説明

伝動装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】多角形軸を回転部材に固定する際に、回り止め及び抜け止めを的確に行えると共に、ガタツキもなくせるようにする。
【解決手段】本願発明の伝動装置60は、回転中心部に取付穴67を有する回転部材62と、前記回転部材62の前記取付穴67に圧入にて嵌合される多角形軸61とを備える。前記回転部材62における前記取付穴67の内周面には、周方向に沿って並ぶ複数の内向き突起部71を有する。前記回転部材62の前記取付穴67に前記多角形軸61を嵌合した状態では、前記各内向き突起部71を前記多角形軸61の外周平坦面75に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばギヤやローラのような回転部材と、これに軸支する多角形軸とによって回転動力を伝達する伝動装置、並びに、前記伝動装置を備えている画像形成装置に関するものである。画像形成装置には、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの機能を複合的に備えた複合機といった各種のものが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から、ギヤやローラといった回転部材とこれを軸支する回転軸とによって回転動力を伝達する伝動装置は、様々な技術分野で利用されている。例えば電子写真方式を採用した画像形成装置では、感光体ドラム、現像ローラ及びレジストローラ等を回転駆動させるのに伝動装置が用いられている(例えば特許文献1及び2等参照)。
【0003】
ところで、回転軸に回転部材を固定するには、回り止めと抜け止めとを適切に行う必要がある。回転軸が丸軸である場合は次のような構成にするのが一般的である。すなわち、回り止めのために、Dカット加工等にて丸軸に非円形部を形成する一方、当該非円形部に対応する非円形穴を回転部材に形成して、丸軸の非円形部を回転部材の非円形穴に嵌合する。そして、抜け止めのために、Eリングやネジで回転部材に丸軸を固定する。
【0004】
他方、丸軸以外の回転軸としては、例えば六角軸等の多角形軸がある。多角形軸を回転部材に固定するには、回転部材の回転中心部に形成される取付穴の形状を、多角形軸の断面と同形状の多角形か又は円形にし、取付穴に多角形軸を圧入にて嵌合するのがよく行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−239596号公報
【特許文献2】特開2005−69239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、丸軸に回転部材を固定する場合、丸軸の非円形部と回転部材の非円形穴とには加工誤差による寸法のバラツキがあるため、非円形部と非円形穴との間でガタツキが生じ易い。また、丸軸と回転部材との芯出しが難しく、回転部材が丸軸に対して偏心して組み付けられるおそれがある。このような伝動装置を画像形成装置に用いると、回転部材の回転速度にムラが生じ、種々の不具合を引き起こす。例えば、感光体ドラムの回転軸に回転部材が偏心して組み付けられた場合は、回転部材の回転速度ムラによって、感光体ドラム表面のトナー像に濃度ムラが生じ、カラー画像の場合は色ずれや色相の変化として現れ、画質を劣化させることになる。
【0007】
また、多角形軸に回転部材を固定する場合において取付穴が円形であれば、多角形軸の圧入によって抜け止めの機能は満たされるものの、加工誤差による寸法のバラツキや圧入代の点から見ると、回り止めの機能は未だ十分でない。取付穴が多角形であれば、加工誤差による寸法のバラツキに起因して、多角形軸と取付穴との間でガタツキが生じ易く、多角形軸と回転部材との芯出しが難しい。すなわち、丸軸に回転部材を固定する場合と同じ問題を抱えているのであった。
【0008】
本願発明は、このような現状を改善して、多角形軸を回転部材に固定する際に、回り止め及び抜け止めを的確に行えると共に、ガタツキもなくせるようにすることを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、回転中心部に取付穴を有する回転部材と、前記回転部材の前記取付穴に圧入にて嵌合される多角形軸とを備えている伝動装置であって、前記回転部材における前記取付穴の内周面には、周方向に沿って並ぶ複数の内向き突起部を有しており、前記回転部材の前記取付穴に前記多角形軸を嵌合した状態では、前記各内向き突起部を前記多角形軸の外周平坦面に当接させているというものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した伝動装置において、前記内向き突起部群の先端に内接する内接円の直径は、前記多角形軸における断面多角形の外接円の直径より小さく、且つ、前記多角形軸における断面多角形の内接円の直径より大きいというものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した伝動装置において、前記回転部材の前記取付穴は、前記多角形軸を挿入する側から奥に向けて内径が小さくなるテーパ状部を有しているというものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3のうちいずれかに記載した伝動装置において、前記回転部材は、前記回転中心部を構成する筒状のハブ体と、前記ハブ体の同心円上に位置するリム体と、前記ハブ体に前記リム体を連結するディスク体とで構成されており、前記ハブ体と前記リム体との間に、補強用のリブを形成していないというものである。
【0013】
請求項5の発明は画像形成装置に係り、請求項1から4のうちいずれかに記載した伝動装置を備えているというものである。
【発明の効果】
【0014】
本願の請求項に記載された発明によると、回転中心部に取付穴を有する回転部材と、前記回転部材の前記取付穴に圧入にて嵌合される多角形軸とを備えている伝動装置であって、前記回転部材における前記取付穴の内周面には、周方向に沿って並ぶ複数の内向き突起部を有しており、前記回転部材の前記取付穴に前記多角形軸を嵌合した状態では、前記各内向き突起部を前記多角形軸の外周平坦面に当接させているから、前記多角形軸は、その頂部が前記各内向き突起部に当たらないようにして前記回転部材の前記取付穴に圧入されることになる。当該圧入によって前記多角形軸に前記回転部材をガタツキなく抜け不能に固定できる。また、前記多角形軸の前記各頂部が前記内向き突起部を乗り越えてまで、前記多角形軸が前記回転部材に対して相対回転することはなく、前記内向き突起部が前記多角形軸に対する回り止めの機能を発揮できる。つまり、抜けや空回りを招来することなく、前記多角形軸を前記回転部材にガタツキなく簡単に固定できる。しかも、前記従来のようなDカット加工やEリング等が一切不要になるから、加工の手間や部品点数を削減でき、製造コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンタの概略説明図である。
【図2】トナー補給構造の概略説明図である。
【図3】伝動装置の概略斜視図である。
【図4】伝動ギヤの拡大斜視図である。
【図5】取付穴に多角形軸を嵌合した状態でのハブ体の拡大正面図である。
【図6】伝動ギヤの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本願発明に係る伝動装置を画像形成装置の一例であるタンデム方式のカラーデジタルプリンタ(以下、プリンタと称する)に適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交した方向を正面視とし、これを基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0017】
(1).プリンタの概要
まず、図1を参照しながら、プリンタ1の概要について説明する。図1に示すように、実施形態のプリンタ1は、その筺体2内に、大別して画像プロセス装置3、給紙装置4、及び定着装置5等を備えている。詳細は図示していないが、プリンタ1は、例えばLANといったネットワークに接続されていて、外部端末(図示省略)からの印刷指令を受け付けると、当該指令に基づいて印刷を実行するように構成されている。
【0018】
筺体2内の中央部に位置する画像プロセス装置3は、像担持体の一例である感光体13上に形成されたトナー像を記録材Pに転写する役割を担うものであり、中間転写ベルト6、及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する計4つの作像部7等を備えている。なお、図1では説明の便宜上、各作像部7に、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
【0019】
中間転写ベルト6は、導電性を有する素材からなる無端状のものであり、筺体2内の中央部右側に位置する駆動ローラ8と、同じく中央部左側に位置する従動ローラ9とに巻き掛けられている。この場合、駆動モータ(図示省略)からの動力伝達にて、駆動ローラ8を図1の反時計方向に回転駆動させることにより、中間転写ベルト6は図1の反時計方向に循環移動する。
【0020】
中間転写ベルト6のうち駆動ローラ8に巻き掛けられた部分の外周側には、二次転写ローラ10が配置されている。二次転写ローラ10は、中間転写ベルト6に当接していて、中間転写ベルト6と二次転写ローラ10との間(当接部分)が二次転写領域である二次転写ニップ部11になっている。二次転写ローラ10は、中間転写ベルト6の回転に伴って、又は二次転写ニップ部11に挟持搬送される記録材Pの移動に伴って、図1の時計方向に回転する。
【0021】
中間転写ベルト6のうち従動ローラ9に巻き掛けられた部分の外周側には、転写ベルトクリーナ12が配置されている。転写ベルトクリーナ12は、中間転写ベルト6上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、中間転写ベルト6に当接している。
【0022】
4つの作像部7は、中間転写ベルト6の下方において、図1の左からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、中間転写ベルト6に沿って並べて配置されている。各作像部7は、図1の時計方向に回転駆動する像担持体の一例としての感光体13を備えている。感光体13の周囲には、図1における時計回りの回転方向に沿って順に、帯電器14、現像器15、一次転写ローラ16、及び感光体クリーナ17が配置されている。
【0023】
感光体13は負帯電性のものであり、感光体モータ(図示省略)からの動力伝達にて、図1の時計方向に回転駆動するように構成されている。帯電器14はローラ帯電式のものであり、当該帯電器14には、所定のタイミングにて帯電用電源(図示省略)から感光体帯電のための電圧が印加される。現像器15は、負の極性を呈するトナーを利用して、感光体13上に形成された静電潜像を反転現像にて顕在化させるものである。
【0024】
一次転写ローラ16は中間転写ベルト6の内周側に位置していて、中間転写ベルト6を挟んで、対応する作像部7の感光体13に対峙している。一次転写ローラ16は、中間転写ベルト6の回転に伴って図1の反時計方向に回転する。中間転写ベルト6と一次転写ローラ16との間(当接部分)は、一次転写領域である一次転写ニップ部18になっている。感光体クリーナ17は、感光体13上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、感光体13に当接している。
【0025】
4つの作像部7の下方には露光部19が配置されている。露光部19は、外部端末等からの画像情報に基づき、レーザービームにて各感光体13に静電潜像を形成するものである。中間転写ベルト6の上方には容器装着部40が設けられている。容器装着部40内には、各現像器15に供給されるトナーを収容するトナー容器41が着脱可能に配置されている。なお、図1では説明の便宜上、それぞれの容器装着部40及びトナー容器41にも、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
【0026】
各作像部7において、帯電器14にて帯電される感光体13に露光部19からレーザービームが投射されると、静電潜像が形成される。静電潜像は、現像器15から供給されるトナーにて反転現像されて各色のトナー像となり、一次転写ニップ部18において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体13から中間転写ベルト6の外周面に一次転写されて重ねられる。感光体13に残った未転写トナーは感光体クリーナ17にて掻き取られ、感光体13上から取り除かれる。そして、記録材Pが二次転写ニップ部11を通過する際に、重ね合わされた4色のトナー像が記録材Pに一括して二次転写される。中間転写ベルト6に残った未転写トナーは転写ベルトクリーナ12にて掻き取られ、中間転写ベルト6上から除去される。
【0027】
画像プロセス装置3の下方に位置する給紙装置4は、記録材Pを収容する複数段(実施形態では2段)の給紙カセット21,22、給紙カセット21,22内の記録材Pを1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ23,24、及び繰り出された記録材Pを所定のタイミングにて二次転写ニップ部11に搬送するレジストローラ対25等を備えている。各給紙カセット21,22は筺体2の下部に着脱可能に配置されている。各給紙カセット21,22内の記録材Pは、対応する繰り出しローラ23,24の回転にて、最上部のものから1枚ずつ搬送経路30に送り出される。
【0028】
搬送経路30は、給紙装置4の各給紙カセット21,22から、レジストローラ対25間のニップ部、及び画像プロセス装置3における二次転写ニップ部11を経て、定着装置5の定着ニップ部35に至る。そして、搬送経路30は、定着ニップ部35から排出ローラ対26を介して筺体2上面の排紙トレイ27にまで延びている。
【0029】
画像プロセス装置3における二次転写ローラ10の上方に位置する定着装置5は、記録材Pの搬送方向に直交する方向に長い加熱ローラ32、及び、加熱ローラ32と平行状に延びる加圧ローラ34を備えている。加圧ローラ34は加熱ローラ32に当接していて、加熱ローラ32と加圧ローラ34との間(当接部分)が定着領域である定着ニップ部35になっている。二次転写ニップ部11を通過して未定着トナー像を載せた記録材Pは、定着ニップ部35を通過する際に加熱・加圧され、記録材P上に未定着トナー像を定着される。その後、記録材Pは排出ローラ対26の回転にて排紙トレイ27上に排出される。
【0030】
(2).現像器及びトナー補給構造
次に、図1及び図2を参照しながら、現像器15及びトナー補給構造について説明する。ここで、現像器15及びトナー補給構造を説明するのは、実施形態の伝動装置60として、トナーホッパ47における搬送スクリュー48の動力伝達構造に適用した場合を例示するからである。
【0031】
図1及び図2に示すように、各現像器15は電子写真の公知技術を利用したものであり、円筒状の現像スリーブ43内に複数の永久磁石を有する現像ローラ42と、スクリュー羽根を有する複数の撹拌部材44とを備えている。現像器15内にはトナーとキャリアとからなる2成分系の現像剤Dが収容されている。
【0032】
現像器15内のトナーは、複数の撹拌部材44によって撹拌及び移送され、磁力にて現像スリーブ43に穂立ちしているキャリアによって感光体13の表面に運ばれる。その結果、感光体13上の静電潜像が顕像化される。現像によって現像剤Dからトナーのみが消費され、キャリアは消費されない。そこで、キャリアは予め現像器15内に収容されている。消費されたトナーは別途補給される。
【0033】
現像器15には、内部のトナー濃度(現像剤D中のトナーの割合)を検出するトナー濃度センサ45が取り付けられている。実施形態のトナー濃度センサ45は、例えばトナー濃度の変化に応じて発振周波数を変化させる方式のものである。トナー濃度センサ45にて検出された現像器15内のトナー濃度が予め設定された所定濃度以下になると、容器装着部40と現像器15との間にあるトナーホッパ47から現像器15へのトナー補給がなされる。
【0034】
容器装着部40と現像器15とは補給管46によって連通接続されている。補給管46の中途部に、トナーを一時的に貯留するトナーホッパ47が設けられている。トナーホッパ47の底部には、該トナーホッパ47内のトナーを現像器15内に供給する搬送スクリュー48が配置されている。搬送スクリュー48はトナーホッパ47外にあるスクリュー駆動モータ49に動力伝達可能に連結されている。スクリュー駆動モータ49にて搬送スクリュー48を回転駆動させることにより、トナーホッパ47から現像器15にトナーが補給される。
【0035】
トナーホッパ47内には、所定量のトナーを貯留しているか否かを検出するトナー量センサ50が設けられている。実施形態のトナー量センサ50はピエゾ素子を用いたものである。トナー量センサ50にて検出されたトナーホッパ47内のトナー量が予め設定された所定量以下になると、容器装着部40内のトナー容器41からトナーホッパ47へのトナー補給がなされる。
【0036】
トナー容器41は、容器装着部40に配置された状態で容器駆動モータ(図示省略)に動力伝達可能に連結される。容器駆動モータにてトナー容器41を回転駆動させることにより、トナー容器41の外周部に形成されたトナー排出口(図示省略)からトナーホッパ47にトナーが補給される。
【0037】
(3).伝動装置の詳細構造
次に、図2−図6を参照しながら、実施形態における伝動装置60の詳細構造について説明する。実施形態では、搬送スクリュー48の動力伝達構造に伝動装置60を適用している。そこで、搬送スクリュー48及びその周辺構造について詳述する。
【0038】
図2に示すように、搬送スクリュー48におけるスクリュー軸の先端側は、補給管46を通じて現像器15内部に臨ませている。スクリュー軸の基端側は、トナーホッパ47から外向きに突出させている。スクリュー軸基端側の突出端部は、断面多角形状の多角形軸61に形成されている。多角形軸61は、断面正六角形状の六角軸である。なお、多角形軸61の断面形状は、回転軸の機能を担う関係上、基本的に正多角形(実施形態は正六角形)である。
【0039】
搬送スクリュー48の多角形軸61には、回転部材の一例である伝動ギヤ62が固着されている。多角形軸61と伝動ギヤ62との組合せが伝動装置60を構成している。当該伝動ギヤ62は、トナーホッパ47外にあるスクリュー駆動モータ49のモータ軸に固着されたモータギヤ63と噛み合っている。スクリュー駆動モータ49の回転動力がモータギヤ63及び伝動ギヤ62を介して搬送スクリュー48に伝達され、搬送スクリュー48を回転駆動させることになる。
【0040】
図3−図6に示すように、伝動ギヤ62は、その回転中心部を構成する筒状のハブ体64と、ハブ体64の同心円上に位置するリム体65と、ハブ体64にリム体65を連結するディスク体66とにより構成されている。実施形態の伝動ギヤ62は合成樹脂製であり、ハブ体64、リム体65及びディスク体66は一体成形されている。リム体65の外周側に、モータギヤ63と噛み合う外歯が形成されている。ディスク体66は、伝動ギヤ62における一方の広幅面を肉盗みしたような薄肉環状の形態になっている。実施形態では、ハブ体64とリム体65とが薄肉環状のディスク体66によってつながっており、ハブ体64とリム体65との間に、一般的に見られる補強用のリブ(例えばハブ体64から放射状に延びるリブ等)を形成していない。
【0041】
ハブ体64は有底円筒状に形成されていて、その内周側は搬送スクリュー48の多角形軸61を差し込むための取付穴67になっている。取付穴67は、多角形軸61を挿入する側(以下、挿入側という)に位置するテーパ状部68と、奥側に位置するストレート部69とで連続した形態に形成されている。テーパ状部68は、挿入側から奥側に向けて内径を小さくした形態になっている。ハブ体64の底面部には、ハブ体64内外に貫通する貫通穴70が形成されている。
【0042】
取付穴67の内周面には、搬送スクリュー48の多角形軸61を囲う複数の内向き突起部71が周方向に沿って並ぶように形成されている。実施形態の内向き突起部71は、多角形軸61を三方から囲うように、周方向に沿った等間隔で3箇所に配置されている。また、各内向き突起部71は取付穴67の長手方向に長く延びている。この場合、各内向き突起部71は、取付穴67のうちテーパ状部68からストレート部69に至るまで延びている。なお、各内向き突起部71は、テーパ状部68及びストレート部69のうち少なくとも一方に形成されていれば足りる。
【0043】
ハブ体64の取付穴67には、搬送スクリュー48の多角形軸61が、テーパ状部68側から圧入して外れ難い状態で且つ相対回転不能に嵌合している。ハブ体64の取付穴67に多角形軸61を圧入すると、ハブ体64が半径方向に拡張するように弾性変形して、多角形軸61がハブ体64の取付穴67に固着される。
【0044】
伝動ギヤ62を挿入側から見た場合、内向き突起部71の先端に内接する内接円72の直径Daは、多角形軸61における断面多角形の外接円73の直径Db(対角線距離)より小さく、且つ、多角形軸61における断面多角形の内接円74の直径Dc(対辺距離)より大きくなっている(図5参照)。このため、取付穴67に多角形軸61を圧入した状態では、各内向き突起部71が多角形軸61の外周平坦面75に当接し、多角形軸61の各頂部76(隣り合う外周平坦面75の突合せ部分)は、取付穴67のうち内向き突起部71のない部分に位置することになる。従って、多角形軸61は、ハブ体64への圧入によって抜け止めされる。また、多角形軸61の各頂部76が内向き突起部71を乗り越えてまで、多角形軸61が伝動ギヤ62に対して相対回転(単独回転)することはない。つまり、多角形軸61は、内向き突起部71の存在によって回り止めされる。
【0045】
以上の構成によると、伝動ギヤ62における取付穴67の内周面に、周方向に沿って並ぶ複数の内向き突起部71を有し、伝動ギヤ62の取付穴67に多角形軸61を圧入にて嵌合した状態では、各内向き突起部71が多角形軸61の外周平坦面75に当接するから、多角形軸61は、各頂部76が内向き突起部71に当たらないようにして伝動ギヤ62の取付穴67に圧入されることになる。当該圧入によって多角形軸61に伝動ギヤ62をガタツキなく抜け不能に固定できる。また、多角形軸61の各頂部76が内向き突起部71を乗り越えてまで、多角形軸61が伝動ギヤ62に対して相対回転することはなく、内向き突起部71が多角形軸61に対する回り止めの機能を発揮できる。つまり、抜けや空回りを招来することなく、多角形軸61を伝動ギヤ62にガタツキなく簡単に固定できる。
【0046】
更に、多角形軸61と伝動ギヤ62との間のガタツキを抑えられるから、周辺にある現像器15等の作像部7に対して、ガタツキ等による振動の伝播が少なくなる。このため、例えば画像ブレ(バンディング)等を防止でき、画像品質の向上を実現できる。しかも、前記従来のようなDカット加工やEリング等が一切不要になるから、加工の手間や部品点数を削減でき、製造コストを抑制できる。
【0047】
特に実施形態では、伝動ギヤ62を挿入側から見て、内向き突起部71の先端に内接する内接円72の直径Daが多角形軸61における断面多角形の内接円74の直径Dcより大きいので、各内向き突起部71を避けながら、伝動ギヤ62の取付穴67に多角形軸61を確実に圧入できる。そして、内向き突起部71の先端に内接する内接円72の直径Daは、多角形軸61における断面多角形の外接円73の直径Dbより小さいので、多角形軸61の各頂部76が内向き突起部71に引っ掛かるような状態になり、多角形軸61が伝動ギヤ62に対して相対回転するのを確実に防止できるのである。
【0048】
更に、伝動ギヤ62の取付穴67は、挿入側から奥に向けて内径が小さくなるテーパ状部68を有しているから、伝動ギヤ62の取付穴67に多角形軸61を圧入する際に、多角形軸61を取付穴67にスムーズに案内できる。その上、伝動ギヤ62は、回転中心部を構成する筒状のハブ体64と、ハブ体64の同心円上に位置するリム体65と、ハブ体64にリム体65を連結するディスク体66とで構成されており、ハブ体64とリム体65との間に補強用のリブを形成していないから、伝動ギヤ62の取付穴67に多角形軸61を圧入する際に、半径方向に拡張するハブ体64の弾性変形を許容でき、伝動ギヤ62の取付穴67と多角形軸61との適度な嵌合状態を確保し易いのである。
【0049】
(4).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、画像形成装置としてプリンタを例に説明したが、これに限らず、複写機、ファクシミリ又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等でもよい。また、伝動装置60は、搬送スクリュー48の動力伝達構造に適用するに限らず、画像形成装置において、例えばギヤやローラのような回転部材と、これに軸支する多角形軸との組合せであれば適用可能である。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 プリンタ(画像形成装置)
47 トナーホッパ
48 搬送スクリュー
49 スクリュー駆動モータ
60 伝動装置
61 多角形軸
62 伝動ギヤ
64 ハブ体
65 リム体
66 ディスク体
67 取付穴
68 テーパ状部
71 内向き突起部
72 内向き突起部の先端に内接する内接円
73 多角形軸における断面多角形の外接円
74 多角形軸における断面多角形の内接円
75 外周平坦面
76 頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心部に取付穴を有する回転部材と、前記回転部材の前記取付穴に圧入にて嵌合される多角形軸とを備えている伝動装置であって、
前記回転部材における前記取付穴の内周面には、周方向に沿って並ぶ複数の内向き突起部を有しており、
前記回転部材の前記取付穴に前記多角形軸を嵌合した状態では、前記各内向き突起部を前記多角形軸の外周平坦面に当接させている、
伝動装置。
【請求項2】
前記内向き突起部群の先端に内接する内接円の直径は、前記多角形軸における断面多角形の外接円の直径より小さく、且つ、前記多角形軸における断面多角形の内接円の直径より大きい、
請求項1に記載した伝動装置。
【請求項3】
前記回転部材の前記取付穴は、前記多角形軸を挿入する側から奥に向けて内径が小さくなるテーパ状部を有している、
請求項1又は2に記載した伝動装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記回転中心部を構成する筒状のハブ体と、前記ハブ体の同心円上に位置するリム体と、前記ハブ体に前記リム体を連結するディスク体とで構成されており、
前記ハブ体と前記リム体との間に、補強用のリブを形成していない、
請求項1から3のうちいずれかに記載した伝動装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれかに記載した伝動装置を備えている、
画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229723(P2012−229723A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97417(P2011−97417)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】