リングオシレータ及びそれを用いたPLL回路
【課題】 リングオシレータで発生した高調波ノイズによる干渉を抑制できるリングオシレータ及びそのリングオシレータを備えたPLL回路を提供する。
【解決手段】 リングオシレータは、無線装置に内蔵され、複数段のインバータゲートからなる発振回路と、発振回路に接続された切り替えスイッチとを備える。発振回路が発生する高調波ノイズと無線装置の受信周波数とが干渉し、通信感度が低下する場合には、切り替えスイッチによりインバータゲートのリング状に接続される段数を切り替える。リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数を変えることで、無線装置の受信周波数との干渉を抑制する。
【解決手段】 リングオシレータは、無線装置に内蔵され、複数段のインバータゲートからなる発振回路と、発振回路に接続された切り替えスイッチとを備える。発振回路が発生する高調波ノイズと無線装置の受信周波数とが干渉し、通信感度が低下する場合には、切り替えスイッチによりインバータゲートのリング状に接続される段数を切り替える。リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数を変えることで、無線装置の受信周波数との干渉を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振周波数を制御できるリングオシレータに係り、特に自己妨害波の影響を低減できるリングオシレータ及びそれを用いたPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積化の流れの中でLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)にオシレータ回路を含むPLL(Phase locked Loop)回路を内蔵する場合が多くなっている。LSIに内蔵されるオシレータ回路としては、外部にループフィルタなどを必要としないリングオシレータが多く採用されている。このリングオシレータの長所は、他の発振器と異なりコイルが不要で、増幅器相当の回路で構成できるため、集積回路として集積しやすいことである。
【0003】
リングオシレータは、全体として負のゲインを持つ複数個の遅延要素をリング状に結合して構成される。典型的な例としては、奇数段のインバータゲート(NOTゲート)により構成される。各インバータゲートの出力がチェーン状に次段のインバータゲートに入力され、最終段のインバータゲートの出力は初段のインバータゲートに入力され、全体としてリング構造になっている。さらにリングオシレータを構成するインバータゲートの電源バイアス電圧を制御することで、インバータゲートの遅延時間を制御し、リングオシレータの発振周波数を可変することができる(遅延時間を短くすれば発振周波数は高くなる)。このようにインバータゲートの電源バイアス電圧を制御した周波数可変型VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)として用いられることも多い。
【0004】
一方、リングオシレータの弱点として、論理反転回路(インバータゲート)や反転増幅器の位相ずれや電源電圧の変動やノイズによる遅延時間の変動で発振周波数が変動してしまうことが挙げられる。対策として、位相同期回路により補償する。これによって、電源電圧の変動についても位相同期回路によって常に電源変動による発振周波数の変動に追従することで解消される。一般にPLL回路は、リングオシレータと位相同期回路とを備え、位相同期回路により発振周波数を安定化させることで安定動作する。
【0005】
リングオシレータに関する先行特許文献として、下記特許文献がある。特許文献1(特開平6−232703号公報)には、複数のインバータゲートからなる内部発振回路において、接続セレクタによりインバータゲートの接続段数を選択する技術が開示されている。特許文献2(特開平8−307220号公報)には、複数のインバータゲートからなる内部発振回路のインバータゲートの接続段数を切り替えることで昇圧回路のポンピング周波数を可変する技術が開示されている。特許文献3(特開2006−261833号公報)には、供給される電源電流が相反する方向に変化する高速パス増幅器と低速パス増幅器とを並列接続し、この増幅器の出力段にさらに低域通過フィルタを設けることで発振周波数の広域部のばらつきを抑制したリング発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−232703号公報
【特許文献2】特開平8−307220号公報
【特許文献3】特開2006−261833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように最近のLSIは、オシレータ回路を含むPLL回路を内蔵し、そのオシレータ回路としてリングオシレータが多く採用されている。さらに、IBMは、2006年に1個の単層カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nanotube)分子の回りに、完全なICを初めて構築したと発表している。その発表によれば、リングオシレータ回路を試作したもので、通常の半導体プロセスと、この回路の全部品のベースとなる単一分子のカーボンナノチューブを使って製造したという。リングオシレータ回路は、このように単純な回路で構成可能なため、将来はますます採用されることが多くなると期待されている。
【0008】
しかし、リングオシレータには、発振周波数の相数倍の逓倍高調波が発生するという弱点がある。このノイズは電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源、グランドなどを通じて導体伝播する。そのため電磁ノイズとして、FCC指令(Federal Communication Commission directive:米国)、R&TTE指令(Radio & Telecommunication Terminal Equipment directive:欧州 )、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:日本)などの各種EMC規格(Electro-Magnetic Compatibility standards)に無線装置が抵触する原因になるだけでなく、受信周波数と重なると、無線装置の受信波と自己妨害波が干渉を起こして無線装置の感度が劣化するという問題がある。
【0009】
例えば、最近の携帯電話機は多くの機能を備え、複数のLSIが搭載され、その機器内で使用される周波数も可変である。そのためLSI内部のリングオシレータからの高調波ノイズの周波数と機器内で使用される受信周波数とが重なると、高調波ノイズが自己妨害波となり、干渉を起こし機器の受信感度が劣化するという問題が発生する。この問題は、機器内EMC(自家中毒)と呼ばれ、非常に大きな問題としてクローズアップされ、その対策が必要になっている。
【0010】
図12に、送信局11と通信する無線装置20の構成図を示す。無線装置20は、アンテナ21、電力増幅部22、周波数変換部23、ベースバンド部24、制御部25、局部発振器(VCO)27を備え、送信局11からの受信波を受信できる。しかし、最近の無線装置は多くの機能を備え、送受信回路の他に、例えば図12に示すようなリングオシレータ9を備えたPLL回路10をさらに備えている。この場合リングオシレータ9からの高調波ノイズと無線装置の送受信周波数が重なった場合には、高調波ノイズが妨害波となり、無線装置の送受信感度を劣化させることになる。
【0011】
このリングオシレータの構成例を、図13に示す。図13Aにはリングオシレータを用いたPLL回路10のブロック構成図、図13Bには、リングオシレータの各部のタイミングと電源電流波形を示す。PLL回路10は、位相検出器(PD)1、チャージポンプ回路(CP)2、低域通過フィルタ(LBP)3、分周器4、リングオシレータ9から構成されている。リングオシレータ9は、インバータゲート5が7段チェーン状に結合されている。初段のインバータゲート5には最終段のインバータゲート5の出力Gが入力され、その出力を次段のインバータゲートに出力する。順次チェーン状に接続されたインバータゲートは、それぞれ出力B〜Fを後続段に出力する。最終段の出力Gがリング状に初段のインバータゲートに入力され、初段のインバータゲートは入力信号を反転して出力する。このようにインバータゲート7段分の遅延時間を半サイクルとする周期で発振することになる。
【0012】
リングオシレータ9からは、例えば周波数312MHzのクロック(Fck)が出力され、LSI内部のクロックとして分配されるとともに、分周器4に入力される。分周器4は、クロック(Fck)を1/12に分周した分周クロックを出力する。位相検出器1には、分周クロックと基準クロック(Fref=26MHz)が入力され、位相比較される。分周クロックと基準クロックとの位相比較結果は、チャージポンプ回路2に入力され、チャージポンプ回路2の出力電圧を制御する。チャージポンプ回路2の出力電圧は、低域通過フィルタ3で平滑化され、リングオシレータを構成するインバータゲート5の電源に供給される。
【0013】
位相検出器1において、分周クロックの位相が進んでいる場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を低く制御し、リングオシレータの発振周波数を低くする。逆に分周クロックの位相が遅れている場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を高く制御し、リングオシレータの発振周波数を高くする。このように位相検出器1からの制御信号によりチャージポンプ回路2の出力電圧を制御することで、リングオシレータの発振周波数を制御する。このように位相同期回路と組み合わせることで、リングオシレータの発振周波数を補償でき、安定動作するリングオシレータを用いたPLL回路が構成できる。
【0014】
このPLL回路では、リングオシレータを構成するインバータゲートの電源電流により高調波ノイズが発生する。例えばインバータゲートを用いたリングオシレータでは、インバータゲートの出力が、次々に反転する。インバータゲートは一般的にはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構成であり、負荷トランジスタのPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor )と、ドライブトランジスタのNMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor )からなる。
【0015】
入力がハイレベルからローレベルに変化する場合は、出力がローレベルからハイレベルに変化する。このときは、NMOSが導通状態から非導通状態へ、PMOSが非導通状態から導通状態へ変化し、電源電圧からの電源電流により出力をハイレベルに引き上げる。この出力がローレベルからハイレベルに変化する場合には、PMOSによる電源電流がメーンであり、グランドへの電流は小さく、無視することができる。電源電流波形としては出力ハイレベル変化に対応して、図13Bに示すように最初の出力A、次に出力C、出力E、出力G、出力B、出力D、出力Fとそれぞれの出力レベル変化に対応してピーク電流が流れることになる。このとき流れる電源電流により高調波ノイズが発生し、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。
【0016】
一方、入力がローレベルからハイレベルに変化する場合は、出力がハイレベルからローレベルに変化する。このときは、PMOSが導通状態から非導通状態へ、NMOSが非導通状態から導通状態へ変化し、出力ハイレベルの電荷を放電させ、グランド電圧に引き下げる。このときNMOSによるグランド電流がメーンであり、電源からの電流は小さく、無視することができる。このときにグランドに流れるグランド電流により高調波ノイズを発生させる。この場合には、最初の出力B、次に出力D、出力F、出力A、出力C、出力E、出力Gとそれぞれの出力レベル変化に対応してピーク電流が流れることになる。一般的には電源電流のよる高調波ノイズがグランド電流による高調波ノイズより大きいことから、以後の説明は、電源電流側について説明する。
【0017】
この電源電流による高調波ノイズは、インバータゲートの段数に相当する相数×発振周波数の周波数であり、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。図13において電源電流波形として示すように、相数7、発振周波数312MHzの場合には、7x312=2184MHzの高調波ノイズが発生する。従って機器内で周波数2184MHzが使用されている場合には、高調波ノイズ2184MHzが自己妨害波となり、2184MHz帯の無線装置の送受信波に干渉し、無線装置の送受信感度が劣化することになる。
【0018】
従来、電磁ノイズの空中伝播については該当LSI、回路部を金属ケースでシールドするなどの対策が考案されて来た。しかし、この対策はサイズ、コストなどの面でデメリットが多い。また、電源導体伝播については電源に該当周波数を抑圧するフィルタを設ける等のコスト的にデメリットのある対策が行われている。さらに、グランド伝播ノイズの場合、有効な対策は少なく、オシレータ回路のグランドを干渉回路と分けるなどのレイアウト上デメリットの大きい対策が採られてきた。
【0019】
このようにリングオシレータの採用が多くなるなかで、自己妨害波となる高調波ノイズに対する対策は、コスト、レイアウト、サイズなどでデメリットの大きな対策しか存在しなかった。そのためコスト、レイアウト、サイズなどでデメリットの大きい対策をすることなく、リングオシレータ特有の高調波による干渉を抑制する方法が望まれてきた。
【0020】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、コスト、レイアウト、サイズなどでデメリットの大きい対策をすることなく、リングオシレータ特有の高調波ノイズによる干渉を抑制できるリングオシレータ及びそれを用いたPLL回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の1つの観点によれば、無線装置に内蔵され、発振回路と、切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置が使用する受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記発振回路の構成を切り替え、前記発振回路が発生する高調波ノイズの周波数を変更することができるリングオシレータが得られる。
【0022】
また本発明の別の観点によれば、無線装置に内蔵され、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較し、その位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号を使って前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、前記無線装置は、受信周波数、又は受信周波数とその受信感度を検出し、その検出結果から、前記無線装置の受信周波数と、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズと、が干渉すると判断した場合には、回路構築制御信号を生成し、前記回路構築制御信号を使って、前記リングオシレータ又は前記分周器のいずれかの構成を切り替え、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数帯域を異ならせることで、前記無線装置における前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することができるPLL回路が得られる。
【0023】
さらに、本発明の別の観点によれば、無線装置に内蔵されたPLL回路は、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較しその位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号により前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、前記無線装置が、受信周波数、又は受信周波数及びその受信感度を検知するステップと、前記受信周波数と前記リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉するかどうか判断し、前記受信周波数と前記高調波ノイズとが干渉する場合には回路構築制御信号を生成するステップと、前記回路構築制御信号を用いて前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更し回路構築するステップとを有し、前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更することで、前記高調波ノイズの周波数帯域を異ならせ、前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することができるPLL回路の制御方法が得られる。
【発明の効果】
【0024】
無線装置の受信周波数と、リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉する場合には、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数を変更する。高調波ノイズの周波数を変更することで、高調波ノイズの周波数と無線装置の受信周波数とが重ならなくなり、干渉がなくなる。高調波ノイズの周波数と無線装置の受信周波数との干渉が無くなることで、良好な感度を備えた無線装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における無線装置のブロック構成図である。
【図2】本発明における妨害周波数帯域と閾値を示すテーブルである。
【図3】実施例1におけるPLL回路の構成ブロック図(A)、リングオシレータのタイミング図(B)、(C)である。
【図4】実施例1における妨害波のスペクトルである。
【図5】実施例1における制御方法を示すフローチャートである。
【図6】実施例2におけるPLL回路の構成ブロック図(A)、リングオシレータのタイミング図(B)である。
【図7】実施例2における妨害波のスペクトルである。
【図8】実施例2における制御方法を示すフローチャートである。
【図9】実施例3におけるPLL回路の構成ブロック図(A)、リングオシレータのタイミング図(B)、(C)である。
【図10】実施例3における妨害波のスペクトルである。
【図11】実施例3における制御方法を示すフローチャートである。
【図12】従来の無線装置のブロック構成図である。
【図13】従来のリングオシレータを用いたPLL回路のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について、詳細に説明する。最初に本発明を理解するために、本発明のリングオシレータ、PLL回路を備えた無線装置について図1、2を参照して説明する。図1に本発明の無線装置のブロック構成図、図2に妨害波周波数帯域と閾値を示すテーブルを示す。
【0027】
図1に示す無線装置20は、アンテナ21、電力増幅部22、周波数変換部23、ベースバンド部24、テーブル26を備えた制御部25、局部発振器(VCO)27と、を備え、送信局11との間で受信波により送受信する。さらに、無線装置20はリングオシレータ9を備えたPLL回路10を備えている。このリングオシレータ9からの高調波ノイズが自己妨害波となり、無線装置の送受信感度を劣化させることがある。そのためテーブル26を備えた制御部25からの回路構築制御信号により、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータ9が発生する高調波ノイズの周波数変更することができる。無線装置が使用する受信周波数に対し、リングオシレータ9の高調波ノイズの周波数帯域を異ならせることで、受信周波数と高調波ノイズとの干渉を無くし、あるいは抑制することができる。
【0028】
送信局11と無線装置20間で送受信が行われ、ベースバンド部24において、受信周波数やその受信感度を検知する。受信感度としての検知項目は特に限定されないが、受信する電波強度やビット誤り率が使用することができる。例えば、受信信号強度RSSI、希望波受信電力RSCP、エネルギー対受信電力密度比Ec/NO、ビット誤り率BER等を使用することができる。さらに、検知した受信感度が満足できる受信感度レベルであるかを判定する。このとき受信した周波数と、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数とが重なり、お互いが干渉した場合には、受信感度が劣化する。干渉した場合には、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズは、自己妨害波となりアンテナを経由し、あるいは電源配線を経由して、受信感度を劣化させる。このようにリングオシレータ9から発生される高調波ノイズは、その周波数が無線装置で使用される受信周波数の重なった場合には、干渉して自己妨害波となる。従って、これらの高調波ノイズは妨害波となることから、妨害波周波数と表すことができる。
【0029】
このリングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数帯域を制御部25内にテーブル26として、記憶している。テーブル26は、例えば図2に示すように、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数帯域の下限周波数、上限周波数、及びそのときの閾値がテーブルとして備えられている。この閾値は検知した受信感度と比較し判定する基準である。すなわち閾値よりも受信感度が良好、あるいは劣るかで、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数を変更するか、しないかを判定する。図2では、閾値として受信信号強度RSSIを示しているが、無線装置として検知、利用する項目に対して、それぞれ閾値を設けることができる。また閾値として1項目ではなく、受信信号強度RSSI、希望波受信電力RSCP等を組み合わせることができる。
【0030】
次に、本発明の制御方法を説明する。最初PLL回路10のリングオシレータ9は、制御部25により初期設定された周波数で発振する。初期設定としては、PLL回路の消費電力が最小となる状態が選択される。例えば、リングオシレータ9がインバータゲートで構成された場合には、消費電力が小さいリング状に接続されたインバータゲートの段数が少ない状態が初期設定となる。また分周比を固定、又は可変する場合には、消費電力が小さい固定動作に初期設定される。次に受信周波数における受信感度を検知する。
【0031】
無線装置20の制御部25は、使用している受信周波数の帯域がテーブルの妨害波周波数帯域に含まれるかどうかを確認する。テーブル26の妨害波周波数帯域に、無線装置20の受信周波数帯域が含まれない場合には、リングオシレータ9の高調波ノイズは妨害波とはならない。そのため通信の受信感度は良好であり、リングオシレータ9は初期設定された状態のままで発振動作を継続する。
【0032】
テーブル26の妨害波周波数帯域に、無線装置20の受信周波数帯域が含まれている場合には、さらに、検知した受信感度と、テーブル26の閾値とを比較する。例えば、無線装置20の受信周波数が4360MHzの場合はテーブルの2番目の欄の妨害周波数4354〜4382MHzに含まれ、受信感度が影響され、受信品質が劣化することになる。そこで実際の受信感度と、テーブルの閾値とを比較する。受信感度が閾値より良好であれば、周波数帯域はオーバーラップしているが、その干渉は小さいとして、そのまま初期設定状態で動作を継続する。以下の説明においては、受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップして干渉しているが、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、結果として受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと見なす。つまり、受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化し、満足できない場合のみを、受信周波数と妨害波周波数とが干渉しているとする。
【0033】
検知した受信感度とテーブルの閾値とを比較し、受信感度が劣っていれば、リングオシレータからの高調波ノイズが干渉し、妨害波となっているとして、PLL回路のリングオシレータの構成や分周比を変更する。PLL回路の構成を変更することで、リングオシレータからの高調波ノイズ周波数を変更し、受信周波数とリングオシレータからの高調波ノイズの周波数の重なりを無くし、干渉をなくす。又は受信周波数とリングオシレータからの高調波ノイズの周波数の重なりを少なくし、干渉の程度を抑制する。このように、リングオシレータからの高調波ノイズ周波数を変更し、干渉を抑制することで無線装置の受信感度を良好に保つことができる。
【0034】
このように、本発明の無線装置はリングオシレータを有するPLL回路を備え、PLL回路は初期設定として、消費電力が最小になるような状態で動作する。しかし、リングオシレータからの高調波ノイズが自己妨害波となり、無線装置の受信感度が低下した場合には、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータからの高調波ノイズの周波数を変更する。リングオシレータからの高調波ノイズの周波数を変更し、無線装置の受信周波数と異ならせることで、2つの周波数の重なりをなくし、干渉を抑制することができる。本発明によれば高調波ノイズの周波数を変更するできるPLL回路が得られる。高調波ノイズの周波数と受信周波数とを異ならせることで干渉をなくし、送受信感度が良好な無線装置が得られる。
【0035】
(実施例1)
実施例1として、第1のPLL回路の構成例と制御方法例について、図3、4、5を参照して説明する。図3Aには実施例1のPLL回路10の構成ブロック図、図3Bにはリングオシレータがインバータゲート7段構成の場合のタイミング図、図3Cにはリングオシレータがインバータゲート5段構成の場合のタイミング図を示す。図4にはリングオシレータからの妨害波のスペクトル、図5にはPLL回路の制御方法を示すフローチャートを示す。
【0036】
PLL回路10は、位相検出器(PD)1、チャージポンプ回路(CP)2、低域通過フィルタ(LBP)3、分周器4、リングオシレータ9Aから構成されている。リングオシレータは、発振回路である複数のインバータゲート5と切り替えスイッチ6を備え、切り替えスイッチ6によりリング状に結合されたインバータゲート5の段数を7段又は5段に切り換える。図3Aに示すPLL回路は、図13のPLL回路に比較してリングオシレータ9Aの構成が異なるだけであり、他の構成要素は図13と同様であり、同じ符号としその説明は省略する。
【0037】
リングオシレータ9Aからは、周波数312MHzのクロック(Fck)が出力され、分周器4はクロック(Fck)を1/12の分周クロックに分周する。位相検出器1には、分周クロックと基準クロック(Fref)が入力され、位相比較される。分周クロックと基準クロックとの位相比較結果は、チャージポンプ回路2に入力され、チャージポンプ回路2の出力電圧を制御する。チャージポンプ回路2の出力電圧は、低域通過フィルタ3で平滑化され、リングオシレータのインバータゲート5の電源に供給される。位相検出器1において、分周クロックの位相が進んでいる場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を低く制御し、リングオシレータの発振周波数を低くする。逆に分周クロックの位相が遅れている場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を高く制御し、リングオシレータの発振周波数を高くする。このように位相検出器1からの制御信号によりチャージポンプ回路2の出力電圧を制御することで、リングオシレータの発振周波数を制御するPLL回路が構成できる。
【0038】
リングオシレータ9Aは、図3Aに示すように初段インバータゲート5の入力には切り替えスイッチ6が設けられている。切り替えスイッチ6は最終段のインバータゲート5の出力G、又は5段目のインバータゲートの出力Eを切り替え制御信号により切り替える。図3Bに、切り替えスイッチ6により最終段のインバータゲート5の出力Gを入力する7段構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。図3Cに、切り替えスイッチ6により5段目のインバータゲート5の出力Eを入力する5段構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。
【0039】
図3Bのインバータゲート7段から構成されたリングオシレータ9Aは、初段のインバータゲート5には最終段のインバータゲートからの出力Gが入力され、出力Aを次段に出力する。順次チェーン状に接続されたインバータゲートは、それぞれ出力B〜Fを後続段に出力する。再び最終段の出力Gが初段のインバータゲートに入力され、初段のインバータゲートが反転する。このようにしてインバータゲート7段分の遅延時間を半サイクルとする周期で発振することになる。ここでは、このリング接続されたインバータゲート7段が発振回路となる。このとき電源電流波形は、インバータゲート出力がローレベルからハイレベル変化に対応して、最初の出力A、次に出力C、出力E、出力G、出力B、出力D、出力Fのタイミングで、ピーク電流が流れることになる。このとき流れる電源電流により高調波ノイズが発生し、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。従ってこのとき発生する電源側の高調波ノイズの周波数は、インバータゲートの段数と、発振周波数の積であり、7x312MHz=2184MHzとなる。
【0040】
図3Cのインバータゲート5段から構成されたリングオシレータ9Aは、初段のインバータゲート5は5段目のインバータゲートからの出力Eが入力され、出力Aを次段に出力する。順次チェーン状に接続されたインバータゲートは、それぞれ出力B〜Dを後続段に出力する。5段目の出力Eが初段のインバータゲートに入力され、その出力レベルを反転させる。このようにしてインバータゲート5段分の遅延時間を半サイクルとする周期で発振することになる。また、このとき6段目及び7段目のインバータゲートは発振周波数には関係しないで、単なるインバータゲートとして機能し、発信信号を分周器に伝達する。ここでは、このリング接続されたインバータゲート5段が発振回路となる。このとき電源電流波形は、インバータゲート出力がローレベルからハイレベル変化に対応して、最初の出力AとF、次に出力C、出力E、出力BとG、出力Dのタイミングで、ピーク電流が流れることになる。このとき流れる電源電流により高調波ノイズが発生し、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。従ってこのとき発生する高調波ノイズの周波数は、インバータゲートの段数と、発振周波数の積であり、5x312MHz=1560MHzとなる。
【0041】
本発明においては、リングオシレータを構成するゲート回路としてインバータゲートを採用しているが、特に限定されるものではない。リングオシレータとしては、全体として負(−1以下)のゲインをもつ複数の遅延素子であればよい。すなわち信号を遅延させ、反転させた信号を初段にフィードバック可能な回路であればよい。従って差動アンプ、NANDゲートやNORゲート等の論理ゲートを組み合わせることで構成可能であり、基本的には最終段から反転した信号を初段の論理ゲートにフィードバック可能な回路で構成することができる。高調波ノイズは、7段構成の場合には2184MHz、5段構成の場合には1560MHzであり、リングオシレータの消費電力は低速動作である5段構成の場合が小さいことになる。
【0042】
図4に、リングオシレータからの妨害波のスペクトルを示す。図4において、実線Aがインバータゲート5段構成、点線Bがインバータゲート7段構成のスペクトルである。インバータゲートの段数により、高調波ノイズの周波数が異なり、インバータゲート5段構成の高調波ノイズ周波数が、インバータゲート7段構成の高調波ノイズ周波数より低い。図4から、高調波ノイズの周波数帯域はばらつきがあるが、受信周波数と重ならないようにインバータゲートの構成段数を選択することが可能であることが分かる。このように高調波ノイズの周波数帯域と受信周波数との重なりをなくすことで、無線装置の受信感度を良好な状態に保てる。
【0043】
次に、本実施例(図3A)で示したPLL回路10を図1の無線装置20に適用した場合のPLL回路の制御方法のフローチャートを、図5を参照して説明する。ここでは制御部25からの回路構築制御信号は、切り替えスイッチ6への切り替え制御信号である。切り替え制御信号によりリングオシレータのインバータゲートの段数を5段又は7段に切り替える。PLL回路の初期として、無線装置の制御部25からの切り替え制御信号(回路構築制御信号)によりリングオシレータは、消費電力の小さなインバータゲート5段構成として動作設定される。
【0044】
制御部25はステップS11で、リングオシレータ9Aのインバータゲート段数が5段であるか確認する。5段構成でない場合(NO)にはステップS15となる。5段構成の場合(YES)にはステップS12で、制御部25はリングオシレータ5段構成時のテーブル1を参照し、妨害周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか(重なっているか)の比較を行う。ステップS12は、リングオシレータの高調波ノイズ(妨害波)と無線装置の受信周波数が重なり、干渉するかどうかの周波数の確認を行うステップである。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、インバータゲート5段構成のままステップS12に戻る。
【0045】
受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、干渉して受信感度が劣化する可能性があることから、制御部25はステップS13で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(NO)は、インバータゲート5段構成のままステップS12に戻る。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(YES)は、ステップ14で、制御部25は回路構築制御信号によりリングオシレータの構成をインバータ7段構成になるように切り替える。受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップしているが(重なっているが)、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと判断してそのままの構成とする。受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化している場合を、受信周波数と妨害波周波数とが干渉していると判断し、リングオシレータの構成段数を切り替える。
【0046】
次にステップS15で、制御部25はリングオシレータ7段構成時のテーブル2を参照し、妨害波周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか確認する。受信波周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、ステップS17で、制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータを5段構成に切り替える。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、制御部25はステップS16で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(YES)は、ステップS17で、制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータを5段構成に切り替える。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(NO)は、リングオシレータをインバータゲート7段構成のままステップS15に戻る。
【0047】
上記したようにPLL回路では、リングオシレータを構成するインバータゲートの電源電流により高調波ノイズ(妨害波)が発生する。PLL回路の初期として消費電力が小さい状態にPLL回路を設定する。この状態でリングオシレータの高調波ノイズ周波数と無線装置の受信周波数とが重なり、干渉により通信感度が悪くなる場合がある。この場合には切り替えスイッチによりリングオシレータの段数を切り替え、高調波ノイズの周波数を変更し、高調波ノイズ周波数と受信周波数とを重ならないようにして干渉させなくする。高調波ノイズの周波数が変化することで、無線装置は高調波ノイズの影響を受けなくなり、無線装置の送受信感度は良好になる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線装置が構成できる。
【0048】
(実施例2)
実施例2として、第2のPLL回路の構成例と制御方法例について、図6〜8を参照して説明する。図6Aには、実施例2のPLL回路10の構成ブロック図、図6Bにはリングオシレータのタイミング図と電源電流波形を示す。図7にはリングオシレータからの妨害波のスペクトル、図8にはPLL回路の制御方法を示すフローチャートを示す。
【0049】
本実施例のPLL回路は、位相検出器1、チャージポンプ回路2、低域通過フィルタ3、分周器4、インバータゲート5が7段リング状に結合されたリングオシレータ9から構成されている。本実施例は実施例1に比較して、切り替えスイッチ6がなくリングオシレータは発振回路であるインバータゲート7段の固定構成であり、さらに分周器4が分周器7に変更されている。分周器7は、分周比が固定でなく、分周比が11から13まで可変な分周器である。ここで実施例1と同じ構成要素は、同じ符号としその説明は省略する。
【0050】
リングオシレータ9からは、最初周波数312MHzのクロック(Fck)が出力され、分周器7で、クロック(Fck)は1/11から1/13までの可変な分周クロックに分周される。位相検出器1には、分周クロックと基準クロック(Fref)が入力され、位相比較される。分周クロックと基準クロックとの位相比較結果は、チャージポンプ回路2に入力され、チャージポンプ回路2の出力電圧を制御する。チャージポンプ回路2の出力電圧は、低域通過フィルタ3で平滑化され、リングオシレータのインバータゲート5の電源に供給される。位相検出器1において、分周クロックの位相が進んでいる場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を低く制御し、リングオシレータの発振周波数を低くする。逆に分周クロックの位相が遅れている場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を高く制御し、リングオシレータの発振周波数を高くする。このように位相検出器1からの制御信号によりチャージポンプ回路2の出力電圧を制御することで、リングオシレータの発振周波数を制御するPLL回路が構成できる。
【0051】
本実施例では、リングオシレータから発生するクロックを分周する分周比が可変である。分周比を可変とすることで、リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数を変え、高調波ノイズの周波数と無線装置の受信周波数との重なりを少なくすることで、送受信感度を高めている。
【0052】
分周器7は、1/11から1/13の範囲内に拡散して分周することができる。分周の変化の仕方は特に限定されない。例えば、最初に1/12の周波数に分周し、徐々にその周波数を大きくし、1/11の周波数に分周する。その後逆に徐々にその分周を小さくし1/12、さらに分周は1/13とする。分周が1/13になると再び徐々にその分周を大きくし分周を1/12に戻す。これらの制御は拡散分周制御信号に基づいて、繰り返し行われる。このように分周比が12、11、12、13、12と、分周比の平均値が分周比の最小値と最大値とのセンター値になるように、分周比の最小値と最大値との間を往復して変化させることを拡散動作と表記する。分周比の最小値は11であり、最大値は13であることから、このときの分周比の平均値は12となる。
【0053】
この分周比の変化に追随して、リングオシレータからの発振クロックの周波数Fckは、312MHz(分周比12)、286MHz(分周比11)、312MHz(分周比12)、338MHz(分周比13)、312MHz(分周比12)と変化することになる。そのとき、リングオシレータから発生される高調波ノイズは、2002〜2184〜2366MHzの間を変化する。図6Bに示すように最初に分周器7は、周波数312MHzを1/12に分周することで26MHzを出力する。その後分周器7は、周波数286MHzを1/11に分周することで26MHzを出力する。このとき、リングオシレータからは電源電流波形の周波数に応じた高調波ノイズが発生する。
【0054】
この図6Aに示すPLL回路における分周比による高調波ノイズのスペクトルを図7に示す。図7の実線Aで示す波形は分周比12の固定タイプ、点線Bで示す波形は分周比が11〜13までの可変タイプのスペクトル例である。図7によれば分周比12の固定タイプは、周波数帯域が狭いが、そのピーク値は大きい。一方分周比が11〜13までの可変タイプは、周波数帯域がブロードであり、そのピーク値は小さくなっている。従って、これらの高調波ノイズの周波数と受信周波数が重なっていない場合には分周比固定タイプとし、高調波ノイズの周波数と受信周波数が重なっている場合には分周比可変タイプを選択する。高調波ノイズの周波数と受信周波数が重なっている場合にも、分周比可変タイプを選択することで、高調波ノイズの周波数のピーク値が小さく、高調波ノイズと受信周波数との干渉が少なくなり、受信感度の劣化を抑えることができる。このように高調波ノイズの周波数帯域と受信周波数との干渉を少なくすることで、無線装置の受信感度を良好な状態に保てる。
【0055】
次に、本実施例(図6A)で示したPLL回路10を図1の無線装置20に適用した場合のPLL回路の制御方法のフローチャートを、図8を参照して説明する。ここでは制御部25からの回路構築制御信号は、分周器7への拡散分周制御信号である。拡散分周制御信号(回路構築制御信号)により、分周器は1/12の固定分周動作、又は1/11、1/12、1/13の拡散分周動作に切り替える。PLL回路の初期として、無線装置の制御部25からの拡散分周制御信号(回路構築制御信号)により分周器は、消費電力の小さな1/12の固定分周動作に設定される。
【0056】
制御部25はステップS21で、リングオシレータを備えたPLL回路10の分周比が固定(12)であるか確認する。固定でない場合(NO)にはステップS25となる。固定の場合(YES)にはステップS22で、制御部25は分周比固定の場合のテーブルを参照し、妨害周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか(重なっているか)の比較を行う。ステップS22は、リングオシレータの高調波ノイズ(妨害波)と無線装置の受信周波数が重なり、干渉するかどうかの周波数の確認を行うステップである。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、分周比固定のままステップS22に戻る。
【0057】
受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、干渉して受信感度が劣化する可能性があることから、制御部25はステップS23で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(NO)は、分周比固定のままステップS22に戻る。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(YES)は、ステップS24で、制御部25は拡散分周制御信号により分周比を拡散分周動作になるように切り替える。受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップしているが(重なっているが)、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと判断してそのままの構成とする。受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化している場合には、受信周波数と妨害波周波数とが干渉していると判断し、分周比を拡散分周動作に切り替える。
【0058】
次にステップS25で、制御部25は分周比を拡散分周動作時のテーブルを参照し、妨害波周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか確認する。受信波周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、ステップS27で、制御部25からの拡散分周制御信号により分周比固定動作に切り替える。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、制御部25はステップS26で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(YES)は、ステップS27で、制御部25からの拡散分周制御信号により分周比固定動作に切り替える。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(NO)は、分周比を拡散分周動作のままステップS25に戻る。
【0059】
上記したようにPLL回路では、リングオシレータを構成するインバータゲートの電源電流により高調波ノイズ(妨害波)が発生する。PLL回路の初期として消費電力が小さい状態にPLL回路を設定する。この状態でリングオシレータの高調波ノイズ周波数と無線装置の受信周波数とが重なり、干渉により通信感度が悪くなる場合がある。この場合には拡散分周制御信号により分周比固定動作から拡散分周動作になるように切り替え、高調波ノイズの周波数を変更し、高調波ノイズ周波数と受信周波数との重なりを少なくする。このように分周比を拡散動作させることで、高調波ノイズはクロック(Fck)の相数倍の帯域に拡散させる。高調波ノイズを、無線装置の受信周波数帯域幅よりも大きい帯域に拡散してしまうことで受信周波数帯域内にあるノイズ電力を低減することが可能となり、干渉量を劇的に減少させることが出来る。
【0060】
本実施例は、高調波ノイズの周波数を拡散させることで、無線装置の受信周波数帯域内にあるノイズ電力を低減する。そのためリングオシレータからの高調波ノイズが、無線装置の受信周波数に与える影響を小さくできる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線受信回路が構成できる。
【0061】
(実施例3)
実施例3として、第3のPLL回路の構成例と制御方法例について、図9、10、11を参照して説明する。図9Aには実施例3のPLL回路10の構成ブロック図、図9B、Cにそのタイミング図を示す。図10にはPLL回路からの妨害波スペクトルを示す。図11は、本実施例におけるPLL回路の制御方法を示すフローチャートである。
【0062】
図9AのPLL回路10は、位相検出器1、チャージポンプ回路2、低域通過フィルタ3、分周器4、リングオシレータ9Bから構成されている。リングオシレータ9Bは、遅延回路8Aと8B、3段のインバータゲート5、切り換えスイッチ6から構成されている。本実施例は実施例1に比較して、リングオシレータのインバータゲート5の一部が遅延回路8A、8Bに変更され、切り替えスイッチ6により遅延回路8A、8Bが切り替えられる構成である。実施例1と同じ構成要素は、同じ符号としその説明は省略する。
【0063】
図9Aに示すようにリングオシレータ9Bには、切り替えスイッチ6が設けられている。切り替えスイッチ6は、切り替え制御信号により遅延回路8A、8Bを切り替え、リングオシレータは遅延回路8Aとインバータゲート3段構成、又は遅延回路8Bとインバータゲート3段構成となる。ここで遅延回路8Aと8Bの遅延時間は異なり、遅延回路8Aの遅延時間が遅延回路8Bの遅延時間より短く設定されている。例えば、遅延回路8Aはインバータゲート2段相当の遅延時間、遅延回路8Bはインバータゲート4段相当の遅延時間を有する遅延回路とする。この場合には実施例1におけるインバータゲート5段と、インバータゲート7段構成に相当する回路構成となる。以下遅延回路8Aとインバータゲート3段構成の場合を単に遅延回路8A構成と表し、遅延回路8Bとインバータゲート3段構成の場合は単に遅延回路8B構成と表すことにする。
【0064】
図9Bに、切り替えスイッチ6により遅延回路8A構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。図9Cに、切り替えスイッチ6により遅延回路8B構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。遅延回路8A構成の場合、遅延回路8Aにはインバータゲート最終段の出力Cが入力される。遅延回路8Aは、入力された信号を所定時間遅延させ信号Tdとして、インバータゲートに出力する。初段のインバータゲートは信号Tdを入力され出力Aを次段のインバータゲートに出力する。次段のインバータゲートは出力Bを出力し、最終段のインバータゲートは出力Cを遅延回路8Aと分周器4に出力する。リングオシレータ9Bはインバータゲートの3段の遅延時間と、遅延回路8Aの遅延時間との和に相当する時間を半サイクルとした周期で発振する。ここでは、遅延回路8Aとインバータゲート3段が発振回路となる。
【0065】
遅延回路8B構成の場合には、遅延回路8Aの代わりに遅延回路8Bとなり、同様の構成、動作を行う。遅延回路8Aの遅延時間が遅延回路8Bの遅延時間よりも短いことから、遅延回路8A構成のインバータゲートの動作速度は、遅延回路8B構成のインバータゲートの動作速度よりも遅く動作する。ここで遅延回路8A、8Bの構成は特に限定されないが、例えばRC遅延回路で構成することができる。RC遅延回路は、電源電流やグランド電流の急激な変化が少ないことから、高調波ノイズの発生が少ない。
【0066】
図10に、リングオシレータ9Bからの高調波ノイズ(妨害波)のスペクトルを示す。実線Aが遅延回路8A構成(遅延回路8Aとインバータゲート3段構成)、点線Bが遅延回路8B構成(遅延回路8Bとインバータゲート3段構成)である。遅延回路8Aはインバータゲート2段分の遅延量を有し、遅延回路8Bはインバータゲート4段分の遅延量を有するものである。いずれの高調波ノイズの周波数帯域はブロードであるが、遅延回路8B構成がよりブロードである。またそのピーク値はいずれも小さい。実線A、又は点線Bで示すように、遅延時間が異なる遅延回路により、高調波ノイズの周波数が異なっている。そのため受信周波数と重ならないようにリングオシレータの構成を選択することが可能であることが分かる。このように高調波ノイズの周波数帯域と受信周波数との重なりをなくすことで、無線装置の受信感度を良好な状態に保てる。
【0067】
次に、本実施例のPLL回路10を図1の無線装置20に適用した場合のPLL回路の制御方法のフローチャートを、図11を参照して説明する。ここでは制御部25からの回路構築制御信号は、切り替えスイッチ6への切り替え制御信号である。切り替え制御信号により遅延回路を8A、又は8Bに切り替える。PLL回路の初期として、無線装置の制御部25からの切り替え制御信号(回路構築制御信号)によりリングオシレータは、消費電力の小さな遅延回路8A構成に設定される。
【0068】
制御部25はステップS31で、リングオシレータ9Bの構成が遅延回路8Aであるか確認する。リングオシレータが遅延回路8A構成でない場合(NO)にはステップS35となる。遅延回路8A構成の場合(YES)にはステップS32で、制御部25は遅延回路8A構成のテーブルAを参照し、妨害周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか(重なっているか)の比較を行う。ステップS32は、リングオシレータの高調波ノイズ(妨害波)と無線装置の受信周波数が重なり、干渉するかどうかの周波数の確認を行う。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、遅延回路8A構成のままステップS32に戻る。
【0069】
受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、干渉して受信感度が劣化する可能性があることから、制御部25はステップS33で無線装置の受信感度とテーブルAの閾値とを比較確認する。テーブルAの閾値より受信感度が良好な場合(NO)は、遅延回路8A構成のままステップS32に戻る。テーブルAの閾値より受信感度が悪い場合(YES)は、ステップS34で、制御部25は回路構築制御信号によりリングオシレータの構成を遅延回路8Bとインバータゲート3段から構成する遅延回路8B構成になるように切り替える。受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップしているが、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと判断してそのままの構成とする。受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化している場合には、受信周波数と妨害波周波数とが干渉していると判断し、遅延回路を切り替える。
【0070】
次にステップS35で、制御部25はタイプBのテーブルBを参照し、妨害波周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか確認する。受信波周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、ステップS37で、制御部25からの回路構築制御信号により遅延回路8A構成に切り替える。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、制御部25はステップS36で無線装置の受信感度とテーブルBの閾値とを比較確認する。テーブルBの閾値より受信感度が良好な場合(YES)は、ステップS37で、制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータを遅延回路8A構成に切り替える。テーブルBの閾値より受信感度が悪い場合(NO)は、リングオシレータを遅延回路8B構成のままステップS35に戻る。
【0071】
本実施例のPLL回路のリングオシレータは、インバータゲートの一部を遅延回路で構成する。遅延回路はそれぞれ異なる遅延時間を有し、切り替えスイッチによりそれぞれ異なる遅延回路を接続する。リングオシレータの高調波ノイズ周波数と無線装置の受信周波数とが重なり、干渉により通信感度が悪くなる場合には切り替えスイッチによりこれらの遅延回路を切り替える。遅延回路を切り替え、高調波ノイズの周波数を変更することで、高調波ノイズ周波数と受信周波数とを重ならないようにして干渉させなくする。高調波ノイズの周波数が変化することで、無線装置は高調波ノイズの影響を受けなくなり、無線装置の送受信感度は良好になる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線装置が構成できる。
【0072】
(実施例4)
実施例4として、第4の制御方法例について説明する。実施例1〜3は、無線装置として受信周波数とその受信感度を測定して、制御するPLL回路の制御方法である。しかし、実施例4におけるPLL回路の制御方法は、無線装置として受信周波数の受信感度を測定しないで、妨害周波数を記録したテーブルを利用した、簡便な制御方法である。実施例4を、図1、2、4を参照して説明する。
【0073】
図1の無線装置においては、図2に示すようなテーブルを備えている。実施例1〜3においては、そのテーブルにはリングオシレータ9から発生される高調波ノイズ(妨害波)の周波数帯域の下限周波数、上限周波数、及びそのときの閾値がテーブルとして示されている。このテーブルを、例えば妨害周波数帯域のみのテーブルとする。図2のテーブル26として、妨害波周波数帯域のみとして、閾値を採用しない。例えば、図4のスペクトルに示す妨害周波数と、その強度(db)との関係において、妨害波として無線装置の送受信感度に影響を与える場合には妨害周波数としてテーブルに記載する。一方、その強度(db)が一定値以下で無線装置の送受信感度に影響を与えない、又は影響が小さい場合には、妨害周波数としてテーブルには記載しない。つまり、図4のスペクトルにおいて、例えば5dB以上、あるいは10dB以上等の一定強度以上の場合には、妨害波周波数帯域としてテーブル26に記憶させる。それ以下の強度の場合には干渉しても、受信感度が満足するレベルにあるとして、妨害波周波数帯域とは見なさない。
【0074】
無線装置に内蔵されたPLL回路は、実施例1〜3に詳述したようにいくつかの構成があり、それぞれの動作モードがある。それぞれの構成や、動作モードに対して夫々妨害周波数を記載したテーブル26を作成する。無線装置が特定の受信周波数を受信した場合には、制御部25が、その受信周波数とテーブル26に記憶された妨害周波数とを比較する。制御部25は、妨害周波数として受信周波数が含まれていない動作モードのPLL回路を選定する。制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータ又は分周器の構成を変更し、所望の動作モードで動作するPLL回路を構成する。このように無線装置の受信周波数とPLL回路が発生する妨害周波数との周波数が重ならないようなPLL回路を選択する。無線装置の受信周波数と妨害周波数との周波数が重ならないことから、受信感度が良好なPLL回路、及びそのPLL回路を備えた無線装置が得られる。
【0075】
本実施例においては、無線装置の受信周波数と妨害周波数との周波数が重ならないような動作モードのPLL回路を選択し、PLL回路を構成する。無線装置の受信周波数と妨害波周波数との周波数が重ならないことから、受信感度が良好なPLL回路、及びそのPLL回路を備えた無線装置が得られる。
【0076】
上記したように本発明のLL回路では、PLL回路から発生する高調波ノイズが無線装置の送受信周波数と干渉し、受信感度が低下する場合には、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータの高調波ノイズの周波数を変更する。高調波ノイズの周波数を変更し、高調波ノイズ周波数と受信周波数とを重ならないようにして干渉させなくする。このように高調波ノイズの周波数が変化することで、無線装置は高調波ノイズの影響を受けなくなり、無線装置の送受信感度は良好になる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線装置が構成できる。
【0077】
以上、実施形態、実施例として本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 位相検出器(PD)
2 チャージポンプ(CP)
3 低域通過フィルタ(LPF)
4、7 分周器
5 インバータゲート(論理反転回路)
6 切り替えスイッチ
8A、8B 遅延回路
9、9A、9B リングオシレータ
10 PLL回路
11 送信局
20 無線装置
21 アンテナ
22 電力増幅部
23 周波数変換部
24 ベースバンド部
25 制御部
26 テーブル
27 局部発振器
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振周波数を制御できるリングオシレータに係り、特に自己妨害波の影響を低減できるリングオシレータ及びそれを用いたPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積化の流れの中でLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)にオシレータ回路を含むPLL(Phase locked Loop)回路を内蔵する場合が多くなっている。LSIに内蔵されるオシレータ回路としては、外部にループフィルタなどを必要としないリングオシレータが多く採用されている。このリングオシレータの長所は、他の発振器と異なりコイルが不要で、増幅器相当の回路で構成できるため、集積回路として集積しやすいことである。
【0003】
リングオシレータは、全体として負のゲインを持つ複数個の遅延要素をリング状に結合して構成される。典型的な例としては、奇数段のインバータゲート(NOTゲート)により構成される。各インバータゲートの出力がチェーン状に次段のインバータゲートに入力され、最終段のインバータゲートの出力は初段のインバータゲートに入力され、全体としてリング構造になっている。さらにリングオシレータを構成するインバータゲートの電源バイアス電圧を制御することで、インバータゲートの遅延時間を制御し、リングオシレータの発振周波数を可変することができる(遅延時間を短くすれば発振周波数は高くなる)。このようにインバータゲートの電源バイアス電圧を制御した周波数可変型VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)として用いられることも多い。
【0004】
一方、リングオシレータの弱点として、論理反転回路(インバータゲート)や反転増幅器の位相ずれや電源電圧の変動やノイズによる遅延時間の変動で発振周波数が変動してしまうことが挙げられる。対策として、位相同期回路により補償する。これによって、電源電圧の変動についても位相同期回路によって常に電源変動による発振周波数の変動に追従することで解消される。一般にPLL回路は、リングオシレータと位相同期回路とを備え、位相同期回路により発振周波数を安定化させることで安定動作する。
【0005】
リングオシレータに関する先行特許文献として、下記特許文献がある。特許文献1(特開平6−232703号公報)には、複数のインバータゲートからなる内部発振回路において、接続セレクタによりインバータゲートの接続段数を選択する技術が開示されている。特許文献2(特開平8−307220号公報)には、複数のインバータゲートからなる内部発振回路のインバータゲートの接続段数を切り替えることで昇圧回路のポンピング周波数を可変する技術が開示されている。特許文献3(特開2006−261833号公報)には、供給される電源電流が相反する方向に変化する高速パス増幅器と低速パス増幅器とを並列接続し、この増幅器の出力段にさらに低域通過フィルタを設けることで発振周波数の広域部のばらつきを抑制したリング発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−232703号公報
【特許文献2】特開平8−307220号公報
【特許文献3】特開2006−261833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように最近のLSIは、オシレータ回路を含むPLL回路を内蔵し、そのオシレータ回路としてリングオシレータが多く採用されている。さらに、IBMは、2006年に1個の単層カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nanotube)分子の回りに、完全なICを初めて構築したと発表している。その発表によれば、リングオシレータ回路を試作したもので、通常の半導体プロセスと、この回路の全部品のベースとなる単一分子のカーボンナノチューブを使って製造したという。リングオシレータ回路は、このように単純な回路で構成可能なため、将来はますます採用されることが多くなると期待されている。
【0008】
しかし、リングオシレータには、発振周波数の相数倍の逓倍高調波が発生するという弱点がある。このノイズは電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源、グランドなどを通じて導体伝播する。そのため電磁ノイズとして、FCC指令(Federal Communication Commission directive:米国)、R&TTE指令(Radio & Telecommunication Terminal Equipment directive:欧州 )、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:日本)などの各種EMC規格(Electro-Magnetic Compatibility standards)に無線装置が抵触する原因になるだけでなく、受信周波数と重なると、無線装置の受信波と自己妨害波が干渉を起こして無線装置の感度が劣化するという問題がある。
【0009】
例えば、最近の携帯電話機は多くの機能を備え、複数のLSIが搭載され、その機器内で使用される周波数も可変である。そのためLSI内部のリングオシレータからの高調波ノイズの周波数と機器内で使用される受信周波数とが重なると、高調波ノイズが自己妨害波となり、干渉を起こし機器の受信感度が劣化するという問題が発生する。この問題は、機器内EMC(自家中毒)と呼ばれ、非常に大きな問題としてクローズアップされ、その対策が必要になっている。
【0010】
図12に、送信局11と通信する無線装置20の構成図を示す。無線装置20は、アンテナ21、電力増幅部22、周波数変換部23、ベースバンド部24、制御部25、局部発振器(VCO)27を備え、送信局11からの受信波を受信できる。しかし、最近の無線装置は多くの機能を備え、送受信回路の他に、例えば図12に示すようなリングオシレータ9を備えたPLL回路10をさらに備えている。この場合リングオシレータ9からの高調波ノイズと無線装置の送受信周波数が重なった場合には、高調波ノイズが妨害波となり、無線装置の送受信感度を劣化させることになる。
【0011】
このリングオシレータの構成例を、図13に示す。図13Aにはリングオシレータを用いたPLL回路10のブロック構成図、図13Bには、リングオシレータの各部のタイミングと電源電流波形を示す。PLL回路10は、位相検出器(PD)1、チャージポンプ回路(CP)2、低域通過フィルタ(LBP)3、分周器4、リングオシレータ9から構成されている。リングオシレータ9は、インバータゲート5が7段チェーン状に結合されている。初段のインバータゲート5には最終段のインバータゲート5の出力Gが入力され、その出力を次段のインバータゲートに出力する。順次チェーン状に接続されたインバータゲートは、それぞれ出力B〜Fを後続段に出力する。最終段の出力Gがリング状に初段のインバータゲートに入力され、初段のインバータゲートは入力信号を反転して出力する。このようにインバータゲート7段分の遅延時間を半サイクルとする周期で発振することになる。
【0012】
リングオシレータ9からは、例えば周波数312MHzのクロック(Fck)が出力され、LSI内部のクロックとして分配されるとともに、分周器4に入力される。分周器4は、クロック(Fck)を1/12に分周した分周クロックを出力する。位相検出器1には、分周クロックと基準クロック(Fref=26MHz)が入力され、位相比較される。分周クロックと基準クロックとの位相比較結果は、チャージポンプ回路2に入力され、チャージポンプ回路2の出力電圧を制御する。チャージポンプ回路2の出力電圧は、低域通過フィルタ3で平滑化され、リングオシレータを構成するインバータゲート5の電源に供給される。
【0013】
位相検出器1において、分周クロックの位相が進んでいる場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を低く制御し、リングオシレータの発振周波数を低くする。逆に分周クロックの位相が遅れている場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を高く制御し、リングオシレータの発振周波数を高くする。このように位相検出器1からの制御信号によりチャージポンプ回路2の出力電圧を制御することで、リングオシレータの発振周波数を制御する。このように位相同期回路と組み合わせることで、リングオシレータの発振周波数を補償でき、安定動作するリングオシレータを用いたPLL回路が構成できる。
【0014】
このPLL回路では、リングオシレータを構成するインバータゲートの電源電流により高調波ノイズが発生する。例えばインバータゲートを用いたリングオシレータでは、インバータゲートの出力が、次々に反転する。インバータゲートは一般的にはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構成であり、負荷トランジスタのPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor )と、ドライブトランジスタのNMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor )からなる。
【0015】
入力がハイレベルからローレベルに変化する場合は、出力がローレベルからハイレベルに変化する。このときは、NMOSが導通状態から非導通状態へ、PMOSが非導通状態から導通状態へ変化し、電源電圧からの電源電流により出力をハイレベルに引き上げる。この出力がローレベルからハイレベルに変化する場合には、PMOSによる電源電流がメーンであり、グランドへの電流は小さく、無視することができる。電源電流波形としては出力ハイレベル変化に対応して、図13Bに示すように最初の出力A、次に出力C、出力E、出力G、出力B、出力D、出力Fとそれぞれの出力レベル変化に対応してピーク電流が流れることになる。このとき流れる電源電流により高調波ノイズが発生し、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。
【0016】
一方、入力がローレベルからハイレベルに変化する場合は、出力がハイレベルからローレベルに変化する。このときは、PMOSが導通状態から非導通状態へ、NMOSが非導通状態から導通状態へ変化し、出力ハイレベルの電荷を放電させ、グランド電圧に引き下げる。このときNMOSによるグランド電流がメーンであり、電源からの電流は小さく、無視することができる。このときにグランドに流れるグランド電流により高調波ノイズを発生させる。この場合には、最初の出力B、次に出力D、出力F、出力A、出力C、出力E、出力Gとそれぞれの出力レベル変化に対応してピーク電流が流れることになる。一般的には電源電流のよる高調波ノイズがグランド電流による高調波ノイズより大きいことから、以後の説明は、電源電流側について説明する。
【0017】
この電源電流による高調波ノイズは、インバータゲートの段数に相当する相数×発振周波数の周波数であり、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。図13において電源電流波形として示すように、相数7、発振周波数312MHzの場合には、7x312=2184MHzの高調波ノイズが発生する。従って機器内で周波数2184MHzが使用されている場合には、高調波ノイズ2184MHzが自己妨害波となり、2184MHz帯の無線装置の送受信波に干渉し、無線装置の送受信感度が劣化することになる。
【0018】
従来、電磁ノイズの空中伝播については該当LSI、回路部を金属ケースでシールドするなどの対策が考案されて来た。しかし、この対策はサイズ、コストなどの面でデメリットが多い。また、電源導体伝播については電源に該当周波数を抑圧するフィルタを設ける等のコスト的にデメリットのある対策が行われている。さらに、グランド伝播ノイズの場合、有効な対策は少なく、オシレータ回路のグランドを干渉回路と分けるなどのレイアウト上デメリットの大きい対策が採られてきた。
【0019】
このようにリングオシレータの採用が多くなるなかで、自己妨害波となる高調波ノイズに対する対策は、コスト、レイアウト、サイズなどでデメリットの大きな対策しか存在しなかった。そのためコスト、レイアウト、サイズなどでデメリットの大きい対策をすることなく、リングオシレータ特有の高調波による干渉を抑制する方法が望まれてきた。
【0020】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、コスト、レイアウト、サイズなどでデメリットの大きい対策をすることなく、リングオシレータ特有の高調波ノイズによる干渉を抑制できるリングオシレータ及びそれを用いたPLL回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の1つの観点によれば、無線装置に内蔵され、発振回路と、切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置が使用する受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記発振回路の構成を切り替え、前記発振回路が発生する高調波ノイズの周波数を変更することができるリングオシレータが得られる。
【0022】
また本発明の別の観点によれば、無線装置に内蔵され、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較し、その位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号を使って前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、前記無線装置は、受信周波数、又は受信周波数とその受信感度を検出し、その検出結果から、前記無線装置の受信周波数と、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズと、が干渉すると判断した場合には、回路構築制御信号を生成し、前記回路構築制御信号を使って、前記リングオシレータ又は前記分周器のいずれかの構成を切り替え、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数帯域を異ならせることで、前記無線装置における前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することができるPLL回路が得られる。
【0023】
さらに、本発明の別の観点によれば、無線装置に内蔵されたPLL回路は、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較しその位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号により前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、前記無線装置が、受信周波数、又は受信周波数及びその受信感度を検知するステップと、前記受信周波数と前記リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉するかどうか判断し、前記受信周波数と前記高調波ノイズとが干渉する場合には回路構築制御信号を生成するステップと、前記回路構築制御信号を用いて前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更し回路構築するステップとを有し、前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更することで、前記高調波ノイズの周波数帯域を異ならせ、前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することができるPLL回路の制御方法が得られる。
【発明の効果】
【0024】
無線装置の受信周波数と、リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉する場合には、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数を変更する。高調波ノイズの周波数を変更することで、高調波ノイズの周波数と無線装置の受信周波数とが重ならなくなり、干渉がなくなる。高調波ノイズの周波数と無線装置の受信周波数との干渉が無くなることで、良好な感度を備えた無線装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における無線装置のブロック構成図である。
【図2】本発明における妨害周波数帯域と閾値を示すテーブルである。
【図3】実施例1におけるPLL回路の構成ブロック図(A)、リングオシレータのタイミング図(B)、(C)である。
【図4】実施例1における妨害波のスペクトルである。
【図5】実施例1における制御方法を示すフローチャートである。
【図6】実施例2におけるPLL回路の構成ブロック図(A)、リングオシレータのタイミング図(B)である。
【図7】実施例2における妨害波のスペクトルである。
【図8】実施例2における制御方法を示すフローチャートである。
【図9】実施例3におけるPLL回路の構成ブロック図(A)、リングオシレータのタイミング図(B)、(C)である。
【図10】実施例3における妨害波のスペクトルである。
【図11】実施例3における制御方法を示すフローチャートである。
【図12】従来の無線装置のブロック構成図である。
【図13】従来のリングオシレータを用いたPLL回路のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について、詳細に説明する。最初に本発明を理解するために、本発明のリングオシレータ、PLL回路を備えた無線装置について図1、2を参照して説明する。図1に本発明の無線装置のブロック構成図、図2に妨害波周波数帯域と閾値を示すテーブルを示す。
【0027】
図1に示す無線装置20は、アンテナ21、電力増幅部22、周波数変換部23、ベースバンド部24、テーブル26を備えた制御部25、局部発振器(VCO)27と、を備え、送信局11との間で受信波により送受信する。さらに、無線装置20はリングオシレータ9を備えたPLL回路10を備えている。このリングオシレータ9からの高調波ノイズが自己妨害波となり、無線装置の送受信感度を劣化させることがある。そのためテーブル26を備えた制御部25からの回路構築制御信号により、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータ9が発生する高調波ノイズの周波数変更することができる。無線装置が使用する受信周波数に対し、リングオシレータ9の高調波ノイズの周波数帯域を異ならせることで、受信周波数と高調波ノイズとの干渉を無くし、あるいは抑制することができる。
【0028】
送信局11と無線装置20間で送受信が行われ、ベースバンド部24において、受信周波数やその受信感度を検知する。受信感度としての検知項目は特に限定されないが、受信する電波強度やビット誤り率が使用することができる。例えば、受信信号強度RSSI、希望波受信電力RSCP、エネルギー対受信電力密度比Ec/NO、ビット誤り率BER等を使用することができる。さらに、検知した受信感度が満足できる受信感度レベルであるかを判定する。このとき受信した周波数と、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数とが重なり、お互いが干渉した場合には、受信感度が劣化する。干渉した場合には、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズは、自己妨害波となりアンテナを経由し、あるいは電源配線を経由して、受信感度を劣化させる。このようにリングオシレータ9から発生される高調波ノイズは、その周波数が無線装置で使用される受信周波数の重なった場合には、干渉して自己妨害波となる。従って、これらの高調波ノイズは妨害波となることから、妨害波周波数と表すことができる。
【0029】
このリングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数帯域を制御部25内にテーブル26として、記憶している。テーブル26は、例えば図2に示すように、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数帯域の下限周波数、上限周波数、及びそのときの閾値がテーブルとして備えられている。この閾値は検知した受信感度と比較し判定する基準である。すなわち閾値よりも受信感度が良好、あるいは劣るかで、リングオシレータ9から発生される高調波ノイズの周波数を変更するか、しないかを判定する。図2では、閾値として受信信号強度RSSIを示しているが、無線装置として検知、利用する項目に対して、それぞれ閾値を設けることができる。また閾値として1項目ではなく、受信信号強度RSSI、希望波受信電力RSCP等を組み合わせることができる。
【0030】
次に、本発明の制御方法を説明する。最初PLL回路10のリングオシレータ9は、制御部25により初期設定された周波数で発振する。初期設定としては、PLL回路の消費電力が最小となる状態が選択される。例えば、リングオシレータ9がインバータゲートで構成された場合には、消費電力が小さいリング状に接続されたインバータゲートの段数が少ない状態が初期設定となる。また分周比を固定、又は可変する場合には、消費電力が小さい固定動作に初期設定される。次に受信周波数における受信感度を検知する。
【0031】
無線装置20の制御部25は、使用している受信周波数の帯域がテーブルの妨害波周波数帯域に含まれるかどうかを確認する。テーブル26の妨害波周波数帯域に、無線装置20の受信周波数帯域が含まれない場合には、リングオシレータ9の高調波ノイズは妨害波とはならない。そのため通信の受信感度は良好であり、リングオシレータ9は初期設定された状態のままで発振動作を継続する。
【0032】
テーブル26の妨害波周波数帯域に、無線装置20の受信周波数帯域が含まれている場合には、さらに、検知した受信感度と、テーブル26の閾値とを比較する。例えば、無線装置20の受信周波数が4360MHzの場合はテーブルの2番目の欄の妨害周波数4354〜4382MHzに含まれ、受信感度が影響され、受信品質が劣化することになる。そこで実際の受信感度と、テーブルの閾値とを比較する。受信感度が閾値より良好であれば、周波数帯域はオーバーラップしているが、その干渉は小さいとして、そのまま初期設定状態で動作を継続する。以下の説明においては、受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップして干渉しているが、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、結果として受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと見なす。つまり、受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化し、満足できない場合のみを、受信周波数と妨害波周波数とが干渉しているとする。
【0033】
検知した受信感度とテーブルの閾値とを比較し、受信感度が劣っていれば、リングオシレータからの高調波ノイズが干渉し、妨害波となっているとして、PLL回路のリングオシレータの構成や分周比を変更する。PLL回路の構成を変更することで、リングオシレータからの高調波ノイズ周波数を変更し、受信周波数とリングオシレータからの高調波ノイズの周波数の重なりを無くし、干渉をなくす。又は受信周波数とリングオシレータからの高調波ノイズの周波数の重なりを少なくし、干渉の程度を抑制する。このように、リングオシレータからの高調波ノイズ周波数を変更し、干渉を抑制することで無線装置の受信感度を良好に保つことができる。
【0034】
このように、本発明の無線装置はリングオシレータを有するPLL回路を備え、PLL回路は初期設定として、消費電力が最小になるような状態で動作する。しかし、リングオシレータからの高調波ノイズが自己妨害波となり、無線装置の受信感度が低下した場合には、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータからの高調波ノイズの周波数を変更する。リングオシレータからの高調波ノイズの周波数を変更し、無線装置の受信周波数と異ならせることで、2つの周波数の重なりをなくし、干渉を抑制することができる。本発明によれば高調波ノイズの周波数を変更するできるPLL回路が得られる。高調波ノイズの周波数と受信周波数とを異ならせることで干渉をなくし、送受信感度が良好な無線装置が得られる。
【0035】
(実施例1)
実施例1として、第1のPLL回路の構成例と制御方法例について、図3、4、5を参照して説明する。図3Aには実施例1のPLL回路10の構成ブロック図、図3Bにはリングオシレータがインバータゲート7段構成の場合のタイミング図、図3Cにはリングオシレータがインバータゲート5段構成の場合のタイミング図を示す。図4にはリングオシレータからの妨害波のスペクトル、図5にはPLL回路の制御方法を示すフローチャートを示す。
【0036】
PLL回路10は、位相検出器(PD)1、チャージポンプ回路(CP)2、低域通過フィルタ(LBP)3、分周器4、リングオシレータ9Aから構成されている。リングオシレータは、発振回路である複数のインバータゲート5と切り替えスイッチ6を備え、切り替えスイッチ6によりリング状に結合されたインバータゲート5の段数を7段又は5段に切り換える。図3Aに示すPLL回路は、図13のPLL回路に比較してリングオシレータ9Aの構成が異なるだけであり、他の構成要素は図13と同様であり、同じ符号としその説明は省略する。
【0037】
リングオシレータ9Aからは、周波数312MHzのクロック(Fck)が出力され、分周器4はクロック(Fck)を1/12の分周クロックに分周する。位相検出器1には、分周クロックと基準クロック(Fref)が入力され、位相比較される。分周クロックと基準クロックとの位相比較結果は、チャージポンプ回路2に入力され、チャージポンプ回路2の出力電圧を制御する。チャージポンプ回路2の出力電圧は、低域通過フィルタ3で平滑化され、リングオシレータのインバータゲート5の電源に供給される。位相検出器1において、分周クロックの位相が進んでいる場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を低く制御し、リングオシレータの発振周波数を低くする。逆に分周クロックの位相が遅れている場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を高く制御し、リングオシレータの発振周波数を高くする。このように位相検出器1からの制御信号によりチャージポンプ回路2の出力電圧を制御することで、リングオシレータの発振周波数を制御するPLL回路が構成できる。
【0038】
リングオシレータ9Aは、図3Aに示すように初段インバータゲート5の入力には切り替えスイッチ6が設けられている。切り替えスイッチ6は最終段のインバータゲート5の出力G、又は5段目のインバータゲートの出力Eを切り替え制御信号により切り替える。図3Bに、切り替えスイッチ6により最終段のインバータゲート5の出力Gを入力する7段構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。図3Cに、切り替えスイッチ6により5段目のインバータゲート5の出力Eを入力する5段構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。
【0039】
図3Bのインバータゲート7段から構成されたリングオシレータ9Aは、初段のインバータゲート5には最終段のインバータゲートからの出力Gが入力され、出力Aを次段に出力する。順次チェーン状に接続されたインバータゲートは、それぞれ出力B〜Fを後続段に出力する。再び最終段の出力Gが初段のインバータゲートに入力され、初段のインバータゲートが反転する。このようにしてインバータゲート7段分の遅延時間を半サイクルとする周期で発振することになる。ここでは、このリング接続されたインバータゲート7段が発振回路となる。このとき電源電流波形は、インバータゲート出力がローレベルからハイレベル変化に対応して、最初の出力A、次に出力C、出力E、出力G、出力B、出力D、出力Fのタイミングで、ピーク電流が流れることになる。このとき流れる電源電流により高調波ノイズが発生し、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。従ってこのとき発生する電源側の高調波ノイズの周波数は、インバータゲートの段数と、発振周波数の積であり、7x312MHz=2184MHzとなる。
【0040】
図3Cのインバータゲート5段から構成されたリングオシレータ9Aは、初段のインバータゲート5は5段目のインバータゲートからの出力Eが入力され、出力Aを次段に出力する。順次チェーン状に接続されたインバータゲートは、それぞれ出力B〜Dを後続段に出力する。5段目の出力Eが初段のインバータゲートに入力され、その出力レベルを反転させる。このようにしてインバータゲート5段分の遅延時間を半サイクルとする周期で発振することになる。また、このとき6段目及び7段目のインバータゲートは発振周波数には関係しないで、単なるインバータゲートとして機能し、発信信号を分周器に伝達する。ここでは、このリング接続されたインバータゲート5段が発振回路となる。このとき電源電流波形は、インバータゲート出力がローレベルからハイレベル変化に対応して、最初の出力AとF、次に出力C、出力E、出力BとG、出力Dのタイミングで、ピーク電流が流れることになる。このとき流れる電源電流により高調波ノイズが発生し、電磁ノイズとして空中伝播、ないしは電源を通じて導体伝播する。従ってこのとき発生する高調波ノイズの周波数は、インバータゲートの段数と、発振周波数の積であり、5x312MHz=1560MHzとなる。
【0041】
本発明においては、リングオシレータを構成するゲート回路としてインバータゲートを採用しているが、特に限定されるものではない。リングオシレータとしては、全体として負(−1以下)のゲインをもつ複数の遅延素子であればよい。すなわち信号を遅延させ、反転させた信号を初段にフィードバック可能な回路であればよい。従って差動アンプ、NANDゲートやNORゲート等の論理ゲートを組み合わせることで構成可能であり、基本的には最終段から反転した信号を初段の論理ゲートにフィードバック可能な回路で構成することができる。高調波ノイズは、7段構成の場合には2184MHz、5段構成の場合には1560MHzであり、リングオシレータの消費電力は低速動作である5段構成の場合が小さいことになる。
【0042】
図4に、リングオシレータからの妨害波のスペクトルを示す。図4において、実線Aがインバータゲート5段構成、点線Bがインバータゲート7段構成のスペクトルである。インバータゲートの段数により、高調波ノイズの周波数が異なり、インバータゲート5段構成の高調波ノイズ周波数が、インバータゲート7段構成の高調波ノイズ周波数より低い。図4から、高調波ノイズの周波数帯域はばらつきがあるが、受信周波数と重ならないようにインバータゲートの構成段数を選択することが可能であることが分かる。このように高調波ノイズの周波数帯域と受信周波数との重なりをなくすことで、無線装置の受信感度を良好な状態に保てる。
【0043】
次に、本実施例(図3A)で示したPLL回路10を図1の無線装置20に適用した場合のPLL回路の制御方法のフローチャートを、図5を参照して説明する。ここでは制御部25からの回路構築制御信号は、切り替えスイッチ6への切り替え制御信号である。切り替え制御信号によりリングオシレータのインバータゲートの段数を5段又は7段に切り替える。PLL回路の初期として、無線装置の制御部25からの切り替え制御信号(回路構築制御信号)によりリングオシレータは、消費電力の小さなインバータゲート5段構成として動作設定される。
【0044】
制御部25はステップS11で、リングオシレータ9Aのインバータゲート段数が5段であるか確認する。5段構成でない場合(NO)にはステップS15となる。5段構成の場合(YES)にはステップS12で、制御部25はリングオシレータ5段構成時のテーブル1を参照し、妨害周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか(重なっているか)の比較を行う。ステップS12は、リングオシレータの高調波ノイズ(妨害波)と無線装置の受信周波数が重なり、干渉するかどうかの周波数の確認を行うステップである。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、インバータゲート5段構成のままステップS12に戻る。
【0045】
受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、干渉して受信感度が劣化する可能性があることから、制御部25はステップS13で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(NO)は、インバータゲート5段構成のままステップS12に戻る。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(YES)は、ステップ14で、制御部25は回路構築制御信号によりリングオシレータの構成をインバータ7段構成になるように切り替える。受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップしているが(重なっているが)、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと判断してそのままの構成とする。受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化している場合を、受信周波数と妨害波周波数とが干渉していると判断し、リングオシレータの構成段数を切り替える。
【0046】
次にステップS15で、制御部25はリングオシレータ7段構成時のテーブル2を参照し、妨害波周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか確認する。受信波周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、ステップS17で、制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータを5段構成に切り替える。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、制御部25はステップS16で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(YES)は、ステップS17で、制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータを5段構成に切り替える。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(NO)は、リングオシレータをインバータゲート7段構成のままステップS15に戻る。
【0047】
上記したようにPLL回路では、リングオシレータを構成するインバータゲートの電源電流により高調波ノイズ(妨害波)が発生する。PLL回路の初期として消費電力が小さい状態にPLL回路を設定する。この状態でリングオシレータの高調波ノイズ周波数と無線装置の受信周波数とが重なり、干渉により通信感度が悪くなる場合がある。この場合には切り替えスイッチによりリングオシレータの段数を切り替え、高調波ノイズの周波数を変更し、高調波ノイズ周波数と受信周波数とを重ならないようにして干渉させなくする。高調波ノイズの周波数が変化することで、無線装置は高調波ノイズの影響を受けなくなり、無線装置の送受信感度は良好になる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線装置が構成できる。
【0048】
(実施例2)
実施例2として、第2のPLL回路の構成例と制御方法例について、図6〜8を参照して説明する。図6Aには、実施例2のPLL回路10の構成ブロック図、図6Bにはリングオシレータのタイミング図と電源電流波形を示す。図7にはリングオシレータからの妨害波のスペクトル、図8にはPLL回路の制御方法を示すフローチャートを示す。
【0049】
本実施例のPLL回路は、位相検出器1、チャージポンプ回路2、低域通過フィルタ3、分周器4、インバータゲート5が7段リング状に結合されたリングオシレータ9から構成されている。本実施例は実施例1に比較して、切り替えスイッチ6がなくリングオシレータは発振回路であるインバータゲート7段の固定構成であり、さらに分周器4が分周器7に変更されている。分周器7は、分周比が固定でなく、分周比が11から13まで可変な分周器である。ここで実施例1と同じ構成要素は、同じ符号としその説明は省略する。
【0050】
リングオシレータ9からは、最初周波数312MHzのクロック(Fck)が出力され、分周器7で、クロック(Fck)は1/11から1/13までの可変な分周クロックに分周される。位相検出器1には、分周クロックと基準クロック(Fref)が入力され、位相比較される。分周クロックと基準クロックとの位相比較結果は、チャージポンプ回路2に入力され、チャージポンプ回路2の出力電圧を制御する。チャージポンプ回路2の出力電圧は、低域通過フィルタ3で平滑化され、リングオシレータのインバータゲート5の電源に供給される。位相検出器1において、分周クロックの位相が進んでいる場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を低く制御し、リングオシレータの発振周波数を低くする。逆に分周クロックの位相が遅れている場合には、チャージポンプ回路2の出力電圧を高く制御し、リングオシレータの発振周波数を高くする。このように位相検出器1からの制御信号によりチャージポンプ回路2の出力電圧を制御することで、リングオシレータの発振周波数を制御するPLL回路が構成できる。
【0051】
本実施例では、リングオシレータから発生するクロックを分周する分周比が可変である。分周比を可変とすることで、リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数を変え、高調波ノイズの周波数と無線装置の受信周波数との重なりを少なくすることで、送受信感度を高めている。
【0052】
分周器7は、1/11から1/13の範囲内に拡散して分周することができる。分周の変化の仕方は特に限定されない。例えば、最初に1/12の周波数に分周し、徐々にその周波数を大きくし、1/11の周波数に分周する。その後逆に徐々にその分周を小さくし1/12、さらに分周は1/13とする。分周が1/13になると再び徐々にその分周を大きくし分周を1/12に戻す。これらの制御は拡散分周制御信号に基づいて、繰り返し行われる。このように分周比が12、11、12、13、12と、分周比の平均値が分周比の最小値と最大値とのセンター値になるように、分周比の最小値と最大値との間を往復して変化させることを拡散動作と表記する。分周比の最小値は11であり、最大値は13であることから、このときの分周比の平均値は12となる。
【0053】
この分周比の変化に追随して、リングオシレータからの発振クロックの周波数Fckは、312MHz(分周比12)、286MHz(分周比11)、312MHz(分周比12)、338MHz(分周比13)、312MHz(分周比12)と変化することになる。そのとき、リングオシレータから発生される高調波ノイズは、2002〜2184〜2366MHzの間を変化する。図6Bに示すように最初に分周器7は、周波数312MHzを1/12に分周することで26MHzを出力する。その後分周器7は、周波数286MHzを1/11に分周することで26MHzを出力する。このとき、リングオシレータからは電源電流波形の周波数に応じた高調波ノイズが発生する。
【0054】
この図6Aに示すPLL回路における分周比による高調波ノイズのスペクトルを図7に示す。図7の実線Aで示す波形は分周比12の固定タイプ、点線Bで示す波形は分周比が11〜13までの可変タイプのスペクトル例である。図7によれば分周比12の固定タイプは、周波数帯域が狭いが、そのピーク値は大きい。一方分周比が11〜13までの可変タイプは、周波数帯域がブロードであり、そのピーク値は小さくなっている。従って、これらの高調波ノイズの周波数と受信周波数が重なっていない場合には分周比固定タイプとし、高調波ノイズの周波数と受信周波数が重なっている場合には分周比可変タイプを選択する。高調波ノイズの周波数と受信周波数が重なっている場合にも、分周比可変タイプを選択することで、高調波ノイズの周波数のピーク値が小さく、高調波ノイズと受信周波数との干渉が少なくなり、受信感度の劣化を抑えることができる。このように高調波ノイズの周波数帯域と受信周波数との干渉を少なくすることで、無線装置の受信感度を良好な状態に保てる。
【0055】
次に、本実施例(図6A)で示したPLL回路10を図1の無線装置20に適用した場合のPLL回路の制御方法のフローチャートを、図8を参照して説明する。ここでは制御部25からの回路構築制御信号は、分周器7への拡散分周制御信号である。拡散分周制御信号(回路構築制御信号)により、分周器は1/12の固定分周動作、又は1/11、1/12、1/13の拡散分周動作に切り替える。PLL回路の初期として、無線装置の制御部25からの拡散分周制御信号(回路構築制御信号)により分周器は、消費電力の小さな1/12の固定分周動作に設定される。
【0056】
制御部25はステップS21で、リングオシレータを備えたPLL回路10の分周比が固定(12)であるか確認する。固定でない場合(NO)にはステップS25となる。固定の場合(YES)にはステップS22で、制御部25は分周比固定の場合のテーブルを参照し、妨害周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか(重なっているか)の比較を行う。ステップS22は、リングオシレータの高調波ノイズ(妨害波)と無線装置の受信周波数が重なり、干渉するかどうかの周波数の確認を行うステップである。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、分周比固定のままステップS22に戻る。
【0057】
受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、干渉して受信感度が劣化する可能性があることから、制御部25はステップS23で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(NO)は、分周比固定のままステップS22に戻る。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(YES)は、ステップS24で、制御部25は拡散分周制御信号により分周比を拡散分周動作になるように切り替える。受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップしているが(重なっているが)、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと判断してそのままの構成とする。受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化している場合には、受信周波数と妨害波周波数とが干渉していると判断し、分周比を拡散分周動作に切り替える。
【0058】
次にステップS25で、制御部25は分周比を拡散分周動作時のテーブルを参照し、妨害波周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか確認する。受信波周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、ステップS27で、制御部25からの拡散分周制御信号により分周比固定動作に切り替える。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、制御部25はステップS26で無線装置の受信感度とテーブル26の閾値とを比較確認する。テーブル26の閾値より受信感度が良好な場合(YES)は、ステップS27で、制御部25からの拡散分周制御信号により分周比固定動作に切り替える。テーブル26の閾値より受信感度が悪い場合(NO)は、分周比を拡散分周動作のままステップS25に戻る。
【0059】
上記したようにPLL回路では、リングオシレータを構成するインバータゲートの電源電流により高調波ノイズ(妨害波)が発生する。PLL回路の初期として消費電力が小さい状態にPLL回路を設定する。この状態でリングオシレータの高調波ノイズ周波数と無線装置の受信周波数とが重なり、干渉により通信感度が悪くなる場合がある。この場合には拡散分周制御信号により分周比固定動作から拡散分周動作になるように切り替え、高調波ノイズの周波数を変更し、高調波ノイズ周波数と受信周波数との重なりを少なくする。このように分周比を拡散動作させることで、高調波ノイズはクロック(Fck)の相数倍の帯域に拡散させる。高調波ノイズを、無線装置の受信周波数帯域幅よりも大きい帯域に拡散してしまうことで受信周波数帯域内にあるノイズ電力を低減することが可能となり、干渉量を劇的に減少させることが出来る。
【0060】
本実施例は、高調波ノイズの周波数を拡散させることで、無線装置の受信周波数帯域内にあるノイズ電力を低減する。そのためリングオシレータからの高調波ノイズが、無線装置の受信周波数に与える影響を小さくできる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線受信回路が構成できる。
【0061】
(実施例3)
実施例3として、第3のPLL回路の構成例と制御方法例について、図9、10、11を参照して説明する。図9Aには実施例3のPLL回路10の構成ブロック図、図9B、Cにそのタイミング図を示す。図10にはPLL回路からの妨害波スペクトルを示す。図11は、本実施例におけるPLL回路の制御方法を示すフローチャートである。
【0062】
図9AのPLL回路10は、位相検出器1、チャージポンプ回路2、低域通過フィルタ3、分周器4、リングオシレータ9Bから構成されている。リングオシレータ9Bは、遅延回路8Aと8B、3段のインバータゲート5、切り換えスイッチ6から構成されている。本実施例は実施例1に比較して、リングオシレータのインバータゲート5の一部が遅延回路8A、8Bに変更され、切り替えスイッチ6により遅延回路8A、8Bが切り替えられる構成である。実施例1と同じ構成要素は、同じ符号としその説明は省略する。
【0063】
図9Aに示すようにリングオシレータ9Bには、切り替えスイッチ6が設けられている。切り替えスイッチ6は、切り替え制御信号により遅延回路8A、8Bを切り替え、リングオシレータは遅延回路8Aとインバータゲート3段構成、又は遅延回路8Bとインバータゲート3段構成となる。ここで遅延回路8Aと8Bの遅延時間は異なり、遅延回路8Aの遅延時間が遅延回路8Bの遅延時間より短く設定されている。例えば、遅延回路8Aはインバータゲート2段相当の遅延時間、遅延回路8Bはインバータゲート4段相当の遅延時間を有する遅延回路とする。この場合には実施例1におけるインバータゲート5段と、インバータゲート7段構成に相当する回路構成となる。以下遅延回路8Aとインバータゲート3段構成の場合を単に遅延回路8A構成と表し、遅延回路8Bとインバータゲート3段構成の場合は単に遅延回路8B構成と表すことにする。
【0064】
図9Bに、切り替えスイッチ6により遅延回路8A構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。図9Cに、切り替えスイッチ6により遅延回路8B構成の場合のタイミングと電源電流波形を示す。遅延回路8A構成の場合、遅延回路8Aにはインバータゲート最終段の出力Cが入力される。遅延回路8Aは、入力された信号を所定時間遅延させ信号Tdとして、インバータゲートに出力する。初段のインバータゲートは信号Tdを入力され出力Aを次段のインバータゲートに出力する。次段のインバータゲートは出力Bを出力し、最終段のインバータゲートは出力Cを遅延回路8Aと分周器4に出力する。リングオシレータ9Bはインバータゲートの3段の遅延時間と、遅延回路8Aの遅延時間との和に相当する時間を半サイクルとした周期で発振する。ここでは、遅延回路8Aとインバータゲート3段が発振回路となる。
【0065】
遅延回路8B構成の場合には、遅延回路8Aの代わりに遅延回路8Bとなり、同様の構成、動作を行う。遅延回路8Aの遅延時間が遅延回路8Bの遅延時間よりも短いことから、遅延回路8A構成のインバータゲートの動作速度は、遅延回路8B構成のインバータゲートの動作速度よりも遅く動作する。ここで遅延回路8A、8Bの構成は特に限定されないが、例えばRC遅延回路で構成することができる。RC遅延回路は、電源電流やグランド電流の急激な変化が少ないことから、高調波ノイズの発生が少ない。
【0066】
図10に、リングオシレータ9Bからの高調波ノイズ(妨害波)のスペクトルを示す。実線Aが遅延回路8A構成(遅延回路8Aとインバータゲート3段構成)、点線Bが遅延回路8B構成(遅延回路8Bとインバータゲート3段構成)である。遅延回路8Aはインバータゲート2段分の遅延量を有し、遅延回路8Bはインバータゲート4段分の遅延量を有するものである。いずれの高調波ノイズの周波数帯域はブロードであるが、遅延回路8B構成がよりブロードである。またそのピーク値はいずれも小さい。実線A、又は点線Bで示すように、遅延時間が異なる遅延回路により、高調波ノイズの周波数が異なっている。そのため受信周波数と重ならないようにリングオシレータの構成を選択することが可能であることが分かる。このように高調波ノイズの周波数帯域と受信周波数との重なりをなくすことで、無線装置の受信感度を良好な状態に保てる。
【0067】
次に、本実施例のPLL回路10を図1の無線装置20に適用した場合のPLL回路の制御方法のフローチャートを、図11を参照して説明する。ここでは制御部25からの回路構築制御信号は、切り替えスイッチ6への切り替え制御信号である。切り替え制御信号により遅延回路を8A、又は8Bに切り替える。PLL回路の初期として、無線装置の制御部25からの切り替え制御信号(回路構築制御信号)によりリングオシレータは、消費電力の小さな遅延回路8A構成に設定される。
【0068】
制御部25はステップS31で、リングオシレータ9Bの構成が遅延回路8Aであるか確認する。リングオシレータが遅延回路8A構成でない場合(NO)にはステップS35となる。遅延回路8A構成の場合(YES)にはステップS32で、制御部25は遅延回路8A構成のテーブルAを参照し、妨害周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか(重なっているか)の比較を行う。ステップS32は、リングオシレータの高調波ノイズ(妨害波)と無線装置の受信周波数が重なり、干渉するかどうかの周波数の確認を行う。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、遅延回路8A構成のままステップS32に戻る。
【0069】
受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、干渉して受信感度が劣化する可能性があることから、制御部25はステップS33で無線装置の受信感度とテーブルAの閾値とを比較確認する。テーブルAの閾値より受信感度が良好な場合(NO)は、遅延回路8A構成のままステップS32に戻る。テーブルAの閾値より受信感度が悪い場合(YES)は、ステップS34で、制御部25は回路構築制御信号によりリングオシレータの構成を遅延回路8Bとインバータゲート3段から構成する遅延回路8B構成になるように切り替える。受信周波数帯域と妨害波周波数帯域とがオーバーラップしているが、その干渉度合いが小さく、受信感度が良好な場合は、受信周波数と妨害波周波数とは干渉していないと判断してそのままの構成とする。受信周波数と妨害波周波数とが干渉して受信感度が劣化している場合には、受信周波数と妨害波周波数とが干渉していると判断し、遅延回路を切り替える。
【0070】
次にステップS35で、制御部25はタイプBのテーブルBを参照し、妨害波周波数帯域に受信波周波数帯域が含まれているか確認する。受信波周波数帯域と妨害波周波数帯域が重ならない場合(NO)には、ステップS37で、制御部25からの回路構築制御信号により遅延回路8A構成に切り替える。受信波の周波数帯域と妨害波周波数帯域が重なる場合(YES)には、制御部25はステップS36で無線装置の受信感度とテーブルBの閾値とを比較確認する。テーブルBの閾値より受信感度が良好な場合(YES)は、ステップS37で、制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータを遅延回路8A構成に切り替える。テーブルBの閾値より受信感度が悪い場合(NO)は、リングオシレータを遅延回路8B構成のままステップS35に戻る。
【0071】
本実施例のPLL回路のリングオシレータは、インバータゲートの一部を遅延回路で構成する。遅延回路はそれぞれ異なる遅延時間を有し、切り替えスイッチによりそれぞれ異なる遅延回路を接続する。リングオシレータの高調波ノイズ周波数と無線装置の受信周波数とが重なり、干渉により通信感度が悪くなる場合には切り替えスイッチによりこれらの遅延回路を切り替える。遅延回路を切り替え、高調波ノイズの周波数を変更することで、高調波ノイズ周波数と受信周波数とを重ならないようにして干渉させなくする。高調波ノイズの周波数が変化することで、無線装置は高調波ノイズの影響を受けなくなり、無線装置の送受信感度は良好になる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線装置が構成できる。
【0072】
(実施例4)
実施例4として、第4の制御方法例について説明する。実施例1〜3は、無線装置として受信周波数とその受信感度を測定して、制御するPLL回路の制御方法である。しかし、実施例4におけるPLL回路の制御方法は、無線装置として受信周波数の受信感度を測定しないで、妨害周波数を記録したテーブルを利用した、簡便な制御方法である。実施例4を、図1、2、4を参照して説明する。
【0073】
図1の無線装置においては、図2に示すようなテーブルを備えている。実施例1〜3においては、そのテーブルにはリングオシレータ9から発生される高調波ノイズ(妨害波)の周波数帯域の下限周波数、上限周波数、及びそのときの閾値がテーブルとして示されている。このテーブルを、例えば妨害周波数帯域のみのテーブルとする。図2のテーブル26として、妨害波周波数帯域のみとして、閾値を採用しない。例えば、図4のスペクトルに示す妨害周波数と、その強度(db)との関係において、妨害波として無線装置の送受信感度に影響を与える場合には妨害周波数としてテーブルに記載する。一方、その強度(db)が一定値以下で無線装置の送受信感度に影響を与えない、又は影響が小さい場合には、妨害周波数としてテーブルには記載しない。つまり、図4のスペクトルにおいて、例えば5dB以上、あるいは10dB以上等の一定強度以上の場合には、妨害波周波数帯域としてテーブル26に記憶させる。それ以下の強度の場合には干渉しても、受信感度が満足するレベルにあるとして、妨害波周波数帯域とは見なさない。
【0074】
無線装置に内蔵されたPLL回路は、実施例1〜3に詳述したようにいくつかの構成があり、それぞれの動作モードがある。それぞれの構成や、動作モードに対して夫々妨害周波数を記載したテーブル26を作成する。無線装置が特定の受信周波数を受信した場合には、制御部25が、その受信周波数とテーブル26に記憶された妨害周波数とを比較する。制御部25は、妨害周波数として受信周波数が含まれていない動作モードのPLL回路を選定する。制御部25からの回路構築制御信号によりリングオシレータ又は分周器の構成を変更し、所望の動作モードで動作するPLL回路を構成する。このように無線装置の受信周波数とPLL回路が発生する妨害周波数との周波数が重ならないようなPLL回路を選択する。無線装置の受信周波数と妨害周波数との周波数が重ならないことから、受信感度が良好なPLL回路、及びそのPLL回路を備えた無線装置が得られる。
【0075】
本実施例においては、無線装置の受信周波数と妨害周波数との周波数が重ならないような動作モードのPLL回路を選択し、PLL回路を構成する。無線装置の受信周波数と妨害波周波数との周波数が重ならないことから、受信感度が良好なPLL回路、及びそのPLL回路を備えた無線装置が得られる。
【0076】
上記したように本発明のLL回路では、PLL回路から発生する高調波ノイズが無線装置の送受信周波数と干渉し、受信感度が低下する場合には、PLL回路の構成を変更し、リングオシレータの高調波ノイズの周波数を変更する。高調波ノイズの周波数を変更し、高調波ノイズ周波数と受信周波数とを重ならないようにして干渉させなくする。このように高調波ノイズの周波数が変化することで、無線装置は高調波ノイズの影響を受けなくなり、無線装置の送受信感度は良好になる。本実施例のリングオシレータ、PLL回路を備え、良好な受信特性を備えた無線装置が構成できる。
【0077】
以上、実施形態、実施例として本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 位相検出器(PD)
2 チャージポンプ(CP)
3 低域通過フィルタ(LPF)
4、7 分周器
5 インバータゲート(論理反転回路)
6 切り替えスイッチ
8A、8B 遅延回路
9、9A、9B リングオシレータ
10 PLL回路
11 送信局
20 無線装置
21 アンテナ
22 電力増幅部
23 周波数変換部
24 ベースバンド部
25 制御部
26 テーブル
27 局部発振器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線装置に内蔵され、発振回路と、切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置が使用する受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記発振回路の構成を切り替え、前記発振回路が発生する高調波ノイズの周波数を変更することを特徴とするリングオシレータ。
【請求項2】
前記発振回路は複数段のインバータゲートから構成され、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチが前記インバータゲートのリング状に接続される段数を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のリングオシレータ。
【請求項3】
前記発振回路は複数段のインバータゲートと、異なる遅延時間を有し、前記複数段のインバータゲートに切り換え接続される第1及び第2の遅延回路とを有し、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記複数段のインバータゲートに接続される遅延回路を、前記第1又は第2の遅延回路のどちらか他方に切り替え接続することを特徴とする請求項1に記載のリングオシレータ。
【請求項4】
無線装置に内蔵され、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較し、その位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号を使って前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、
前記無線装置は、受信周波数、又は受信周波数とその受信感度を検出し、その検出結果から、前記無線装置の受信周波数と、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉すると判断した場合には、回路構築制御信号を生成し、前記回路構築制御信号を使って、前記リングオシレータ又は前記分周器のいずれかの構成を切り替え、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数帯域を異ならせることで、前記無線装置における前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することを特徴とするPLL回路。
【請求項5】
前記リングオシレータが複数段のインバータゲートからなる発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記回路構築制御信号を使って、前記切り替えスイッチによりリング状に接続された前記複数段のインバータゲートの段数を切り替えることを特徴とする請求項4に記載のPLL回路。
【請求項6】
前記リングオシレータは、複数段のインバータゲートと前記複数段のインバータゲートにどちらか一方が接続される異なる遅延時間を有する第1又は第2の遅延回路とを有する発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記複数段のインバータゲートに接続されている遅延回路を、前記第1又は第2の遅延回路のどちらか他方に切り替え接続することを特徴とする請求項4に記載のPLL回路。
【請求項7】
前記分周器の分周比の平均値が、分周比の最小値と最大値とのセンター値になるように、前記分周比の最小値と最大値との間を往復して変化させることを特徴とする請求項4に記載のPLL回路。
【請求項8】
無線装置に内蔵されたPLL回路は、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較しその位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号により前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、
前記無線装置が、受信周波数、又は受信周波数及びその受信感度を検知するステップと、前記受信周波数と前記リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉するかどうか判断し、前記受信周波数と前記高調波ノイズとが干渉する場合には回路構築制御信号を生成するステップと、前記回路構築制御信号を用いて前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更し回路構築するステップとを有し、前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更することで、前記高調波ノイズの周波数帯域を異ならせ、前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することを特徴とするPLL回路の制御方法。
【請求項9】
前記無線装置が受信周波数、又は受信周波数及びその受信感度を検知するステップにおいて、その受信感度として、受信信号強度(RSSI)、希望波受信電力(RSCP)、エネルギー対受信電力密度比(Ec/NO)、ビット誤り率(BER)のいずれかを検知することを特徴とする請求項8に記載のPLL回路の制御方法。
【請求項10】
前記回路構築制御信号を生成するステップにおいては、前記無線装置が受信した受信周波数と、前記無線装置に内蔵されたテーブルの自己妨害波周波数帯域とを比較し、その周波数が重なっている場合には、前記回路構築制御信号を生成することを特徴とする請求項8又は9に記載のPLL回路の制御方法。
【請求項11】
前記回路構築制御信号を生成するステップにおいては、前記無線装置が検知した受信周波数の受信感度と、前記無線装置に内蔵されたテーブルの自己妨害波周波数帯域、及び前記自己妨害波周波数帯域の閾値とを比較し、前記検知した受信感度が前記閾値よりも劣る場合には、前記回路構築制御信号を生成することを特徴とする請求項8又は9に記載のPLL回路の制御方法。
【請求項12】
前記リングオシレータが複数段のインバータゲートからなる発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、
初期設定は前記複数段のインバータゲートの接続段数を少なくし、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記回路構築するステップにおいて前記回路構築制御信号に従って、前記複数段のインバータゲートの段数を多くなるように前記切り替えスイッチにより切り替えることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のPLL回路の制御方法。
【請求項13】
前記リングオシレータは、複数段のインバータゲートと前記複数段のインバータゲートにどちらか一方が接続される異なる遅延時間を有する第1又は第2の遅延回路とを有する発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、
初期設定は第1の遅延時間の第1の遅延回路と前記複数段のインバータゲートとからなるリングオシレータとし、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記回路構築するステップにおいて前記回路構築制御信号に従って、遅延回路を前記第1の遅延時間よりも長い遅延時間を有する第2の遅延回路に前記切り替えスイッチにより切り替えることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のPLL回路の制御方法。
【請求項14】
前記分周器の初期設定は分周比を固定した固定動作とし、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、分周比の平均値が、分周比の最小値と最大値とのセンター値になるように、前記分周比の最小値と最大値との間を往復して変化させる拡散動作することを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のPLL回路の制御方法。
【請求項1】
無線装置に内蔵され、発振回路と、切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置が使用する受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記発振回路の構成を切り替え、前記発振回路が発生する高調波ノイズの周波数を変更することを特徴とするリングオシレータ。
【請求項2】
前記発振回路は複数段のインバータゲートから構成され、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチが前記インバータゲートのリング状に接続される段数を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のリングオシレータ。
【請求項3】
前記発振回路は複数段のインバータゲートと、異なる遅延時間を有し、前記複数段のインバータゲートに切り換え接続される第1及び第2の遅延回路とを有し、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記複数段のインバータゲートに接続される遅延回路を、前記第1又は第2の遅延回路のどちらか他方に切り替え接続することを特徴とする請求項1に記載のリングオシレータ。
【請求項4】
無線装置に内蔵され、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較し、その位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号を使って前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、
前記無線装置は、受信周波数、又は受信周波数とその受信感度を検出し、その検出結果から、前記無線装置の受信周波数と、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉すると判断した場合には、回路構築制御信号を生成し、前記回路構築制御信号を使って、前記リングオシレータ又は前記分周器のいずれかの構成を切り替え、前記リングオシレータが発生する高調波ノイズの周波数帯域を異ならせることで、前記無線装置における前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することを特徴とするPLL回路。
【請求項5】
前記リングオシレータが複数段のインバータゲートからなる発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記回路構築制御信号を使って、前記切り替えスイッチによりリング状に接続された前記複数段のインバータゲートの段数を切り替えることを特徴とする請求項4に記載のPLL回路。
【請求項6】
前記リングオシレータは、複数段のインバータゲートと前記複数段のインバータゲートにどちらか一方が接続される異なる遅延時間を有する第1又は第2の遅延回路とを有する発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記切り替えスイッチにより前記複数段のインバータゲートに接続されている遅延回路を、前記第1又は第2の遅延回路のどちらか他方に切り替え接続することを特徴とする請求項4に記載のPLL回路。
【請求項7】
前記分周器の分周比の平均値が、分周比の最小値と最大値とのセンター値になるように、前記分周比の最小値と最大値との間を往復して変化させることを特徴とする請求項4に記載のPLL回路。
【請求項8】
無線装置に内蔵されたPLL回路は、内部クロックを発振するリングオシレータと、前記内部クロックを分周した分周クロックを出力する分周器と、前記分周クロックと基準クロックとを比較しその位相差に対応した制御信号を出力する位相検出器と、前記制御信号により前記リングオシレータの電源電圧を出力するチャージポンプ回路と、を備え、
前記無線装置が、受信周波数、又は受信周波数及びその受信感度を検知するステップと、前記受信周波数と前記リングオシレータが発生する高調波ノイズとが干渉するかどうか判断し、前記受信周波数と前記高調波ノイズとが干渉する場合には回路構築制御信号を生成するステップと、前記回路構築制御信号を用いて前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更し回路構築するステップとを有し、前記リングオシレータ又は前記分周器の構成を変更することで、前記高調波ノイズの周波数帯域を異ならせ、前記受信周波数と前記高調波ノイズとの干渉を抑制することを特徴とするPLL回路の制御方法。
【請求項9】
前記無線装置が受信周波数、又は受信周波数及びその受信感度を検知するステップにおいて、その受信感度として、受信信号強度(RSSI)、希望波受信電力(RSCP)、エネルギー対受信電力密度比(Ec/NO)、ビット誤り率(BER)のいずれかを検知することを特徴とする請求項8に記載のPLL回路の制御方法。
【請求項10】
前記回路構築制御信号を生成するステップにおいては、前記無線装置が受信した受信周波数と、前記無線装置に内蔵されたテーブルの自己妨害波周波数帯域とを比較し、その周波数が重なっている場合には、前記回路構築制御信号を生成することを特徴とする請求項8又は9に記載のPLL回路の制御方法。
【請求項11】
前記回路構築制御信号を生成するステップにおいては、前記無線装置が検知した受信周波数の受信感度と、前記無線装置に内蔵されたテーブルの自己妨害波周波数帯域、及び前記自己妨害波周波数帯域の閾値とを比較し、前記検知した受信感度が前記閾値よりも劣る場合には、前記回路構築制御信号を生成することを特徴とする請求項8又は9に記載のPLL回路の制御方法。
【請求項12】
前記リングオシレータが複数段のインバータゲートからなる発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、
初期設定は前記複数段のインバータゲートの接続段数を少なくし、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記回路構築するステップにおいて前記回路構築制御信号に従って、前記複数段のインバータゲートの段数を多くなるように前記切り替えスイッチにより切り替えることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のPLL回路の制御方法。
【請求項13】
前記リングオシレータは、複数段のインバータゲートと前記複数段のインバータゲートにどちらか一方が接続される異なる遅延時間を有する第1又は第2の遅延回路とを有する発振回路と、該発振回路に接続された切り替えスイッチとを備え、
初期設定は第1の遅延時間の第1の遅延回路と前記複数段のインバータゲートとからなるリングオシレータとし、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、前記回路構築するステップにおいて前記回路構築制御信号に従って、遅延回路を前記第1の遅延時間よりも長い遅延時間を有する第2の遅延回路に前記切り替えスイッチにより切り替えることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のPLL回路の制御方法。
【請求項14】
前記分周器の初期設定は分周比を固定した固定動作とし、前記発振回路が発生する高調波ノイズと前記無線装置の受信周波数とが干渉する場合には、分周比の平均値が、分周比の最小値と最大値とのセンター値になるように、前記分周比の最小値と最大値との間を往復して変化させる拡散動作することを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のPLL回路の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−192976(P2010−192976A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32617(P2009−32617)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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