説明

低消費電力で着呼を待ち受ける方法、構内交換装置、移動端末及びプログラム

【課題】セルラ通信インタフェースと無線LANインタフェースとを有する移動端末が、低消費電力で呼接続を待ち受けることができる方法等を提供する。
【解決手段】移動端末が、無線LAN通信ネットワークを介して構内SIPサーバへ、電源オフ状態を含むREGISTERを送信し、無線LANインタフェースの電源をオフにする。その後、構内SIPサーバが、セルラ通信ネットワークを介して発呼端末からの着呼を受け付けた際に、当該着呼の呼接続を保留する。次に、構内SIPサーバは、セルラ通信ネットワークを介して移動端末へ発呼し、移動端末が、無線LANインタフェースの電源をオンにする。そして、移動端末が、無線LANインタフェースを介して構内SIPサーバへ、電源オン状態を含むREGISTERを送信し、構内SIPサーバが、保留している呼接続を解除し、移動端末と発呼端末との間で呼接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低消費電力で着呼を待ち受ける方法、構内交換装置、移動端末及びプログラムに関する。特に、呼接続を待ち受ける移動端末が、広域通信インタフェースと無線LANインタフェースとを有する携帯電話機である。
【背景技術】
【0002】
広域通信として携帯電話網(又はPHS(Personal Handyphone System)網)が普及し、局所通信としてIEEE802.11a/b/gに代表される無線LANが普及している。このような通信環境に対応して、移動端末(携帯電話機、携帯端末(PDA:Personal
Digital Assistant)及びパーソナルコンピュータを含む)が、携帯電話網通信インタフェースと、無線LANインタフェースとの両方を備えたものも普及してきている。このような移動端末は、屋外では携帯電話網を利用し、構内では無線LANを利用することができる。通信方式自体も、将来的には、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)、又はUMB(Ultra Mobile Broadband)のような多種多様な方式が提供されると予想される。
【0003】
ここで、移動端末には、その連続使用時間に直結する消費電力の低減が常に問題となる。Webブラウジングのようなアプリケーションでは、ユーザの操作に応じて、必要時に、適切な通信インタフェースの電源をオンにすればよい。しかしながら、音声通話のように相手方端末からの着呼を待つようなアプリケーションでは、その通信インタフェースの電源を常にオンにしておかなければならない。特に、構内で利用できる無線LANインタフェースによる消費電力は、携帯且つ小型の移動端末にとっては、そのバッテリの容量から無視できないものである。従って、移動端末が、複数の通信インタフェースの電源を常にオンにしておくことは、消費電力の低減の観点からは望ましくない。
【0004】
第1に、複数の通信インタフェースについて、電力消費の大きい無線LANインタフェースの電源をオフにし、携帯電話網通信インタフェースだけは常にオンにしておく技術がある(例えば特許文献1及び2参照)。この技術によれば、移動端末は、相手方端末からの呼を、常に、携帯電話網を介して携帯電話網通信インタフェースによって着呼する。この時、この移動端末は、無線LANインタフェースの電源をオンにし、無線LANインタフェースを用いて無線LANを介して相手方端末へコールバック(発呼)する。これによって、呼接続の待ち受け時に、無線LANインタフェースの電源をオフにしておくことによって、消費電力の低減を実現している。
【0005】
第2に、移動端末が備える複数の通信インタフェースのうち、着呼を希望する通信インタフェースを、通信事業者網の設備装置に予め登録する技術もある(例えば特許文献3参照)。この移動端末は、登録した通信インタフェース以外の通信インタフェースの電源をオフにする。その移動端末に対する着呼は、通信事業者網の設備装置によって、常に、登録される通信インタフェースは着呼する。これによって、呼接続の待ち受け時に、無線LANインタフェースの電源をオフにしておくことによって、消費電力の低減を実現している。
【0006】
【特許文献1】特開2005−109850号公報
【特許文献2】特開2006−025009号公報
【特許文献3】特開2008−035420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来技術によれば、複数の通信インタフェースを備えた移動端末について、単一の通信インタフェースの電源のみをオンにするものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された技術によれば、着呼端末が発呼端末へコールバックするために、第1に課金の問題と、第2に呼切断の問題とがある。第1の課金の問題について、通話時の課金体系は、一般的に、発呼者に課金されるが、コールバックをすることによって、着呼者に課金されてしまう。第2の呼切断の問題について、コールバックをすることによって、最初の呼が切断されてしまう。特に、特許文献1に記載された技術が想定しているパケット通信網では、低速な携帯電話網を経由した切断のシグナリングよりも、高速な無線LANを経由したコールバックのシグナリングの方が、逆転して先に到達する可能性がある。この場合、切断前の呼が残存しているために、コールバックの呼を確立することはできない。また、第1の問題及び第2の問題のいずれについても、最初の呼を切断してからコールバックによって呼を再確立するまでの間に、発呼端末に対して第三者から別の着呼があった場合、その第三者の通話が優先して呼接続され、結局、コールバックがブロックされるという問題もある。
【0009】
また、特許文献3に記載された技術によれば、移動端末ついて予め登録された通信インタフェースに対して全ての呼が転送される。前述したように、携帯電話網通信インタフェースと無線LANインタフェースとを有する移動端末が構内に存在する場合、消費電力の低減の観点からは、携帯電話網通信インタフェースが選択(登録)されることとなる。無線LANインタフェースの消費電力が大きいために、全ての着呼を携帯電話網に経由させることによって、消費電力は低減される。しかし、無線LANの高速通信を用いた、高品質音声コーデックに基づく通話や、高画質のテレビ電話を実行するには、常に無線LANインタフェースを選択しておく必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、広域通信インタフェースと無線LANインタフェースとを有する移動端末が、低消費電力で呼接続を待ち受けることができる方法、構内交換装置、移動端末及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、広域通信ネットワークに相互接続された構内LANに配置される構内交換装置と、
広域通信ネットワークに接続する広域通信インタフェース及び構内LANに接続する無線LANインタフェースを有する移動端末と
を有するシステムにおける着呼待受方法であって、
移動端末が、無線LANインタフェースを用いて構内LANを介して構内交換装置へ、無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む登録要求を送信し、無線LANインタフェースの電源をオフにする第1のステップと、
構内交換装置が、広域通信ネットワークを介して発呼端末からの着呼を受け付け、当該着呼の呼接続を保留する第2のステップと、
構内交換装置が、広域通信ネットワークを介して移動端末へ発呼する第3のステップと、
移動端末が、広域通信ネットワークを介して広域通信インタフェースによって当該呼を受け付け、無線LANインタフェースの電源をオンにする第4のステップと、
移動端末が、無線LANインタフェースを介して構内交換装置へ、無線LANインタフェースの電源オン状態を含む登録要求を送信する第5のステップと、
構内交換装置が、保留している呼接続を解除し、移動端末と発呼端末との間で構内LANを介して呼接続させる第6のステップと
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の着呼待受方法における他の実施形態によれば、
構内交換装置は、SIP(Session Initiation Protocol)サーバであり、
登録要求は、SIP REGISTERメソッドであり、
電源オン状態及び電源オフ状態は、Expiresヘッダの数値又はContactヘッダのexpiresパラメータに記述されることも好ましい。
【0013】
本発明の着呼待受方法における他の実施形態によれば、第3のステップ及び第4のステップにおける呼は、ショートメッセージによるセンタープッシュによって送信されることも好ましい。
【0014】
本発明の着呼待受方法における他の実施形態によれば、構内交換装置は、第2のステップで着呼を保留しているにも拘わらず、所定時間以上、第5のステップにおける移動端末からの電源オン状態を含む登録要求を受信できなかった場合、広域通信ネットワークを介して移動端末へ発呼するか、予め規定された留守番電話制御を実行するか、又は音声案内を実行することも好ましい。
【0015】
本発明の着呼待受方法における他の実施形態によれば、第1のステップは、移動端末が無線LANインタフェースを用いて構内LANに接続可能となった場合、移動端末に対する利用者の操作によって実行されることも好ましい。
【0016】
本発明によれば、広域通信ネットワークに相互接続された構内LANに配置される構内交換装置であって、
移動端末から、構内LANを介して、無線LANインタフェースの電源オフ/オン状態を含む登録要求を受信する登録要求受信手段と、
発呼端末からの着呼を受け付ける着呼受付手段と、
登録要求が無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む場合、当該着呼を保留し、登録要求が無線LANインタフェースの電源オン状態を含む場合、保留している着呼を解除する着呼保留手段と、
着呼を保留した際に、広域通信ネットワークを介して移動端末へ発呼する発呼手段と、
着呼の保留を解除した際に、移動端末と発呼端末との間で構内LANを介して呼接続させる呼接続手段と
を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の構内交換装置における他の実施形態によれば、
構内交換装置は、SIPサーバであり、
登録要求は、SIP REGISTERメソッドであり、
電源オン状態及び電源オフ状態は、Expiresヘッダの数値又はContactヘッダのexpiresパラメータに記述されることも好ましい。
【0018】
本発明の構内交換装置における他の実施形態によれば、発呼手段は、ショートメッセージによるセンタープッシュによって呼を送信することも好ましい。
【0019】
本発明の構内交換装置における他の実施形態によれば、
着呼保留手段は、着呼を保留した後、所定時間以上、移動端末から無線LANインタフェースの電源オン状態を含む登録要求を受信しなかった場合、着呼不可と判定し、
着呼不可と判定された際に、広域通信ネットワークを介して移動端末へ発呼するか、予め規定された留守番電話制御を実行するか、又は音声案内を実行する着呼不可処理手段を更に有することも好ましい。
【0020】
本発明によれば、前述した構内交換装置と通信可能な移動端末であって、
広域通信ネットワークに接続する広域通信インタフェースと、
構内LANに接続する無線LANインタフェースと、
無線LANインタフェースの電源をオン/オフする電源制御手段と、
広域通信ネットワークを介して広域通信インタフェースによって構内交換装置から当該呼を受け付ける着呼受付手段と、
無線LANインタフェースを用いて無線LANインタフェースの電源オン/オフ状態を含む登録要求を構内交換装置へ送信する登録要求送信手段と、
構内LANに接続可能となった際に、無線LANインタフェースの電源オフを利用者に操作させるユーザインタフェース手段と、
ユーザインタフェース手段に電源オフが操作された際に、登録要求送信手段へ無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む登録要求を送信するべく指示し、電源制御手段へ無線LANインタフェースの電源オフを指示する電源オフ指示手段と、
着呼受付手段が当該呼を受け付けた際に、電源制御手段へ電源オンを指示する電源オン指示手段と
を有することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、広域通信ネットワークに相互接続された構内LANに配置されるサーバに搭載されたコンピュータを機能させる構内交換用のプログラムであって、
移動端末から、構内LANを介して、無線LANインタフェースの電源オフ/オン状態を含む登録要求を受信する登録要求受信手段と、
発呼端末からの着呼を受け付ける着呼受付手段と、
登録要求が無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む場合、当該着呼を保留し、登録要求が無線LANインタフェースの電源オン状態を含む場合、保留している着呼を解除する着呼保留手段と、
着呼を保留した際に、広域通信ネットワークを介して移動端末へ発呼する発呼手段と、
着呼の保留を解除した際に、移動端末と発呼端末との間で構内LANを介して呼接続させる呼接続手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、前述した構内交換装置と通信可能な移動端末であって、広域通信ネットワークに接続する広域通信インタフェースと、構内LANに接続する無線LANインタフェースとを有する移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
無線LANインタフェースの電源をオン/オフする電源制御手段と、
広域通信ネットワークを介して広域通信インタフェースによって構内交換装置から当該呼を受け付ける着呼受付手段と、
無線LANインタフェースを用いて無線LANインタフェースの電源オン/オフ状態を含む登録要求を構内交換装置へ送信する登録要求送信手段と、
構内LANに接続可能となった際に、無線LANインタフェースの電源オフを利用者に操作させるユーザインタフェース手段と、
ユーザインタフェース手段に電源オフが操作された際に、登録要求送信手段へ無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む登録要求を送信するべく指示し、電源制御手段へ電源オフを指示する電源オフ指示手段と、
着呼受付手段が当該呼を受け付けた際に、電源制御手段へ無線LANインタフェースの電源オンを指示する電源オン指示手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の着呼待受方法、構内交換装置、移動端末及びプログラムによれば、移動端末は、無線LANインタフェースの電源をオフにしていても、着呼時にその電源をオンにすることができるので、低消費電力で呼接続を待ち受けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0026】
図1によれば、屋内に、構内LAN1が構成されており、IP−PBX(Internet Protocol - Private Branch Exchange)(構内SIPサーバ)10と、ルータ11と、メディアゲートウェイ12と、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ13と、アクセスポイント14とが接続されている。また、着呼端末となる移動端末20は、セルラ(広域)通信ネットワークに接続するセルラ通信インタフェースと、無線LAN通信ネットワークに接続する無線LANインタフェースとを有する。移動端末20は、無線リンクを介して無線アクセスポイント14と通信し、構内LAN1に接続することができる。
【0027】
IP−PBX10は、IPネットワークにおけるIP電話端末の回線交換機として機能し、企業又は宅内等の組織内LANにおけるIP電話の内線電話網を実現する。特に、IP−PBXは、広域通信ネットワークのWANと、LANとの間の回線交換機能も有する。尚、IP−PBX1は、端末からの発呼要求を受け付けるために、構内交換装置としてのSIPサーバである。
【0028】
ルータ11は、広域通信ネットワークであるインターネット2と、構内LAN1とを相互接続する。また、メディアゲートウェイ12は、広域通信ネットワークである公衆回線網2と、構内LANである構内LANとを相互接続する。
【0029】
DHCPサーバ13は、移動端末(DHCPクライアント)からアドレス取得要求を受信した際に、IPアドレス及び設定情報を応答するものであり、ネットワークの自動設定のためのサーバである。アドレス応答には、IPアドレスの有効期間を表すリース期間も含まれている。このリース期間内に、移動端末は、アドレス更新要求を、再度、DHCPサーバ13へ送信する必要がある。
【0030】
また、図1によれば、屋外に、広域通信ネットワーク2が構成されており、発呼端末21と、センタプッシュサーバ22とが接続されている。勿論、発呼端末21が屋内の構内LAN1に接続されていてもよい。広域通信ネットワーク2は、携帯電話網(セルラ通信網)、インターネット又は公衆回線網のような通信網である。センタプッシュサーバ22は、携帯電話網を介して、移動端末へ、ショートメッセージを同時に送信するメールプッシュ装置である。
【0031】
図2は、本発明における登録シーケンス図である。
【0032】
図2によれば、移動端末20を所持した利用者が、構内LAN1と接続可能な屋内へ移動したとする。このとき、利用者は、無線LANインタフェースが使用可能な位置に移動したことを、移動端末20に設定するべく操作する。このとき、移動端末20は、最初に、無線LANインタフェースの電源をオンにする。
【0033】
(S201)移動端末20は、構内LAN1に接続されたアクセスポイント14を発見し、無線アソシエーションによって無線リンクを確立する。
(S202)移動端末20は、アクセスポイント14を介して、DHCPサーバ13へ、アドレス取得要求を送信し、その応答としてアドレスを取得する。このとき、移動端末20は、DHCPのリース期間も取得する。移動端末20は、DHCPリース期間のためのタイマを起動し、時間を計測する。
【0034】
(S203)移動端末20は、アクセスポイント14を介して、IP−PBX10へ、「無線LANインタフェースの電源オフ状態」を含む「登録要求」を送信する。本発明によれば、屋内に位置し、アクセスポイント14と通信可能であっても、無線LANインタフェースの電源をオフにすることによって、消費電力を低減する。
【0035】
IP−PBX10は、構内交換装置としてのSIPサーバであるので、「登録要求」は、例えばSIP REGISTERメソッドである。ここで、既存のSIP REGISTERメソッドとの互換性を確保するために、「無線LANインタフェースの電源オフ状態」は、例えばExpiresヘッダの数値又はContactヘッダのexpiresパラメータに記述する。これら値には、一定の範囲の数値を記述することができるが、一般に使用されないような特定数値を、「無線LANインタフェースの電源オフ状態」/「無線LANインタフェースの電源オン状態」に規定することができる。「登録要求」を受信したIP−PBX10は、登録応答(200OK)を、移動端末20へ返信する。
【0036】
(S204)ここで、移動端末20は、無線LANインタフェースの電源を自動的にオフにする。その後、DHCPのリース期間よりも短いExpires値の期間だけ、電源オフの状態を維持する。
【0037】
(S205)移動端末20は、Expires値の期間が経過する前に、再び、無線LANインタフェースの電源をオンにする。
(S206)移動端末20は、構内LAN1に接続されたアクセスポイント14を発見し、無線アソシエーションによって無線リンクを確立する。
(S207)移動端末20は、アクセスポイント14を介して、IP−PBX10へ、「無線LANインタフェースの電源オフ状態」を含む「登録要求」を送信する。これに対し、IP−PBX10は、登録応答(200OK)を返信する。
(S208)ここで、移動端末20は、再び、無線LANインタフェースの電源を自動的にオフにする。
【0038】
(S209)その後、DHCPのリース期間がタイムアウトする前に、移動端末20は、無線LANインタフェースの電源をオンにする。
(S210)移動端末20は、構内LAN1に接続されたアクセスポイント14を発見し、無線アソシエーションによって無線リンクを確立する。
(S211)移動端末20は、アクセスポイント14を介して、DHCPサーバ13へ、アドレス更新要求を送信し、更なるDHCPリース期間の延長を要求する。
【0039】
図3は、本発明における呼接続待受シーケンス図である。
【0040】
(S301)発呼端末21が、着呼端末となる移動端末20へ向けて発呼したとする。このとき、例えばSIP INVITEが、ルータ11を介して、IP−PBX10によって受信される。その応答として、IP−PBX10は、100Tryingを返信する。これによって、IP−PBX10は、発呼端末からの着呼を受け付ける。
【0041】
(S302)IP−PBX10は、着呼端末20における無線LANインタフェースのオフが登録されている場合、当該着呼の呼接続を保留する。
【0042】
(S303)次に、IP−PBX10は、携帯電話網に接続されたセンタプッシュサーバ22へ、移動端末20向けの呼を発呼する。この呼は、具体的にはショートメッセージである。また、ショートメッセージには、発信者情報を組み込むこともできる。着呼者に対して、発呼者を明示することができる。
【0043】
(S304)センタプッシュサーバ22は、IP−PBX10からショートメッセージを受信すると、移動端末20に対して、そのメッセージをプッシュ的に送信する。
【0044】
(S305)ショートメッセージを受信した移動端末20は、IP−PBX10に着呼があったと把握し、無線LANインタフェースの電源をオンにする。そして、移動端末20は、構内LAN1に接続されたアクセスポイント14を発見し、無線アソシエーションによって無線リンクを確立する。
【0045】
(S306)移動端末20は、アクセスポイント14を介して、IP−PBX10へ、「無線LANインタフェースの電源オン状態」を含む「登録要求」を送信する。この応答として、IP−PBX10は、移動端末20へ登録応答(200OK)を返信する。これによって、IP−PBX10は、移動端末20が着呼可能な状態になったことを把握する。
【0046】
(S307)IP−PBX10は、S302における保留呼を解除し、呼接続要求となるSIP INVITEを、移動端末20へ送信する。これに応答して、移動端末20は、100Trying及び180Ringingを返信する。IP−PBX10は、180Ringingを、ルータ11を介して発呼端末21へ向けて送信する。また、移動端末20は、200OKをIP−PBX10へ送信し、IP−PBX10は、その200OKメッセージを、ルータ11を介して発呼端末21へ向けて送信する。IP−PBX10は、発呼端末21からACKを受信すると、ACKを移動端末20へ向けて送信する。
【0047】
(S308)これによって、IP−PBX10は、発呼端末21と移動端末20との間で、呼接続を完了する。
【0048】
尚、図2及び図3のような本発明の処理をすることなく、移動端末20が、常に無線LANインタフェースの電源をオンにしておく場合には、登録要求(電源オン)を、IP−PBX10へ送信しておけばよい。
【0049】
図4は、本発明における障害発生時のシーケンス図である。
【0050】
図4によれば、S301〜S304までは、図3と全く同様である。図4には、S304の後、通信障害が発生した場合のシーケンスが表されている。この場合の通信障害としては、例えばセンタプッシュサーバ22が送信したセンタプッシュ呼が、移動端末20によって受信されなかった場合、又は、移動端末20が送信したSIP REGISTERがIP−PBX10によって受信されなかった場合等がある。
【0051】
IP−PBX10は、S302で着呼を保留した際に、タイマを起動して、通信障害認定時間を計測する。このタイマは、着呼保留を解除するS308(図3参照)時に停止される。従って、着呼を保留してから、その解除をする前に、通信障害認定時間がタイムアウトした場合、通信障害発生と判定される。
【0052】
IP−PBX10は、通信障害発生と判定した場合、携帯電話網(広域通信ネットワーク)を介して移動端末20へ発呼するか、又は、予め規定された留守番電話制御を実行する。
【0053】
図5は、本発明における構内交換装置及び着呼端末の機能構成図である。
【0054】
構内交換装置1は、LANインタフェース101と、登録要求受信部102と、着呼受付部103と、着呼保留部104と、発呼部105と、呼接続部106、着呼不可処理部107とを有する。LANインタフェース101を除いて、これら機能構成部は、サーバに搭載されたコンピュータを機能させる構内交換用プログラムを実行することによって実現される。
【0055】
登録要求受信部は、LANインタフェース101を介して、移動端末20から無線LANインタフェースの電源オン/オフ状態を含む登録要求を受信する。登録要求は、例えばSIP REGISTERメソッドであり、電源オン状態及び電源オフ状態は、Expiresヘッダの数値又はContactヘッダのexpiresパラメータに記述される。電源オン/オフ状態は、着呼保留部104へ出力される。
【0056】
着呼受付部103は、広域通信ネットワークを経由した発呼端末からの呼を、LANインタフェース101から受け付ける。受け付けた呼は、着呼保留部104へ通知する。
【0057】
着呼保留部104は、登録要求が無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む場合、当該着呼を保留し、登録要求が無線LANインタフェースの電源オン状態を含む場合、保留している着呼を解除する。また、着呼保留部104は、着呼を保留した後、所定時間以上、移動端末から電源オン状態を含む登録要求を受信しなかった場合、着呼不可と判定する。着呼不可と判定された際に、その旨を、着呼不可処理部107へ通知する。
【0058】
発呼部105は、着呼を保留した際に、広域通信ネットワークを経由するべく移動端末20へ発呼する。ここで、発呼部105は、ショートメッセージによるセンタープッシュによって呼を送信する。
【0059】
呼接続部106は、着呼の保留を解除した際に、移動端末と発呼端末との間で呼接続させる。
【0060】
着呼不可処理部107は、広域通信ネットワークを経由するべく移動端末へ発呼するか、又は、予め規定された留守番電話制御や音声応答制御を実行する。
【0061】
移動端末20は、広域通信ネットワークに接続する広域通信インタフェース201と、構内LANに接続する無線LANインタフェース202と、電源制御部203と、着呼受付部204と、登録要求送信部205と、ユーザインタフェース部206と、電源オフ指示部207と、電源オン指示部208と、呼接続処理部209とを有する。広域通信インタフェース201及び無線LANインタフェース202を除いて、これら機能構成部は、移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0062】
電源制御部203は、無線LANインタフェース202の電源をオン/オフする。
【0063】
着呼受付部204は、セルラ(広域)通信ネットワークを介して広域通信インタフェースによってIP−PBX10から当該呼を受け付ける。当該呼は、ショートメッセージであってもよい。着呼した旨は、電源オン指示部208へ通知される。
【0064】
登録要求送信部205は、無線LANインタフェース202を用いて無線LANインタフェースの電源オン/オフ状態を含む登録要求を、IP−PBX10へ送信する。
【0065】
ユーザインタフェース部206は、無線構内LANに接続可能となった際に、無線LANインタフェースの電源オフを利用者に操作させる。
【0066】
電源オフ指示部207は、ユーザインタフェース部206に電源オフが操作された際に、登録要求送信部205へ電源オフ状態を含む登録要求を送信するべく指示し、電源制御部203へ電源オフを指示する。
【0067】
電源オン指示部208は、着呼受付部204によって当該呼が受け付けられた際に、電源制御部203へ電源オンを指示する。
【0068】
以上、詳細に説明したように、本発明の着呼待受方法、構内交換装置、移動端末及びプログラムによれば、移動端末は、無線LANインタフェースの電源をオフにしていても、着呼時にその電源をオンにすることができるので、低消費電力で呼接続を待ち受けることができる。
【0069】
本発明によれば、移動端末は、SIPサーバ(構内交換装置)への登録や通話中以外、無線LANインタフェースの電源をオフにしておくことができる。SIPサーバに着呼があれば、その着信セッションを保留したまま、携帯電話網を経由して、着呼端末へショートメッセージで着呼を通知する。着呼端末は、無線LANインタフェースの電源をオンにし、SIPサーバへSIP REGISTERを送信することによって、保留されているセッションを確立する。これにより、従来技術のようなコールバックを不要とする。
【0070】
前述した本発明の種々の実施形態において、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明におけるシステム構成図である。
【図2】本発明における登録シーケンス図である。
【図3】本発明における呼接続待受シーケンス図である。
【図4】本発明における障害発生時のシーケンス図である。
【図5】本発明における構内交換装置及び着呼端末の機能構成図である。
【符号の説明】
【0072】
1 構内LAN
10 IP−PBX、構内交換装置
101 LANインタフェース
102 登録要求受信部
103 着呼受付部
104 着呼保留部
105 発呼部
106 呼接続部
107 着呼不可処理部
11 ルータ
12 メディアゲートウェイ
13 DHCPサーバ
14 アクセスポイント
2 広域通信ネットワーク、携帯電話網、インターネット、公衆回線網
20 移動端末、着呼端末
201 広域通信インタフェース
202 無線LANインタフェース
203 電源制御部
204 着呼受付部
205 登録要求送信部
206 ユーザインタフェース部
207 電源オフ指示部
208 電源オン指示部
21 発呼端末
22 センタプッシュサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域通信ネットワークに相互接続された構内LANに配置される構内交換装置と、
前記広域通信ネットワークに接続する広域通信インタフェース及び前記構内LANに接続する無線LANインタフェースを有する移動端末と
を有するシステムにおける着呼待受方法であって、
前記移動端末が、前記無線LANインタフェースを用いて前記構内LANを介して前記構内交換装置へ、前記無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む登録要求を送信し、前記無線LANインタフェースの電源をオフにする第1のステップと、
前記構内交換装置が、前記広域通信ネットワークを介して発呼端末からの着呼を受け付け、当該着呼の呼接続を保留する第2のステップと、
前記構内交換装置が、前記広域通信ネットワークを介して前記移動端末へ発呼する第3のステップと、
前記移動端末が、前記広域通信ネットワークを介して前記広域通信インタフェースによって当該呼を受け付け、前記無線LANインタフェースの電源をオンにする第4のステップと、
前記移動端末が、前記無線LANインタフェースを介して前記構内交換装置へ、前記無線LANインタフェースの電源オン状態を含む登録要求を送信する第5のステップと、
前記構内交換装置が、保留している呼接続を解除し、前記移動端末と前記発呼端末との間で前記構内LANを介して呼接続させる第6のステップと
を有することを特徴とする着呼待受方法。
【請求項2】
前記構内交換装置は、SIP(Session Initiation Protocol)サーバであり、
前記登録要求は、SIP REGISTERメソッドであり、
前記電源オン状態及び前記電源オフ状態は、Expiresヘッダの数値又はContactヘッダのexpiresパラメータに記述される
ことを特徴とする請求項1に記載の着呼待受方法。
【請求項3】
第3のステップ及び第4のステップにおける前記呼は、ショートメッセージによるセンタープッシュによって送信されることを特徴とする請求項1又は2に記載の着呼待受方法。
【請求項4】
前記構内交換装置は、第2のステップで前記着呼を保留しているにも拘わらず、所定時間以上、第5のステップにおける前記移動端末からの電源オン状態を含む登録要求を受信できなかった場合、前記広域通信ネットワークを介して前記移動端末へ発呼するか、予め規定された留守番電話制御を実行するか、又は音声案内を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の着呼待受方法。
【請求項5】
第1のステップは、前記移動端末が前記無線LANインタフェースを用いて前記構内LANに接続可能となった場合、前記移動端末に対する利用者の操作によって実行されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の着呼待受方法。
【請求項6】
広域通信ネットワークに相互接続された構内LANに配置される構内交換装置であって、
移動端末から、前記構内LANを介して、前記無線LANインタフェースの電源オフ/オン状態を含む登録要求を受信する登録要求受信手段と、
発呼端末からの着呼を受け付ける着呼受付手段と、
前記登録要求が電源オフ状態を含む場合、当該着呼を保留し、前記登録要求が電源オン状態を含む場合、保留している着呼を解除する着呼保留手段と、
前記着呼を保留した際に、前記広域通信ネットワークを介して前記移動端末へ発呼する発呼手段と、
前記着呼の保留を解除した際に、前記移動端末と前記発呼端末との間で前記構内LANを介して呼接続させる呼接続手段と
を有することを特徴とする構内交換装置。
【請求項7】
前記構内交換装置は、SIPサーバであり、
前記登録要求は、SIP REGISTERメソッドであり、
前記電源オン状態及び前記電源オフ状態は、Expiresヘッダの数値又はContactヘッダのexpiresパラメータに記述される
ことを特徴とする請求項6に記載の構内交換装置。
【請求項8】
前記発呼手段は、ショートメッセージによるセンタープッシュによって呼を送信することを特徴とする請求項6又は7に記載の構内交換装置。
【請求項9】
前記着呼保留手段は、前記着呼を保留した後、所定時間以上、前記移動端末から前記電源オン状態を含む登録要求を受信しなかった場合、着呼不可と判定し、
前記着呼不可と判定された際に、前記広域通信ネットワークを介して前記移動端末へ発呼するか、予め規定された留守番電話制御を実行するか、又は、音声案内を実行する着呼不可処理手段を更に有することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の構内交換装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の構内交換装置と通信可能な前記移動端末であって、
前記広域通信ネットワークに接続する広域通信インタフェースと、
前記構内LANに接続する無線LANインタフェースと、
前記無線LANインタフェースの電源をオン/オフする電源制御手段と、
前記広域通信ネットワークを介して前記広域通信インタフェースによって前記構内交換装置から当該呼を受け付ける着呼受付手段と、
前記無線LANインタフェースを用いて前記無線LANインタフェースの電源オン/オフ状態を含む登録要求を前記構内交換装置へ送信する登録要求送信手段と、
前記構内LANに接続可能となった際に、前記無線LANインタフェースの電源オフを利用者に操作させるユーザインタフェース手段と、
前記ユーザインタフェース手段に電源オフが操作された際に、前記登録要求送信手段へ前記無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む登録要求を送信するべく指示し、前記電源制御手段へ前記無線LANインタフェースの電源オフを指示する電源オフ指示手段と、
前記着呼受付手段が当該呼を受け付けた際に、前記電源制御手段へ電源オンを指示する電源オン指示手段と
を有することを特徴とする移動端末。
【請求項11】
広域通信ネットワークに相互接続された構内LANに配置されるサーバに搭載されたコンピュータを機能させる構内交換用のプログラムであって、
移動端末から、前記構内LANを介して、無線LANインタフェースの電源オフ/オン状態を含む登録要求を受信する登録要求受信手段と、
発呼端末からの着呼を受け付ける着呼受付手段と、
前記登録要求が前記無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む場合、当該着呼を保留し、前記登録要求が前記無線LANインタフェースの電源オン状態を含む場合、保留している着呼を解除する着呼保留手段と、
前記着呼を保留した際に、前記広域通信ネットワークを介して前記移動端末へ発呼する発呼手段と、
前記着呼の保留を解除した際に、前記移動端末と前記発呼端末との間で前記構内LANを介して呼接続させる呼接続手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする構内交換用のプログラム。
【請求項12】
請求項6から9のいずれか1項に記載の構内交換装置と通信可能な前記移動端末であって、前記広域通信ネットワークに接続する広域通信インタフェースと、前記構内LANに接続する無線LANインタフェースとを有する前記移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記無線LANインタフェースの電源をオン/オフする電源制御手段と、
前記広域通信ネットワークを介して前記広域通信インタフェースによって前記構内交換装置から当該呼を受け付ける着呼受付手段と、
前記無線LANインタフェースを用いて前記無線LANインタフェースの電源オン/オフ状態を含む登録要求を前記構内交換装置へ送信する登録要求送信手段と、
前記構内LANに接続可能となった際に、前記無線LANインタフェースの電源オフを利用者に操作させるユーザインタフェース手段と、
前記ユーザインタフェース手段に電源オフが操作された際に、前記登録要求送信手段へ前記無線LANインタフェースの電源オフ状態を含む登録要求を送信するべく指示し、前記電源制御手段へ電源オフを指示する電源オフ指示手段と、
前記着呼受付手段が当該呼を受け付けた際に、前記電源制御手段へ前記無線LANインタフェースの電源オンを指示する電源オン指示手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする移動端末用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−21661(P2010−21661A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178444(P2008−178444)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】