説明

レジスト剥離液組成物およびそれを用いた半導体素子の製造方法

【課題】
ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子の配線工程におけるドライエッチング、アッシング後に残存するパターン側壁やパターン上部のバリアメタル上の残渣を低温、短時間で完全に除去でき、配線上部のバリアメタル上に粒状の異物が付着するのを抑制するレジスト剥離液組成物およびそれを用いた半導体素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】
半導体素子や液晶パネル素子の製造工程において、ドライエッチング、アッシング後に残存するパターン側壁やパターン上部のバリアメタル上の残渣を剥離する際、フッ素化合物と1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピリジン、3,5−ジメチルピラゾール、ニトリロ三酢酸、プロピオン酸、および酢酸から選択される1種以上の水溶性化合物を含有することを特徴とするレジスト剥離液組成物で洗浄する(接触処理する)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子の配線工程で使用される、レジスト剥離液組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子は、基体上に形成されたアルミニウム、銅、アルミニウム合金等の導電性金属膜やSiOx膜等の絶縁膜上にフォトレジストを均一に塗布し、露光および現像処理によりパターンを形成し、次いで該フォトレジストをマスクとし、前記導電性金属膜や絶縁膜をドライエッチングした後、不要のレジストおよびドライエッチングで変質したレジスト残渣を除去して微細回路を形成する。
【0003】
近年、ICやLSIの高集積化、高密度化に伴い、ドライエッチングを行った後、不要のレジストをプラズマアッシングにより除去する方法がよく行われている。これらのドライエッチング、アッシングにより、金属配線パターンの側壁部、該パターン上部のバリアメタル上などに、レジスト残渣物(保護堆積膜)が残存する(以後残渣と呼ぶ)。この残渣が残存すると歩留りの低下等の問題を発生するために、残渣の完全な除去が望まれる。
【0004】
そこで残存する残渣を除去するために、洗浄剤による洗浄処理が行われており、アルカリ性剥離液組成物が使用されている。たとえばアルカノールアミン、ヒドロキシルアミンとカテコールと水からなる剥離液組成物(特許文献1参照)、エタノールアミンとヒドロキシルアミン、カテコールを含む剥離液組成物(特許文献2参照)等が開示されている。しかしながら、これら一般的なアルカリ性剥離液組成物は、室温付近では十分な洗浄性を有しておらず、70℃程度の加温が必要であるという問題点を有している。また、アッシング後に残存する残渣を剥離する工程で上記アルカリ性剥離液組成物を使用するとアルコール等の有機溶剤を使用してリンスを行い、さらに水リンスを経て乾燥するという工程を経る必要があり、環境への配慮やプロセスの簡略化のためにリンスを水のみで行うことが望まれる。
【0005】
近年、レジスト残渣の除去能力が高く、且つ簡便な方法としてフッ素化合物に有機溶剤および防食剤を含む水溶液としてのレジスト剥離液組成物が使用されている(特許文献3,4参照)。これらの組成物は、使用温度は室温付近で良く、リンスを水のみでできるという利点を有している。しかしながら、これらフッ素系レジスト剥離液組成物を用いてTi系合金をバリアメタルとするAl合金配線を洗浄した場合、時おり、洗浄後の配線上部のバリアメタル上に洗浄前には存在しない粒状の異物が付着しているのが観察されることがあり(図2参照)、さらに改善を求められていた。この粒状の異物は、洗浄終了後からの経過時間に関わらず増加しないことから洗浄後に発生・付着したのではなく、洗浄中に液が配線部に接している間に発生・付着しているものと推測される。
【0006】
特許文献5には「フッ素化合物と、水溶性有機溶剤と、水と、全量に対して0.1〜20重量%の二座配位子とを少なくとも含むことを特徴とする」液が提案されているが、明細書中に記載されている二座配位子であるアセチルアセトンを添加した薬液でも粒状異物の数を減少させることができなかった(比較例6,7参照)。
【0007】
特許文献6には、「防食剤としてキレート化合物を含むフッ素化合物0.001〜0.5重量%およびエーテル溶媒1〜99重量%を含有し、残部が水であるレジスト剥離液組成物」が開示されているが、残渣物除去性あるいは洗浄後の配線上部のバリアメタル上に観察される粒状異物の数の減少等に関する具体的な効果については記載がない。
【0008】
同様に特許文献7には、「防食剤としてキレート化合物を含むフッ素化合物0.5〜10.0重量%およびエーテル系溶剤とアミド系溶剤の混合溶媒1〜99.5重量%を含有し、残部が水からなることを特徴とするレジスト剥離液組成物」等の液が記載されているが、残渣物除去性あるいは洗浄後の配線上部のバリアメタル上に観察される粒状異物の数の減少等に関する具体的な効果についての開示はない。
【0009】
このように、配線上部のバリアメタル上に粒状の異物が付着するのを抑制するレジスト剥離液組成物はいまだ開発されておらず、この課題を解決するレジスト剥離液組成物の開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特開平6−266119号公報
【特許文献2】特開平7−325404号公報
【特許文献3】特開平8−202052号公報
【特許文献4】特開平11−67632号公報
【特許文献5】特開2005−209953号公報
【特許文献6】特開2001−100436号公報
【特許文献7】特開2003−122028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子の配線工程におけるドライエッチングおよびアッシング後に残存する金属配線パターン側壁や該パターン上部のバリアメタル上の残渣を低温、短時間で完全に除去でき、配線上部のバリアメタル上に粒状の異物が付着するのを抑制するレジスト剥離液組成物およびそれを用いた半導体素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記問題点を解決すべく鋭意検討を行い、半導体素子製造工程において、ドライエッチング、およびアッシング後に残存する残渣を剥離する際、フッ素化合物と1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピリジン、3,5−ジメチルピラゾール、ニトリロ三酢酸、プロピオン酸、および酢酸から選択される1種以上の水溶性化合物を含有することを特徴とするレジスト剥離液組成物で洗浄する(接触処理する)ことによりドライエッチングおよびアッシング後に残存する金属配線パターン側壁や該パターン上部のバリアメタル上の残渣を、配線材料等を腐食することなく低温、短時間で完全に除去でき且つ洗浄後の配線上部のバリアメタル上に観察される粒状の異物が従来の剥離液よりも著しく少ない、あるいは異物が観察されないことを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.フッ素化合物と、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピリジン、3,5−ジメチルピラゾール、ニトリロ三酢酸、プロピオン酸、および酢酸から選択される1種以上の水溶性化合物を含有することを特徴とするレジスト剥離液組成物。
2.フッ素化合物と、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、およびピリジンから選択される1種以上の水溶性化合物を含有することを特徴とするレジスト剥離液組成物。
3.フッ素化合物がフッ化アンモニウムおよび/またはフッ化テトラメチルアンモニウムである第1項または第2項記載のレジスト剥離液組成物。
4.フッ素化合物の濃度が0.001〜10.0重量%であり、水溶性化合物の濃度範囲が0.005重量%〜5重量%である第1項または第2項記載のレジスト剥離液組成物。
5.半導体素子製造工程において基板にSiOxからなる酸化膜を形成し、次にTiN/Tiからなるバリアメタル層を形成し、その上に配線としてAl‐Cu又はAl‐Si‐CuからなるAl合金層を形成し、TiN/Tiからなるバリアメタル層を積層し、さらにレジストを塗布後、露光、現像によりパタ−ンを形成した半導体素子をドライエッチングし、続いてアッシングを行い、配線側壁およびバリアメタル上に残存する残渣を剥離する際、フッ素化合物と1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピリジン、3,5−ジメチルピラゾール、ニトリロ三酢酸、プロピオン酸、および酢酸から選択される1種以上の水溶性化合物を含有するレジスト剥離液組成物を用いて剥離洗浄することを特徴とする半導体素子の製造方法。
6.フッ素化合物がフッ化アンモニウムおよび/またはフッ化テトラメチルアンモニウムである第5項記載の半導体素子の製造方法。
7.フッ素化合物の濃度が0.001〜10.0重量%であり、水溶性化合物の濃度範囲が0.005重量%〜5重量%である第5項記載の半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレジスト剥離液組成物は、ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子の配線工程におけるドライエッチングおよびアッシング後に残存する金属配線パターン側壁やパターン上部のバリアメタル上の残渣を低温、短時間で完全に除去でき、洗浄後の配線上部のバリアメタル上に観察される粒状の異物が従来の剥離液よりも著しく少ない、あるいは異物が観察されず、半導体素子の製造における製品歩留まりの向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に使用されるフッ素化合物は、アンモニウム、有機アミンまたは有機アンモニウムのフッ化物塩、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化水素酸、酸性フッ化アンモニウム、ホウフッ化アンモニウム、メチルアミンフッ化水素塩、エチルアミンフッ化水素塩、プロピルアミンフッ化水素塩、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、エタノールアミンフッ化水素塩、メチルエタノールアミンフッ化水素塩、ジメチルエタノールアミンフッ化水素塩、ヒドロキシルアミンフッ化水素塩、ジメチルヒドロキシルアミンフッ化水素塩、トリエチレンジアミンフッ化水素塩等が挙げられる。これらのフッ素化合物の中で好ましくは、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウムであり、より好ましくはフッ化アンモニウムである。これらの塩は単独、もしくは混合しても何ら支障はない。フッ素化合物は、全溶液中0.001〜10.0重量%の濃度範囲で使用され、好ましくは0.01〜3重量%で、特に0.1〜1重量%が好ましい。フッ素化合物の濃度が10.0重量%より高い場合には、沈殿物が析出しやすく、少なすぎると残渣の剥離速度が遅く好ましくない。
【0015】
本発明における異物の発生を抑制する水溶性化合物は、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピリジン、3,5−ジメチルピラゾール、ニトリロ三酢酸、プロピオン酸、および酢酸の群から選ばれる少なくとも一つの化合物を含有することが望ましく、複数の化合物を含有してもよい。さらに好ましくは、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾールおよびピリジンであり、特に好ましくは、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、およびピリジンである。これらの水溶性化合物の濃度は0.005重量%〜5重量%であり、更に好ましくは、0.01重量%〜4重量%で、特に0.05重量%〜3重量%が好ましい。0.005重量%未満では異物の発生を抑制する効果が十分ではなく、5重量%より多量であると残渣の除去性低下や材料腐食性の増大が起こる可能性があり望ましくない。
【0016】
本願発明ではさらに有機溶剤を加えることができ、例えばγ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類であり、レジスト剥離液組成物中1〜 99重量%の濃度範囲で使用されるが、好ましくは10〜99重量%で、特に好ましくは30〜99重量%である。また、上記有機溶剤各種を2種以上混合して用いても何ら差しつかえはない。
【0017】
本発明に用いられる水の濃度は制限が無く、フッ素化合物、水溶性化合物および有機溶剤の濃度を勘案して添加すればよい。
【0018】
本発明のレジスト剥離液組成物は、半導体素子製造における基板上のレジストをマスクとし導電性金属膜や絶縁膜をドライエッチングし、プラズマによるアッシングを行った後に残存する残渣を剥離するのに好適に使用される。本発明のレジスト剥離液組成物を使用して残渣を剥離する際の温度は0℃〜50℃であり、より好ましくは10℃〜40℃であり、さらに好ましくは15℃〜35℃である。
【0019】
さらに、本発明に使用されるリンス液は、純水のみによるリンスで何ら問題はないが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、グリコールエーテル、エタノールアミンなどの水溶性有機溶剤を使用することもできる。また上記の水溶性有機溶剤と純水との混合物をリンス液として使用することも何ら問題ない。
【0020】
本発明のレジスト剥離液組成物にカチオン系、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤を添加することは、何ら差し支えなく、好適に使用される。
【0021】
また、本発明のレジスト剥離液組成物に、糖類、糖アルコール、ポリフェノール類等の無機質基体の腐食防止剤を添加してもよい。
【0022】
本発明の半導体素子に使用される材料は、基板としてのシリコン、a−シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜およびLCDのガラス基板、導電材料および半導体配線材料としてアルミニウム、アルミニウム合金(Al−Cu,Al−Si−Cu等)、銅、銅合金、チタン、チタン−タングステン、窒化チタン、タングステン、タンタル、タンタル酸化物、タンタル合金、クロム、クロム酸化物、クロム合金、ITO(インジウム、錫酸化物)等であり、あるいはガリウム−砒素、ガリウム−リン、インジウム−リン等の化合物半導体が挙げられる。
【実施例】
【0023】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
実施例1〜8、比較例1〜9
図1に剥離対象であるアルミニウム合金の金属配線回路素子の断面図を示す。シリコン基板1にSiOxからなる下地酸化膜2を形成し、次にTiN/Tiからなるバリアメタル層3を形成し、その上に配線としてAl‐CuからなるAl合金層4を形成し、TiN/Tiからなるバリアメタル層5を積層し、その後フォトレジストを塗布した後、露光、現像を行い、該フォトレジスト層をマスクとしてドライエッチングを行いAl合金配線体6を形成し、さらにプラズマガスによりフォトレジスト層をアッシング除去した。配線側壁および上部には残渣7が残存している。
【0024】
フッ化アンモニウム0.9重量%、N,N‐ジメチルアセトアミド57重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10重量%、と表1記載に示した各種添加剤および残部水を加え、レジスト剥離液とした。比較例1では添加剤無し、実施例1〜8と比較例2〜9では所望の添加剤を加えた。ここで用いた試薬は全て試薬特級を用いた。
図1の評価用サンプルウェハを表1の実施例、比較例の調合薬液に25℃にて3分間浸漬し、その後、超純水でリンスを行い、窒素ガスを吹き付けて乾燥した。処理後に配線上部のバリアメタル上に観察される粒状異物の数、処理後の配線側壁および上部に残存する残渣の剥離性、および材質腐食性について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。SEMは日立高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いた。その結果を併せて表1に記載した。

<配線上部の異物の粒状異物の発生の判定基準>
配線パターン中の特定の形状の部分を、SEMにて2万倍に拡大して観察した際に配線上部のバリアメタル上に観察される粒状の異物の数によって判定した。観察した配線上部のバリアメタル層の面積は8μmであった。
◎:0個〜4個の異物が観察された。
○:5個〜19個の異物が観察された。
×:20個〜44個の異物が観察された。
××:45個以上の異物が観察された。
<残渣の剥離性の判定基準>
○:良好
×:剥離できていなかった
<材質腐食性の判定基準>
○:良好
×:腐食し、形状が変化していた
<総合評価の判定基準>
○:全て◎もしくは○のもの
△:×を1項目含むもの
×:×を2項目以上含むもの
添加物を含まない比較例1の薬液に浸漬したサンプルをSEM観察すると、配線側壁および上部の残渣は剥離されていたが、配線上部のバリアメタル上に残渣とは異なる粒状の異物(図2の8)が付着していた。表1の結果より、実施例1〜8に示す化合物を添加した場合、残渣はすべて剥離され粒状の異物の数は比較例1よりも減少した。比較例2〜9に示す化合物を添加した場合は、粒状異物の発生抑制効果が無い又は悪化する、あるいは残渣剥離性が低下した。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例9〜10、比較例10〜16
図1に剥離対象であるアルミニウム合金回路素子の断面図を示す。図1に示すように、シリコン基板1にSiOxからなる下地酸化膜2を形成し、次にTiN/Tiからなるバリアメタル層3を形成し、その上に配線としてAl‐Si‐CuからなるAl合金層4を形成し、TiN/Tiからなるバリアメタル層5を積層し、その後フォトレジストを塗布した後、露光、現像を行い、該フォトレジスト層をマスクとしてドライエッチングを行い、Al合金配線体6を形成し、さらにプラズマガスによりフォトレジスト層をアッシング除去した。配線側壁および上部には残渣7が残存している。
フッ化アンモニウム0.8重量%、N,N‐ジメチルアセトアミド68重量%、と表2記載に示した各種添加剤および残部水を加え、レジスト剥離液とした。比較例10では添加剤無し、実施例9〜10と比較例11〜16では所望の添加剤を加えた。ここで用いた試薬は全て試薬特級を用いた。
図1の評価用サンプルウェハを表2の実施例、比較例の調合薬液に25℃にて2分間浸漬し、その後、超純水でリンスを行い、窒素ガスを吹き付けて乾燥した。処理後に配線上部のバリアメタル上に観察される粒状異物の数、処理後の配線側壁および上部に残存する残渣の剥離性、および材質腐食性について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。SEMは日立高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いた。その結果を併せて表2に記載した。
<配線上部の異物の粒状異物の発生の判定基準>
配線パターン中の特定の形状の部分を、SEMにて3万倍に拡大して観察した際に配線上部のバリアメタル上に観察される粒状の異物の数によって判定した。観察した配線上部のバリアメタル層の面積は10μmであった。
◎:0個〜4個の異物が観察された。
○:5個〜14個の異物が観察された。
×:15個〜34個の異物が観察された。
××:35個以上の異物が観察された。
<残渣の剥離性の判定基準>
○:良好
×:剥離できていなかった
<材質腐食性の判定基準>
○:良好
×:腐食し、形状が変化していた
<総合評価の判定基準>
○:全て◎もしくは○のもの
△:×を1項目含むもの
×:×を2項目以上含むもの
添加物を含まない比較例10の薬液で洗浄処理したサンプルをSEM観察すると、配線側壁および上部の残渣は剥離されていたが、配線上部のバリアメタル上に残渣とは異なる粒状の異物(図2の8)が付着していた。表2の結果より、実施例9〜10に示す化合物を添加した場合、残渣はすべて剥離され粒状の異物の数は比較例10よりも減少した。比較例11〜16に示す化合物を添加した場合は、粒状異物の発生抑制効果が無い又は悪化する、あるいは残渣剥離性が低下した。
【0027】
【表2】

【0028】
実施例11〜14、比較例17
図1に剥離対象であるアルミニウム合金回路素子の断面図を示す。図1に示すように、シリコン基板1にSiOxからなる下地酸化膜2を形成し、次にTiN/Tiからなるバリアメタル層3を形成し、その上に配線としてAl‐CuからなるAl合金層4を形成し、TiN/Tiからなるバリアメタル層5を積層し、その後フォトレジストを塗布した後、露光、現像を行い、該フォトレジスト層をマスクとしてドライエッチングを行い、Al合金配線体6を形成し、さらにプラズマガスによりフォトレジスト層をアッシング除去した。配線側壁および上部には残渣7が残存している。
フッ化アンモニウム0.85重量%、N,N−ジメチルアセトアミド50重量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル15重量%、と表3記載に示した各種添加剤および残部水を加え、レジスト剥離液とした。比較例17では添加剤無し、実施例11〜14では所望の添加剤を所望の濃度加えた。ここで用いた試薬は全て試薬特級を用いた。
図1の評価用サンプルウェハを表3の実施例、比較例の調合薬液に30℃にて2分間浸漬し、その後、超純水でリンスを行い、窒素ガスを吹き付けて乾燥した。処理後に配線上部のバリアメタル上に観察される粒状異物の数、処理後の配線側壁および上部に残存する残渣の剥離性、および材質腐食性について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。SEMは日立高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いた。その結果を併せて表3に記載した。
<配線上部の異物の粒状異物の発生の判定基準>
配線パターン中の特定の形状の部分を、SEMにて2万倍に拡大して観察した際に配線上部のバリアメタル上に観察される粒状の異物の数によって判定した。観察した配線上部のバリアメタル層の面積は18μmであった。
◎:0個〜14個の異物が観察された。
○:15個〜44個の異物が観察された。
×:45個〜104個の異物が観察された。
××:105個以上の異物が観察された。
<残渣の剥離性の判定基準>
○:良好
×:剥離できていなかった
<材質腐食性の判定基準>
○:良好
×:腐食し、形状が変化していた
<総合評価の判定基準>
○:全て◎もしくは○のもの
△:×を1項目含むもの
×:×を2項目以上含むもの
添加物を含まない比較例17の薬液で洗浄処理したサンプルをSEM観察すると、配線側壁および上部の残渣は剥離されていたが、配線上部のバリアメタル上に残渣とは異なる粒状の異物(図2の8)が付着していた。表3の結果より、実施例11〜14に示す化合物を所望の濃度添加した場合、残渣はすべて剥離され粒状の異物の数は比較例17よりも減少した。
【0029】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0030】
図1に剥離対象であるアルミニウム合金回路素子の断面図を示す。図1に示すように、シリコン基板1にSiOxからなる下地酸化膜2を形成し、次にTiN/Tiからなるバリアメタル層3を形成し、その上に配線としてAl‐Cu又はAl‐Si‐CuからなるAl合金層4を形成し、TiN/Tiからなるバリアメタル層5を積層し、その後フォトレジストを塗布した後、露光、現像を行い、該フォトレジスト層をマスクとしてドライエッチングを行いAl合金配線体6を形成し、さらにプラズマガスによりフォトレジスト層をアッシング除去した。配線側壁および上部には残渣7が残存している。
【図1】ドライエッチングおよびアッシング後の基板
【図2】洗浄後の基板
【符号の説明】
【0031】
1.・・・シリコン基板
2.・・・SiOx酸化膜
3.・・・TiN/Tiバリアメタル層
4.・・・Al合金層
5.・・・TiN/Tiバリアメタル層
6.・・・Al合金配線体
7.・・・残渣
8.・・・バリアメタル上の粒状の異物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化合物と、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピリジン、3,5−ジメチルピラゾール、ニトリロ三酢酸、プロピオン酸、および酢酸から選択される1種以上の水溶性化合物を含有することを特徴とするレジスト剥離液組成物。
【請求項2】
フッ素化合物と、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、およびピリジンから選択される1種以上の水溶性化合物を含有することを特徴とするレジスト剥離液組成物。
【請求項3】
フッ素化合物がフッ化アンモニウムおよび/またはフッ化テトラメチルアンモニウムである請求項1または2記載のレジスト剥離液組成物。
【請求項4】
フッ素化合物の濃度が0.001〜10.0重量%であり、水溶性化合物の濃度範囲が0.005重量%〜5重量%である請求項1または2記載のレジスト剥離液組成物。
【請求項5】
半導体素子製造工程において基板にSiOxからなる酸化膜を形成し、次にTiN/Tiからなるバリアメタル層を形成し、その上に配線としてAl‐Cu又はAl‐Si‐CuからなるAl合金層を形成し、TiN/Tiからなるバリアメタル層を積層し、さらにレジストを塗布後、露光、現像によりパタ−ンを形成した半導体素子をドライエッチングし、続いてアッシングを行い、配線側壁およびバリアメタル上に残存する残渣を剥離する際、フッ素化合物と1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン無水物、2,2’−ビピリジン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピリジン、3,5−ジメチルピラゾール、ニトリロ三酢酸、プロピオン酸、および酢酸から選択される1種以上の水溶性化合物を含有するレジスト剥離液組成物を用いて剥離洗浄することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項6】
フッ素化合物がフッ化アンモニウムおよび/またはフッ化テトラメチルアンモニウムである請求項5記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
フッ素化合物の濃度が0.001〜10.0重量%であり、水溶性化合物の濃度範囲が0.005重量%〜5重量%である請求項5記載の半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−19978(P2010−19978A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178955(P2008−178955)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】