説明

低温焼結用ガラス組成物、ガラスフリット、誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサー

【課題】1100℃以下の低温焼結用焼結助剤に好適なガラス組成物、ガラスフリット、誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサーを提供する。
【解決手段】本発明によるガラス組成物は、aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiOから成り、前記a、b、c、d、e及びfはa+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20及び50≦f≦80とを満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス組成物、ガラスフリット(glass frit)、誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサーに関するものである。より詳しくは、高い非表面積を有し、かつ高温流動性に優れており、BaTiOに対する溶解性の優れたボロシリケート(borosilicate)系ガラスフリット、その組成物及びこれを含有する誘電体組成物並びにこれを用いた積層セラミックコンデンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気及び電子製品の小型化、軽量化、高性能化が急速に進行するにつれ、これに用いられる積層セラミックコンデンサーも益々小型化及び高容量化されつつある。このような小型化及び高容量化のために、積層セラミックコンデンサーに用いられる誘電体層は、徐々に薄層化されつつあり、誘電体層の積層数も増えている。近年には、3μm以下の厚さのBaTiO誘電体層を470層以上積層することによって超高容量のコンデンサーを実現しており、場合によって2μm以上の厚さを有する誘電体層を要する。このように積層セラミックコンデンサーの超高容量化及び高積層化のためには、誘電体層の薄層化が不可欠であり、誘電体が薄層化されることにより均一な微細構造の確保がコンデンサーの誘電特性及び信頼性の実現に最も重要な要素である。
【0003】
誘電体層の薄層化のほかにも内部電極の連結性、また積層セラミックコンデンサーの容量実現にあって非常に重要な要素として作用する。一般的に内部電極として使用されているNi電極層は、セラミック誘電体の焼結温度に比べて数百℃ 低い温度で焼結が完了するため、焼成温度が高すぎた場合、内部電極層と誘電体層間の焼結収縮の不一致が深化され、これらの層間薄利(delamination)が引き起こされやすい。また、高温で熱処理(焼結)することによりNi電極層が急激に固まって電極切れをもたらすことになりコンデンサーの容量が低下され、短絡発生率(ショット率) 上昇をもたらすようになる。したがって、これを防止するためにNi内部電極とセラミック誘電体層を1100℃以下の低温で還元性雰囲気で焼結することが好ましい。
【0004】
また、積層セラミックコンデンサーが高品質の性能を現すためには、その容量の温度安全性が要求される。コンデンサーの用途によって、EIA規格のX5R 誘電特性が要求されており、この規格によると、容量の変化率(ΔC)が−55〜85℃から±5%以内(基準温度25℃)であるべきである。
【0005】
従来の積層セラミックコンデンサー製造用焼結助剤では、通常BaO−CaO−SiO系ガラスフリットまたはBaSiO系混合粉末が用いられている。しかし、これらの焼結助剤は1200℃以上の高い融点を有するため、1150℃以下の低温での焼結を促進させにくい。また、従来のガラス質焼結助剤を用いた場合には高温で液状形成が急激に進行されることにより積層セラミックコンデンサー製造のための焼結温度範囲が非常に制限されるという問題点が生じる。特許文献1には、積層セラミックコンデンサー製造用焼結助剤として (Ba、Ca)SiO2+x(x=0.8〜1.2)を開示している。しかし、前記公報に開示された焼結助剤を含有した誘電体層は、その焼結温度が1100℃を超えるため、3μm以下の超薄層の誘電体層を具備する積層セラミックコンデンサーを実現するには限界がある。
【特許文献1】特開2000−311828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記した問題点を解決するためのものであって、その目的は1100℃以下の低温でBaTiO誘電体を均一に焼結させることができ、X5R誘電特性を満足させることができる低温焼結用ガラス組成物及びこれらの組成物から成るガラスフリットを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記ガラス組成物を利用することによって1100℃以下の低温で焼結可能であり、X5R誘電特性を満足させることができる誘電体組成物を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記誘電体組成物を利用することによって1100℃以下の低温焼結で製造でき、X5R誘電特性を現す積層セラミックコンデンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した技術的課題を達成するために、本発明によるガラス組成物は、aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiOから成り、前記a、b、c、d、e及びfはa+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20及び50≦f≦80とを満足する。
【0010】
前記ガラス組成物において、好ましくは、前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、0≦d≦15、10≦e≦20、55≦f≦75を満足する。さらに好ましくは、前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、5≦d≦15、12.5≦e≦17.5、60≦f≦75とを満足する。
【0011】
本発明のガラスフリットは、組成式aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiO(a+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20及び50≦f≦80)で表示されるガラス組成物から成り、100乃至300nmの粒度を有する超微粒球形粉体形態となっている。
【0012】
前記ガラスフリットにおいて、好ましくは、前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、0≦d≦15、10≦e≦20、55≦f≦75を満足する。さらに好ましくは、前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、5≦d≦15、12.5≦e≦17.5、60≦f≦75とを満足する。
【0013】
本発明の他の目的を達成するために、本発明の誘電体組成物は、主成分であるBaTiOと、前記ガラス組成物を含有する副成分を含み、前記副成分は、前記主成分100モルに対して、前記ガラス組成物1.0〜3.0モル、MgCO0.5〜2.0モル、希土類酸化物(前記希土類酸化物は、Y、Ho、Dy及びYbから成る群より1種以上選択される)0.3〜1.0モル及びMnO0.05〜1.0モルを含む。
【0014】
本発明のさらに他の目的を達成するために、本発明の積層セラミックコンデンサーは、複数の誘電体層と、前記誘電体層の間に設けられた複数の内部電極および前記内部電極に電気的に接続された外部電極を含み、前記誘電体層は前述した本発明による誘電体組成物から成る。前記内部電極は、導電材料としてNiまたはNi合金を含有することができる。
【0015】
本発明を利用すると、1100℃以下の低温でBaTiO誘電体スラリーを均一に焼結させることによって内部電極層と誘電体層間の焼結収縮の不一致を減少させることが可能である。これにより、Ni内部電極の固まりを抑制してショット率を減少させることができる。また、X5R誘電特性を満足させる積層セラミックコンデンサーを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガラスフリットを利用することによって1100℃以下の低温でBaTiO誘電体層を均一に焼結させるので、内部電極層と誘電体層間の焼結収縮の不一致を減らし、かつNiの固まりを抑制させて短絡発生率を極小化させることができる。しかも、優れた電気的特性とともにX5R誘電特性(EIA規格:−55〜85℃、ΔC=±15%以内)を満足することができる積層セラミックコンデンサーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0018】
本発明は、アルカリボロシリケート(alkali−borosilicate)系ガラスが1000℃以下の低い液状形成温度を有しながら、同時にBaTiOに対する溶解度が高いという実験的事実に注目して、BaTiOに対する1100℃以下の低温焼結助剤としての可能性を確認した。本発明のガラス組成物によると、好適なアルカリ酸化物を含有したアルカリボロシリケート系ガラス組成に適正量のアルカリ土類酸化物(CaO及びBaOの少なくとも1種)を添加することによって、積層セラミックコンデンサーの静電容量温度係数(Tcc)を安定化させX5R誘電特性を満足させることが可能である。
【0019】
ガラス組成物
本発明のガラス組成物は、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)、酸化ボロン(B) 及び酸化ケイ素(SiO)とを含み、必要に応じて酸化カルシウム(CaO) 及び酸化バリウム(BaO)の1種以上を含むことができる。
【0020】
ガラス組成物内のSiO含量は、LiO、KO、CaO、BaO、B及びSiOの総モル数100を基準に50乃至80モル%である。好ましくは、SiOの含量は55〜75モル%であり、さらに好ましくは、60〜75モル%である。SiOは、シリコン原子がその周りを取り囲んだ4個の酸素原子を介して隣接する4個のシリコン原子と結合する構造を有する。このようなSiOはガラス網目形成酸化物(glass network−former)として、ガラスの高温流動性と融点、そしてBaTiO母材に対する溶解度を決定する最も重要な因子として作用する。ガラス組成物内のSiO含量が50モル%未満の場合には、BaTiO母材に対する溶解度が減少し低温焼結性を向上させることができない。SiO含量が80モル%超の場合には、高温流動性が劣って液状形成温度が高くなるため、そのガラス組成物は1100℃以下の低温焼結用焼結助剤として適切でないこともあり得る。
【0021】
ガラス組成物内のBの含量は、5〜20モル%である。Bは、SiOとともにガラス網目形成酸化物の役目を果たし、BaTiO母材に対する溶解度を決定する主要因子である。しかも、Bは、融剤としてガラスの融点を大きく落とし高温流動性を大きく向上させる役目を果たす。特に高温流動性の向上のためにBは、ガラス組成物内に5モル%以上の含量で添加することが好ましい。Bの含量が20モル%超の場合には、ガラスの構造弱化により化学的耐久性が劣りやすく、結晶化によってガラス形成能力が低下する恐れがある。
【0022】
ガラス組成物内のLiOの含量は、2〜10モル%である。LiOは、ガラス網目修飾酸化物(glass network−modifier)として、SiOあるいはBから成るガラス網目構造を切ってガラス融点を落とし、高温流動性を向上させる役目を果たす。LiOの含量が2モル%未満時、ガラスの高温流動性が劣り、液状形成温度が過度に高くなる恐れがある。LiOの含量が10モル%超の場合には、ガラスの構造弱化及び結晶化によってガラス形成が難しくなる恐れがある。
【0023】
ガラス組成物内のKOの含量は、2〜10モル%である。KOは、LiOと同様にガラス網目修飾酸化物として、SiOあるいはBから成るガラス網目構造を切ってガラス融点を落とし、高温流動性を向上させる役目を果たす。特にLiOなどの他のアルカリ酸化物と同時に投入する場合、KOは化学的に相互補完する効果(混合アルカリ効果)が生じてガラスの化学的耐久性を強化させるばかりでなく誘電体の誘電損失を減少させる役目を果たす。KOの含量が2〜10モル%の場合、ガラスが適切な高温流動性を有し、LiOとの適切な補完効果を得ることができる。
【0024】
ガラス組成物内のCaOとBaOの含量は、0〜25モル%である。CaOは、網目修飾酸化物としてガラス融点を落とすとともに、アルカリ金属酸化物によって弱くなったガラスの構造を強化させて化学的耐久性を向上させる役目を果たす。しかし、CaOはガラスの高温粘度を急激に低下させセラミックの急激な焼結収縮を引き起こす短所がある。BaOは、アルカリ土類酸化物のガラスの融点を最も大きく低下させることができる成分として、特にガラスの高温粘度変化をなだらかにしてセラミックの急激な焼結収縮を防止する役目を果たす。また、CaOとBaOは、BaTiO誘電体の容量温度特性を安定化させる役目を果たし、その添加量が多すぎた場合焼結性が低下する。CaOとBaOの少なくとも1種の含量が25モル%超過時にはガラス形成能力を低下させるばかりでなくBaTiO誘電体の低温焼結性を大きく弱化させる。
【0025】
ガラスフリット
本発明のガラスフリットは、本発明による前記ガラス組成物から成り、100乃至300nmの粒度を有する超微粒球形形態の粉末となっている。3μm以下の厚さの誘電体薄層を形成するためには、誘電体スラリーに用いられるBaTiO母材は150〜300nm程度の粒度を有し、焼結助剤以外の副成分も数百nm以下の粒度を有する。したがって、誘電体スラリーに添加されるガラスフリットの粒度が1μm以上であると、2〜3μm厚さの誘電体薄層を均一に焼結させにくい。また、ガラスフリットの形状が針状や塊状である場合、焼結のバラツキを引き起こす恐れがあるので球形のガラスフリットを用いるのが有利である。本発明のガラスフリットは、例えば、前記ガラス組成物から成るガラスフレーク(glass flake)を機械的に粉砕した後、気象熱処理を行うことにより得られる。
【0026】
以下、本発明のガラスフリットの製造方法について説明する。ここでは具体的な例示を用いて説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0027】
先ず、前述したガラス組成物の組成を満足するように成分粉末(LiO、KO、CaO、BaO、B及びSiO粉末)を秤量し、十分混合した後に1400〜1500℃で溶融する。その後、ツインローラー(twin roller)によって急冷させることによってガラスフレークを得、これをボールミルで乾式粉砕する。この粉砕したガラスを気象熱処理することによって100〜300nmの粒度を有する超微粒球形粉体形態のガラスフリットを得ることができる。
【0028】
このように得たガラスフリットは、前述したガラス組成物から成り、積層セラミックコンデンサーの低温焼結用焼結助剤に利用され得る。前述したガラス組成物から成る前記ガラスフリットを焼結助剤に利用することによって、1100℃以下の低温でBaTiO誘電体層を均一に焼結させることが可能である。
【0029】
誘電体組成物
本発明の誘電体組成物は、主成分であるBaTiOと、副成分として前述したガラス組成物、MgCO、希土類酸化物(Y、Ho、Dy及びYbから成る群より1種以上選択される)、及びMnOとを含む。前記副成分の含量は、前記主成分(BaTiO) 100モルに対して、前記ガラス組成物が1.0〜3.0モル、 MgCOが0.5〜2.0モル、前記希土類酸化物が0.3〜1.0モル及びMnOが0.05〜1.0モルである。
【0030】
このような成分と含量を備えた誘電体組成物を用いて積層セラミックコンデンサーを製造することによって、1100℃以下の低温焼結を実現することができ、X5R誘電特性を満足する容量の温度安全性を得ることができる。
【0031】
積層セラミックコンデンサー
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサーを示す断面図である。図1を参照すると、積層セラミックコンデンサー100は誘電体層102と内部電極層101、103が交互に積層された構成のコンデンサー本体110を有する。このコンデンサー本体110の外面には外部電極104、105が設けられており、外部電極104、105は対応する内部電極103、101にそれぞれ電気的に接続されている。
【0032】
前記誘電体層102は、前述した本発明の誘電体組成物を含んで成る。即ち、誘電体層102を成す誘電体組成物は、主成分であるBaTiOと、前述したガラス組成物を含有する副成分を含む。前記副成分は、前記主成分100モルに対して、前記ガラス組成物1.0〜3.0モル、MgCO0.5〜2.0モル、前記希土類酸化物0.3〜1.0モル及びMnO0.05〜1.0モルを含む。
【0033】
前記誘電体層102の厚さは、特別に限定されてはいないが、超薄型の高容量コンデンサーを実現するために、1層当り3μm以下であり得る。好ましくは、誘電体層102は1乃至3μmの厚さを有することができる。前記内部電極101、103に含有される導電材は特別に限定されない。しかし、誘電体層102が耐還元性を有するので、内部電極101、103材料としてNiまたはNi合金を用いることが好ましい。外部電極104、105材料にはCuまたはNiを用いることができる。
【0034】
前記積層セラミックコンデンサー100は、従来の積層セラミックコンデンサーと同様に、スラリーの製造及びグリーンシート成形、内部電極の印刷、積層、圧着、焼結などの工程により製造され得る。
【0035】
以下、図2を参照して、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサーの製造工程を具体的に説明する。先ず、前述したガラス組成及び誘電体組成を満足するよう主成分であるBaTiO粉末と、副成分の粉末をそれぞれ秤量して用意する(S1、S1' ステップ)。即ち、主成分であるBaTiO100モルに対するモル%で、前記aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiO(a+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20、50≦f≦80)から成るガラス(100〜300nmの超微粒球形粉体となったガラスフリットで提供され得る) 1.3〜3.0モルと、MgCO0.5〜2.0モルと、希土類酸化物(Y、Ho、Dy及びYbの少なくとも1種) 0.3〜1.0モルと、MnO0.05〜1.0モルを秤量する。
【0036】
その後、秤量した粉末を有機溶媒で混合及び分散し(S2ステップ)、有機バインダーをさらに混合して誘電体スラリーを得る(S3ステップ)。有機バインダーではポリビニルブチラールを用いることができ、溶媒ではアセトンまたはトルエンを用いることができる。
【0037】
その後、前記スラリーをシート(グリーンシート) 形態に成形する(S4ステップ)。例えば、前記スラリーは3μm以下の厚さを有するグリーンシートに成形できる。その後、成形されたグリーンシート上にNiなどの内部電極を印刷し、内部電極が印刷された複数のグリーンシートを積層する(S5ステップ)。次に、この積層体を安着して個別チップ(グリーンチップ)に切断する(S6ステップ)。次に、このグリーンチップを250乃至350℃の温度で加熱してチップ内のバインダーまたは分散剤などを除去する(S7ステップ)。
【0038】
その後、脱バインダー処理された前記積層体を、例えば、1100℃以下の温度で焼結(焼成)する(S8ステップ)。この時、前記焼成時に焼成温度が1150℃を超えると従来技術でのように誘電体層と内部電極の間に薄利が起こったりNi電極層が固まる現象が生じる恐れがある。これは直ちに内部電極の短絡発生と直結されて結局信頼性を低下させる問題点で作用するので、本発明では前記焼成温度を1100℃以下に制限することが好ましい。
【0039】
その後、前記焼結体の外面にCuまたはNiなどの外部電極用ペーストを塗布し、このペーストを焼成して外部電極を形成する(S9ステップ)。必要に応じて、外部電極の表面にメッキによる被服層を形成する(S10ステップ)。これにより、図1に示すような積層セラミックコンデンサー100が得られる。その後、積層セラミックコンデンサーの様々な物性を測定してコンデンサーの特性を評価することができる(S11ステップ)。
【0040】
本発明者は多様な実験を通して、前記ガラス組成物及び前記誘電体組成物を用いた積層セラミックコンデンサーはX5R特性を満足し、優れた電気的特性を現すことを実験で見出した。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を通して本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明がこれら実施例に限定されるわけではない。本発明の実施例では、常用高積層チップの製作に先立って約10層程度で積層した低積層の試片をまず作製して諸般の物性を観察した。
【0042】
前記aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiO(a+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20、50≦f≦80)から成るガラスを製造するために、表1の組成を満足するよう各元素を秤量して十分混合した後、1400〜1500℃で溶融した。その後、ツインローラー(twin roller)により急冷させることによってガラスフレーク(glass flake)を得、これを乾式粉砕した後、気象熱処理することによって100〜300nmの粒度を有する超微粒球形粉体形態のガラスフリットを製造した。これと共に、比較材として、アルカリ酸化水(LiO、KOなど)を含まないガラスフリットを用意した。
【0043】
【表1】

【0044】
その後、前記のガラスフリットを含んで各副成分を表2のように秤量した後、有機溶媒で混合及び分散した。
【0045】
【表2】

*希土類酸化物=Y、Ho、Dy及びYbの一種
【0046】
以後、有機バインダーを追加、混合してスラリーを製造し、これをフィルム上に約5μmに塗布して成形シートを製造した。続いて、Ni内部電極を印刷し、内部電極が印刷された各誘電体シートを10層積層し、内部電極が印刷されなかった成形シートで上下部をさらに積層した。前記積層体を85℃、1000kg/cmの圧力で15分間CIP(Cold Isostatic Press)を行った後切断して試片を作製した。前記試片は250〜350℃で40時間以上熱処理して有機バインダー、分散剤などを焼却し、温度及び雰囲気制御が可能な焼成炉を利用して1050〜1200℃範囲内の様々な温度で焼結した。この時、焼成雰囲気内の酸素分圧は10−11〜10−12気圧に制御した。焼結の終わった試片は、Cu外部電極を塗布して850〜920℃の間で電極焼成を行い、電極焼成が完了した後、メッキ工程を行って試片作製を完了した。前記製作した試片を利用して一定時間が経った後電気的特性を測定した。
【0047】
試片の電気的特性は、 Capacitance meter(Agilent、4278A)を利用して1KHz、1Vrms条件で容量と誘電損失を測定し、High Resistance meter(Agilent、4339B)を利用して定格電圧下で180秒条件で絶縁抵抗を測定した。また、誘電率の温度依存性は、TCC(Temperature characteristics coefficient) 測定装備(4220A test chamber)を利用して−55℃〜135℃での変化値で測定した。各焼成温度による誘電体の誘電率は、焼成後の誘電体層の厚さを求めて計算した。一方、高温負荷試験は 150℃で直流電圧18.9Vを印加して絶縁抵抗の軽視変化で測定した。その測定結果は、下表3のように表された。
【0048】
【表3】

【0049】
前記表3から分かるように、本発明による発明例2〜10は1100℃以下の低温で優れた焼結性を示した。特に、発明例3〜9では、誘電率と非抵抗が優れ、容量の温度変化率(TCC)が非常に安定的であった。したがって、発明例2〜10のサンプルを400層以上の高積層試片で作製する場合にも、X5R特性(−55〜85℃、ΔC=±15%以下)を十分満足すると予想される。しかし、本発明の例と対照的にBaO−CaO−SiO系ガラスフリット、あるいはBaSiO系混合粉末を用いた比較例1と2の試片は1150℃以下で低い焼結性を示し、1100℃以下の焼結には全く適しないことを見出した。
【0050】
本発明は、前述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付された請求範囲によって限定する。また、本発明は請求範囲に記載した本発明の技術的思想を外れない範囲内において様々な形態の置換、変形及び変更が可能であることは、当該技術分野の通常の知識を有するた者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサーの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサーの製造工程を示すフローチャットである。
【符号の説明】
【0052】
100 積層セラミックコンデンサー
101、103 内部電極
102 誘電体層
104、105 外部電極
110 コンデンサー本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiOから成り、前記a、b、c、d、e及びfはa+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20及び50≦f≦80とを満足することを特徴とするガラス組成物。
【請求項2】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、0≦d≦15、10≦e≦20、55≦f≦75とを満足することを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、5≦d≦15、12.5≦e≦17.5、60≦f≦75とを満足することを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
組成式、aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiO(a+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20及び50≦f≦80)で表示されるガラス組成物から成り、
100乃至300nmの粒度を有する超微粒球形粉体形態となっていることを特徴とするガラスフリット。
【請求項5】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、0≦d≦15、10≦e≦20、55≦f≦75を満足することを特徴とする請求項4に記載のガラスフリット。
【請求項6】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、5≦d≦15、12.5≦e≦17.5、60≦f≦75とを満足することを特徴とする請求項4に記載のガラスフリット。
【請求項7】
主成分であるBaTiOと、
組成式、aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiO(a+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20及び50≦f≦80)で表示されるガラス組成物を含む副成分を含み、
前記副成分は、前記主成分100モルに対して、前記ガラス組成物1.0〜3.0モル、MgCO0.5〜2.0モル、希土類酸化物(前記希土類酸化物は、Y、Ho、Dy及びYbとから成る群より1種以上選択される)0.3〜1.0モル及びMnO0.05〜1.0モルを含むことを特徴とする誘電体組成物。
【請求項8】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、0≦d≦15、10≦e≦20、55≦f≦75とを満足することを特徴とする請求項7に記載の誘電体組成物。
【請求項9】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、5≦d≦15、12.5≦e≦17.5、60≦f≦75とを満足することを特徴とする請求項7に記載の誘電体組成物。
【請求項10】
複数の誘電体層と、前記誘電体層の間に設けられた複数の内部電極と、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを含む積層セラミックコンデンサーにおいて、
前記誘電体層は、主成分であるBaTiOと、組成式aLiO−bKO−cCaO−dBaO−eB−fSiO(a+b+c+d+e+f=100、2≦a≦10、2≦b≦10、0≦c≦25、0≦d≦25、5≦e≦20及び50≦f≦80)で表示されるガラス組成物を含む副成分とを含み、
前記副成分は、前記主成分100モルに対して、前記ガラス組成物1.0〜3.0モル、MgCO0.5〜2.0モル、希土類酸化物(前記希土類酸化物は、Y、Ho、Dy及びYbとから成る群より1種以上選択される)0.3〜1.0モル及びMnO0.05〜1.0モルを含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサー。
【請求項11】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、0≦d≦15、10≦e≦20、55≦f≦75とを満足することを特徴とする請求項10に記載の積層セラミックコンデンサー。
【請求項12】
前記a、b、c、d、e及びfは、3≦a≦8、2≦b≦5、0≦c≦15、5≦d≦15、12.5≦e≦17.5、60≦f≦75とを満足することを特徴とする請求項10に記載の積層セラミックコンデンサー。
【請求項13】
前記内部電極は、導電材料としてNiまたはNi合金を含有することを特徴とする請求項10に記載の積層セラミックコンデンサー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−39325(P2007−39325A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205741(P2006−205741)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】