説明

マスクパターンの形成方法及び半導体装置の製造方法

【課題】SWPにおいて、側壁部の形状の対称性を高め、被エッチング膜をエッチングするときの加工精度を向上させることができるマスクパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】基板上の被エッチング膜の上に形成されたシリコン膜よりなる第1のライン部が配列したシリコン膜パターンの表面を等方的に被覆するように、カーボン膜を成膜する成膜工程S18と、カーボン膜を第1のライン部の上部から除去すると共に、第1のライン部の側壁部として残存するように、カーボン膜をエッチバックするエッチバック工程S19と、第1のライン部を除去し、側壁部が配列したマスクパターンを形成するシリコン膜除去工程S20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びそれに含まれるマスクパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化に伴って、製造プロセスに要求される配線や分離幅のパターンは、微細化される傾向にある。このような微細なパターン(以下、「微細パターン」という。)は、フォトリソグラフィ技術を用いてレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクパターンに用いて下地の各種薄膜をエッチングすることで形成される。マスクパターンを形成するためにはフォトリソグラフィ技術が重要であり、近時の半導体デバイスの微細化は、フォトリソグラフィ技術の解像限界以下を要求するまでに至っている。
【0003】
このようなフォトリソグラフィ技術の解像限界以下の微細なマスクパターンを形成する方法として、所謂ダブルパターニング法(ダブルパターニングプロセス)がある。ダブルパターニング法は、第1のマスクパターン形成ステップと、この第1のマスクパターン形成ステップの後に行われる第2のマスクパターン形成ステップの2段階のパターニングを行うことによって、1回のパターニングでエッチングマスクを形成する場合より微細な間隔を形成するものである。
【0004】
また、あるパターンの両側に形成した側壁部をマスクとして使用するSWP(Side Wall Process)法により、元のレジストパターンよりも微細なピッチを有するマスクパターンを形成する方法も知られている。この方法は、まずフォトレジスト膜を成膜してライン部が配列したレジストパターンを形成し、このレジストパターンの表面を等方的に被覆するように、シリコン酸化膜等を形成した後、レジストパターンの側壁を被覆する側壁部にのみシリコン酸化膜が残るようにエッチバックし、この後、フォトレジスト膜のパターンを除去して、残った側壁部であるシリコン酸化膜をマスクパターンとするものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−16813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のように、レジストパターンの表面を被覆するようにシリコン酸化膜を成膜する成膜プロセスをSWPに組合せる場合、次のような問題がある。
【0007】
マスクパターンを構成する側壁部をレジストパターンの側壁として形成する場合、レジストパターンをトリミングする工程、シリコン酸化膜を成膜する工程、又はシリコン酸化膜をエッチバックする工程において、レジストパターンを構成するライン部の先端が先細りするため、ライン部の両側の側壁部がライン部の中心に向け曲がってしまい、カニの爪のように非対称的な形状になってしまう場合がある。非対称的な形状の側壁部を用いて被エッチング膜をエッチングする場合には、その前に側壁部の先端のみを形状加工して対称的な形状にするネイルクリーンとも呼ばれる形状加工工程を追加しなければならない場合がある。また、形状加工工程を行ってもなお、側壁部が非対称な形状を有している場合には、側壁部の下方の膜をエッチングするときの加工精度が低下する場合がある。
【0008】
また、シリコン酸化膜を側壁部として使用する場合、シリコン酸化膜に対する被エッチング膜のエッチングレートの比(選択比)を高くすることができないため、シリコン酸化膜の膜厚を大きくしなければならない場合がある。その場合、側壁部の幅寸法も大きくなるため、側壁部よりなるマスクパターンのライン幅及びスペース幅を小さくすることが困難な場合がある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、SWPにおいて、側壁部の形状の対称性を高め、被エッチング膜をエッチングするときの加工精度を向上させることができるマスクパターンの形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係るマスクパターンの形成方法は、基板上の被エッチング膜の上に形成されたシリコン膜よりなる第1のライン部が配列したシリコン膜パターンの表面を等方的に被覆するように、カーボン膜を成膜する成膜工程と、前記カーボン膜を前記第1のライン部の上部から除去すると共に、前記第1のライン部の側壁部として残存するように、前記カーボン膜をエッチバックするエッチバック工程と、前記第1のライン部を除去し、前記側壁部が配列したマスクパターンを形成するシリコン膜除去工程とを有する。
【0012】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、本発明に係るマスクパターンの形成方法を行って形成した前記マスクパターンを用いて、前記被エッチング膜よりなるパターンを形成する被エッチング膜パターン形成工程を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マスクパターンを形成し、SWPを行う場合において、側壁部の形状の対称性を高め、被エッチング膜をエッチングするときの加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図2A】実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法を説明するための図であり、各工程における半導体基板の構造を模式的に示す断面図(その1)である。
【図2B】実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法を説明するための図であり、各工程における半導体基板の構造を模式的に示す断面図(その2)である。
【図2C】実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法を説明するための図であり、各工程における半導体基板の構造を模式的に示す断面図(その3)である。
【図3】実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法において使用する成膜装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図4】実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法において使用する成膜装置の構成を模式的に示す横断面図である。
【図5】実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を説明するための図であり、被エッチング膜を成膜するときのガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】実施例で成膜工程を行った後のパターンを撮影した写真及び写真を説明する図である。
【図7】実施例でエッチバック工程を行った後のパターンを撮影した写真及び写真を説明する図である。
【図8】実施例でシリコン膜除去工程を行った後、更に被エッチング膜エッチング工程及びカーボン膜除去工程を行った後のパターンを撮影した写真及び写真を説明する図である。
【図9】比較例でレジストパターンの表面を被覆するようにシリコン酸化膜を成膜した後のパターンを撮影した写真及び写真を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(実施の形態)
図1乃至図4を参照し、本発明の実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法を説明する。
【0016】
初めに、図1から図2Cを参照し、本発明の実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法を説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図2Aから図2Cは、本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法を説明するための図であり、各工程における半導体基板の構造を模式的に示す断面図である。また、図1の、ステップS11からステップS22の各々の工程が行われた後の半導体基板の構造は、図2A(a)から図2C(l)の各々の断面図で示される構造に対応する。
【0018】
本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法は、図1に示すように、積層工程(ステップS11)、有機膜パターン形成工程(ステップS12及びステップS13)、第1のパターン形成工程(ステップS14からステップS17)、成膜工程(ステップS18)、エッチバック工程(ステップS19)、シリコン膜除去工程(ステップS20)、被エッチング膜エッチング工程(ステップS21)、及びカーボン膜除去工程(ステップS22)を含む。
【0019】
有機膜パターン形成工程(ステップS12及びステップS13)は、有機膜形成工程(ステップS12)及びパターニング工程(ステップS13)を含む。第1のパターン形成工程(ステップS14からステップS17)は、トリミング工程(ステップS14)、反射防止膜エッチング工程(ステップS15)、シリコン膜エッチング工程(ステップS16)、及び反射防止膜除去工程(ステップS17)を含む。
【0020】
なお、積層工程(ステップS11)からシリコン膜除去工程(ステップS20)までが、本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法に相当する。
【0021】
ステップS11は、半導体基板101上に、被エッチング膜102、シリコン膜103、及び反射防止膜104を順次積層する工程である。図2A(a)は、ステップS11が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0022】
ステップS11では、図2A(a)に示すように、半導体基板101上に、下から順に被エッチング膜102、シリコン膜103、反射防止膜104を積層する。被エッチング膜102は、パターンが形成され、その後半導体基板101に種々の加工工程を行う場合のマスクとして機能する。シリコン膜103は、第1のライン部が配列されたシリコン膜パターンが形成され、第1のライン部の側壁部としてカーボン膜よりなるマスクパターンを形成するためのものである。反射防止膜104は、その上に形成されるフォトレジスト膜105のフォトリソグラフィを行う際の反射防止膜(BARC:Bottom Anti-Reflecting Coating)である。
【0023】
なお、半導体基板101は、半導体、例えば、シリコン基板のみを示すものではなく、半導体基板内、又は半導体基板上に形成された半導体素子や集積回路パターンに対応した導電膜、これらを絶縁する層間絶縁膜が形成された構造体とを含む、と定義する。
【0024】
被エッチング膜102の材質は、特に限定されるものではないが、例えば窒化シリコン(SiN)を含む膜を用いることができる。また、被エッチング膜102の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば10〜1000nmとすることができる。
【0025】
シリコン膜103として、例えばアモルファスシリコン、ポリシリコンを含む膜を用いることができる。また、シリコン膜103の厚さは、特に限定されるものでなく、例えば50〜1000nmとすることができる。
【0026】
反射防止膜104の材質は、特に限定されるものでなく、例えばスピンオンにより成膜された熱硬化性樹脂や架橋剤を含む広範な有機系の材料を用いることができる。また、反射防止膜104の厚さは、特に限定されるものでなく、例えば20〜150nmとすることができる。
【0027】
ステップS12は、反射防止膜104上にフォトレジスト膜105を成膜する工程である。図2A(b)は、ステップS12が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0028】
フォトレジスト膜105の材質は、例えばArFレジストを用いることができる。また、フォトレジスト膜105の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば50〜200nmとすることができる。
【0029】
次に、ステップS13のパターニング工程を行う。ステップS13では、成膜されたフォトレジスト膜105を露光、現像してフォトレジスト膜105よりなるレジストパターン105aを形成する。また、図2A(c)は、ステップS13が行われた後の微細パターンの構造を示す断面図である。
【0030】
図2A(c)に示すように、フォトレジスト膜105よりなり、ライン幅L2及びスペース幅S2を有する第2のライン部が配列したレジストパターン105aが形成される。レジストパターン105aは、反射防止膜104をエッチングする工程におけるマスクとして機能する。レジストパターン105aのライン幅L2及びスペース幅S2は、特に限定されるものではなく、共に例えば40nmとすることができる。
【0031】
次に、ステップS14のトリミング工程を行う。ステップS14では、フォトレジスト膜105よりなるレジストパターン105aをトリミング処理し、フォトレジスト膜105よりなるレジストパターン105bを形成する。また、図2A(d)は、ステップS14が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0032】
なお、トリミング処理は、本発明における形状加工工程における形状を加工する処理に相当し、スリミング処理ともいう。
【0033】
トリミング処理の方法は、特に限定されるものではなく、トリミング処理の条件の一例は、酸素ラジカル、又はオゾンガスを含む雰囲気中、温度は室温〜100℃である。また、図2A(c)及び図2A(d)に示すように、トリミング処理されてできるレジストパターン105bのライン幅L3は、トリミング処理を行う前のレジストパターン105aのライン幅L2に比べ細くなるので、レジストパターン105bのライン幅L3及びスペース幅S3と、レジストパターン105aのライン幅L2及びスペース幅S2との大小関係は、L3<L2、S3>S2となる。L3及びS3の値は、特に限定されるものではなく、例えばL3を20nm、S3を60nmとすることができる。
【0034】
次に、ステップS15の反射防止膜エッチング工程を行う。ステップS15では、トリミングしたレジストパターン105bをマスクとして反射防止膜104をエッチングして、反射防止膜104よりなり、ライン幅L3及びスペース幅S3を有する反射防止膜パターン104aを形成する。また、図2B(e)は、ステップS15が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0035】
なお、反射防止膜パターン104aのそれぞれのライン部の上部には、エッチングによってレジストパターン105bが完全に除去されず、残存してもよい。
【0036】
次に、ステップS16のシリコン膜エッチング工程を行う。ステップS16では、反射防止膜パターン104aをマスクとしてシリコン膜103をエッチングして、シリコン膜103よりなり、ライン幅L3及びスペース幅S3を有する第1のライン部103aが配列したシリコン膜パターン103bを形成する。また、図2B(f)は、ステップS16が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0037】
次に、ステップS17の反射防止膜除去工程を行う。ステップS17では、シリコン膜パターン103bのそれぞれのライン部の上部に残存する反射防止膜104を除去する。また、図2B(g)は、ステップS17が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0038】
次に、ステップS18の工程を含む成膜工程を行う。ステップS18では、シリコン膜パターン103bの表面を等方的に被覆するように、カーボン膜106を成膜する。また、図2B(h)は、ステップS18の工程が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0039】
図2B(h)に示すように、シリコン膜パターン103bが形成されている場所及び形成されていない場所を含め、基板全面にカーボン膜106が成膜される。このとき、シリコン膜パターン103bの第1のライン部103aの表面を等方的に被覆するように、カーボン膜106が成膜される。従って、第1のライン部103aの側面にもカーボン膜106が成膜される。このときのカーボン膜106の厚さ寸法をDとすると、第1のライン部103aの側面を被覆するカーボン膜106の幅寸法もDとなる。カーボン膜106の厚さ寸法Dは、特に限定されるものではなく、例えば20nmとすることができる。
【0040】
カーボン膜106として、アモルファスカーボン膜を成膜することができる。また、アモルファスカーボン膜の成膜工程を行う成膜装置については、図3及び図4を用いて後で説明する。
【0041】
次に、ステップS19のエッチバック工程を行う。ステップS19では、カーボン膜106を第1のライン部103aの上部から除去すると共に、第1のライン部103aの側壁部106aとしてのみ残るように、カーボン膜106をエッチングする。また、図2C(i)は、ステップS19の工程が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0042】
図2C(i)に示されるように、カーボン膜106をエッチバックし、カーボン膜106を第1のライン部103aの上部から除去し、そのまま更にカーボン膜106をエッチバックし、カーボン膜106が、第1のライン部103aの側面を被覆する側壁部106aとしてのみ残った状態とする。カーボン膜106のエッチバックするときのエッチング方法は、特に限定されるものではなく、処理ガスとして、例えば、酸素ガス(O)等の酸素を含むガス、あるいは酸素を含むガスに、CF、C、CHF、CHF、CH等のCF系ガス、Arガス等を添加したガスを用いて行うことができる。第1のライン部103aの上部から除去し、第1のライン部103aよりなるシリコン膜パターン103bの側壁部106aのみが残るようにエッチングするため、シリコン膜パターン103b及び側壁部106aよりなるパターン107が形成される。パターン107のライン幅をL4、スペース幅をS4とすると、レジストパターン105bのライン幅L3が20nm、側壁部105aの厚さDが20nmである場合、L4=L3+D×2、S4=L3+S3−L4であるため、L4を60nm、S4を20nmとすることができる。
【0043】
また、成膜工程、エッチバック工程において、シリコン膜103よりなる第1のライン部103aの先端が先細りしないため、第1のライン部103aは、側壁部105aよりも高く突き出した部分を有する。この突き出した部分の高さをΔHとする。
【0044】
なお、エッチバックとは、エッチングにより膜の表面を厚さ方向(基板に垂直な方向)に後退させることをいう。
【0045】
ステップS20のシリコン膜除去工程を行う。ステップS20では、シリコン膜103を除去し、側壁部106aが配列したマスクパターン108を形成する。また、図2C(j)は、シリコン膜除去工程が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0046】
図2C(j)に示すように、ライン幅がD、スペース幅がL3及びS4が交互に現れるようなパターンであるマスクパターン108が形成される。本実施の形態では、シリコン膜パターン103bのライン幅L3とパターン107のスペース幅S4とを等しくすることにより、マスクパターン108のスペース幅はL3及びS4に等しいS1となる。また、Dに等しいライン幅をあらためてL1とする。前述したように、L3を20nm、S4を20nm、カーボン膜106の厚さ寸法(側壁部106aの幅寸法)Dを20nmとすることにより、ライン幅L1が20nm、スペース幅S1が20nmのマスクパターン108を形成することができる。
【0047】
シリコン膜103のエッチングは、後述するように、Cl、Cl+HBr、Cl+O、Cl+N、Cl+HCl、HBr+Cl+SF等の塩素を含むガス、あるいはCF+O、SF等のその他ハロゲンガスを含むガス、のプラズマを用いて行うことができる。
【0048】
次に、ステップS21の被エッチング膜エッチング工程を行う。ステップS21では、マスクパターン108をマスクとして被エッチング膜102をエッチングし、ライン幅L1及びスペース幅S1を有するライン部を有するパターン109を形成する。また、図2C(k)は、被エッチング膜エッチング工程が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0049】
次に、ステップS22のカーボン膜除去工程を行う。ステップS22では、アッシング又は溶剤によるウェット洗浄を行って、パターン109の上部に残存するカーボン膜106(マスクパターン108)を除去する。また、図2C(l)は、カーボン膜除去工程が行われた後の半導体基板の構造を示す断面図である。
【0050】
次に、図3及び図4を参照し、本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法において使用する成膜装置について説明する。
【0051】
図3及び図4は、それぞれ本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体装置の製造方法において使用する成膜装置の構成を模式的に示す縦断面図及び横断面図である。なお、図4においては、加熱装置を省略している。
【0052】
図3及び図4に示すように、成膜装置80は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理容器1を有している。この処理容器1の全体は、例えば石英により形成されており、この処理容器1内の天井には、石英製の天井板2が設けられて封止されている。また、この処理容器1の下端開口部には、例えばステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド3がOリング等のシール部材4を介して連結されている。
【0053】
上記マニホールド3は処理容器1の下端を支持しており、このマニホールド3の下方から被処理体として多数枚、例えば50〜100枚の半導体ウェハWを多段に載置可能な石英製のウェハボート5が処理容器1内に挿入可能となっている。このウェハボート5は3本の支柱6を有し(図4参照)、支柱6に形成された溝により多数枚のウェハWが支持されるようになっている。
【0054】
このウェハボート5は、石英製の保温筒7を介してテーブル8上に載置されており、このテーブル8は、マニホールド3の下端開口部を開閉する例えばステンレススチール製の蓋部9を貫通する回転軸10上に支持される。
【0055】
そして、この回転軸10の貫通部には、例えば磁性流体シール11が設けられており、回転軸10を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部9の周辺部とマニホールド3の下端部との間には、例えばOリングよりなるシール部材12が介設されており、これにより処理容器1内のシール性を保持している。
【0056】
上記の回転軸10は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム13の先端に取付けられており、ウェハボート5および蓋部9等を一体的に昇降して処理容器1内に対して挿脱されるようになっている。なお、上記テーブル8を上記蓋部9側へ固定して設け、ウェハボート5を回転させることなくウェハWの処理を行うようにしてもよい。
【0057】
また、成膜装置80は、第1ガス供給機構14と、第2ガス供給機構15と、第3ガス供給機構16とを有している。
【0058】
第1ガス供給機構14は、処理容器1内へ酸素含有ガス、例えばOガスを供給する酸素含有ガス供給機構17と、処理容器1内へ窒素含有ガス、例えばNHガスを供給する窒素含有ガス供給配管18と、カーボンソースガスを供給するカーボンソースガス供給配管19と、配管パージのための不活性ガス、例えばNガスを供給するパージガス供給配管20とを有している。
【0059】
酸素含有ガス供給配管17には酸素含有ガス供給源17aが接続されており、配管17の途中にはマスフローコントローラのような流量制御器17bおよび開閉バルブ17cが介在されている。窒素含有ガス供給配管18には窒素含有ガス供給源18aが接続されており、配管18の途中には流量制御器18bおよび開閉バルブ18cが介在されている。カーボンソースガス供給配管19にはカーボンソースガス供給源19aが接続されており、配管19の途中には流量制御器19bおよび開閉バルブ19cが介在されている。パージガス供給配管20にはパージガス供給源20aが接続されており、配管20の途中には流量制御器20bおよび開閉バルブ20cが介在されている。酸素含有ガス供給配管17、窒素含有ガス供給配管18、およびカーボンソースガス供給配管19、およびパージガス供給配管20は、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるガス分散ノズル21に接続されている。このガス分散ノズル21の垂直部分には、複数のガス吐出孔21aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔21aから水平方向に処理容器1に向けて略均一にガスを吐出することができるようになっている。
【0060】
第2ガス供給機構15は、処理容器1内へSiソースガスを供給するSiソースガス供給配管22を有している。Siソースガス供給配管22にはSiソースガス供給源22aが接続されており、配管22の途中には、流量制御器22bおよび開閉バルブ22cが介在されている。Siソースガス供給配管22は、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるガス分散ノズル24に接続されている。ここではガス分散ノズル24は2本設けられており(図4参照)、各ガス分散ノズル24には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔24aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔24aから水平方向に処理容器1内に略均一にガスを吐出することができるようになっている。なお、ガス分散ノズル24は1本のみであってもよい。
【0061】
また、第2ガス供給機構15には、処理容器1内へシリコン膜を除去する除去用ガスを処理ガスとして供給する処理ガス供給配管27が設けられてもよい。処理ガス供給配管27には処理ガス供給源27aが接続されており、配管27の途中には、流量制御器27bおよび開閉バルブ27cが介在されている。処理ガス供給配管27も、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるガス分散ノズル24に接続されている。
【0062】
第3ガス供給機構16は、処理容器1内へパージガスを供給するパージガス供給配管25を有している。パージガス供給配管25にはパージガス供給源25aが接続されており、配管25の途中には、流量制御器25bおよび開閉バルブ25cが介在されている。また、パージガス供給配管25は、マニホールド3の側壁を貫通して設けられたパージガスノズル26に接続されている。
【0063】
上記処理容器1の側壁の一部には、供給されたガスのプラズマを形成するプラズマ生成機構30が形成されている。このプラズマ生成機構30は、上記処理容器1の側壁を上下方向に沿って所定の幅で削りとることによって上下に細長く形成された開口31をその外側より覆うようにして処理容器1の外壁に気密に溶接されたプラズマ区画壁32を有している。プラズマ区画壁32は、断面凹部状をなし上下に細長く形成され、例えば石英で形成されている。また、プラズマ生成機構30は、このプラズマ区画壁32の両側壁の外面に上下方向に沿って互いに対向するようにして配置された細長い一対のプラズマ電極33と、このプラズマ電極33に給電ライン34を介して接続され高周波電力を供給する高周波電源35とを有している。そして、上記プラズマ電極33に高周波電源35から例えば13.56MHzの高周波電圧を印加することにより酸素含有ガスのプラズマが発生し得る。なお、この高周波電圧の周波数は、13.56MHzに限定されず、他の周波数、例えば400kHz等を用いてもよい。
【0064】
上記のようなプラズマ区画壁32を形成することにより、処理容器1の側壁の一部が凹部状に外側へ窪ませた状態となり、プラズマ区画壁32の内部空間が処理容器1の内部空間に一体的に連通された状態となる。また、開口31は、ウェハボート5に保持されている全てのウェハWを高さ方向においてカバーできるように上下方向に十分に長く形成されている。
【0065】
上記酸素含有ガスを吐出する分散ノズル21は、処理容器1内を上方向に延びている途中で処理容器1の半径方向外方へ屈曲されて、上記プラズマ区画壁32内の最も奥の部分(処理容器1の中心から最も離れた部分)に沿って上方に向けて起立されている。このため、高周波電源35がオンされて両電極33間に高周波電界が形成された際に、ガス分散ノズル21のガス噴射孔21aから吐出された酸素ガスがプラズマ化されて処理容器1の中心に向けて拡散しつつ流れる。
【0066】
上記プラズマ区画壁32の外側には、これを覆うようにして例えば石英よりなる絶縁保護カバー36が取付けられている。また、この絶縁保護カバー36の内側部分には、図示しない冷媒通路が設けられており、例えば冷却された窒素ガスを流すことにより上記プラズマ電極33を冷却し得るようになっている。
【0067】
上記2本のガス分散ノズル24は、処理容器1の内側壁上記開口31を挟む位置に起立して設けられており、このガス分散ノズル24に形成された複数のガス吐出孔24aより処理容器1の中心方向に向けてSiソースガスとして1分子内に1個または2個のアミノ基を有するアミノシランガスを吐出し得るようになっている。
【0068】
一方、処理容器1の開口31の反対側の部分には、処理容器1内を真空排気するための排気口37が設けられている。この排気口37は処理容器1の側壁を上下方向へ削り取ることによって細長く形成されている。処理容器1のこの排気口37に対応する部分には、排気口37を覆うように断面凹部状に成形された排気口カバー部材38が溶接により取付けられている。この排気口カバー部材38は、処理容器1の側壁に沿って上方に延びており、処理容器1の上方にガス出口39を規定している。そして、このガス出口39から図示しない真空ポンプ等を含む真空排気機構により真空引きされる。そして、この処理容器1の外周を囲むようにしてこの処理容器1およびその内部のウェハWを加熱する筐体状の加熱装置40が設けられている。
【0069】
成膜装置80の各構成部の制御、例えば開閉バルブの開閉による各ガスの供給・停止、流量制御器によるガス流量の制御、および高周波電源35のオン・オフ制御、加熱装置40の制御等は例えばマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ50により行われる。コントローラ50には、工程管理者が成膜装置80を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置80の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザインターフェース51が接続されている。
【0070】
また、コントローラ50には、成膜装置80で実行される各種処理をコントローラ50の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置80の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部52が接続されている。レシピは記憶部52の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0071】
そして、必要に応じて、ユーザインターフェース51からの指示等にて任意のレシピを記憶部52から呼び出してコントローラ50に実行させることで、コントローラ50の制御下で、成膜装置80での所望の処理が行われる。
【0072】
次に、以上のように構成された成膜装置80を用いて行われる本実施の形態に係るSiNの形成工程(積層工程)及びアモルファスカーボン膜の成膜工程について説明する。
【0073】
最初に、図5を参照し、成膜装置80を用いたSiN膜の形成工程(積層工程)について説明する。図5は、本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を説明するための図であり、被エッチング膜を成膜するときのガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0074】
SiN膜の成膜に際しては、第2ガス供給機構15によりシリコンソースガスを処理容器1内に導入するとともに、第1ガス供給機構14から酸素含有ガスまたは窒素含有ガスを導入してSiN膜を成膜する。
【0075】
シリコンソースとしては、有機系シリコン、例えば、エトキシシランガスやアミノシランガスを用いることができる。エトキシシランとしては、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)を挙げることができる。アミノシランとしては、例えばTDMAS(トリジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)、BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、DEAS(ジエチルアミノシラン)、DPAS(ジプロピルアミノシラン)、BAS(ブチルアミノシラン)を挙げることができる。
【0076】
また、第1ガス供給機構14から窒素含有ガスをプラズマ生成機構30の内部空間に供給し、そこで窒素含有ガスを励起させてからプラズマ化し、その窒素含有プラズマによりシリコンソースガスを窒化させてSiN膜を成膜する。
【0077】
このSiN膜は、Siソースガスと窒素含有ガスとを同時に供給して成膜することができるが、成膜温度を低下させる観点から、図5に示すように、Siソースガスを流してSiソースガスを吸着させる工程S1と、窒素含有ガスを処理容器1に供給してSiソースガスを窒化させる工程S2とを交互に繰返し、これらの間で処理容器1内から処理容器1内に残留するガスをパージする工程S3を実施するMLD(Molecular Layered Deposition)の手法を採用することが望ましい。
【0078】
具体的には、工程S1においては、上述したようなSiソースガスを第2ガス供給機構15のSiソースガス供給配管22およびガス分散ノズル24を介してガス吐出孔24aから処理容器1内にT1の期間供給して、半導体ウェハW(半導体基板101)上にSiソースを吸着させる。このときの条件は、SiN膜を成膜する際の上記工程S1の条件に準じて行われる。すなわち、期間T1は1〜300secが例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は、1.33〜3990Paが例示される。Siソースガスの流量は1〜5000mL/min(sccm)が例示される。
【0079】
工程S2の窒素含有ガスを供給する工程においては、第1ガス供給機構14の窒素含有ガス供給配管18およびガス分散ノズル21を介して窒素含有ガスとして例えばNHガスをガス吐出孔21aから吐出し、このとき、プラズマ生成機構30の高周波電源35をオンにして高周波電界を形成し、この高周波電界により窒素含有ガス、例えばNHガスをプラズマ化する。そして、このようにプラズマ化された窒素含有ガスが処理容器1内に供給される。これにより、半導体ウェハW(半導体基板101)に吸着されたSiソースが窒化されてSiNが形成される。この処理の期間T2は1〜300secの範囲が例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は1.33〜3990Paが例示され、窒素含有ガスの流量は半導体ウェハWの搭載枚数によっても異なるが、100〜10000mL/min(sccm)が例示される。また、高周波電源35の周波数は13.56MHzが例示され、パワーとしては10〜1000Wが採用される。
【0080】
また、工程S1と工程S2との間に行われる工程S3は、工程S1の後または工程S2の後に処理容器1内に残留するガスを除去して次の工程において所望の反応を生じさせる工程であり、処理容器1内を真空排気しつつ第3ガス供給機構16のパージガス供給源25aからパージガス供給配管25およびパージガスノズル26を介してパージガスとして不活性ガス例えばNガスを供給することにより行われる。この工程S3の時間T3としては1〜60secが例示される。また、パージガス流量としては0.1〜5000mL/min(sccm)が例示される。なお、この工程S5は処理容器1内に残留しているガスを除去することができれば、パージガスを供給せずに全てのガスの供給を停止した状態で真空引きを継続して行うようにしてもよい。ただし、パージガスを供給することにより、短時間で処理容器1内の残留ガスを除去することができる。なお、この際の処理容器1内の圧力は0.133〜665Paが例示される。
【0081】
このようなMLDの手法により、300℃以下の低温でSiN膜を成膜することができ、条件を最適化することにより100℃以下の極低温でも成膜可能となる。
【0082】
あるいはSiソースガスと窒素含有ガスを同時に供給してSiN膜を成膜してもよい。この場合の処理容器1内の圧力は7〜1343Pa程度、Siソースガスの流量は1〜2000mL/min(sccm)程度、窒素含有ガスの流量は5〜5000mL/min(sccm)程度が例示される。ただし、この場合の成膜温度は400〜800℃程度の比較的高い温度が必要である。
【0083】
次に、成膜装置80を用いたアモルファスカーボン膜の成膜方法について説明する。
【0084】
アモルファスカーボン膜の成膜処理においては、カーボンソースガス供給源19aからカーボンソースガス供給配管19を介して所定のカーボンソースガスを処理容器1内に導入し、プラズマ生成機構30にてプラズマ化し、半導体基板101(ウェハWと同じ)上に形成された被エッチング膜102上にプラズマCVDによりアモルファスカーボン膜を成膜する。この際に、パージガス供給配管25を介して希釈ガスとしてNガスを処理容器1内に導入してもよい。この際のプラズマ生成機構30における高周波電力の周波数およびパワーは、必要な反応性に応じて適宜設定すればよい。プラズマ化されたガスは反応性が高いため、成膜温度を低下させることが可能である。なお、プラズマ生成は必須ではなく、反応性が十分な場合には、熱CVDによる成膜であってもよい。
【0085】
カーボンソースガス(原料ガス)としては、反応によりカーボンを成膜することができるものであればよく、典型的には炭化水素ガスを含む処理ガスを用いる。炭化水素ガスとしては、エチレン(C)、メタン(CH)、エタン(C)、アセチレン(C)、ブチン(C)等を用いることができ、炭化水素ガス以外のガスとしては、Arガスのような不活性ガスや水素ガス等を用いることができる。
【0086】
アモルファスカーボン膜を成膜する際のチャンバ内圧力は、6667〜666665Paが好ましい。また、アモルファスカーボン膜を成膜する際の基板温度は、800℃以下が好ましく、600〜700℃がより好ましい。
【0087】
次に、成膜装置80を用いて行われる本実施の形態に係るシリコン膜除去工程について説明する。すなわち、本実施の形態では、シリコン膜除去工程を、成膜工程を行う成膜装置内で行うことができる。シリコン膜除去工程を、成膜工程を行う成膜装置内で行うことにより、シリコン膜除去工程に用いる処理装置を別途用意する必要がなく、半導体製造装置全体の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0088】
まず、処理容器1内を所定の温度、例えば300℃に設定する。また、パージガス供給配管25から処理容器1内に所定量の窒素を供給した後、カーボン膜をエッチバックした半導体基板101が収容されているウェハボート5を蓋部9上に載置し、図示しない昇降機構により蓋部9を上昇させ、ウェハボート5を処理容器1内にロードする。
【0089】
次に、パージガス供給配管25から処理容器1内に所定量の窒素を供給するとともに、処理容器1内を所定の温度に設定する。処理容器1内の温度は、後述する除去工程で処理容器1内に供給される除去用ガスとしての塩素(Cl)を活性化可能な温度であることが好ましく、例えば、350℃以上であることが好ましい。このため、処理容器1内の温度としては、350℃〜500℃に設定することが好ましい。ただし、処理容器1内の温度が350℃より低くても、塩素を処理容器1内の熱以外の方法で活性化させることも可能であり、処理容器1内の温度を350℃より低くしてもかまわない。
【0090】
また、処理容器1内のガスを排出し、処理容器1を所定の圧力、例えば1330Pa(10Torr)に減圧する。そして、処理容器1の温度及び圧力操作を、処理容器1が所定の圧力及び温度で安定するまで行う。
【0091】
処理容器1内が所定の圧力及び温度で安定すると、パージガス供給配管25からの窒素の供給を停止するとともに、処理ガス供給配管27から塩素を含むガスからなる除去用ガスを処理容器1内に導入する。本実施の形態では、塩素を所定量、例えば0.25L/minと、希釈ガスとしての窒素を所定量、例えば3L/minとからなる除去用ガスを処理容器1内に導入する。
【0092】
処理容器1内に導入された除去用ガスは処理容器1内で加熱され、除去用ガスに含まれる塩素が活性化する。活性化された塩素は、アモルファスシリコン膜をエッチングする。
【0093】
ここで、アモルファスシリコン膜の除去に活性化された塩素を用いているので、石英をほとんどエッチングしない。このため、除去工程において、処理容器1等の部材がエッチングされることがない。また、処理容器1等の部材に水を起因とする錆の発生を防止することができる。
【0094】
除去工程での処理容器1内の圧力は、133Pa〜26.6kPa(1Torr〜200Torr)であることが好ましい。塩素の流量は、0.05L/min〜1L/minであることが好ましい。窒素の流量は、0.6L/min〜3L/minであることが好ましい。また、塩素と窒素との流量比は、1:1〜1:12であることが好ましい。
【0095】
シリコン膜除去工程が終わると、パージガス供給配管25から処理容器1内に所定の窒素を供給して、処理容器1内の圧力を常圧に戻す。最後に、図示しない昇降機構により蓋部9を下降させることにより、アンロードする。
【0096】
なお、本実施の形態では、塩素が活性化可能な温度に加熱された処理容器1内に塩素を含む処理用ガスを供給して、処理用ガス中の塩素を活性化させる場合を説明したが、処理ガス導入管に活性化手段を設け、活性化された塩素を含むガスを処理容器1内に供給してもよい。この場合、除去工程における処理容器1内の温度を低くしても活性化された塩素を半導体ウェハWに供給することができるので、除去工程の低温化を図ることができる。活性化手段としては、プラズマ発生手段、紫外線発生手段、触媒活性化手段等がある。
【0097】
また、本実施の形態では、処理用ガスに塩素と窒素との混合ガスを用いた場合を説明したが、塩素を含むガスであればよい。また、希釈ガスとしての窒素ガスを含む場合を説明したが、希釈ガスを含まなくてもよい。ただし、希釈ガスを含むことにより処理時間の設定が容易になることから、希釈ガスを含むことが好ましい。希釈ガスとしては、不活性ガスであることが好ましく、窒素ガスの他に、例えば、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)ガスが適用できる。
【0098】
次に、図6から図9を参照し、本実施の形態において、側壁部の形状の対称性を高めることができ、被エッチング膜のエッチング加工の加工精度を向上させることができる効果について説明する。以下では、本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法を含む半導体の製造方法を行った後の各パターンの幅寸法等を測定して評価を行ったので、その評価結果について説明する。
【0099】
実施例として、図1に示すように、成膜工程、エッチバック工程及びシリコン膜除去工程を含む、積層工程からカーボン膜除去工程までの各工程を行った。実施例における成膜工程、エッチバック工程及びシリコン膜除去工程の条件を以下に示す。
(A)成膜工程
原料ガス:エチレン(C
基板温度:800℃
成膜装置内圧力:50Torr
ガス流量:2000sccm
供給時間:923sec
(B)エッチバック工程
エッチングガス:Oガス
基板温度:30℃
成膜装置内圧力:20mTorr
ガス流量:100msccm
高周波電源周波数(上部電極/下部電極):60/13MHz
高周波電源パワー(上部電極/下部電極):600/50W
(C)シリコン膜除去工程
原料ガス:塩素ガス(Cl
基板温度:300℃
成膜装置内圧力:40Pa
ガス流量:2000sccm
供給時間:5hour
図6に、実施例で(A)成膜工程を行った後のパターンを走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて撮影した写真を示す。図6(a)及び図6(b)は、レジストパターンの断面を、それぞれ正面及び斜め上方から撮影した写真(左側)と、写真を模式的に説明する図(右側)とを示す図である。カーボン膜106がシリコン膜103よりなるシリコン膜パターン103bの表面を等方的に被覆するように形成されていることが分かる。
【0100】
図7に、実施例で(B)エッチバック工程を行った後のシリコン膜パターンをSEMを用いて撮影した写真を示す。図7(a)及び図7(b)は、シリコン膜パターンの断面を、それぞれ正面及び斜め上方から撮影した写真(左側)と、写真を模式的に説明する図(右側)とを示す図である。シリコン膜パターン103bの第1のライン部103aの幅寸法をCD(図2C(i)で説明したDに等しい)とし、第1のライン部103aの側壁部106aよりも高く突き出した部分の高さ寸法(肩落ち高さ寸法)をΔHとする。
【0101】
図7に示すように、実施例を行った結果、CD1(=D)=18nm、ΔH=12nmの値が得られた。また、図7に示すように、シリコン膜103よりなる第1のライン部103aが先細りしてカーボン膜106よりなる側壁部106aが湾曲してカニ爪のように非対称的な形状になっていない。また、肩落ち形状に優れている。
【0102】
これは、フォトレジスト膜に比べてシリコン膜が化学的に安定であり、成膜工程、エッチバック工程において、シリコン膜103よりなる第1のライン部103aの先端が選択的にエッチングされて先細りすることがないためである。また、シリコン膜103に対するカーボン膜106のエッチングレートの比(選択比)が高いため、カーボン膜106をエッチバックして第1のライン部103aの上部から除去した後、更にカーボン膜106をエッチバックする際に、シリコン膜103をエッチングすることがなく、シリコン膜103の形状が保存されることによる。
【0103】
図8に実施例で(C)シリコン膜除去工程を行った後、更に被エッチング膜エッチング工程及びカーボン膜除去工程を行った後のパターンをSEMを用いて撮影した写真を示す。図8(a)及び図8(b)は、被エッチング膜よりなるパターンの断面を、それぞれ正面及び斜め上方から撮影した写真(左側)と、写真を模式的に説明する図(右側)とを示す図である。被エッチング膜102よりなるパターン109のライン幅及びスペース幅のそれぞれの寸法を、CD2(図2C(l)で説明したL1に等しい)及びCD3(図2C(l)で説明したS1に等しい)とする。
【0104】
図8に示すように、実施例を行った結果、CD2(=L1)=18nm、CD3(S1)14nmの値が得られた。また、図8に示すように、被エッチング膜102よりなるパターン109も、先端まで略同様のCD2を有し、先細りしておらず、断面形状に優れている。
【0105】
これは、カーボン膜106に対する被エッチング膜(SiN膜)102のエッチングレートの比(選択比)が高く、図2C(k)に示したように、被エッチング膜エッチング工程においてカーボン膜106の側壁部106aよりなるマスクパターン108を残したまま被エッチング膜102をエッチングすることができるためである。また、カーボン膜106の選択比が高いことにより、カーボン膜106の膜厚を小さくすることができる。
【0106】
一方、実施例の(A)成膜工程に代え、レジストパターンの表面を等方的に被覆するように、シリコン酸化膜を成膜する比較例を行った。図9に比較例でシリコン酸化膜を成膜した後のパターンを走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて撮影した写真を示す。図9(a)及び図9(b)は、レジストパターンの断面を、それぞれ正面及び斜め上方から撮影した写真(左側)と、写真を模式的に説明する図(右側)とを示す図である。比較例では、半導体基板201上に、SiN膜よりなる被エッチング膜202、反射防止膜204を順次積層し、その上にレジスト膜205を成膜し、レジスト膜205をパターニングしたレジストパターン205a上にシリコン酸化膜206を成膜した状態を示す。
【0107】
比較例では、レジストパターン205aの先端が先細りしており、実施例におけるシリコン膜パターン103bのように先端が矩形形状になっていない。このような先細りしたレジストパターン205aの表面を等方的に被覆するようにシリコン酸化膜206を成膜するため、その後シリコン酸化膜206がレジストパターン205aの側壁部として残存するようにエッチバックしたときに、側壁部が非対称的になり、側壁部の下方の被エッチング膜202をエッチングするときの加工精度を向上させることができない。
【0108】
従って、本実施の形態に係るマスクパターンの形成方法及び半導体装置の製造方法によれば、成膜工程、エッチバック工程において、シリコン膜よりなる第1のライン部の先端が選択的にエッチングされて先細りすることがないため、側壁部の形状の対称性を高めることができる。また、側壁部として被エッチング膜に対して高い選択比を有しているカーボン膜を用いて被エッチング膜をエッチングすることができる。従って、被エッチング膜のエッチングの加工精度を向上させることができる。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
80 成膜装置
101 半導体基板
102 被エッチング膜
103 シリコン膜
103a 第1のライン部
103b シリコン膜パターン
104 反射防止膜
105 フォトレジスト膜
105a、105b レジストパターン
106 カーボン膜
108 マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の被エッチング膜の上に形成されたシリコン膜よりなる第1のライン部が配列したシリコン膜パターンの表面を等方的に被覆するように、カーボン膜を成膜する成膜工程と、
前記カーボン膜を前記第1のライン部の上部から除去すると共に、前記第1のライン部の側壁部として残存するように、前記カーボン膜をエッチバックするエッチバック工程と、
前記第1のライン部を除去し、前記側壁部が配列したマスクパターンを形成するシリコン膜除去工程と
を有するマスクパターンの形成方法。
【請求項2】
前記シリコン膜除去工程を、前記成膜工程を行う成膜装置内で行うことを特徴とする請求項1に記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項3】
前記カーボン膜は、アモルファスカーボンを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項4】
前記シリコン膜は、アモルファスシリコンを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項5】
前記被エッチング膜は、窒化シリコンを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項6】
前記成膜工程において、原料ガスとして、エチレン、メタン、エタン、アセチレン、ブチンから選択されるガスを用いて行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項7】
前記シリコン膜除去工程において、塩素を含むガスを用いることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項8】
前記エッチバック工程において、処理ガスとして、酸素を含むガスを用いることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項9】
前記シリコン膜上に、反射防止膜を介して有機膜を成膜し、前記有機膜をパターニングして第2のライン部が配列した有機膜パターンを形成する有機膜パターン形成工程と、
前記有機膜パターンを用いて前記反射防止膜及び前記シリコン膜をエッチングして、前記シリコン膜パターンを形成する第1のパターン形成工程と
を有する請求項1から請求項8のいずれかに記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項10】
前記第1のパターン形成工程は、
前記有機膜パターンをトリミングするトリミング工程と、
トリミングした前記有機膜パターンをマスクとして前記反射防止膜をエッチングして、前記反射防止膜よりなる反射防止膜パターンを形成する反射防止膜エッチング工程と、
前記反射防止膜パターンをマスクとして前記シリコン膜をエッチングして、前記シリコン膜パターンを形成するシリコン膜エッチング工程と
を有する請求項9に記載のマスクパターンの形成方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載のマスクパターンの形成方法を行って形成した前記マスクパターンを用いて、前記被エッチング膜よりなるパターンを形成する被エッチング膜パターン形成工程を有する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記被エッチング膜パターン形成工程は、
前記マスクパターンをマスクとして前記被エッチング膜をエッチングする被エッチング膜エッチング工程と、
前記側壁部を除去するカーボン膜除去工程と
を有する請求項11に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−66164(P2011−66164A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214952(P2009−214952)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】