説明

下地材及び多層レジストパターン形成方法

【課題】例えばKrF、ArF等のエキシマレーザーなどの短波長の露光光の反射率が低く、酸素プラズマ等のリアクティブイオンによるエッチングに対するエッチング耐性にも優れる下層膜を形成するための下地材、及び該下地材を用いた多層レジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】第1の発明は、基板とホトレジスト層との間に下層膜を形成するための下地材であって、オキソシクロアルキル基を2つ以上有する化合物(a)と、フェノール類(f)との重縮合反応によって得られる樹脂(A1)を含有することを特徴とする下地材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や液晶表示素子の製造プロセス等において、基板とホトレジスト層との間に下層膜を形成するために用いられる下地材、及び多層レジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイス分野においては、デバイスの高集積化や微細化に伴い、露光光の短波長化が進んでいる。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザー(248nm)が導入され、さらに、液浸プロセス又は通常(ドライ)プロセスのArFエキシマレーザー(193nm)が導入されている。また、それより短波長のEUV(極紫外線)、電子線、X線などについても検討が行われている。
このような短波長の露光光を用いた場合、露光時に基板から反射する反射光が大きくなる。そのため、基板からの反射によって生じる定在波や乱反射の影響により、レジストパターンに局所的な歪み、例えばレジストパターン側壁のスタンディングウェーブ(SW)が生じたり、寸法精度の劣化が生じるなどの問題があった。
このような問題を抑制する方法の1つとして、基板とホトレジスト層との間に、反射防止能を有する下層膜(反射防止膜)を介在させるBARC(Bottom Anti-Reflective Coating)法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
反射防止膜の用途において、下層膜を形成するための下地材としては、一般に、被膜形成用樹脂、反射光を吸光するための吸光性物質、それらを熱架橋するための架橋剤等を含有する組成物が用いられている。現在、例えばKrFやArF等のエキシマレーザー光を照射光として用いる場合の被膜形成用樹脂としては、主にアクリル樹脂が用いられている。
【0003】
また、露光装置の面からも、解像度のさらなる向上のためにレンズの開口数(NA)を大きくすることも行なわれている。しかしながら、NAと焦点深度幅はトレードオフの関係に有り、NAが大きくなると、焦点深度幅が小さくなってしまう。例えば基板表面に微細な歪みや凹凸があるなどしてホトレジスト層に歪みや膜厚の差がある場合にNAを大きくした露光機を用いると、焦点深度幅が小さくなることにより、微細なパターンを正確に形成することが困難になる。
これに対し、基板とホトレジスト層との間に下層膜(平坦化膜)を設け、レジスト塗布面を平坦化することにより、平坦で均一な厚さのホトレジスト層を形成することが行われている(例えば、特許文献2参照)。このような平坦化技術により、NAを大きくしてさらに微細なパターンを形成可能となる。
平坦化の用途において、下地材には、基板表面の微細な歪みや凹凸の埋め込みが可能な埋め込み性が必要とされる。現在、平坦化用途における下地材の被膜形成用樹脂としては、主に、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂が用いられている。
【0004】
一方、高アスペクト比のパターンを形成する手段として、基板上に下地材を塗布し、これを加熱して成膜することにより下層膜を設け、その上にシリカ系の無機膜からなる中間膜(ハードマスクと言われる)を設けたのち、さらにその上にホトレジスト膜を設け、通常のホトリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして中間膜をエッチングすることでパターンを転写し、次いでパターン化された中間膜をマスクとして下層膜を酸素プラズマエッチングし、基板上にパターン形成を行う3層レジスト法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、3層レジスト法よりも工程数が少ない点で優れた2層レジスト法も提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。2層レジスト法では、基板上に、3層レジスト法と同様にして下層膜を設けた後、その上層にシリコン含有ポリマーを含有するホトレジスト膜を設け、通常のホトリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして酸素プラズマによるエッチングを行い、下層膜にレジストパターンを転写する。そして、そのレジストパターンをマスクとしてフッ化炭素系ガス等によるエッチングを行い、基板上にパターンを形成する。
3層レジスト法、2層レジスト法等の多層プロセス用途において、下地材には、下層膜に形成されるパターンの形状を良好にするために、エッチレートが速すぎないこと、すなわちある程度の酸素エッチング耐性が必要とされる。現在、多層プロセス用途に用いられる下地材の被膜形成用樹脂としては、酸素エッチング耐性が良好であることから、主にノボラック型のフェノール樹脂が用いられている。
【特許文献1】特開平10−228113号公報
【特許文献2】特開平6−35201号公報
【特許文献3】特開2001−51422号公報
【特許文献4】特開昭61−239243号公報
【特許文献5】特開昭62−25744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ノボラック型のフェノール樹脂は、KrF、ArF等のエキシマレーザー光などの短波長の露光光の反射率が高い。そのため、該樹脂を用いた下層膜は、例えばKrF、ArF等のエキシマレーザー光による露光を行った場合に、定在波等の影響を充分に防止できない。そのため、該下層膜上に形成されたホトレジスト膜にレジストパターンを形成した際、当該レジストパターン側壁にSWが生じるなどの問題がある。
一方、反射防止や平坦化の用途において下地材に用いられているアクリル樹脂は、酸素エッチング耐性が低く、上述のような多層プロセス用途に用いることができない。
【0006】
よって、本発明は、例えばKrF、ArF等のエキシマレーザーなどの短波長の露光光の反射率が低く、酸素プラズマ等のリアクティブイオンによるエッチングに対するエッチング耐性にも優れる下層膜を形成するための下地材、及び該下地材を用いた多層レジストパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
第1の発明は、基板とホトレジスト層との間に下層膜を形成するための下地材であって、オキソシクロアルキル基を2つ以上有する化合物(a)と、フェノール類との重縮合反応によって得られる樹脂(A1)を含有することを特徴とする下地材である。
第2の発明は、基板上に、本発明の下地材を塗布して加熱することにより下層膜を形成し、該下層膜上に、少なくとも1層のホトレジスト層を形成した後、該ホトレジスト層を選択的に露光し、アルカリ現像して前記ホトレジスト層にレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして前記下層膜をエッチングし、前記下層膜にレジストパターンを転写することを特徴とする多層レジストパターン形成方法である。
第3の発明は、基板上に、本発明の下地材を塗布して加熱することにより下層膜を形成し、該下層膜上に、シリコン系の中間膜を形成し、この中間膜上に少なくとも1層のホトレジスト層を形成した後、該ホトレジスト層を選択的に露光し、アルカリ現像して前記ホトレジスト層にレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして前記中間膜をエッチングし、次いでパターン化された中間膜をマスクとして前記下層膜をエッチングし、前記下層膜にレジストパターンを転写することを特徴とする多層レジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、例えばKrF、ArF等のエキシマレーザーなどの短波長の露光光の反射率が低く、酸素プラズマ等リアクティブイオンによるエッチングに対するエッチング耐性にも優れる下層膜を形成するための下地材、及び該下地材を用いた多層レジストパターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[下地材]
本発明の下地材は、基板とホトレジスト層との間に下層膜を形成するための下地材であって、オキソシクロアルキル基を2つ以上有する化合物(a)と、フェノール類[以下、フェノール類(f)という]との重縮合反応によって得られる樹脂(A1)を含有することを特徴とする。
【0010】
樹脂(A1)
・オキソシクロアルキル基を2つ以上有する化合物(a)
化合物(a)において、オキソシクロアルキル基は2つ以上、実質的には6つ以下存在する。好ましくは2つ以上4つ以下、特に好ましくは2つである。オキソシクロアルキル基が2つ以上存在することにより、上述の様なKrF、ArFエキシマレーザー等の短波長の光に対する透明性を向上させることができると推測される。また、環状構造により、エッチング耐性が向上すると推測される。さらに、化合物(a)のオキソシクロアルキル基がフェノール類[以下、フェノール類(f)という]と反応することにより、樹脂(A1)中に網目状の構造を形成することから、エッチング耐性が向上するものと推測される。
【0011】
オキソシクロアルキル基はO=R’(R’はシクロアルキル基)で表される。シクロアルキル基R’の基本環(置換基を除いた環)の炭素数は、例えば3〜15、好ましくは5〜10であり、最も好ましくは6である。R’は多環式基でも単環式基でもよいが、単環式基であることが好ましい。また、R’は直鎖状または分岐鎖状のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0012】
そして、化合物(a)は、2つ以上のオキソシクロアルキル基が、単結合や2価以上の炭化水素基(好ましくは、飽和で、炭素数5以下の直鎖状または分岐鎖状の低級炭化水素基)を介して結合した構造であることが好ましい。
【0013】
さらに、化合物(a)としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0014】
【化1】

(式中、Rは単結合またはアルキレン基である。)
【0015】
前記一般式(I)において、Rは好ましくはアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数5以下の低級アルキレン基であることが好ましい。
そして、最も好ましくは、以下の化学式で表される2、2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパンである。
【0016】
【化2】

【0017】
・フェノール類(f)
ここで「フェノール類」とは、フェノール性水酸基を有する低分子又は高分子化合物を意味する。
具体的には例えばノボラック樹脂で用いられるフェノール類(f1)を挙げることができる。
フェノール類(f1)としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等の低分子化合物が挙げられる。
【0018】
また、フェノール類(f)としては、上述のフェノール類(f1)の他、特にポリブタジエンフェノール変性物のような高分子化合物が好ましい。
ポリブタジエンフェノール変性物とは、ポリブタジエンと、ポリブタジエンが付加していないフェノール類(f2)との反応生成物であり、より好ましくはポリブタジエンにフェノール類(f2)を付加させたフェノール化ブタジエン化合物である。フェノール化ブタジエン化合物は、例えば特開平5−214072号公報、特許第2808187号公報に開示されている。
ポリブタジエンとフェノール類(f2)とを反応させると、特許第2808187号公報に開示されている様に、ポリブタジエンの分子内環化反応によって単環または多環のシクロアルカン及び/またはポリシクロアルカンが形成し、その環にフェノール類が結合した化合物が得られる。なお、通常、フェノール化ブタジエン化合物は、複数の化合物の混合物として得られる。
フェノール類(f2)としては特に限定するものではないが、例えばフェノール類(f1)として例示したもの等を用いることができ、特にo−クレゾール、フェノール、さらにフェノールが好ましい。
【0019】
ポリブタジエンの数平均分子量は通常300〜3000、好ましくは500〜2000とされる。
ポリブタジエンは公知の方法で製造することができる。
また、ポリブタジエンは、ブタジエンからなる重合体であっても、ブタジエンとその他の成分との共重合体でもよい。共重合体の場合、例えばブタジエンに対して通常3〜40モル%、好ましくは5〜30モル%のイソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン等の共役ジオレフィンを共重合させたもの等を使用することができる。
【0020】
ポリブタジエンにフェノール類(f2)を付加する方法は特に限定されず、例えば特開平5−214072号公報、特開昭61−126162号公報等に記載の方法などを用いることができる。
すなわち、ポリブタジエンに対して、ルイス酸触媒の存在下、上述のフェノール類(f2)を反応させる方法等を用いることができる。
【0021】
フェノール類(f2)の使用量は、ポリブタジエンの二重結合のモル数よりも多いモル数を使用することが好ましく、望ましくは1.2倍モル以上、特に好ましくは1.2〜2倍モルである。
フェノール類(f2)の付加量は、ポリブタジエンの2重結合1モルに対して、0.25〜0.5モルが好ましく、さらに好ましくは0.27〜0.45モルである。
フェノール類(f2)の使用量が1.2倍モル未満の場合には、高分子量化の副反応が生じるので好ましくない。なお、フェノール類(f2)の使用量を多くすることは何ら支障はないが、経済的に得策でないため、2倍モル量以下が好ましい。
【0022】
フェノール類(f)は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0023】
・樹脂(A1)の製造方法
樹脂(A1)は、例えば酸触媒下で、化合物(a)とフェノール類(f)とを、パラトルエンスルホン酸等の触媒下で重縮合反応させる方法により得ることができる。具体的には、この様にして得られる反応液を、例えば常法により精製し、必要に応じて溶媒置換して、目的とする樹脂(A1)が適当な溶剤に溶解した溶液を製造し、これを下地材に用いることが好ましい。
具体的な製造方法例は後述する実施例に示す。実施例に記載の化合物以外のものについても同様の方法で製造することができる。
化合物(a)とフェノール類(f)との比率は、耐エッチング性及び透明性の点から、モル比において、例えば1:2〜1:8、好ましくは1:3〜1:5とされる。
【0024】
樹脂(A1)の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算)は、特に限定されないが、2000〜20000が好ましく、3000〜10000がより好ましい。
樹脂(A1)の分散度(Mw/Mn)は、4以下が好ましく、2.0〜3.5がより好ましい。
樹脂(A1)は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0025】
また、本発明の下地材は、樹脂(A1)以外の樹脂を含んでもよい。ここで、下地材に含まれる樹脂成分全体を樹脂(A)とする。樹脂(A)中、樹脂(A1)の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、もちろん100質量%であってもよい。
【0026】
樹脂(A)において、樹脂(A1)以外に配合可能な樹脂としては、半導体素子や液晶表示素子の製造において、レジスト組成物用等に被膜形成用樹脂として一般的に用いられているものが挙げられる。
例えば、ノボラック型フェノール樹脂(以下、樹脂(A2)という)、(メタ)アクリル系樹脂(以下、樹脂(A3)という)、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体(以下、樹脂(A4)という)等を例示することができる。
これらの中でも、樹脂(A3)を含有することが好ましい。これにより、例えばArFエキシマレーザー光の反射率をさらに低減できる。
なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、「アクリル系樹脂」、「メタクリル系樹脂」の一方あるいは両方を含む意味である。そして、以下に示す「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方あるいは両方を示す意味である。
【0027】
樹脂(A3)
樹脂(A3)としては、下地材用の樹脂として一般的に用いられているものが使用可能であり、例えば、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位と、カルボキシル基を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂を挙げることができる。
エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができる。これらの化合物は単独もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物等を例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は単独もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
特に、側鎖に脂環式部位を有するアクリル樹脂は、アルカリ現像液に対する耐性が良好であることから好ましく用いられる。また、ArFレジスト組成物に用いられている公知の(メタ)アクリル系樹脂を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
樹脂(A3)は1種または2種以上混合して用いることができる。
樹脂(A3)は、Mwが3000〜30000、好ましくは6000〜20000の範囲内のものが好ましい。
【0029】
樹脂(A3)の配合量は、樹脂(A1)100質量%に対し、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは35〜45質量%である。
【0030】
本発明の下地材は、さらに、架橋剤成分(以下、(B)成分という)を含有することが好ましい。このような(B)成分を含有することにより、下層膜の成膜性が向上する。下層膜の成膜性が向上すると、下層膜の上にレジスト組成物を塗布してホトレジスト層を設ける際のインターミキシングの発生が低減される。
【0031】
(B)成分は、特に限定されず、これまでに知られているネガ型レジスト組成物に用いられている架橋剤成分の中から任意に選択して用いることができるが、N位が、架橋形成基であるヒドロキシアルキル基および/または低級アルコキシアルキル基で置換されたグリコールウリルを用いることが好ましい。このような架橋剤は、従来使用されてきたアルコキシメチル化メラミンやアルコキシメチル化尿素に比べ、架橋能力は低いが、このような架橋能力の低さを逆に利用し、オニウム塩とを組み合わせることにより、基板とホトレジスト層との間に下層膜を設ける構成において、ホトレジスト層に形成されるレジストパターンの裾ひき形状、エッジラフネスの低減、T型形状断面等の形状不良を改善することができる。
【0032】
上記グリコールウリルからなる架橋剤は、グリコールウリルとホルマリンを縮合反応させることにより、またこの生成物を低級アルコールと反応させることにより得ることができる。このような架橋剤としては、例えばモノ,ジ,トリ又はテトラヒドロキシメチルグリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラエトキシメチルグリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラプロポキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリ又はテトラブトキシメチル化グリコールウリルなどがある。特には、そのトリ体やテトラ体が好ましく。なお、このような架橋剤は、例えば市販品「Mx270」(三和ケミカル社製)として入手することができる。このものはトリ体、テトラ体がほとんどであり、また、単量体、二量体、三量体の混合物である。
(B)成分は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0033】
この(B)成分は、樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは3〜50質量部、より好ましくは10〜20質量部の割合で配合される。下限値以上であると、架橋形成が進みやすい。上限値以下であると、ArF、KrF等のエキシマレーザー光に対する反射率を充分に低減でき、また、レジスト塗布液の保存安定性や感度の経時的劣化が生じにくい。
【0034】
本発明の下地材は、さらに、ナフトキノンジアジドスルホン酸によりエステル化された分子量200以上のフェノール誘導体(以下、(C)成分という)を含有することが好ましい。このような(C)成分を含有することにより、下層膜の成膜性が向上する。なお、上記フェノール誘導体を得るには、上記スルホン酸として、反応性に優れることからスルホン酸クロライドのようなスルホン酸ハロゲン化物を用いてエステル化するのが好ましい。従って、上記スルホン酸とは、このようなハロンゲン化物のような反応性誘導体も含むものである。
(C)成分を用いることにより成膜性が向上する理由としては、200℃以上の温度での加熱により、(C)成分が樹脂(A)に対し、架橋剤として働くことが考えられる。
また、(C)成分を用いると、一般的に下地材に用いられている架橋剤を用いるよりも、昇華物の発生が少ない。これは、(C)成分が、樹脂(A)との間で架橋を形成しやすく、樹脂(A)中の低核体や、未架橋の(C)成分に由来する昇華物の発生が少ないためと推測される。
【0035】
(C)成分として、より具体的には、例えば特開2002−278062号公報においてポジ型感光性樹脂組成物の感光性成分として提案されている、下記一般式(c−1)、(c−2)、(c−3)で表される化合物を挙げることができる。これらの化合物は、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。
【0036】
【化3】

[式中、D、D、D、Dは、その中の少なくとも1個がナフトキノン−1,2−ジアジドスルホニル基、残りは水素原子であり;l、m、nは0〜3の整数である]
【0037】
【化4】

[式中、D、D、D、l、m、nは上述の通りである]
【0038】
【化5】

[式中、D、Dは、その中の少なくとも1個がナフトキノン−1,2−ジアジドスルホニル基、残りは水素原子である]
【0039】
特に、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ヒドロキシフェニルメタンと、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドとのエステル化反応生成物は、優れた成膜性改善効果を有している。
【0040】
(C)成分の配合量は、樹脂(A)100%に対して、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。
【0041】
本発明の下地材は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂(A)等に対して混和性のある添加剤、例えば、塗布性の向上やストリエーション防止のための界面活性剤や、露光光に対して吸収を有し、基板からの反射によって生じる定在波や乱反射を防止しうる吸光性物質、下層膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、熱酸発生剤などを含有しても良い。
【0042】
界面活性剤としては、XR−104(大日本インキ社製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
吸光性物質としては、これまで、下地材や反射防止膜の成分として用いられているものの中から任意に選んで使用することができる。これらの吸光性物質は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、下記式(1)で表される熱酸発生剤は架橋促進剤として好ましく用いられる。
【0044】
【化6】

【0045】
本発明の下地材は、前述の樹脂(A1)を含む樹脂(A)、及び(B)成分等の任意の成分を適当な溶剤に溶解して溶液の形で用いるのが好ましい。
このような溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、1,1,1−トリメチルアセトンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール又はジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環状エーテル類や、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
下地材の溶液の固形分濃度は、例えば5〜30重量%、好ましくは10〜25重量% とすることが好ましい。
【0047】
[レジストパターン形成方法]
下層膜
本発明の下地材は、基板とホトレジスト層との間に下層膜を形成するために用いられる。
樹脂(A)として樹脂(A1)を含有する本発明の下地材を用いることにより、下記のように優れた光学特性を有する下層膜が得られる。
例えばArFエキシマレーザー(193nm)に対して、屈折率(n値)が1.5〜2.0、より好ましくは1.6〜1.8、消衰係数(k値)が0.25〜0.8、より好ましくは0.4〜0.6、反射率が1%以下の下層膜が得られる。
特に、樹脂(A)が、樹脂(A1)とともに、さらに樹脂(A3)を含有すると、ArFエキシマレーザーに対して、屈折率(n値)が1.6〜1.8、消衰係数(k値)が0.4〜0.6、反射率が1%以下の下層膜が得られる。
【0048】
下層膜の厚さは、反射防止膜として用いる場合は、好ましくは30〜500nm、より好ましくは50〜250nmであり、平坦化膜として用いる場合は、好ましくは100〜1000nm、より好ましくは200〜600nmであり、多層プロセスに用いる場合は、好ましくは200nm以上である。
【0049】
下層膜は、例えば後述するように、基板上に、本発明の下地材を上述したような溶剤に溶解して調製した下地材溶液を塗布することにより形成できる。
【0050】
ホトレジスト層
下層膜上に形成されるホトレジスト層を形成するために用いられるレジスト組成物としては、特に制限はない。本発明の下地材は、ネガ型、ポジ型を問わずどのようなレジスト組成物に対しても利用することができ、露光光源に応じ、市販のレジスト組成物を選択して用いることができる。
例えば、ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含有する非化学増幅型のポジ型レジスト組成物や、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分及び露光により酸を発生する酸発生剤成分を含む化学増幅型レジスト組成物などが挙げられる。
【0051】
特に、KrFやArFエキシマレーザーや、それよりも短波長の光源を用いる場合には、微細解像性に優れることから、化学増幅型レジスト組成物が好ましく用いられる。
化学増幅型レジスト組成物には、酸発生剤と、酸解離性溶解抑制基を有し、酸によりアルカリ溶解性が増大するアルカリ不溶性樹脂とを含有するポジ型のものと、酸発生剤、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂とを含有するネガ型のものとがある。
ポジ型の場合、レジストパターン形成時に露光により酸発生剤から酸が発生すると、かかる酸が酸解離性溶解抑制基を解離させることによりアルカリ可溶性となる。一方、ネガ型の場合、露光により酸が発生すると、かかる酸が作用して、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤との間で架橋が起こりアルカリ不溶性となる。
【0052】
KrF用の化学増幅型レジスト組成物としては、t−ブトキシカルボニル基等の溶解抑制基を有するポリヒドロキシスチレン等を含有するものが知られている。
ArF用の化学増幅型レジスト組成物としては、メタクリル樹脂の側鎖にアダマンチル基等の脂肪族多環式基を導入したり、主鎖にノルボルニル基などの脂肪族多環式基を含む樹脂等を含有するものが知られている。
【0053】
また、2層レジスト法や3層レジスト法等の多層プロセスを行う場合は、例えば特許文献4,5等に記載されるようなシリコン含有ポリマーを含有する化学増幅型レジストを用いることが好ましい。なお、下地材とレジスト層との間に、シリカ系の無機膜からなる中間膜(ハードマスク)を設ける3層レジスト法を行う場合には、シリコン含有ポリマーを含有するものに限定されず、上述したArF用あるいはKrF用等の化学増幅型レジスト組成物等の任意のレジスト組成物が使用可能である。
【0054】
上述した本発明の下地材を用いることにより、例えばKrF、ArF等のエキシマレーザーなどの短波長の露光光の反射率が低い下層膜を形成できる。特に本発明はArF等のエキシマレーザーに対して有効である。
また、酸素プラズマに対する適度なエッチング耐性、すなわち酸素プラズマによるエッチングに対する適度なエッチレートを有している。
さらに、本発明の下地材は、上述したような、2層レジスト法や3層レジスト法のような多層プロセスに用いた場合に、下層膜上に形成されるレジスト層とのマッチングが良好であり、ホトレジスト層の現像後に、下層膜上へのホトレジストの残留(スカム)も見られない。また、ホトレジスト層に形成されるレジストパターンの形状も、SWやすそ引き等のない良好なものである。
【0055】
多層レジストパターン形成方法
本発明の多層レジストパターン形成方法は、本発明の下地材を用いて、例えば以下の様にして行うことができる。
まず、シリコンウェーハ等の基板上に、本発明の下地材を上述したような溶剤に溶解して調製した下地材溶液をスピンナーなどにより回転塗布したのち、150℃以上、好ましくは200〜300℃の温度で加熱することによって成膜し、好ましくは150nm以上、より好ましくは250〜500nmの膜厚の下層膜を形成する。
この下層膜は、加熱による成膜(焼成)により、アルカリに対して不溶となる。また、有機溶剤に対する耐性も高まり、下層膜上にレジスト組成物を塗布してホトレジスト層を形成する際にインターミキシングが生じにくくなる。
【0056】
基板としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンや段差が形成されたものなどを例示することができる。
基板材料としては、例えばシリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属や、ガラスなどが挙げられる。
配線パターンの材料としては、例えば珪素、銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金、又はこれらの合金などが使用可能である。
【0057】
次に、下層膜上に、レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベークを40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、ホトレジスト層を形成する。
ホトレジスト層の厚さは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは30〜300nmである。特に、シリコン含有ポリマーを含有する化学増幅型レジストを用いる場合は、好ましくは100〜200nm、より好ましくは130〜170nmである。
2層レジスト法のときは、下層膜上に直接レジスト膜が設ければよいが、3層レジスト法のときは、下層膜上にシリコン系の被膜を介在させてその上にレジスト膜を設けて使用される。
このホトレジスト層に対し、例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を、所望のマスクパターンを介して選択的に露光する。レジスト組成物として化学増幅型レジストを用いる場合は、露光後、PEB(露光後加熱)を、80〜150℃の温度条件下、40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。
【0058】
露光に使用する光源としては、KrF又はArFエキシマレーザー(特にArFエキシマレーザー)に有用であるが、それより長波長のg線やi線、それより短波長のEUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、軟X線などの放射線に対しても有効である。
【0059】
次いで、これをアルカリ現像液、例えば0.05〜10質量%、好ましくは0.05〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このとき、レジストがポジ型であれば露光部分が、ネガ型であれば未露光部分が選択的に溶解除去されて、マスクパターンに忠実なレジストパターンが形成される。このようにして、ホトレジスト層に、マスクパターンに忠実なレジストパターンを形成する。
次に、2層レジスト法のときは、得られたレジストパターンをマスクパターンとして、前記下層膜を、エッチング、好ましくはリアクティブイオンにより、より好ましくは酸素プラズマによりエッチングし、前記下層膜に当該レジストパターンを転写する。3層レジスト法のときは、シリカ系の無機又は有機膜からなる中間膜(ハードマスク)をエッチング可能なフッ化炭素系ガス等でエッチングした後、同様にして前記下層膜を、エッチング、好ましくはリアクティブイオンにより、より好ましくは酸素プラズマによりエッチングし、前記下層膜に当該レジストパターンを転写する。
【0060】
この様な本発明の多層レジストパターン形成方法によれば、形成される下層膜の、KrF、ArF等の短波長の光源(特にArF)に対する反射率が低減されている。そのため、ホトレジスト層に、垂直性の高い、マスクパターンに忠実なレジストパターンを形成することができる。
また、下層膜の、リアクティブイオン、好ましくは酸素プラズマエッチングに対するエッチング耐性が高いので、ホトレジスト層のレジストパターンを下層膜に転写した際、下層膜に形成されるパターンの形状が良好なものとなる。
さらに、下層膜とホトレジスト層とのマッチングが良好で、ホトレジスト層にレジストパターンを形成した際、パターン形状にすそ引き等がなく、現像後に下層膜上に残留するホトレジストの残渣(スカム)も見られない。
なお、本発明の下地材は、このような2層レジスト法、3層レジスト法等のほか、通常の反射防止、平坦化等の用途にも使用可能である。
【実施例】
【0061】
(合成例1:フェノール化ブタジエン化合物の製造)
フェノール1600gとトルエン300gとを、還流冷却器とリービッヒコンデンサー付きの5リットル反応器に仕込み、170℃に加熱することによりトルエン250gを留出し、系内の水分を60ppmとした。次いで、系を80℃まで冷却し、三フッ化ホウ素・フェノール錯体15gを添加したのち、反応温度を80℃に制御しながら、水分が20ppmのポリブタジエン(日本石油化学(株)製、数平均分子量700、商品名「日石ポリブタジエンB−700」)300gを、1.5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後80℃で2.5時間、加熱、撹拌した。
反応終了後、協和化学工業(株)製のマグネシウム化合物商品名「KW−1000」60gを添加し、30分間撹拌して触媒を失活させたのち、セライトを敷き詰めた濾紙を用いて反応液を濾過した。得られた透明な濾液を230℃で減圧蒸留し、共重合物400gを得た。
得られた共重合物は、軟化点が150℃であった。
また、フェノール性水酸基の含有量を無水酢酸でアセチル化後、逆滴定により分析したところ、フェノール性水酸基量は320g/グラム当量であった。
【0062】
(合成例2:樹脂(A1)の製造)
2、2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン[化合物(a)]と、上記合成例1で得られたフェノール化ブタジエン化合物とを、以下の様にして反応させて樹脂(A1)を製造した。
まず、温度計、冷却管、攪拌装置を取り付けた3リットルフラスコに、フェノール化ブタジエン化合物800質量部、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン80質量部、及び溶剤としてブチルセロソルブ800質量部を仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温して、溶解した。
ついで、パラトルエンスルホン酸8質量部を添加し、140℃に昇温し、反応させ、適当な時間毎にサンプリングをし、ゲルろ過クロマトグラフィー(東ソー製)を使用して、サンプル中の2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパンのピークの消失が確認できるまで、重縮合反応を進行させた。
その後、ブチルセロソルブを減圧下で除去し、残った反応生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させた。
ついで、これに純水100gを加え、攪拌し、静置し、分離した水相を除去し、さらに、この操作を3回繰り返すことにより、メチルイソブチルケトン相中の酸成分を除去した。
ついで、このメチルイソブチルケトン相をロタリーエバポレータを用いてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶媒置換し、40質量%の目的物の樹脂溶液を得た。
【0063】
得られた樹脂(A1)の質量平均分子量(Mw)は5,000であった。
樹脂(A1)の分散度(Mw/Mn)は、4.48であった。
【0064】
(実施例1)
下記材料を混合して実施例1の下地材を製造し、下記の評価を行った。
上記合成例2で得られた樹脂(A1)100質量部;
グリコールウリル系架橋剤(製品名:MX270 三和ケミカル社製)20質量部;
前記式(1)で表される熱酸発生剤(製品名:キャタリスト602(三井ハイテック社製))1質量部;
界面活性剤(製品名:XR−104 大日本インキ社製)0.05質量部;
有機溶剤[EL/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=40/60(質量比)の混合溶剤]680質量部;
【0065】
得られた下地材を、8インチのシリコンウェーハ上にスピンナーを用いて塗布し、100℃で90秒間、及び200℃で90秒間の2段階のベーク処理を施して成膜して膜厚300nmの下層膜を形成し、積層体を形成した。
【0066】
得られた積層体について、分光エリプソメーター(製品名:WVASE32、woollam JAPAN社製)を用いて、193nmにおける屈折率n、k値、及び反射率を測定した。
その結果、193nmにおける屈折率nは1.542、k値は0.371、反射率は1.74%であった。
【0067】
次いで、形成した下層膜上に、シリコン含有ポリマーを含有するポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、100℃で90秒間ベーク処理することにより、膜厚150nmのホトレジスト層を形成し、該ホトレジスト層に対し、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製、NA=0.6、2/3Annular)により、ArFエキシマレーザをマスクパターンを介して選択的に照射し、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間現像処理したところ、ホトレジスト層に120nmのラインアンドスペース(L&S)パターンが形成された。
【0068】
得られたパターンを、測長SEM(製品名『S9920』;日立製作所社製)、断面SEM(製品名『S4500』;日立製作所社製)にて観察した。
その結果、L&Sパターンの形状は、SWの発生やすそ引きのない良好なものであった。また、下層膜上に、ホトレジストの残渣(スカム)も見られなかった。
【0069】
次いで、上記L&Sパターンをマスクパターンとして、高真空RIE装置(東京応化工業社製)を用いて、下層膜に対して、酸素と窒素の混合ガスから得られるプラズマによるドライエッチングを行ったところ、下層膜に、垂直性の高いL&Sパターンが形成された。下層膜のエッチレートは、1.00nm/sであった。
【0070】
(実施例2)
樹脂成分を、以下の混合樹脂に変更した以外は、実施例1と同様にして下地材を製造した。
上記合成例2で得られた樹脂(A1)60質量部と、下記化学式で表される構成単位[p:q:r=30/40/30(モル比)]からなる樹脂(A3)(Mw=10000)40質量部との混合樹脂 100質量部;
【0071】
【化7】

【0072】
また、下地膜形成時のベーク処理条件を100℃で90秒間、及び180℃で90秒間の2段階のベーク処理に変更した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
その結果、193nmにおける屈折率nは1.658、k値は0.321、反射率は0.96%であった。
また、L&Sパターンの形状は、SWの発生やすそ引きのない良好なものであった。また、下層膜上に、ホトレジストの残渣(スカム)も見られなかった。
また、下層膜のエッチレートは、1.10nm/sであった。
【0073】
(比較例)
樹脂成分を、以下の混合樹脂に変更した以外は、実施例1と同様にして下地材を製造し、下記の評価を行った。
m−クレゾールとp−クレゾールとの縮合反応により得られるノボラック樹脂(製品名:TBLC−100、東京応化工業(株)製 Mw:10,000)100質量部;
【0074】
また、ベーク処理条件を100℃で90秒間、及び250℃で90秒間の2段階のベーク処理に変更した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
その結果、193nmにおける屈折率nは1.351、k値は0.824、反射率は7.85%であった。
また、L&Sパターンの形状については、SW、スカムは生じていないが裾引きが生じていた。
また、下層膜のエッチレートは、1.18nm/sであった。
【0075】
これらの結果より、本発明に係る実施例では良好な結果が得られることが明らかとなった。そして、特に樹脂(A3)を混合した実施例2では反射率が低く良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とホトレジスト層との間に下層膜を形成するための下地材であって、オキソシクロアルキル基を2つ以上有する化合物(a)と、フェノール類(f)との重縮合反応によって得られる樹脂(A1)を含有することを特徴とする下地材。
【請求項2】
前記化合物(a)が、下記一般式(I)で表される化合物である請求項1に記載の下地材。
【化1】

(式中、Rは単結合またはアルキレン基である。)
【請求項3】
前記化合物(a)が、2、2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパンである請求項2に記載の下地材。
【請求項4】
前記フェノール類(f)が、ポリブタジエンフェノール変性物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の下地材。
【請求項5】
前記ポリブタジエンフェノール変性物が、ポリブタジエンにフェノール類を付加させたフェノール化ブタジエン化合物である請求項4に記載の下地材。
【請求項6】
さらに(メタ)アクリル系樹脂を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の下地材。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の下地材を塗布して加熱することにより下層膜を形成し、該下層膜上に、少なくとも1層のホトレジスト層を形成した後、該ホトレジスト層を選択的に露光し、アルカリ現像して前記ホトレジスト層にレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして前記下層膜をエッチングし、前記下層膜にレジストパターンを転写することを特徴とする多層レジストパターン形成方法。
【請求項8】
基板上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の下地材を塗布して加熱することにより下層膜を形成し、該下層膜上に、シリコン系の中間膜を形成し、この中間膜上に少なくとも1層のホトレジスト層を形成した後、該ホトレジスト層を選択的に露光し、アルカリ現像して前記ホトレジスト層にレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして前記中間膜をエッチングし、次いでパターン化された中間膜をマスクとして前記下層膜をエッチングし、前記下層膜にレジストパターンを転写することを特徴とする多層レジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−128369(P2009−128369A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299526(P2007−299526)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】