説明

位相同期ループ回路、位相同期ループ回路のループフィルタゲイン制御方法並びに再生装置

【課題】 ディジタルPLLのループフィルタゲインを自動制御することで、キャプチャ時間の短縮、エラーレートの改善を実現する位相同期ループ回路を提供する。
【解決手段】 ロックモード生成回路29は、イコライザ10からの周波数調整再生信号(e)とビタビ復号器12からのSAM値と補間フィルタ24からのフィルタ出力である同期がとれた再生信号(f)とに基づいて、上記ループフィルタ19の自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生RF信号からクロックを抽出する位相同期ループ回路(Phase Locked Loop:PLL)回路、位相同期ループ回路のループフィルタゲイン制御方法並びに再生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録させたディジタルデータを再生する光ディスク再生装置では、下記特許文献1に記載されているように、PLLにて再生信号からクロックを抽出することが行われている。
【0003】
まず、光ディスク再生装置は、記録媒体からアナログ信号であるRF信号を読み出した後、このRF信号を所定のサンプリング周期でサンプリングしたディジタルデータ信号に変換している。ディジタル信号に変換された再生信号は、適切な振幅値に調整され、エッジの検出しやすい波形とされてから、ディジタルPLL部において、再生信号に同期したクロックが抽出される。このディジタルPLL部において抽出されたクロックは、再生信号の2値化処理に用いられる。
【0004】
図21は、光磁気ディスク再生装置60の構成を示すブロック図である。記録媒体である光磁気ディスク61から再生されたRF再生信号(a)は、始めに増幅器62で増幅され、RF増幅信号(b)がA/D変換器63に出力される。A/D変換器63は、RF増幅信号(b)を所定のサンプリング周期でサンプリングし、ディジタルデータ信号(c)をゲインコントロール回路64に出力する。
【0005】
ゲインコントロール回路64は、ディジタルデータに変換された再生信号を、適切な振幅値に調整し、この振幅値(d)をイコライザ65に出力する。イコライザ65は、上記振幅値(d)の周波数を調整し、周波数調整信号(e)をディジタルPLL66に出力する。ゲインコントロール回路64及びイコライザ65によって、再生信号はエッジ検出のしやすい波形となる。
【0006】
ディジタルPLL66は、上記周波数調整信号(e)である再生信号に同期した再生クロックを抽出する。この再生クロック信号は、ビタビ復号器67及び同期検出器68に供給される。また、ディジタルPLL66により同期がとられた再生信号(ディジタル)(f)もビタビ復号器67に供給される。
【0007】
ビタビ復号器67は、上記同期がとられた再生信号(f)を上記再生クロック信号を用いて“0”、“1”の2値化信号(g)に変換する。この2値信号に変換された再生信号(g)は、その後、同期検出ブロック68に入力され、フレーム同期信号が生成され、2値化信号と共に(h)後段の復調回路69へ入力される。
【0008】
復調回路69は上記フレーム同期信号及び2値化信号(h)を受け取り、復調処理を施した上で、復調信号(i)をさらに後段の誤り訂正回路(Error Correction Circuit:ECC)へと出力する。ECCは、復調信号(i)にエラー訂正処理を施し、このエラー訂正処理信号を、情報源復号部に供給する。情報源復号部は、ディジタル信号をアナログ信号に変換してから増幅し、例えばスピーカなどに供給する。よって、オーディオ信号として再生される。
【0009】
ディジタルPLL66は、内部にループフィルタを有し、このループフィルタのフィルタ係数のゲインを制御することにより、周波数偏差に追従(あるいはキャプチャ)する構成である。従来、このループフィルタのゲインは、設計時あるいは製造時等の検討段階において、固定値であった。ディジタルPLLのゲインはレジスタを設定することで、値を変えることができるので検討段階において、全ての設定値に対してエラーレート及びキャプチャレンジを測定し、一番良さそうな所を固定値として使用していた。この場合、一番よさそうなところ、と言うのはエラーレートとキャプチャレンジがそこそこのもの、ということになる。
【0010】
図22には、ループゲインを大きくした場合と、小さくした場合のキャプチャモード又はロックモードでのループフィルタの出力状態を示す。実線はループフィルタの積分項であり、破線はメディアの周波数偏差である。図22の(A)のようにフィルタゲインを大きくすると、メディアの周波数偏差の大きい変化に対して短時間で追従しロックをかけようとする。つまり、キャプチャレンジは広くなり、図22の(B)に示すキャプチャモードでは短時間にキャプチャする。しかし、図22の(B)のようにロックモードに入り、メディアの周波数偏差が静定しても、ゲインが大きいままなので、リンギングが発生し、エラーレートは悪くなる。また、図22の(C)のようにゲインを小さくすると、周波数偏差の少ないうちは追従できているが、周波数の変動が大きくなり、図22の(D)のキャプチャモードでも偏差が大になると追従できなくなる。つまり、キャプチャレンジは狭くなる。しかし、周波数偏差が静定したところでは、図22の(D)のロックモードのように安定するので、エラーレートは悪化しない。
【0011】
【特許文献1】特開2001−6288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、ループフィルタのゲインに、上述したように固定値を使用するとなると、エラーレートとキャプチャレンジはトレードオフの関係になるため、どちらもベストなものということにはならない。また、全てのゲイン設定に対して検討をしなければならないため、検討時間もかかる。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、ディジタルPLLのループフィルタゲインを自動制御することで、キャプチャ時間の短縮、エラーレートの改善を実現する位相同期ループ回路、位相同期ループ回路のループフィルタゲイン制御方法並びに再生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る位相同期ループ回路は、上記課題を解決するために、位相誤差検出手段が位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出し、シーケンスアンプリチュードマージン(SAM)及びヒストグラムに基づいて制御したフィルタゲインを、位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算して位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力し、電圧制御発振手段がループフィルタによって出力されたフィルタ信号に基づいて位相誤差調整電圧信号を生成し、補間手段が電圧制御発振手段によって生成された位相誤差調整電圧信号に基づいて再生RF信号の位相を補間する。
【0015】
また、この位相同期ループ回路は、フィルタゲイン制御手段をさらに備え、再生RF信号入力と上記補間手段からの位相が補間されたRF信号と上記SAM及びヒストグラムに基づいて上記フィルタゲインを自動制御する。
【0016】
本発明に係る位相同期ループ回路のループフィルタゲイン制御方法は、上記課題を解決するために、位相誤差検出工程が位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出し、ループフィルタ工程がシーケンスアンプリチュードマージン(SAM)及びヒストグラムに基づいて制御したフィルタゲインを、位相誤差検出工程で検出された位相誤差に乗算し、位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力し、電圧制御発振工程がループフィルタ工程によって出力されたフィルタ信号に基づいて位相誤差調整電圧信号を生成し、補間工程が電圧制御発振工程によって生成された位相誤差調整電圧信号に基づいて再生RF信号の位相を補間する。
【0017】
また、この位相同期ループ回路のループフィルタゲイン制御方法は、フィルタゲイン制御工程をさらに備え、再生RF信号入力と上記補間手段からの位相が補間されたRF信号と上記SAM及びヒストグラムに基づいて上記フィルタゲインを自動制御する。
【0018】
本発明に係る再生装置は、上記課題を解決するために、記録媒体から読み出し手段により記録信号を読み出し、この読み出し信号から位相同期ループ回路を用いてクロックを抽出し、このクロックに基づいて読み出し信号から再生信号を出力する再生装置において、位相同期ループ回路は、位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、シーケンスアンプリチュードマージン(SAM)及びヒストグラムに基づいて制御したフィルタゲインを、上記位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算し、位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタとループフィルタによって出力されたフィルタ信号に基づいて位相誤差調整電圧信号を生成する電圧制御発振手段と、電圧制御発振手段によって生成された位相誤差調整電圧信号に基づいて上記再生RF信号の位相を補間する補間手段とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、位相同期ループ回路のループフィルタゲインを自動制御することで、キャプチャ時間の短縮、エラーレートの改善を実現できる。また、マイクロコンピュータ制御の負担軽減も実現できる。また、本発明によれば、省電力化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。この実施の形態は、本発明の位相同期ループ回路(Phase Locked Loop:PLL)回路を適用した光磁気ディスク再生装置である。もちろん、記録媒体は光磁気ディスクに限定されるものではなく、光ディスク、ハードディスクさらには半導体メモリなどでもよい。
【0021】
図1は光磁気ディスク再生装置1の概略構成図である。図1に示すように、光磁気ディスク再生装置1は、光磁気ディスク2から図示しない光学ヘッドなどにより読み出した読み出し信号を伝送路復号し復調信号(i)を出力する伝送路復号部(フロントエンドブロック)3と、伝送路復号部3からの復調信号(i)にエラー訂正処理を施す誤り訂正回路(Error Correction Circuit:ECC)4と、ECC4のエラー訂正処理信号をアナログ信号に変換してから増幅し、例えば出力端子6からスピーカなどに供給する、情報源復号部5とを備えてなる。
【0022】
伝送路復号部3は、光学ヘッドなどの読み出し部によって読み出した信号からディジタルPLLにより再生クロック信号を抽出し、この再生クロック信号に基づいて2値化信号を復号し、復調処理を施してから復調信号(i)を出力する。
【0023】
図2は伝送路復号部3の詳細な構成図である。記録媒体である光磁気ディスク2から再生されたRF再生信号(a)は、始めに増幅器7で増幅され、RF増幅信号(b)がA/D変換器8に出力される。A/D変換器8は、RF増幅信号(b)を所定のサンプリング周期でサンプリングし、ディジタルデータ信号(c)をゲインコントロール回路9に出力する。このA/D変換器8より以前がアナログ信号であり、以降がディジタル信号である。
【0024】
ゲインコントロール回路9は、ディジタルデータに変換された再生信号を、適切な振幅値に調整し、この振幅値(d)を等化器(イコライザ)10に出力する。イコライザ10は、上記振幅値(d)の周波数を調整し、等化信号又は周波数調整信号(e)をディジタルPLL11に出力する。ゲインコントロール回路9及びイコライザ10によって、再生信号はエッジ検出のしやすい波形となる。
【0025】
ディジタルPLL11は、上記周波数調整信号(e)である再生信号に同期した再生クロックを抽出する。この再生クロック信号は、ビタビ復号器12及び同期検出器13に供給される。また、ディジタルPLL11により同期がとられた再生信号(ディジタル)(f)もビタビ復号器12に供給される。
【0026】
ビタビ復号器12は、上記同期がとられた再生信号(f)を上記再生クロック信号を用いて“0”、“1”の2値化信号(g)に変換する。この2値化信号に変換された再生信号(g)は、その後、同期検出ブロックに入力され、フレーム同期信号が生成され、2値化信号と共に(h)後段の復調回路14へ入力される。
【0027】
復調回路14は上記フレーム同期信号及び2値化信号(h)を受け取り、復調処理を施した上で、復調信号(i)を出力端子15から図1のECC4へと出力する。
【0028】
図3は、ディジタルPLL11とビタビ復号器12の間の各種信号の流れを示している。ディジタルPLL11からビタビ復号部12へは、ディジタルPLL11により同期がとられた再生信号である、同期後のRF信号(f)が供給される。また、ビタビ復号器12からディジタルPLL11へは、シーケンスアンプリチュードマージン(Sequenced Amplitude Margin:SAM)値が供給される。このSAM値は、例えばヒストグラムと同様にエラーレートに相関した値である。
【0029】
SAM値は、ビタビ復号器12において、正しいパス・メトリックとそれに最も近い他のパス・メトリックとの差であり、例えば、Tim PerKins and Zachary A.Keirn、"A Window-Margin-Like Procedure for Evaluating PRML Channel Performance"、IEEE Trans.Magn.Vol.31、No.2、pp1109-1114に報告されている。従来では、SAMは、ストレージオシロスコープなどを用いた評価システムで、一旦取り込んだデータをコンピュータで計算するといった手法で求められていた。本発明では、SAMの計算をビタビ復号器12自体で略リアルタイムに行い、得られたSAM値に基づき、ディジタルPLL11のループフィルタのゲインを自動的に制御する。
【0030】
SAMは、ビタビ復号器12が誤った2値化データ系列を出力してしまうまで許容されるノイズマージンである。実際には、再生信号処理過程において、完全に正しい2値化データ系列を小さい遅延時間で得ることは困難である。そのため、ビタビ復号器が最も確からしいと判断したデータ系列の確からしさの度合い(パスメトリックMr)と、誤りと判断したデータ系列の確からしさの度合い(パスメトリックMw)との差(Mr−Mw)を、SAM値とすることが実用的である。通常、再生信号品質を評価したい状況では、ビタビ復号器が最も確からしいと判断したデータ系列の誤り率は小さいと考えられるので、このような方法で求めたSAM値と厳密な意味でのSAM値との差は小さい。
【0031】
次に、SAM値の計算の詳細について説明する。以下では、変調符号にRLL(1,7)符号(最小ラン制限=1)、ビタビ復号器としてPR(1,2,1)ビタビ復号器を用いるものとして説明する。
【0032】
図4は、RLL(1,7)とPR(1,2,1)の組み合わせに対応するトレリス線図を示す。図4では、時刻kから時刻k+1への状態遷移が表されている。状態S00、S01、S10及びS11は現時点より過去2ビット分のデータの組み合わせで決まる状態である。値akは、2値データを表し、値yは、理想再生信号を表す。
【0033】
図5は、図4のトレリス線図に応じた、PR(1,2,1)ビタビ復号器の詳細な構成図である。光磁気ディスク2などの記録媒体から再生ヘッドにより再生された再生信号が、ブランチメトリック計算回路105に供給される。ブランチメトリック計算回路105では、4種類の理想再生信号レベルに対する実際の再生信号のメトリックがチャネルビット毎に計算される。
【0034】
実際のビタビ復号器では、メトリックとして、理想再生信号ykと実際の再生信号zkとの間のユークリッド距離×(−1)が採用されることが多い。すなわち、理想再生信号レベルyに対するブランチメトリックBM(y)としては、
BM(y)=−(y−zk2 ・・・(1)
を計算すればよい。
【0035】
一方、パスメトリックメモリ130は、後述する方法で選択されたトレリス上のパス、すなわち、データ系列のパターンに対応するブランチメトリックの累積値が記憶される。パスメトリックメモリ130では、パスが最終的に辿り着く状態の種類に対応して、4つの値が記憶される。図5では、パスメトリックメモリ130内の領域PMM(11)、PMM(10)、PMM(01)およびPMM(00)に、対応する4つの値がそれぞれ記憶されるように示されている。すなわち、状態S11の値が領域PMM(11)に記憶される。同様に、状態S10の値が領域PMM(10)に記憶され、状態S01の値が領域PMM(01)に記憶され、状態S00の値が領域PMM(00)に記憶される。
【0036】
なお、以下では、領域PMM(11)、PMM(10)、PMM(01)およびPMM(00)に記憶された値そのものを、それぞれPMM(11)、PMM(10)、PMM(01)およびPMM(00)と称する。
【0037】
時刻kからk+1に移るときは、以下の式(2)〜(5)に従って、パスメトリックメモリ130の各領域PMM(11)、PMM(10)、PMM(01)およびPMM(00)に記憶された値が更新される。なお、式(2)〜(5)では、時刻kにおいて、最終的に状態S00に辿り着くパスに対応するパスメトリックを、PM(00)kのように表記する。
【0038】
PMM(00)k+1=max{PMM(00)k+BM(−2),PM(10)k+BM(−1)} ・・・(2)
PMM(01)k+1=PMM(00)k+BM(−1) ・・・(3)
PMM(10)k+1=PMM(11)k+BM(+1) ・・・(4)
PMM(11)k+1=max{PMM(01)k+BM(+1),PM(11)k+BM(+2)} ・・・(5)
なお、式(2)および(5)において、max{X,Y}は、XとYとを比較し、値が大きい方が選択されることを示す。
【0039】
図5の構成では、加算器110A〜110Cおよび120A〜120C、比較器112および122、ならびに、選択器113および123により、ブランチメトリック計算回路105で求められたブランチメトリックBM(+2)、BM(+1)、BM(−1)およびBM(−2)と、パスメトリックメモリ130の各領域に記憶された値PMM(11)、PMM(10)、PMM(01)およびPMM(00)とを用いて上述の式(2)〜(5)の演算が行われ、パスメトリックメモリ130の記憶内容が更新される。
【0040】
例えば、式(5)は、選択器113は、加算器110Aおよび110Bの出力が比較器112で比較され、その比較結果に基づき加算器110Aおよび110Bの出力が選択器113で選択されることで求められる。式(2)も同様にして、加算器120Aおよび120Bの出力を比較器122で比較し、比較結果に基づき加算器120Aおよび120Bの出力を選択器123で選択することで求められる。
【0041】
PMM(00)およびPMM(11)が更新される際に、それぞれ2つの候補値のうち、パスメトリックが大きくなる方が比較器112および122で選択される。この選択が繰り返されることにより、4つの状態それぞれに達するいずれのパスも、ある程度の時間を遡ったところでは、同じパスが共有されることになる。この共有された部分は、ビタビ復号器100によって最も確からしいと推定されたパスである。比較器112および122による選択結果に基づき、残されたパスがパスメモリ140に記憶され、そのパスに対応した2値化データがパスメモリ140から出力される。
【0042】
なお、上述した式(2)〜(5)に従ってパスメトリックメモリ130の記憶内容を更新し続けると、パスメトリックの値は、全体的に増加していく傾向を示す。このため、パスメトリックメモリ130のオーバーフローを防止するための仕組みが必要とされる。この仕組みに関して、幾つかの方法が提案されているが、この発明の本質的な部分とは直接関係しないので、ここでの説明を省略する。
【0043】
図5において、加算器110Aおよび110Bの出力は、上述したように比較器112に供給されると共に、差分器111に供給される。差分器111では、加算器110Aおよび110Bの出力の差分、すなわち、比較器112で比較される値の差分が求められる。差分器111で求められた差分値は、パスメトリック差(11)として出力される。同様にして、加算器120Aおよび120Bの出力は、比較器122に供給されると共に差分器121に供給され、加算器120Aおよび120Bの出力の差分、すなわち、比較器122で比較される値の差分がパスメトリック差(00)として出力される。これら、パスメトリック差(11)および(00)は、SAMの計算のために用いられる。
【0044】
SAM計算部の具体的な構成に先立って、先ず、SAM計算のアルゴリズムについて説明する。ここでいうSAMとは、上述したように、ビタビ復号器が最も確からしいと判断したデータ系列のパスメトリックと、誤りだと判断したデータ系列のパスメトリックの差である。ビタビ復号器が出力したデータ系列2ビットが0→0であった場合、対応するトレリス上の状態は、状態S00→S00、或いは状態S10→S00のように遷移している筈である。例えば状態S00を通過するパスが選択された場合には、それが状態S00から遷移したのか、状態S10から遷移したのかが判断されたことを意味する。このとき、その根拠とされたパスメトリックの差は、パスメトリック差(00)である。同様に、データ系列2ビットが1→1であった場合、パス選択の根拠とされるパスメトリックの差は、パスメトリック差(11)である。
【0045】
一方、例えばデータ系列2ビットが0→1であった場合は、状態が状態S00→S01に遷移したことに対応しており、状態S01を通過するパスは、選択の余地無く状態S00→S01→S11である。同様に、データ系列2ビットが1→0であった場合は、パスは選択の余地無く状態S11→S10→S00を通過している。以上をまとめると、SAM値としては、データ系列に応じて図6に示されるように出力すればよい。
【0046】
図7は、SAM計算部77の一例の構成を示す。ビタビ復号器から出力されたパスメトリック差(11)およびパスメトリック差(00)が、シフトレジスタ210および211を介して選択回路212の2つの選択入力端にそれぞれ入力される。シフトレジスタ210および211は、パスメトリック差(00)および(11)が計算されるタイミングと、2値化データが出力されるタイミングとの差を補償するためのものである。
【0047】
また、ビタビ復号器のパスメモリ140から出力された2値化データは、D−フリップフロップ回路213によって1クロック遅延された値と共に選択回路212に入力される。選択回路212では、上述した図6に従い、2値化データで示されるデータ系列に基づきパラメトリック差(11)および(00)が選択されSAM値として出力されると共に、SAM値の有効/無効を示すSAM有効信号が出力される。SAM有効信号は、例えばSAM値が有効のときに”H(ハイレベル)”状態とされ、SAM値が無効のときに”L(ローレベル)”状態とされる信号である。
【0048】
次に、図2及び図3におけるディジタルPLL11の詳細な構成を図8に示す。ディジタルPLL11は、イコライザ10から入力端子16を介して供給された周波数調整再生信号(又は同期がとれていない再生RF信号ともいう)(e)から位相を検出する位相検出器17と、この位相検出器17により検出された周波数調整再生信号(e)の位相と後述する電圧制御発振器(Voltage Control Oscillator :VCO)23からの位相誤差調整電圧信号の位相を比較する位相比較器18と、この位相比較器18により検出された位相誤差に対して上記SAM値により自動的に制御されるフィルタゲインKp、Kiを乗算するループフィルタであるLPF19と、LPF19のフィルタ出力とVCO23の帰還出力を加算する加算器22と、加算出力から位相誤差調整電圧信号を生成するVCO23と、このVCO23の位相誤差調整電圧信号に基づいてイコライザ10からの周波数調整再生信号(e)を補間して同期がとれた再生信号(f)を出力する補間フィルタ24とを備えてなる。
【0049】
ここで、位相比較器18は、位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出する位相誤差検出手段の具体例である。また、LPF19は、エラーレートに相関する値に基づいて制御したフィルタゲインを、位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算し、位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタエラーレートに相関する値に基づいて制御したフィルタゲインを、位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算し、位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタの具体例である。また、VCO23は、ループフィルタによって出力されたフィルタ信号に基づいて位相誤差調整電圧信号を生成する電圧制御発振手段の具体例である。また、補間フィルタ24は、電圧制御発振手段によって生成された位相誤差調整電圧信号に基づいて再生RF信号の位相を補間する補間手段の具体例である。
【0050】
また、ディジタルPLL11は、イコライザ10からの周波数調整再生信号(e)とビタビ復号器12からのSAM値と上記補間フィルタ24からのフィルタ出力である同期がとれた再生信号(f)とが入力されて上記ループフィルタ19の自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoを出力するロックモード生成(lockmode_gen)器29と、このロックモード生成器29からの自動調整ゲインKp_autoと及びKi_autoと、図示しないマイクロコンピュータから固定値として設定することができる固定調整ゲインKp_man及びKi_manとをセレクトするセレクタ(auto_man_sel_blk)33とを備える。
【0051】
ロックモード生成器29は、上記自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoのほかに、ロックモードの状態を表すロックモードニュー(lockmode_new)とSAMの状態を表す有効信号SAMイネーブル(sam_en)及びリセット信号SAMリセット(sam_reset)も生成する。このロックモード生成器29は、再生RF信号入力と補間手段からの位相が補間されたRF信号とエラーレートに相関する値に基づいてフィルタゲインを自動制御するフィルタゲイン制御手段の具体例である。
【0052】
また、セレクタ33は、マイクロコンピュータからのセレクタ信号(itrdp_mode_sel)により制御される。
【0053】
図9はループフィルタLPF19の構成図である。入力された位相誤差信号は1次ゲインKpが乗算される乗算器40及び2次ゲインが乗算される乗算器41に供給される。1次ゲイン乗算器40の乗算出力は、加算器42に供給される。2次ゲイン乗算器41の乗算出力は加算器44に供給される。この加算器44には、後述の遅延器45からの遅延出力がフィードバックされる。加算器44の加算出力は遅延器45により所定時間だけ遅延されたのち、加算器44に供給される。加算器44は、1次ゲイン乗算器40の乗算出力に遅延器45からの遅延出力を加算し、出力端子43からフィルタ出力として導出する。
【0054】
次に図3、図8及び図9を用いてディジタルPLL11に非同期RF信号(周波数調整信号(e))が供給された後、ビタビ復号器12からビタビ復号後のRF信号(g)が出力されるまでの概略動作について説明する。
【0055】
イコライザ10からの非同期RF信号(周波数調整信号(e))は、入力端子16を介してディジタルPLL内部の位相検出器17及び補間フィルタ24に供給される。位相検出器17は、非同期RF信号(周波数調整信号(e))から位相を検出し、検出した位相を位相比較器18に供給する。位相比較器18には、VCO23からの位相誤差調整電圧信号も供給されており、これらの位相誤差を検出する。検出された位相誤差は、ループフィルタLPF19に供給される。
【0056】
ループフィルタLPF19は、入力された位相誤差信号に係数入力端子20を介して図9に示す乗算器40からの1次ゲインKpを乗算し、また係数入力端子21を介して乗算器41からの2次ゲインKiを乗算する。ここで、乗算される1次ゲインKp及び2次ゲインKiは、上記セレクタ33により選択された自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoまたは係数入力端子34及び35から供給された固定ゲインKp_man及びKi_manである。2次ゲインKiが乗算された乗算器41の乗算出力は加算器44に供給される。この加算器44には、遅延器45からの遅延出力がフィードバックされる。加算機44の加算出力は遅延器45により所定時間だけ遅延されたのち、加算器42に供給される。加算器42は、1次ゲイン乗算器40の乗算出力に遅延器45からの遅延出力を加算し、フィルタ出力として出力端子43から図8の加算器22に供給する。
【0057】
図8の加算器22は、LPF19のフィルタ出力とVCO23の帰還出力を加算した加算出力をVCO23に供給する。VCO23は、上記加算出力から位相誤差調整電圧信号を生成し、位相比較器18、加算器22及び補間フィルタ24に供給する。
【0058】
補間フィルタ24は、VCO23の位相誤差調整電圧信号に基づいてイコライザ10からの周波数調整再生信号(e)を補間し、同期がとれた再生信号(f)を出力端子25から導出する。この同期がとれた再生信号(f)とイコライザ10からの周波数調整再生信号(e)とビタビ復号器12からのSAM値は、入力端子27、26及び28からロックモード生成器29に供給される。
【0059】
ロックモード生成器29は、後述する図10に示した状態遷移により自動的にゲイン制御を行い、上記ループフィルタ19の自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoを出力する。また、ロックモード生成器29は、上述したように、上記自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoのほかに、ロックモードの状態を表すロックモードニュー(lockmode_new)とSAMの状態を表す有効信号SAMイネーブル(sam_en)及びリセット信号SAMリセット(sam_reset)も生成し、出力端子30、31及び32から出力する。このロックモード生成器29によるゲイン制御処理については後述する。
【0060】
セレクタ33は、ロックモード生成器29からの自動調整ゲインKp_autoと及びKi_autoと、図示しないマイクロコンピュータから固定値として設定することができる固定調整ゲインKp_man及びKi_manとを、入力端子36を介してマイクロコンピュータから供給されるセレクタ信号(itrdp_mode_sel)に基づいてセレクトする。
【0061】
セレクタ33により選択された自動調整又は固定のゲインは、ループフィルタLPF19の1次ゲイン乗算器40及び2次ゲイン乗算器41に出力端子37及び38、入力端子20及び21を介して供給される。なお、このセレクタ33は、ゲインを検討するときに必要とされる。つまり、固定のゲインは、検討用として使われるものであり、ディジタルPLLが動作中は自動調整ゲインが用いられる。
【0062】
以上の動作により、ディジタルPLL11は同期がとられたRF信号(f)をビタビ復号器12に出力する。
【0063】
次に、図10を参照してディジタルPLL11内にて実行されるフィルタゲイン自動制御アルゴリズムについて説明する。このフィルタゲイン自動制御アルゴリズムは、詳細にはロックモード生成(lockmode_gen)器29にて実行される。このフィルタゲイン自動制御には、入力RF信号(イコライザにより周波数調整されたRF信号((e))、ビタビ復号器12からのSAM値、同期後RF信号(f)が必要となる。
【0064】
まず、入力波形(agrf)がない場合は待機(IDLE)モードで待機している。入力波形(agrf)があると、キャプチャ(Capture)モードに遷移し、フィルタゲインを大きくする。また、Captureモードは図11(a)に示すように、周波数偏差があるスレッショルドを超えた時に、ループフィルタ19の積分項のレジスタをリセットする。これは、RF信号の品質が悪いことを早くチェックし、その品質が悪い時には積分項をリセットし再キャプチャを早くかけるためである。この状態で、ビタビ復号器12から供給されるSAMの値を観測し、一定の落ち着いた値になったらロック(Lock)モードに遷移し、フィルタゲインを低くする。また、ロック(Lock)モードでは図11(b)に示すように、積分項のレジスタをリミットをかけて反転しないようにしている。これは、ロックLockの状態を維持するためである。
【0065】
ロックモードに遷移したら、SAM値の計算期間を長くするなどして計算しつづける。SAM値が所定の値より悪くなる(NG)とロックが外れたとみなしロックモードからキャプチャモードに遷移し、フィルタゲインを高くする。SAMが一定の落ち着いた値になれば、そこからまたロックLockモードに遷移することになる。入力RF信号がなくなった場合は、キャプチャCaptureモードでもロックLockモーででも待機IDLEモードに遷移する。
【0066】
つまり、フィルタゲイン制御手段の具体例である、ロックモード生成(lockmode_gen)器29は、待機モードから入力波形の有無を検出し、入力波形が有ると、キャプチャモードに遷移し、フィルタゲインを大きくしながら、上記エラーレートと相関する値を判定し、その値が一定の値になったらロックモードに遷移して上記フィルタゲインを小さくする。また、ロックモード生成器29は、上記ロックモードにて上記フィルタゲインを小さくしたのち、上記エラーレートと相関する値が上記一定の値でなくなったら、上記キャプチャモードに遷移し、フィルタゲインを大きくする。また、ロックモード生成器29は、上記キャプチャモード及び上記ロックモードにて入力波形が無くなると上記待機モードに遷移する。また、ロックモード生成器29は、上記キャプチャモードにて上記位相誤差の周波数偏差が所定の閾値を超えたときには、上記ループフィルタのフィルタ出力をリセットする。また、上記ロックモードにて上記ループフィルタのフィルタ出力にリミッタをかけて反転しないようにしている。
【0067】
このようにして、ディジタルPLL11は、自動的にループフィルタのゲイン制御を行うことができる。このため、光磁気ディスク再生装置1は、ディジタルPLL11のループフィルタゲインを自動制御することで、キャプチャ時間の短縮、エラーレートの改善を実現できる。また、マイクロコンピュータ制御の負担軽減も実現できる。
【0068】
図12には、図10のゲイン制御を行うためのロックモード生成回路29内のゲイン自動制御回路29aのブロック図を示す。ゲイン自動制御回路29aは、ビタビ復号器12から入力端子46を介して供給されるSAM値、イコライザ10から入力端子49を介して供給される非同期RF信号(e)、ディジタルPLL11から入力端子48を介して供給される同期後RF信号(f)を入力とし、出力端子55から現在の状態を表すロックモード状態信号lockmode_new及び出力端子56及び57からフィルタゲイン値Kp_auto及びKi_autoを出力する。
【0069】
このため、ゲイン自動制御回路29aは、SAM値を判定するSAM判定回路47と、非同期RF信号(e)の入力をチェックするRF入力信号チェック回路50と、上記各回路47及び50からの出力信号(状態遷移に必要な信号)から現在の状態(State)を決定するステート生成回路53と、ステート生成回路53で決定されたステートからループフィルタゲイン値を決定するフィルタゲインセレクタ回路54とを備えてなる。なお、SAM判定回路47にlockmode_newが入力されているのは、sam_resetとsam_enを生成するためである。
【0070】
次に、このゲイン自動制御回路29aの概略動作を説明する。SAM判定回路47は、ビタビ復号器12からのSAM値を観測し、一定の落ち着いた値になったか否かを判定する。SAM値が一定の落ち着いた値になったら、SAM値のOK又はNG状態信号sam_okngをステート生成回路53に供給する。このSAM判定回路47には、ステート生成回路53が生成したロックモード状態信号lockmode_newが入力されている。これは、状態信号sam_resetとsam_enを生成するためである。これら状態信号sam_resetとsam_enは、SAM値の計算の開始をビタビ復号器12に指示したり、計算の停止を指示するために用いられる。
【0071】
RF入力信号チェック回路50は、イコライザ10からの非同期RF信号(e)の入力をチェックし、入力がなくなるとno_rfをステート生成回路53に供給する。
【0072】
ステート生成回路53は、SAM判定回路47からのsam_okng、同期後のRF信号(f)、RF入力信号チェック回路からのno_rfを基に、現在の状態を示すロックモード状態信号lockmode_newを生成してフィルタゲインセレクタ回路54等に出力する。
【0073】
フィルタゲインセレクタ回路54は、ロックモード状態信号lockmode_newに応じて、ループフィルタゲインKp_auto及びKi_autoを設定して出力する。
【0074】
また、ディジタルPLL11は、以下に説明するようにして、自動的にループフィルタ19のゲイン制御を行ってもよい。このゲイン制御は、図13に示すような状態遷移により行われる。
【0075】
ディジタルPLL11の構成は、上述の図8を参照に説明することができる。すなわち、ディジタルPLL11は、イコライザ10から入力端子16を介して供給された周波数調整再生信号(又は同期がとれていない再生RF信号ともいう)(e)から位相を検出する位相検出器17と、この位相検出器17により検出された周波数調整再生信号(e)の位相と電圧制御発振器(Voltage Control Oscillator :VCO)23からの位相誤差調整電圧信号の位相を比較する位相比較器18と、この位相比較器18により検出された位相誤差に対して上記SAM値及びヒストグラムにより自動的に制御されるフィルタゲインKp、Kiを乗算するループフィルタであるLPF19と、LPF19のフィルタ出力とVCO23の帰還出力を加算する加算器22と、加算出力から位相誤差調整電圧信号を生成するVCO23と、このVCO23の位相誤差調整電圧信号に基づいてイコライザ10からの周波数調整再生信号(e)を補間して同期がとれた再生信号(f)を出力する補間フィルタ24とを備えてなる。
【0076】
ここで、位相比較器18は、位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出する位相誤差検出手段の具体例である。また、LPF19は、SAM値及びヒストグラムに基づいて制御したフィルタゲインを、位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算し、位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタエラーレートに相関する値に基づいて制御したフィルタゲインを、位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算し、位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタの具体例である。また、VCO23は、ループフィルタによって出力されたフィルタ信号に基づいて位相誤差調整電圧信号を生成する電圧制御発振手段の具体例である。また、補間フィルタ24は、電圧制御発振手段によって生成された位相誤差調整電圧信号に基づいて再生RF信号の位相を補間する補間手段の具体例である。
【0077】
また、ディジタルPLL11は、イコライザ10からの周波数調整再生信号(e)とビタビ復号器12からのSAM値と上記補間フィルタ24からのフィルタ出力である同期がとれた再生信号(f)とが入力されて上記ループフィルタ19の自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoを出力するロックモード生成(lockmode_gen)器29と、このロックモード生成器29からの自動調整ゲインKp_autoと及びKi_autoと、図示しないマイクロコンピュータから固定値として設定することができる固定調整ゲインKp_man及びKi_manとをセレクトするセレクタ(auto_man_sel_blk)33とを備える。
【0078】
ロックモード生成器29は、上記自動調整ゲインKp_auto及びKi_autoのほかに、ロックモードの状態を表すロックモードニュー(lockmode_new)とSAMの状態を表す有効信号SAMイネーブル(sam_en)及びリセット信号SAMリセット(sam_reset)も生成する。このロックモード生成器29は、再生RF信号入力と補間手段からの位相が補間されたRF信号とSAM値及びヒストグラムに基づいてフィルタゲインを自動制御するフィルタゲイン制御手段の具体例である。
【0079】
また、セレクタ33は、マイクロコンピュータからのセレクタ信号(itrdp_mode_sel)により制御される。また、ループフィルタ19の構成は図9に示したのと同様である。
【0080】
この場合のゲイン自動制御には、上述したように、入力RF信号(e)、ビタビ復号器12からのSAM値、同期後RF信号(f)のヒストグラム集計が必要となる。図13のように、入力RF信号がない場合はIDLEモードで待機している。
【0081】
入力波形があると、Captureモードに遷移しフィルタゲインを高くする。また、Captureモードはあるスレッショルドを超えた時に、ループフィルタ19の積分項のレジスタをリセットする(図11(a))。これは、上述したとおりRF信号の品質が悪い時に積分項をリセットし再キャプチャを早くかけるためである。
【0082】
この状態で、SAMの値を観測し一定の落ち着いた値になったらLockモードに遷移し、フィルタゲイン19を低くする。Lockモードでは積分項のレジスタをリミットをかけて反転しないようにしている(図11(b))。これは、Lockの状態を維持するためである。
【0083】
ロック(Lcok)モードに遷移したら、SAM値を計算させているクロックを止める。これは、クロック発生に用いられる電力の省電力化を図るためである。光磁気ディスク再生装置1がポータブルタイプであり、バッテリからの電力を用いているときには、省電力化により、バッテリー駆動時間を延ばすことができる。そして、同期後RF信号(f)のヒストグラムを集計する。Lockしている同期後RF波形は3値に分かれるため、ある区間集計してヒストグラムの状態を観測する。このヒストグラムの集計については後述する。もし、ヒストグラムが3値に分かれていなかったら、Lockが外れたとみなしLockモードからCaptureモードに遷移し、フィルタゲインを高くし、SAMを計算させるクロックを動かし再びSAMの観測を始める。
【0084】
SAMが一定の落ち着いた値になれば、そこからまたLockモードに遷移することになる。入力RF信号がなくなった場合は、CaptureモードでもLockモーででもIDLEモードに遷移する。
【0085】
つまり、フィルタゲイン制御手段の具体例である、ロックモード生成(lockmode_gen)器29は、待機モードから入力波形の有無を検出し、入力波形が有ると、キャプチャモードに遷移し、フィルタゲインを大きくしながら、上記SAM値を判定し、その値が一定の値になったらロックモードに遷移して上記フィルタゲインを小さくし、かつ上記SAM算出用のクロックを停止させ、SAMに代わりヒストグラムを集計する。また、ロックモード生成器29は、上記ロックモードにて上記フィルタゲインを小さくしたのち、上記SAMに代えて集計しているヒストグラムが3値に分かれなくなったら、上記キャプチャモードに遷移し、フィルタゲインを大きくする。また、ロックモード生成器29は、上記キャプチャモード及び上記ロックモードにて入力波形が無くなると上記待機モードに遷移する。また、ロックモード生成器29は、上記キャプチャモードにて上記位相誤差の周波数偏差が所定の閾値を超えたときには、上記ループフィルタのフィルタ出力をリセットする。また、上記ロックモードにて上記ループフィルタのフィルタ出力にリミッタをかけて反転しないようにしている。
【0086】
図14には、図13のゲイン制御を行うためのロックモード生成回路内のゲイン自動制御回路29bのブロック図を示す。ゲイン自動制御回路29bは、ビタビ復号器12からのSAM値、イコライザ10からの非同期RF信号(e)、ディジタルPLL11からの同期後RF信号(f)を入力とし、現在の状態を表すロックモード状態信号lockmode_new及びフィルタゲイン値を出力する。
【0087】
このため、ゲイン自動制御回路29bは、SAM値を判定するSAM判定回路47と、同期後RF信号(f)のヒストグラムを集計するヒストグラム集計回路58と、非同期RF信号(e)の入力をチェックするRF入力信号チェック回路50と、上記各回路47、58及び50からの出力信号(状態遷移に必要な信号)から現在の状態(State)を決定するステート生成回路59と、ステート生成回路59で決定されたステートからループフィルタゲイン値を決定するフィルタゲインセレクタ回路54とを備えてなる。なお、SAM判定回路47にlockmode_newが入力されているのは、sam_resetとsam_enを生成するためである。
【0088】
次に、このゲイン自動制御回路29bの概略動作を説明する。SAM判定回路47は、ディジタルPLL11からのSAM値を観測し、一定の落ち着いた値になったか否かを判定する。SAM値が一定の落ち着いた値になったら、SAM値のOK又はNG状態信号sam_okngをステート生成回路59に供給する。このSAM判定回路47には、ステート生成回路59が生成したロックモード状態信号lockmode_newが入力されている。これは、状態信号sam_resetとsam_enを生成するためである。これら状態信号sam_resetとsam_enは、SAM値が安定したらSAMの計算をやめ、SAM値用のクロック生成をとめて省電力化を図るために用いる信号であり、SAM値を計算するビタビ復号器12に供給される。詳細については後述する。
【0089】
ヒストグラム集計回路58は、ディジタルPLL11からの同期後のRF信号(f)からヒストグラムを集計する。このストグラム集計について以下に説明する。同期後RF信号(f)は、今回PR(1,-1)及びPR4を用いているため3値に分かれる。その特性を利用して同期後RF信号の振幅に対するヒストグラムを集計し、その分布を見てロックがかかっているかどうかを判定する。
【0090】
図15に実際に測定した(シミュレーションにて)ヒストグラムの図を示す。ヒストグラムの波形が異なるのは、ディジタルPLLLの前段のイコライザの係数を変えて、RF信号の品質を変えているためである。入力のRF信号は同じものを用いている。図15(a)は、きれいに3値(−1,0,1)に分かれている。これはPLLがロックしている状態である。図15(b)は波形がつぶれている。これはPLLがロックしていない状態である。ヒストグラム集計回路58は、この3値の分かれ具合を判定して、ロック、アンロックの判定をしている。そして、ヒストグラム状態信号hist_okngをステート生成回路59に出力している。
【0091】
RF入力信号チェック回路50は、イコライザ10からの非同期RF信号(e)の入力をチェックし、入力がなくなるとno_rfをステート生成回路59に供給する。
【0092】
ステート生成回路59は、SAM判定回路47からのsam_okng、ヒストグラム集計回路58からのhist_okng、RF入力信号チェック回路50からのno_rfを基に、現在の状態を示すロックモード状態信号lockmode_newを生成してフィルタゲインセレクタ回路54等に出力する。
【0093】
フィルタゲインセレクタ回路54は、ロックモード状態信号lockmode_newに応じて、ループフィルタゲインKp_auto及びKi_autoを設定して出力する。図16には、ループフィルタゲインKp_autoの設定値と実際の値を示す。また、図17には、ループフィルタゲインKi_autoの設定値と実際の値を示す。
【0094】
ループフィルタゲインKp_autoの場合、位相誤差phserrは−128<=phserr<128である。Kp_autoの比例項lpfp_outは−64<=lpfp_out<64である。Kp=1のとき、1/32=−30dBである。Kp=2のときには−24dBとなる。以下、Kp=3で−20.4dB、Kp=4で−18dB、Kp=5で−14.4dB、Kp=6で−12dB、Kp=7で−8.4dBとなる。
【0095】
ループフィルタゲインKi_autoの場合、位相誤差phserrは−128<=phserr<128である。Ki_autoの比例項lpfp_outは−16<=lpfp_out<16である。Ki=1のとき、1/4096=−72dBである。Ki=2のときには−66dBとなる。以下、Ki=3で−62.4dB、Ki=4で−60dB、Ki=5で−56.4dB、Ki=6で−52dB、Ki=7で−50.4dBとなる。
【0096】
次に、SAMクロックをゲートクロック(gated clock)とすることによる省電力化の原理を説明する。図18はSAMの状態を表す信号であるSAMクロックイネーブルsam_enのタイミングチャートを示す。図13において、待機IDLEモードから入力波形が有り、キャプチャCaptureモードに状態が遷移した後の動作である。先ず、ロックLockモードへの遷移条件であるSAM値を観測するためにSAMクロックイネーブルsam_enをHighにして、ビタビ復号器12にてSAMクロックを動かす。SAMクロックを動かすとビタビ復号器12ではSAMの計算が始まり、一定区間集計してrfev_loadがHighになるタイミングでSAMの計算結果を出力する。その値が一定範囲内になりLockモードに遷移した時、SAMクロックイネーブルsam_enをLowにしてビタビ復号器12のSAMクロックを止める。
【0097】
LockモードではディジタルPLL11のロックモード生成回路29がヒストグラム集計を行っているが、ヒストグラムの更新周期とSAMの更新周期は図18に示すように非同期である。そのため、LockモードからCaptureモードに遷移したとき再びsam_enをHighにしてSAMクロックを動かし始めるタイミングで、SAM値のリセットを行う。これは前回のSAM値がレジスタに残ったままになっているので、レジスタのリセットが必要となるためである。
【0098】
リセット後、再びSAMの計算をビタビ復号器12が始めその値が一定範囲内になったときLockモードに遷移し、sam_enをLowとする。
【0099】
以上に説明した、光磁気ディスク再生装置1が、図13の状態遷移を行った場合には、図19に示すような効果が得られる。図19の(A)はディジタルPLLのループゲインをオートゲインとした場合の、キャプチャモード又はロックモードでのループフィルタの出力状態を示す。実線はループフィルタの積分項であり、破線はメディアの周波数偏差である。ループフィルタゲインを自動調整することで、図19の(B)のキャプチャモード時には、ゲインを高くし、キャプチャレンジの拡大及びキャプチャにかかる時間の縮小をはかり、一旦キャプチャして、図19の(B)のロックモードに入ったら、ゲインを低くしエラーレートの悪化を防ぐことを実現した。なお、フィルタゲインの自動制御はセレクト信号でon/offが切り替えられるようになっており、フィルタゲインはマイコンからの固定値も設定できる仕組みとなっている。
【0100】
なお、図20には、本実施の形態と比較するために、割り込みを用いてループフィルタのゲインを制御するときのタイミングチャートを示す。ファームウェアによる割り込み処理により、ループフィルタゲインを制御することも考えられる。そこで、それを比較例とし、本実施の形態との違いを説明する。
【0101】
例えば、1データ単位(ECCデータ単位)をクラスタと呼び、1クラスタは16セクタで構成されるものとする。また、1セクタは31フレームで構成される。
【0102】
最小の割り込みタイミングはセクタ割り込みなので、セクタ毎にディジタルPLLのゲインを変更することはできるが、ゲインを変更してエラーレートを見ようとした場合、1クラスタの時間がかかる。つまり、セクタ割り込みでゲイン変更→エラーレート集計とすると、最低で1クラスタ分の時間がかかることになる。
【0103】
一方、図13に示した実施例によれば、SAMの集計タイミングは1フレームで約2回あり、ヒストグラムの集計タイミングも1フレームで約1回なのでセクタ割り込みでゲインを変更する場合の約1/(31*16*2)の時間でゲインの制御ができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】光磁気ディスク再生装置の概略構成図である。
【図2】伝送路復号部3の詳細な構成図である。
【図3】ディジタルPLLとビタビ復号器のブロック図である。
【図4】RLL(1,7)とPR(1,2,1)の組み合わせに対応するトレリス線図である。
【図5】PR(1,2,1)ビタビ復号器の詳細な構成図である。
【図6】データ系列に応じた出力を説明するための図である。
【図7】SAM計算部の構成図である。
【図8】ディジタルPLLの詳細な構成図である。
【図9】LPFの構成図である。
【図10】ゲイン制御の状態遷移図である。
【図11】積分項のリミット処理方法を説明するための図である。
【図12】ロックモード生成器の詳細な構成図である。
【図13】ゲイン制御の他の状態遷移図である。
【図14】ロックモード生成器の他の詳細な構成図である。
【図15】ヒストグラムを示す図である。
【図16】ループフィルタゲインKp_autoの設定値と実際の値を示す図である。
【図17】ループフィルタゲインKi_autoの設定値と実際の値を示す図である。
【図18】SAMイネーブル信号のタイミングチャートである。
【図19】図13の状態遷移を光磁気ディスク再生装置のディジタルPLLが行ったときの効果を示す図である。
【図20】割り込みタイミングとSAM観測タイミングを示すタイミングチャートである。
【図21】従来の光磁気ディスク再生装置の要部のブロック図である。
【図22】ループゲインを大きくした場合と、小さくした場合のキャプチャ又はロック状態を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1 光磁気ディスク再生装置、2 光磁気ディスク、3 伝送路復号器、7 増幅器、8 A/D変換器、9 ゲインコントロール回路、10 イコライザ、11 ディジタルPLL、12 ビタビ復号器、17 位相検出器、18 位相比較器、19 ループフィルタ、23 電圧制御発振器、24 補間フィルタ、29 ロックモード生成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
シーケンスアンプリチュードマージン(SAM)及びヒストグラムに基づいて制御したフィルタゲインを、上記位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算し、上記位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタと、
上記ループフィルタによって出力されたフィルタ信号に基づいて上記位相誤差調整電圧信号を生成する電圧制御発振手段と、
上記電圧制御発振手段によって生成された上記位相誤差調整電圧信号に基づいて上記再生RF信号の位相を補間する補間手段と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
【請求項2】
上記再生RF信号入力と上記補間手段からの位相が補間されたRF信号と上記SAM及びヒストグラムに基づいて上記フィルタゲインを自動制御するフィルタゲイン制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の位相同期ループ回路。
【請求項3】
上記フィルタゲイン制御手段は、待機モードから入力波形の有無を検出し、入力波形が有ると、キャプチャモードに遷移し、フィルタゲインを大きくしながら、上記SAMを判定し、その値が一定の値になったらロックモードに遷移して上記フィルタゲインを小さくし、かつ上記SAM算出用のクロックを停止させ、SAMに代わりヒストグラムを集計することを特徴とする請求項2記載の位相同期ループ回路。
【請求項4】
上記フィルタゲイン制御手段は、上記ロックモードにて上記フィルタゲインを小さくしたのち、上記SAMに代えて集計しているヒストグラムが3値に分かれなくなったら、上記キャプチャモードに遷移し、フィルタゲインを大きくすることを特徴とする請求項3記載の位相同期ループ回路。
【請求項5】
上記フィルタゲイン制御手段は、上記キャプチャモード及び上記ロックモードにて入力波形が無くなると上記待機モードに遷移することを特徴とする請求項4記載の位相同期ループ回路。
【請求項6】
上記フィルタゲイン制御手段は、上記キャプチャモードにて上記位相誤差の周波数偏差が所定の閾値を超えたときには、上記ループフィルタのフィルタ出力をリセットすることを特徴とする請求項3記載の位相同期ループ回路。
【請求項7】
上記フィルタゲイン制御手段は、上記ロックモードにて上記ループフィルタのフィルタ出力にリミッタをかけて反転しないようにしていることを特徴とする請求項3記載の位相同期ループ回路。
【請求項8】
再生RF信号からクロックを抽出する位相同期ループ回路のループフィルタゲインを制御するループフィルタゲイン制御方法において、
位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出する位相誤差検出工程と、
シーケンスアンプリチュードマージン(SAM)及びヒストグラムに基づいて制御したフィルタゲインを、上記位相誤差検出工程で検出された位相誤差に乗算し、上記位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタ工程と、
上記ループフィルタ工程によって出力されたフィルタ信号に基づいて上記位相誤差調整電圧信号を生成する電圧制御発振工程と、
上記電圧制御発振工程によって生成された上記位相誤差調整電圧信号に基づいて上記再生RF信号の位相を補間する補間工程と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路のループフィルタゲイン制御方法。
【請求項9】
上記再生RF信号入力と上記補間工程からの位相が補間されたRF信号と上記SAM及びヒストグラムに基づいて上記フィルタゲインを自動制御するフィルタゲイン制御工程をさらに備えることを特徴とする請求項8記載の位相同期ループ回路のループフィルタゲイン制御方法。
【請求項10】
記録媒体から読み出し手段により記録信号を読み出し、この読み出し信号から位相同期ループ回路を用いてクロックを抽出し、このクロックに基づいて読み出し信号から再生信号を出力する再生装置において、
上記位相同期ループ回路は、
位相誤差調整電圧信号と再生RF信号の位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
シーケンスアンプリチュードマージン(SAM)及びヒストグラムに基づいて制御したフィルタゲインを、上記位相誤差検出手段で検出された位相誤差に乗算し、上記位相誤差の周波数変動に対して追従したフィルタ信号を出力するループフィルタと
上記ループフィルタによって出力されたフィルタ信号に基づいて上記位相誤差調整電圧信号を生成する電圧制御発振手段と、
上記電圧制御発振手段によって生成された上記位相誤差調整電圧信号に基づいて上記再生RF信号の位相を補間する補間手段と
を備えることを特徴とする再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2007−80469(P2007−80469A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270912(P2005−270912)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】