説明

位置情報利用装置

【課題】POIへの立ち寄りをより正確に認識し、POIへの立ち寄りをトリガとする車両制御を行うための技術を提供する。
【解決手段】POI認識処理部33は、走行軌跡処理部31及びマップマッチング処理部32により算出された現在位置と、ジャイロセンサ23及びステアリングセンサ24からの検出信号とに基づき、自車両がPOIに立ち寄ったか否かを判定する。そして、自車両がPOIへ立ち寄ったと判定した場合、当該判定の精度に関する認識自信度を算出する。そして、車両制御ECU27は、この認識自信度に応じた動作モードで車載機器に対して当該POIに対応する所定の動作を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POI(Point Of Interest)への立ち寄りをより正確に認識するための技術、及びPOIへの立ち寄り認識に対する自信度に応じた車両制御を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーションシステムには、特許文献1に記載のように、POIとしてのガソリンスタンドやコンビニエンスストア等の情報をPOIデータとして格納し、このPOIデータに基づいてPOIに関する種々の情報をユーザに提供する機能を有するものが知られている。
【0003】
また、特許文献2に記載のように、POIの存在する区画をより正確に特定し、POIの位置を正確に伝達し利用するための技術も案出されている。
【特許文献1】特開2004−286653号公報
【特許文献2】特開2005−338032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなPOIデータを用いることで、POIへの立ち寄りをトリガとした種々の車両制御を実現可能であると考えられる。例えば、ガソリンスタンドへ立ち寄った場合、自動で給油口を開放したり、トリップメータをリセットしたり、あるいはこれらの操作を自動で行うか否かをユーザに対して問い合わせ、ユーザからの指示に応じてこれらの処理を実行したりするといった具合に、POIに応じた種々の車両制御を行う。
【0005】
このようなPOIへの立ち寄りをトリガとした車両制御を実現するためには、POIへの立ち寄りを正確に認識することが肝要である。
ナビゲーションシステムにおいてPOIへの立ち寄りを認識するためには、POIの位置情報(例えば緯度・経度、地理的範囲等)と、GPS(Global Positioning System)等を利用した衛星測位及び自立航法の併用により算出される走行軌跡とを単純に比較することが考えられる。しかしながら、衛星測位及び自立航法により算出される走行軌跡には誤差があり、POIの位置情報と走行軌跡を単純に比較するだけではPOIへの立ち寄りを正確に認識するのは困難であると推測される。
【0006】
図7は、実際にPOIとしてのガソリンスタンドへ複数回立ち寄った際の、衛星測位及び自立航法により算出された走行軌跡を地図上にプロットした図である。この図7に示すように、実際にはガソリンスタンドへ立ち寄っていても、走行軌跡がガソリンスタンドを経由していないケースがあり、POIの位置情報と走行軌跡を単純に比較するだけではPOIへの立ち寄りを正確に認識するのは困難であることが分かる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みなされており、POIへの立ち寄りをより正確に認識するための技術を提供すること、及びPOIへの立ち寄りをトリガとする車両制御を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の位置情報利用装置は、位置算出手段により算出された現在位置に基づき、POIの位置情報を基準とする所定の立ち寄り判定エリア内に自車両が存在するか否かを判定し、この判定により立ち寄り判定エリア内に自車両が存在すると判定しているときにおける、自車両の進行方向の変化に関する状態情報に基づき、自車両が当該POIに立ち寄ったか否かを判定することを特徴とする。
【0009】
車両が現在走行中の道路からPOIとなる施設等に進入する際、必ずPOI付近での方向転換が伴うものと推測される。そこで本発明の位置情報利用装置では、位置算出手段により算出された現在位置の情報だけでなく、POI進入に伴う自車両の進行方向の変化を加味してPOIへの立ち寄りを判定することで、POIの位置情報と走行軌跡とを単純に比較する場合に比べて、より正確にPOIへの立ち寄りを認識することができる。
【0010】
また、POIへの立ち寄り認識には、衛星測位及び自立航法の併用により算出される現在位置情報を道路上に位置合わせして現在位置を決定する、いわゆるマップマッチングを用いて算出された現在位置を用いてもよい。
【0011】
そこで、請求項2に記載の位置情報利用装置のように構成するとよい。すなわち、位置算出手段は、地図データに基づいて道路上に位置合わせした現在位置を算出する。そして、この算出された道路上の現在位置に基づき、POIに隣接する道路上に設定された前記立ち寄り判定エリア内に自車両が存在するか否かを判定し、この判定により前記立ち寄り判定エリア内に自車両が存在すると判定しているときにおける、前記取得手段により取得された状態情報に基づき、自車両が当該POIに立ち寄ったか否かを判定する。
【0012】
このように構成された位置情報利用装置によれば、道路上に位置合わせされた現在位置と、POIに隣接する道路上に設定された立ち寄り判定エリアとの比較を行うことによって、より正確にPOIへの立ち寄りを認識することができる。
【0013】
つぎに、請求項3に記載の位置情報利用装置は、判定手段によって自車両がPOIに立ち寄ったと判定された場合、車載機器に対して当該POIに対応する所定の動作を実行させる車載機器制御手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
このように構成された位置情報利用装置によれば、より正確なPOIへの立ち寄り認識に基づき、立ち寄ったPOIに応じた種々の車両制御を実現できる。
また、上述のような車両制御を行う位置情報利用装置の信頼性をより高めるためには、POIへの立ち寄り認識の精度が低く誤認識の可能性があると推測される状況においては、POIへ立ち寄った際に行う車両制御の内容を制限するといった具合に、認識結果の自信度に応じた態様で車両制御を行うといった配慮も必要である。
【0015】
そこで、請求項4に記載の位置情報利用装置のように構成するとよい。つまり、判定手段によって自車両がPOIに立ち寄ったと判定された際、当該判定の精度に関する自信度を算出する自信度算出手段を更に備える。そして、車載機器制御手段は、自信度算出手段によって算出された自信度に応じた所定の態様で当該POIに対応する所定の動作を実行させる。
【0016】
このように構成された位置情報利用装置によれば、POIへの立ち寄り判定の精度に関する自信度が高い場合には、所定の車両制御を制限無く実行することでユーザにとっての利便性を高め、自信度が低く誤認識の可能性がある推測される状況には、車両制御の内容を制限することで、車両制御の信頼性を確保するといった具合に、自信度に応じて柔軟な態様で車両制御を行うことができる。
【0017】
なお、自信度の算出は、請求項5に記載のように、位置算出手段の算出精度を評定して、この評定結果に基づいて行うとよい。
ここで、位置算出手段の算出精度による自信度の算出は、例えば、衛星電波の受信状況の良否、車載センサの検出誤差の大小、マップマッチングに用いる地図データの精度等、現在位置の算出結果の精度に影響を及ぼす要素に対する評定結果に基づいて行うことが考えられる。そして、現在位置の誤差が比較的小さいと推定される状況においては自信度を大きくし、誤差が比較的大きいと推定される状況においては自信度を小さくすることが考えられる。
【0018】
このように構成された位置情報利用装置によれば、推測される現在位置の誤差の度合に応じた適切な態様で車両制御を実行できる。
つぎに、請求項6に記載の位置情報利用装置は、各POIのユーザ評価定数を記憶しており、自車両がPOIに立ち寄ったと判定された際、当該判定に対する評価をユーザから受け付け、この受け付けた評価に応じて当該POIのユーザ評価定数を変更する。そして、自信度算出手段は、当該POIのユーザ評価定数に基づき自信度を算出することを特徴とする。
【0019】
このように構成された位置情報利用装置によれば、POIへの立ち寄り認識に対するユーザからの評価をユーザ評価定数として逐次蓄積しておき、POIへの立ち寄りを認識した際、このユーザ評価定数を参照することで、ユーザからの評価を反映した自信度を算出できる。つまり、過去においてユーザから立ち寄り認識が良好行われたとの評価がされていれば自信度を高く算出し、立ち寄り認識が良好に行われなかったとの評価がされていれば自信度を低く算出するといった具合に、ユーザからの評価を反映した柔軟な態様で車両制御を実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[ナビゲーション装置1の構成の説明]
図1は、本発明が適当されたナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、ナビゲーション装置1は、GPS受信部21と、車速センサ22と、ジャイロセンサ23と、ステアリングセンサ24と、地図データベース25aと、POIデータベース25bと、ディスプレイ26と、車両制御ECU27と、操作スイッチ群28と、制御装置30とを備える。
【0022】
GPS受信部21は、GPS用の人工衛星の送信電波をGPSアンテナを介して受信し、自車両の位置を検出する。車速センサ22は、自車両の速度に応じた検出信号を出力する。ジャイロセンサ23は、自車両の回転運動の加速度に応じた検出信号を出力する。ステアリングセンサ24は、ステアリングホイールの操作方向及び操作量に応じた検出信号を出力する。
【0023】
地図データベース25aには、リンク情報、ノード情報、及びリンク間接続情報等の道路に関するデータや、位置検出精度向上のためのいわゆるマップマッチングデータ等の各種地図データが格納されている。
【0024】
リンク情報としては、リンクを特定するための固有の番号であるリンクIDや、例えば高速道路、有料道路、一般道等を識別するためのリンククラスや、リンクの始端座標及び終端座標や、リンクの長さを示すリンク長などのリンク自体に関する情報がある。また、ノード情報としては、リンクを結ぶノード固有の番号である「ノードID」や、ノード緯度、ノード経度等の情報がある。
【0025】
POIデータベース25bには、各種POI(例えば、ガソリンスタンド、駐車場等)の識別情報、位置座標を示すデータ、POIに隣接する道路に対応するリンクを特定するデータ、後述の立ち寄り判定エリアの範囲に関するデータ、POI周辺の地図精度を示すデータ、POIへの立ち寄り認識に対するユーザ評価定数を示すデータ等、種々のデータが各POIごとに対応付けられて格納されている。
【0026】
なお、地図データベース25a及びPOIデータベース25bに用いられる記憶媒体としては、ハードディスク、DVD−ROM、CD−ROM、半導体メモリ等がある。
ディスプレイ26は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT等の何れを用いてもよい。ディスプレイ26の表示画面には、自車両の現在地を示すマーク、現在地周辺の地図、地図上の各種施設の名称やシンボルマーク等を重ねて表示することができる。
【0027】
車両制御ECU27は、マイクロコンピュータを中心に構成されている電子回路であり、制御装置30から入力されるPOI立ち寄り認識情及び認識自信度等のデータに基づき、車内LAN(図示なし)等の適宜な通信回線を介して、自車両に搭載された各種機器を作動させる(車両制御処理)。
【0028】
車両制御ECU27が車載機器に対して行う制御の一例としては、次のようなものがある。例えば、POIとしてのガソリンスタンドに立ち寄ったと判定された場合、フューエルリッドオープナを作動させて給油口の蓋を開けたり、トリップメータをリセットしたりする。このように、車両制御ECU27は、立ち寄ったPOIに対応する車載機器に対して所定の作動をさせる。
【0029】
操作スイッチ群28は、ユーザからの各種指示を入力ためのものであり、ディスプレイ26と一体に構成され表示画面上に設置されるタッチパネルや、ディスプレイ26の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等が用いられる。
【0030】
制御装置30は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を制御する。この制御装置30は、ROM等に記憶されたプログラムに従って、各種処理を実行する。
【0031】
例えば、ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理は、GPS受信部21、車速センサ22及びジャイロセンサ23からの検出信号に基づいて座標及び進行方向の組として自車両の現在位置を算出し、地図データベース25aから読込んだ現在位置付近の地図等をディスプレイ26に表示する処理である。また、経路案内処理は、地図データベース25aに格納された地点データと、操作スイッチ群28の操作に従って設定された目的地とに基づいて、現在位置から目的地までの最適な経路を算出し、その算出した経路に対する走行案内を行う処理である。このように自動的に最適な経路を設定する手法として、ダイクストラ法によるコスト計算等の手法が知られている。
【0032】
また、制御装置30は、上述の地図表示処理や経路案内処理等に並行して、POIへの立ち寄りを認識し、POI立ち寄り認識に関する所定の情報を車両制御ECU27へ通知する「POI立ち寄り認識処理」を実行する。
【0033】
制御装置30は、自車両の現在位置を算出する処理や上述の「POI立ち寄り認識処理」を行う機能的構成として走行軌跡処理部31と、マップマッチング処理部32と、POI認識処理部33とを備える。
【0034】
走行軌跡処理部31は、GPS受信部21、車速センサ22及びジャイロセンサ23からの検出信号に基づき、自車両の走行軌跡を算出する処理を行う。
マップマッチング処理部32は、地図データベース25aから読み込んだ地図データ等に基づき、走行軌跡処理部31により算出された走行軌跡を道路上に位置合わせし、自車両の道路上における現在位置を算出する処理を行う。
【0035】
POI認識処理部33は、上述の「POI立ち寄り認識処理」として、マップマッチング処理部32により算出された自車両の現在位置、地図データベース25a及びPOIデータベース25bから読み出した各種情報、ジャイロセンサ23及びステアリングセンサ24からの検出信号等に基づいて自車両のPOIへの立ち寄りを認識すると共に、当該認識の精度に関する認識自信度を算出し、POIへの立ち寄りを認識した旨を通知する所定の情報と認識自信度のデータとを車両制御ECU27へ送信する処理を行う。この「POI立ち寄り認識処理」の詳細な説明については後述する。
【0036】
以上、実施形態のナビゲーション装置1の概略構成について説明したが、本実施形態における各構成と、特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態におけるGPS受信部21、車速センサ22、ジャイロセンサ23、走行軌跡処理部31、及びマップマッチング処理部32が、特許請求の範囲における位置算出手段に相当する。また、地図データベース25aが地図データ記憶手段に相当し、POIデータベース25bが記憶手段に相当する。また、ジャイロセンサ23及びステアリングセンサ24が取得手段に相当する。また、POI認識処理部33が、判定手段、自信度算出手段、及び評価受付手段に相当する。また、車両制御ECU27が車載機器制御手段に相当する。
【0037】
[POI立ち寄り認識処理の説明]
以下、上述の「POI立ち寄り認識処理」について、図2のフローチャート及び図4〜6の説明図に基づいて説明する。
【0038】
図2は、制御装置30のPOI認識処理部33が実行する「POI立ち寄り認識処理」のメイン処理の手順を示すフローチャートである。
POI認識処理部33は、「POI立ち寄り認識処理」の開始後、まずマップマッチング処理部32からマップマッチング後の自車両の現在位置を取得する(ステップ10。以下、ステップを記号Sで表記する)。
【0039】
つぎに、マップマッチング処理部32から取得した現在位置、地図データベース25a及びPOIデータベース25bから読み出した各種情報に基づき、自車両がPOIに隣接するリンク上に設定された立ち寄り判定エリア内に存在するか否かを判定する(S20)。
【0040】
ここで、S20の処理の詳細について図4,5に基づいて説明する。
図4は、POIに隣接するリンク上に設定された立ち寄り判定エリアへの進入を検知する方法を模式的に示す説明図である。
【0041】
ここでは、POIの周辺に、当該POIに隣接するリンクとしてのPOI隣接リンクL1、POI隣接リンクL1の両端に位置するPOI近傍ノードN1,N2が存在する地域を、自車両がPOI近傍ノードN1側からN2側へ向かって走行している状況を想定している。
【0042】
上述のS20の処理の過程において、POI隣接リンクL1上に立ち寄り判定エリアが設定される。この立ち寄り判定エリアは、POIの座標(X,Y)からPOI隣接リンクL1へ引いた垂線と、POI隣接リンクL1との交点Hの座標(XH,YH)を中心に、POI隣接リンクL1に沿って所定の距離±Zの範囲に設定される。この距離Zの値は、POIごとに固有の値であってもよいし、各POIに共通の値であってよい。あるいは、POIごとに予め設定された立ち寄り判定エリアのデータを、予めPOIデータベースに登録しておいてもよい。
【0043】
ここで、マップマッチング処理部32から取得した現在位置の情報に基づき、自車両がPOI近傍ノードN1を通過したと判断した場合、このPOI近傍ノードN1を基準とするPOI近接リンクL1上の自車両の相対位置を求め、この相対位置に基づいて自車両が立ち寄り判定エリアに存在するか否かを判定する。
【0044】
具体的には、POI近傍ノードN1通過時からの走行距離D2に相当する位置が、POI近傍ノードN1を基準とするPOI近接リンクL1上の自車両の相対位置となる。ここで、POI近傍ノードN1通過時からの走行距離D2は、ノード通過後の自車両の速度の時間による積分によって算出される。そして、POI近傍ノードN1から上述の交点Hまでの距離D1と、POI近傍ノードN1通過時からの自車両の走行距離D2との差分の絶対値がZ以下である場合、自車両が立ち寄り判定エリア内に存在すると判定される。
【0045】
なお、図4に示す道路において、自車両がPOI近傍ノードN2側からN1側へ向かって走行している場合は、通過したPOI近傍ノードN2を基準とする自車両の相対位置に基づいて、立ち寄り判定エリア内に自車両が存在するか否かを判定する。
【0046】
一方、図5は、交差点に隣接してPOIが存在しており、このPOIに隣接するリンクとしてのPOI隣接リンクLA、LBと、POI隣接リンクLA,LBそれぞれの両端に位置するPOI近傍ノードA1,A2,B1,B2と、POI隣接リンクLA、LBが交差する交差点ノードC1とが存在する道路状況を模式的に示す図である。
【0047】
図5に示すように、交差点においてPOIに隣接する複数のPOI隣接リンクLA,LBに対しては、各リンク上にそれぞれ上述の要領で立ち寄り判定エリアA,Bが設定される。そして、この図に示すように、自車両がPOI隣接リンクLA上をPOI近傍ノードA2側からA1側へ向かって走行している場合は、通過したPOI近傍ノードA2を基準とする自車両の相対位置に基づいて、立ち寄り判定エリアA内に自車両が存在するか否かを判定する。あるいは、自車両がPOI隣接リンクLA上をPOI近傍ノードA1側からA2側へ向かって走行している場合は、通過したPOI近傍ノードA1を基準とする自車両の相対位置に基づいて、立ち寄り判定エリアA内に自車両が存在するか否かを判定する。
【0048】
一方、自車両がPOI隣接リンクLB上をPOI近傍ノードB2(又はB1)側からB1(又はB2)側へ向かって走行している場合は、通過したPOI近傍ノードB2(又はB1)を基準とする自車両の相対位置に基づいて、立ち寄り判定エリアB内に自車両が存在するか否かを判定する。
【0049】
図2のフローチャートの説明に戻る。S20において、自車両がPOI隣接リンク上に設定された立ち寄り判定エリア内に存在しないと判定した場合(S20:NO)、「POI立ち寄り認識処理」を終了する。
【0050】
一方、自車両がPOI隣接リンク上に設定された立ち寄り判定エリア内に存在すると判定した場合(S20:YES)、ジャイロセンサ23及びステアリングセンサ24からの検出値を取得する(S30)。そして、ジャイロセンサ23及びステアリングセンサ24から取得した検出値に基づき、POIが存在する方向への自車両の回転運動の加速度の大きさ及びステアリングホイールの操作量が、共に規定値を超えたか否かを判定する(S40)。
【0051】
なお、ここでは、ジャイロセンサ23又はステアリングセンサ24の何れか一方を用いて判定を行ってもよいし、自車両の進行方向の変化を示す情報として、更に方向指示器の作動情報等を加味して判定を行うようにしてもよい。
【0052】
S40において、自車両の回転運動の加速度の大きさ、又はステアリングホイールの操作量の少なくとも何れかが、規定値を超えていないと判定した場合(S40:NO)、S20の処理へ戻る。
【0053】
一方、自車両の回転運動の加速度の大きさ及びステアリングホイールの操作量が、共に規定値を超えたと判定した場合(S40:YES)、自車両がPOIへ立ち寄ったと認識し、当該認識の精度に関する認識自信度を算出する(S50)。
【0054】
本実施形態では、認識自信度として、ユーザ評価定数、位置算出精度評定(地図精度)、位置算出精度評定(GPS受信強度)の各項目について、それぞれ1〜5の評価値を算出する。
【0055】
ユーザ評価定数は、過去の立ち寄り認識の精度に対するユーザからの評価を蓄積したデータであり、各POIに対応付けてPOIデータベース25bに格納されている。
よって、S50においては、立ち寄りが認識されたPOIに対応するユーザ評価定数をPOIデータベース25bから読み出し、これを認識自信度の評価値として取得する。
【0056】
なお、このユーザ評価定数は、初期値=「1」の状態から、POIへ立ち寄ったと認識する度に、立ち寄り認識が正確であった旨の指示がユーザから入力されれば評価値に「1」が加算され、誤認識であった旨の指示が入力されれば評価値から「1」が減算される。ただし、本実施形態では評価値の最低値は「1」で、最高値は「5」である。このように、ユーザ評価定数は、当該POIへの立ち寄りを認識する度に随時更新され、POIへの立ち寄り認識の精度に対するユーザによる最新の評価を蓄積することがきる。
【0057】
位置算出精度評定(地図精度)は、立ち寄りが認識されたPOI周辺におけるマップマッチング用の地図の精度を示す指標であり、本実施形態では、評価値として1〜5の数値で定義される。一般に、マップマッチング用の地図の誤差が大きければ、マップマッチングにより算出される現在位置の誤差も大きくなり、地図の誤差が小さければ、現在位置の誤差も小さくなる。よって、位置算出の精度を評定するのに地図の精度に関する情報を利用することができる。
【0058】
具体的には、POIデータベース25bに格納されているPOI付近の地図の精度に関するデータに基づき、例えば、地図の誤差がa(m)以内ならば評価値「5」、a〜b(m)の範囲ならば評価値「4」、b〜c(m)の範囲ならば評価値「3」…(ただし、a<b<c…)といった具合に、誤差が小さい順に5〜1の数値を位置算出精度評定(地図精度)の評価値として算出する。
【0059】
位置算出精度評定(GPS受信強度)は、GPS受信部21における衛星電波の受信強度を示す指標であり、本実施形態では、評価値として1〜5の数値で定義される。一般に、GPSの受信強度が大きければ衛星測位の精度は向上し、受信強度が小さければ衛星測位の精度は低下する。よって、位置算出の精度を評定するのにGPSの受信感度を利用することができる。
【0060】
具体的には、GPS受信部21が受信した衛星電波の受信強度に基づき、受信強度がα(dB)以上ならば評価値「5」、α〜β(dB)の範囲ならば評価値「4」、β〜γ(dB)の範囲ならば評価値「3」…(ただし、α>β>γ…)といった具合に、受信強度が大きい順に5〜1の数値を位置算出精度評定(GPS受信強度)の評価値として算出する。
【0061】
なお、上述のようなGPSの受信感度の他に、GPS衛星の配置状況に伴う精度劣化指数(DOP)等の衛星測位の精度に関する種々の指標を、位置算出の精度を評定するのに利用してもよい。
【0062】
以上のようにして算出される認識自信度の具体例を図6に示す。
ここで、図6(a)は、ユーザ評価定数、位置算出精度評定(地図精度)、位置算出精度評定(GPS受信感度)の全ての項目において評価値「5」が算出された例、すなわち、認識自信度が最高値である例を示している。
【0063】
一方、図6(b)は、ユーザ評価定数の評価値が「2」、位置算出精度評定(地図精度)の評価値が「4」、位置算出精度評定(GPS受信感度)の評価値が「3」が算出された例を示している。
【0064】
図2のフローチャートの説明に戻る。S50において認識自信度が算出された後、立ち寄りが認識されたPOIの識別情報等の必要な情報を含むPOI立ち寄り認識情報と、先の処理において算出した認識自信度のデータとを車両制御ECU27へ送信する(S60)。
【0065】
そして、当該POIへの立ち寄り認識に対する評価を入力するための操作をユーザに促す旨のメッセージを、ディスプレイ26による表示やスピーカ(図示なし)からの音声出力を介して報知し、このメッセージへの応答として操作スイッチ群28を介して入力されたユーザからの指示に基づき、当該POIに対応するユーザ評価定数を更新する(S70)。
【0066】
具体的には、立ち寄り認識の成否を問い合わせる旨のメッセージをユーザに対して報知し、立ち寄り認識が正確であった旨の指示がユーザから入力されればユーザ評価定数の評価値に「1」を加算し、誤認識であった旨の指示が入力されればユーザ評価定数の評価値から「1」を減算する。
【0067】
あるいは、「ガソリンスタンドに到着しました。給油口を空け、トリップメータをリセットしますか?」といったメッセージのように、POIへの立ち寄りを認識した際に行うべき車両制御の実行の可否を問い合わせる旨のメッセージをユーザに対して報知し、車両制御を行う旨の指示が入力されればユーザ評価定数の評価値に「1」を加算し、車両制御を行わない旨の指示が入力されればユーザ評価定数の評価値から「1」を減算する。
【0068】
[車両制御処理の説明]
図3は、車両制御ECU27が実行する「車両制御処理」のメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【0069】
車両制御ECU27は、「車両制御処理」の開始後、まずPOI認識処理部33からPOI立ち寄り認識情報及び認識自信度のデータを受信したか否かを判定する(S110)。このPOI立ち寄り認識情報及び認識自信度のデータは、上述の「POI立ち寄り認識処理」(図2参照)のS60において送信されるものである。ここで、POI立ち寄り認識情報及び認識自信度のデータを受信していないと判定している間(S110:NO)、この処理を繰り返す。
【0070】
そして、POI立ち寄り認識情報及び認識自信度のデータを受信したと判定した場合(S120)、受信した認識自信度のデータに基づき、認識自信度が規定値以上か否かを判定する(S120)。
【0071】
ここで、認識自信度が規定値以上であると判定した場合(S120:YES)、通常動作モードによって当該POIに対応する車載機器の作動を制御する(S130)。一方、認識自信度が規定値未満であると判定した場合(S120:NO)、制限動作モードによって当該POIに対応する車載機器の作動を制御する(S140)。
【0072】
具体的には、例えば、認識自身度におけるユーザ評価定数、位置算出精度評定(地図精度)、位置算出精度評定(GPS受信感度)の各項目の評価値に対して、規定値が全て「5」に設定されている場合、図6(a)に示すように、認識自信度における各項目の評価値が全て「5」の場合においては、通常動作モードによる車両制御を行う。
【0073】
なお、ここでいう通常動作モードとは、POIへの立ち寄り認識の精度が高い(すなわち、誤認識の可能性が低い)と推測される場合において、ユーザにとっての利便性を優先して、当該POIに立ち寄った際に実行すべき車両制御を制限なく行う動作モードである。例えば、ガソリンスタンドへの立ち寄りを認識した場合、直ちにフューエルリッドオープナを作動させて給油口の蓋を開けたり、トリップメータをリセットしたりする。
【0074】
一方、図6(b)に示すように、認識自信度の何れかの評価値が規定値の「5」に満たない場合においては、制限動作モードによる車両制御を行う。
なお、ここでいう制限動作モードとは、POIへの立ち寄り認識の精度が低い(すなわち、誤認識の可能性が比較的高い)と推測される場合において、車両制御の信頼性を優先して、当該POIに立ち寄った際に実行すべき車両制御の内容に制限を加えて実行する動作モードである。例えば、ガソリンスタンドへの立ち寄りを認識した場合、給油口の開放やトリップメータのリセットといった作動を実際に実行するか否かを事前にユーザに問い合わせ、ユーザによって実行を許可する旨の指示が入力された場合のみ、当該作動を実行する。
【0075】
あるいは、認識自信度が著しく低い状況においては、当該POIに立ち寄った際に実行すべき車両制御を全く行わないといった対応も可能である。
[効果]
上記実施形態のナビゲーション装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0076】
衛星測位及び自立航法により算出された現在位置の情報だけでなく、POI進入に伴う自車両の進行方向の変化を加味してPOIへの立ち寄りを認識することで、POIの位置情報と走行軌跡とを単純に比較する場合に比べて、より正確にPOIへの立ち寄りを認識することができる。
【0077】
また、マップマッチングにより道路上に位置合わせされた現在位置の情報に基づき、POI隣接リンク上に設定された立ち寄り判定エリアと、当該リンク上の自車両の位置との相対的な位置関係に基づいて立ち寄り判定を行うことによって、より正確にPOIへの立ち寄りを認識することができる。
【0078】
そして、POIへの立ち寄り判定の精度に関する認識自信度に応じたモードで車両制御を行うことで、ユーザにおける利便性や信頼性を考慮した柔軟な態様で車両制御を行うことができる。
【0079】
また、認識自信度として、ユーザ評価定数、位置算出精度評定(地図精度、GPS受信強度)の各項目について評定することで、過去の立ち寄り認識におけるユーザからの評価や位置検出の誤差の度合を考慮した適切な態様で車両制御を実行できる。
【0080】
[別実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り様々な態様にて実施することが可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態では、車両制御ECU27による制御対象となる車載機器として、フューエルリッドオープナやトリップメータを例に挙げているが、これに限らず、パワーウィンドウ、パワールーフ、パワーシート、ワイパー、灯火類、電動バックミラー、エアコン、オーディオ、電動ドアロック等、種々の車載機器を制御対象としてもよい。
【0082】
また、POIに対応する車両制御として、ガソリンスタンドにおける給油口の開放やトリップメータのリセットといった作動以外に、例えば、地下駐車場に進入する際には、前照灯を点灯し、窓やルーフを閉め、エアコンのベンチレータを室内循環にするといった作動や、飲食店等に併設されているドライブスルーに進入する際には、窓を開け、オーディオのボリュームを下げるといった作動等、種々の作動を制御可能に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明が適用されたナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】制御装置30のPOI認識処理部33が実行する「POI立ち寄り認識処理」のメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】車両制御ECU27が実行する「車両制御処理」のメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】POIに隣接するリンク上に設定された立ち寄り判定エリアへの進入を検知する方法を模式的に示す説明図である。
【図5】POIに隣接するリンク上に設定された立ち寄り判定エリアへの進入を検知する方法を模式的に示す説明図である。
【図6】認識自信度の算出例を模式的に示す説明図である。
【図7】POIとしてのガソリンスタンドへ複数回立ち寄った際の、衛星測位及び自立航法により算出された走行軌跡を地図上にプロットした図である。
【符号の説明】
【0084】
1…ナビゲーション装置、21…GPS受信部、22…車速センサ、23…ジャイロセンサ、24…ステアリングセンサ、25a…地図データベース、25b…POIデータベース、26…ディスプレイ、27…車両制御ECU、28…操作スイッチ群、30…制御装置、31…走行軌跡処理部、32…マップマッチング処理部、33…POI認識処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を算出する位置算出手段と、
POI(Point Of Interest)の位置情報を記憶する記憶手段と、
自車両の進行方向の変化に関する状態情報を取得する取得手段と、
前記位置算出手段により算出された現在位置に基づき、前記POIの位置情報を基準とする所定の立ち寄り判定エリア内に自車両が存在するか否かを判定し、この判定により前記立ち寄り判定エリア内に自車両が存在すると判定しているときにおける、前記取得手段により取得された状態情報に基づき、自車両が当該POIに立ち寄ったか否かを判定する判定手段とを備えること
を特徴とする位置情報利用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置情報利用装置において、
地図データを記憶する地図データ記憶手段を更に備え、
前記位置算出手段は、前記地図データに基づいて道路上に位置合わせした現在位置を算出し、
前記判定手段は、前記位置算出手段によって算出された道路上の現在位置に基づき、前記POIに隣接する道路上に設定された前記立ち寄り判定エリア内に自車両が存在するか否かを判定し、この判定により前記立ち寄り判定エリア内に自車両が存在すると判定しているときにおける、前記取得手段により取得された状態情報に基づき、自車両が当該POIに立ち寄ったか否かを判定すること
を特徴とする位置情報利用装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の位置情報利用装置において、
車載機器に接続され、
前記判定手段によって自車両がPOIに立ち寄ったと判定された場合、前記車載機器に対して当該POIに対応する所定の動作を実行させる車載機器制御手段を更に備えること
を特徴とする位置情報利用装置。
【請求項4】
請求項3に記載の位置情報利用装置において、
前記判定手段によって自車両がPOIに立ち寄ったと判定された際、当該判定の精度に関する自信度を算出する自信度算出手段を更に備え、
前記車載機器制御手段は、前記自信度算出手段によって算出された自信度に応じた所定態様で当該POIに対応する所定の動作を実行させること
を特徴とする位置情報利用装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位置情報利用装置において、
前記自信度算出手段は、前記位置算出手段の算出精度を評定し、この評定結果に基づき前記自信度を算出すること
を特徴とする位置情報利用装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の位置情報利用装置において、
前記記憶手段は、各POIのユーザ評価定数を記憶しており、
前記判定手段により自車両がPOIに立ち寄ったと判定された際、当該判定に対する評価をユーザから受け付け、この受け付けた評価に応じて当該POIのユーザ評価定数を変更する評価受付手段を更に備え、
前記自信度算出手段は、前記記憶手段に記憶されている当該POIのユーザ評価定数に基づき前記自信度を算出すること
を特徴とする位置情報利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−14713(P2008−14713A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184594(P2006−184594)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】