作業車
【課題】作業車の旋回状況に応じて適切なエンジン制御を行なう。
【解決手段】コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル2操舵角を検出手段により検出し、該操舵角が所定角度以上になるとエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業車が略直進状態となるように操舵角が復帰しときは、エンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車の構成とする
【解決手段】コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル2操舵角を検出手段により検出し、該操舵角が所定角度以上になるとエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業車が略直進状態となるように操舵角が復帰しときは、エンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車の構成とする
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車に関し、主として作業車の旋回挙動に基づいてエンジン制御の内容を切り替えるもの等の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、運転者による操舵方向及び操舵角速度が検出され、車両の旋回度合が低減される方向の操舵が行われているときには操舵角速度の大きさに基づきエンジン出力調整量が低減補正されるので、エンジンの出力トルクが低下した状態から速やかに回復することにより、運転者が挙動制御の引き摺り感を覚えることがない。また、運転者による操舵方向及び操舵角速度が検出され、車両の旋回度合が低減される方向の操舵が行われているときには操舵角速度の大きさに基づき車輪の制動力調整量が低減補正されるので、車輪に付与されている制動力が速やかに解除されることにより、運転者が挙動制御の引き摺り感を覚えることがないもの等か開示されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−82200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このように、車両の旋回度合が低減される方向の操舵が行われているときには操舵角速度の大きさに基づきエンジン出力調整量や車輪の制動力調整量の低減補正を行うものに限定されることなく、作業車、特に農作業機においては、負荷の変動により回転数を変更する場合と、負荷が変動しても回転数は一定で出力を負荷に応じて変更する場合の二種類のエンジン制御を行う必要がある。
【0004】
そこで、本発明では、これら二種類のエンジン制御を、ハンドルの操舵角状態や作業機の昇降状態に応じて適切に変更しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル(2)操舵角を検出手段により検出し、該操舵角が所定角度以上になるとエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業車が略直進状態となるように操舵角が復帰しときは、エンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車の構成とする。
【0006】
このような構成により、作業時に運転者のハンドル(2)操作により作業車の旋回を行わせるが、このときの操舵角を検出手段により検出させ、この検出値が所定角度以上のときは旋回が行われるという判断に基づき、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)におけるエンジン制御を切替手段により、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御から、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に切り替えると共に、操舵角が大きくなるほど旋回速度を落さねば不都合が生じ易いため、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させる制御を行わせる。
【0007】
このようなアイソクロナス制御の状態において、操舵角の検出値が作業車が略直進状態となるような操舵角に復帰したときは、作業車の旋回が略終了したという判断に基づき、再び、エンジン制御を切替手段により元のドループ制御に切り替えると共に、エンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【0008】
請求項2の発明は、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に作業機(3)の昇降状態を検出手段により検出し、作業機(3)が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替える構成とし、駆動輪(4)の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機(3)が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車の構成とする。
【0009】
このような構成により、作業車における作業時に旋回を行わせるとき、作業機(3)の昇降状態を検出手段により検出させ、この検出値により作業機(3)が上昇状態にあると判断されたときは、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)におけるエンジン制御を切替手段により、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御から、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に切り替えると共に、駆動輪(4)の左右回転差が大きくなるほど旋回速度を落さねば不都合が生じ易いため、左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させる制御を行わせる。
【0010】
このようなアイソクロナス制御の状態において、作業機(3)の昇降状態の検出値により作業機(3)が下降状態にあると判断されたときは、再び、エンジン制御を切替手段により元のドループ制御に切り替えると共に、エンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、上記作用の如く、作業時に運転者のハンドル(2)操作により旋回を行わせるが、このときの操舵角の検出値が所定角度以上のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させると共に、操舵角の検出値が作業車が略直進状態となるような操舵角度に復帰したときは、再び、エンジン制御を元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻すものであるから、作業車にて、例えば圃場等で旋回を行うときは足回りに大きい出力を必要とするため、このときのエンジン制御を、通常のドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えることにより、旋回時に負荷が増大しても力強い旋回を行わせることができるようになる。また、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させ車速を落すことにより、円滑でロスのない旋回を行わせることができる。
【0012】
請求項2の発明では、上記作用の如く、作業時に旋回を行わせるとき、作業機(3)が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、駆動輪(4)の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させると共に、作業機(3)が下降状態のときは、再び、エンジン制御を元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻すものであるから、作業車にて、例えば圃場等で旋回を行うときは足回りに大きい出力を必要とするため、このときのエンジン制御を、通常のドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えることにより、旋回時に負荷が増大しても力強い旋回を行わせることができると共に、片ブレーキ等により左右の駆動輪(4)の回転差が大きいほど小回り旋回となるため、この回転差に応じてエンジン回転数を低下させ車速を落すことにより、円滑でロスのない旋回を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル2操舵角を検出手段により検出し、操舵角が所定確度以上(0度以上)のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、操舵角が略0度に復帰しときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けている。
【0014】
また、前記作業車において、作業中の旋回時に作業機3の昇降状態を検出手段により検出し、作業機3が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、駆動輪4の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機3が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けている。
【0015】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
コモンレール式ディーゼルエンジン1について、図1に示す如きシステム図によりその概要を説明する。コモンレール式(蓄圧式燃料噴射)とは、各気筒へ燃料を噴射する燃料噴射装置への燃料供給を要求された圧力とするコモンレール10(蓄圧室)を介して行うものである。
【0016】
燃料タンク11内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ12を介して該エンジン1で駆動される高圧ポンプ13に吸入され、この高圧ポンプ13によって加圧された高圧燃料は吐出通路14によりコモンレール10に導かれ蓄えられる。
【0017】
該コモンレール10内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路16により気筒数分の燃料噴射弁17に供給され、エンジンコントロールユニット18(以下ECUという)からの指令に基づき、各気筒毎に燃料噴射弁17が開弁作動して、高圧燃料がエンジンの各燃焼室内に噴射供給され、各燃料噴射弁17での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路19により共通のリターン通路20へ導かれ、このリターン通路20によって燃料タンク11へ戻される。
【0018】
また、コモンレール10内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ13に圧力制御弁21が設けられており、この圧力制御弁21はECU18からのデューティ信号によって、高圧ポンプ13から燃料タンク11への余剰燃料のリターン通路20の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール10側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0019】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧センサ22により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁21を介してコモンレール圧をフィードバック制御する。
【0020】
作業車(農作業機)におけるコモンレール式ディーゼルエンジン1のECU18は、図2に示す如く、回転数と出力トルクの関係において走行モードM1と通常作業モードM2及び重作業モードM3の三種類の制御モードを設けている。
【0021】
走行モードM1は、回転数の変動で出力も変動するドループ制御として、農作業を行わず移動走行する場合に使用するものであり、例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができる。
【0022】
通常作業モードM2は、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御として、通常の農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるとき、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するのでオペレータが楽に操縦できる。
【0023】
重作業モードM3は、通常作業モードM2と同様に負荷が変動しても回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御で、特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがない。
【0024】
これらの作業モードM1,M2,M3は、作業モード切替スイッチの操作、又は走行変速レバーの変速操作、作業クラッチの入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0025】
従来、ディーゼルエンジンでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジン特有の、所謂ノック音を低減することが知られている。
【0026】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回乃至2回に固定して行われるものであったが、前記コモンレール10のシステムを用いることで、エンジンの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できる。
【0027】
前記コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載したトラクター5において、作業時に運転者のハンドル2操作により旋回を行わせるが、このときの操舵角を検出する検出手段としての操舵角センサ6を設け、この操舵角センサ6による検出値が0度以上のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、検出値が0度に復帰しときはエンジン制御を元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段としての制御切替装置7を前記ECU18に設けて構成させる。
【0028】
このような構成により、図3のフローチャートに示す如く、作業時に運転者のハンドル2操作による旋回操舵角を操舵角センサ6により検出し、この検出値が0度以上のときは旋回が行われるという判断に基づき、該エンジン1におけるエンジン制御を制御切替装置7によりドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えると共に、操舵角が大きくなるほど旋回速度を落さねば非円滑でロスが生じ易いため、図4の線図に示す如く、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させることにより円滑な旋回を行わせることができる。
【0029】
このアイソクロナス制御の状態において、操舵角センサ6による検出値が0度に復帰したときは旋回が終了したという判断に基づき、再び、エンジン制御を制御切替装置7により、元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【0030】
また、前記トラクター5において、作業時に旋回を行う際にエンジン制御をアイソクロナス制御に切り替え、走行変速を行う変速装置における変速状態と、該操舵角センサ6による運転者のハンドル2操作時の旋回操舵角に応じて、エンジン回転数を低下させ車速を減速させるものにおいて、図5の線図に示す如く、車速が高速のときほど浅い操舵角の段階からエンジン回転数を低下開始ラインaにより低下を始め、操舵角が増すに従ってアイソクロナス制御の制御領域によって徐々にリニアに低下させることにより、車速に応じたロスの少ない滑らかな旋回を行わせることができる。
【0031】
また、図6の線図に示す如く、該操舵角センサ6によるハンドル2操作時の旋回操舵角の量及び変化率等により、アイソクロナス制御の設定回転数を補正するファクターbを求め、アイソクロナス設定回転数にファクターbを乗ずることにより回転数の補正を行うものであるが、従来では、このような回転数の補正を行うものとして、旋回操舵角に応じてアクセル開度を機械的に補正する自動アクセル制御はあるが、アイソクロナス制御による自動アクセル制御は見当らない。
【0032】
また、前記トラクター5において、作業中の旋回時に作業機3の昇降状態を検出手段としての作業機昇降センサ8により検出し、作業機3が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、駆動輪4の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機3が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段として前記制御切替装置7を設けて構成させる。
【0033】
このような構成により、図7のフローチャートに示す如く、作業時に旋回を行わせるとき、作業機3の昇降状態を作業機昇降センサ8により検出させ、この検出値により作業機3が上昇状態にあると判断されたときは、該エンジン1におけるエンジン制御を制御切替装置7によりドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えると共に、駆動輪4の左右回転差が大きくなるほど旋回速度を落さねば非円滑でロスが生じ易いため、図8の線図に示す如く、左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させることにより円滑な旋回を行わせることができる。
【0034】
このアイソクロナス制御の状態において、作業機昇降センサ8の検出値により作業機3が下降状態にあると判断されたときは、再び、エンジン制御を制御切替装置7により、元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【0035】
また、前記の如く、トラクター5における旋回時に、作業機3が上昇状態にあると判断されたとき、該エンジン1におけるエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替える作用を行うものにおいて、旋回状態としてスーパーフルターンを行ったときは、前後車輪の回転距離差が大きくなるほど旋回速度を落さねば非円滑でロスが生じ易いため、図9の線図に示す如く、回転距離差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させることにより、車速を減速させ円滑な旋回を行わせることができる。
【0036】
また、前記コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載したコンバインにおいて、図10の線図に示す如く、マイルドターン,ブレーキターン,スピンターンによる各旋回時に、車速に応じてアイソクロナス制御を行いながらエンジン回転数を低減させるものでは、スピンターンのように深い旋回になるほど、又は車速が高速になるほどエンジン回転数の減少率は高くなることから、旋回の種類に応じて、アイソクロナス制御によりエンジン回転数をリニアに変化させて車速を減速させることにより、ロスの少ない円滑な旋回を行わせることができる。
【0037】
また、前記コンバインにおいて、作業時に旋回を行う際には、エンジン制御をアイソクロナス制御に切り替え、図11の線図に示す如く、車速が速い旋回のときほど、左右の走行クローラの回転差が小さい段階からエンジン回転数を低下開始ラインcにより低下を始め、走行クローラの回転差が増すに従いアイソクロナス制御の制御領域によって、エンジン回転数を徐々にリニアに低下させ車速を減速させることにより、車速に応じてロスの少ない円滑な旋回を行わせることができる。
【0038】
また、前記コンバインにおいて、高速走行時は低速走行時に比べ左右側への方向変換を行う場合、微小の方向修正であっても車体のショックが大きくなり運転者が不快に感じてしまうため、図12(a),(b)の線図に示す如く、高速走行時に微小方向変換する際には、エンジン制御をアイソクロナス制御に切り替え、左右の走行クローラの回転差の検出値に合わせて、エンジン回転数を低下開始ラインdから一時的に低下させ、走行クローラの回転差に応じたエンジン回転数の変動を行わせることにより、高速走行時の微小の方向修正を円滑に行い得ると共に、運転者に与えるショックを軽減することができる。
【0039】
前記アイソクロナス制御において、負荷率が100%を超えるときは急にエンジン回転数が低下し運転者に対するフィーリングが悪くなるため、図13のフローチャートに示す如く、負荷率が75%を超えたときはドループ制御に自動的に切り替え徐々に回転数を低下させ、負荷率が75%を下回ったときは再び元のアイソクロナス制御に戻すエンジン制御を行うことにより、ドループ制御による回転数の低下により運転者に負荷率が高くなっていることを認知させることができるから、100%負荷を超えてエンジン回転数が低下しても印象を悪くすることがない。
【0040】
該コモンレール10によるエンジン加速時のレール圧制御において、従来の始動サイクルによるレール圧はエンジン回転数によって変化し、加速時には黒煙の発生が見受けられるため、図14の線図に示す如く、エンジン回転数の変化率により定回転領域,加速領域,定速度領域,減速領域に各々分類し、エンジン回転数の状況によって、従来のレール圧eに対し、図15のフローチャートに示す如く、加速領域を判別したときは増量したレール圧fとし、次に定速度領域を判別したときはレール圧を減少し規定のレール圧gとすることにより、微粒化を促進して加速時の黒煙発生を抑えるべく、予めレール圧の制御を行わせることができる。
【0041】
また、エンジン加速時には、メイン噴射タイミングの応答遅れが起こり易く、特に、噴射タイミングを進角させている場合や低温時において白煙の発生が見受けられるため、図16の線図に示す如く、エンジン回転数の変化率により定回転領域,加速領域,定速度領域,減速領域に各々分類し、エンジン回転数の状況によって、従来の噴射タイミングhに対し、図17のフローチャートに示す如く、加速領域を判別したときは進角した噴射タイミングjとし、次に定速度領域を判別したときは噴射タイミングの進角量を減少し規定の噴射タイミングkとすることにより、加速時の白煙発生を抑えるべく、予めメイン噴射タイミングの制御を行わせることができる。
【0042】
また、従来、オフロード車用として使用されるオールスピードガバナーは、アクセル開度が小さくてもエンジンの負荷状態によっては全負荷時の燃料噴射量を吐出する傾向があり、フリーアクセル操作時には、アクセル開度に対しエンジン回転数の上昇が追いつけず、見せかけの負荷が掛かることにより全負荷時に近い多量の燃料が噴射され黒煙が発生するものであった。
【0043】
このため、図18の線図に示す如く、アクセル開度による単位時間当たりのエンジン回転数の上昇率が、△Ne/△tによりフリーアクセル状態と判断されたときは、エンジンの速度制御ガバナーを、オールスピードガバナー制御pからリミットスピードガバナー制御qに変更することにより、加速時に見かけの負荷に対する燃料噴射量を制限して黒煙の発生を抑制することができる。
【0044】
また、前記オフロード車用としてのオールスピードガバナーにおいて、図19の線図に示す如く、アクセル開度による単位時間当たりのエンジン回転数の上昇率が、△Ne/△tによりフリーアクセル状態と判断されたときは、エンジンの速度制御ガバナーに、オールスピードガバナー制御pによる全負荷特性に対しリミッタrを設けることにより、加速時に見かけの負荷に対する燃料噴射量を制限して黒煙の発生を抑制することができる。
【0045】
また、前記オフロード車用としてのオールスピードガバナーにおいて、図20の線図に示す如く、アクセル開度による単位時間当たりのエンジン回転数の上昇率が、△Ne/△tによりフリーアクセル状態と判断されたときは、アクセル開度の指示を、要求アクセル指示値sから抑制アクセル指示値tに変更することにより、指示変更なしの燃料制御uから抑制指示による燃料制御vに変更することができるから、加速時に見かけの負荷に対する燃料噴射量を制限して黒煙の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】コモンレールによる蓄圧式燃料噴射ディーゼルエンジンを示すシステム図。
【図2】三種類の制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図。
【図3】ハンドル操舵角によるエンジン制御の切り替え手順を示すフローチャート。
【図4】ハンドル操舵角の大きさに応じたエンジン回転数の低下の状態を示す線図。
【図5】高速車速ほど浅い操舵角からエンジン回転数を低下させる状態を示す線図。
【図6】ハンドル操舵角の変化率による設定回転数の補正用ファクターを示す線図。
【図7】作業機昇降状態によるエンジン制御の切り替え手順を示すフローチャート。
【図8】駆動輪の左右回転差に応じてエンジン回転数を低下させる状態を示す線図。
【図9】前後車輪の回転距離差に応じエンジン回転数を低下させる状態を示す線図。
【図10】コンバインの各種旋回におけるエンジン回転数減少率の状態を示す線図。
【図11】作業旋回時駆動輪回転差でエンジン回転数の低下開始ラインを示す線図。
【図12】(a)高速時の微小方向修正によるエンジン回転数低下開始ラインを示す線図。
【0048】
(b)高速時の微小方向修正によるエンジン回転数の一時低下状態を示す線図。
【図13】エンジン制御を負荷率変化により切り替える手順を示すフローチャート。
【図14】エンジン回転数の変化率による領域分類のレール圧増量状態を示す線図。
【図15】エンジン回転数の各領域でのレール圧増減の手順を示すフローチャート。
【図16】エンジン回転数の変化率による領域分類の噴射時期進角状態を示す線図。
【図17】エンジン回転数の各領域での噴射時期進遅の手順を示すフローチャート。
【図18】フリーアクセル状態においてガバナー制御を切り替える状態を示す線図。
【図19】フリーアクセル状態においてガバナー制御用リミッタの状態を示す線図。
【図20】フリーアクセル状態においてアクセル指示と燃料制御の状態を示す線図。
【図21】トラクターにおける全体構成を示す概略側面図。
【符号の説明】
【0049】
1.コモンレール式ディーゼルエンジン
2.ハンドル
3.作業機
4.駆動輪
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車に関し、主として作業車の旋回挙動に基づいてエンジン制御の内容を切り替えるもの等の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、運転者による操舵方向及び操舵角速度が検出され、車両の旋回度合が低減される方向の操舵が行われているときには操舵角速度の大きさに基づきエンジン出力調整量が低減補正されるので、エンジンの出力トルクが低下した状態から速やかに回復することにより、運転者が挙動制御の引き摺り感を覚えることがない。また、運転者による操舵方向及び操舵角速度が検出され、車両の旋回度合が低減される方向の操舵が行われているときには操舵角速度の大きさに基づき車輪の制動力調整量が低減補正されるので、車輪に付与されている制動力が速やかに解除されることにより、運転者が挙動制御の引き摺り感を覚えることがないもの等か開示されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−82200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このように、車両の旋回度合が低減される方向の操舵が行われているときには操舵角速度の大きさに基づきエンジン出力調整量や車輪の制動力調整量の低減補正を行うものに限定されることなく、作業車、特に農作業機においては、負荷の変動により回転数を変更する場合と、負荷が変動しても回転数は一定で出力を負荷に応じて変更する場合の二種類のエンジン制御を行う必要がある。
【0004】
そこで、本発明では、これら二種類のエンジン制御を、ハンドルの操舵角状態や作業機の昇降状態に応じて適切に変更しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル(2)操舵角を検出手段により検出し、該操舵角が所定角度以上になるとエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業車が略直進状態となるように操舵角が復帰しときは、エンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車の構成とする。
【0006】
このような構成により、作業時に運転者のハンドル(2)操作により作業車の旋回を行わせるが、このときの操舵角を検出手段により検出させ、この検出値が所定角度以上のときは旋回が行われるという判断に基づき、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)におけるエンジン制御を切替手段により、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御から、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に切り替えると共に、操舵角が大きくなるほど旋回速度を落さねば不都合が生じ易いため、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させる制御を行わせる。
【0007】
このようなアイソクロナス制御の状態において、操舵角の検出値が作業車が略直進状態となるような操舵角に復帰したときは、作業車の旋回が略終了したという判断に基づき、再び、エンジン制御を切替手段により元のドループ制御に切り替えると共に、エンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【0008】
請求項2の発明は、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に作業機(3)の昇降状態を検出手段により検出し、作業機(3)が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替える構成とし、駆動輪(4)の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機(3)が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車の構成とする。
【0009】
このような構成により、作業車における作業時に旋回を行わせるとき、作業機(3)の昇降状態を検出手段により検出させ、この検出値により作業機(3)が上昇状態にあると判断されたときは、コモンレール式ディーゼルエンジン(1)におけるエンジン制御を切替手段により、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御から、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に切り替えると共に、駆動輪(4)の左右回転差が大きくなるほど旋回速度を落さねば不都合が生じ易いため、左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させる制御を行わせる。
【0010】
このようなアイソクロナス制御の状態において、作業機(3)の昇降状態の検出値により作業機(3)が下降状態にあると判断されたときは、再び、エンジン制御を切替手段により元のドループ制御に切り替えると共に、エンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、上記作用の如く、作業時に運転者のハンドル(2)操作により旋回を行わせるが、このときの操舵角の検出値が所定角度以上のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させると共に、操舵角の検出値が作業車が略直進状態となるような操舵角度に復帰したときは、再び、エンジン制御を元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻すものであるから、作業車にて、例えば圃場等で旋回を行うときは足回りに大きい出力を必要とするため、このときのエンジン制御を、通常のドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えることにより、旋回時に負荷が増大しても力強い旋回を行わせることができるようになる。また、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させ車速を落すことにより、円滑でロスのない旋回を行わせることができる。
【0012】
請求項2の発明では、上記作用の如く、作業時に旋回を行わせるとき、作業機(3)が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、駆動輪(4)の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させると共に、作業機(3)が下降状態のときは、再び、エンジン制御を元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻すものであるから、作業車にて、例えば圃場等で旋回を行うときは足回りに大きい出力を必要とするため、このときのエンジン制御を、通常のドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えることにより、旋回時に負荷が増大しても力強い旋回を行わせることができると共に、片ブレーキ等により左右の駆動輪(4)の回転差が大きいほど小回り旋回となるため、この回転差に応じてエンジン回転数を低下させ車速を落すことにより、円滑でロスのない旋回を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル2操舵角を検出手段により検出し、操舵角が所定確度以上(0度以上)のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、操舵角が略0度に復帰しときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けている。
【0014】
また、前記作業車において、作業中の旋回時に作業機3の昇降状態を検出手段により検出し、作業機3が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、駆動輪4の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機3が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けている。
【0015】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
コモンレール式ディーゼルエンジン1について、図1に示す如きシステム図によりその概要を説明する。コモンレール式(蓄圧式燃料噴射)とは、各気筒へ燃料を噴射する燃料噴射装置への燃料供給を要求された圧力とするコモンレール10(蓄圧室)を介して行うものである。
【0016】
燃料タンク11内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ12を介して該エンジン1で駆動される高圧ポンプ13に吸入され、この高圧ポンプ13によって加圧された高圧燃料は吐出通路14によりコモンレール10に導かれ蓄えられる。
【0017】
該コモンレール10内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路16により気筒数分の燃料噴射弁17に供給され、エンジンコントロールユニット18(以下ECUという)からの指令に基づき、各気筒毎に燃料噴射弁17が開弁作動して、高圧燃料がエンジンの各燃焼室内に噴射供給され、各燃料噴射弁17での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路19により共通のリターン通路20へ導かれ、このリターン通路20によって燃料タンク11へ戻される。
【0018】
また、コモンレール10内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ13に圧力制御弁21が設けられており、この圧力制御弁21はECU18からのデューティ信号によって、高圧ポンプ13から燃料タンク11への余剰燃料のリターン通路20の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール10側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0019】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧センサ22により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁21を介してコモンレール圧をフィードバック制御する。
【0020】
作業車(農作業機)におけるコモンレール式ディーゼルエンジン1のECU18は、図2に示す如く、回転数と出力トルクの関係において走行モードM1と通常作業モードM2及び重作業モードM3の三種類の制御モードを設けている。
【0021】
走行モードM1は、回転数の変動で出力も変動するドループ制御として、農作業を行わず移動走行する場合に使用するものであり、例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができる。
【0022】
通常作業モードM2は、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御として、通常の農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるとき、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するのでオペレータが楽に操縦できる。
【0023】
重作業モードM3は、通常作業モードM2と同様に負荷が変動しても回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御で、特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがない。
【0024】
これらの作業モードM1,M2,M3は、作業モード切替スイッチの操作、又は走行変速レバーの変速操作、作業クラッチの入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0025】
従来、ディーゼルエンジンでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジン特有の、所謂ノック音を低減することが知られている。
【0026】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回乃至2回に固定して行われるものであったが、前記コモンレール10のシステムを用いることで、エンジンの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できる。
【0027】
前記コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載したトラクター5において、作業時に運転者のハンドル2操作により旋回を行わせるが、このときの操舵角を検出する検出手段としての操舵角センサ6を設け、この操舵角センサ6による検出値が0度以上のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、検出値が0度に復帰しときはエンジン制御を元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段としての制御切替装置7を前記ECU18に設けて構成させる。
【0028】
このような構成により、図3のフローチャートに示す如く、作業時に運転者のハンドル2操作による旋回操舵角を操舵角センサ6により検出し、この検出値が0度以上のときは旋回が行われるという判断に基づき、該エンジン1におけるエンジン制御を制御切替装置7によりドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えると共に、操舵角が大きくなるほど旋回速度を落さねば非円滑でロスが生じ易いため、図4の線図に示す如く、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させることにより円滑な旋回を行わせることができる。
【0029】
このアイソクロナス制御の状態において、操舵角センサ6による検出値が0度に復帰したときは旋回が終了したという判断に基づき、再び、エンジン制御を制御切替装置7により、元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【0030】
また、前記トラクター5において、作業時に旋回を行う際にエンジン制御をアイソクロナス制御に切り替え、走行変速を行う変速装置における変速状態と、該操舵角センサ6による運転者のハンドル2操作時の旋回操舵角に応じて、エンジン回転数を低下させ車速を減速させるものにおいて、図5の線図に示す如く、車速が高速のときほど浅い操舵角の段階からエンジン回転数を低下開始ラインaにより低下を始め、操舵角が増すに従ってアイソクロナス制御の制御領域によって徐々にリニアに低下させることにより、車速に応じたロスの少ない滑らかな旋回を行わせることができる。
【0031】
また、図6の線図に示す如く、該操舵角センサ6によるハンドル2操作時の旋回操舵角の量及び変化率等により、アイソクロナス制御の設定回転数を補正するファクターbを求め、アイソクロナス設定回転数にファクターbを乗ずることにより回転数の補正を行うものであるが、従来では、このような回転数の補正を行うものとして、旋回操舵角に応じてアクセル開度を機械的に補正する自動アクセル制御はあるが、アイソクロナス制御による自動アクセル制御は見当らない。
【0032】
また、前記トラクター5において、作業中の旋回時に作業機3の昇降状態を検出手段としての作業機昇降センサ8により検出し、作業機3が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、駆動輪4の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機3が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段として前記制御切替装置7を設けて構成させる。
【0033】
このような構成により、図7のフローチャートに示す如く、作業時に旋回を行わせるとき、作業機3の昇降状態を作業機昇降センサ8により検出させ、この検出値により作業機3が上昇状態にあると判断されたときは、該エンジン1におけるエンジン制御を制御切替装置7によりドループ制御からアイソクロナス制御に切り替えると共に、駆動輪4の左右回転差が大きくなるほど旋回速度を落さねば非円滑でロスが生じ易いため、図8の線図に示す如く、左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させることにより円滑な旋回を行わせることができる。
【0034】
このアイソクロナス制御の状態において、作業機昇降センサ8の検出値により作業機3が下降状態にあると判断されたときは、再び、エンジン制御を制御切替装置7により、元のドループ制御に切り替えエンジン回転数も自動的に元に戻す制御を行わせる。
【0035】
また、前記の如く、トラクター5における旋回時に、作業機3が上昇状態にあると判断されたとき、該エンジン1におけるエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替える作用を行うものにおいて、旋回状態としてスーパーフルターンを行ったときは、前後車輪の回転距離差が大きくなるほど旋回速度を落さねば非円滑でロスが生じ易いため、図9の線図に示す如く、回転距離差の大きさに応じてエンジン回転数を自動的に低下させることにより、車速を減速させ円滑な旋回を行わせることができる。
【0036】
また、前記コモンレール式ディーゼルエンジン1を搭載したコンバインにおいて、図10の線図に示す如く、マイルドターン,ブレーキターン,スピンターンによる各旋回時に、車速に応じてアイソクロナス制御を行いながらエンジン回転数を低減させるものでは、スピンターンのように深い旋回になるほど、又は車速が高速になるほどエンジン回転数の減少率は高くなることから、旋回の種類に応じて、アイソクロナス制御によりエンジン回転数をリニアに変化させて車速を減速させることにより、ロスの少ない円滑な旋回を行わせることができる。
【0037】
また、前記コンバインにおいて、作業時に旋回を行う際には、エンジン制御をアイソクロナス制御に切り替え、図11の線図に示す如く、車速が速い旋回のときほど、左右の走行クローラの回転差が小さい段階からエンジン回転数を低下開始ラインcにより低下を始め、走行クローラの回転差が増すに従いアイソクロナス制御の制御領域によって、エンジン回転数を徐々にリニアに低下させ車速を減速させることにより、車速に応じてロスの少ない円滑な旋回を行わせることができる。
【0038】
また、前記コンバインにおいて、高速走行時は低速走行時に比べ左右側への方向変換を行う場合、微小の方向修正であっても車体のショックが大きくなり運転者が不快に感じてしまうため、図12(a),(b)の線図に示す如く、高速走行時に微小方向変換する際には、エンジン制御をアイソクロナス制御に切り替え、左右の走行クローラの回転差の検出値に合わせて、エンジン回転数を低下開始ラインdから一時的に低下させ、走行クローラの回転差に応じたエンジン回転数の変動を行わせることにより、高速走行時の微小の方向修正を円滑に行い得ると共に、運転者に与えるショックを軽減することができる。
【0039】
前記アイソクロナス制御において、負荷率が100%を超えるときは急にエンジン回転数が低下し運転者に対するフィーリングが悪くなるため、図13のフローチャートに示す如く、負荷率が75%を超えたときはドループ制御に自動的に切り替え徐々に回転数を低下させ、負荷率が75%を下回ったときは再び元のアイソクロナス制御に戻すエンジン制御を行うことにより、ドループ制御による回転数の低下により運転者に負荷率が高くなっていることを認知させることができるから、100%負荷を超えてエンジン回転数が低下しても印象を悪くすることがない。
【0040】
該コモンレール10によるエンジン加速時のレール圧制御において、従来の始動サイクルによるレール圧はエンジン回転数によって変化し、加速時には黒煙の発生が見受けられるため、図14の線図に示す如く、エンジン回転数の変化率により定回転領域,加速領域,定速度領域,減速領域に各々分類し、エンジン回転数の状況によって、従来のレール圧eに対し、図15のフローチャートに示す如く、加速領域を判別したときは増量したレール圧fとし、次に定速度領域を判別したときはレール圧を減少し規定のレール圧gとすることにより、微粒化を促進して加速時の黒煙発生を抑えるべく、予めレール圧の制御を行わせることができる。
【0041】
また、エンジン加速時には、メイン噴射タイミングの応答遅れが起こり易く、特に、噴射タイミングを進角させている場合や低温時において白煙の発生が見受けられるため、図16の線図に示す如く、エンジン回転数の変化率により定回転領域,加速領域,定速度領域,減速領域に各々分類し、エンジン回転数の状況によって、従来の噴射タイミングhに対し、図17のフローチャートに示す如く、加速領域を判別したときは進角した噴射タイミングjとし、次に定速度領域を判別したときは噴射タイミングの進角量を減少し規定の噴射タイミングkとすることにより、加速時の白煙発生を抑えるべく、予めメイン噴射タイミングの制御を行わせることができる。
【0042】
また、従来、オフロード車用として使用されるオールスピードガバナーは、アクセル開度が小さくてもエンジンの負荷状態によっては全負荷時の燃料噴射量を吐出する傾向があり、フリーアクセル操作時には、アクセル開度に対しエンジン回転数の上昇が追いつけず、見せかけの負荷が掛かることにより全負荷時に近い多量の燃料が噴射され黒煙が発生するものであった。
【0043】
このため、図18の線図に示す如く、アクセル開度による単位時間当たりのエンジン回転数の上昇率が、△Ne/△tによりフリーアクセル状態と判断されたときは、エンジンの速度制御ガバナーを、オールスピードガバナー制御pからリミットスピードガバナー制御qに変更することにより、加速時に見かけの負荷に対する燃料噴射量を制限して黒煙の発生を抑制することができる。
【0044】
また、前記オフロード車用としてのオールスピードガバナーにおいて、図19の線図に示す如く、アクセル開度による単位時間当たりのエンジン回転数の上昇率が、△Ne/△tによりフリーアクセル状態と判断されたときは、エンジンの速度制御ガバナーに、オールスピードガバナー制御pによる全負荷特性に対しリミッタrを設けることにより、加速時に見かけの負荷に対する燃料噴射量を制限して黒煙の発生を抑制することができる。
【0045】
また、前記オフロード車用としてのオールスピードガバナーにおいて、図20の線図に示す如く、アクセル開度による単位時間当たりのエンジン回転数の上昇率が、△Ne/△tによりフリーアクセル状態と判断されたときは、アクセル開度の指示を、要求アクセル指示値sから抑制アクセル指示値tに変更することにより、指示変更なしの燃料制御uから抑制指示による燃料制御vに変更することができるから、加速時に見かけの負荷に対する燃料噴射量を制限して黒煙の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】コモンレールによる蓄圧式燃料噴射ディーゼルエンジンを示すシステム図。
【図2】三種類の制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図。
【図3】ハンドル操舵角によるエンジン制御の切り替え手順を示すフローチャート。
【図4】ハンドル操舵角の大きさに応じたエンジン回転数の低下の状態を示す線図。
【図5】高速車速ほど浅い操舵角からエンジン回転数を低下させる状態を示す線図。
【図6】ハンドル操舵角の変化率による設定回転数の補正用ファクターを示す線図。
【図7】作業機昇降状態によるエンジン制御の切り替え手順を示すフローチャート。
【図8】駆動輪の左右回転差に応じてエンジン回転数を低下させる状態を示す線図。
【図9】前後車輪の回転距離差に応じエンジン回転数を低下させる状態を示す線図。
【図10】コンバインの各種旋回におけるエンジン回転数減少率の状態を示す線図。
【図11】作業旋回時駆動輪回転差でエンジン回転数の低下開始ラインを示す線図。
【図12】(a)高速時の微小方向修正によるエンジン回転数低下開始ラインを示す線図。
【0048】
(b)高速時の微小方向修正によるエンジン回転数の一時低下状態を示す線図。
【図13】エンジン制御を負荷率変化により切り替える手順を示すフローチャート。
【図14】エンジン回転数の変化率による領域分類のレール圧増量状態を示す線図。
【図15】エンジン回転数の各領域でのレール圧増減の手順を示すフローチャート。
【図16】エンジン回転数の変化率による領域分類の噴射時期進角状態を示す線図。
【図17】エンジン回転数の各領域での噴射時期進遅の手順を示すフローチャート。
【図18】フリーアクセル状態においてガバナー制御を切り替える状態を示す線図。
【図19】フリーアクセル状態においてガバナー制御用リミッタの状態を示す線図。
【図20】フリーアクセル状態においてアクセル指示と燃料制御の状態を示す線図。
【図21】トラクターにおける全体構成を示す概略側面図。
【符号の説明】
【0049】
1.コモンレール式ディーゼルエンジン
2.ハンドル
3.作業機
4.駆動輪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル(2)操舵角を検出手段により検出し、該操舵角が所定角度以上になるとエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業車が略直進状態となるように操舵角が復帰しときは、エンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車。
【請求項2】
コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に作業機(3)の昇降状態を検出手段により検出し、作業機(3)が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替える構成とし、駆動輪(4)の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機(3)が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車。
【請求項1】
コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に運転者によるハンドル(2)操舵角を検出手段により検出し、該操舵角が所定角度以上になるとエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替え、操舵角の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業車が略直進状態となるように操舵角が復帰しときは、エンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車。
【請求項2】
コモンレール式ディーゼルエンジン(1)を搭載した作業車において、作業中の旋回時に作業機(3)の昇降状態を検出手段により検出し、作業機(3)が上昇状態のときはエンジン制御をドループ制御からアイソクロナス制御に切り替える構成とし、駆動輪(4)の左右回転差の大きさに応じてエンジン回転数を低下させると共に、作業機(3)が下降状態のときはエンジン制御を再び元のドループ制御に切り替えるエンジン制御の切替手段を設けたことを特徴とする作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−57391(P2008−57391A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233940(P2006−233940)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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