説明

ポリマーおよびその製造方法、絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜

【課題】比誘電率が低く、かつ、CMP耐性および薬液耐性に優れた絶縁膜を形成することができるポリマーおよびその製造方法、絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、(C)金属キレート化合物または酸触媒の少なくとも一方の存在下で共縮合することを含む。
【化1】


・・・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーおよびその製造方法、絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などに用いられる層間絶縁膜(特開平5−263045号公報、特開平5−315319号公報)として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜が使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低比誘電率の層間絶縁膜が開発されている(特開平11−340219号公報、特開平11−340220号公報)。
特に半導体素子などのさらなる高集積化や多層化に伴い、導体間の電気絶縁性のさらなる向上が要求されており、したがって、より低比誘電率でかつ機械的強度に優れた層間絶縁膜材料が求められるようになっている。
【0003】
さらに、近年の半導体装置の製造プロセスにおいては、平坦化を目的としてCMP(Chemical Mechanical Polishing)工程が用いられている。そのため、絶縁膜材料に高いCMP耐性が求められている。また、半導体装置の製造プロセスにおいては、層間絶縁膜のエッチングあるいはレジストのアッシングの後に洗浄が行われ、この洗浄工程では、希フッ酸等の薬液が用いられる。そのため、絶縁膜材料には、高い薬液耐性が求められている。
シリカ材料中の炭素含有量が高いほど、CMP工程やエッチング、アッシング工程における機械・薬液耐性が向上することがわかっており、そのようなことからポリカルボシラン等の炭素含有量の多い材料の開発が行われている(特開2001−127152号公報)。最近では加水分解性基含有シラン化合物および環状シラン化合物との縮合による炭素含有量の向上した材料なども開発されており、従来のポリオルガノシロキサン材料より耐性は改善されている。ただ、この環状シラン化合物を用いた場合、炭素量の比率を理論的には格段に上げることができるが、実際には環状シラン化合物を多く導入することは必ずしも容易ではなく、割合を増やしすぎると、未反応のシラノール部位が多くなることで、吸湿性が高まり誘電率を上げてしまうなどの欠点があった。またポリカルボシランの割合を増やすことで、機械的強度が下がることも知られている。
【特許文献1】特開平5−263045号公報
【特許文献2】特開平5−315319号公報
【特許文献3】特開平11−340219号公報
【特許文献4】特開平11−340220号公報
【特許文献5】特開2001−127152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、比誘電率が低く、CMP耐性および薬液耐性に優れるポリマーおよびその製造方法、絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様のポリマーの絶縁膜形成用組成物は、
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、(C)金属キレート化合物または酸触媒の少なくとも一方の存在下で共縮合して得られるポリマー、と有機溶剤とを含有する。
【0006】
【化1】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
(B)は、下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物である。
SiX’4−a ・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、X‘はハロゲン原子あるいはアルコキシル基、aは0〜3の整数を示す。)
Y’3−bSi−(R−SiZ’3−c ・・・・・(3)
〔式中、R,Rは同一または異なり、それぞれ水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、bおよびcは同一または異なり、0〜2の整数、Rは酸素原子,フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、eは1〜6の整数である)、Y’およびZ’は同一または異なり、ハロゲン原子またはアルコキシル基、ヒドロキシ基、アシロキシ基を示す。dは0または1を示す。〕
【0007】
本発明の第2の態様のポリマーの製造方法は、
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、(C)金属キレート化合物または酸触媒の少なくとも一方の存在下で共縮合して得られるポリマーの製造方法。
【0008】
【化2】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
(B)は、下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物である。
SiX’4−a ・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、X‘はハロゲン原子あるいはアルコキシル基、aは0〜3の整数を示す。)
Y’3−bSi−(R−SiZ’3−c ・・・・・(3)
〔式中、R,Rは同一または異なり、それぞれ水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、bおよびcは同一または異なり、0〜2の整数、Rは酸素原子,フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、eは1〜6の整数である)、Y’およびZ’は同一または異なり、ハロゲン原子またはアルコキシル基、ヒドロキシ基、アシロキシ基を示す。dは0または1を示す。〕
前記ポリマーの製造方法において、前記(C)成分が、下記一般式(4)で示される金属キレート化合物であることができる。
M(ORj−h ・・・・・(4)
(Rはキレート剤を示し、Mは金属原子を示し、Rはアルキル基またはアリール基を示し、jは金属Mの原子価を示し、hは1〜jの整数を表す。)
【0009】
前記ポリマーの製造方法において、前記(C)成分が、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物および有機カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることができる。
【0010】
前記ポリマーの製造方法において、下記一般式(5)で表される有機溶剤中にて行なうことができる。
10O(CHCHCHO)11 ・・・・・(5)
〔R10およびR11は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または
CHCO−から選ばれる1価の有機基を示し、kは1〜2の整数を表す。〕
【0011】
本発明の第3の態様のポリマーは、前記ポリマーの製造方法によって得られる。
本発明の第4の態様の絶縁膜の製造方法は、前記絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、30〜450℃に加熱することを含む。
本発明の第5の態様の絶縁膜の製造方法は、前記絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、高エネルギー線を照射することを含む。
本発明の第6の態様のシリカ系絶縁膜は、前記絶縁膜の製造方法により得られる。
【発明の効果】
【0012】
前記ポリマーの製造方法によれば、前記(A)成分のシラン化合物と、前記(B)成分のシラン化合物とを、前記(C)成分の存在下で共縮合することにより、ポリマー中の炭素原子の含有量をより高くすることができ、かつ、未反応のシラノール基の含有量を少なくすることができる。したがって、前記製造方法により得られたポリマーを用いて絶縁膜を形成することにより、吸湿性が低い膜が得られるため、比誘電率が低く、かつ、機械的強度、CMP耐性、ならびに薬液耐性(例えば、薬液を用いるウエットエッチングに対する耐性)に優れた絶縁膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るポリマーおよびその製造方法、絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜について述べる。
【0014】
1.ポリマーおよびその製造方法
本発明の一実施形態に係るポリマーの製造方法は、
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)とを、(C)金属キレート化合物または酸触媒の少なくとも一方(以下、「(C)成分」ともいう。)の存在下で共縮合することを含む。
【0015】
【化3】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【0016】
(B)は、下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物である。
SiX’4−a ・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、X‘はハロゲン原子あるいはアルコキシル基、aは0〜3の整数を示す。)
Y’3−bSi−(R−SiZ’3−c ・・・・・(3)
〔式中、R,Rは同一または異なり、それぞれ水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、bおよびcは同一または異なり、0〜2の整数、Rは酸素原子,フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、eは1〜6の整数である)、Y’およびZ’は同一または異なり、ハロゲン原子またはアルコキシル基、ヒドロキシ基、アシロキシ基を示す。dは0または1を示す。〕
【0017】
(A)成分および(B)成分はそれぞれ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
以下、本発明の一実施形態に係るポリマーの製造に用いられる各成分について、それぞれ説明する。
【0018】
1.1.(A)成分
(A)成分は、前記一般式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物である。
前記一般式(1)において、RおよびR〜Rで表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を挙げることができ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、3−ヘキセニル基を挙げることができる。アルキニル基としては、例えばエニチル基、プロパルギル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、3−ヘキシニル基を挙げることができる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。なかでも、RおよびR〜Rとしては、アルキル基、フェニル基、アルケニル基であることが好ましい。
【0019】
また、前記一般式(1)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基を挙げることができる。また、アシロキシ基は、アシル基が酸素と結合した1価の原子団であり、例えば、アセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、イソブチリルオキシ基を挙げることができる。
【0020】
(A)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(A)成分の具体例としては、例えば、以下の(i)〜(iii)を挙げることができる。
(i)前記一般式(1)において、nが0であるシラン化合物。具体的には、以下のシラン化合物を挙げることができる。
【0021】
【化4】

【0022】
(ii)前記一般式(1)において、nが1であるシラン化合物。具体的には、以下のシラン化合物を挙げることができる。

【0023】
【化5】

【0024】
(iii)前記一般式(1)において、nが2であるシラン化合物。具体的には、以下のシラン化合物を挙げることができる。
【0025】
【化6】


【0026】
1.2.(B)成分
(B)成分は、加水分解性基含有シラン化合物である。(B)加水分解性基含有シラン化合物は、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物1」という)および下記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物2」という)から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物であることができる。
SiX’4−a ・・・・・(2)
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基を示し、X’はハロゲン原子またはアルコキシ基を示し、aは0〜3の整数を示す。)
Y’3−bSi−(R−SiZ’3−c ・・・・・(3)
〔式中、RおよびRは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基を示し、bおよびcは同一または異なり、0〜2の整数を示し、Rは酸素原子,フェニレン基、または−(CH−で表される基(ここで、xは1〜6の整数である。)を示し、Y’およびZ’は同一または異なり、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示し、dは0または1を示す。〕
【0027】
前記一般式(2)および前記一般式(3)において、R〜Rで表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基としては、前記一般式(1)においてRおよびR〜Rとして例示したものを用いることができ、X’、Y’およびZ’で表されるハロゲン原子およびアルコキシ基としては、前記一般式(1)においてXとして例示したものを用いることができる。
化合物1および化合物2としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0028】
(i)化合物1
化合物1の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルイソトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルト−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−フェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−フェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−iso−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、などを挙げることができる。化合物1は1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0029】
化合物1として特に好ましい化合物は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、である。
前記ポリマーの製造において、(B)成分中に化合物1を含むことが好ましく、その割合は好ましくは30〜100モル%であり、より好ましくは50〜100モル%である。
【0030】
(ii)化合物2
前記一般式(3)において、RおよびRとしては、前記一般式(1)のRおよびR〜Rとして例示したものと同様の基を挙げることができる。
一般式(3)においてd=0の化合物3としては、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェノキシジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−フェニルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなどを挙げることができる。
【0031】
これらのうち、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなどを、好ましい例として挙げることができる。
【0032】
また、一般式(3)においてd=1の化合物3としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−tert−ブトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−tert−ブトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼンなど挙げることができる。
【0033】
これらのうち、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼンなどを好ましい例として挙げることができる。化合物2は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0034】
前記ポリマーの製造方法において、(A)成分および(B)成分の総量に対する(B)成分の割合は、(A)成分100重量部に対して(B)成分の割合が10〜2000重量部、より好ましくは50〜1000重量部である。(A)成分100重量部に対して(B)成分の割合が10〜2000重量部であることにより、機械的強度に優れ、かつ比誘電率が低い絶縁膜を形成できるポリマーを得ることができる。
【0035】
1.3.金属キレート触媒
前記金属キレート触媒は、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
M(ORj−h ・・・・・(4)
(Rはキレート剤を示し、Mは金属原子を示し、Rはアルキル基またはアリール基を示し、jは金属Mの原子価を示し、hは1〜jの整数を表す。)
上記一般式(4)において、Rで表されるキレート剤としては、例えば、アセチルアセトナート、エチルアセトアセテートが挙げられる。また、Mで表される金属としては、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウムが挙げられる。また、Rで表されるアルキル基またはアリール基としては、例えば、上記一般式(1)において、RおよびR〜Rとして表されるアルキル基またはアリール基として例示したものを用いることができる。
【0036】
金属キレート化合物としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物;
などを挙げることができる。これらの金属キレート化合物は1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。これらの中で、チタンキレート化合物が特に好ましい。
金属キレート触媒の使用量は、(A)成分成分および(B)成分に含まれる置換基X、X‘、Y’、Z‘の総量1モルに対して通常0.0001〜1モル、好ましくは0.0005〜0.1モルである。
【0037】
1.4.2.酸性触媒
酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸が挙げられ、有機酸であるのがより好ましく、有機カルボン酸であるのがさらに好ましい。酸性触媒は1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。
【0038】
有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物等を挙げることができる。
これらの中で、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、無水マレイン酸の加水分解物が特に好ましい。
【0039】
酸性触媒の使用量は、(A)成分成分および(B)成分に含まれる置換基X、X‘、Y’、Z‘の総量1モルに対して通常0.0001〜1モル、好ましくは0.0005〜0.1モルである。触媒の使用量が前記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の可能性が小さい。また、化合物1〜3を加水分解するときの温度は、通常0〜100℃、好ましくは15〜80℃である。
【0040】
1.5.有機溶剤
前記ポリマーの製造においては、有機溶剤中で(A)成分および(B)成分の共縮合を行なうことができる。ここで、有機溶剤としては、後述する有機溶剤の中でも下記一般式(5)で表される溶剤を単独でまたは他の溶剤と組み合わせて用いることが好ましい。
10O(CHCHCHO)γ11 ・・・・・(5)
〔R10およびR11は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはCHCO−から選ばれる1価の有機基を示し、γは1〜2の整数を表す。〕
上記一般式(5)において、炭素数1〜4のアルキル基としては、先の一般式(1)においてアルキル基として示したものと同様のものを挙げることができる。
【0041】
上記一般式(5)で表される有機溶剤としては、具体例には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテートなどが挙げられ、特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートが好ましい。これらは1種または2種以上を同時に使用することができる。なお、上記一般式(7)で表される有機溶剤とともに、エステル系溶媒やアミド系溶媒等の他の溶剤が多少含まれていてもよい。
【0042】
前記製造方法によって得られたポリマー中の炭素原子の含有量は12〜35原子%である。ポリマー中の炭素原子の含有量が12原子%より少ないと、CMP耐性および薬液耐性が低く、一方、ポリマー中の炭素原子の含有量が35原子%より多いと、分子の運動性が高まりすぎて、弾性率が低く、場合によってはガラス転移点を示すような膜となり好ましくない。なお、炭素原子の含有量(原子%)は、(A)成分および(B)成分に含まれる加水分解性基が完全に加水分解されてシラノール基となり、この生成したシラノール基が完全に縮合しシロキサン結合を形成した時の元素組成から求められ、具体的には以下の式から求められる。
炭素原子の含有量(%)=(ポリマーの炭素原子数)/(ポリマーの総原子数)×100
【0043】
2.絶縁膜形成用組成物
本発明の一実施形態に係る絶縁膜形成用組成物(以下、単に「膜形成用組成物」ともいう。)は、前記製造方法によって得られたポリマーおよび有機溶剤を含有する。
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.1〜20重量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物の全固形分濃度が0.1〜20重量%であることにより、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、より優れた保存安定性を有するものとなる。なお、この全固形分濃度の調整は、必要であれば、濃縮および有機溶剤による希釈によって行われる。
【0044】
2.1.有機溶剤
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物に用いることができる有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒および含ハロゲン溶媒の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶媒;
【0046】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらのアルコール系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0047】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョンなどのケトン系溶媒を挙げることができる。これらのケトン系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0048】
アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒を挙げることができる。これらのアミド系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0049】
エーテル溶媒系としては、エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソールなどのエーテル系溶媒を挙げることができる。これらのエーテル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0050】
エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒を挙げることができる。これらのエステル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0051】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの脂肪族炭化水素系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0052】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。含ハロゲン溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、などの含ハロゲン溶媒を挙げることができる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物においては、沸点が150℃未満の有機溶剤を使用することが望ましく、溶剤種としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が特に望ましく、さらにそれらを1種あるいは2種以上を同時に使用することが望ましい。
【0054】
2.2.その他の添加物
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物は、前記製造方法で得られたポリマーとは別の有機ポリマー(以下、「他の有機ポリマー」という。)、界面活性剤、シランカップリング剤などの成分をさらに含有してもよい。また、これらの添加物は、本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を製造する前の、各成分が溶解もしくは分散された溶剤中に添加されていてもよい。
【0055】
2.2.1.他の有機ポリマー
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物で使用可能な他の有機ポリマーは、例えば、糖鎖構造を有する化合物、ビニルアミド系重合体、(メタ)アクリル系重合体、芳香族ビニル化合物、デンドリマー、ポリイミド,ポリアミック酸、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物などを挙げることができる。
ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物としては、ポリメチレンオキサイド構造、ポリエチレンオキサイド構造、ポリプロピレンオキサイド構造、ポリテトラメチレンオキサイド構造、ポリブチレンオキシド構造などが挙げられる。
【0056】
具体的には、ポリオキシメチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエテチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル型化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩などのエーテルエステル型化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型化合物などを挙げることができる。
【0057】
ポリオキシチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーとしては下記のようなブロック構造を有する化合物が挙げられる。
−(P)−(Q)
−(P)−(Q)−(P)
(式中、Pは−CHCHO−で表される基を、Qは−CHCH(CH)O−で表される基を示し、jは1〜90、kは10〜99、lは0〜90の数を示す。)
これらの中で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、などのエーテル型化合物をより好ましい例として挙げることができる。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0058】
他の有機ポリマーは、シリカ系絶縁膜中に空孔を形成するための易分解成分として添加することができる。このような有機ポリマーを添加することは、特開2000−290590号公報、特開2000−313612号公報、Hedrick, J.L.,et al. 「Templating Nanoporosity in Thin Film Dielectric Insulators」 Adv. Mater., 10 (13), 1049, 1998.等の参考文献で記述されており、同様な有機ポリマーを添加してもよい。
【0059】
2.2.2.界面活性剤
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物で使用可能な界面活性剤としては、たとえば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、さらには、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤などを挙げることができ、好ましくはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0060】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどの末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物からなるフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0061】
また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183〔以上、大日本インキ化学工業(株)製〕、エフトップEF301、同303、同352〔新秋田化成(株)製〕、フロラードFC−430、同FC−431〔住友スリーエム(株)製〕、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106〔旭硝子(株)製〕、BM−1000、BM−1100〔裕商(株)製〕、NBX−15〔(株)ネオス〕などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤を挙げることができる。これらの中でも、上記メガファックF172,BM−1000,BM−1100,NBX−15が特に好ましい。
【0062】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA〔いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製〕などを用いることが出来る。これらの中でも、上記SH28PA、SH30PAが特に好ましい。
【0063】
界面活性剤の使用量は、膜形成用組成物100重量部に対して、通常、0.00001〜1重量部である。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
2.2.3.シランカップリング剤
【0064】
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物で使用可能なシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0065】
3.絶縁膜の製造方法
本発明の一実施形態に係る絶縁膜の製造方法は、前記本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を基板に塗布し、30〜450℃に加熱することを含む。
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を、シリコンウエハ、SiOウエハ、SiNウエハなどの基材に塗布する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段が用いられる。
【0066】
本発明の一実施形態に係る絶縁膜の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜2.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜5.0μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは通常30〜500℃、好ましくは30〜450℃、より好ましくは60〜430℃の温度で、通常、5〜240分間程度加熱して乾燥することにより、ガラス質または巨大高分子の塗膜を形成することができる。
この際の加熱方法としては、例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができ、加熱雰囲気としては、例えば、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行なうことができる。
また、前記塗膜の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的に加熱したり、あるいは窒素、空気、酸素、減圧などの雰囲気を選択したりすることができる。
【0067】
また、本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を基板に塗布し、高エネルギー線(例えば、電子線、紫外線)照射下で絶縁膜を形成してもよい。あるいは、本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を基板に塗布し、高エネルギー線照射下で通常25〜500℃、好ましくは30〜450℃、より好ましくは60〜430℃に加熱することにより、絶縁膜を形成してもよい。
高エネルギー線としては、電子線、紫外線およびX線から選ばれる少なくとも1種の高エネルギー線であることができる。以下に、一例として電子線を使用した場合の照射条件を記す。
【0068】
電子線を照射する場合の加速電圧は0.1〜50keV、好ましくは1〜30keVである。加速電圧が、0.1〜50keVであると電子線が膜を透過して下部の半導体素子へダメージを与えることがなく、塗膜内部にまで電子線を十分に進入させる事ができる。また、電子線照射量は1〜1000μC/cm、好ましくは10〜500μC/cmである。電子線照射量が1〜1000μC/cmであると、塗膜全体を反応させ、かつ塗膜へのダメージも少なくなる。
【0069】
電子線照射時の基板温度は、通常25〜500℃、好ましくは30〜450℃である。塗膜の電子線照射に先立ち基板を250〜500℃に熱した状態で本発明の塗膜を予め熱硬化させた後、電子線を照射する事もできる。この方法によると、電子線照射量の不均一性に依存する膜厚ムラを低減することが可能であり有効である。
【0070】
電子線照射は酸素濃度が10,000ppm以下、好ましくは1,000ppmの雰囲気下で行うことが好ましい。電子線照射は、不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。前記不活性ガスとはN、He、Ar、KrおよびXe、好ましくはHeおよびArなどを挙げることができる。電子線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことにより膜が酸化されにくくなり、得られる塗膜の低誘電率を維持する事ができる。
【0071】
電子線照射は、減圧雰囲気で行っても良く、その減圧度は、通常1000mTorr以下、好ましくは1〜200mTorrの範囲である。また、電子線硬化に要する時間は、該して1分から5分ほどであり、熱硬化の場合に要する15分〜2時間に比べて著しく短くてすみ、電子線照射はウエハーの枚葉処理に適しているといえる。
【0072】
4.シリカ系絶縁膜
本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、上記絶縁膜の製造方法により得られる。
本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、後述する実施例からも明らかであるように、機械的強度、CMP耐性ならびに薬液耐性に優れ、かつ、比誘電率が低い。
具体的には、本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、その比誘電率が1.2〜3.2、好ましくは1.5〜3.0であり、より好ましくは1.8〜2.7であり、その膜密度が0.35〜1.2g/cm、好ましくは0.4〜1.1g/cmであり、より好ましくは0.5〜1.0g/cmである。膜密度が0.35g/cm未満では、塗膜の機械的強度が低下し、一方、1.2g/cmを超えると低比誘電率が得られない。
【0073】
本発明によって得られたポリマー膜は、膜構造中にケイ素−炭素結合を多く有するという特徴を有する。これはモノマーである非対称シリコンモノマーに由来するものであり、この非対称シリコンモノマーとシロキサンの縮合によって得られたポリマーは、その構造的特長から適度な空孔が一定に得られることから、比誘電率が小さく、機械的強度、CMP耐性ならびに薬液耐性に優れたポリマー膜を得ることができる。
【0074】
本発明のポリマー膜は、低比誘電率でかつ機械的強度、CMP耐性ならびに薬液耐性に優れることから、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAMなどの半導体素子用層間絶縁膜やエッチングストッパー膜、半導体素子の表面コート膜などの保護膜、多層レジストを用いた半導体作製工程の中間層、多層配線基板の層間絶縁膜、液晶表示素子用の保護膜や絶縁膜などの用途に有用である。
【0075】
5.実施例
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は特記しない限り、それぞれ重量部および重量%であることを示している。
5.1.合成例、実施例、比較例
以下の方法にて、ポリマーの製造、該ポリマーを用いた膜形成用組成物の製造、ならびにシリカ系絶縁膜の形成を行った。
【0076】
5.1.1.ポリマーの製造方法
5.1.1−1.合成例1
10%ギ酸水溶液1.1g、超純水25gおよびエタノール40gの混合溶液中に、メチルトリエトキシシラン10.7g(完全加水分解縮合物換算5.3g)とテトラメトキシシラン12.0g(完全加水分解縮合物換算4.7g)を加えて、60℃で2時間反応させ溶液(B−1)を得た。
5.1.1−2.合成例2
トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン0.65g、超純水55.0gおよびエタノール50gの混合溶液中に、メチルトリメトキシシラン10.7g(完全加水分解縮合物換算5.3g)とテトラエトキシシラン12.0g(完全加水分解縮合物換算4.7g)を加えて、60℃で3時間反応させ溶液(B−2)を得た。
【0077】
5.1.2.膜形成用組成物の製造方法
5.1.2−1.実施例1
合成例1で得たポリシロキサン溶液(B−1)88.8gに、2.5gの (トリメチルシリル)メチルトリエトキシシラン(A−1)を加え、60℃で2時間反応させたのち、プロピレングリコールモノエチルエーテル400gを加え、その後、減圧下で全溶液量214gとなるまで濃縮し、固形分含有量10%の膜形成用組成物(H−1)を得た。
【0078】
5.1.2−2.実施例2
合成例2で得たポリシロキサン溶液(B−2)128.35gに、2.5gの (トリメチルシリル)メチルトリエトキシシラン(A−1)を加え、60℃で2時間反応させたのち、プロピレングリコールモノエチルエーテル500gを加え、その後、減圧下で全溶液量250gとなるまで濃縮し、固形分含有量10%の膜形成用組成物(H−2)を得た。
【0079】
5.1.2−3.実施例3
10%ギ酸水溶液1.1g、超純水26.8gおよびエタノール80.1gの混合溶液中に、メチルトリメトキシシラン13.3g(完全加水分解縮合物換算6.5g)とテトラエトキシシラン3.7g(完全加水分解縮合物換算1.5g)ならびに2.5gの(トリメチルシリル)メチルトリエトキシシラン(A−1)を加えて、60℃で2時間反応させたのち、プロピレングリコールモノエチルエーテル318gを加え、その後、減圧下で全溶液量96gとなるまで濃縮し、固形分含有量10%の膜形成用組成物(H−3)を得た。
【0080】
5.1.2−4.比較例1
10%ギ酸水溶液1.1g、超純水23.2gおよびエタノール86.9gの混合溶液中に、メチルトリメトキシシラン5.0g(完全加水分解縮合物換算2.47g)とテトラエトキシシラン10.0g(完全加水分解縮合物換算3.95g)を加えて、60℃で2時間反応させたのち、プロピレングリコールモノエチルエーテル200gを加え、その後、減圧下で全溶液量62gとなるまで濃縮し、固形分含有量10%の膜形成用組成物(H−4)を得た。
【0081】
5.1.2−5.比較例2
市販のポリカルボシラン(「NIPUSI Type−S」、日本カーボン株式会社製、ポリジメチルシランのカルボシラン化ポリマー)を、プロピレングリコールモノエチルエーテル:シクロヘキサノン=50:50(重量比)混合溶液に、固形分含有量が10%になるように溶解し、組成物溶液(H−5)を得た。次に比較例1で得た膜形成用組成物(H−4)と前記組成物溶液(H−5)とを(H−4):(H−5)=90:10(重量比)で混合し、膜形成用組成物(H−6)を得た。
【0082】
5.1.2−6.比較例3
10%ギ酸水溶液1.1g、超純水21.8gおよびエタノール86.1gの混合溶液中に、メチルトリメトキシシラン8.0g(完全加水分解縮合物換算4.0g)とテトラエトキシシラン8.0g(完全加水分解縮合物換算2.3g)ならびに0.85gの1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ジシラシクロブタンを加えて、60℃で2時間反応させたのち、プロピレングリコールモノエチルエーテル218gを加え、その後、減圧下で全溶液量62gとなるまで濃縮し、固形分含有量10%の膜形成用組成物(H−7)を得た。
【0083】
5.1.2−7.実施例4,5,6、比較例4、5、6
得られた前記膜形成用組成物(H−1)(H−2)(H−3)(H−4)(H−5)(H−6)(H−7)を、それぞれスピンコート法で8インチシリコンウエハ上に塗布したのち、ホットプレート上で90℃にて3分間、窒素雰囲気200℃にて3分間基板を乾燥し、さらに400℃の窒素雰囲気下にてホットプレートで60分間基板を焼成し、膜厚0.5μmの塗膜を得た。焼成後に得られたポリマー膜(以下、「シリカ系絶縁膜」という)を下記5.2の評価方法のとおり評価した。評価結果を表1に示す。
【0084】
5.1.2−8.実施例7、8、9
膜形成用組成物(H−1)(H−2)(H−3)を、それぞれ8インチシリコンウエハ上に、スピンコート法を用いて塗布し、膜厚0.5μmの塗膜を得た。ホットプレートを用いて、窒素雰囲気において、90℃で3分間、ついで200℃で3分間、基板を加熱した。その後、得られた塗膜に加速電圧5keV、照射量100uC/m、HP温度100℃、圧力1.33Pa、雰囲気ガスHeの条件で電子線を塗膜に照射した。電子線照射後に得られた塗膜を、下記5.2の評価方法のとおり評価した。評価結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
5.2.評価方法
前記5.1.2.で得られたポリマーおよび前記5.1.2.で得られたシリカ系絶縁膜に関する各種の評価を以下の方法により行なった。
【0087】
5.2.1.シリカ系絶縁膜の比誘電率、Δk
0.1Ω・cm以下の抵抗率を有する8インチのN型シリコンウエハ上に、上述の方法にて形成されたシリカ系絶縁膜に、蒸着法によりアルミニウム電極パターンを形成させ比誘電率測定用サンプルを作成した。該サンプルを周波数100kHzの周波数で、アリジェント社製、HP16451B電極およびHP4284AプレシジョンLCRメータを用いてCV法によりシリカ系絶縁膜の比誘電率を測定した。
Δkは、24℃、40%RHの雰囲気で測定した比誘電率(k@RT)と、200℃、乾燥窒素雰囲気下で測定した比誘電率(k@200℃)との差の(Δk=k@RT−k@200℃)である。かかるΔkによって、主に、膜の吸湿による誘電率の上昇分を評価することができる。通常、Δkが0.20以上であると、吸湿性の高いシリカ系絶縁膜であると言える。
【0088】
5.2.2.シリカ系絶縁膜の機械的強度(弾性率・硬度)
上述の方法にて形成されたシリカ系絶縁膜について、ナノインデンターXP(ナノインスツルメント社製)にバーコビッチ型圧子を取り付け、連続剛性測定法により機械的強度(弾性率・ユニバーサル硬度)を測定した。
【0089】
5.2.3.CMP耐性
上述の方法にて形成されたシリカ系絶縁膜について、以下の条件で研磨した。
スラリー:シリカ−過酸化水素系
研磨圧力:280g/cm
研磨時間:200秒
CMP後の膜の外観を35万ルクスの光源で観察し、以下の基準で評価した。
○:変化無し。
×:膜に傷や剥がれが確認される。
【0090】
5.2.4.シリカ系絶縁膜の薬液耐性
ポリマー膜が形成された8インチウエハーを、室温で0.2%の希フッ酸水溶液中に3分間浸漬し、上述の方法にて形成されたシリカ系絶縁膜の浸漬前後の膜厚変化を観察した。下記に定義する残膜率が99%以上であれば、薬液耐性が良好であると判断できる。
残膜率(%)=(浸漬後の膜の膜厚)÷(浸漬前の膜の膜厚)×100
【0091】
5.2.5.膜の相分離有無の確認
上述の方法にて形成されたシリカ系絶縁膜について、集束イオンビーム法でシリカ系絶縁膜を膜の断面観察が可能な状態に加工し、TEMを用いて18000倍にて膜の断面形状を観察した。判断結果を以下のようにして示す。
○:均一な膜が得られている。
×:膜に海島状のドメイン相分離が確認される。
【0092】
5.3.評価結果
実施例1〜6で得られたシリカ系絶縁膜は、CMP耐性、薬液耐性残膜率が良好であり、かつ、吸湿性の目安であるΔkも適当な値であった。TEM観察でも膜特性を悪化させるドメイン相分離構造は観察されなかった。
これに対して、比較例1,2では、CMP耐性、薬液耐性残膜率が悪化した。比較例3では薬液耐性残膜率が悪化した。
【0093】
以上の実施例からも明らかであるように、本発明のポリマーの製造方法を用いてポリマーを形成し、該ポリマーを含む絶縁膜形成用組成物を用いることにより、比誘電率が低く、かつ、CMP耐性および薬液耐性に優れたシリカ系絶縁膜の形成が可能である。したがって、本発明のシリカ系絶縁膜は、CMP耐性および薬液耐性に優れ、比誘電率が低いため、半導体装置の層間絶縁膜などとして好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、(C)金属キレート化合物または酸触媒の少なくとも一方の存在下で共縮合して得られるポリマー、と有機溶剤とを含有する絶縁膜形成用組成物。
【化1】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
(B)は、下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物である。
SiX’4−a ・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、X‘はハロゲン原子あるいはアルコキシル基、aは0〜3の整数を示す。)
Y’3−bSi−(R−SiZ’3−c ・・・・・(3)
〔式中、R,Rは同一または異なり、それぞれ水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、bおよびcは同一または異なり、0〜2の整数、Rは酸素原子,フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、eは1〜6の整数である)、Y’およびZ’は同一または異なり、ハロゲン原子またはアルコキシル基、ヒドロキシ基、アシロキシ基を示す。dは0または1を示す。〕
【請求項2】
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシラン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、(C)金属キレート化合物または酸触媒の少なくとも一方の存在下で共縮合して得られるポリマーの製造方法。
【化2】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
(B)は、下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物である。
SiX’4−a ・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、X‘はハロゲン原子あるいはアルコキシル基、aは0〜3の整数を示す。)
Y’3−bSi−(R−SiZ’3−c ・・・・・(3)
〔式中、R,Rは同一または異なり、それぞれ水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基、bおよびcは同一または異なり、0〜2の整数、Rは酸素原子,フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、eは1〜6の整数である)、Y’およびZ’は同一または異なり、ハロゲン原子またはアルコキシル基、ヒドロキシ基、アシロキシ基を示す。dは0または1を示す。〕
【請求項3】
請求項2において、前記(C)成分が、下記一般式(4)で示される金属キレート化合物であるポリマーの製造方法。
M(ORj−h ・・・・・(4)
(Rはキレート剤を示し、Mは金属原子を示し、Rはアルキル基またはアリール基を示し、jは金属Mの原子価を示し、hは1〜jの整数を表す。)
【請求項4】
請求項3において、前記金属キレート化合物が、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物および有機カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とするポリマーの製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記共縮合を下記一般式(5)で表される有機溶剤中にて行なうことを特徴とするポリマーの製造方法。
10O(CHCHCHO)11 ・・・・・(5)
〔R10およびR11は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または
CHCO−から選ばれる1価の有機基を示し、kは1〜2の整数を表す。〕
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載のポリマーの製造方法によって得られる、ポリマー。
【請求項7】
請求項1に記載の絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、30〜450℃に加熱することを含む、絶縁膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、高エネルギー線を照射することを含む、絶縁膜の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の絶縁膜の製造方法により得られる、シリカ系絶縁膜。

【公開番号】特開2007−262256(P2007−262256A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89985(P2006−89985)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】