説明

マイクロパターンの製造方法

【課題】基板上にマイクロパターンを高精度にかつ容易に形成することを可能とするマイクロパターンの製造方法を得る。
【解決手段】 マイクロパターンが上面6aに形成される基板6と、前記マイクロパターンに対して反転されたパターン形状を有するフィルム状パターニング材1Aとを用意する工程と、前記フィルム状パターニング材1Aを前記基板6の上面に積層する工程と、前記フィルム状パターニング材1Aが積層された基板6の上面に被パターニング材料7を塗布する工程と、前記基板6の上面6aから前記フィルム状パターニング材1Aを除去して、前記フィルム状パターニング材1Aと反転されたマイクロパターンとなるように前記被パターニング材料7をパターニングし、それによって、被パターニング材料7からなるマイクロパターン7Aを形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば幅や径が1μm〜5000μm程度の凹部や貫通孔が形成されたマイクロパターンの製造方法に関し、より詳細には、形成されるマイクロパターンと反転されたパターンを有するパターニング材を用いてマイクロパターンを形成する工程を備えるマイクロパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板表面に金属などからなるマイクロパターンを形成する方法が種々提案されている。このようなマイクロパターンは、半導体装置や、マイクロ流体が搬送されるマイクロ流路などの様々な分野で用いられている。
【0003】
他方、マイクロパターンには限らないが、金属をパターニングする方法として、様々な方法が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、サンドブラストにより基材表面に図柄を形成するための材料として、サンドブラストレジスト用感光性樹脂組成物が開示されている。ここでは、感光性樹脂組成物を基材表面にスクリーン印刷により図柄と反転された形状となるようにする。次に、光を照射して、感光性樹脂組成物を硬化し、保護膜を形成する。しかる後、サンドブラスト処理を行う。サンドブラスト処理後に、上記保護膜を除去する。このようにして、基材表面にサンドブラストによる図柄を形成することができる。言い換えれば、サンドブラストにより基材表面に唐草模様などの模様を形成することができる。
【0004】
しかしながら、上記サンドブラストレジスト用感光性樹脂組成物を用いた加工方法では、地模様などは容易に形成することができるものの、エレクトロニクス分野やマイクロ流体分野で用いられる微細配線や微細流路を形成する方法には用いることは困難であった。
【0005】
他方、半導体装置分野等ではフォトリソグラフィによるパターニング法が広く用いられている。フォトリソグラフィ法では、基板上に感光性樹脂組成物からなるフォトレジストを塗布する。しかる後、マスクを介してフォトレジスト層に光を照射し、フォトレジスト層の一部を露光し、残りの部分を未露光部とする。次に、露光部もしくは未露光部を現像剤で除去し、フォトレジスト層をパターニングする。このようにして、パターニングされたフォトレジスト層を形成した後に、全面に金属膜を成膜する。しかる後、残存しているフォトレジスト層上の金属膜をフォトレジスト層とともにリフトオフ法により除去する。このようにして、基板上に、フォトレジスト層が設けられている部分以外の部分に、金属膜が残存することとなり、パターニングされた金属膜を形成することができる。このような金属膜のパターニング方法は、例えば、下記の特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特公平1−58201号公報
【特許文献2】特公平6−9185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記フォトリソグラフィ法によりフォトレジスト層をパターニングする方法では、現像液により除去されるべきフォトレジスト層部分を確実に除去し難いことがあった。すなわち、ネガ型のフォトレジストの場合には未露光部のフォトレジスト層を、ポジ型のフォトレジストの場合には露光部のフォトレジスト層を現像液により除去するに際し、除去されるべきフォトレジスト層の一部が基板上に残存し、残膜となることがあった。
【0007】
このようなフォトレジスト層の残膜が存在すると、次に金属を全面に成膜した後に、フォトレジスト層を剥離してフォトレジスト層とフォトレジスト層上に位置している金属膜のみを除去しようとしても、残膜上の金属膜部分も除去されることがあった。よって、高精度なマイクロパターンを形成することが困難であった。また、上記のような残膜を確実に除去するにはさらなるエッチング等の煩雑な工程を実施しなければならず、場合によっては、基板表面がエッチングに際し汚染やダメージを受けることもあった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、金属などの様々な材料からなるマイクロパターンを高精度にかつ容易に形成することを可能とする製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、マイクロパターンが上面に形成される基板と、前記マイクロパターンに対して反転されたパターン形状を有するフィルム状パターニング材とを用意する工程と、前記フィルム状パターニング材を前記基板の上面に積層する工程と、前記フィルム状パターニング材が積層された基板の上面に被パターニング材料を付与する工程と、前記基板の上面から前記フィルム状パターニング材を除去し、前記フィルム状パターニング材と反転されたマイクロパターンとなるように前記被パターニング材料をパターニングし、被パターニング材料からなるマイクロパターンを形成する工程とを備えることを特徴とする、マイクロパターンの製造方法が提供される。
【0010】
本発明に係るマイクロパターンの製造方法のある特定の局面では、前記フィルム状パターニング材を用意する工程において、前記フィルム状パターニング材が離型フィルムの片面に積層された状態で用意される。この場合には、フィルム状パターニング材が離型フィルムにより支持されているため、転写を容易に行うことができる。
【0011】
本発明に係るマイクロパターンの製造方法の他の特定の局面では、前記フィルム状パターニング材を用意する工程が、前記離型フィルム上にパターニング材形成材料を付与する工程と、付与されたパターニング材形成材料をフォトリソグラフィによりパターニングする工程とを備える。この場合には、フォトリソグラフィ法により、パターニング材形成材料を容易にかつ高精度にパターニングすることができる。それによって、最終的に得られるマイクロパターンを得るためのレジスト材としてのパターニング材におけるパターンの精度を高めることができる。
【0012】
本発明に係る製造方法の他の特定の局面では、前記フィルム状パターニング材を前記基板に積層するに際し、圧力、光及び熱からなる群から選択した1種のエネルギーを付与することにより、前記フィルム状パターニング材が前記基板の上面に接着される。それによって、フィルム状パターニング材を基板の上面の所望の位置に確実に固定することができる。
【0013】
本発明の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記エネルギーが光または熱であり、前記エネルギーの付与が、前記フィルム状パターニング材の積層前、積層時及び積層後の少なくとも1つの段階で付与される。その場合には、フィルム状パターニング材の積層前、積層時及び積層後の少なくとも1つの段階で上記エネルギーを付与するだけでフィルム状パターニング材を基板の上面に確実に固定することができる。
【0014】
本発明に係る製造方法において、上記被パターニング材としては、ペイント材、生化学物質、有機分子、無機微粒子、金属イオン等様々な材料を用いることができるが、好ましくは金属が用いられ、それによって、金属からなるマイクロパターンを提供することができる。上記被パターニング材の付与方法は特に限定されないが、好ましくは、スパッタリング法または真空蒸着法、エレクトロスプレーデボジション(ESD)法、ミストスプレー還元法、昇化転写法等が用いられ、それによって、厚みの薄いマイクロパターンを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るマイクロパターンの製造方法によれば、フィルム状パターニング材を基板上面に積層した後に被パターニング材料を塗布し、次にフィルム状パターニング材を剥離することにより瞬時に除去し、上記被パターニング材料がフィルム状パターニング材のパターンに対して反転されたマイクロパターンとなるようにパターニングされる。従って、被パターニング材料からなるマイクロパターンを素早く容易に形成することができる。しかも、上記フィルム状パターニング材は、マイクロパターンに対して反転されたパターン形状を有するようにパターニング済みの状態であるものが基板の上面に積層されるため、基板の上面において、フィルム状パターニング材の残膜が生じ難い。エッチングや除去剤を使用しないため、フィルム状パターニング材を除去する際に、基板表面を傷めることなく、確実にかつ高精度に被パターニング材料からなるマイクロパターンを基板上に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(c)を参照して、本発明の一実施形態に係るマイクロパターンの製造方法を説明する。
【0018】
まず、光硬化性樹脂組成物からなるフィルム1の両面に離型フィルム2,3が積層された積層体4を用意する。フィルム1は、後述するようにフォトリソグラフィでパターニングされて、本発明におけるフィルム状パターニング材を得るために用意されている。フィルム1は、光硬化性樹脂組成物からなるが、後述するように、本発明において、フィルム状パターニング材を構成する材料は光硬化性樹脂組成物に限定されない。
【0019】
また、本実施形態では、フィルム1は、硬化前の状態において、表面がタックを有する。このタックは、離型フィルム2,3を積層し、固定するのに足りる程度の粘着力であればよい。より具体的には、このタックは、JIS Z 0237におけるボールタック試験において、17〜32程度であればよい。
【0020】
光硬化性樹脂組成物の詳細については、後述することとする。離型フィルム2,3は、最終的にフィルム状パターニング材から除去されるものであり、フィルム状パターニング材を支持し得る限り、適宜の合成樹脂材料により形成することができる。離型フィルム2,3を構成する材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの適宜の合成樹脂を挙げることができる。
【0021】
離型フィルム2,3の内、少なくとも一方の離型フィルム2は光硬化性樹脂組成物を硬化させるために照射される光を透過し得る材料により形成されている。
【0022】
離型フィルム2のフィルム1に対する剥離力に対し、離型フィルム3のフィルム1に対する剥離力が高くされていることが好ましい。この剥離力差は、剥離力比で、1.1倍以上であることが好ましい。1.1倍以上の剥離力比である場合には、離型フィルム3がフィルム1から剥離されることなく、離型フィルム2のみをフィルム1から容易に剥離することができる。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、積層体4の上面にマスク5を載置する。マスク5は、複数の光透過部5aを有する。この光透過部5aは、最終的に得られるマイクロパターンと同じ平面形状を有する。
【0024】
マスク5は、光透過部5aにおいて照射される光を透過させ、光遮断部5bにおいて、光を透過させない構造を有する限り、その材料は特に限定されるものではない。例えば、光透過部5aが開口部とされているマスク5を用いてもよい。また、ガラスなどの透光性材料板を用い、光遮断部5bにのみ、光を遮断するフィルムを少なくともその一方面に貼り付けてなるマスク5が形成されていてもよく、あるいは、クロムまたは金等の金属を用いた金属マスクを用いてもよい。
【0025】
図1(b)に示すように、本実施形態の製造方法では、離型フィルム2の上面にマスク5が載置された状態で、矢印で示すように、光を照射する。照射する光は、光硬化性樹脂組成物を硬化させる波長及び強度の光である。
【0026】
このようにして、光硬化性樹脂組成物からなるフィルム1において、光が照射された部分を硬化する。しかる後、離型フィルム2をマスク5と共にフィルム1から剥離する。離型フィルム2のフィルム1に対する剥離力が、離型フィルム3のフィルム1に対する剥離力よりも低くされているため、離型フィルム2をフィルム1から容易に剥離することができる。この作業により、マスク5も離型フィルム2とともに除去されることとなる。なお、離型フィルム2の剥離に先立ち、マスク5を先に除去しておいてもよい。
【0027】
次に、露出されたフィルム1を現像液により現像し、未露光部のフィルム1部分を除去する。現像液としては、未硬化の光硬化性樹脂組成物を溶解し得る適宜の現像液を用いることができる。このような現像液については、光硬化性樹脂組成物の詳細とともに後述することとする。
【0028】
このようにして、図1(c)に示すように、離型フィルム3上に、フィルム状パターニング材1Aが得られる。フィルム状パターニング材1Aは、最終的に得られるマイクロパターンに対して反転されたパターン形状を有する。本実施形態では、上記光硬化性樹脂組成物を用いたパターニングに際し、ネガ型のフィルム1を用いてフォトリソグラフィによりパターニングしているため、上述した通り、最終的に得られるマイクロパターンと同じ平面形状の光遮断部5bを有するマスク5が用いられていた。しかしながら、本発明においては、ポジ型の感光性材料を用いてもよい。その場合には、マスク5の光遮断部5bの平面形状は、最終的に得られるマイクロパターンに対して反転されたパターン形状を有するように形成しておけばよい。
【0029】
フィルム状パターニング材1Aは、硬化後の状態で表面がタックがあってもなくてもよい。このタックは、後述する基板6への転写を可能とする程度の粘着力であればよい。具体的には、このタックは、JIS Z 0237におけるボールタック試験において、1〜17の程度であればよい。またタックがない場合は、JIS Z 0237におけるボールタック試験において、1未満であり、180℃剥離試験で0.01N/m〜0.50N/mの接着力があればよい。フィルム状パターニング材1Aの粘着力が高過ぎると、後述する最終的な基板6からの剥離が円滑に行い得ないことがある。
【0030】
次に、図1(c)に示されているフィルム状パターニング材1A、すなわち離型フィルム3の片面に支持されたフィルム状パターニング材1Aを、図2(a)に示すように基板6の上面6aに圧着し、しかる後、離型フィルム3を剥離する。このようにして、フィルム状パターニング材1Aを基板6の上面に転写することができる。
【0031】
なお、基板6の表面が粘着性を有する場合には、フィルム状パターニング材1Aの表面は粘着性を有しておらずともよい。
【0032】
図2(a)に示すように、基板6の上面にフィルム状パターニング材1Aが転写法により付与されている。従って、基板6の上面において、フィルム状パターニング材1Aで被覆されていない部分に、フィルム状パターニング材1Aを構成する材料は付着しないことがわかる。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、基板6の上面の全面に、被パターニング材料7を付与する。この被パターニング材料7の付与は、スパッタリング法または真空蒸着法などにより行うことができる。もっとも、被パターニング材料7の付与は、スパッタリングまたは蒸着に限らず、メッキや塗工、エレクトロスプレーデボジション(ESD)法、ミストスプレー還元法、昇化転写法等により行われてもよい。
【0034】
しかる後、フィルム状パターニング材1Aを剥離する。その結果、フィルム状パターニング材1Aと同時にフィルム状パターニング材1A上に積層されている被パターニング材料7が除去される。よって、図2(c)に示すように、フィルム状パターニング材1Aにより覆われなかった部分に残存した被パターニング材料7により、マイクロパターン7Aが形成されることとなる。
【0035】
上述した工程から明らかなように、本実施形態の製造方法では、フィルム状パターニング材1Aが基板6の上面に転写法により付与されるため、フィルム状パターニング材1Aにより覆われていない部分、すなわちマイクロパターンが形成される部分に、パターニング材の材料が付着しない。よって、フィルム状パターニング材1Aを剥離する際に、マイクロパターン形成部分の被パターニング材料7が影響を受け難い。よって、高精度にかつ容易に、マイクロパターン7Aを形成することができる。
【0036】
次に、上記実施形態の製造方法及び該実施形態の変形例で用い得る材料及び工法の詳細につきより詳細に説明することとする。
【0037】
まず、上記実施形態では、フィルム状パターニング材1Aは、転写に先立ち、離型フィルム3の片面に貼り付けられた状態で用意されているが、フィルム状パターニング材1Aがある程度の厚みを有し、それ自体で容易に取扱い得る場合には、必ずしも離型フィルム3により支持されて用意される必要はない。もっとも、好ましくは、上記実施形態のように、離型フィルム3に支持された状態で用意された場合、上述したように、転写を容易に行うことができる。
【0038】
また、フィルム状パターニング材1Aを基板6に積層するに際しては、上記実施形態では、フィルム状パターニング材1Aが光照射後においてタックを有するため、該タックすなわち粘着力を利用して基板6に積層・接着されていた。この場合、積層に際して加えられる圧力によりフィルム状パターニング材1Aが基板6上に積層・接着されているが、圧力以外に、光や熱を用いてもよい。すなわち、フィルム状パターニング材1Aを基板6上に位置決めし、積層した後、光及び/または熱を加えることにより、接着性を発現させ、それによって、フィルム状パターニング材1Aを基板6の上面に接着させてもよい。この場合においても、接着力は、フィルム状パターニング材1Aを最終的に基板6から容易に剥離し得る程度の接着力もしくは粘着力の程度であることが必要である。
【0039】
従って、上記フィルム状パターニング材1Aを基板6に積層するに際しては、好ましくは、圧力、光及び熱からなる群から選択した1種のエネルギーを付与し、それによってフィルム状パターニング材1Aを基板6の上面に接着することが望ましい。それによって、フィルム状パターニング材1Aを基板6の正しい位置に位置決めした後に、確実に該正しい位置にマイクロパターンを形成することができる。
【0040】
また、フィルム状パターニング材1Aを基板6に接着する際に加えるエネルギーとして、光または熱を用いる場合、エネルギーの付与は、フィルム状パターニング材1Aの積層前、積層時及び積層後のいずれであってもよく、これらの内の少なくとも1つの段階で付与されればよい。すなわち、上記エネルギーの付与は、フィルム状パターニング材1Aを構成する材料に応じて適宜選択すればよい。
【0041】
加熱により基板6の上面6aにフィルム状パターニング材1Aを接着させる場合には、フィルム状パターニング材1Aは、光硬化性接着剤組成物であって、さらに熱硬化性もしくは熱可塑性化合物が含有されていることが望ましい。
【0042】
フィルム状パターニング材1Aは、上記フォトリソグラフィにより解像度が1μm〜1cmのレベルでパターニングされ得るものであることが望ましい。ここで解像度とは、ラインアンドスペースを意味する。また、上記フィルム状パターニング材1Aの厚みは特に限定されないが、薄いマイクロパターンを形成する上では、1〜500μm程度であることが望ましい。
【0043】
また、フィルム状パターニング材1Aは、転写法により基板6に付与されるものであるため、可撓性を有することが望ましい。この可撓性の程度はJIS A 6906によるひび割れが存在しない程度の可撓性があることが望ましい。
【0044】
また、フィルム状パターニング材1Aは、後述する被パターニング材料7を真空下で付与する場合には、真空下でフィルム状パターニング材1Aは形状を維持するものであることが必要である。すなわち、1〜10Paの真空下で形状を保持することができることが望ましい。
【0045】
また、スパッタリングに際し、熱が加わることもあるため、フィルム状パターニング材1Aは、スパッタリング時に加わる熱により変形し難いものであることが望ましい。
【0046】
また、上記被パターニング材料7については、特に限定されず、金属、金属酸化物などの無機材料、あるいは合成樹脂などの有機材料を適宜用いることができる。好ましくは、金属などの導電性材料が用いられ、それによって、導電性のマイクロパターンを形成することができる。もっとも、絶縁性金属酸化物や合成樹脂を用い、それによって、絶縁性のマイクロパターンを形成してもよい。用途に応じて、被パターニング材料7を選択すればよい。
【0047】
上記被パターニング材料7が金属である場合には、被パターニング材料7の付与を、スパッタリング、蒸着またはメッキ等により容易に行うことができる。スパッタリングの方法については、特に限定されず、DCスパッタ、RFスパッタ、マグネトロンスパッタ、イオンビームスパッタなどを用いることができる。スパッタリングにより形成される貴族材料の例としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、白金、ニッケル、チタン、ITOなどを挙げることができる。
【0048】
被パターニング材料7を構成材料として、金属または金属酸化物などを用いる場合、被パターニング材料の付与は、上記のように、スパッタリングまたは真空蒸着などにより行うことができ、それによって、非常に薄いマイクロパターンを容易に形成することができる。すなわち、10nm〜500nm程度の厚みのマイクロパターンを容易に形成することができる。厚みの最大は、フィルム状パターニング材1Aの厚みまで可能である。
【0049】
上記基板6については、図2(a)に示すように、予め上面6aに、マイクロパターンが形成される部分が凹部とされていてもよいが、上面6aが平坦な基板6を用いてもよい。すなわち、図2(a)では、マイクロパターン形成部分が予め凹部6bにより規定されているが、マイクロパターンが形成される位置が基板6の上面6aの任意の位置である場合には、基板6として、上面が平坦な基板6を用いてもよい。基板6を構成する材料については特に限定されず、合成樹脂、ガラスまたは金属などの適宜の材料からなる基板を用いることができる。合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ウレア樹脂またはフェノール樹脂などを挙げることができる。また、ガラス系材料としては、石英ガラスなどの様々なガラスを挙げることができる。また、基板を構成する金属材料としては、アルミニウム、ステンレスなどを挙げることができる。また、基板6は、シリコン系材料のような半導体材料により形成されていてもよい。
【0050】
次に、上記フィルム状パターニング材1Aを形成するための光硬化性樹脂組成物の詳細を説明する。
【0051】
上記光硬化性樹脂組成物の組成は特に限定されないが、例えば、現像液としてアルカリ性水溶液を用いて現像し得る光硬化性樹脂組成物が挙げられる。このような光硬化性樹脂組成物は、光ラジカル反応により硬化する光硬化性樹脂組成物や、光イオン重合により硬化する光硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0052】
光ラジカル重合により硬化する光硬化性樹脂組成物としては、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)と、ラジカル反応性化合物(B)と、(C)光ラジカル開始剤とを含む組成物が挙げられる。また、光イオン重合により硬化する光硬化性樹脂組成物としては、アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)と、イオン反応性化合物(D)と、光イオン系開始剤(E)とを含む光硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらの光硬化性樹脂組成物には、適宜、多官能ポリマー(F)が添加されてもよい。
【0053】
上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)としては、アルカリ現像液に溶解される適宜の合成樹脂を挙げることができる。このような合成樹脂としては、アルカリ現像液に可溶である限り、特に限定されるわけではないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、クレゾールノボラック系樹脂などが挙げられる。また、SBSやSISなどの熱可塑性エラストマーが、カルボキシル基やフェノール性水酸基のようなアルカリ可溶性基を有するように変性された樹脂を用いてもよい。好ましくは、アルカリ溶解速度の制御、粘接着性の制御、及び他の成分との相溶性の制御が容易であるため、(メタ)アクリル系樹脂が望ましい。
【0054】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合してなる(メタ)アクリル系共重合体を好適に用いることができる。
【0055】
上記(メタ)アクリル酸系単量体としては、アクリル酸やメタクリル酸などが挙げられる。
【0056】
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0057】
また、上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等からなる成分を含有してもよい。
【0058】
更に、上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)は、現像時の溶解性を制御する等の目的で水酸基を有する単官能不飽和化合物を含有してもよい。水酸基を有する単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、分子内に水酸基を1つ有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)において、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物に起因する成分の比の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。10重量%未満であると、アルカリ可溶性を付与することが困難であり、40重量%を超えると、現像時の膨潤が著しくパターンの形成が困難となることがある。より好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0060】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により重合する方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
【0061】
上記アルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物を製造する場合に用いるラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化物、アゾ開始剤等の従来公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。また、上記分子量調節剤としては、例えば、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン系の連鎖移動剤等を用いることができる。
【0062】
また、上記アルカリ可溶性バインダー樹脂(A)としては、特に、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体(A1)が好適である。
【0063】
側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体(A1)としては、例えば、少なくとも酸性官能基を有する構成単位と水酸基を有する構成単位とからなる主鎖を有し、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物が該イソシアネート化合物のイソシアネート基を介して上記酸性官能基の少なくとも一部にアミド結合している及び/又は上記水酸基の少なくとも一部にウレタン結合している重合体(A1−1)が好適である。
【0064】
上記重合体(A1−1)は、ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物の仕込み量を当量比(NCO/OH)が1.0以上となるように調節することによって、ラジカル重合性基の側鎖を上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性高分子化合物中に高い比率で導入することが可能となり、反応性官能基を有するアルカリ可溶性高分子化合物の感度を向上させることができる。また、酸性官能基を有する構成単位の含有量を適宜の割合に調節できるので、アルカリ可溶性(現像性)を自由に調節できる。
【0065】
なお、上記アクリル可溶性バインダー樹脂(A)のガラス転移温度Tgや分子量は、組み合わされる他の成分との関係により、適宜選択すればよい。
【0066】
上記アクリル可溶性バインダー樹脂(A)としては、1種のみの樹脂が用いられてもよく、2種以上の樹脂が併用されてもよい。
【0067】
(B)ラジカル反応性化合物
ラジカル反応性化合物(B)としては、酸基含有モノマーもしくはオリゴマーを用いることができる。例えば、酸化度が38〜144KOHmg/gであり、側鎖にカルボキシを有するオリゴマーを例示することができる。このようなオリゴマーとして、酸基含有アクリル酸アクリレートが挙げられ、より具体的には、ダイセルサイテック社の商品、ACA200M、ACA230AA、ACAZ250、ACAZ251、ACAZ300、ACAZ320などを挙げることができる。
【0068】
(C)光ラジカル開始剤
光ラジカル開始剤(C)としては、従来より周知の光の照射によりラジカルを発生させる光ラジカル開始剤を挙げることができる。すなわち、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体などが挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光ラジカル開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
(D)イオン反応性化合物
イオン反応性化合物(D)としては、カチオンまたはアニオンにより反応し、重合する化合物を挙げることができる。このようなイオン反応性化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化SBS、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0070】
(E)光イオン開始剤
光イオン開始剤(E)としては、光の照射により活性化され、アニオンやカチオンを発生させる適宜の化合物を挙げることができる。例えば、光の照射により、カチオンを発生させる感光性オニウム塩やフェロセン系化合物を好適に用いることができる。このような感光性オニオメンとしては、トリアリールスルフォニウム塩、ジアリールスルフォニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などのSbF6−、PF6−、BF4−、B(PhF4−を対アニオンとする化合物を挙げることができる。上記スルフォニウム化合物としては、例えFe−フェロセン錯体を挙げることができる。これらは、1種のみが単独で用いられてもよく、2種類以上が用いられてもよい。
【0071】
また、任意に添加される多官能性ポリマー(F)としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなどの多官能アクリレート系ポリマーを挙げることができ、該多官能ポリマーを添加することにより硬化後の硬度や可撓性を発現することができる。
【0072】
また、上記光硬化性樹脂組成物1Aでは、粘着性を付与するために、粘着付与剤が添加されてもよい。このような粘着付与剤としては、ロジン系化合物、ポリテルペン系樹脂などを挙げることができる。また、粘着性を付与するために軟化剤として石油系樹脂などを添加してもよい。
【0073】
さらに、上記光硬化性樹脂組成物には、密着性を高めるためにシランカップリング材を加えても良い。このようなシランカップリング材としては特に限定されず、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル、メチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピル、トリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル、メチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0074】
さらに、上記光硬化性樹脂組成物には、フィルム状パターニング材1Aに弾力性を与えるために、ゴムを添加してもよい。このようなゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、フッ素ゴム(FKM,FFKM)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(VMQ,FVMQ)、ウレタンゴム(AU,EU)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、多硫化ゴム(T)、ノルボルネンゴム(NOR)、熱可塑性エラストマー(TPE)などが挙げられる。
【0075】
さらに、上記光硬化性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂を適宜添加してもよい。このような熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)が挙げられる。
【0076】
上記熱可塑性樹脂を光硬化性樹脂組成物に添加しておくことにより、フィルム状パターニング材を基板6に接着するに際し、例えば50〜100℃に加熱した熱ラミネーターなどを用い、すなわち熱エネルギーを付与することにより、フィルム状パターニング材1Aを基板6に確実に接着させることができる。
【0077】
次に、具体的な実験例に基づき説明する。
【0078】
(実施例1)
アルカリ可溶性バインダー樹脂として、アクリル酸/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート共重合体(共重合比は重量比で20対50対30、重量平均分子量=90000)を28重量部とラジカル反応性化合物として、ダイセル社製、商品名:サイクロマーP Z300を33重量部と、ウレタンアクリレート36重量部と、光開始剤としてチバガイギー社製、商品名:イルガキュア819を1重量部と、シランカップリング剤(信越化学社製、商品名:KBM−503)3重量部と、溶剤として酢酸エチル20重量部とを混合し、光硬化性組成物を得た。
【0079】
上記光硬化性組成物をポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型フィルムの上面にバーコーター(コーティングテスター社製、商品名:COTES)を用いてキャストし、オーブンに入れ、100℃の雰囲気で5分間乾燥し、光硬化性組成物からなるフィルムを得た。この光硬化性組成物からなるフィルムの膜厚は50〜60μmであった。
【0080】
上記フィルムの上面にさらにポリエチレンテレフタレートからなる離型フィルムを積層し、図1(b)に示したようにマスク5を載置し、405nmの波長の紫外線を60mJ/cmの条件で照射した。しかる後、上方の離型フィルム2を剥離した後、1重量/容量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー状に噴霧し、現像し、超純水で洗浄し、エアスプレーを用いて表面の水滴を取り除き、常温で乾燥させた。このようにして、離型フィルム3に支持されたフィルム状パターニング材1Aを得た。
【0081】
次に、アクリル樹脂板からなる基板6の上面6a上に、位置決めを行った後、基板6の上面のマイクロパターン形成部分が開口部となるように、フィルム状パターニング材1Aを積層した。位置決めに際しては、顕微鏡下でピンセットを用いてアライメントを取った。
【0082】
上記フィルム状パターニング材1Aの表面の弱い粘着力により位置決め状態でローラーで40gの加重を加え接着させ、離型フィルム3を剥離した。
【0083】
次に、被パターニング材料7として金をスパッタリングにより100nmの膜厚に成膜した。スパッタリングに際しては、ターゲットと基板6との距離を2cmとし、10PaのAr雰囲気下で、印加電流を20mAとし、150秒間のスパッタリングを2回行った。しかる後、上記フィルム状パターニング材1Aを剥離し、金からなるマイクロパターン7Aを形成した。
【0084】
(実施例2)
アルカリ可溶性バインダー樹脂として、アクリル酸/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート共重合体(共重合比は重量比で20対50対30、重量平均分子量=90000)を30重量部と、ラジカル反応性化合物として、ダイセル社製、商品名:サイクロマーP Z300を25重量部と、ウレタンアクリレートとして(共栄社化学社製、商品名:AH−600)を20重量部と、エポキシエステルとして(共栄社化学社製、商品名:M600A)を15重量部と、エポキシ成分として(JER社製、商品名:JER828)を10重量部と、光開始剤としてチバガイギー社製、商品名:イルガキュア819を1重量部と、溶剤として酢酸エチル20重量部とを混合し、光硬化性組成物を得た。
【0085】
上記光硬化性組成物をポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型フィルムの上面にバーコーター(コーティングテスター社製、商品名:COTES)を用いてキャストし、オーブンに入れ、100℃の雰囲気で5分間乾燥し、光硬化性組成物からなるフィルムを得た。この光硬化性組成物からなるフィルムの膜厚は50〜60μmであった。
【0086】
上記フィルムの上面にさらにポリエチレンテレフタレートからなる離型フィルムを積層し、図1(b)に示したようにマスク5を載置し、405nmの波長の紫外線を60mJ/cmの条件で照射した。しかる後、上方の離型フィルム2を剥離した後、1重量/容量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー状に噴霧し、現像し、超純水で洗浄し、エアスプレーを用いて表面の水滴を取り除き、常温で乾燥させた。このようにして、離型フィルム3に支持されたフィルム状パターニング材1Aを得た。
【0087】
次に、アクリル樹脂板からなる基板6の上面6a上に、位置決めを行った後、基板6の上面のマイクロパターン形成部分が開口部となるように、フィルム状パターニング材1Aを積層した。位置決めに際しては、顕微鏡下でピンセットを用いてアライメントを取った。
【0088】
上記フィルム状パターニング材1Aの表面の弱い粘着力により、位置決めした状態でローラーで40gの加重を加え接着させ、離型フィルム3を剥離した。
【0089】
次に、被パターニング材料7として金をスパッタリングにより100nmの膜厚に成膜した。スパッタリングに際しては、ターゲットと基板6との距離を2cmとし、10PaのAr雰囲気下で、印加電流を20mAとし、150秒間のスパッタリングを2回行った。しかる後、上記フィルム状パターニング材1Aを剥離し、金からなるマイクロパターン7Aを形成した。
【0090】
(実施例の評価)
実施例1及び2における製造方法において、以下の点を評価した。
【0091】
(1)マイクロパターンのパターニング性評価
標準パターンとなるフィルム状パターニング材1Aを使って縦×横の大きさが、50×50μmの金属パターンを形成し、作成した金属パターンを顕微鏡で測定し、評価を行った。パターンが高精度に形成された場合に○印を付した。
【0092】
(2)可撓性試験
実施例で得られたフィルム状パターニング材1Aについて、JIS A 6906に準じ、可撓性を評価した。ひび割れが見られなかった場合を○印を付した。ひび割れがある場合には×印としたが、実施例1,2のいずれにおいてもひび割れは認められなかった。なお、可撓性試験は、フィルム状パターニング材1Aを得た後に、基板6に接着する前に行った。
【0093】
(3)ボールタック試験
JIS Z 0237に準じ、基板6に接着する前にフィルム状パターニング材1Aについてボールタック試験を行った。なお、フィルム状パターン材1Aは、パターンを形成しないで試験を行った。
【0094】
(4)180℃剥離試験
基板6に接着する前に、別途用意した実施例1,2の各フィルム状パターニング材1Aについて、以下の要領で180℃剥離試験を行った。なお、フィルム状パターン材1Aは、パターンを形成しないで試験を行った。
【0095】
フィルム状パターニング材を基板6として用意したアクリル樹脂板の表面に積層し、フィルム状パターニング材1Aの背面に裏打ちされている離型フィルム上を、2kgのローラーを往復させ、フィルム状パターニング材1Aをアクリル系樹脂板に接着させた。しかる後、離型フィルムを剥離した後、300m/分の速度でフィルム状パターニング材1Aを180℃剥離し、剥離に至った強度を剥離強度とした。なお、試料の幅は25mmとした。
【0096】
結果を下記の表1に示す。
【0097】
(5)鉛筆硬度試験
JIS K 5401に準じ、フィルム状パターニング材1Aについてボールタック試験を行った。なお、フィルム状パターン材1Aは、パターンを形成しないで試験を行った。
【0098】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態において、マイクロパターンを製造する工程を説明するための各模式的正面断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態において、マイクロパターンを製造する工程を説明するための各模式的正面断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1…フィルム
1A…フィルム状パターニング材
2,3…離型フィルム
4…積層体
5…マスク
5a…光透過部
5b…光不透過部
6…基板
6a…上面
6b…凹部
7…被パターニング材料
7A…マイクロパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロパターンが上面に形成される基板と、前記マイクロパターンに対して反転されたパターン形状を有するフィルム状パターニング材とを用意する工程と、
前記フィルム状パターニング材を前記基板の上面に積層する工程と、
前記フィルム状パターニング材が積層された基板の上面に被パターニング材料を付与する工程と、
前記基板の上面から前記フィルム状パターニング材を除去し、前記フィルム状パターニング材と反転されたマイクロパターンとなるように前記被パターニング材料をパターニングし、被パターニング材料からなるマイクロパターンを形成する工程とを備えることを特徴とする、マイクロパターンの製造方法。
【請求項2】
前記フィルム状パターニング材を用意する工程において、前記フィルム状パターニング材が離型フィルムの片面に積層された状態で用意される、請求項1に記載のマイクロパターンの製造方法。
【請求項3】
前記フィルム状パターニング材を用意する工程が、前記離型フィルム上にパターニング材形成材料を塗布する工程と、塗布されたパターニング材形成材料をフォトリソグラフィによりパターニングする工程とを備える、請求項2に記載のマイクロパターンの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム状パターニング材を前記基板に積層するに際し、圧力、光及び熱からなる群から選択した1種のエネルギーを付与することにより、前記フィルム状パターニング材を前記基板の上面に接着する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロパターンの製造方法。
【請求項5】
前記エネルギーが光または熱であり、前記エネルギーの付与が、前記フィルム状パターニング材の積層前、積層時及び積層後の少なくとも1つの段階で付与される、請求項4に記載のマイクロパターンの製造方法。
【請求項6】
前記被パターニング材料が金属である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロパターンの製造方法。
【請求項7】
前記被パターニング材料の付与が、スパッタリングまたは真空蒸着により行われる、請求項1〜6のいずれかに1項に記載のマイクロパターンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−212135(P2009−212135A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50851(P2008−50851)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】