記一般式(1)で表される構造と前記酸分解性繰り返し単位(A)との組み合わせは、一般式(1)で表される構造中の置換基R3及びR4の内の一方がアルキル基で、他方が水素原子であり、且つ、酸分解性繰り返し単位(ARA−1)〜(ARA−5)中の置換基Rxa1及びRxb1の内の少なくとも一方がメチル基である組み合わせが好ましい。
また、一般式(1)で表される構造中の置換基R1が多環脂環基であり、且つ酸分解性繰り返し単位(A)中に単環脂環基を有している場合が好ましい。
【0134】
本発明のポジ型感光性組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射する場合には、高分子化合物は、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有する酸分解性樹脂(以下、「ヒドロキシスチレン系酸分解性樹脂」ともいう)が好ましい。ヒドロキシスチレン系酸分解性樹脂として、好ましくは、ヒドロキシスチレン/酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレン共重合体、ヒドロキシスチレン/(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル共重合体、ヒドロキシスチレン/酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレン/(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル共重合体、ヒドロキシスチレン/酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレン/スチレン共重合体、ヒドロキシスチレン/(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル/スチレン共重合体、ヒドロキシスチレン/酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレン/(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル/スチレン共重合体等を挙げることができる。
【0135】
ヒドロキシスチレン系酸分解性樹脂に於いて、酸分解性基の含有率は、樹脂中の酸分解性基の数(B)と酸の作用により脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基の数(S)をもって、B/(B+S)で表される。含有率は、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.05〜0.50、更に好ましくは0.05〜0.40である。
【0136】
高分子化合物(X)は、常法に従って、例えばラジカル重合により重合させることができる。例えば、一般的重合方法としては、モノマー種、チオール化合物及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種、チオール化合物及び重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のポジ型感光性組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
チオール化合物及び重合開始剤としては、前記のチオール化合物及び重合開始剤を使用することができる。
反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望の高分子化合物(X)を回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0137】
本発明の高分子化合物は、次いで、高分子化合物(X)にビニルエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物を反応(アセタール化反応)させることで製造することができる。
【0138】
本発明に係る高分子化合物の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
分子量分布は通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0139】
本発明のポジ型感光性組成物において、本発明に係わる全ての高分子化合物の組成物全体中の配合量は、全固形分中60〜99質量%が好ましく、より好ましくは80〜98質量%である。
また、本発明において、高分子化合物は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0140】
以下、本発明の高分子化合物に於ける、繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0141】
【化31】

【0142】
【化32】

【0143】
【化33】

【0144】
【化34】

【0145】
【化35】

【0146】
【化36】

【0147】
【化37】

【0148】
【化38】

【0149】
【化39】

【0150】
【化40】

【0151】
【化41】

【0152】
【化42】

【0153】
本発明の製造方法により製造される高分子化合物は、ポジ型感光性組成物に好適に使用される。
以下、ポジ型感光性組成物に用いる本発明の高分子化合物以外の成分について説明する。
【0154】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のポジ型感光性組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(「光酸発生剤」ともいう)を含有する。
そのような光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0155】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0156】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0157】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0158】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0159】
【化43】

【0160】
一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4、PF6、SbF6などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0161】
好ましい有機アニオンとしては下記一般式(AN1)〜(AN4)に示す有機アニオンが挙げられる。
【0162】
【化44】

【0163】
一般式(AN1)及び(AN2)に於いて、
Rc1は、有機基を表す。
【0164】
一般式(AN1)〜(AN2)、Rc1における有機基としては、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。Rd1は、水素原子又はアルキル基を表し、結合しているアルキル基、シクロアルキル基、アリール基と環構造を形成してもよい。
Rc1の有機基としてより好ましくは、1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。Rc1において炭素原子を5個以上有する時、少なくとも1つの炭素原子は水素原子が全てフッ素原子で置換されているのではなく、水素原子を有していることが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。炭素数5以上のパーフロロアルキル基を有さないことにより生態への毒性が軽減する。
【0165】
Rc1の特に好ましい様態として、下記一般式で表される基を挙げることができる。
【0166】
【化45】

【0167】
上記一般式に於いて、
Rc6は、炭素数4以下、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2〜3のパーフロロアルキレン基、1〜4個のフッ素原子及び/または1〜3個のフロロアルキル基で置換されたフェニレン基を表す。
Axは、単結合又は2価の連結基(好ましくは、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−)を表す。Rd1は、水素原子又はアルキル基を表し、Rc7と結合して環構造を形成してもよい。
Rc7は、水素原子、フッソ原子、置換していてもよい、直鎖若しくは分岐状、単環若しくは多環のシクロアルキル基又はアリール基を表す。置換していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、置換基としてフッソ原子を有しないことが好ましい。
【0168】
前記一般式(AN3)及び(AN4)に於いて、
Rc3、Rc4及びRc5は、各々独立に、有機基を表す。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
【0169】
一般式(AN3)及び(AN4)に於ける、Rc3、Rc4及びRc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができる。
Rc3とRc4が結合して環を形成する場合に、Rc3とRc4が結合して形成される基としては、アルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2−4のパーフロロアルキレン基である。Rc3とRc4が結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上し、好ましい。
【0170】
前記一般式(ZI)に於ける、R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
201〜R203のうちの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0171】
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)及び(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0172】
尚、一般式(Z1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0173】
更に好ましい(Z1)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0174】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0175】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、一般式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を有する芳
香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0176】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖、分岐のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシメチル基であることがより好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
201〜R203としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0177】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0178】
【化46】

【0179】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於ける、X-と同様のものである。
【0180】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0181】
Rx及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシメチル基であることがより好ましい。
Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることがより好ましい。
直鎖状、分岐状、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
Rx、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0182】
前記一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207は、置換基を有していてもよい。R204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0183】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0184】
【化47】

【0185】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
206は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。R207として、好ましくは、アリール基である。R208として、好ましくは、電子吸引性基であり、より好ましくは、シアノ基又はフロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0186】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内でより好ましくは、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物であり、更に好ましくは(ZI)で表される化合物であり、更により好ましくは(ZI−1)〜(ZI−3)で表される化合物である。
更に、活性光線又は放射線の照射により、下記一般式(AC1)〜(AC3)で表される酸を発生する化合物が好ましい。
【0187】
【化48】

【0188】
すなわち、特に好ましい光酸発生剤の様態として、一般式(ZI)で表される構造に於いて、X-が、前記一般式(AN1)、(AN3)、(AN4)から選ばれるアニオンである化合物を挙げることができる。
【0189】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0190】
【化49】

【0191】
【化50】

【0192】
【化51】

【0193】
【化52】

【0194】
【化53】

【0195】
光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
【0196】
光酸発生剤の組成物中の含量は、ポジ型感光性組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0197】
酸の作用により分解する基を有さない樹脂
本発明のポジ型感光性組成物は、酸の作用により分解する基を有さない樹脂を含有してもよい。
「酸の作用により分解する基を有さない」とは、本発明のポジ型感光性組成物が通常用いられる画像形成プロセスにおいて酸の作用による分解性が無いかまたは極めて小さく、実質的に酸分解による画像形成に寄与する基を有さないことである。このような樹脂としてアルカリ可溶性基を有する樹脂、アルカリの作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性が向上する基を有する樹脂があげられる。
酸の作用により分解する基を有さない樹脂としては、(メタ)アクリル酸誘導体および/又は脂環オレフィン誘導体から導かれる繰り返し単位を少なくとも1種有する樹脂が好ましい。
酸の作用により分解する基を有さない樹脂に含有されるアルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、1位または2位が電子吸引性基で置換された脂肪族水酸基、電子吸引性基で置換されたアミノ基(例えばスルホンアミド基、スルホンイミド基、ビススルホニルイミド基)、電子吸引性基で置換されたメチレン基またはメチン基(例えばケトン基、エステル基から選ばれる少なくとも2つで置換されたメチレン基、メチン基)が好ましい。
酸の作用により分解する基を有さない樹脂に含有されるアルカリの作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、ラクトン基、酸無水物基が好ましく、より好ましくはラクトン基である。
酸の作用により分解する基を有さない樹脂には、上記以外の他の官能基を有する繰り返し単位を有してもよい。他の官能基を有する繰り返し単位としては、ドライエッチング耐性、親疎水性、相互作用性などを考慮し、適当な官能基を導入することができる。他の繰り返し単位としては、水酸基、シアノ基、カルボニル基、エステル基などの極性官能基を
有する構成単位、単環または、多環環状炭化水素構造を有する繰り返し単位、シリコン原子、ハロゲン原子、フロロアルキル基を有する繰り返し単位またはこれらの複数の官能基を有する繰り返し単位である。
【0198】
好ましい酸の作用により分解する基を有さない樹脂の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0199】
【化54】

【0200】
酸の作用により分解する基を有さない樹脂の添加量は、高分子化合物に対し0〜30質量%であり、好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜15質量%である。
【0201】
アルカリ可溶性基、親水基、酸分解性基から選ばれるすくなくとも1つを有する、分子量3000以下の溶解制御化合物
本発明のポジ型感光性組成物には、アルカリ可溶性基、親水基、酸分解性基から選ばれるすくなくとも1つを有する、分子量3000以下の溶解制御化合物(以下、「溶解制御化合物」ともいう)を加えてもよい。
溶解制御化合物としては、カルボキシル基、スルホニルイミド基、α位がフロロアルキル基で置換された水酸基などのようなアルカリ可溶性基を有する化合物、水酸基やラクトン基、シアノ基、アミド基、ピロリドン基、スルホンアミド基、などの親水性基を有する化合物、または酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基または親水性基を放出する基を含有する化合物が好ましい。酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基または親水性基を放出する基としてはカルボキシル基あるいは水酸基を酸分解性基で保護した基が好ましい。溶解制御化合物としては220nm以下の透過性を低下させないため、芳香環を含有しない化合物を用いるか、芳香環を有する化合物を組成物の固形分に対し20wt%以下の添加量で用いることが好ましい。
好ましい溶解制御化合物としてはアダマンタン(ジ)カルボン酸、ノルボルナンカルボン酸、コール酸などの脂環炭化水素構造を有するカルボン酸化合物、またはそのカルボン酸を酸分解性基で保護した化合物、糖類などのポリオール、またはその水酸基を酸分解性基で保護した化合物が好ましい。
【0202】
本発明における溶解制御化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である。
【0203】
溶解制御化合物の添加量は、ポジ型感光性組成物の固形分に対し、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。
【0204】
以下に溶解制御化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0205】
【化55】

【0206】
塩基性化合物
本発明のポジ型感光性組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減あるいは、露光によって発生した酸の膜中拡散性を制御するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。
【0207】
塩基性化合物としては含窒素塩基性化合物、オニウム塩化合物を挙げることができる。好ましい含窒素塩基性化合物構造として、下記一般式(A)〜(E)で示される部分構造を有する化合物を挙げることができる。
【0208】
【化56】

【0209】
一般式(A)に於いて、
250、R251及びR252は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、ここでR250とR251は互いに結合して環を形成してもよい。これらは置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基又は炭素数3〜20のアミノシクロアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数3〜20のヒドロキシシクロアルキル基が好ましい。これらはアルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでも良い。
一般式(E)に於いて、
253、R254、R255及びR256は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。
【0210】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジンを挙げることができ、置換基を有していてもよい。更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0211】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等があげられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどがあげられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシドなどがあげられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等があげられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0212】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上で用いられる。塩基性化合物の使用量は、ポジ型感光性組成物の固形分を基準として、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。十分な添加効果を得る上で0.001質量%以上が好ましく、感度や非露光部の現像性の点で10質量%以下が好ましい。
【0213】
フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤
本発明のポジ型感光性組成物は、更に、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
【0214】
本発明のポジ型感光性組成物がフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤とを含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
【0215】
これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
【0216】
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新
秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファッ
クF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0217】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
【0218】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0219】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、などを挙げることができる。
【0220】
フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤の使用量は、ポジ型感光性組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0221】
表面疎水化樹脂
本発明のポジ型感光性組成物には、表面疎水化樹脂を含有させることができる。
本発明のポジ型レジスト組成物からなるレジスト膜を液浸水を介して露光する場合には、ポジ型レジスト組成物には必要に応じてさらに表面疎水化樹脂を添加することができる。これにより、レジスト膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性をよくすることができる。表面疎水化樹脂としては、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂であれば何でもよいが、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。添加量は、レジスト膜の後退接触角は60°〜80°になるよう適宜調整して使用できるが、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0222】
有機溶剤
本発明のポジ型感光性組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤に溶解して用いる。
【0223】
使用し得る有機溶剤としては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0224】
本発明において、有機溶剤としては、単独で用いても混合して用いても良いが、異なる官能基を有する2種以上の溶剤を含有する混合溶剤を用いることが好ましい。これにより素材の溶解性が高まり、経時におけるパーティクルの発生が抑制できるだけでなく、良好なパターンプロファイルが得られる。溶剤が含有する好ましい官能基としては、エステル
基、ラクトン基、水酸基、ケトン基、カーボネート基が挙げられる。異なる官能基を有する混合溶剤としては以下の(S1)〜(S5)の混合溶剤が好ましい。
(S1)水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤、
(S2)エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤とを混合した混合溶剤、
(S3)エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤とを混合した混合溶剤、
(S4)エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤とを混合した混合溶剤、
(S5)エステル構造を有する溶剤とカーボネート構造を有する溶剤と水酸基を有する溶剤とを含有する混合溶剤。
これによりレジスト液保存時のパーティクル発生を軽減でき、また、塗布時の欠陥の発生を抑制することができる。
【0225】
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルがより好ましい。
【0226】
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンが特に好ましい。
【0227】
ケトン構造を有する溶剤としてはシクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどが挙げられ、好ましくはシクロヘキサノンである。
エステル構造を有する溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、酢酸ブチルなどが挙げられ、好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
ラクトン構造を有する溶剤としてはγ−ブチロラクトンが挙げられる。
カーボネート構造を有する溶剤としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネートが挙げられ、好ましくはプロピレンカーボネートである。
【0228】
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは40/60〜80/20である。エステル構造を有する溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤との混合比(質量)は、70/30〜99/1、好ましくは80/20〜99/1、更に好ましくは90/10〜99/1である。エステル構造を有する溶剤を70質量%以上含有する混合溶剤が経時安定性の点で特に好ましい。
エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤を混合
する際は、エステル構造を有する溶剤を30〜80質量%、ラクトン構造を有する溶剤を1〜20質量%、水酸基を含有する溶剤を10〜60質量%含有することが好ましい。
エステル構造を有する溶剤とカーボネート構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤を混合する際は、エステル構造を有する溶剤を30〜80質量%、カーボネート構造を有する溶剤を1〜20質量%、水酸基を含有する溶剤を10〜60質量%含有することが好ましい。
【0229】
これら溶剤の好ましい様態としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を含有する溶剤であり、より好ましくはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートと他の溶剤の混合溶剤であり、他の溶剤が水酸基、ケトン基、ラクトン基、エステル基、エーテル基、カーボネート基から選ばれる官能基、あるいはこれらのうちの複数の官能基を併せ持つ溶剤から選ばれる少なくとも1種である。特に好ましい混合溶剤は、乳酸エチル、γブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、シクロヘキサノンから選ばれる少なくとも1種とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶剤である。
最適な溶剤を選択することにより現像欠陥性能を改良することができる。
【0230】
<その他の添加剤>
本発明のポジ型感光性組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、前記フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤、光増感剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等を含有させることができる。
【0231】
本発明で使用できる現像液に対する溶解促進性化合物は、フェノール性OH基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。
【0232】
これら溶解促進性化合物の好ましい添加量は、高分子化合物に対して2〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%である。現像残渣抑制、現像時パターン変形防止の点で50質量%以下が好ましい。
【0233】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号、欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
【0234】
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0235】
本発明においては、前記フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を加えることもできる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪族エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル類等のノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0236】
これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また、いくつかの組み合わせで添加することもできる。
【0237】
(パターン形成方法)
本発明のポジ型感光性組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターは0.1ミクロン以下、より好ましくは0.05ミクロン以下、更に好ましくは0.03ミクロン以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0238】
例えば、ポジ型感光性組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、感光性膜を形成する。
当該感光性膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。
活性光線又は放射線の照射時に感光性膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。また、液浸露光を行なう際に液浸媒体と感光性膜が直接触れ合わないようにするために感光性膜の上にさらにオーバーコート層を設けても良い。これにより感光性膜から液浸媒体への組成物の溶出が抑えられ、現像欠陥が低減する。
【0239】
感光性膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0240】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下の波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等であり、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)、電子ビームが好ましい。
【0241】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【実施例】
【0242】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、得られた高分子化合物の平均重量分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果より求めた。
【0243】
合成例1(高分子化合物(X1)の合成)
窒素気流下、シクロヘキサノン4.8gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに、下記モノマーA 4.49g、モノマーB 2.52g、モノマーC 4.95g、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):和光純薬製) 0.0985g、2−メルカプトエタノール 0.234gをシクロヘキサノン43.0gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後メタノール500mに20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、高分子化合物(X1)が8.0g得られた。得られた高分子化合物(X1)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で7050、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。
【0244】
【化57】

【0245】
合成例2(高分子化合物(R−1)の合成)
高分子化合物(X1) 3.0gと、下記ビニルエーテル(V1)0.42gをTHF50mlに溶解し、p−トルエンスルホン酸を40mg加え、室温で4時間攪拌した。反応終了後、トリエチルアミンで中和し、メタノール450ml/水50mlの混合溶液に反応液を滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、目的の高分子化合物(R−1)が2.8g得られた。得られた高分子化合物(R−1)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で7200、分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
【0246】
【化58】

【0247】
同様の手法を用いて高分子化合物(R−2)〜(R−17)を合成した。
高分子化合物(R−1)〜(R−17)に於ける、チオール化合物、ポリマー末端構造、重合開始剤とその使用量、添加モル比(I/S値)、繰り返し単位、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を下記表1に示す。尚、表1中、チオール化合物(S)と重合開始剤(I)の含有量は、全モノマーモル数に対する各化合物のモル%で示した。
【0248】
合成例3(比較高分子化合物(CR−1)の合成)
窒素気流下、シクロヘキサノン4.8gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに、前記モノマーA 4.49g、モノマーB 2.52g、モノマーC 4.95g、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):和光純薬製) 0.657gをシクロヘキサノン43.0gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後メタノール500mに20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、目的の比較高分子化合物(CR−1)が8.2g得られた。得られた比較高分子化合物(CR−1)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で7650、分散度(Mw/Mn)は1.8であった。
【0249】
【表1】

【0250】
表1中の重合開始剤(V−601)は、ジメチル−2、2‘−アゾビス(2−メチルプ
ロピオネート)を表す。
繰り返し単位(A−1)〜(A−12)は、次の通りである。
【0251】
【化59】

【0252】
実施例1〜29及び比較例1
<レジスト組成物調製>
下記表2に示す成分及び界面活性剤(トロイケミカル製トロイゾルS−366:0.01g)をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールメチルエーテルの6/4混合溶剤に溶解させ固形分濃度8質量%の溶液を調製し、これを0.03 mのポリエチレンフィルターでろ過してポジ型レジスト溶液を調製した。調製したポジ型レジスト溶液を下記の方法で評価し、結果も表2に示した。
【0253】
<レジスト評価>
スピンコーターにてヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上にブリューワーサイエンス社製反射防止膜DUV−42を600オングストローム均一に塗布し、100℃で90秒間ホットプレート上で乾燥した後、190℃で240秒間加熱乾燥を行った。その後、各ポジ型レジスト溶液をスピンコーターで塗布し120℃で60秒乾燥を行い150nmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜に対し、マスクを通してArFエキシマレーザーステッパー(ASML社製 NA=0.75、2/3輪帯)で露光し、露光後直ぐに120℃で60秒間ホットプレート上で加熱した。さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインパターンを得た。
感度評価方法:
ラインパターンを形成可能な最小露光量を感度とした。
パターン倒れ評価法:
75nmライン/90nmスペースのマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量からさらに露光量を増大させて形成されるラインパターンの線幅を細らせた際に、パターンが倒れずに解像する線幅をもって定義した。値が小さいほど、より微細なパターンが倒れずに解像することを表し、パターン倒れが発生しにくく、解像力が高いことを示す。
【0254】
【表2】

【0255】
表2中の略号に対応する化合物は以下に示す化合物である。
【0256】
〔酸発生剤〕
【0257】
【化60】

【0258】
〔塩基性化合物〕
TPSA:トリフェニルスルホニウムアセテート
DIA:2,6−ジイソプロピルアニリン
TEA:トリエタノールアミン
DBA:N,N−ジブチルアニリン
PBI:2−フェニルベンズイミダゾール
TMEA:トリス(メトキシエトキシエチル)アミン
PEA:N−フェニルジエタノールアミン
【0259】
表2に示した結果の通り、本発明の高分子化合物を含有するポジ型レジスト組成物は、高感度であり、パターン倒れも良好であることが確かめられた。
【0260】
実施例30
高分子化合物を以下の高分子化合物に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作で、レジスト調製、塗設を行い、レジスト膜を得た。但し、膜厚は0.40μmとした。さらに得られたレジスト膜に、KrFエキシマレーザーステッパー(キャノン(株)製FPA3000EX-5、波長248nm)を用いてパターン露光し、パターンの形成を確認した。本発明の高分子化合物がKrFエキシマレーザー露光によるパターン形成にも好適に用いることができることを確認した。また、主鎖末端に一般式(I)で表される構造を有さない高分子化合物を用いたレジスト膜がパターン形成に必要な最小露光量が50mJ/cm2であるのに対し、下記高分子化合物を用いたレジスト膜が35mJ/cm2であったことから、KrFエキシマレーザー露光においても高感度化することが確かめられた。
【0261】
【化61】

【0262】
実施例31
合成例1に於いて、更に下記繰り返し単位に相当するモノマー0.10gを加えた以外は、実施例1と全く同様の操作で、高分子化合物の合成、レジスト調製、塗設を行い、レジスト膜を得た。さらに得られたレジスト膜に、液浸液として純水を使用し、ArFエキシマレーザー液浸ステッパー(Na 0.85)を用いてパターン露光し、実施例1と同様にパターンを形成したところ、パターン形成に必要な最小感度は、15mJ/cm2であり、高感度であることが確認された。
【0263】
【化62】

【0264】
上記結果から、本発明の高分子化合物がArFエキシマレーザー液浸露光によるパターン形成にも好適に用いることができることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主鎖末端に下記一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物及び
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤
を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化1】

一般式(1)に於いて、
1は、1価の有機基を表す。
2は、2価の連結基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
3又はR4は、R1上の炭素原子と結合し、環構造を形成してもよい。
【請求項2】
一般式(1)に於いて、R1が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価のチアゾリン環基、1価のオキサゾリン環基、1価のイミダゾリン環基又はこれらの少なくとも2つが結合して形成される1価の有機基を表し、R2が、アルキレン基、シクロアルキレン基、オキシアルキレン基、アリーレン基、2価のチアゾリン環基、2価のオキサゾリン環基、2価のイミダゾリン環基又はこれらの少なくとも2つが結合して形成される2価の連結基を表し、且つR3及びR4が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表すことを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項3】
(A)主鎖末端に下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする高分子化合物。
【化2】

一般式(1)に於いて、
1は、1価の有機基を表す。
2は、2価の連結基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
3又はR4は、R1上の炭素原子と結合し、環構造を形成してもよい。
【請求項4】
下記一般式(2)で表される化合物と重合開始剤とを使用してエチレン性二重結合を有する重合性化合物の重合を行い、得られた高分子化合物にビニルエーテル化合物又はハロ
メチルエーテル化合物を反応させることを特徴とする高分子化合物の製造方法。
【化3】

一般式(2)に於いて、
2は、2価の連結基を表す。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法で得られた、主鎖末端に下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする高分子化合物。
【化4】

一般式(1)に於いて、
1は、1価の有機基を表す。
2は、2価の連結基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
3又はR4は、R1上の炭素原子と結合し、環構造を形成してもよい。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポジ型感光性組成物により、感光性膜を形成し、該感光性膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2008−127461(P2008−127461A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313912(P2006−313912)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】