説明

併用医薬組成物

放出調節製剤(5)は、ニモジピンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェア(1、2)、およびタクロリムスを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェア(3)、(4)を含む。即時放出用の微粒化ニモジピン封入無コーティングミニカプセルまたはミニスフェア(1)、および遅延、持続、制御、または標的放出用の微粒化ニモジピン封入放出制御ポリマーコーティングミニカプセルまたはミニスフェア(2)がある。コアが即時放出用のタクロリムス脂質ベースの製剤を含む無コーティングシームレスミニカプセル(3)と、コアが遅延、持続、放出制御、または標的放出用のタクロリムス脂質ベースの製剤を含む放出制御ポリマーコーティングシームレスミニカプセル(4)がある。最終剤形は硬ゼラチンカプセル(5)であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カルシウムは、脳機能の調節、例えば、可塑性、グルコース代謝、脳血管調節、神経伝達物質の合成と放出、軸索輸送、および神経の樹状突起(dendritic claw)の形成に広範な役割を有する。カルシウムイオンは、膜興奮を続く細胞内分子反応と結びつける遍在性のメッセンジャーである。カルシウム恒常性の変化は、より高い脳機能に影響を及ぼしうる加齢の特徴である。したがって、負の変化を減少させ、または健康なカルシウム恒常性を維持する医薬的または他の介入は、脳の健康を改善して疾患を予防し、または種々の神経学的および神経変性性疾患の治療法を提供する可能性がある。
【背景技術】
【0002】
ジヒドロピリミジンクラスの薬剤メンバーであるニモジピンは、カルシウムチャンネルブロッカーとして知られる薬物のクラスに属する。平滑筋細胞の収縮プロセスはカルシウムイオンに依存し、カルシウムイオンが該細胞に脱分極中に遅いイオン貫膜電流として入る。ニモジピンは、該細胞へのカルシウムイオンの輸送を阻害し、血管平滑筋の収縮を阻害する。ニモジピンは、特に水に不溶性の黄色の結晶物質である。ニモジピンは、典型的には経口投与用の軟ゼラチンカプセルとして製剤化される。
【0003】
ニモジピンは、頭蓋内漿果状動脈瘤破裂によるくも膜下出血の患者の虚血性障害の発生および重傷度を、発作後の神経学的病状に関わらず、減少させることにより神経学的転帰を改善するのに適用される。正確な作用機序は明らかでない。Hunt and HessグレードI-IIIの患者において、ニモジピンは、脳梗塞の危険性と(くも膜下出血)SAHの転帰不良を有意に減少させる。Hunt and HessグレードIVおよびVの患者では、ニモジピンは神経学的状態が不良なSAH患者における重度の機能障害と植物的生存を減少させると共に、回復を改善する。
【0004】
現在のくも膜下出血の適用に加え、血液脳関門を通過し、脳血管に入ることができる高脂溶性カルシウムチャンネルブロッカーとして、ニモジピンは単独でまたは他の治療的活性物と組み合わせて、認識促進、ニューロパシー痛の減少、卒中障害の改善、群発頭痛または片頭痛の治療または予防、および神経変性病状(パーキンソン病およびアルツハイマー病)の治療または予防を含む脳における多くの他の活性を有しうる。さらに、モルフィンと組み合わせて、ニモジピンは痛みを減少させるのに必要なモルフィン濃度を減し、痛みが減少する持続時間を延長することが示された。潜在的応用にも関わらず、上記潜在的適応は、該薬剤が1日に6回まで投与する必要があり、潜在的に致死的な低血圧をもたらす可能性がある場合にはいずれも魅力的ではない。
【0005】
マクロライド系免疫抑制剤であるタクロリムスは、経口用および静脈内用製剤で利用可能であり、同種肝臓、腎臓、または心臓移植を受けた患者の臓器拒絶の予防に適応される。Prograf(登録商標)として商標登録され、日本でも骨髄移植を受けた患者や重症筋無力症およびリウマチ性関節炎に承認されている。
【0006】
カルシニューリン調節または調節異常は脳損傷に役割を果たこと、すなわち、薬理学的介入はカルシニューリン異常の短期および長期効果を制限する可能性があることを示唆する証拠がある。神経保護機序におけるカルシニューリンの提唱される役割は、多くの細胞プロセスを含み、そして、ある種の複合体とカルシウムチャンネルブロッカー関連成分との相互作用を含むかもしれない。さらに、カルシニューリン活性は、アポトーシスと関連し、虚血性脳損傷をもたらしうるし、カルシニューリン活性の阻害はアポトーシスによる死を減少させ、虚血による損傷を減少させるという仮説がある。損傷の予防に加え、カルシニューリン阻害剤には神経樹状突起形成を増強する能力があることが証明され、これは、限定されるものではないがパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性性疾患の進行を防ぐのに特に役立つかもしれないことを示唆する。
【0007】
脳におけるカルシウム恒常性および活性の既知の役割に基づいて、カルシウムチャンネルブロッカーおよびカルシニューリン阻害剤は、多くの脳の病状または神経学的病状を予防または治療する大きな可能性がある。特に、カルシウムチャンネルブロッカーのニモジピンは、ある範囲の病状、主としてくも膜下出血に対する効果が証明され、カルシニューリン阻害剤のサイクロスポリンAおよびタクロリムスは種々の虚血性の生理学的病状または損傷性病状に対する効果が証明された。
【0008】
理論的に、医薬が体内の意図する標的レセプターに対して活性を持つためには、該医薬は、自由溶液中、その活性を示すのに十分な濃度で、完全な状態でレセプターに到達する必要がある。経口投与後、脳用の薬剤は、血液脳関門(BBB)を通過する前に、最初に胃腸関門、腸および肝臓代謝を克服しなければならない。腸および肝臓関門は代謝的であり、種々の薬剤を分解する主な酵素ファミリーはチトクロームP450であり、該薬剤がこの酵素の基質である場合は血流に達する量は大きく変動しうる。血液脳関門は毒素が脳内に入るのを防ぐために発達した。血液脳関門は、脂溶性物質を含むある種の物質が脳内に入るのを容認するが、認識された外来毒素を細胞から取り除く役割を果たすP-糖タンパク質(PgP)排出ポンプの存在は、多くの薬剤の脳内濃度を非常に低く、しばしば非常に変化しやすいものにする。チトクロームP450またはPgPの基質である多くの薬剤も該活性を阻害するかまたは低下させるか、または実際に該酵素を飽和させ、被検薬剤のバイオアベイラビリティの増加をもたらすことに注目すべきである。考慮すべき他の重要な局面は、薬剤の可溶性(溶解性)と透過性であり、薬剤が可溶型でなければ目的とするレセプターと十分に相互作用しないし、薬剤が透過性でなければ腸管腔から血流中に入らないし、血液脳関門により血流から脳内にも入らないだだろう。すなわち、可溶性と透過性の調節は、腸から体内に吸収され、次いで脳内に入る薬剤の濃度を増加させるかまたは調節する。
【0009】
多くのカルシウムチャンネルおよびカルシニューリン阻害剤は、難溶性であり、チトクロームP450およびPgP酵素および排出ポンプの両方の基質であり、バイオアベイラビリティの変動をもたらす。また、多くのそのような薬剤は、チトクロームP450およびPgP酵素と排出ポンプの活性を阻害または調節し、腸から血流、および血流から脳への薬剤の輸送を調節しうる。可溶性と透過性に関して、多くのほとんどの脂質ベースの製剤は、難溶性薬剤の可溶性、およびしばしば透過性を改善する。本発明は、種々の製剤技術的方法を用いて薬剤の可溶性と透過性の増大を可能にする。得られる溶液は、そのような製剤の放出制御だけでなく、脳に薬理学的に相乗的に作用し、チトクロームP450酵素およびPgP排出ポンプ活性を調節するための、それ以上または1または両薬剤が最初に変動が少ないように血流中に入り、次いでそれ以上または1または両薬剤が血液脳関門を透過し、変動が少ないように脳内に入るようにするニモジピンおよびタクロリムスの新規な組み合わせの開発を可能にする。全体的に、新規な改良された併用療法の開発は病気の管理と転帰の改善をもたらすだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、血流および脳内での変動性の少ない増強されたバイオアベイラビリティを保証し、脳内で薬理学的に相補的および相乗的に作用するようにチトクロームP450酵素およびPgP排出ポンプ活性を調節するように相補的に作用する、持続的に放出されるカルシウムチャンネルブロッカーおよびカルシニューリン阻害剤を含む併用療法の開発を可能にする。したがって、本発明はある範囲の神経学的および外傷性CNS病状において有益であろう。
【0011】
本発明は、ニモジピンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアニモジピン、およびタクロリムスを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアタクロリムスを含む放出調節製剤を提供する。
【0012】
ある態様において、用いる環境に暴露すると実質的にすべてのニモジピンおよび実質的にすべてのタクロリムスを24時間以内に放出する。
【0013】
ある場合には、ニモジピンを含むミニカプセルまたはミニスフェアが、即時放出のためのニモジピンを含む第1ポピュレーションおよび放出制御のためのニモジピンを含む第2ポピュレーションを含む。該第1ポピュレーションは、即時放出用の固体型のニモジピンを含有するミニスフェアを含みうる。該第2ポピュレーションは、放出制御コーティングを有するニモジピン含有ミニカプセルを含みうる。該第2ポピュレーションは、0〜12時間の間にニモジピンを放出するための第1サブポピュレーションと12〜24時間の間にニモジピンを放出する第2サブポピュレーションを含みうる。
【0014】
ある態様において、タクロリムスを含有するミニカプセルまたはミニスフェアは、即時放出用のタクロリムス含有第1ポピュレーションおよび放出制御用のタクロリムス含有第2ポピュレーションを含む。ある場合には、該第1ポピュレーションはミニカプセルに封入された液体型のタクロリムスを含む。ある態様において、該第2ポピュレーションは、放出制御コーティングを有するタクロリムス含有ミニカプセルを含む。該第2ポピュレーションは、0〜24時間の間にタクロリムスを放出するためのサブポピュレーションを含みうる。
【0015】
ある態様において、使用する環境に暴露すると40%以上のニモジピンおよび40%以上のタクロリムスが12時間以内に放出される。ある場合には、使用する環境に暴露すると15%以下のタクロリムスおよび15%以下のニモジピンが1時間以内に放出される。ある場合には、使用する環境に暴露すると30%以下のニモジピンおよび30%以下のタクロリムスが4時間以内に放出される。
【0016】
ある態様において、放出調節製剤は、該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含む硬ゼラチンカプセルを含む。
【0017】
放出調節製剤は、該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含むサシェー剤を含みうる。
【0018】
あるいはまた、該放出調節製剤は、該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含むペレットを含む。
【0019】
放出調節製剤は、該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含む経鼻胃栄養製剤を含みうる。
【0020】
本発明は、カルシウムチャンネルブロッカー、例えばニモジピンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェア、および/またはカルシニューリン阻害剤、例えばタクロリムスを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む放出調節製剤も提供する。
【0021】
該製剤は、くも膜下出血の治療/予防に、卒中の治療/予防に、一過性脳虚血の治療/予防に、限局性脳虚血の治療/予防に、パーキンソン病の治療/予防に、下肢静止不能症候群の治療/予防に、アルツハイマー病の治療/予防に、ALSの治療/予防に、および/または血管性認知症の治療/予防に用いることができよう。
【0022】
ある態様において、該製剤は、高純度のエイコサペンタエン酸(EPA)を含む。
【0023】
別の態様において、該製剤は、高純度のドコサヘキサエン酸(DHA)を含む。
【0024】
ある場合には、該製剤は、ハンチントン病の治療/予防に用いられる。
【0025】
該放出調節製剤は、AChEI、例えばフペルジンを含みうる。
【0026】
該放出調節製剤は、サフィナミドを含みうる。この場合には、該製剤はパーキンソン病または下肢静止不能症候群に用いることができよう。
【0027】
別の態様において、該放出調節製剤は、ドーパミン類似体またはアゴニスト、例えばレボドパ、カベルゴリン、ブロモクリプチン、アポモルフィン、ペルゴリドメシラート、プラミペキソール、またはロピニロールを含む。この場合には、該製剤は、パーキンソン病または下肢静止不能症候群に用いられる。
【0028】
ある局面において、本発明は、ミニカプセルコアが液体の、脂質ベースの製剤中にタクロリムスを含有し、封入物質が微粒化ニモジピンを含む放出調節製剤を提供する。
【0029】
ある態様において、該放出調節製剤は、ヒドロキシラーゼ阻害剤、例えばヒドララジンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。該製剤は、酸化窒素ドナー、例えばニトログリセリンと組み合わせうる。
【0030】
別の態様において、該放出調節製剤は、抗凝固剤を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。抗凝固剤は、アスピリン、クロピドグラル、またはチクロピジンの1またはそれ以上から選ばれる。
【0031】
さらなる態様において、該放出調節製剤は、アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニスト、例えばロサルタンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。
【0032】
さらなる態様において、該放出調節製剤は、向知性薬、例えばピラセタムを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。
【0033】
別の態様において、該放出調節製剤は、NMDAレセプターアンタゴニスト、例えばメマンチン塩酸塩を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。
【0034】
さらなる態様において、該放出調節製剤は、キサンチン、例えばプロペントフィリンまたはテオフィリンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。
【0035】
さらに別の態様において、該放出調節製剤は、コリンエステラーゼ阻害剤を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。該コリンエステラーゼ阻害剤は、フペルジンA、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、またはリバスチグミンのいずれかから選ぶことができる。
【0036】
さらなる態様において、該放出調節製剤は、オピエートを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。オピエートは、モルフィン、モルフィン硫酸塩、オキシコドン、ヒドロコドン、フェンタニル、またはトラマドールのいずれかから選ぶことができる。
【0037】
別の態様において、該放出調節製剤は、片頭痛または群発頭痛の治療または予防薬を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。片頭痛の治療または予防薬は、アスピリン、パラセタモール、ナプロキセンもしくはNOドナー結合ナプロキセン、イブプロフェンもしくはNOドナー結合イブプロフェン、スマトリプタン、またはゾルミトリプタンのいずれか、またはあらゆる組み合わせであり得る。
【0038】
別の態様において、該放出調節製剤は、鬱病の治療または予防薬を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む。片頭痛の治療または予防薬は、リチウム、バルプロエート、オランザピン、カルバマザピン、ラモトリジン、またはエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)オメガ-3-脂肪酸のいずれか、またはあらゆる組み合わせである。
【0039】
ある局面において、該放出調節製剤は、硬ゼラチンカプセル内に充填された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0040】
別の局面において、該製剤はサシェー内に充填された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0041】
さらなる局面において、該製剤は、広ゲージシリンジまたはチューブ送達に適合したユニット内に含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0042】
該製剤は、ストリンクルの形の少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含みうる。
【0043】
少なくとも1のミニカプセルポピュレーションは、潤滑剤として油中に懸濁することができる。
【0044】
ある局面において、該製剤は、直腸または膣内投与用の坐剤として製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0045】
別の局面において、該製剤は、バッカル送達用に製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。該製剤は、生体接着性ポリマーストリップ中に含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含んでよい。
【0046】
該製剤は、舌下送達用に製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含みうる。該少なくとも1のミニカプセルポピュレーションは、生体接着性ポリマーストリップ中に含まれうる。
【0047】
別の局面において、該製剤は、ストリンクルの形で含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0048】
ある局面において、本発明は、用いる環境に暴露すると40%以上のニモジピンを12時間以内に放出し、6時間以内にTmaxに達するニモジピン含有放出調節固体製剤を提供する。ある態様において、実質的にすべてのあらゆる残りのニモジピンは、12〜24時間の間に放出される。該製剤は、ニモジピン含有固体ミニカプセルを含みうる。該製剤は、ポピュレーションの少なくとも1が放出剤でコートされたミニカプセルを含むミニカプセルの1またはそれ以上のポピュレーションを含みうる。該製剤は、1日1回投与に適している。ある場合には、血漿濃度は、24時間の期間の75%の時間は7.5ng/mlおよび15ng/ml以内である。該放出調節製剤は、90mg〜450mgのニモジピンを含みうる。
【0049】
ある場合には、微粒化ニモジピンは、10〜70%w/w、好ましくは30〜45%w/wの量でミニカプセル中に存在する。本発明の別の局面では、可溶化液体型のタクロリムスを含有するコアを有するミニカプセルを含む経口タクロリムス組成物を提供する。
【0050】
ある態様において、該ミニカプセルは、小腸内に予め可溶化されたタクロリムスを放出する放出プロフィールを有する。
【0051】
ある態様において、該ミニカプセルは、回腸内に予め可溶化されたタクロリムスを放出する放出プロフィールを有する。
【0052】
ある態様において、該ミニカプセルは、結腸内に予め可溶化されたタクロリムスを放出する放出プロフィールを有する。
【0053】
ある場合には、タクロリムスは、0.5〜25% w/w、好ましくは2.5〜15%w/wの量でコア中に存在する。
【0054】
ある態様において、用いる環境に暴露すると30%以下のタクロリムスが1時間以内に放出され、好ましくは用いる環境に暴露すると20%以下のタクロリムスが1時間以内に放出される。
【0055】
ある態様において、用いる環境に暴露すると60%以下のタクロリムスが4時間以内に放出され、好ましくは用いる環境に暴露すると35%以下のタクロリムスが4時間以内に放出される。
【0056】
ある態様において、用いる環境に暴露すると90%以下のタクロリムスが12時間以内に放出され、好ましくは用いる環境に暴露すると65%以下のタクロリムスが12時間以内に放出される。
【0057】
ある場合には、用いる環境に暴露すると100%に等しいかまたはそれ以下のタクロリムスが24時間以内に放出される。
【0058】
ある態様において、用いる環境に暴露すると20%以下のタクロリムスが1時間以内に放出され、35%以下のタクロリムスが4時間以内に放出され、65%以下のタクロリムスが12時間以内に放出され、残りのタクロリムスの実質的にすべてが12〜24時間の間に放出される。
【0059】
該ミニカプセルは、可溶化タクロリムス含有固体シェルを含みうる。該ミニカプセルは、該放出プロフィールを提供するように調節することができる。放出調節は、ポリマーコーティングに起因するかもしれない。ポリマー物質は、メタクリレートまたはエチルセルロースであり得る。ポリマー物質は、メタクリレートおよびエチルセルロースの混合物でありうる。
【0060】
ある態様において、該コーティングは溶解促進剤を含む。溶解促進剤は消化管に通常存在する細菌により分解される。溶解促進剤はペクチン、アミロース、およびアルギネートの1またはそれ以上から選ぶことができる。溶解促進剤は、0.5〜2%w/wの量でエチルセルロース中に存在することができる。
【0061】
ある態様において、該コアは、タクロリムス、可溶化剤、補助乳化剤、界面活性剤、透過性促進剤、および担体を含む。可溶化剤はエタノールを含みうる。可溶化剤はトリグリセリドを含みうる。補助乳化剤は脂肪酸エステル複合体を含みうる。界面活性剤は脂肪酸エステル複合体を含みうる。透過促進剤は脂肪酸エステル複合体を含みうる。担体は疎水性の液体を含みうる。該疎水性の液体は油、例えばオリーブ油を含みうる。
【0062】
ある態様において、該組成物は、タクロリムスを含有するミニカプセルの第1ポピュレーションと、タクロリムスを含有するミニカプセルの第2ポピュレーションを含む。該第1ポピュレーションは、無コーティングのミニカプセルを含みうる。該第2ポピュレーションは、コーティングされたミニカプセルを含みうる。
【0063】
ある態様において、該組成物は、10〜40%w/wの無コーティングミニカプセルおよび60〜90%w/wのコーティングミニカプセルを含む。
【0064】
ある場合には、約25% w/wの無コーティングミニカプセルおよび約75%w/wのコーティングミニカプセルを含む。
【0065】
ある態様において、タクロリムスは、全身吸収を最大にする形で消化管に沿って放出される。
【0066】
別の態様において、固体の無コーティングおよびコーティングミニスフェアと無コーティングおよびコーティング液体充填ミニカプセルからなる、前述の放出プロフィールを有する放出制御微粒化ニモジピンおよびタクロリムスの組み合わせがある。
【0067】
別の態様において、該液体充填コアは可溶化タクロリムスを含むが、封入シェルは微粒化ニモジピンを含む。次に、得られた液体充填ミニカプセルは無コーティングのままか、放出制御ポリマーでコーティングされていてよい。
【0068】
ある態様において、ゲル化または封入剤は、動物または非動物由来のゼラチンである。
【0069】
別の態様において、ゲル化または封入剤は、非ゼラチン物質であり、限定されるものではないが、アルギネート、ペクチン、カラゲニンなどが含まれる。ある場合には、活性医薬成分はNOドナー結合ニモジピンである。
【0070】
ある態様において、単一製剤または複合製剤を用いて、くも膜下出血を治療または予防する。
【0071】
別の態様において、単一製剤または複合製剤を用いて、卒中または一過性虚血を治療または予防する。さらに、製剤または該複合製剤を、ニムジピンもしくはタクロリムスまたはその両方と同時にかまたは続いて放出されるヒドロキシラーゼ阻害剤と組み合わせることができる。ヒドロキシラーゼ阻害剤はヒドララジンでありうる。別の場合には、該製剤は、酸化窒素ドナー、例えばニトログリセリンと組み合わされる。さらなる場合には、該製剤は、アスピリン、クロピドグラル、またはチクロピジンのいずれか1つまたはそれ以上から選ばれる抗凝固剤と組み合わせる。別の場合には、該製剤は、アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニスト、例えばロサルタンと組み合わせる。さらに、NOドナー結合ヒドララジンまたは上記のいずれかを含みうる。
【0072】
別の態様において、単一製剤または複合製剤を用いてアルツハイマー病および他の認知症を治療または予防する。この場合には、該製剤は向知性薬と組み合わせることができる。向知性薬はピラセタムであってよい。別の例では、単一製剤または複合製剤をNMDAレセプターアンタゴニスト、例えばメマンチン塩酸塩と組み合わせる。さらなる場合には、単一製剤または複合製剤をキサンチン、例えばプロペントフィリンと組み合わせる。別の場合には、単一製剤または複合製剤をコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わせる。コリンエステラーゼ阻害剤はフペルジンA、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、またはリバスチグミンのいずれかであってよい。
【0073】
さらなる態様において、単一製剤または複合製剤を用いて神経変性性疾患を治療または予防する。神経変性性疾患は、パーキンソン病または下肢静止不能症候群であってよい。この場合には、単一製剤または複合製剤はサフィナミドと組み合わせてよい。さらなる場合には、該製剤をドーパミン類似体またはアゴニストと組み合わせる。ドーパミン類似体またはアゴニストは、レボドパ、カベルゴリン、ブロモクリプチン、アポモルフィン、ペルゴリドメシラート、プラミペキソール、またはロピニロール塩酸塩のいずれかでありうる。
【0074】
別の態様において、該製剤を用いてメニエル病を治療または予防する。該製剤を用いてめまいを治療または予防することもできる。
【0075】
別の態様において、ニモジピン単独またはタクロリムスと組み合わせた該製剤を用いてニューロパシー痛を治療または予防する。この場合には、該製剤はオピエートと組み合わせうる。オピエートは、モルフィン、モルフィン硫酸塩、オキシコドン、ヒドロコドン、フェンタニル、またはトラマドールのいずれかであってよい。別の場合には、該製剤をプレガバリンと組み合わせる。さらなる例では、該製剤をα-アミノアミドと組み合わせる。別の場合には、該製剤をナプロキセンまたはNOドナー結合ナプロキセンと組み合わせることができる。
【0076】
ある態様において、該製剤は、ニモジピンまたはそのNOドナーコンジュゲートおよび1またはそれ以上の他の活性医薬成分を含む単層ミニカプセルである。
【0077】
別の態様において、該製剤は2層ミニカプセルである。そのコアとシェルは、同じ活性医薬成分を含む。あるいはまた、該コアはタクロリムスを含み、該シェルは微粒化ニモジピンを含む。ある場合には、該コア製剤は放出制御され、該シェルは即時放出される。別の場合には、該コア製剤が放出制御され、該シェルが放出制御される。
【0078】
別の態様において、2層ミニカプセルまたは単層固体ミニスフェアの該製剤はさらに植物、動物、乳(dairy)、藻、または海産物の抽出物を含んでいてよく、該抽出物は製剤強化特性または健康増進特性を有する。
【0079】
ある態様において、該2層ミニカプセルは、放出制御ポリマーまたは物質でコーティングされる。
【0080】
ある局面において、該製剤は硬ゼラチンカプセル内に充填された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0081】
別の局面において、該製剤はサシェー内に充填された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0082】
該製剤は、広ゲージシリンジまたはチューブ送達に適合性のユニット内に含まれた少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0083】
別の局面において、該製剤はストリンクルの形の少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0084】
少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを、潤滑剤としての油中に懸濁させることができる。
【0085】
ある場合には、該製剤は、直腸または膣内投与のための坐剤として製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0086】
該製剤は、バッカル送達用に製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含みうる。
【0087】
該製剤は、生体接着性ポリマーストリップ中に含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含みうる。
【0088】
別の場合には、該製剤は舌下送達用に製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0089】
少なくとも1のミニカプセルポピュレーションは、生体接着性ポリマーストリップ中に含まれうる。
【0090】
さらなる場合において、該製剤はストリンクルの形で含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む。
【0091】
ミニカプセルは崩壊剤を含むことができる。
【0092】
該ミニカプセルは粘膜接着剤または生体接着剤を含むことができる。
【0093】
該ミニカプセルは透過性促進剤を含むことができる。
【0094】
該ミニカプセルは味遮蔽(マスキング)剤を含むことができる。
【0095】
ある態様において、該製剤はミニスフェアを含む。
【0096】
本発明は、例示としてのみ示す以下のその態様の説明、および添付の図面からより明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】24時間にわたるニモジピン固体ミニスフェアからの溶解プロフィールの2バッチの平均を示す。該プロフィールは、ミニスフェアの3つの異なるポピュレーション、無コーティングの5mg、15%増量Surelease(登録商標)でコーティングした6mg、および30%増量Surelease(登録商標)でコーティングした19mg、の混合物からの30mgニモジピンの放出を示す。この製剤プロフィールはニモジピンの1日1回投与に適している。
【図2】24時間にわたるニモジピン固体ミニスフェアからの溶解プロフィールの2バッチの平均を示す。該プロフィールは、ミニスフェアの2つの異なるポピュレーション、無コーティングの9mg、および20%増量Surelease(登録商標)でコーティングした21mgの混合物からの30mgニモジピンの放出を示す。この製剤プロフィールはニモジピンの1日2回投与に適している。
【図3】24時間にわたるニモジピン固体ミニスフェアからの溶解プロフィールの2バッチの平均を示す。該プロフィールは、ミニスフェアの2つの異なるポピュレーション、無コーティングの9mg、および15%増量Surelease(登録商標)でコーティングした21mgの混合物からの30mgニモジピンの放出を示す。この製剤プロフィールはニモジピンの1日2回投与に適している。
【図4】24時間にわたるニモジピン固体ミニスフェアからの溶解プロフィールの6バッチの平均を示す。該プロフィールは、ミニスフェアの3つの異なるポピュレーション、無コーティングの14.9mg、7.5%増量Surelease(登録商標)でコーティングした35.6mg、および30%増量Surelease(登録商標)でコーティングした130.5mg、の混合物からの180mgニモジピンの放出を示す。この製剤プロフィールはニモジピンの1日1回投与に適している。
【図5】30mg 3層ニモジピン無コーティングミニカプセルの溶解プロフィールの2バッチの平均を示す。該プロフィールは、コア製剤が本質的に持続放出であることを示す。
【図6】24時間にわたる30mg 3層ニモジピンミニカプセルの溶解プロフィールの2バッチの平均を示す。3層ミニカプセルをEudragit(登録商標)RSおよびEudragit(登録商標)RLの6.5%増量混合物でコーティングし、図4に示すように、そのような3層ミニカプセルに固有の外部の放出制御および固有の内部の持続放出をもたらす。
【図7】24時間にわたる30mg 3層ニモジピンミニカプセルの溶解プロフィールの2バッチの平均を示す。3層ミニカプセルをEudragit(登録商標)RSおよびEudragit(登録商標)RLの13.5%増量混合物でコーティングし、図4に示すように、そのような3層ミニカプセルに固有の外部の放出制御および固有の内部内部の持続放出をもたらす。
【図8】24時間にわたる被検製剤(図7のように180mgニモジピン)対6x 30mg Nimotop(登録商標)の薬物動態血漿プロフィールを示す。薬物動態試験は、20人の健康男子ボランティアの平均を示し、血漿濃度はng/mlで測定する。この製剤のプロフィールは、1日1回または2回投与に適している。
【図9】無コーティングタクロリムスミニカプセルの溶解プロフィールを示すグラフである。
【図10】12.5% Eudragit(登録商標)RS30D、次いで25% Eudragit(登録商標)FS30Dでコーティングしたタクロリムスミニカプセルの溶解プロフィールを示すグラフである。
【図11】タクロリムスミニカプセル混合物(無コーティング30%(即時放出)、および12.5% Eudragit(登録商標)RS30D、次いで25% Eudragit(登録商標)FS30Dでコーティングした70%)の溶解プロフィールを示すグラフである。
【図12】15%増量Eudragit(登録商標)/15%増量Eudragit(登録商標)RS30Dコーティングタクロリムスミニカプセルの溶解プロフィールを示すグラフである。
【図13】15%増量Eudragit(登録商標)RS30D/25%増量Surlease(登録商標)コーティングタクロリムスミニカプセルの溶解プロフィールを示すグラフである。
【図14】15%増量可変RS/RLコーティングの溶解プロフィールを示すグラフである。
【図15】20%増量Eudragit(登録商標)RS30D 持続放出ポリマーコーティングを有する固体の、ヒドララジン含有、脂質-ゼラチンベースのミニスフェアの溶解プロフィールの3バッチの平均を示す。該製剤は、ヒドララジンの1日1回投与に適している。
【図16】30%増量Eudragit(登録商標)RS30D 持続放出ポリマーコーティングを有する固体の、ヒドララジン含有、脂質-ゼラチンベースのミニスフェアの溶解プロフィールの3バッチの平均を示す。該製剤は、時間療法または継続療法の併用のためのヒドララジンの遅延放出投与型に適している。
【図17】本発明の製剤に用いるタイプの液体充填ミニカプセルおよび固体ミニスフェアの模式図である。1は、即時放出用の、微粒化活性物質(例えばニモジピン)を封入した無コーティング固体の、ゼラチンベースのミニカプセルまたはミニスフェアを示す。2は、遅延、持続、制御、または標的放出用の微粒化活性物質(例えばニモジピン)を封入した、放出制御ポリマーコーティングした固体の、ゼラチンベースのミニカプセルまたはミニスフェアを表す。3は、コアが、即時放出用の固体ゼラチンシェル中に封入された活性物質(例えばタクロリムス)脂質ベースの液体製剤を含む無コーティング固体のミニカプセルを表す。4は、遅延、持続、放出制御、または標的放出用の活性物質(例えばタクロリムス)を含有する脂質ベースの液体製剤を封入した放出制御ポリマーコーティング固体ゼラチンシェルを表す。5は、最終剤形、すなわち1、2、3、または4のあらゆる組み合わせを含む硬ゼラチンカプセルを表す。
【0098】
神経の維持におけるカルシウムの役割
【0099】
グルタミン酸レセプターチャンネルを解する持続的カルシウム(Ca2+)流入は、多くの神経変性性疾患、例えばてんかん、低酸素虚血、低血糖、アルツハイマー病、および統合失調症と関連がある神経細胞死の最終的共通経路を示すと考えられる(Trends Neurosci. 18、58-60 (1995))。[Ca2+]iの大きな増加は、急性および遅延細胞死をもたらすが(Yu et al.、2001)、哺乳動物ニューロンから最近得られた証拠は、[Ca2+]i (50-200 nmol/l)の穏やかな増加は、低酸素症およびグルコース除去における神経保護的役割を果たす(Bickler and Fahlman、2004)。したがって、脳細胞におけるカルシウム濃度の調節は、健康な脳機能の維持に必須であると考えられる。
【0100】
多数の薬剤クラスが、カルシウムレベルを調節および制御し、心臓血管、ニューロパシー痛、および神経学的疾患を含む多くの疾患の管理を可能にするために開発されてきた。カルシウムレベルを調節するために開発された主なクラスの薬剤の2つが、カルシウムチャンネルブロッカーとカルシニューリン阻害剤である。脳に入ること、血液脳関門を通過することを確実に可能にするために、そのような薬剤は本来脂溶性であることが役立つ。多くのそのような薬剤の欠点は、可溶性と透過性に乏しいことであり、前者は主として物理化学的特性に起因し、後者は外毒素から身体を保護するために発達した生理学的メカニズムに起因する。主な生理学的メカニズムは、チトクロームP450 (CYP)ファミリーとして知られる代謝酵素のファミリー、およびP-糖タンパク質(PgP)として知られる排出ポンプタンパク質と関連がある。
【0101】
薬剤送達メカニズムは可溶性と透過性に対処するために開発され、本発明では、個々にかまたは共同で、カルシウムチャンネルブロッカーおよびカルシニューリン阻害剤の放出制御を促進する多くの薬剤送達方法をまとめた革新的方法を用いる。脳における薬理学的相乗作用は別にして、カルシウムチャンネルブロッカーおよびカルシニューリン阻害剤の同時投与は、CYPおよびPgPも調節し、より高い血漿および脳脊髄液濃度の変動性を減少させながら、それらのより高い濃度を保証する。
ニモジピン
【0102】
ジヒドロピリミジンクラスの薬剤のメンバーであるニモジピンは、カルシウムチャンネルブロッカーとして知られる医薬のクラスに属する。平滑筋細胞の収縮プロセスは、緩徐なイオン膜電流として脱分極中に該細胞に入るカルシウムイオンに依存する。ニモジピンは、該細胞内へのカルシウムイオンの移動を阻害し、血管平滑筋の収縮を阻害する。ニモジピンは、実質的に水に不溶性の黄色結晶物質である。ニモジピンは、典型的には経口投与用の軟ゼラチンカプセルとして製剤化される。
ニモジピンのバイオアベイラビリティ
【0103】
ニモジピンは、現在のところ可溶性が限られているため、各30mg用量を含む軟ゲルカプセルとしてのみ利用可能である。ニモジピンは、チトクロームP450 3A4アイソザイムおよび排出ポンプP-糖タンパク質(PgP)の基質であり、ひろく前全身的に代謝されるか、細胞から放出され、相対バイオアベイラビリティが約18%になる。すなわち、比較的高用量および高頻度の投与計画が必要である。安定性が限られているため、1または2個の30mg大軟ソフトゲルカプセルを1日6回まで投与し、これが、重篤な副作用の可能性がある高い血漿および脳脊髄液(CSF)濃度の急な上昇を招き、コンプライアンスの低さにつながる主な不便さでもある。
【0104】
さらなる難しさは、くも膜下出血がある多くの患者は、種々に能力が奪われ、経鼻胃管を介して与える必要があることである。そのような患者は燕下ができないので、介護者は軟ゲルカプセルの内容をシリンジにとり、摂食チューブを介して薬剤溶液を与えなければならず、この工程を1日に6回まで繰り返さなければならない。
【0105】
患者や介護者に生じる不便さは別にして、生じる高用量のニモジピンは、ボーラス的に作用して、血漿濃度が急上昇し、しばしば低血圧をもたらす。また、収縮期血流速度(PSV)または脳血管痙攣の反射性増加をもたらす極端なピーク〜トラフの変化では、患者は予後不良である。
タクロリムス
【0106】
マクロライド系薬剤のタクロリムスは、細胞内タンパク質FKBP-12との結合に関与すると考えられるプロセスを介してTリンパ球の活性化を阻害する。次いで、タクロリムス-FKBP-12、カルシウム、カルモジュリン、およびカルシニューリンの疎水性複合体が形成され、カルシニューリンのホスファターゼ活性が阻害される。この効果は、リンホカイン(例えばインターロイキン-2、γインターフェロン)を形成するための遺伝子の転写を引き起こすと考えられる核成分である活性化T細胞(NF-AT)の核因子の脱リン酸化と転位を防ぐかもしれない。生じるTリンパ球活性化の阻害は、強力な免疫阻害をもたらす(Prograf(登録商標)患者情報パンフレット(Astellas))。ある範囲の固体臓器移植の抗拒絶使用における示された役割に加え、タクロリムスの神経栄養および神経再生効果が、限定されるものではないが、卒中、一過性および持続性の限局性虚血、および一過性全体的虚血を含むある範囲の神経学的病状に潜在的効果があることを種々の研究が明確に示唆している。暗に、知られた作用機序に基づいて、タクロリムスは、限定されるものではないが、パーキンソン病、下肢静止不能症候群、アルツハイマー病などを含む多くの他の神経学的病状を治療または予防する可能性がある。
タクロリムスのバイオアベイラビリティ
【0107】
タクロリムスは、消化管の種々の領域からの吸収が異なり、小腸から最もよく吸収され、回腸と結腸の吸収効率は小腸で観察される半分に落ちる。また、食物の影響がみられる。消化管から吸収後、薬剤の効果は通常のIR錠の経口投与後8〜12時間持続する。総用量は、典型的には2.5〜10mg/日の範囲であり、例外的に20mg/日に増加する。通常の投与計画ではタクロリムスを1日2回、典型的には1用量を朝食前に投与し、第2用量を夕方近くに投与する。タクロリムスに関連する上記治療的血漿濃度をもたらす小腸からの最初の急速吸収による副作用には、腎臓毒性、神経毒性、および免疫抑制による患者の感染症の発現が含まれる。
【0108】
他のカルシニューリン阻害剤、例えばサイクロスポリンAと同様、タクロリムスの治療指数は狭い。治療的目標濃度15ng/mlを超える慢性的タクロリムス血液濃度は、タクロリムス関連毒性の危険性を増加させ、主な副作用には、腎および肝損傷と糖尿病の発生率増加が含まれ、後者では全患者の20%がかかる。長期の臓器移植片の生存の促進において、免疫抑制性腎臓毒性を減らすことが急性臓器拒絶の発生率および発生を減少させるのと同様重要かもしれないことが示唆された。市販製剤のPrograf(登録商標)は急速に吸収され、長期間にわたり安全濃度と考えられる15ng/mlを超える血中濃度に急上昇する。さらに、製剤の除去は、約8時間後5ng/ml以下の治療量以下の血中濃度をもたらす。該薬剤は1日2回投与する必要があるという事実は、患者を1日2回毒性濃度およびある期間治療量以下の用量にさらす。さらに、1日2回の投与は患者に不都合な投与計画である。したがって、安全性の改善、よりよい疾患管理、および患者の利便性のためには1日1回の低用量のタクロリムス製剤がきわめて望ましい。
【0109】
タクロリムスの1日1回用製剤が知られている。製剤化プロセスは、タクロリムスを脱水エタノール、エチルセルロース、ヒプロメロース、およびラクトース1水和物で顆粒化することからなる。ヒプロメロース系はポリマーゲル層を形成することにより薬剤放出プロフィールを調節し、エチルセルロース拡散マトリックス系は水の浸透、すなわち薬剤放出を調節することにより放出プロフィールを調節する。生じるペーストを乾燥し、サイズ調節して、中間体顆粒を生成する。次に、該顆粒をラクトース1水和物およびステアリン酸マグネシウムと混合し、該混合物をカプセルに充填する。該製剤は、6〜12時間で90%の薬剤が放出される溶解を生じる。上記1日1回製剤の一つの考えられる問題は、薬剤の血漿濃度の初期の急上昇が生じ、望ましくない副作用が生じる可能性があることである。したがって、患者に対するより安全なプロフィールを持った1日1回、定常状態の製剤が望ましい。
薬剤のバイオアベイラビリティに対するチトクロームP450およびP-糖タンパク質の役割
【0110】
ニモジピンとタクロリムスの両方のバイオアベイラビリティは、チトクロームP450代謝とP-糖タンパク質の流出により悪影響を受けることはよく知られている。代謝および流出の結果、血漿および脳脊髄液濃度の対象間および対象内変動が生じる。チトクロームP450は、小腸壁および肝臓に作用するが、PgPは、腸管壁、多くの細胞の膜、主として腸絨毛および血液脳関門の膜に作用する。
【0111】
吸収された薬剤の腸での代謝と活発な排出(extrusion)は、経口バイオアベイラビリティの主な決定因子であると認識されてきた。ヒトの主なI相薬剤代謝酵素であるチトクロームCYP(CYP)3A、および多剤排出ポンプのP-糖タンパク質は、経口投与した薬剤の一次吸収部位である消化管の腸細胞の絨毛先端に高レベルに存在する。経口薬剤送達の制限におけるCYPおよびP-糖タンパク質の重要性は、小腸の腸細胞におけるその結合の存在、その基質特異性における顕著な重複、および該2つのタンパク質の結合基質の経口バイオアベイラビリティ不良により示唆される。これらタンパク質は多くの同じ化合物により誘導または阻害される。数を増し続ける前臨床試験および臨床試験は、多くのCYPおよび/またはP-糖タンパク質基質薬剤の経口アベイラビリティは、CYP阻害剤および/またはP-糖タンパク質阻害剤の同時投与により増加させることができることを示している (Clinical Pharmacokinetics. 40(3):159-168、2001)。消化管に沿ったCYPおよびPgPタンパク質の同時局在分布により、濃度が異なるにも関わらず、消化管に沿った、基質または阻害剤である薬剤、例えばニモジピンおよびタクロリムスの同時放出は、腸内腔から血流中への1、両方、またはそれ以上の薬剤の吸収を増加させ、吸収の変動性を減少させるのに役立つかもしれない。
【0112】
経口投与後は、小腸が、チトクロームP450 (CYP)酸化生体異物代謝酵素系により主として触媒される反応により、摂取した生体異物(治療薬を含む)の最初の代謝部位である。CYPは、薬剤および他の外来化合物の生体内変換に関与する主な酵素である。CYPは、鉄1個のプロトポルフィリンIX補欠分子族を含むヘムタンパク質のスーパーファミリーを含む。このスーパーファミリーは、単にアミノ酸配列の相同性に基づいて分類されるファミリーおよびサブファミリーに細分される。少なくとも14のCYP遺伝子ファミリーが哺乳動物において同定されている (Nelson et al.、1996)。しかしながら、3種の主なCYP遺伝子ファミリーのCYP1、CYP2、およびCYP3のみが、現在、薬剤代謝に関与すると考えられている。
【0113】
CYP酵素の分布が比較的均一である肝臓(Debri et al.、1995)と違って、該酵素の分布は小腸の長さに沿っても、粘膜の横断面内の絨毛に沿っても均質ではない。チトクロームCYPの含有量および活性は共に遠位小腸より近位のほうが高い(Peters and Kremers、1989)。ヒト小腸における平均総チトクロームCYP含有量、約20pmol/mgミクロソームタンパク質は、肝臓のそれ(300 pmol/mgミクロソームタンパク質)より遙かに低いことがわかり(Peters and Kremers、1989;Shimada et al.、1994)、CYPの発現は小腸の長さに沿って変化することが示された。31、23、および17pmol/mgミクロソームタンパク質の中央値が、それぞれヒト十二指腸、遠位空腸、および遠位回腸、において測定された(Thummel et al.、1997)。CYPは、ヘム含有モノオキシゲナーゼのスーパーファミリーであり (Nelson et al.、2004)、その多くは小腸に発現し(Kaminsky and Fasco、1992;Kaminsky and Zhang、2003)、多くの毒性化学物質、発癌物質、および治療薬の生体内活性化や解毒に活性がある。小腸におけるCYP酵素の発現レベルと活性は、多くの薬剤のバイオアベイラビリティに直接影響を及ぼすことが提唱されている(Suzuki and Sugiyama、2000;Doherty and Charman、2002;Ding and Kaminsky、2003)。小腸のCYP酵素の発現は、食物および生体異物化合物への暴露(Kaminsky and Fasco、1992;Zhang et al.、1996;Zhang et al.、2003)や炎症などの病状により調節される(Kalitsky-Szirtes et al.、2004;Xu et al.、2006)。また、個体間のCYP遺伝子の発現には対象間および対象内で顕著な変動があり、CYPの基質である薬剤の吸収の広い変動が生じる。すなわち、CYPを阻害する化合物は、経口投与された薬剤の調節を増強および改善し、より一定の血漿薬剤濃度とより良好な疾病管理をもたらしうる。
【0114】
PgPは、脳毛細血管内皮細胞(BCEC)の内腔細胞膜にみられ、薬剤、例えばタクロリムスを含むカルシニューリン阻害剤ファミリーのメンバーであるサイクロスポリンAを細胞から排出し、薬剤の脳内への透過性の減少をもたらすことが示された。すなわち、PgPは、循環血液から脳間質液内への生体異物の移動に対する血液脳関門の一部であると考えられる。ニモジピンは、中枢神経系の障害、例えば多発梗塞性認知症、卒中、およびくも膜下出血の治療に有効に用いられてきた。また、ニモジピンは、PgPの基質であり、血液脳関門を横切る輸送がPgPにより調節されうることを示唆する。マウスの低酸素虚血性脳損傷における最近の研究において、PgP阻害サイクロスポリンAは、中枢神経系CSFにおけるニモジピンの効果を顕著に増強した(Xiao-Dong et al.、Acta Pharmacol Sin、23 (2002)、225-229)。0.1〜50μmol/Lの範囲のサイクロスポリン濃度において、一次培養BCEC細胞によるニモジピンの取り込みは、2〜20倍より大きく変化した(Zhang et al.、Acta Pharmacol Sin、24 (2003)、903-906)。追加試験において、Zhang et al.は、脳虚血損傷およびPgPの調節に対する有益な効果を有するバイカリンとベルベリンの用量依存性効果を示し、血液脳関門を横切るニモジピンの輸送を増加させ (Zhang et al.、Acta Pharmacol Sin、28 (2007)、573-578)CSF濃度の増加をもたすことを示した。全体として、CYPおよびPgP活性の阻害は、血漿およびCSFの薬剤濃度の増加をもたらし、患者内および患者間で観察される対象内および対象間変動性を減少させうると考えられる。
【0115】
CYPおよびPgP阻害の重要な局面は、個体内および個体間の薬物動態の変動を減少させ、さらに同時投与される相互作用薬の効果を調節することである。小腸において、薬剤排出ポンプ(最も重要なのはPgPおよびCYP)は、生体異物の吸収に対する競合障壁を形成する。PgPおよびCYPの共同活性は、小腸の腸細胞における共通の局在とそれらの基質活性の顕著な重複により示唆された (Wacher et al.、Mol Carcinog、13、(1995)、129-34)。CYPとPgP間の機能的相互作用に関与する機序は完全には理解されていないが、腸排出ポンプ、例えばPgPは、CYP酵素に対する薬剤の接近が腸内の高薬剤濃度により圧倒されることを制限し、調節することが示唆される(Benet et al.、J Control Release、13 (1999)、25-31)。種々の活性または不活性の代謝物が排出されることも示唆されている (Lampen et al.、J Pharmacol Exp Ther、285 (1998)、1104-12)。すなわち、消化管に沿ったCYP基質、例えばニモジピンまたはタクロリムスすべての放出は、血漿およびCSFバイオアベイラビリティを増加し、両薬剤でみられるそのようなバイオアベイラビリティの変動を減少させる役目を果たすはずである。
【0116】
臨床的に重要なPgP阻害剤には、アゾール抗真菌剤、サイクロスポリン、タクロリムス、カルシウムチャンネルブロッカー、および癌化学療法剤が含まれる。タクロリムスは、CYPの基質であるだけでなく、P-糖タンパク質(PgP)の基質でもある。1μM以下の濃度ではタクロリムスはCYP活性に対する検出可能な効果がほとんどないが、PgPに対する親和性は0.1μMの範囲である。PgPの関与を評価する実験において、Yokogawa et al.は、タクロリムスを経口投与後のmdr-laノックアウトマウスおよび野生型マウスにおいてタクロリムスの薬物動態と組織内分布を比較した。血中濃度は有意に高く、総クリアランスは66%減少した。脳組織内濃度は10倍高かった(Yokogawa et al.、Pharm Res、16 (1999)、1213-8)。CYPおよびPgP活性の変動は、生体異物や内因性因子による調節によるだけでなく、遺伝的素因にもより、患者は大きく異なるCYPおよびPgP活性を有する (Lecointre et al.、Fundamental and Clinical Pharmacology、16 (2002)、455-460)。
【0117】
物理/化学特性、例えば低疎水性、消化液への低可溶性、および広範な一次通過効果は、一般的に薬剤の経口バイオアベイラビリティを低下させると推測させる。経口投与後のニモジピンおよびサイクロスポリン(市販製剤Nimotop(登録商標))のバイオアベイラビリティは、<5%〜>35%の範囲で、平均約25%と低く、変動する。腸吸収は、腸表面積、通過時間、および低乳化度に依存するが、PyPによる腸細胞から内腔への活発な分泌とCYPによる腸代謝は、共にニモジピンおよびカルシニューリン阻害剤(タクロリムスおよびサイクロスポリンAを含む)を含む多くのカルシウムチャンネルブロッカーのバイオアベイラビリティに重要な役割を果たす。
【0118】
PgP介在多剤耐性(MDR)は、癌の化学療法の失敗や種々の薬剤のバイオアベイラビリティの変動に関与するメカニズムであると提唱されている。PgPは、膜タンパク質であり、感受性のある薬剤の細胞内蓄積を制限するエネルギー依存性排出ポンプとして働く。カルシウムチャンネルブロッカーは、細胞系におけるPgP発現を逆転させることにより癌細胞を抗癌剤に感受性にすることが示されている。ニモジピン、脂溶性カルシウムチャンネルブロッカーは、ある種の抗癌剤の細胞毒性を増強することが示されている(Durmaz et al.、Clinical Neurology and Neurosurgery、101 (1999)、238-244)。したがって、PgP介在多剤耐性になりやすい種々の抗癌剤とニモジピンの併用は、そのような薬剤に対する癌の感受性を改善するかもしれない。
【0119】
以下の活性物質は、種々のCYP酵素の活性に対する阻害効果を示すことが知られているか、またはCYPの基質であり、CYPの基質である薬剤のバイオアベイラビリティを増加させる可能性があるかもしれない:チトクロームP450基質:ジルチアゼム、ニフェジピン、フェロジピン、ベラパミル、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、サイクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、イホスファミド、パクリタキセル、タモキシフェン、テニポシド、ビンプラスチン、ビンデシン、ゲフィチニブ、ベンゾジアゼピン、フルニトラゼパム、ミダゾラム、アルプラゾラム、トリアゾラム、クロナゼパム、ケトコナゾール、イトラコナゾール、クロトリアゾール、アミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、エリスロマイシン、クラミトラマイシン、シタロプラム、フルオキセチン、ノルフルオキセチン、セルトラリン、アトルバスタチン、ロバスタチン、シムバスタチン、シルデナフィル、ブスピロン、ハロペリドール、ヴェンラファキシン、アミオダロン、エチニルエストラジオール、キニン、インジナビル、リトナビル、サクイナビル、ネルフィナビル、ミルタザピン、ネファゾドン、ピモジド、レボキセチン、ゾピクロン、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ネビラピン、アルフェンタニル、ブデソニド、ドネペジル、エソメプラゾール、オメプラゾール、フィナステリド、グリベンクラミド、シサプリド、テルフェナジン、トレミフェン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、コデイン、デキストロメトルファン、ジゴキシン、エルゴトアルカロイド、エストラジオール、フェンタニル、イバブラジン、レボノルゲストレル、リドカイン、メタドン、ミフェプリストン、モンテルカスト、オンダンセトロン、パラセタモール、キニジン、キニン、テストステロン、テオフィリン、バルプロエート、ワルファリン、テトラヒドロカンナビノール、抗精神病薬、アリピプラゾール、リスペリドン、ジプラシドン、フルコナゾール、リトナビル、エリスロマイシン、テリスロマイシン、クラリスロマイシン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ナファゾドン、ベルガモチン(グレープフルーツジュースの成分)およびその誘導体、ケルセチン、アミオダロン、アプレピタント、シメチジン、シプロフロキサシン、シクロスポリン、ジルチアゼム、イマチニブ、エチナセア、エノキサシン、エルゴタミン、メトロニダゾール、ミフェプリストン、エファビレンツ、ネビラピン、ゲストデン、ミベフラジル、サクイナビル、インジナビル、フルオキセチン、スターフルーツ、ピペリン、ベラパミル、およびそれらの誘導体。
【0120】
血漿および脳脊髄薬剤濃度を治療的範囲内に維持し、高濃度の薬剤に関連する副作用を避けるために、多くの薬剤送達または放出制御技術が開発された。この特許に用いる主な技術は、米国特許No.5,882,680および6,312,942に記載のミニスフェアとミニカプセルを製造するためにFreund Spherex Labo法を用いることである。他の封入(カプセル化)法、例えばJintan、Inotech、またはITASが開発した方法を用いることができよう。
薬剤送達が強化されるニモジピン/タクロリムスの併用
【0121】
ニモジピンおよびタクロリムスには共に多くの薬剤送達における課題があり、いずれも可溶性が低く、腸内腔から血流への吸収の変動がみられる。さらに、ニモジピンおよびタクロリムスのバイオアベイラビリティは、CYP代謝とPgP排出により悪影響を受ける。薬理学的視点から、特に神経学的疾患に適用されるので、ニモジピンおよびタクロリムスを単一放出制御形式の投与形式で同時投与することは相乗的利益が得られる可能性がある。バイオアベイラビリティ視点から、同時投与はCYPおよびPgPを共に調節または阻害し、該薬剤の1または両方の血漿濃度を増加させ、血液脳関門の通過を改善し、該薬剤の1または両方のCSF濃度を増加させる可能性がある。さらに、同時投与するとCYPおよび/またはPgPの調節によりニモジピンおよびタクロリムス両方の血漿およびCSF濃度にみられる変動を減少させる可能性がある。すなわち、本発明は、可溶性と透過性に対処する併用放出制御薬剤放出形式をもたらすメカニズムを説明し、より効率的で患者に優しく薬理学的相乗性があるニモジピンおよびタクロリムスの同時投与を可能にする。
【0122】
ニモジピンおよびタクロリムスは水に難溶性で高脂溶性の薬剤である。ニモジピンの現在の投与形式は、最初に油と界面活性剤を用いて可溶性にし、次に封入して大軟ゲルカプセル形式とする。大軟ゲルカプセルは、放出調節ポリマーや同様の放出制御製剤でコーティングするのに適さない。そこで、血漿濃度のピークやトラフを防ぎ、安定な治療的血漿濃度を24時間にわたり維持することを保証する放出制御系が当該分野で必要とされている。本発明は、1日1回または1日2回投与を可能にする24時間にわたり持続放出を可能にする放出制御ミニカプセルまたはミニスフェアニモジピン製剤の開発を詳述する。さらに、本発明は、ある範囲の病状にわたる潜在的治療薬として新規放出制御複合製剤の開発を可能にする。
【0123】
本発明が可能にする重要な革新は、脂質ベースの製剤中に予め可溶化された、コアにタクロリムスを含む固体のミニカプセル、および固体のミニカプセルまたはミニスフェア中の可溶性が増強された微粒化ニモジピンの併用であり、両製剤はさらに処理され、消化管全体に両薬剤の同時放出を可能にする。
【0124】
本発明は、医薬的有効量のタクロリムスの放出制御をもたらすタクロリムスと医薬的に許容される担体または賦形剤を組み合わせた1日1回投与用製剤を含む。タクロリムス製剤は、同時係属出願のPCT/IE/2008/000039に記載されており、この内容は本明細書の一部を構成する。得られる24時間の放出制御は、改善された薬物動態プロフィールを可能にし、潜在的により有効かつ安全な好都合な製剤をもたらす。本発明はタクロリムスが可溶性または容易に溶解する形で放出されることを可能にするので、小腸だけでなく結腸でも吸収されるタクロリムスのような、低水溶性の、おそらく安定性が低いか半減期が短い、特に小分子薬剤の真の1日1回投与用医薬製剤を可能にする。本発明は、可溶性タクロリムスの小腸、回腸、および/または結腸での放出と吸収を可能にする放出制御製剤と共に、消化管全体で予め可溶化されたまたは容易に可溶化される薬剤の放出を可能にし、バイオアベイラビリティの変動が示された疎水性薬剤の真の1日1回投与用製剤を保証する経口薬剤送達技術を提供する。
【0125】
本発明は、ミニスフェアが消化管に沿って通過するにつれてニモジピンの放出を可能にする、放出制御ポリマーでコーティングされた固体のゼラチンベースのミニカプセルまたはミニスフェアに封入された微粒化ニモジピンを利用する。
【0126】
ニモジピンに加え、以下のおよび他のカルシウムチャンネルブロッカーまたはその誘導体がニモジピンで観察されたのと同様の効果を示しうるので互換性であろう:アムロジピン、ベニジピン、フェロジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ラシジピン、レルカニジピン。タクロリムスに加えて、カルシウム阻害剤またはその誘導体は、タクロリムスでみられるのと同様の効果を示しうるので互換性であろう:サイクロスポリンAおよびシロリムス。
ニモジピンとくも膜下出血
【0127】
毎年、約30,000人のアメリカ人と世界中で少なくともそれ以上がくも膜下出血 (SAH) に罹患する(AHA-American Heart Association)。初期出血後の最初の2週間以内に身体障害と死亡の発生率が最も高いことが報告されている(Arch Neurol. 1987;44:769-774)。くも膜下出血の罹患率と死亡率の1番の原因は脳血管痙攣である(Stroke. 1984;15:566-570)。
【0128】
SAH後に最も一般的に処方される薬剤はニモジピンである。ニモジピンは、高脂溶性のカルシウムチャンネルブロッカーであり、血流中に入ると効果的に血液脳関門を通過して脳内に入り、損傷の制御を行う。ニモジピンは、最近SAHになった患者の血管痙攣から生じた神経学的障害の発生率と重症度を低下させるよう作用し、発作後の神経学的病状に関わらず、頭蓋内漿果状動脈瘤破裂によるくも膜下出血を生じた患者の虚血性障害の発生率と重症度を低下させることにより神経学的転帰を改善するのに適応される。全体的に、ニモジピンは認識機能を改善し、脳梗塞の危険性とSAHにおける転帰不良を顕著に減少させる (Br Med J. 1989;298:636-642)。
【0129】
脳血管痙攣は収縮期血流速度の増加をもたらすので、動脈瘤くも膜下出血 (SAH)の主な合併症として認識されており、遅発性虚血性神経学的出血(DIND)を引き起こすことがある。ニモジピンは、特に静脈注射したときSAH後の臨床的転帰を改善する。経口用ニモジピンを静脈内用ニモジピンに置き換えると、痙性脳血管のピーク収縮期血流速度 (PSV)を有意に低下させるが、非痙性脳血管ではこの低下はみられない。したがって、ニモジピンの経口適用ではなく静脈内適用は、動脈瘤SAH後の脳血管痙攣の重症度を減少させる。静脈注射は、ニモジピンのより一定な血漿および脳脊髄液(CSF)濃度を可能にし、痙性または反射性脳血管痙攣の誘導を防ぎうることが提唱された(Wessig et al.、Society Proceedings / Clinical Neurophysiology 118 (2007) e9-e116.)。したがって、静脈内投与により可能になるものと同様の、より定常状態の血漿またはCSF濃度を可能にする放出制御経口形のニモジピンは治療的に有用かもしれない。
ニモジピンと脳損傷
【0130】
臨床試験において、ニモジピンは予期したように外傷性脳損傷に有効であることは示されていない。脳損傷におけるニモジピンの有益な効果は、その投与後に生じうる全身性低血圧とそれに続く脳灌流圧の低下により消失するかもしれず、それにより外傷性脳損傷および動脈瘤くも膜下出血において重度の副作用がありうる(Vergouwen et al.、Lancet Neurol、5 (2006)、993-994)。上記脳灌流圧の低下は、大軟ゲルカプセルを用いてニモジピンを投与後、または経鼻胃栄養チューブを介するニモジピン溶液の投与によりに観察されるピーク血漿濃度の結果であると考えられる。したがって、血漿およびCSF濃度を調節し、経鼻胃栄養チューブを介して容易に投与できる2つの利点が示された投与しやすい放出制御ニモジピンは、外傷性脳損傷に対するニモジピンの治療的有用性を広げるかもしれない。
ニモジピンと神経変性
【0131】
Bonniグループによる最近の研究において、脳切片のカルシウムチャンネルブロッカーであるニモジピンとのインキュベーションはシナプス樹状突起の形成を増加させ、これは電位依存性カルシウムチャンネルの活性化が神経樹状突起の形成を阻害することを示唆する (Shalizi et al.、Science、Vol 311、1012-1017;Flavell et al.、Science、Vol 311、1008-1012)。カルシウムチャンネルブロッカーの役割は、カルシウムチャンネルブロッカーの長期使用がパーキンソン病と診断される危険性を顕著に低下させることと関連があることを示す研究によりさらに裏付けられた(Neurology、Apr 2008;70:1438-1444)。
脳におけるカルシニューリンおよび阻害剤の役割
【0132】
証拠は、カルシニューリンが虚血性脳損傷を減少させることが知られているタクロリムスとサイクロスポリンAの神経保護メカニズムに役割を果たすことを示唆する。等用量のサイクロスポリンAで亜慢性的に前処置すると中脳動脈閉塞(MCAO)後の脳水腫を減少させることが報告されている(Shiga et al.、1992)。タクロリムスに比べてサイクロスポリンAの有効性が低いのは、おそらく血液脳関門の透過性の低さ(Begley et al.、1990)とイムノフィリン結合部位に対する親和性の低さが(Liu et al.、1992)が関与している。
【0133】
神経保護メカニズムにおけるカルシニューリン阻害剤の提唱される役割は、多くの細胞プロセスが含まれうる。FKBP12は、リアノジンおよびIP3レセプター複合体と複合体を形成するだけでなく(Timerman et al.、1993;Zhang et al.、1993;Brillantes et al.、1994;Chen et al.、1994;Cameron et al.、1995a)、カルシニューリンと相互作用する(Cameron et al.、1995b)細胞内疎水性タンパク質である。FKBP12と結合することにより、タクロリムスとラパマイシンはこの複合体を崩壊させ(Cameron et al.、1995b)、結合カルシニューリンを阻害する (Zhang et al.,1993;Brillantes et al.、1994;Chen et al.、1994;Cameron et al.、1995a,b)。
【0134】
タクロリムス活性のさらなる考えられる様式は、抗アポトーシスメカニズムによる虚血性脳損傷を減少させることである。TおよびB細胞系における活性化誘導性のアポトーシスはタクロリムスにより阻害され(Fruman et al.、1992b;Genestier et al.、1994)、繊維芽細胞におけるカルシウム誘発アポトーシスにおけるカルシニューリンの役割が示され (Shibasaki and McKeon、1995)、アポトーシスが限局性脳虚血により誘導された脳損傷における重要な役割を果たす証拠が報告された(Li et al.、1995a,b;Linnik et al.、1995)。
【0135】
種々の酵素の阻害に加え、ニューロン細胞死の予防や減少、すなわち神経変性の予防をもたらすサイクロスポリンおよびタクロリムスも、ミトコンドリア保護メカニズムを介して効果を発揮する。ミトコンドリア透過性遷移(MPT)は、不可逆的損傷、次いで細胞死をもたらす最終事象の1つを意味する (Zoratti and Szabo、Biochem. Biophys. Acta (1995) 1241:139-176)。MPTは、種々の細胞系において説明されており、酸化的損傷および興奮毒性として生じる。透過性遷移もニューロンに生じることが報告された。これは、グルタメートまたはN-メチル-D-アスパルテートに暴露した解離神経またはグリア培養ならびにカルシウム上昇の存在下で単離脳ミトコンドリアを用いる実験から推測された (Schinder et al.、(1996) J. Neurosci.、16 (18):5688-5697)。低酸素症-低血糖および再灌流時の単離ニューロン中のミトコンドリアの電位の損失はサイクロスポリンAにより防がれた。さらに、サイクロスポリンAは、MPTの強力な阻害剤であり、N-メチル-D-アスパルテートにより誘導されるミトコンドリアの脱分極を防ぎ、このプロセスはミトコンドリアポリンとの相互作用を伴うと考えられる(Bernardi et al.、(1994);J. Bioenerg. Biomembr. 16:509-517)。ミトコンドリアポリンは、虚血-再灌流時のミトコンドリア機能障害および神経機能障害に役割を果たすことが示され、ポリンとサイクロスポリンAとの相互作用は、サイクロスポリンおよびタクロリムスを含む他のカルシニューリン阻害剤による神経保護に重要であることが示唆された。
タクロリムスと脳虚血
【0136】
卒中後の潜在的神経保護剤としてタクロリムスを評価するための以前の第II相試験では結論はでなかった。しかしながら、タクロリムスの神経栄養および神経再生効果は、in vivoおよびin vitroで立証された。日本のグループは、脳虚血の3つの異なる動物モデル(ラットの一過性および持続性限局性虚血およびスナネズミ(gerbil)における一過性全身性虚血)においてタクロリムスの神経保護的効果を評価したデータを公表した。ラットモデルにおいて、虚血性脳損傷における顕著な低下が観察され、タクロリムス(> 0.1 mg/kg iv)を持続性および一過性限局性虚血の発症直後に投与した。同様の神経保護活性は、持続性限局性虚血後最大2時間、一過性限局性虚血後1時間にタクロリムス(1 mg/kg iv)を遅らせて投与しても観察された。タクロリムスの神経保護効果は、一過性限局性虚血後2週間、および持続性限局性虚血後1週間にもまだ観察された。スナネズミの一過性全身性虚血後の再灌流直後に投与したタクロリムス(1mg/kg、iv)は、1〜2時間の保護時間枠で長く持続する神経保護効果も生じた。
【0137】
2000年3月の第73回日本薬理学会総会で示した結果は、3つの異なる齧歯類中脳動脈梗塞(MCO)モデルにおいて、梗塞直後に0.32〜1.0 mg/kgのタクロリムスをiv投与すると用量依存性の梗塞面積の減少を示した。時間分析は、治療時間枠が1〜2時間であることを示唆した。別のラットMCOモデルにおけるrt−PAとの併用試験において、タクロリムス(1 mg/kg)および/または同用量のrt-PAを梗塞の1、2、または3時間後にiv投与した。両薬剤は、梗塞後最大1時間で単独投与すると神経保護効果を示したが、より大きな効果が両薬剤の併用でみられ、脳損傷の有意な減少が梗塞後最大2時間観察された。
【0138】
タクロリムスは、ラット大脳皮質の虚血性損傷を最大70%減少させ、全身性虚血性損傷後のマウスの海馬損傷を80%以上減少させた。ラット試験において、タクロリムスは末梢脳損傷後20%軸成長を増加させた。細胞培養では、50μMのタクロリムスは、PGE2処置により生じるAPPホロタンパク質およびmRNAの増加を完全に阻害した。これは、APPの過剰発現に関連する神経病理学(例えば、脳外傷または虚血)に対する潜在的利益を示唆する。サル卒中モデルにおいて、タクロリムス(0.1 mg/kg)の単回ivボーラス用量を、中脳動脈梗塞の直後または3時間後に投与すると、皮質の脳損傷を減少させるだけでなく、酸素の脳代謝速度および酸素除去機能の減少を有意に軽減した。一過性限局性虚血モデルにおいて、タクロリムスは梗塞の大きさを53%減少させ、ペプチジル-プロリルイソメラーゼの活性の増加を阻害した。
【0139】
タクロリムスは、中脳動脈梗塞により誘導された変化(c-JunのN-末端リン酸化、JNKの活性化、ATF-2の抑制、およびFasリガンドCD95-LおよびAPO-1Lの発現を含む)を減少させ、梗塞の大きさを減少させた。タクロリムスの脳再生効果の標的は、ステロイドレセプター複合体の一部である熱ショックタンパク質-56(HSP-56)である。
【0140】
動物試験は、タクロリムスが虚血組織の酸化窒素レベルを低下させ、虚血後の前初期遺伝子およびhsp72遺伝子発現を増加させうることを示した。1998年 Society for Neuroscienceミーティングで示されたラットの試験は、後根損症後の軸損失がタクロリムスにより減少することを示した。多量の軸発芽も観察され、ある軸索は病変の吻側に10mm再生した。同じミーティングで示された他の試験は、タクロリムスの臨床使用の可能性について神経損傷の時点からの期限がないことを示唆する。すなわち、単独またはニモジピンと組み合わせた制御送達タクロリムスは、上記のあらゆる病状の治療に大きな可能性がある。
カルシニューリン阻害剤と神経変性
【0141】
一本のニューロンは、数千ものシナプスと呼ばれる他のニューロンとの特殊な接合部を形成する。これらシナプス接合部の数、強度、および特異性が最終的に脳の機能を決定し、制御する。したがって、発生中にどのようにシナプス接合部が樹立され、それが一生を通してどのように調節されるかが、健康な精神の維持や神経学的疾患もしくは神経変性性疾患の発現を制御するのに重要である。最近、N-メチル-D-アスパルテート (NMDA)レセプターおよび電位依存性カルシウムチャンネルを介したカルシウム流入はホスファターゼカルシニューリンを活性化して転写因子MEF2を脱リン酸化し、アルツハイマー病およびパーキンソン病を含むある種の神経変性性疾患の発現における潜在的原因因子であるシナプスの分解を介在する標的遺伝子が作動するのを可能にすることが示された。この試験において、脳切片をサイクロスポリンAとインキュベーションすると、シナプスの樹状突起形成が増加し、カルシニューリンの活性化は樹状突起形成を阻害することを示唆し(Shalizi et al.、Science、Vol 311、1012-1017;Flavell et al.、Science、Vol 311、1008-1012)、これにより、カルシニューリン阻害剤はこの負の効果を逆転させ、樹状突起形成を促進または維持しうることを示唆する。
カルシウムチャンネルブロッカーとカルシニューリン阻害剤の併用
【0142】
先行技術および臨床研究から、カルシウムチャンネルブロッカーおよびカルシニューリン阻害剤は脳で相乗的に作用し、単独またはより好ましくは組み合わせて多くの神経学的病状を予防または治療し、脳外傷により生じた損傷を軽減する可能性がある。さらに、両者がCYPおよびPgPの基質であることを考慮すると、カルシウムチャンネルブロッカーとカルシニューリン阻害剤の同時投与は、一方または両方のバイオアベイラビリティを増強し、対象間および対象内のバイオアベイラビリティの変動を減少させる可能性がある。本発明は、可溶性が増強された形で、各薬剤が持続的に放出されるように、カルシウムチャンネルブロッカーとカルシニューリン阻害剤を同時投与することを可能にする。以下の項に、放出制御、可溶性増強カルシウムチャンネルブロッカー/カルシニューリン阻害剤併用製剤の考えられる多くの適応症を示す。
くも膜下出血のための併用
【0143】
ニモジピンは、4時間毎の60mg投与を96時間以内に開始し、21日間継続すると、Hunt and Hessグレードすべて[I〜V]を含むくも膜下出血患者の虚血性神経学的障害の重症度を低下させることが示唆されている(Thomson Report、2005)。タクロリムスは虚血性損傷の後続効果を予防または逆転することが知られているので、低用量(1-10mg/日)のタクロリムスはくも膜下出血に有益な効果があると期待される。
【0144】
本発明は、くも膜下出血を治療するためのタクロリムスと併用する1日1回もしくは1日2回投与用のニモジピンの開発を可能にする。1日1回の利点に加え、混合ミニカプセル形式は、漏斗様のチューブ付属品を必要とするか必要とせずに経鼻胃管を介して容易に投与するのに適するだろう。
卒中/一過性虚血のための併用
【0145】
卒中は米国で三番目に主な死亡原因であり、成人の身体障害の最も一般的な原因である。虚血性卒中は、脳血管が閉塞し、脳の一部の血流が妨げられたときに起こる。
【0146】
現在承認されている唯一の医学的卒中療法である組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)は、血管内の血栓を標的とする血栓溶解剤である。卒中治療の別のアプローチである神経保護剤は、血栓溶解療法と同様に興味が持たれている。
【0147】
虚血は、興奮性アミノ酸レセプターの過剰な活性化、細胞内カルシウムの蓄積、および細胞傷害を引き起こす他の毒性産物の放出をもたらす。神経保護剤は、興奮性神経伝達物質の放出を抑制することにより、細胞に対する虚血の有害効果を減少させうる。
【0148】
神経保護剤は、種々のメカニズムにより脳の虚血状態のニューロンを不可逆的傷害から助けようとする。動物試験は、多くの生存の可能性があるニューロンが虚血周辺部に存在する期間は完全な虚血の発生後少なくとも4時間であることを示している。ヒトでは、虚血は不完全であり、タイムウインドウは長いかもしれないが、ヒト患者は高齢で、利益を制限する併存疾患を持つ傾向がある。多くの神経保護剤は、卒中の動物モデルの虚血性損傷を減少させるので、この種の医薬研究は大いに期待できる。
【0149】
虚血によって生じる過剰な細胞へのカルシウム流入を調節することが知られているので、カルシウムチャンネルブロッカーとカルシニューリン阻害剤の併用、例えば放出制御ニモジピン/タクロリムスの併用は神経傷害を予防するかもしれない。本発明は、卒中や一過性虚血を治療するためのタクロリムスと併用する1日1回または1日2回投与用のニモジピンの開発を可能にするだろう。1日1回の便利さに加え、併用ミニカプセルの形式は、漏斗様のチューブ付属品を必要とするか必要とせずに経鼻胃管を介して簡単に投与するのに適している。さらに、該製剤は、血栓溶解剤、例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)または抗凝固剤、例えばアスピリンなどと組み合わせることができよう。
脳外傷のための併用
【0150】
脳外傷患者の脳不全の病因において、最も重要な因子群について概説する。通常、該因子群には、外傷性損傷、低酸素症、虚血、および内毒素症が含まれる。カルシウム代謝障害が外傷に続いて起こることはよく知られている。ニモジピンは血液脳関門を通り抜けるので、カルシウムチャンネルの透過性を調節し、ジヒドロピリジンレセプターと結合することにより脳の血行とニューロンの活性を改善し、抗酸化特性を有する。同様に、タクロリムスは、血液脳関門を通過し、カルシウムの細胞内濃度に対して正の制御効果を有する。
【0151】
本発明は、脳外傷や虚血を治療するためのタクロリムスと併用する1日1回または1日2回投与用のニモジピンの開発を可能にするだろう。1日1回の便利さに加え、混合ミニカプセルの形式は、漏斗様のチューブ付属品を必要とするか必要とせずに経鼻胃管を介して簡単に投与するのに適している。
神経変性のための併用
【0152】
上記Bonniグループの研究は、カルシウムチャンネルブロッカーおよび/またはカルシニューリン阻害剤の有益な効果は、神経変性性疾患、例えばパーキンソン病およびアルツハイマー病の進行を予防するのに特に有益であることを示唆した(Science、February 2006)。カルシニューリン阻害剤とカルシウムチャンネルブロッカー、例えばタクロリムスとニモジピンの同時投与は、相乗的な治療効果があるかもしれない。可溶性および透過性促進剤としてのオメガ-3 EPAおよびDHA油のようなある種のエッセンシャルオイルの、保存料としての抗酸化剤の、および神経保護剤のさらなる使用は、全体的な脳の健康に寄与するかもしれない。すなわち、そのような製剤は、製剤化を容易にし、治療効果を増す2つの目的にかなうかもしれない。
【0153】
本発明は安全で便利な1日1回または1日2回形式の開発を可能にし、脂溶性カルシウムチャンネルブロッカーのニモジピンとカルシニューリン阻害剤のタクロリムスは、両者を混合して1つの硬ゼラチン丸薬形式にすることができるので、神経変性性疾患、例えばパーキンソン病およびアルツハイマー病、ならびに血管性認知症、認識障害などを予防または治療するための二重に作用する安全で有効かつ便利な手段をもたらすだろう。
併用プラスアセチルコリンエステラーゼ阻害剤およびアルツハイマー病
【0154】
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤、またはタクロリムスまたはサイクロスポリンAを含む向知性薬との同時投与は、アルツハイマー病の治療における相乗効果がみられるはずである。そのようなAChE阻害剤の1つに中国でアルツハイマー病の治療用に承認されているタクリンより有効なフペルジンAがある。L-カルシウムチャンネルブロッカーは、脳血管の拡張により、脳の健康と機能に正の効果を示し、特にアルツハイマー病の患者に対して有益であることが示唆された。
【0155】
フペルジンAは、ニモジピンと同様の半減期を有するので、本発明により可能な形式として開発される利益があり、開発されている同様の放出制御プロフィールを示すだろう。1日1回投与用の便利な形式の、タクロリムスを含むまたは含まない、1日1回投与用二重作用治療薬は、最先端のアルツハイマー病の治療、または特に血管性認知症の治療として顕著な可能性を有する。
虚血性疾患のためのヒドララジンとの併用
【0156】
ヒドララジンは、重症の高血圧、鬱血性心不全、および心筋梗塞の治療に用いられる血管拡張剤である。正確な作用機序はわかっていないが、血管平滑筋細胞のカルシウムイオンバランスの変化を引き起こすと考えられている。鬱血性心不全の治療時に、ヒドララジンと硝酸イソソルビドの同時投与は、硝酸塩耐性の早期発現を予防し、長期死亡率を減少させ、ヒドララジンがスーパーオキシドの産生増加をもたらす膜関連オキシダーゼの活性化を阻害することを示唆する。ヒドララジンの意図する標的は、プロトコラーゲンプロピルヒドロキシラーゼであり、その下流の標的は低酸素症誘導因子-α(HIF-α)である。ヒドララジンは、ヒドロキシラーゼの阻害によりHIF-αを急速に一過性に誘導して、VEGFの産生を誘導し、in vivoで血管新生を促進することが示されている。さらに、ヒドララジンは、酸化窒素を間接的に放出させるかもしれない。HIF-αの活性化または調節は、虚血性疾患に適した治療であるかもしれないことが示唆されている(Knowles et al.、Circ Res. 2004;95:162-169)。さらに、NOドナー結合ヒドララジンをヒドララジンと一緒に含むか、またはヒドララジンをNOドナー結合ヒドララジンで置換することができよう。ニモジピンおよび/またはタクロリムスと併用すると、ニモジピンおよび/またはタクロリムスと同時または逐次放出された放出制御製剤中のヒドララジンは、神経の虚血性事象または疾患の予防または治療にアジュバントとして作用する可能性がある。
酸化窒素ドナーとの併用
【0157】
(Z)-1-[N-(2-アミノエチル)-N-(2-アンモニオエチル)アミニオ]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオラート(DETA/NONOアート)を含む酸化窒素(NO)ドナーの若い成ラットへの投与は、室下帯および歯状回中の細胞増殖および移動、歯状回中のニューロン新生を有意に増加し、脳室下帯および歯状回中の細胞増殖および移動を増加する。虚血性卒中からの回復時における神経学的転帰の顕著な改善。これは、酸化窒素が成体脳における前駆細胞およびニューロン新生の調節に関与することを示唆する。これは、卒中のかなり後に脳に送達した酸化窒素は治療的利益があるかもしれないことを示唆する(Zhang et al.、Ann. Neurol.2001、vol. 50、5、602-611)。最近、ニトログリセリンは、脳血管拡張特性、全身性抗高血圧特性、およびニューロンの抗興奮毒性特性を有する神経保護剤として研究の的となっている。37人の急性卒中患者による第II相臨床試験において、経皮投与したニトログリセリンは、血圧を5%〜8%低下させた(Bath、Stroke 2002、33:648-649)。ニモジピンおよび/またはタクロリムスと併用すると、放出制御製剤中のNO-ドナーは、神経の虚血性事象または疾患の予防または治療にアジュバントとして作用する可能性がある。
スタチンとの併用
【0158】
スタチンであるシムバスタチンの投与は、内皮酸化窒素シンターゼ(eNOS)を上方調節し、ネズミの脳虚血モデルにおいてより機能的なタンパク質、脳血流の増加、および神経保護をもたらす。この試験では、メバスタチンを用い、スタチンが一般的クラスとしてeNOS mRNA、タンパク質レベル、卒中損傷に対する保護を増加させることを示した。メバスタチンが以前に報告されたスタチンと比べて異なる効力を示すことも示す。治療期間と用量を変化させることにより、薬剤治療ウインドウを確立することができ、メバスタチンの1月間の1日1回投与後にタキフィラキシーが発現しないことがわかった。最終的に、eNOS mRNAおよびタンパク質の発現増加は、虚血脳におけるメバスタチンの保護作用に対応することがわかった。メバスタチンは、eNOS mRNAおよびタンパク質レベルの増加をもたらし、絶対CBFを増加させた。CBFの増加はおそらく血管抵抗の減少によるものであり、これもNO依存性メカニズムによる血小板凝集および/または白血球付着の減少を反映するかもしれない (Amin-Hanjani et al.、2001;Stroke;32:980)。
【0159】
本発明は、卒中を治療するための、持続放出ヒドララジン、酸化窒素ドナー、脂溶性スタチン、アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニスト、抗凝固剤、またはそれらのあらゆる組み合わせと併用するか、または単独での1日1回または1日2回投与用持続放出ニモジピンおよび/またはタクロリムスの開発を可能にする。
ニューロパシー痛
【0160】
カルシウムは、中枢神経系の痛み信号の伝達に重要な役割を果たす。シナプス前神経終末で、電位依存性カルシウムチャンネルは活動電位に応じて開いてカルシウムイオンの流入を可能にし、次いで、シナプス間隙を横切ってシナプス後膜に拡散する特異的レセプターと結合する種々の神経伝達物質の放出をもたらす。モルフィンは慢性痛の治療の選択薬であり、シナプス前およびシナプス後膜レセプター上のオピオイドレセプターに結合して電位依存性カルシウムチャンネルを遮断することにより痛みを生じる神経伝達物質、例えばサブスタンスPの放出を減少させ、痛みを軽減する。L-およびN-型のカルシウムチャンネルは、脊髄後索の感覚ニューロンからの神経伝達物質の放出に関与することが知られている。これを生かして、多くの研究が、L型カルシウムチャンネルブロッカーと同時投与したときにオピオイド、例えばモルフィンの鎮痛反応を増加することを証明した(Santillan et al.、Pain、76、17-26、1998)。ニモジピンとモルフィンの同時投与について検討する研究が特に興味深く、モルフィンの鎮痛作用の増加と低用量での作用の持続時間が長くなることを示唆した(Verma et al.、J. Biosci. 30(4)、September 2005、491-497)。強力なNa+チャンネルブロッカー特性を有するα-アミノアミドファミリーの化合物を含む他のクラスの薬剤は、慢性痛モデルにおける持続性の抗侵害活性および抗アロディニア効果を示した。
【0161】
本発明は、ニューロパシー痛を治療するための、限定されるものではないが、モルフィン、モルフィン硫酸塩、トラマドール、オキシコドン、ヒドロキシコドン、フェンタニル、ナプロキセン、またはNOドナー結合ナプロキセン、プレガバリン、持続放出α-アミノアミド、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む持続放出オピエートと併用する、タクロリムスの同時投与を伴うか伴わない1日1回または1日2回投与用放出制御ニモジピンの開発を可能にする。
ミニカプセルおよびミニスフェアの製造工程
【0162】
シームレスの液体または半液体充填ミニカプセルまたは固体のミニスフェア形成の原理は、ある直径の穴やノズルから射出して特定の周波数や重力流を受けると、球形になり、冷気流、または冷もしくは硬化溶液になる、1またはそれ以上の異なる溶液の、およびゲル化または固体化する場合はアウターシェル溶液の表面張力を利用することである。ここで簡単にシームレスミニスフェアの形成について説明する。
【0163】
先行技術によれば、コア溶液は主として疎水性溶液または懸濁液である。該アウターシェル溶液は、あらゆるゲル形成物質でありうるが、通常ゼラチンベースであるが、放出制御を可能にするポリマーまたは他の物質も含みうる。しかしながら、親水性溶液は、中間溶液の存在によりカプセル化し、親水性コア溶液とアウターシェルが直接接触するのを避けることができる。穴が一つのノズルを用いて、微粒化薬剤のシェル/コア混合懸濁液のミニカプセルまたはビーズを製造することができる。穴が二つ(中心および外側)のノズルを用いて、疎水性溶液をカプセル化することができる。1または穴(one or orifices)を有するノズルを用いて、種々の適用のためのシームレスミニカプセルを製造することができる (米国特許No.5,882,680および6,312,942参照)。さらに、限定されるものではないが、ITAS (Globex)、Innotech、Morishita Jintanが開発したような、他のカプセル化およびミニカプセル化方法を用いてもよい。
【0164】
多粒子シームレスミニカプセル用の、米国特許No.5,882,680のような上記製造処理方法を用いてニモジピン多粒子シームレスミニカプセルを製造した。完全なニモジピンシームレスミニカプセルは、好ましくは平均直径が1.00〜3.00mm、より具体的にはWO2006/035417Aに記載しているように1.50〜1.80mmの範囲である。
【0165】
得られる1、2、または3層ミニカプセルまたはミニスフェアをさらに製造し、下にあるミニカプセルまたはミニスフェアコアから活性医薬物質が放出されるように調節する種々の放出制御ポリマーでコーティングすることができる。以前に発明にしたがって、薬剤を入れたミニカプセルを速度調節ミニカプセルでコーティングし、目的とする解離速度を達成する。これらミニカプセルから放出された薬剤は、ポリマーが腫脹し透過性になるよう拡散が制御され、GITにおける放出制御を可能にする。適切な分解プロフィールを達成するために、以下のパラメーターを考慮する必要がある:効率的方法/条件、薬剤の溶解度/粒子サイズ、ミニカプセルの表面積、ミニカプセルの直径、およびコーティングポリマーの適切さ。
【0166】
さらに、ある種の半固体コア製剤は、単独で、またはシェル、放出制御シェル、および/または放出制御シェルコーティングを組み合わせて放出制御を生じるかもしれない。
【0167】
カルシウムチャンネルブロッカーおよびカルシニューリン阻害剤製剤化ミニカプセルおよびミニスフェアだけでなく、限定されるものではないが、薬剤層化、顆粒化、および溶融抽出を含む他の製剤化方法を利用することができよう。
放出制御ポリマー - 膜制御剤形
【0168】
本発明の放出調節製剤は、膜制御製剤として提供することもできる。本発明の膜制御製剤は、ゼラチンシェルでカプセル化した液体、半固体、または固体でありうる急速放出コアを製造し、該シェルを機能的コーティングでコーティングすることにより製造することができる。膜制御コーティングの存在下または非存在下で、液体、半固体、または固体のコアを、それ自身がミニカプセルからの医薬化合物の放出速度を制御するように製剤化することができる。膜制御剤形の詳細を以下に示す。
【0169】
本発明のある態様では、医薬化合物は複数のミニカプセル膜制御製剤で提供される。活性医薬品は、可溶性、透過性、または溶解速度を増す液体、半固体、または固体として製剤化することができ、混合コアおよびシェル成分を分離するさらなる緩衝液層を含むか含まないセルをさらに含む2または3層ミニカプセルのコアとして利用することができる。ミニカプセルの直径は、0.5〜約5.0mmの範囲でありうる。同じ活性または1またはそれ以上の他の活性のさらなる医薬化合物を、流動層塗布機またはパンコーティング系を用いて溶液または懸濁液からスプレーすることができる。
【0170】
ミニカプセルからの製剤放出位置を調節するため、種々の遅延放出および/または長時間放出ポリマー物質をミニカプセルの膜コーティングに適用した。ポリマー物質には、水溶性ポリマーと水に不溶性の(不水溶性)ポリマーの両方が含まれる。考えられる水溶性ポリマーには、限定されるものではないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはポリエチレングリコール、および/またはそれらの混合物が含まれる。考えられる不水溶性ポリマーには、限定されるものではないが、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、およびポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、ポリ(エチレン)低密度、ポリ(エチレン)高密度、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(塩化ビニル)もしくはポリウレタン、および/またはそれらの混合物が含まれる。
【0171】
EUDRAGIT(登録商標)ポリマー(Evonikから利用可能)は、アクリレートおよび/またはメタクリレートベースのポリマーラッカー物質である。活性成分と水に自由に浸透する適切なポリマーにはEUDRAGIT(登録商標)RLがある。活性成分と水にわずかに浸透する適切なポリマーにはEUDRAGIT(登録商標)RSがある。活性成分と水にわずかに浸透し、pH依存性透過性を示す他の適切なポリマーには、限定されるものではないが、EUDRAGIT(登録商標)L、EUDRAGIT(登録商標)S、およびEUDRAGIT(登録商標)Eが含まれる。
【0172】
EUDRAGIT(登録商標)RLおよびRSは、第4アンモニウム基含有量の低いアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマーを含むアクリル樹脂である。アンモニウム基は、塩として存在し、ラッカーフィルムの透過性をもたらす。EUDRAGIT(登録商標)RLおよびRSは、それぞれpHに応じて自由に浸透性(RL)およびわずかに浸透性(RS)である。該ポリマーは、pH依存性に水および消化液中で膨潤する。膨潤状態で、それらは水および溶解した活性化合物に浸透性である。
【0173】
EUDRAGIT(登録商標)Lは、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルから合成された陰イオンポリマーである。EUDRAGIT(登録商標)Lは酸および純水に不溶性である。EUDRAGIT(登録商標)Lは中性〜弱アルカリ条件で可溶性になる。EUDRAGIT(登録商標)Lの透過性はpH依存性である。pH5.0以上で、該ポリマーは浸透性が増す。
【0174】
膜制御剤形を含む種々の態様において、ポリマー物質には、メタクリル酸コポリマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、またはそれらの混合物が含まれる。メタクリル酸コポリマー、例えばEUDRAGIT(登録商標)SおよびEUDRAGIT(登録商標)L(Evonik)は、本発明の放出制御製剤に用いるのに適している。これらポリマーは、胃抵抗性および腸溶解性ポリマーである。該ポリマーフィルムは純水および希釈した酸に不溶性である。該ポリマーフィルムは、そのカルボン酸含有量に応じてより高いpHで溶解する。EUDRAGIT(登録商標)SおよびEUDRAGIT(登録商標)Lは、ポリマーコーティングに単一成分として、またはあらゆる比で混合して用いることができる。該ポリマーの組み合わせを用いることにより、ポリマー物質は、EUDRAGIT(登録商標)LとEUDRAGIT(登録商標)Sが別々に溶解するpHの間のpHで可溶性を示しうる。
【0175】
膜コーティングは、多くの割合(すなわち、総ポリマー含有量の50%以上)の少なくとも1の医薬的に許容される水溶性ポリマー、および所望により少ない割合(すなわち、総ポリマー含有量の50%以下)の少なくとも1の医薬的に許容される不水溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。あるいはまた、膜コーディングは、多くの割合(すなわち、総ポリマー含有量の50%以上)の少なくとも1の医薬的に許容される不水溶性ポリマー、および所望により少ない割合(すなわち、総ポリマー含有量の50%以下)の少なくとも1の医薬的に許容される水溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。
【0176】
アミノメタクリレートコポリマーはあらゆる所望の割合で混合することができ、該割合は、薬剤の放出速度を調節するために調節することができる。例えば、90:10のEUDRAGIT(登録商標)RS:EUDRAGIT(登録商標)RLの比を用いることができる。あるいはまた、EUDRAGIT(登録商標)RS:EUDRAGIT(登録商標)RLの比は、約100:0〜約80:20、または約100:0〜約90:10、またはその間のあらゆる比でありうる。そのような製剤において、浸透性の低いポリマーEUDRAGIT(登録商標)RSは、一般的にはそれが溶解する場合はより溶解性RLのポリマー物質を多く含み、溶質がコアに入ることができ、溶解した医薬活性物質が制御されて脱出する間隙を作ることができる。
【0177】
アミノメタクリレートコポリマーは、薬剤の望ましい放出遅延を達成するために、ポリマー物質内でメタクリル酸コポリマーと混合することができる。アンモニオメタクリレートコポリマー(例えば、EUDRAGIT(登録商標)RS)/メタクリル酸コポリマー比約99:1〜約20:80で用いることができる。2種類のポリマーも同じポリマー物質に混合するか、またはコアに適用される別のコートとして提供することができる。
【0178】
上記EUDRAGIT(登録商標)ポリマーに加え、他の腸溶またはpH依存性ポリマーを用いることができる。そのようなポリマーは、フタレート、ブチレート、スクシネート、および/またはメリテート基を含むことができる。そのようなポリマーには、限定されるものではないが、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロース水素フタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピル-メチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、デンプンアセテートフタレート、アミロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、およびポリビニルブチレートフタレートが含まれる。
【0179】
Surelease(登録商標)、水性エチルセルロース分散液は、フィルム形成ポリマー、可塑剤、および安定化剤の独特な組み合わせである。持続放出味遮蔽適用物を設計するには放出速度調節ポリマーとしてエチルセルロースを用いる全体的に水溶性のコーディング系であるSurelease(登録商標)が使用しやすい。分散液は、pHに比較的非感受性の再現性のあるプロフィールを有する薬剤放出速度に調整するための柔軟性を提供する。
【0180】
薬剤放出の基本的方法は、Surelease(登録商標)分散膜を介する拡散により、フィルム厚により直接制御される。適用するSurelease(登録商標)の量の増減により放出速度を簡単に調節することができる。
【0181】
Surelease(登録商標)分散を用いる再現性のある薬剤放出プロフィールは、開発からスケールアップ製造方法まで一貫して正しい。さらなる情報は、Colorcon Incのウェブサイト(www. Colorcon.com.)でみることができる。さらに、さらなる範囲の放出制御ポリマーを用いうる。
【0182】
さらに、別の放出制御を可能にするポリマーまたは他の構成要素を、単独で、またはポリマー、例えば、限定されるものではないがEudragit(登録商標)およびSurelease(登録商標)ポリマーを含む上記のものと組み合わせて用いうる。あるいはまた、放出制御物質またはポリマーのあらゆる混合物を用いうる。
【0183】
該コーティング膜は、さらに該ポリマー物質の透過性を増加させる少なくとも1の可溶性賦形剤を含むことができる。適切には、少なくとも1の可溶性賦形剤は、可溶性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖、および糖アルコールから選ばれる。そのような可溶性賦形剤には、限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート、有機酸、例えば酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、および酒石酸、糖、例えばデキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、およびショ糖、糖アルコール、例えば、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトール、キサンタンガム、デキストリン、およびマルトデキストリンが含まれる。ある態様において、ポリビニルピロリドン、マンニトール、および/またはポリエチレングリコールを可溶性賦形剤として用いることができる。少なくとも1の可溶性賦形剤は、ポリマーの総乾燥重量に基づいて約1重量%〜約20重量%の範囲の量で用いることができる。該コーティング方法は、あらゆる適切な方法、例えば有孔パンシステム、例えば、GLATT、ACCELACOTA、Diosna、および/またはHICOATER処理装置により行うことができる。
【0184】
例えば放出遅延または延長をもたらす放出速度の変更は、あらゆる多くの方法で達成することができる。メカニズムは、腸の局所pHに依存するかまたは依存しないことがあり、望む効果を達成するために局所酵素活性にも依存しうる。放出調節製剤の例は当該分野で知られており、例えば米国特許No.3,845,770;3,916,899;3,536,809;3,598,123;4,008,719;5,674,533;5,059,595;5,591,767;5,120,548;5,073,543;5,639,476;5,354,556;および5,733,566に記載されている。
【0185】
膜調節延長放出剤形を用いて、半透過膜が目的活性物質を含む製剤を取り囲むことができる。半透過膜には、水と溶質の両方に対して可溶性の程度がより大きいかまたは小さいものが含まれる。この膜は、不水溶性ポリマーおよび/または水溶性ポリマーを含むことができ、pH依存性および/またはpH非依存性の可溶性特性を示すことができる。この種のポリマーについて以下に詳述する。一般的には、例えば膜の組成により決定することができるポリマー膜の特性は、該剤形からの放出特性を決定するであろう。
【0186】
使用に適した多くの修飾剤形を以下に記載する。そのような剤形のより詳細な考察は、例えば、The Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology、D. L. Wise (編)、Marcel Decker、Inc.、New York (2000);およびTreatise on Controlled Drug Delivery:Fundamentals、Optimization、and Applications、A. Kydonieus (編)、Marcel Decker、Inc.、New York、(1992)に記載されている。そのそれぞれの関連する内容は本明細書の一部を構成する。放出調節製剤の例には、限定されるものではないが、膜調節、マトリックス、浸透圧、およびイオン交換系が含まれる。これらはすべて、上記の一単位または多単位剤形の形でありうる。
【0187】
pH依存系は、ヒトGITのpHは、消化部位の胃(pH 1〜2、消化時に4に増加する)、小腸(pH6〜7)から漸進的に増加し、遠位回腸で7〜8に増加するという一般的に受け入れられた考えを用いる。錠剤、カプセル、またはペレットに対するpH感受性ポリマーのコーティングは、遅延放出をもたらし、活性薬剤を胃液から保護する。しかしながら、結腸を標的とするために用いるポリマーは、胃および小腸の近位部の低pH値に耐えることができ、回腸終末、好ましくは回腸終末、好ましくは回盲部の中性〜わずかにアルカリpHで分解することもできるべきである。
【0188】
上記ミニカプセル法は、ある範囲の活性医薬化合物に対して多くの利点があるが、考えられる制限には、必要なシェル物質および/または緩衝液層とコア製剤の適合性が含まれる。別の考えられる制限は、患者に不都合な大きな丸薬サイズをもたらす低活性医薬化合物ペイロードである。さらに別の考えられる制限は、放出制御はシェルまたはシェルコーディングに依存し、制限されるかもしれないことである。さらに別の制限は、不完全なカプセル化や不規則な形のミニカプセルを生じるシェルとコアまたは緩衝液層間の見込まれる不適合性に関する。さらに別の利点は、多くの病状を治療する可能性がある新規の、そうでなければ不適合性の、放出制御併用製剤を開発する可能性に関する。
投与形式
【0189】
多ミニカプセルまたはミニスフェア形式は、種々の大きさの高ゼラチンカプセルに充填した、種々の放出制御コーティングを有するある活性物質、または1または多数の放出制御コーティングを有する別の異なる活性物質の併用(組み合わせ)を可能にする。硬ゼラチンカプセルは、液体製剤または粉末製剤も含みうる。さらに、ミニカプセルまたはミニスフェアを圧縮し、不活性賦形剤や他の活性医薬成分を含むペレットまたはピル形式にすることができよう。
【0190】
本発明のミニカプセルまたはミニスフェア剤形の利点は、それらが投与しやすい柔軟な形式であることである。ニモジピンまたはニモジピン含有併用製剤で治療する可能性がある多くの病状に共通の問題は、患者が燕下困難を経験することである。これは、患者が卒中や外傷後に機能障害になり、経鼻胃管を介して食物を摂るか、または患者が燕下困難を経験するある種の神経変性性疾患、例えばパーキンソン病であることにより生じるかもしれない。
【0191】
投与しやすいある形式において、本発明は、ミニカプセルまたはミニスフェアをサシェーに充填し、その内容を柔らかい食物または特に飲み物にふりかけて、スプーンで食べるか、飲むか、またはストローで吸うことにより患者に投与することを可能にする。この投与の形は、燕下を嫌がるか燕下困難な小児や高齢者に適している。さらに、サシェー内容物を経鼻胃管投与用付属品に注ぎ入れ、機能障害の患者に投与することができよう。別の形式は、該内容物を予めシリンジに充填し、経鼻胃管に接続することができよう。
【0192】
さらに別の投与形式は、膣または直腸内投与に適した坐剤形式である。この形式は、験下ができない、急な作用の発現が緊急に必要な患者への投与を含む多くの利点がある。
【0193】
さらに、該ミニカプセルまたはミニスフェアを、バッカルまたは舌下投与用の形式に組み込むことができよう。そのような形式は、ハイドロゲルや口の中や舌下で急速に分解しうる形式を含む成体接着分解性フィルムを含みうる。また、そのような形式は、急速な作用発現の必要性がある場合や燕下ができない患者に適している。
放出制御ニモジピンおよびタクロリムスの併用
無コーティングニモジピンミニカプセル
【0194】
適切な量の微粉化ニモジピン、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、80℃に加熱し、均一な溶液が達成されるまで撹拌し続けた。次に、該溶液を米国特許No.5,882,680に記載の製剤方法を用いて適切な流速および振動周波数で固体ミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残った油を除去し、オーブン中で一夜乾燥する。ニモジピン多粒子シームレスミニカプセルを製造した。完全なニモジピンシームレスミニカプセルは、平均直径が1.50〜1.80mmであった。

【0195】
無コーティングニモジピンミニカプセルを図17の形1に示す。
コーティングニモジピンミニカプセル
【0196】
無コーティングミニカプセルのいくつかを、Diosna Minilabを用いて可能な標準ボトムスプレー流動床コーティングを用いてSurelease(登録商標)でコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。
【0197】
ある場合には、該コーティングは、低増量(weight gain)Surelease(登録商標)、例えば7.5%wt増加Surelease(登録商標)(典型的には40℃x24hrで硬化)である。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDS中に置くことにより得る(100rpm、HPLC-24hr)。
【0198】
別の場合には、該コーティングは高増量Surelease(登録商標)、例えば30%wt増加Surelease(登録商標)(典型的には40℃x24hrで硬化)である。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDS中に置くことにより得る(100rpm、HPLC-24hr)。
【0199】
無コーティングニモジピンミニカプセルを図17の型2に示す。
無コーティングタクロリムスミニカプセル
【0200】
該コア製剤を以下のごとく製造した。タクロリムスを適切な容量のエタノールに溶解した。溶解したら、該溶液をLabrafilとオリーブ油の適切な混合物と混合する。シェル溶液を以下のごとく製造した。適切な量のゼラチンおよびソルビトールを水に加え、溶液になるまで70℃で加熱した。Spherex Laboを用い、コアが可溶化および透過性増加製剤中にタクロリムスを含む2層ミニカプセルを製造した。さらに、該コア製剤は一定の持続放出を可能にする。

【0201】
無コーティングタクロリムスミニカプセルを図17の型3に示す。
コーティングタクロリムスミニカプセル
【0202】
無コーティングミニカプセルを、標準的ボトムスプレー流動床コーティングを用いて最初にEudragit(登録商標)RS30D(半透過性、膨潤性ポリマーコーティング)、次いでEudragit(登録商標)FS30D(腸溶、pH感受性コーティング)でコーティングした。これは、Diosna Minilabを用いて24時間まで放出プロフィールを得ることが可能である。
【0203】
該第1コーティングは12.5%増量Eudragit(登録商標)RS30Dであり、次いで40℃で24hr硬化させた。乾燥したら、該第2コーティングは25%増量Eudragit(登録商標)FS30Dであり、次いで40℃で24hr硬化させた。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。
【0204】
コーティングタクロリムスミニカプセルを図17の型4に示す。
最終ニモジピンおよびタクロリムス剤形
【0205】
無コーティングニモジピンミニスフェア、およびコーティングニモジピンミニスフェアの1またはそれ以上のポピュレーションを混合し、充填して最終剤形を得た。無コーティングタクロリムスミニスフェア、およびコーティングタクロリムスミニスフェアの1またはそれ以上のポピュレーションを混合し、充填して最終剤形を得た。あるいはまた、無コーティングニモジピンミニスフェア、およびコーティングニモジピンミニスフェアの1またはそれ以上のポピュレーションを、無コーティングタクロリムスミニカプセル、およびコーティングタクロリムスミニカプセルの1またはそれ以上のポピュレーションと混合し、混合し、充填して最終剤形を得る。
【0206】
より詳細には、図17は、微粒化ニモジピンを封入(カプセル化)した個々の固体、ゼラチンベースの無コーティングミニスフェア1のポピュレーションを模式的に示す。示した例において、可変増量Surelease(登録商標)ポリマーコーティングミニスフェアの2つのポピュレーション(2に示す7.5%増量および30%増量)の混合物がある。また、タクロリムスミニカプセルを示す。タクロリムスミニカプセルで示すと、無コーティングミニカプセル3は、液体脂質製剤中に可溶化タクロリムスをカプセル化し、また、コーティングミニカプセル4は液体脂質製剤中のゼラチンカプセル化可溶化タクロリムスであり、最初に12.%増量Eudragit(登録商標)RS30Dで、次いで25%増量Eudragit(登録商標)FS30Dでコーティングされている。個々の無コーティングニモジピンミニスフェア1、Surelease(登録商標)コーティングニモジピンミニスフェア2、無コーティングタクロリムスミニカプセル3、およびEudradit(登録商標)RS30D/Eudragit(登録商標)FS30Dコーティングタクロリムスミニカプセル4を混合し、充填して最終剤形(この場合は2キャップ硬ゼラチンカプセル5)を得る。
【0207】
24時間ニモジピン溶解データを表4に示し、溶解プロフィールを図4に図示する。24時間タクロリムス溶解データを表9に示し、図11に図示する。
【実施例1】
【0208】
ニモジピンQD1製剤
上記製造方法を用いて、ニモジピンQD1製剤(30mg)は、5mg無コーティング、6mg 15%wt増量、19mg 30%wt増量Sureleaseの混合物から製造した(硬化40℃x24hr)。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。
表1 - ニモジピンQD1製剤(30mg)の放出 - 5mg無コーティング、6mg 15%wt増量、19mg 30%wt増量Sureleaseの混合物(硬化40℃x24hr)。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。放出プロフィールを図1に示す。
【0209】
【表1】

【実施例2】
【0210】
ニモジピンBID1製剤
上記製造方法を用いて、ニモジピンBID 1製剤 (30mg)を、9mg無コーティング、21mg 15%wt増量Sureleaseの混合物から製造した(硬化40℃x24hr)。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。
表2 - ニモジピンBID 1製剤(30mg)の放出 - 9mg無コーティング、21mg 15%wt増量Sureleaseの混合物(硬化40℃x24hr)。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。放出プロフィールを図2に示す。
【0211】
【表2】

【実施例3】
【0212】
ニモジピンBID1製剤
上記製造方法を用いて、ニモジピンBID 1製剤 (30mg)を、9mg無コーティング、21mg 20%wt増量Sureleaseの混合物から製造する(硬化40℃x24hr)。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。
表3 - ニモジピンBID1製剤(30mg)の放出 - 9mg無コーティング、21mg 20%wt増量Sureleaseの混合物(硬化40℃x24hr)の混合物。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。放出プロフィールを図3に示す。
【0213】
【表3】

【実施例4】
【0214】
ニモジピンQD1製剤
上記製造方法を用いて、ニモジピンQD1製剤(30mg)を、14.9mg 無コーティング、35.6mg 7.5%wt増量Surelease(登録商標)、130.5mg 30%wt増量Surelease(登録商標)の混合物から製造した(硬化40℃x24hr)。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。個々の無コーティングミニスフェア1、低増量Surelease(登録商標)コーティングミニスフェア2、および高増量Surelease(登録商標)コーティングミニスフェア3を混合し、充填して最終剤形を得る(この場合は、図9に示す2キャップ硬ゼラチンカプセル4)。
表4 - ニモジピンQD製剤(180mg)の放出 - 14.9mg 無コーティング、35.6mg 7.5%wt増量Surelease(登録商標)、130.5mg 30%wt増量Surelease(登録商標)の混合物(硬化40℃x24hr)。溶解プロフィールは、得られたミニカプセルを水中の0.3%SDSに置いて得る(100rpm、HPLC-24hr)。放出プロフィールは図4に示す。
【0215】
【表4】

【実施例5】
【0216】
放出制御ニモジピンのヒトでの試験
被験製剤−実施例4の180mg ニモジピン含有単カプセルを健康男性ボランティアに投与した。結果を、24時間の6x30mg既知ニモジピン製剤−Nimotop(登録商標)投与と比較した。薬物動態試験は、平均20人の健康男性ボランティアのものを示し、血漿中濃度をng/mlで測定した。
【0217】
図8は、24時間の被験製剤(実施例4の180mgニモジピン)対6x30mg Nimotop(登録商標)の薬物動態血漿プロフィールを示す。薬物動態試験は、平均20人の健康男性ボランティアのものを示し、血漿中濃度をng/mlで測定した。
【0218】
この製剤プロフィールは、1日1回または1日2回投与に適している。
【実施例6】
【0219】
放出制御3層ニモジピンミニカプセル
適切な量のニモジピンをPEG400に加え、加熱し、ニモジピンが完全に溶解するまで撹拌する。次に、該溶液を3中心ノズルの中心ノズルから流出するよう処理し、加熱Gelucireを中間のノズルに通し、溶融ゼラチン/ソルビトールを外側のノズルに通した。3溶液を3中心ノズルにそれぞれ適切な流速および振動周波数で通す。得られる3層ミニカプセルを油中で冷却する。冷却ミニスフェアを回収し、遠心して残存した油を除去し、オーブンで一夜乾燥する。得られるミニカプセルをさらに6.5%または13.5%増量50:50 Eudragit(登録商標)RS/Eudragit(登録商標)RLで24時間放出プロフィールをもたらすようコーティングする。無コーティング3層ニモジピン24時間溶解データは表5に示し、関連する溶解プロフィールを図5に示す。ニモジピン3層製剤 6.5%増量50:50 Eudragit RS/RL 24時間溶解データを表6に示し、関連する溶解プロフィールを図7に示す。ニモジピン3層製剤13.5%増量50:50 Eudragit RS/RL 24時間溶解データを表7に示し、関連する溶解プロフィールを図7に示す。


表5 ニモジピン3層製剤無コーティング(30mg) - 水中0.3% SDS、100rpm、HPLC-24hr。放出プロフィールを図5に示す。
【0220】
【表5】

表6 ニモジピン3層製剤6.5%wt増量50:50Eudragit RS/RL (30mg) - 硬化40℃x24hr、水中0.3% SDS、100rpm、HPLC - 24hr。放出プロフィールを図6に示す。
【0221】
【表6】

表7 ニモジピン3層製剤13.5%wt増量50:50Eudragit RS/RL (30mg) - 硬化40℃x24hr、水中0.3% SDS、100rpm、HPLC - 24hr。放出プロフィールを図7に示す。
【0222】
【表7】

(実施例6)
【0223】
放出制御ニモジピン(バイオアベイラビリティを増すためにビタミンE添加)
適切な量の微粒化ニモジピン、ゼラチン、ソルビトール、およびビタミンEを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルをさらにSurelease(登録商標)でコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。


【実施例7】
【0224】
1日1回投与用タクロリムス
該コア製剤を以下のごとく製造した。タクロリムスを適切な量のエタノールに溶解した。溶解したら、該溶液をLabrafilとオリーブ油の適切な混合物と混合した。シェル溶液を以下のごとく製造した。適切な量のゼラチン、およびソルビトールを水に加え、溶液になるまで70℃に加熱した。コアに可溶化および透過性増進製剤中のタクロリムスを含む2層ミニカプセルをSpherex Laboを用いて製造した。さらに、該コア製剤は一定の持続放出を可能にする。

表8:1日1回投与用タクロリムス
【実施例8】
【0225】
実施例7の無コーティングミニカプセルからのタクロリムスの放出:図9の溶解プロフィールは、ミニカプセルからのタクロリムスの以下の放出を示す(総ミニカプセル含有量のパーセンテージで表す):1時間以内で55%以下;4時間以内で80%以下;12時間以内で90%以下;および24時間で100%に等しいかそれ以下。
【実施例9】
【0226】
12.5%増量Eudragit(登録商標)RS30D、次いで25%増量Eudragit(登録商標)FS30Dでコーティングした実施例7のミニカプセルからのタクロリムスの放出:図10の溶解プロフィールは、ミニカプセルからのタクロリムスの以下の放出を示す(総ミニカプセル含有量のパーセンテージで表す):1時間以内で10%以下;4時間以内で30%以下;12時間以内で75%以下;および24時間で100%に等しいかそれ以下。
【0227】
これは、1日1回投与用全身吸収製剤または回腸/結腸特異的製剤に適している。
【実施例10】
【0228】
無コーティングのもの30%(効力による)、および12.5%増量Eudragit(登録商標)RS30D、次いで25%増量Eudragit(登録商標)FS30Dでコーティングしたもの70%(効力による)を含む実施例7のミニカプセルの混合物からのタクロリムスの放出:図11の溶解プロフィールは、ミニカプセルからのタクロリムスの以下の放出を示す(総ミニカプセル含有量のパーセンテージで表す):1時間以内で20%以下;4時間以内で35%以下;12時間以内で65%以下;および24時間で100%に等しいかそれ以下。
【実施例11】
【0229】
15%増量Eudragit(登録商標)RS30Dでコーティングした実施例7のミニカプセルからのタクロリムスの放出:図12の溶解プロフィールは、ミニカプセルからのタクロリムスの以下の放出を示す(総ミニカプセル含有量のパーセンテージで表す):1時間以内で30%以下;4時間以内で50%以下;12時間以内で85%以下;および24時間で100%に等しいかそれ以下。
【実施例12】
【0230】
15%増量Eudragit(登録商標)RS30D、次いで25%増量Eudragit(登録商標)FS30Dでコーティングした実施例7のミニカプセルからのタクロリムスの放出:図13の溶解プロフィールは、ミニカプセルからのタクロリムスの以下の放出を示す(総ミニカプセル含有量のパーセンテージで表す):1時間以内で10%以下;4時間以内で30%以下;12時間以内で75%以下;および24時間で100%に等しいかそれ以下。これは、1日1回投与用全身吸収製剤または、より具体的には回腸/結腸特異的製剤に適している。
表9 タクロリムス2層製剤 (5mg タクロリムス):無コーティングミニカプセル:コーティングミニカプセルAPI比は3:7である。コーティングミニカプセルは、12.5%増量Eudragit(登録商標)RS30Dのアンダーコートと25%増量Eudradgit(登録商標)FS30Dのアウターコートを含む(40℃、24hrで硬化)。該製剤の溶解は、水中の0.3%SDS中、100rpm、HPLC-24hrで測定した。放出プロフィールを図11に示す。
【0231】
【表8】

【実施例13】
【0232】
比90:10、95:05、および50:50のEudragit(登録商標)RS、およびEudragit(登録商標)RLの混合物でコーティングした実施例7のミニカプセルからのタクロリムスの放出:図14の溶解プロフィールは、ミニカプセルからのタクロリムスの以下の放出を示す(総ミニカプセル含有量のパーセンテージで表す):1時間以内で20%以上50%以下;4時間以内で35%以上60%以下;12時間以内で65%以上90%以下;および24時間で90%以上。
【実施例14】
【0233】
1日1回投与用タクロリムス
該コア製剤を以下のごとく製造した。タクロリムスを適切な容量のGelcuire 33/01に加え、加熱し、次いで溶解するまで撹拌した。溶解したら、溶液を適切な容量のオリーブ油と混合した。
シェル溶液を以下のごとく製造した。適切な量のゼラチン、およびソルビトールを水に加え、溶液になるまで70℃に加熱した。コアに可溶性透過性増強製剤中のタクロリムスを含む2層ミニカプセルをSpherex Laboを用いて製造した。さらに、該コア製剤は本質的に持続放出である。

表10:1日1回投与用タクロリムス
【0234】
持続放出コーティングは、比95:5のEudragit(登録商標)RS:Eudragit(登録商標)RLを含む。該混合物は、さらにEudragit FS30Dでコーティングされた95:5 Eudragit(登録商標)RS:RLを含む。
【実施例15】
【0235】
併用放出制御ヒドララジン
ヒドララジンをオリーブ油、Gelucire 44/01、およびLabrafil 1944の適切な溶液に加え、加熱し、溶液になるまで撹拌し続けた。適切な量のゼラチンを加熱し、溶解したらヒドララジン溶液でホモゲナイズした。混合溶液を振動ノズルに通し、コアに可溶性透過性増強製剤中にヒドララジンを含む1層ミニカプセルを製造した。得られるミニカプセルを、治療効果を最大にする適切な放出制御プロフィールを可能とするようさらに23%増量Eudragit RS30Dでコーティングすることができる。

表11:ヒドララジンミニスフェア
表12 23%増量Eudragit(登録商標)RS30Dでコーティングしたヒドララジンミニスフェア製剤(実施例15から得た) - 水中0.3% SDS、100rpm、HPLC - 24hr。放出プロフィールを図15に示す。
【0236】
【表9】

表13 30%増量Eudragit(登録商標)RS30Dでコーティングしたヒドララジンミニスフェア製剤(実施例15から得た) - 水中0.3% SDS、100rpm、HPLC - 24hr。放出プロフィールを図16に示す。
【0237】
【表10】

【実施例16】
【0238】
併用放出制御ニモジピン/ヒドララジン
該コア製剤を以下のごとく製造した。ヒドララジンを適切な量のエタノールに溶解した。溶解したら、溶液をGelucireの適切な混合物と混合した。シェル溶液を以下のごとく製造した。適切な量のEudragit RS、Eudragit RL、微粒化ニモジピン、およびソルビトールを混合物し、溶解するまで120℃に加熱した。コアに可溶性透過性増強製剤中のヒドララジンを含み、シェルに微粒子ニモジピンを含む2層ミニカプセルを2中心ノズルを用いて製造した。得られるミニカプセルは、治療効果を最大にする同時または逐次放出で適切な放出制御プロフィールを可能にするようにさらにコーティングすることができよう。

【実施例17】
【0239】
放出制御併用ニモジピンおよびモルフィン硫酸塩
適切な量の微粒化ニモジピン、モルフィン硫酸塩、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルを、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物でさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

【実施例18】
【0240】
放出制御併用ニモジピンおよびコリンエステラーゼ阻害剤*
適切な量の微粒化ニモジピン、コリンエステラーゼ阻害剤、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルを、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物でさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

* コリンエステラーゼ阻害剤は、フペルジンA、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、またはリバスチグミンを含みうる。
【実施例19】
【0241】
放出制御併用ニモジピンおよびGABA類似体*
適切な量の微粒化ニモジピン、GABA類似体、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、該溶液を適切なノズル形成、流速、および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルをEudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物でさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

* GABA類似体は、ピラセタムまたはメメンダを含みうる。
【実施例20】
【0242】
放出制御併用ニモジピンおよびプロペントフィリン
適切な量の微粒化ニモジピン、プロペントフィリン(キサンチン)、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルを、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物でさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

【実施例21】
【0243】
放出制御併用ニモジピンおよびアンギオテンシンIIレセプター阻害剤*
適切な量の微粒化ニモジピン、ATIIRI、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルを、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物を用いてさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

* アンギオテンシンIIレセプター阻害剤にはロサルタンまたはカンデサルタンが含まれる。
【実施例22】
【0244】
放出制御併用ニモジピンおよび抗凝固剤
適切な量の微粒化ニモジピン、抗凝固剤、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルをEudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物を用いてさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

【実施例23】
【0245】
放出制御併用ニモジピンおよび酸化窒素(NO)ドナー*
適切な量の微粒化ニモジピン、NOドナー、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルをEudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物を用いてさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

NOドナーには、限定されるものではないが、ナトリウム1-(ピロリジン-1-イル)ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオラート、ジナトリウム1-[(2-カルボキシラト)ピロリジン-1-イル]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオラート、ナトリウム1-(ピペラジン-1-イル)ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオラート、ナトリウム(Z)-1-(N,N-ジエチルアミノ)ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオラート、L-アルギニン、ニトログリセリン、(Z)-1-[N-(2-アミノエチル)-N-(2-アンモニオエチル)アミニオ]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオラート(DETA/NONOアート)、およびNOドナー結合ニモジピンが含まれる。
【実施例24】
【0246】
放出制御併用ニモジピンおよびスタチン*
適切な量の微粒化ニモジピン、スタチン、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルをEudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物を用いてさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

* スタチンには、シムバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびメバスタチンが含まれる。
【実施例25】
【0247】
放出制御併用ニモジピンおよびα-アミノアミド*
適切な量の微粒化ニモジピン、α-アミノアミド、フマル酸、ゼラチン、およびソルビトールを水に加え、次いで80℃に加熱し、均一な溶液になるまで撹拌し続ける。次に、溶液を適切な流速および振動周波数で固体のミニスフェアに加工する。得られるミニスフェアを油中で冷却する。冷却したミニスフェアを回収し、遠心して残存する油を除去し、次いでオーブン中で一夜乾燥する。得られるミニカプセルをEudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、およびフマル酸の適切な混合物を用いてさらにコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

* α-アミノアミドにはNW-1029 (Newron)が含まれる。
【実施例26】
【0248】
併用放出制御ニモジピン/Yizhi
該コア製剤を以下のごとく製造した。Yizhi油を調製し、次いで65℃に加熱した。シェル溶液を以下のごとく製造した。適切な量のゼラチン、ニモジピン、およびソルビトールを水に加え、溶解するまで70℃に加熱した。コアに可溶化透過性増進製剤中のタクロリムスを含む2層ミニカプセルをSpherex Laboを用いて製造した。さらに、該コア製剤は一定の持続放出を可能にする。得られるミニカプセルをさらにSurelease(登録商標)でコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

【実施例27】
【0249】
併用放出制御ニモジピン/エッセンシャルオイル*
該コア製剤を以下のごとく製造した。エッセンシャルオイルを調製し、次いで65℃に加熱した。シェル溶液を以下のごとく製造した。適切な量のゼラチン、ニモジピン、およびソルビトールを水に加え、溶解するまで70℃に加熱した。コアに可溶化透過性増進製剤中のタクロリムスを含む2層ミニカプセルをSpherex Laboを用いて製造した。さらに、該コア製剤は一定の持続放出を可能にする。得られるミニカプセルをさらにSurelease(登録商標)でコーティングし、12時間または24時間放出プロフィールを得る。

* エッセンシャルオイルには、限定されるものではないがEPAおよびDHA(種々の純度)が含まれる。
【実施例28】
【0250】
併用放出制御ニモジピン/ヒドララジン
ヒドララジンをオリーブ油、Gelucire 44/01、およびLabrafil 1944の適切な溶液に加え、加熱し、溶液になるまで撹拌し続けた。適切な量のゼラチンを加熱し、溶解したらヒドララジン溶液でホモゲナイズした。混合物を振動ノズルに通して、コアが可溶化浸透性増大製剤中にヒドララジンを含む、1層ミニカプセルを製造した。得られるミニカプセルを、治療効果を最大にする適切な放出制御プロフィールを可能にするため、さらに23%増量Eudragit RS30Dでコーティングすることができよう。

【0251】
本発明は前記の態様に限定されず、細部にわたり変化しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニモジピンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェア、および
タクロリムスを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む放出調節製剤。
【請求項2】
用いる環境に暴露すると実質的にすべてのニモジピンおよび実質的にすべてのタクロリムスを24時間以内に放出する請求項1に記載の放出調節製剤。
【請求項3】
ニモジピンを含むミニカプセルまたはミニスフェアが、即時放出のためのニモジピンを含む第1ポピュレーションおよび放出制御のためのニモジピンを含む第2ポピュレーションを含む請求項1または2に記載の放出調節製剤。
【請求項4】
該第1ポピュレーションが即時放出のための固体の形のニモジピンを含むミニスフェアを含む請求項3に記載の放出調節製剤。
【請求項5】
該第2ポピュレーションが、ニモジピンを含むミニカプセルを含み、該カプセルが放出制御コーティングを有する請求項3または4に記載の放出調節製剤。
【請求項6】
該第2ポピュレーションが、0〜12時間にわたりニモジピンを放出するための第1サブポピュレーション、および12〜24時間にわたりニモジピンを放出するための第2サブポピュレーションを含む請求項5に記載の放出調節製剤。
【請求項7】
タクロリムスを含むミニカプセルまたはミニスフェアが、即時放出用のタクロリムス含有第1ポピュレーションおよび放出制御用のタクロリムス含有第2ポピュレーションを含む請求項1〜6のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項8】
第1ポピュレーションがミニカプセル内に封入された液体の形のタクロリムスを含む請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項9】
タクロリムスを含むミニカプセル、放出制御コーティングを有するカプセルを含む請求項7または8に記載の放出調節製剤。
【請求項10】
第2ポピュレーションが0〜24時間にわたりタクロリムスを放出するためのサブポピュレーションを含む請求項9に記載の放出調節製剤。
【請求項11】
使用する環境に暴露すると40%以上のニモジピンおよび40%以上のタクロリムスが12時間以内に放出される請求項1〜10のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項12】
使用する環境に暴露すると15%以下のタクロリムスおよび15%以下のニモジピンが1時間以内に放出される請求項1〜11のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項13】
使用する環境に暴露すると30%以下のニモジピンおよび30%以下のタクロリムスが4時間以内に放出される請求項1〜12のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項14】
該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含む硬ゼラチンカプセルを含む請求項1〜13のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項15】
該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含むサシェーを含む請求項1〜13のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項16】
該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含むペレットを含む請求項1〜13のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項17】
該ニモジピンミニカプセルまたはミニスフェア、および該タクロリムスミニカプセルまたはミニスフェアを含む経鼻胃栄養製剤を含む請求項1〜13のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項18】
カルシウムチャンネルブロッカー、例えばニモジピンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェア、および/または
カルシニューリン阻害剤、例えばタクロリムスを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアことを含む放出調節製剤。
【請求項19】
くも膜下出血を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項20】
卒中を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項21】
一過性脳虚血を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項22】
限局性脳虚血を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項23】
パーキンソン病を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項24】
下肢静止不能症候群を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項25】
アルツハイマー病を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項26】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項27】
血管性認知症を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項28】
高純度のエイコサペンタエン酸 (EPA)を含む請求項1〜27のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項29】
高純度のドコサヘキサエン酸(DHA)を含む請求項1〜27のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項30】
ハンチントン病を治療/予防するのに用いる請求項1〜18のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項31】
AChEI、例えばフペルジンを含む請求項1〜27のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項32】
サフィナミドを含む請求項1〜27のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項33】
パーキンソン病または下肢静止不能症候群に用いる請求項32に記載の放出調節製剤。
【請求項34】
ドーパミン類似体またはアゴニスト、例えばレボドパ、カベルゴリン、ブロモクリプチン、アポモルフィン、ペルゴリドメシラート、プラミペキソール、またはロピニロールを含む請求項1〜27のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項35】
パーキンソン病または下肢静止不能症候群に用いる請求項34に記載の放出調節製剤。
【請求項36】
ミニカプセルコアが、脂質ベースの液体製剤中のタクロリムスを含み、封入物質が微粒化ニモジピンを含む請求項1〜35のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項37】
ヒドロキシラーゼ阻害剤を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項38】
ヒドロキシラーゼ阻害剤がヒドララジンである請求項37に記載の放出調節製剤。
【請求項39】
酸化窒素ドナーと組み合わされる請求項38に記載の放出調節製剤。
【請求項40】
酸化窒素ドナーがニトログリセリンである請求項39に記載の放出調節製剤。
【請求項41】
抗凝固剤を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項42】
抗凝固剤がアスピリン、クロピドグラル、またはチクロピジンのいずれか1つまたはそれ以上から選ばれる請求項41に記載の放出調節製剤。
【請求項43】
アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニストを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項44】
アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニストがロサルタンである請求項43に記載の放出調節製剤。
【請求項45】
向知性薬を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項46】
向知性薬がピラセタムである請求項45に記載の放出調節製剤。
【請求項47】
NMDAレセプターアンタゴニストを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項48】
NMDAレセプターアンタゴニストがメマンチン塩酸塩である請求項47に記載の放出調節製剤。
【請求項49】
キサンチンを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項50】
キサンチンがプロペントフィリンまたはテオフィリンである請求項49に記載の放出調節製剤。
【請求項51】
コリンエステラーゼ阻害剤を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項52】
コリンエステラーゼ阻害剤がフペルジンA、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、またはリバスチグミンのいずれかである請求項51に記載の放出調節製剤。
【請求項53】
オピエートを含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項54】
オピエートが、モルフィン、モルフィン硫酸塩、オキシコドン、ヒドロコドン、フェンタニル、またはトラマドールのいずれかである請求項53に記載の放出調節製剤。
【請求項55】
片頭痛または群発頭痛の治療または予防薬を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項56】
片頭痛の治療または予防薬が、アスピリン、パラセタモール、ナプロキセン、またはNOドナー結合ナプロキセン、イブプロフェンもしくはNOドナー結合イブプロフェン、スマトリプタンもしくはゾルミトリプタンのいずれかまたはあらゆる組み合わせである請求項55に記載の放出調節製剤。
【請求項57】
鬱病の治療または予防薬を含有する複数のミニカプセルまたはミニスフェアを含む請求項18に記載の放出調節製剤。
【請求項58】
片頭痛の治療または予防薬が、リチウム、バルプロエート、オランザピン、カルバマザピン、ラモトリジン、またはエイコサペンタエン酸 (EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA) オメガ-3-脂肪酸のいずれかまたはあらゆる組み合わせである請求項57に記載の放出調節製剤。
【請求項59】
硬ゼラチンカプセル中に充填された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項60】
サシェー中に充填された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項61】
広口径シリンジまたはチューブ送達に適合したユニット内に含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項62】
スプリンクルの形の少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項63】
少なくとも1のミニカプセルポピュレーションが油中に潤滑剤として懸濁している請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項64】
直腸または膣内投与用の坐剤として製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項65】
バッカル送達用に製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項66】
生体接着性ポリマーストリップ中に含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項65記載の放出調節製剤。
【請求項67】
舌下送達用に製剤化された少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項68】
少なくとも1のミニカプセルポピュレーションが生体接着性ポリマーストリップ中に含まれる請求項67記載の放出調節製剤。
【請求項69】
スプリンクル形で含まれる少なくとも1のミニカプセルポピュレーションを含む請求項1〜58のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項70】
該ミニカプセルが崩壊剤を含む請求項1〜69のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項71】
該ミニカプセルが粘膜接着剤または生体接着剤を含む請求項1〜70のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項72】
該ミニカプセルが透過性促進剤を含む請求項1〜71のいずれかに記載の放出調節製剤。
【請求項73】
該ミニカプセルが味遮蔽物を含む請求項1〜72のいずれかに記載の放出調節製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−526054(P2010−526054A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504995(P2010−504995)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/IE2008/000053
【国際公開番号】WO2008/132712
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509276490)シグモイド・ファーマ・リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Sigmoid Pharma Limited
【Fターム(参考)】