説明

マイクロホン装置およびそれを備える運転システム

【課題】簡易な構成で安定して音声を収音することが可能なマイクロホン装置及びそれを備えた運転システムを提供する。
【解決手段】本発明のマイクロホン装置は、一端が車体に固定されるとともに、着座した運転者の肩付近に他端が配置されるベルトガイドと、前記ベルトガイドの他端側に設置されるマイクロホンとを備えるものである。ベルトガイドの内部には衝撃吸収材を有する者としても良い。また、前述のマイクロホン装置を用いて車載用通話システムやカーナビゲーションシステムを実現しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるマイクロホン装置及びそれを備える運転支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用の電子機器が多く開発され、多機能化が進んでいる。例えば、車両内にマイクロホン装置を設置して、携帯電話のハンズフリー機能や、車両に搭載された電子機器を制御することが提案されている。
【0003】
図5は、従来の車載用マイクロホンが搭載された車内前方付近を示す図である。このように従来構成としては、全指向性のマイクロホン301を車内前方のマップランプ部302に設置したものがある。また、図6に示すように、運転者に対して特性が最適化するように、車内前方に単一指向性のマイクロホン装置301aを用いる構成もある。
【0004】
また、シートベルトに複数のマイクロホン装置を装着して、その中から最も運転者の音声を収音しやすいマイクロホン装置を選択し、音声を収音する構成も車両用音声入力装置も提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−065585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車内前方のマップランプ部にマイクロホン装置を設置する構成では、指向性方向は固定されるものの、マイクロホン装置とシートに着座者の口元位置との間が離れているため目的音以外の周囲雑音(ノイズ)も同時に収音し易く、また、車両走行等に伴う振動がマップランプ部からマイクロホン装置まで伝達するため、マイクロホン装置から出力される音声信号レベルに差(ばらつき)が生じ、搭載機器に音声による制御信号として入力される信号が安定しなかった。
【0007】
また、特許文献1に記載の構成では、シートベルト自身にマイクロホン装置が装着されているため、運転者の体格の違いにより、マイクロホンの位置が変化し、前述の構成と同様に入力信号が安定しなかった。
【0008】
また、シートベルトに複数のマイクロホンを装着する構成は、その複数のマイクロホンより音を最も良く収音するマイクロホンを選択するための選択機能が必要となる。この場合、音の入力に対して、この選択が完了するまでの時間差が発生するため、発話のはじめの部分の収音が不安定になり、音声制御状態するまで時間がかかったり、音声制御での認識不良や誤動作が生じてしまうことがあった。
【0009】
また、シートベルトにマイクロホンを装着する構成では、マイクロホンの信号を伝えるケーブルがシートベルトの巻取り機構に合わせたケーブル長が必要になるとともに、巻取り機構に対応した柔軟なケーブルを使用する必要があるため、コスト的に高いものとなる。また、マイクロホン装置を複数個設置すると、コストが高くなってしまう。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で安定して音声を収音することが可能なマイクロホン装置及びそれを備えた運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマイクロホン装置は、一端が車体に固定されるとともに、着座した運転者の肩付近に他端が配置されるベルトガイドと、前記ベルトガイドの他端側に設置されるマイクロホンとを備える。
【0012】
また、本発明のマイクロホン装置は、前記ベルトガイドが内部に衝撃吸収材を有するものとしても良い。
【0013】
また、本発明のマイクロホン装置は、一端が車両シートに固定されるとともに、着座した運転者の肩付近に他端が配置されるベルトガイドと、前記ベルトガイドの他端側に設置されるマイクロホンとを備えるものである。
【0014】
また、本発明のマイクロホン装置は、車両シートのヘッドレストの側面部に設置されるベルトガイドと、前記ベルトガイドに設置されるマイクロホンとを備えるものである。
【0015】
また、本発明のマイクロホン装置は、車両シートの背もたれ部の側面の上方側に設置されるベルトガイドと、前記ベルトガイドに設置されるマイクロホンと、を備えるものである。
【0016】
また、本発明のマイクロホン装置は、車両シートの背もたれ部の肩支持部の側面に設置されるベルトガイドと、前記ベルトガイドに設置されるマイクロホンと、を備えるものである。
【0017】
上記構成により、マイクロホンと車両シートに着座する着座者の口元の位置とが、短い距離で一定に保たれるため、着座者の音声を安定且つ明瞭に収音することができる。
【0018】
また、本発明の運転支援システムは、上記いずれかのマイクロホン装置と、運転者の運転を支援する機能を有するとともに、前記マイクロホン装置が取得した音声信号に基づいて動作が制御される電子機器とを備える。
【0019】
また、本発明の運転支援システムは、前記電子機器が、車両の走行経路案内を行うカーナビゲーション機能を有するものとしても良い。
【0020】
この構成により、着座者の発話のはじめの部分の収音も安定且つ明瞭に収音することができるので、カーナビによる音声制御での認識不良や誤動作が生じることを防ぐことができる。
【0021】
また、本発明の車載用通話システムは、上記いずれかのマイクロホン装置と、前記マイクロホン装置により運転者の音声を取得するハンズフリー機能を有する電子機器と、を備えるものである。
【0022】
着座者の発話のはじめの部分の収音も安定且つ明瞭に収音することができるので、ハンズフリー時の通話品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡易な構成で安定して音声を収音することが可能なマイクロホン装置及びそれを備えた運転システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本実施形態における音声制御システムの構成を示す図である。音声制御システム1は、CPU部7、D/Aコンバータ10、A/Dコンバータ11、音声認識部13、ハンズフリー部14、機器制御部15などを有する音声制御部5から主に構成されている。
【0026】
CPU部7は、周知のCPU、ROM、RAM等を有し、入力された音声信号に従って、各種車載機器を制御する。D/Aコンバータ10には、スピーカ21が接続されており、D/Aコンバータ10から入力される音声信号を出力する。A/Dコンバータ11には、車載用マイクロホン装置300が接続されており、入力された音声信号をA/Dコンバータ11に出力する。
【0027】
音声認識部13は、A/Dコンバータ11を介して入力された音声信号を認識し、この認識された音声信号を基に、制御信号など各種の信号を生成する。ハンズフリー部14には、携帯電話機61が接続されており、ハンズフリー部14は、音声認識部13で生成された制御信号に従って、携帯電話機61によるハンズフリー機能を提供する。機器制御部15には、カーナビ、カーステレオ等の各種車載機器51が接続されており、機器制御部15は、音声認識部13で生成された制御信号に従って、車載機器51を制御する。
【0028】
図2(a),図2(b)は、車載用マイクロホン300の構成を示す図である。図2(a)に示すマイクロホン300aは、有機フィルムを用いたエレクトレットコンデンサマイクロホン(ECM:Electret Condenser Microphone)である。ECMとは、コンデンサの一方の電極にエレクトレットを配置し、エレクトレットに電荷を与え、音圧によって変動する静電容量の変化を電圧変化に変換するマイクロホンである。
【0029】
図2(a)に、単一指向性のECMの断面構造図を示す。図2(a)に示すようにマイクロホン300aは、第1の音孔315Aを有するケース317内に、金属導体等の振動板311と、エレクトレット膜313が形成された固定電極312と、回路素子が搭載されたプリント基板318とが配置されており、振動板311と固定電極312との間隔がスペーサ314で保持され、また、固定電極312とプリント基板318との間に背気室316が形成されている。また、ケース317は、第1の音孔315と反対側に第2の音孔315Bが形成されている。振動板311は、例えば、フィルムにアルミ蒸着された振動板である。
【0030】
エレクトレット膜313は、一般に、外部電界によらず永久的に帯電(電荷保持)している物質であり、フッ素樹脂であるFEP(Fluorinated Ethylene Propylene:フッ化エチレンプロピレン樹脂)が用いられる。
【0031】
このマイクロホン300aでは、振動板311が音圧によって振動すると、振動板311と固定電極312とで構成される平板コンデンサの静電容量が変化し、電圧変化に変換されてマイクロホン300aから出力される。
【0032】
また、車載用マイクロホン300としては、図2(b)に示すように、半導体技術を活用するマイクロマシニング技術を用いた小型マイクロホン(MEMSマイクロホン)を用いても良い。図2(b)は、MEMSマイクロホンの断面構造を示している。
【0033】
図2(b)に示すように、MEMSマイクロホン300bは、シリコン基板321上に、第1の絶縁層322を介して、振動膜電極323とエレクトレット膜324とを有しており、また、その上に、第2の絶縁層325を介して、音孔327が形成された固定電極326を有している。また、振動膜電極323の背面には、シリコン基板321をエッチングして、背気室328が形成されている。
【0034】
振動膜電極323は、導電性のポリシリコンで形成され、エレクトレット膜324は、窒化シリコン膜やシリコン酸化膜で形成され、また、固定電極326は、導電性のポリシリコンとシリコン酸化膜やシリコン窒化膜とを積層して形成されている。
【0035】
MEMSマイクロホン300bでは、振動膜電極323が音圧によって振動すると、振動膜電極323と固定電極326とで構成される平板コンデンサの静電容量が変化し、電圧変化として取り出される。
【0036】
図3は、車両に搭載される車両シートの外観斜視図を示している。図3に示すように、車両の運転席は、運転者等が着座する車両シート104と、車両本体105に設けられた巻取機構に巻き取り可能に設置されるシートベルト103と、シートベルト103の一部の位置を規制するベルトガイド101と、ベルトガイド101に設置されるマイクロホン300を備えるものである。
【0037】
車両シート104は、座部104cと、背もたれ部104bと、ヘッドレスト104aとを備えるものである。また、車両シート104の座部104cの側面部(着座者の腰付近と対応する位置)には、シートベルト103の使用時にシートベルト103の先端部が嵌合して取り付けられる取付部104dが設置されている。
【0038】
シートベルト103は、車両シート104に着座した乗員の上体を拘束するものである。
【0039】
ベルトガイド101は、支持部101bとベルト位置規制部101aとを備えている。図3に示すように、支持部101bは、一端が車両本体105に固定され、他端が、車両シートの背もたれ部104bの肩支持部付近に配置されている。支持部101bの他端側には、ベルト位置規制部101aが設置されている。
【0040】
ベルト位置規制部101aは、シートベルト103を挿通させて支持することが可能な開口部を有している。乗員は、シートベルト103をベルト位置規制部101aを挿通させつつ、シートベルト103の先端部を取付部104dに取り付けて使用することで、シートベルト103が着座者の肩付近にかかる負担を緩和することができる。
【0041】
また、このように配置されたベルトガイド101のベルト位置規制部101aには、マイクロホン300が搭載されている。この位置に設置されたマイクロホン300は、有線または無線通信により上述の音声制御部5と接続するものである。
【0042】
このように構成された音声制御システムは、マイクロホン300と車両シート104に着座した着座者の口元の位置とが、短い距離(おおよそ20cm)で一定に保たれるため、音声制御部5は、着座者の音声を安定且つ明瞭に収音することができる。
【0043】
また、着座者の発話のはじめの部分の収音も安定且つ明瞭に収音することができるので、音声制御での認識不良や誤動作が生じることを防ぐことができる。
【0044】
また、上述の従来技術のように、複数のマイクロホンを用いてそのうちから最適なマイクロホンを選択する等の処理が必要ないため、時間差が生じず、着座者は速やかに、音声による通話・指示等を行うことが可能になる。
【0045】
なお、マイクロホン300の指向性は、着座者の口元の音声を明瞭に取得できる指向性にすれば良い。指向性の種類としては、例えば、指向性を持たない「無指向性」(全指向性)、特定の方向の音を捉えやすい「単一指向性」、指向性をさらに狭角にした「超指向性」、前後ふたつの方向の音源を強く捉える「双指向性」などがあるが、運転者の口元の音声を更に明瞭に取得できるように決定すれば良い。
【0046】
(変形例)
図4は、上述の実施の形態の構成における、ベルトガイドの変形例の概略構成を示している。
【0047】
図4に示すように、ベルトガイド201は、シートベルト103を挿通させて支持することが可能な開口部を有するとともに、クッション材料からなるパッドにより全体が被覆されている。ベルトガイド201は、一端が車両本体105に固定され、シートベルト使用時に、他端が車両シートの背もたれ部104bの肩支持部付近に配置される構成となっている。
【0048】
この構成により、着座者は、シートベルト使用時に肩付近にかかる負担を緩和することができる。
【0049】
なお、ベルトガイドを設置する位置や、そのベルトガイド上でマイクロホンを設置する位置は、マイクロホンとシートに着座した乗員の口元との間の距離が、安定しておおよそ20〜30cm程度に保てれば良い。
【0050】
よって、例えば、ベルトガイドは、一端が車両シートに固定されるとともに、シートベルト着用時に、着座した運転者の肩付近に他端が位置するようにして、その他端側にマイクロホンを設置しても良い。
【0051】
また、ベルトガイドを、車両シートのヘッドレスト104aの側面部に設置して、そのベルトガイドにマイク装置を設置しても良い。また、ベルトガイドを、車両シートの背もたれ部104bの側面の上方側に設置して、そのベルトガイドにマイクロホンを設置しても良い。すなわち、ベルトガイドを車両シートの背もたれ部の肩支持部の側面に設置して、そのベルトガイドにマイクロホンを設置しても良い。
【0052】
また、話者の口元との距離を更に短くするために、伸縮性の部品でベルトガイドの先端とマイクロホンを接続しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、簡易な構成で安定して音声を収音することが可能なマイクロホン装置及びそれを備えた運転システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態における音声制御システムの概略構成図
【図2】(a)ECMの断面図、(b)MEMSマイクロホンの断面図
【図3】車両に搭載される車両シートの外観斜視図
【図4】ベルトガイドの変形例を示す図
【図5】従来の車載用マイクロホンが搭載された車内前方付近の説明図
【図6】従来の車載用マイクロホンが搭載された車内前方付近の説明図
【符号の説明】
【0055】
1 音声制御システム
5 音声制御部
7 CPU
10 D/Aコンバータ
11 A/Dコンバータ
13 音声認識部
14 ハンズフリー部
15 機器制御部
21 スピーカ
51 車載機器
61 携帯電話機
300 マイクロホン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が車体に固定されるとともに、着座した運転者の肩付近に他端が配置されるベルトガイドと、
前記ベルトガイドの他端側に設置されるマイクロホンと、
を備えるマイクロホン装置。
【請求項2】
前記ベルトガイドは内部に衝撃吸収材を有する請求項1に記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
一端が車両シートに固定されるとともに、着座した運転者の肩付近に他端が配置されるベルトガイドと、
前記ベルトガイドの他端側に設置されるマイクロホンと、
を備えるマイクロホン装置。
【請求項4】
車両シートのヘッドレストの側面部に設置されるベルトガイドと、
前記ベルトガイドに設置されるマイクロホンと、
を備えるマイクロホン装置。
【請求項5】
車両シートの背もたれ部の側面の上方側に設置されるベルトガイドと、
前記ベルトガイドに設置されるマイクロホンと、
を備えるマイクロホン装置。
【請求項6】
車両シートの背もたれ部の肩支持部の側面に設置されるベルトガイドと、
前記ベルトガイドに設置されるマイクロホンと、
を備えるマイクロホン装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のマイクロホン装置と、
運転者の運転を支援する機能を有するとともに、前記マイクロホン装置が取得した音声信号に基づいて動作が制御される電子機器と、
を備える運転支援システム。
【請求項8】
前記電子機器は、車両の走行経路案内を行うカーナビゲーション機能を有する請求項7に記載の運転支援システム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のマイクロホン装置と、
前記マイクロホン装置により運転者の音声を取得するハンズフリー機能を有する電子機器と、
を備える車載用通話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−260488(P2008−260488A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106425(P2007−106425)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】