説明

中空成形体及びその成形方法

【課題】フランジ部の剛性を高める。
【解決手段】
バンパービーム1は、成形の際内部に加圧オイルを導入することにより加圧膨張した袋状バッグ7と、該バッグ7の外周に配置されたシート状SMC成形材30,32を上記オイルによるバッグ7の膨張圧により成形型35の成形面31a,33aに押圧密着させて角筒状に成形されたバンパービーム本体9と、該バンパービーム本体9から外方へ張り出すフランジ部11とを備えている。上記バンパービーム本体9の端面1aには、該バンパービーム本体9の成形の際、オイルを導入する導入孔13が上記バッグ7の内部に連通するように形成され、上記フランジ部11及び導入孔13周りは、上記バンパービーム本体9の成形の際、該バンパービーム本体9の肉厚よりも厚く成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形体及びその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、成形型に膨張可能なバッグを配置するとともに、該バッグの外周にシート状SMC(Sheet Molding Compound)成形材を配置した状態で、上記バッグの内部に圧力流体を導入して該バッグを加圧膨張させることにより、上記SMC成形材を成形型の成形面に押圧密着させてエアスポイラを成形する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3666808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されたエアスポイラや、同様の方法で成形されるバンパービーム等の中空成形体を車体等の被取付体に取り付ける場合、各々の取付用フランジ部を互いに当接させてボルトにより締結することがしばしば行われる。この場合、フランジ部を上記SMC成形材で構成された本体と一体に形成した場合、フランジ部は金属のものに比べて剛性が低いので取付強度が低くなるという問題が生じる。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フランジ部の剛性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、フランジ部の肉厚を、中空成形体本体よりも厚くしたことを特徴とする。
【0006】
具体的には、本発明は、成形の際内部に圧力流体を導入することにより加圧膨張した袋状バッグと、該バッグの外周に配置されたシート状SMC成形材を上記圧力流体によるバッグの膨張圧により成形型の成形面に押圧密着させて所定形状に成形された中空成形体本体と、該中空成形体本体から外方へ張り出すフランジ部とを備えた中空成形体を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記中空成形体本体の成形の際圧力流体を導入する箇所には、導入孔が上記バッグの内部に連通するように形成され、上記フランジ部は、上記中空成形体本体の成形の際、該中空成形体本体の肉厚よりも厚く成形されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中空成形体において、上記中空成形体本体の導入孔周りは、該中空成形体本体の成形の際、中空成形体本体の他の箇所よりも厚く成形されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の中空成形体において、上記中空成形体本体の導入孔周りには、中空成形体本体とは別体の補強シート材が重合一体化されて当該導入孔周りの全体の肉厚が他の箇所よりも厚くなっていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空成形体において、上記フランジ部は、上記中空成形体本体共通の上記SMC成形材を素材とし、該中空成形体本体と一体に連続して外方へ張り出す張出部に、該張出部とは別体の補強シート材が重合一体化されて構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空成形体において、上記フランジ部又は上記中空成形体本体の導入孔周りは、上記中空成形体本体の素材であるSMC成形材を折り曲げて重合一体化して構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の中空成形体の成形方法であって、膨張可能な袋状バッグの外周にシート状SMC成形材が配置され、上記SMC成形材のフランジ部に対応する部分に該SMC成形材と別体の補強シート材が重なるように上記成形型内に上記バッグ、SMC成形材、及び補強シート材を配置し、次いで、成形型を型閉じした状態で、上記バッグの内部に圧力流体を導入して該バッグを加圧膨張させることにより、上記SMC成形材を成形型の成形面に押圧密着させてバッグの外周に中空成形体本体を所定形状に成形するとともに、上記中空成形体本体と一体に連続して外方へ張り出す張出部に、上記補強シート材を重合一体化してなるフランジ部を形成した中空成形体を得ることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の中空成形体の成形方法であって、膨張可能な袋状バッグの外周にシート状SMC成形材が配置され、上記SMC成形材のフランジ部又は中空成形体本体の導入孔周りに対応する部分が折れ曲がって重なった状態となるように上記成形型内に上記バッグ及びSMC成形材を配置し、次いで、成形型を型閉じした状態で、上記バッグの内部に圧力流体を導入して該バッグを加圧膨張させることにより、上記SMC成形材を成形型の成形面に押圧密着させてバッグの外周に中空成形体本体を所定形状に成形するとともに、上記SMC成形材の折曲げ重合部分を一体化してフランジ部又は中空成形体本体の導入孔周りを形成した中空成形体を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、フランジ部が中空成形体本体よりも厚くて高剛性になっているため、中空成形体の車体等の被取付体への取付時のみならず、フランジ部に被取付体側から荷重がかかった場合にも該フランジ部は破損せず、中空成形体を被取付体に強固に取り付けることができる。また、フランジ部が、中空成形体本体の成形の際、該中空成形体本体の肉厚よりも厚くなるように成形されるので、製造コストを削減できる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、導入孔周りが中空成形体本体の他の箇所よりも厚くて高剛性になっているため、該導入孔周りに荷重がかかった場合、上記導入孔周りが破損しにくい。また、請求項1と同様に、製造コストを削減できる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、補強シート材を金属材等の高剛性材で構成することが可能となり、導入孔周りの剛性をより確実に高めることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、補強シート材を金属材等の高剛性材で構成することが可能となり、フランジ部の剛性をより確実に高めることができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、SMC成形材を折り曲げて重合一体化することによりフランジ部又は導入孔周りが構成されているので、成形時に補強シート材が別途必要なく、その分製造が容易である。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、SMC成形材のフランジ部に対応する部分に補強シート材を重なるように配置して成形を行うだけで、高剛性のフランジ部を確実に成形できる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、SMC成形材のフランジ部又は導入孔周りに対応する部分を折り曲げて重ねて配置して成形を行うだけで、中空成形体本体よりも厚いフランジ部又は導入孔周りを容易・確実に成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る樹脂中空成形体としての角筒状バンパービーム1を車体(図示せず)における2本の角筒状サイドフレーム3の前端に取り付ける直前の状態を示す斜視図である。上記バンパービーム1は、図2に示すように、閉断面矩形状の中空部5を有し、該中空部5を囲む樹脂製の袋状バッグ7と、該バッグ7の外周に配置され、該バッグ7と一体化された中空成形体本体としての樹脂製角筒状バンパービーム本体9と、該バンパービーム本体9の長手方向に沿って延びる一側面(後面)9aの両端から該側面9aの車幅方向(左右方向)外方及び上下方向外方へ張り出す取付用フランジ部11とを備えている。上記バンパービーム本体9は、図2に示すように、断面コ字状のシート状SMC成形材30及び扁平板状のシート状SMC成形材32を素材として一体に形成されている。上記各フランジ部11は、図3及び図4に示すように、上記バンパービーム本体9と一体に連続して車幅方向外方及び上下方向外方へ張り出す張出部11aに、該張出部11aとは別体の補強シート材29が重合一体化されて構成され、これにより、各フランジ部11は、上記バンパービーム本体9の成形の際、該バンパービーム本体9の一般部Wの肉厚よりも厚く成形されている。また、バンパービーム本体9(後述のSMC成形材30)の右側の端面1aには、図3に示すように、成形時に圧力流体としての加圧オイルを導入するための導入孔13が上記バッグ7の内部(中空部5)に連通するように形成され、上記導入孔13周り(端面1a)には、バンパービーム本体9とは別体の矩形状の樹脂製補強シート材15が重合一体化されて、バンパービーム本体9の当該導入孔13周りの全体の肉厚(バンパービーム本体9の肉厚に補強シート材15の肉厚を合わせた肉厚)が該バンパービーム本体9の他の箇所(一般部W)よりも厚くなっている。上記補強シート材15及びSMC成形材30には、上記導入孔13に対応する孔25及び28がそれぞれ形成されている。また、各フランジ部11には、4つのボルト挿通孔11cが形成されている。
【0023】
一方、上記各サイドフレーム3の前端には上下方向に外側に張り出すフレーム側フランジ部4が一体的に形成され、各フレーム側フランジ部4には、ボルト挿通孔4aが2つ形成されている。そして、バンパービーム1のフランジ部11とフレーム側フランジ部4とを合わせてボルト挿通孔11c,4aにボルト(図示せず)を挿通することにより、バンパービーム1をサイドフレーム3に取り付けるようにしている。この場合、一方のサイドフレーム3に4本のボルトが必要である。
【0024】
上記バンパービーム本体9のシート状SMC成形材30及び32は、同種のシート状SMC成形材を素材とし、例えば、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)等の熱硬化性樹脂にカーボンファイバーやガラスファイバーなどの強化繊維が混合されたものによって構成される。したがって、上記張出部11aも上記シート状SMC成形材30及び32と同種の素材で構成される。なお、強化繊維が混合されない熱硬化性樹脂単体や、熱硬化性樹脂単体に強化繊維層を積層して形成したものでもよい。
【0025】
次に、上記のような構成のバンパービーム1の成形方法について説明する。
【0026】
成形に先立ち、膨張可能な袋状バッグ7と該バッグ7に加圧オイルを導入するオイル導入装置17とを用意する。上記バッグ7は、内部に中空部5を有する袋状に形成され、図3に示すように、一端に導入管部19を有している。この導入管部19の反中空部5側端縁には、全周に沿って導入管フランジ部19aが形成されている。上記オイル導入装置17は、ノズル21を備え、該ノズル21には、ジョイント部22を介してオイルパイプ23が接続されている。また、上記オイル導入装置17には、中空部5内にオイルを導入する際に該中空部5内のエアを外部に排出するエアパイプ(図示せず)が備えられている。
【0027】
まず、柔軟なバッグ7の導入管部19を、該導入管部19及び導入管フランジ部19aを縮径させて上記補強シート材15の孔25に挿入する。その後、上記バッグ7の外周面に、上記バンパービーム本体9の側面9aを除く外周面を構成する熱硬化性樹脂製の略矩形シート状SMC成形材30を巻き付けるとともに、該SMC成形材30の孔28に上記バッグ7の導入管部19を、該導入管部19及び導入管フランジ部19aを縮径させて差し込む。そして、上記バッグ7の上記フランジ部11に対応する部分に、上記バンパービーム本体9の側面9aを構成する上記SMC成形材32と別体の矩形状樹脂製補強シート材29を重ね、この状態で、該SMC成形材32でバッグ7の外周面を覆い、プリフォーム体34を構成する。これにより、バッグ7の外周にSMC成形材30,32が配置され、上記SMC成形材32の上記フランジ部11に対応する部分に、補強シート材29が重なっており、上記SMC成形材30の上記導入孔13周りに対応する部分に、補強シート材15が重なった状態となる。
【0028】
その後、上記プリフォーム体34を、第1成形型31の凹状成形面31a上に載置する。そして、バッグ7の導入管部19を、該導入管部19及び導入管フランジ部19aを縮径させて上記第1成形型31の貫通孔31bに上記成形面31a側から差し込む。しかる後、ノズル21を導入管部19に第1成形型31の外側から差し込んで、導入管フランジ部19aを該第1成形型31と上記ジョイント部22により挟持する。この状態で第1成形型31に第2成形型33を被せることにより、成形型35を型閉じする。ここで、該成形型35は、例えば、約110℃〜150℃に設定されている。
【0029】
なお、SMC成形材30,32及び補強シート材15,29を第1成形型31の成形面31a及び第2成形型33の成形面33aにセットした後に、バッグ7の導入管部19及び第1成形型31の貫通孔31bにノズル21が貫通孔31bに差し込まれた状態となるようにバッグ7をセットし、成形型35を型閉じしたとき、SMC成形材30の端面1a及び補強シート材15がバッグ7の導入管部19を包囲するようにしてもよい。このようにした場合、SMC成形材30及び補強シート材15に孔28及び孔25をそれぞれ設ける必要がなくなり、SMC成形材30及び補強シート材15を成形型35にセットすることが容易となる。
【0030】
次いで、上記のように成形型35を型閉じした状態で、上記バッグ7の中空部5に、例えば、約100〜120℃に加熱された加圧オイルをオイルタンク(図示せず)からオイルパイプ23を経て導入して該バッグ7を加圧膨張させることにより、上記SMC成形材30,32を成形型35の成形面31a,33aに押圧密着させる。この際、バッグ7の内部のエアは、オイルの導入に伴って上述のエアパイプを経て外部に排出される。また、導入管部19の導入管フランジ部19aが上記ジョイント部22と第1成形型31とで挟まれた状態となっているので、バッグ7がオイルの圧力により補強シート材15の孔25及び上記SMC成形材30の孔28から抜けることが防止される。SMC成形材30,32が上記オイルによるバッグ7の膨張圧により成形型35の成形面31a,33aに押圧密着すると、SMC成形材30,32及び補強シート材15,29は、成形型35及び加圧オイルの温度により軟化し、バンパービーム本体9が角筒状に成形され、上記バッグ7と一体化するとともに、上記バンパービーム本体9と一体に連続して外方に張り出す張出部11aに、上記補強シート材29を重合一体化してなるフランジ部11を形成したバンパービーム1が得られる。
【0031】
次いで、上記のようにしてバンパービーム1が成形されると、エア供給源(図示せず)からエアが上記エアパイプを経てバッグ7の中空部5に送り込まれ、これに伴い中空部5のオイルがオイルパイプ23を経て排出される。中空部5のオイルが十分に排出されるとエアの供給をストップする。
【0032】
次いで、成形型35を型開きしてオイル導入装置17をバンパービーム1(バッグ7)及び第1成形型31から抜き取った後、バンパービーム1を取り出し、バッグ7のバンパービーム1から突出している部分を切除することにより、バンパービーム1が完成する。
【0033】
なお、上記ボルト挿通孔11cは、第2成形型33の成形面33aに、上記張出部11aと上記補強シート材29との合計の肉厚よりも長いピンを4本設けるとともに、第1成形型31の成形面31aにおける上記各ピンに対向する位置に、上記各ピンの先端が嵌る孔を4つ設けることによって形成できる。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、フランジ部11がバンパービーム本体9よりも厚くて高剛性になっているため、バンパービーム1をサイドフレーム3に強固に取り付けることができるのみならず、フランジ部11に車幅方向、前後方向等から荷重がかかった場合にも該フランジ部11は破損し難い。また、フランジ部11が、バンパービーム本体9の成形の際、該バンパービーム本体9の肉厚よりも厚くなるように成形されるので、製造コストを削減できる。
【0035】
また、上記バンパービーム本体9の導入孔13周りの全体の肉厚が該バンパービーム本体9の他の箇所よりも厚くて高剛性になっているため、該導入孔13周りに荷重がかかった場合、上記導入孔13周りが破損しにくい。
【0036】
また、SMC成形材32の一部に補強シート材29を重なるように配置して成形を行うだけで、高剛性のフランジ部11を確実に成形できる。
【0037】
なお、補強シート材15,29は、SMC成形材30,32と同じ材質あるいは違う材質であってもよいし、樹脂に限らず、金属材で構成してもよい。補強シート材15,29を金属材等の高剛性材で構成することで、フランジ部11、導入孔13周りの剛性をより確実に高めることができる。
【0038】
また、補強シート材15,29を、SMC成形材30,32の内側に配置していたが、外側に配置してもよい。
【0039】
また、バッグ7は、SMC成形材30,32及び補強シート材15,29がバンパービーム1として成形された状態で、バンパービーム本体9の内面に一体化したが、バッグ7が一体化しないように該バッグ7の材質を選定することにより、成形後にバッグ7をバンパービーム(中空成形体)1から除去することも可能である。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2のバンパービーム1は、フランジ部11が、図6に示すように、上記バンパービーム本体9の素材であるSMC成形材37を折り曲げて重合一体化して構成されている点で、実施形態1のバンパービーム1と異なっている。この実施形態2のバンパービーム1を形成する場合、実施形態1のSMC成形材32に代えて、該SMC成形材32の長手方向一端(フランジ部11)にさらに矩形状の折曲部37aを一体に形成したSMC成形材37を用いる。そして、上記バッグ7のフランジ部11に対応する部分に別部材の補強シート材29を重ねることなく、上記折曲部37aを折り曲げて重ねた状態で、上記SMC成形材37で上記バッグ7の外周面を覆う。これにより、バッグ7の外周にSMC成形材30,37が配置され、SMC成形材37の上記フランジ部11に対応する部分が折れ曲がって重なった状態となる。そのほかの形成手順は実施形態1と同じであるので、その詳細な説明を省略する。これにより、上記SMC成形材37の折曲げ重合部分を一体化してフランジ部11を形成したバンパービーム本体9を得ることができる。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、実施形態1の上記効果に加えて、SMC成形材37を折り曲げて重合一体化することによりフランジ部11が構成されているので、成形時に補強シート材29が別途必要なく、その分製造が容易である。
【0042】
なお、上記実施形態1,2では、上記バンパービーム本体9の導入孔13周りが補強シート材15によって補強されていたが、補強シート材15を用いることなくSMC成形材30を折り曲げて重合一体化することにより、上記バンパービーム本体9の導入孔13周りが、上記バンパービーム本体9の成形の際、該バンパービーム本体9の他の箇所(一般部W)の肉厚よりも厚く、かつ上記フランジ部11の肉厚よりも若干薄く成形されるようにしてもよい。SMC成形材30の折曲げ重合部分を一体化して上記バンパービーム本体9の導入孔13周りを形成したバンパービーム本体9は、SMC成形材30のバンパービーム本体9の導入孔13周りに対応する部分が折れ曲がって重なった状態となるように、成形型35内に上記バッグ7とSMC成形材30,32又はSMC成形材30,37とを配置して成形を行うことにより得ることができる。この場合、成形時に補強シート材15が別途必要なく、その分製造が容易である。
【0043】
(実施形態3)
図7及び図8は、本発明の実施形態3に係るバンパービーム1を示す。実施形態1では、フランジ部11が、バンパービーム本体9の側面9aの車幅方向外方及び上下方向外方へ張り出しているが、本実施形態3では、フランジ部11が、側面9aの上下方向両端に、車体側に向けて突出する突出部11dを有している。上記各突出部11dには、ボルト挿通孔11cが2つずつ設けられている。また、本実施形態3のフランジ部11は、2枚の熱硬化性樹脂製のシート状SMC成形材41,43を重合一体化して構成されている。また、補強シート材29が別途用いられていない。
【0044】
一方、本実施形態3の各サイドフレーム3のフレーム側フランジ部4は、対向する上下の各側縁から車両前方側に突出する突出部4bを有している。上記各突出部4bには、ボルト挿通孔4aが2つ形成されている。そして、バンパービーム1におけるフランジ部11の一対の突出部11d間にサイドフレーム3におけるフレーム側フランジ部4の一対の突出部4bを差し込んで、挿通孔11c,4aにボルト(図示せず)を挿通することにより、バンパービーム1をサイドフレーム3に取り付けることができる。
【0045】
この実施形態3のバンパービーム1を成形する場合、上記バッグ7のフランジ部11に対応する部分に実施形態1の補強シート材29を重ねることなく、バッグ7の外周面に、上記バンパービーム本体9の側面9aを除く外周面を構成する熱硬化性樹脂製の略矩形シート状SMC成形材41を巻き付けるとともに、上記バンパービーム本体9の側面9aを構成するSMC成形材43でバッグ7の外周面を覆う。SMC成形材43は、上記SMC成形材41と同じ材質で構成されている。
【0046】
次いで、上記プリフォーム体44を、凹状成形面45aを有する第1成形型45と、凸状成形面47aを有する第2成形型47と、2つのスライド型49,51とを備えた成形型53にセットする。なお、上記第1成形型45には、上記実施形態1の第1成形型31と同様に、上記凹状成形面45aの側壁を貫通する貫通孔が形成されている。プリフォーム体44を成形型53にセットする手順としては、上記プリフォーム体44を上記バッグ7の導入管部19が上記第1成形型45の貫通孔に差し込まれた状態となるように、かつ一対の突出部11d,11dが2つのスライド型49,51間に位置するように第1成形型45の凹状成形面45a内に配置した後、ノズル21を導入管部19に第1成形型45の外側から差し込み、該凹状成形面45aに第2成形型47の凸状成形面47aを被せて、成形型53を型閉じする。そしてこの状態で、上記バッグ7の中空部5にオイルを導入して該バッグ7を加圧膨張させるとともにスライド型49及び51を互いに近づくようにスライドさせることにより、上記SMC成形材41,43を成形型53の成形面45a,47aに押圧密着させるとともに、該SMC成形材41,43のフランジ部11,11対応部を押圧密着させる。そのほかの形成手順は実施形態1と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0047】
したがって、本実施形態によれば、実施形態1の上記効果に加えて、バンパービーム本体9を成形するSMC成形材41,43を延長して重合一体化することによりフランジ部11が構成されているので、成形時に補強シート材が別途必要なく、その分製造が容易である。
【0048】
また、SMC成形材41,43のフランジ部11を構成する部分が、第2成形型47の凸状成形面47aの側方からスライド型49,51により押圧されるので、SMC成形材41及び43のフランジ部11を構成する部分が強固に重合一体化される。
【0049】
なお、上記実施形態1〜3では、フランジ部11をボルト締めによってサイドフレーム3のフレーム側フランジ部4に取り付ける構造として説明したが、フランジ部11はボルトにより締結することなく、単に2つの部材間に挟持されたり、中空成形体を支持したりするフランジ部であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態1〜3では、角筒状バンパービーム本体9を備えたバンパービーム1に本発明を適用した例について説明したが、バンパービーム本体9を角筒状以外の所定形状に成形する場合にも本発明を適用できる。また、バンパービーム以外の中空成形体にも本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、中空成形体及びその成形方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態1に係る中空成形体としてのバンパービームをサイドフレームに取り付ける直前の状態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】図1のB−B線における断面図である。
【図4】図1のC−C線における断面図である。
【図5】実施形態1の成形前のバンパービームを示す図2に対応する断面図である。
【図6】(a)は実施形態2のSMC成形材の平面図、(b)はSMC成形材を折り曲げた状態を示す図3相当断面図である。
【図7】実施形態3のバンパービームの端部をサイドフレームに取り付ける直前の状態を示す図1相当斜視図である。
【図8】実施形態3の図4相当断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 バンパービーム(中空成形体)
7 バッグ
9 バンパービーム本体(中空成形体本体)
11 フランジ部
11a 張出部
13 導入孔
15,29 補強シート材
30,32,37,41,43 SMC成形材
31,45 第1成形型
33,47 第2成形型
31a,33a,45a,47a 成形面
35,53 成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形の際内部に圧力流体を導入することにより加圧膨張した袋状バッグと、
該バッグの外周に配置されたシート状SMC成形材を上記圧力流体によるバッグの膨張圧により成形型の成形面に押圧密着させて所定形状に成形された中空成形体本体と、
該中空成形体本体から外方へ張り出すフランジ部とを備え、
上記中空成形体本体の成形の際圧力流体を導入する箇所には、導入孔が上記バッグの内部に連通するように形成され、
上記フランジ部は、上記中空成形体本体の成形の際、該中空成形体本体の肉厚よりも厚く成形されていることを特徴とする中空成形体。
【請求項2】
請求項1に記載の中空成形体において、
上記中空成形体本体の導入孔周りは、該中空成形体本体の成形の際、中空成形体本体の他の箇所よりも厚く成形されていることを特徴とする中空成形体。
【請求項3】
請求項1に記載の中空成形体において、
上記中空成形体本体の導入孔周りには、中空成形体本体とは別体の補強シート材が重合一体化されて当該導入孔周りの全体の肉厚が他の箇所よりも厚くなっていることを特徴とする中空成形体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空成形体において、
上記フランジ部は、上記中空成形体本体共通の上記SMC成形材を素材とし、該中空成形体本体と一体に連続して外方へ張り出す張出部に、該張出部とは別体の補強シート材が重合一体化されて構成されていることを特徴とする中空成形体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空成形体において、
上記フランジ部又は上記中空成形体本体の導入孔周りは、上記中空成形体本体の素材であるSMC成形材を折り曲げて重合一体化して構成されていることを特徴とする中空成形体。
【請求項6】
請求項4に記載の中空成形体の成形方法であって、
膨張可能な袋状バッグの外周にシート状SMC成形材が配置され、上記SMC成形材のフランジ部に対応する部分に該SMC成形材と別体の補強シート材が重なるように上記成形型内に上記バッグ、SMC成形材、及び補強シート材を配置し、
次いで、成形型を型閉じした状態で、上記バッグの内部に圧力流体を導入して該バッグを加圧膨張させることにより、上記SMC成形材を成形型の成形面に押圧密着させてバッグの外周に中空成形体本体を所定形状に成形するとともに、上記中空成形体本体と一体に連続して外方へ張り出す張出部に、上記補強シート材を重合一体化してなるフランジ部を形成した中空成形体を得ることを特徴とする中空成形体の成形方法。
【請求項7】
請求項5に記載の中空成形体の成形方法であって、
膨張可能な袋状バッグの外周にシート状SMC成形材が配置され、上記SMC成形材のフランジ部又は中空成形体本体の導入孔周りに対応する部分が折れ曲がって重なった状態となるように上記成形型内に上記バッグ及びSMC成形材を配置し、
次いで、成形型を型閉じした状態で、上記バッグの内部に圧力流体を導入して該バッグを加圧膨張させることにより、上記SMC成形材を成形型の成形面に押圧密着させてバッグの外周に中空成形体本体を所定形状に成形するとともに、上記SMC成形材の折曲げ重合部分を一体化してフランジ部又は中空成形体本体の導入孔周りを形成した中空成形体を得ることを特徴とする中空成形体の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−172962(P2009−172962A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16614(P2008−16614)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業「軽量で高剛性な高機能樹脂とこれを活用した商品展開技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】