説明

侵入物体検出装置

【課題】監視領域内に存在する植栽の前を移動する侵入物体を検出するとともに、植栽の揺れによる誤検出を抑制できる侵入物体検出装置を提供する。
【解決手段】侵入物体検出装置100は、監視領域を撮影した監視画像を取得する撮像部10と、監視領域に侵入物体が存在しない状況において監視領域を撮影した画像である背景画像と、植栽が撮像されている画像上の領域を示す植栽領域を記憶する記憶部20と、監視画像と背景画像の差分によって、輝度値が変化した変化領域を抽出する変化領域抽出手段31と、変化領域について、変化領域が植栽領域と重なっている場合に重なっていない場合より侵入物体らしさが低くなる侵入物体らしさの度合いを表す侵入物体属性値を算出し、侵入物体属性値に基づいて変化領域が侵入物体によるものか否かを判定する判定手段36を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域を撮像した画像から侵入物体を検出する侵入物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域を撮影した入力画像を解析して監視領域へ侵入した侵入物体を検出する侵入物体検出装置が広く使用されている。例えば侵入物体として侵入者を検出する場合、このような侵入物体検出装置は、検出対象となる侵入者が存在しない状況において監視領域を撮影した背景画像を保持し、入力画像と背景画像の間で対応する画素毎に輝度値の差を求める。そして侵入物体検出装置は、その差が所定の閾値以上となる画素の集合領域(以下、変化領域と称する)について、大きさ、縦横比、輝度特徴などの特徴量を用いて、人らしさの度合いを表す属性値を求め、その属性値が所定の範囲内であるか否かを判断することにより、侵入者の有無を検出する。
【0003】
しかしながら、侵入物体検出装置を用いて屋外を監視するとき、植栽のように風等によって形状が変化する物体が監視領域に含まれる場合がある。このような場合、植栽が風によって揺れると、上記の属性値が侵入者を検出するための所定範囲内に入ってしまい、侵入物体検出装置が入力画像中の植栽に起因した変化領域を侵入者によるものと誤検出し、遠隔にある警備センタへ侵入者を検出したことを通報する(すなわち、誤報を発する)問題があった。
【0004】
例えば、上記の所定範囲を侵入者と判定しにくいよう狭く設定しておくことにより、このような誤検出を抑制する方法も考えられる。しかしながら、単に上記の所定範囲を侵入者と判定しにくいよう狭く設定するのみでは、侵入者の検出漏れが発生する危険性が高くなってしまうことがある。このため、侵入者の検出に適した範囲を設定することは非常に困難であり、上記の誤検出を適切に抑制することが困難な場合があった。
【0005】
これに対して、特許文献1には、植栽に起因した誤報を防止するための技術が開示されている。特許文献1に開示された監視用画像処理装置は、植栽の揺れ等によって作り出された領域(テンポラルエッジブロック)を抽出する。そして監視用画像処理装置は、抽出した領域と変化領域が所定量以上重なっている場合、その変化領域は検出対象でないと判定して発報しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−181321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、侵入者が植栽の前を移動した場合に、侵入者に起因した変化領域がテンポラルエッジブロックに重なり、その侵入者を検出対象でないと判定する。つまり、侵入者の検出漏れが生じてしまう可能性が高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、監視領域内に存在する植栽の前を移動する侵入物体を検出するとともに、植栽の揺れによる誤検出を抑制できる侵入物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための本発明は、監視領域内に侵入した侵入物体を検出する侵入物体検出装置を提供する。かかる侵入物体検出装置は、監視領域を撮影した監視画像を取得する撮像部と、監視領域に侵入物体が存在しない状況において監視領域を撮影した画像である背景画像と、植栽が撮像されている画像上の領域を示す植栽領域を記憶する記憶部と、監視画像と背景画像の差分によって、輝度値が変化した変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、変化領域について、変化領域が植栽領域と重なっている場合に重なっていない場合より侵入物体らしさが低くなる侵入物体らしさの度合いを表す侵入物体属性値を算出し、侵入物体属性値に基づいて変化領域が侵入物体によるものか否かを判定する判定手段と、を有する。
【0010】
また、本発明に係る侵入物体検出装置において、判定手段は、変化領域が植栽領域と重なっていない場合、侵入物体の特徴である第1の特徴量に基づいて侵入物体属性値を算出し、変化領域が植栽領域と重なっている場合、第1の特徴量に加え侵入物体と植栽とで顕著に異なる第1の特徴量以外の特徴である第2の特徴量に基づいて侵入物体属性値を算出することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る侵入物体検出装置において、さらに、撮像部により監視画像が取得される度に、最新の監視画像から抽出された最新の変化領域と、直前に取得された監視画像から抽出された直前の変化領域のうち、最新の変化領域に写っている物体と同一の物体が写っている直前の変化領域とを対応付ける追跡処理手段を有し、判定手段は、最新の変化領域が植栽領域と重なっておらず、かつ最新の変化領域に対応付けられた直前又は所定数前までの監視画像での変化領域が植栽領域と重なっていなかった場合、第1の処理により侵入物体属性値を算出し、最新の変化領域が植栽領域と重なっておらず、かつ最新の変化領域に対応付けられた直前又は所定数前までの監視画像での変化領域が植栽領域と重なっていた場合、第1の処理より侵入物体属性値を侵入物体らしくない値とする第2の処理により侵入物体属性値を算出することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る侵入物体検出装置において、判定手段は、変化領域に占める植栽領域と重なった領域の割合が大きいほど侵入物体属性値を侵入物体らしくない値とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る侵入物体検出装置は、監視領域内に存在する植栽の前を移動する侵入物体を検出できるとともに、植栽の揺れによる誤検出を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である侵入物体検出装置の概略構成図である。
【図2】入力画像と背景画像と変化領域と植栽領域との関係を表す図である。
【図3】(a)〜(d)は変化領域の動きと植栽領域の関係を表す図である。
【図4】(a)は侵入物体の大きさT1を正規化する関数F1の一例を示す図であり、(b)は縦横比T2を正規化する関数F2の一例を示す図であり、(c)はエッジ変化率T3を正規化する関数F3の一例を示す図であり、(d)は移動量T4を正規化する関数F4の一例を示す図である。
【図5】(a)は侵入物体の大きさT1を正規化する関数F1'の一例を示す図であり、(b)は縦横比T2を正規化する関数F2'の一例を示す図であり、(c)はエッジ変化率T3を正規化する関数F3'の一例を示す図であり、(d)は移動量T4を正規化する関数F4'の一例を示す図であり、(e)は移動直進度T5を正規化する関数F5の一例を示す図であり、(d)は形状安定度T6を正規化する関数F6の一例を示す図である。
【図6】画像処理部による侵入物体検出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態である侵入物体検出装置について図を参照しつつ説明する。
この侵入物体検出装置は、監視領域を撮影した監視画像から、監視領域内に侵入した侵入物体を検出するものである。特に、この侵入物体検出装置は、監視画像の輝度値が変化した領域について、侵入物体の特徴量を用いて侵入物体らしさの度合いを算出し、算出した侵入物体らしさの度合いに基づいて侵入物体の有無を判定する。そして侵入物体検出装置は、輝度値が変化した領域が植栽の存在する領域と重なる場合、その変化は植栽の揺れによる可能性が高いと判定して、その領域については、植栽の存在する領域と重ならない場合よりも侵入物体と判定しにくくする。これにより侵入物体検出装置は、植栽の前を移動する侵入物体を検出するとともに、植栽の揺れを侵入物体と誤検出することを抑制させる。
【0016】
なお、侵入物体検出装置が検出する侵入物体は、人、車などどのようなものでもよいが、本実施形態では、侵入物体として人を検出する場合を例に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である侵入物体検出装置100の概略構成を示す図である。図1に示すように、侵入物体検出装置100は、撮像部10と、記憶部20と、画像処理部30と、出力部40を有する。
【0018】
撮像部10は、CCD素子またはC−MOS素子など、可視光または近赤外光に感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系と、2次元検出器から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換する電気回路などで構成される。
撮像部10は、一定の時間間隔(例えば1/5秒)ごとに撮影する。そして撮像部10は、監視領域を撮影した監視画像を、例えば、横320画素×縦240画素を持ち、各画素が0〜255の輝度値を有するデジタル画像データとして生成する。そして撮像部10は、生成したデジタル画像データ(以降、入力画像と称する)を画像処理部30へ送信する。
【0019】
記憶部20は、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性半導体メモリ、揮発性半導体メモリ、磁気ディスク(HDD)、またはCD−ROM、DVD−RAMなどの光ディスクドライブおよびその記録媒体で構成される。そして記憶部20は、監視領域に侵入物体が存在しないときに監視領域を撮影した画像である背景画像と、植栽が撮像されている画像上の領域を示す植栽領域を記憶する。さらに記憶部20は、画像処理部30上で実行されるプログラム、そのプログラムにより使用される各種設定パラメータ、画像処理の結果あるいは途中結果として得られた計算値または画像なども記憶する。そして記憶部20は、画像処理部30からの制御信号にしたがって、上記の計算値または画像などを記憶し、あるいは記憶している各種の情報を画像処理部30へ出力する。
【0020】
画像処理部30は、組み込み型のマイクロプロセッサユニットとその周辺回路を有し、侵入物体検出装置100全体を制御する。また画像処理部30は、撮像部10から受け取った入力画像から、監視領域内に侵入した侵入物体を検出する。そのために、画像処理部30は、変化領域抽出手段31と、追跡処理手段32と、特徴量算出手段33と、重なり判定手段34と、離脱判定手段35と、判定手段36と、背景画像更新手段37と、植栽領域更新手段38を有する。画像処理部30が有するこれらの各部は、例えば、マイクロプロセッサユニット上で動作するプログラムの機能モジュールとして実装される。
【0021】
変化領域抽出手段31は、監視領域内を移動する物体(以下、移動物体と称する)が最新の入力画像に写っている可能性のある領域を抽出する。そのために、変化領域抽出手段31は、最新の入力画像と背景画像との間で、対応画素間の輝度差を求め、各画素の画素値がその輝度差の絶対値で表される差分画像を作成する。そして変化領域抽出手段31は、差分画像の各画素について、その画素値が所定の閾値Th1以上となる画素を変動画素とし、閾値Th1未満となる画素を背景画素とするように2値化した差分2値化画像を作成する。例えば、閾値Th1は、差分画像の各画素値の平均値とすることができる。
【0022】
さらに変化領域抽出手段31は、作成した差分2値化画像について、公知のラベリング手法などを用いることにより、変動画素同士が一つに連結された領域を一つの変化領域として抽出する(以降、差分2値化画像の変化領域に対応する、入力画像の領域と背景画像の領域も変化領域と称する)。なお、同時に抽出される変化領域の数は一つに限られず、複数の変化領域が抽出されてもよい。またラベリング処理は、変動画素同士が縦、横方向に連結された領域を一つの変化領域として抽出する4近傍連結で行ってもよいし、縦、横、斜め方向に連結された領域を一つの変化領域として抽出する8近傍連結で行ってもよい。
【0023】
また変化領域抽出手段31は、近接する変化領域を統合した場合の矩形幅及び高さが現実の人物の幅及び高さに相当する範囲内である場合、その近接する変化領域を一つの変化領域に統合してもよい。または変化領域抽出手段31は、近接する変化領域間の画像上の横方向と縦方向のそれぞれの距離が一つの物体であると判断できる長さである場合に、その近接する変化領域を一つの変化領域に統合してもよい。
【0024】
変化領域抽出手段31は、抽出した変化領域毎にラベル番号を付し、差分2値化画像と同サイズであり、画素値を対応する変化領域のラベル番号とするラベル画像を作成する。そして変化領域抽出手段31は、作成したラベル画像を記憶部20に格納する。
【0025】
追跡処理手段32は、撮像部10により連続して取得された複数フレームの入力画像から、それぞれ抽出された変化領域について、公知のトラッキング処理を利用して、同一の移動物体が写っているものとして対応付けられる変化領域を検出する。
追跡処理手段32は、記憶部20に格納されたラベル画像から変化領域についての情報を取得する。そして追跡処理手段32は、最新の入力画像(以降、現フレームと称する)から抽出された変化領域と、その変化領域に写っている移動物体と同一の移動物体が写っている、1つ前の入力画像(以降、前フレームと称する)から抽出された変化領域とを対応付ける。追跡処理手段32は、前フレームの変化領域と対応付けられた現フレームの変化領域を、その対応付けられた前フレームの変化領域、並びにその前フレームの変化領域が対応付けられていた過去のフレームの変化領域と対応付けて記憶部20に記憶する。
【0026】
前フレームの変化領域と対応付けることができなかった変化領域は、新規の移動物体が写っているものとされ、新たに追跡処理の対象となる。また現フレームの変化領域と対応付けることができなかった過去のフレームの変化領域は、以降の追跡処理の対象から除外される。
【0027】
例えば追跡処理手段32は、追跡処理の対象となる、同一の移動物体が写っている変化領域毎に、前フレームの変化領域と、その変化領域に対応する前々フレームの変化領域の重心位置の差を計算することにより、移動物体の画像上の進行方向及び移動速度を決定する。そして追跡処理手段32は、その進行方向及び移動速度から現フレームでその移動物体が写っている位置を推定し、推定した位置が現フレームの着目する変化領域の重心位置に最も近い変化領域をその着目変化領域に写っている移動物体と同一の移動物体が写っている変化領域とする。あるいは追跡処理手段32は、追跡処理の対象となる、同一の移動物体が写っている変化領域毎に、前フレームまでの変化領域の大きさの平均値を算出し、算出した平均値が現フレームの着目変化領域の大きさに最も近い変化領域をその着目変化領域に写っている移動物体と同一の移動物体が写っている変化領域としてもよい。あるいは追跡処理手段32は、追跡処理の対象となる、同一の移動物体が写っている変化領域毎に、前フレームの変化領域と、現フレームの着目変化領域との相関を求め、最も相関が高い変化領域をその着目変化領域に写っている移動物体と同一の移動物体が写っている変化領域としてもよい。
【0028】
特徴量算出手段33は、記憶部20に格納されたラベル画像と各変化領域の対応付けに関する情報を取得し、変化領域毎に、その変化領域における侵入物体の特徴を表す特徴量を算出する。そして特徴量算出手段33は、算出した特徴量を記憶部20に格納する。
【0029】
図2は、入力画像と背景画像と変化領域と植栽領域の関係の一例を表す図である。図2において、画像200は入力画像を示す。入力画像200には、植栽201、202、203と、人204、205が撮像されている。また画像210は背景画像を示す。背景画像210には、それぞれ植栽201、202、203と同じ植栽であり、過去に撮像された植栽211、212、213が写っている。
また画像220は、入力画像200と背景画像210から抽出された変化領域を示す。画像220では、人204、205の移動による変化領域224、225が抽出されるとともに、植栽202、203の揺れによる変化領域222、223も抽出されている。
また画像230は、記憶部20に記憶された植栽領域を表す。画像230では、植栽201、202、203に対応する植栽領域として、それぞれ植栽領域231、232、233が示されている。
【0030】
画像220に示すように、監視画像を解析して侵入物体を検出する侵入物体検出装置は、検出対象である人だけでなく風等によって揺れた植栽も変化領域として抽出する場合がある。画像220、230において、植栽203の揺れによる変化領域223は、植栽領域233と重なっている。そのため、植栽領域と重なる変化領域を検出対象外とする従来技術であっても、植栽203について侵入者と誤検出することを防止できる。しかし、その場合、植栽201の前を移動する人204による変化領域224は、植栽領域231と重なっているため、人204について検出できないということになる。また植栽202の揺れによる変化領域222は、植栽領域232と重なっていないため、植栽領域と重なる変化領域を検出対象外としても、植栽202について侵入者と誤検出する場合がある。
そこで、本実施形態の特徴量算出手段33は、変化領域抽出手段31によって抽出された各変化領域について人によるものと植栽によるものを区別するために、侵入物体の特徴量を算出する。
【0031】
特徴量算出手段33は、侵入物体の特徴量として、大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3、移動量T4を算出する。特徴量T1〜T4は、変化領域が侵入物体らしいか否かを判定するための特徴量である。
さらに特徴量算出手段33は、侵入物体の特徴量として、移動直進度T5、形状安定度T6を算出する。特徴量T5〜T6は、侵入物体と植栽とを区別するための特徴量である。
さらに特徴量算出手段33は、侵入物体の特徴量として、植栽領域の重なり率T7、植栽領域の重なり回数T8を算出する。特徴量T7〜T8は、変化領域と植栽領域の位置関係に基づく特徴量である。
【0032】
大きさT1は、移動物体の大きさである。一般に、画像上では、撮像部10に近い位置に存在する(画像上では下方に写る)移動物体は大きく写り、撮像部10から遠い位置に存在する(画像上では上方に写る)移動物体は小さく写る。そこで、侵入物体検出装置100は、例えば、予め撮像部10からの所定距離毎に移動物体を撮像し、撮像された移動物体の画像上の画素数と実際の大きさの関係をその移動物体の画像上の下端位置(水平ライン位置)毎に求めておく。そして特徴量算出手段33は、変化領域に含まれる画素数を算出し、算出した画素数を変化領域の下端位置(水平ライン位置)に応じて実際の大きさに変換した値を大きさT1とする。
【0033】
縦横比T2は、移動物体の縦横比である。特徴量算出手段33は、変化領域の外接矩形の幅と高さの比率により移動物体の縦横比を算出する。縦横比T2は、移動物体の形状的特徴を表すものである。
【0034】
エッジ変化率T3は、入力画像の変化領域において背景画像と比較したエッジの変化率であり、変化領域内の変動が侵入物体によるものか、または光または影によるものかを判定するための指標となる。変化領域内の変動が光または影によるものである場合、その変化領域内のテクスチャは変化しないため、エッジの分布はおおよそ変化しない。一方、変化領域内の変動が侵入物体によるものである場合、その変化領域において背景画像には監視領域の背景のテクスチャが表され、入力画像には侵入物体のテクスチャが表されるため、エッジの分布が大きく変化する。そこで、特徴量算出手段33は、入力画像と背景画像に対して、sobelフィルタまたはprewittフィルタなどのエッジ検出フィルタを用いた近傍画素間演算を実行する。そして特徴量算出手段33は、近傍画素間演算の結果得られた差分値の絶対値であるエッジ強度が所定の閾値よりも大きい画素をエッジ画素とする。なお、この閾値は、例えば、近傍画素間演算を実行した画像の各画素について得られた差分絶対値の平均値とすることができる。そして特徴量算出手段33は、例えば次式により、エッジ変化率T3を算出する。
T3=(入力画像と背景画像の変化領域における対応する画素のうちエッジ画素が変化した数)/(変化領域内の全画素数) (1)
つまり、式(1)の分子は、背景画像ではエッジ画素でなく、入力画像の対応する画素ではエッジ画素である画素数と、背景画像ではエッジ画素であり、入力画像の対応する画素ではエッジ画素でない画素数の和である。これにより特徴量算出手段33は、侵入物体の移動によって背景画像に存在しなかったエッジが入力画像に出現した場合だけでなく、背景画像に存在していたエッジが入力画像で消滅した場合もエッジ変化率T3を大きくすることができる。
【0035】
移動量T4は、同一の移動物体が写っている変化領域が最初に出現した場所から移動した距離である。変化領域が侵入物体によるものである場合、監視領域に侵入した侵入物体は目的に向かって移動する可能性が高い。一方、変化領域が光または影等によるものである場合、その変化領域は光や影が、その場でゆらゆらと揺れることによって発生しているため、長距離にわたって移動するように変化が現れる可能性は低い。そこで、特徴量算出手段33は、同一の移動物体が写っている変化領域のうち最初に出現した変化領域の重心位置と現フレームの変化領域の重心位置の間の距離により移動量を求め、侵入物体を判定するための特徴量として用いる。
【0036】
図3(a)〜(d)に、変化領域の動きと植栽領域の関係を説明するための図を示す。
図3(a)において、画像300は、図2に示した変化領域224の動きと植栽領域231との関係を表している。変化領域301は入力画像200の2フレーム前に抽出された人204による変化領域であり、変化領域302は入力画像200の1フレーム前に抽出された人204による変化領域である。
図3(b)において、画像310は、図2に示した変化領域222の動きと植栽領域232との関係を表している。変化領域311は入力画像200の2フレーム前に抽出された植栽202による変化領域であり、変化領域312は入力画像200の1フレーム前に抽出された植栽202による変化領域である。
図3(c)において、画像320は、図2に示した変化領域223の動きと植栽領域233との関係を表している。変化領域321は入力画像200の2フレーム前に抽出された植栽203による変化領域であり、変化領域322は入力画像200の1フレーム前に抽出された植栽203による変化領域である。
図3(d)において、画像330は、図2に示した変化領域225の動きを表している。変化領域331は入力画像200の2フレーム前に抽出された人205による変化領域であり、変化領域332は入力画像200の1フレーム前に抽出された人205による変化領域である。
【0037】
図3(a)、(d)に示すように、変化領域が人によるものである場合、監視領域に侵入した人は目的に向かって直線的に移動する可能性が高く、変化領域の移動方向(矢印の方向)は変化しない傾向にある。一方、図3(b)、(c)に示すように、変化領域が植栽によるものである場合、その変化領域は植栽の揺れ等により発生しており、移動方向は大きく変化する傾向にある。そこで、特徴量算出手段33は、侵入物体と植栽とを区別する特徴量として、変化領域が直線的に移動しているか否かを判定するための指標である移動直進度T5を算出する。
【0038】
特徴量算出手段33は、例えば同一の移動物体が写っている、最近3フレームの変化領域の情報を用いて、次式により、移動直進度T5を算出し、侵入物体と植栽とを区別するための特徴量として用いる。
T5=(X1×X2+Y1×Y2)/(D1×D2) (2)
ただし、D1は、現フレームの変化領域の重心位置(Xt,Yt)(ただし、Xt、Ytは、それぞれ画像データ中の画素の水平座標、垂直座標を表す。以下同じ)と前フレームの変化領域の重心位置(Xt-1,Yt-1)の間の距離であり、D2は、前フレームの変化領域の重心位置(Xt-1,Yt-1)と前々フレームの変化領域の重心位置(Xt-2,Yt-2)の間の距離である。またX1は、前フレームの変化領域の重心位置から現フレームの変化領域の重心位置へのベクトルの水平成分であり、X2は、前々フレームの変化領域の重心位置から前フレームの変化領域の重心位置へのベクトルの水平成分であり、Y1は、前フレームの変化領域の重心位置から現フレームの変化領域の重心位置へのベクトルの垂直成分であり、Y2は、前々フレームの変化領域の重心位置から前フレームの変化領域の重心位置へのベクトルの垂直成分であり、それぞれ次式で表される。
X1=Xt−Xt-1 (3)
X2=Xt-1−Xt-2 (4)
Y1=Yt−Yt-1 (5)
Y2=Yt-1−Yt-2 (6)
つまり、式(2)の分子は、前々フレームの変化領域の重心位置から前フレームの変化領域の重心位置へのベクトルと前フレームの変化領域の重心位置から現フレームの変化領域の重心位置へのベクトルの内積を表しており、移動直進度T5は、2つのベクトルの方向が同じ(0°)場合1となり、離れるほど小さくなり、逆(180°)の場合0となる。すなわち移動直進度T5は、対応する各変化領域の重心位置の移動方向の同一度合いを表している。
【0039】
なお、移動物体が植栽である場合でも、3フレームの間、その移動物体が写っている変化領域が同じ方向に移動し、移動直進度T5が高くなることもあり得る。そこで、特徴量算出手段33は、所定期間内に取得された複数のフレームに対して式(2)によって算出された値の平均値を移動直進度T5としてもよい。その場合、所定期間は、侵入物体検出装置100が設置される環境や人を検出する目的などに応じて適宜最適化すればよい。
【0040】
また、図3(b)、(c)に示すように、変化領域が植栽によるものである場合、その変化領域は植栽が揺れて入力画像に写る枝または葉の形状が変化することによって発生しているため、図3(a)、(d)に示される人による変化領域と比較して、形状の変化が大きくなる傾向にある。そこで、特徴量算出手段33は、侵入物体と植栽とを区別する特徴量として、変化領域の形状の安定度合いを表す指標である形状安定度T6を算出する。
【0041】
特徴量算出手段33は、例えば同一の移動物体が写っている、最近3フレームの変化領域の情報を用いて、次式により、形状安定度T6を算出し、侵入物体と植栽とを区別するための特徴量として用いる。
T6=(現フレームの変化領域の矩形幅の変化率)×(現フレームの変化領域の矩形高さの変化率) +(前フレームの変化領域の矩形幅の変化率)×(前フレームの変化領域の矩形高さの変化率) (7)
ただし、現フレームの変化領域の矩形幅の変化率は、現フレームの変化領域の矩形幅と前フレームの変化領域の矩形幅のうち大きい方の値に対する小さい方の値の比率である。同様に現フレームの変化領域の矩形高さの変化率は、現フレームの変化領域の矩形高さと前フレームの変化領域の矩形高さのうち大きい方の値に対する小さい方の値の比率である。同様に前フレームの変化領域の矩形幅の変化率は、前フレームの変化領域の矩形幅と前々フレームの変化領域の矩形幅のうち大きい方の値に対する小さい方の値の比率である。同様に前フレームの変化領域の矩形高さの変化率は、前フレームの変化領域の矩形高さと前々フレームの変化領域の矩形高さのうち大きい方の値に対する小さい方の値の比率である。
つまり、形状安定度T6は、変化領域の矩形の形状の変化が大きいほど小さい値となり、変化領域の矩形の形状の変化が小さいほど大きい値となる。
【0042】
なお、移動物体が植栽である場合でも、3フレームの間、その移動物体が写っている変化領域の矩形の形状が変化せず、形状安定度T6が高くなることもあり得る。そこで、特徴量算出手段33は、所定期間内に取得された複数のフレームに対して式(7)によって算出された値の平均値を形状安定度T6としてもよい。その場合、所定期間は、侵入物体検出装置100が設置される環境や人を検出する目的などに応じて適宜最適化すればよい。
【0043】
植栽領域の重なり率T7は、変化領域と、記憶部20に記憶されている、植栽が撮像されている画像上の領域を示す植栽領域との重なり度合いを表す。植栽領域と重なる位置に発生した変化領域は植栽によるものである可能性が高い。そこで、特徴量算出手段33は、植栽領域を用いて、例えば次式により植栽領域の重なり率T7を算出する。
T7=(変化領域のうち植栽領域と重なる画素数)/(変化領域内の全画素数) (8)
つまり、植栽領域の重なり率T7は、変化領域に占める植栽領域と重なった領域の割合が大きいほど大きい値となり、その割合が小さいほど小さい値となる。
【0044】
植栽領域の重なり回数T8は、前フレームにおいて変化領域が植栽領域に重なった状態が連続していた回数を表す。植栽の揺れによる誤検出を抑制するためには、植栽が撮像されている領域だけでなく、その植栽が揺れる可能性のある全ての領域をカバーするように植栽領域を大きく設定することが望ましい。しかし、植栽領域を大きく設定すると、それだけ侵入者と判定しにくくする領域が大きくなるため、一般に植栽の揺れが観測される可能性の高い領域、つまり植栽が撮像されている画像上の領域だけが植栽領域として設定される。そのため植栽が風等の影響で大きく揺れた場合、または成長して大きくなった場合等に植栽領域を超えてその植栽の揺れによる変化領域が抽出されることがある。したがって同一の移動物体が写っている変化領域が現フレームで植栽領域と重なっていなくても、前フレームでは植栽領域と重なっていた場合、その移動物体は植栽の一部である可能性が高い。
そこで、特徴量算出手段33は、同一の移動物体が写っているものとして対応付けられた変化領域毎にカウンタを割り当て、その同一の移動物体が写っている、現フレームの変化領域が植栽領域と重なっているときカウンタをインクリメントし、現フレームの変化領域が植栽領域と重なっていないときカウンタを0に初期化する。そして特徴量算出手段33は、更新する前のカウンタの値、すなわち前フレームにおいて変化領域が植栽領域に重なった状態が連続していた回数を植栽領域の重なり回数T8として保持する。
【0045】
なお、特徴量算出手段33は、変化領域が少しでも植栽領域と重なっている場合にカウンタをインクリメントすればよい。本実施形態では、特徴量算出手段33は、変化領域と植栽領域が重なる画素数が1画素以上の場合、あるいは変化領域における植栽領域との重なり率が0%より大きい場合、カウンタをインクリメントする。
【0046】
重なり判定手段34は、変化領域毎に、特徴量算出手段33が算出した植栽領域の重なり率T7を用いて、植栽領域と重なっているか否かを判定する。本実施形態では、重なり判定手段34は、植栽領域の重なり率T7が所定の閾値以上の場合、その変化領域と植栽領域は重なっていると判定する。なお、変化領域が少しでも植栽領域と重なっている場合にその変化領域と植栽領域は重なっていると判定されることが好ましい。したがって所定の閾値は、例えば0.01が好ましい。そして重なり判定手段34は、変化領域と植栽領域とが重なっているか否かを判定した判定結果を離脱判定手段35及び判定手段36に通知する。
【0047】
離脱判定手段35は、重なり判定手段34によって植栽領域と重なっていないと判定された変化領域について、特徴量算出手段33が算出した植栽領域の重なり回数T8を用いて、植栽領域から離脱したものか否かを判定する。本実施形態では、離脱判定手段35は、その変化領域についての植栽領域の重なり回数T8が1以上である場合、その変化領域は植栽領域から離脱したものと判定し、植栽領域の重なり回数T8が0である場合、その変化領域は植栽領域から離脱したものでないと判定する。
つまり、例えば、離脱判定手段35は、変化領域が前フレームにおいて植栽領域に重なっていた場合、その変化領域は植栽領域から離脱したものと判定し、変化領域が前フレームにおいて植栽領域に重なっていなかった場合、その変化領域は植栽領域から離脱したものでないと判定する。
あるいは、離脱判定手段35は、変化領域が所定数前までの監視画像において植栽領域に重なっていた場合に、その変化領域は植栽領域から離脱したものと判定し、変化領域が所定数前までの監視画像において植栽領域に重なっていなかった場合に、その変化領域は植栽領域から離脱したものでないと判定するようにしてもよい。その場合、特徴量算出手段33は、変化領域が植栽領域と重なっていないとき、植栽領域の重なり回数T8を算出するためのカウンタを0に初期化するのではなく、カウンタが0以上の値をとる範囲でデクリメントすればよい。これにより離脱判定手段35は、長時間にわたって植栽領域から離脱している変化領域であっても、離脱前に長時間植栽領域と重なっていた場合には植栽による可能性が高いと判定して侵入物体と検出し難くすることができる。
あるいは、離脱判定手段35は、変化領域が過去に一度でも植栽領域に重なっていた場合に、その変化領域は植栽領域から離脱したものと判定し、変化領域が過去に一度も植栽領域に重なっていなかった場合に、その変化領域は植栽領域から離脱したものでないと判定するようにしてもよい。その場合、特徴量算出手段33は、変化領域が植栽領域と重なっていなくても、植栽領域の重なり回数T8を算出するためのカウンタを0に初期化したり、デクリメントしたりせず、変更しないようにすればよい。これにより離脱判定手段35は、長時間にわたって植栽領域から離脱している変化領域であっても、過去に一度でも植栽領域と重なっていた場合には植栽による可能性が高いと判定して侵入物体と検出し難くすることができる。
そして離脱判定手段35は、変化領域が植栽領域から離脱したものか否かを判定した判定結果を判定手段36に通知する。
【0048】
判定手段36は、記憶部20に格納された特徴量に基づいて、変化領域が侵入物体によるものであるか否かを判定する手段である。
図3(d)に示したような、植栽領域と重なっていない変化領域225は、侵入物体によるものである可能性が高い。一方、図3(c)に示したような、植栽領域と重なっている変化領域223は、植栽によるものである可能性が高い。しかし、図3(a)に示したように、植栽領域と重なっている変化領域でもその変化領域は植栽の前を移動する人によるものである場合もある。また、図3(b)に示したように、植栽領域と重なっていない変化領域でもその直前のフレームで植栽領域と重なっていた場合には植栽によるものである可能性が高い。
そこで、判定手段36は、重なり判定手段34によって植栽領域に重なっていないと判定され、かつ離脱判定手段35によって植栽領域から離脱したものでないと判定された変化領域について、その変化領域は植栽と関係ない可能性が高いと判断し、通常判定処理によって侵入物体の有無を判定する。一方、判定手段36は、重なり判定手段34によって植栽領域に重なっていると判定された変化領域、または離脱判定手段35によって植栽領域から離脱したものであると判定された変化領域について、その変化領域は侵入物体によるものである可能性もあるが、植栽によるものである可能性が高いと判断する。この場合、通常判定処理よりも変化領域が侵入物体によるものと判定し難くする特別判定処理によって侵入物体の有無を判定する。
【0049】
以下に通常判定処理について説明する。
判定手段36は、通常判定処理では、変化領域が人によるものか否かを判定するための特徴量である、侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3、移動量T4を用いてその変化領域の侵入物体らしさの度合いを表す侵入物体属性値を算出する。そして判定手段36は、算出した侵入物体属性値が所定の閾値Th3以上であるか否かを判定する。そして判定手段36は、侵入物体属性値が閾値Th3以上である場合、その変化領域を侵入物体によるものと判定し、閾値Th3未満である場合、その変化領域を侵入物体によるものでないと判定する。閾値Th3は、侵入物体検出装置100が設置される環境や人を検出する目的などに応じて適宜最適化される。
【0050】
侵入物体属性値は、例えば侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3及び移動量T4をそれぞれ正規化した値の乗算によって算出される。
図4(a)〜(d)に、侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3及び移動量T4をそれぞれ正規化する関数F1、F2、F3及びF4の一例を示す。
【0051】
図4(a)において、グラフ401は関数F1の入力値と出力値の関係を表し、横軸は侵入物体の大きさT1を、縦軸は関数F1の出力値を表す。この例では、関数F1の出力値は、0≦T1<aのとき0から1まで線形に増加し、a≦T1のとき1となる。閾値aは、人間の身長及び体格に基づいて定められるものであり、人と、猫、ねずみ、虫などの小動物とを区別できるように実験または経験的に予め定められる。
【0052】
図4(b)において、グラフ402は関数F2の入力値と出力値の関係を表し、横軸は縦横比T2を、縦軸は関数F2の出力値を表す。この例では、関数F2の出力値は、0≦T2<b1のとき0から1まで線形に増加し、b1≦T2<b2のとき1となり、b2≦T2<b3のとき1から0まで線形に減少し、b3≦T2のとき0となる。閾値b1〜b3は、閾値aと同様に、人間の身長及び体格に基づいて定められるものであり、人と、猫、ねずみ、虫などの小動物とを区別できるように実験または経験的に予め定められる。
【0053】
図4(c)において、グラフ403は関数F3の入力値と出力値の関係を表し、横軸はエッジ変化率T3を、縦軸は関数F3の出力値を表す。この例では、関数F3の出力値は、0≦T3<cのとき0から1まで線形に増加し、c≦T3のとき1となる。閾値cは、侵入物体による変動と、光または影による変動とを区別できるように実験または経験的に予め定められる。
【0054】
図4(d)において、グラフ404は関数F4の入力値と出力値の関係を表し、横軸は移動量T4を、縦軸は関数F4の出力値を表す。この例では、関数F4の出力値は、0≦T1<dのとき0から1まで線形に増加し、d≦T4のとき1となる。閾値dは、侵入物体の移動量と、光や影による移動量とを区別できるように実験または経験的に予め定められる。
【0055】
図4(a)〜(d)に示すように、関数F1、F2、F3及びF4は、変化領域が人らしいほど、出力値が1に近くなり、変化領域が人らしくないほど、出力値が0に近くなる関数である。このとき、侵入物体属性値は、関数F1、F2、F3及びF4を用いて、例えば次式により算出される。
(侵入物体属性値)=F1×F2×F3×F4 (9)
すなわち、侵入物体属性値は、変化領域が人らしいほど1に近くなり、変化領域が人らしくないほど0に近くなる。
【0056】
また侵入物体属性値は、F1、F2、F3、F4の平均値や加重和によって算出するようにしてもよい。F1、F2、F3、F4の平均値が用いられる場合、侵入物体属性値は、次式により算出される。
(侵入物体属性値)=(F1+F2+F3+F4)/4 (10)
またF1、F2、F3、F4の加重和が用いられる場合、侵入物体属性値は、次式により算出される。
(侵入物体属性値)=(F1×α1+F2×α2+F3×α3+F4×α4) (11)
ただし、α1〜α4は、F1〜F4のいずれを重視するかによって決定される重み係数であり、その合計(Σαi(i=1〜4))は1である。例えば、F1〜F4の重みを等しくする場合、各重み係数は全て同一の値に定められ、F1〜F4のうちの一部の特徴量を用いない場合、対応する重み係数は0に定められる。各重み係数の具体的な値をどのように設定するかは、侵入物体検出装置100が設置される環境や人を検出する目的などに応じて適宜最適化される。
【0057】
以下に、植栽領域に重なっている変化領域、または植栽領域から離脱したものである変化領域について適用される特別判定処理について説明する。
判定手段36は、特別判定処理では、変化領域が人らしいか否かを判定するための特徴量である、侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3、移動量T4に加えて、人と植栽とを区別するための特徴量である、移動直進度T5、形状安定度T6を用いて侵入物体属性値を算出する。そして判定手段36は、算出した侵入物体属性値が閾値Th3以上であるか否かを判定する。そして判定手段36は、侵入物体属性値が閾値Th3以上である場合、その変化領域を侵入物体によるものと判定し、閾値Th3未満である場合、その変化領域を侵入物体によるものでないと判定する。
【0058】
侵入物体属性値は、例えば侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3、移動量T4、移動直進度T5及び形状安定度T6をそれぞれ正規化した値の乗算によって算出される。
図5(a)〜(f)に、侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3、移動量T4、移動直進度T5及び形状安定度T6をそれぞれ正規化する関数F1'、F2'、F3'、F4'、F5及びF6の一例を示す。
【0059】
図5(a)において、グラフ501は関数F1'の入力値と出力値の関係を表し、横軸は侵入物体の大きさT1を、縦軸は関数F1'の出力値を表す。この例では、関数F1'の出力値は、0≦T1<a'のとき0から1まで線形に増加し、a'≦T1のとき1となる。ただし、図4(a)に示したaに対して、a<a'という関係が成立し、入力値T1が同一である場合、関数F1'の出力値は、関数F1の出力値以下となる。すなわち関数F1'を用いて正規化する方が関数F1を用いて正規化するより、侵入物体らしい大きさであることを許容する範囲が狭くなっており、侵入物体と判定され難くなる。
【0060】
図5(b)において、グラフ502は関数F2'の入力値と出力値の関係を表し、横軸は縦横比T2を、縦軸は関数F2'の出力値を表す。この例では、関数F2'の出力値は、0≦T2<b4のとき0となり、b4≦T2<b1'のとき0から1まで線形に増加し、b1'≦T2<b2'のとき1となり、b2'≦T2<b3'のとき1から0まで線形に減少し、b3'≦T2のとき0となる。ただし、図4(b)に示したb1、b2、b3に対して、0<b4、b1<b1'、b2>b2'、b3>b3'という関係が成立し、入力値T2が同一である場合、関数F2'の出力値は、関数F2の出力値以下となる。すなわち関数F2'を用いて正規化する方が関数F2を用いて正規化するより、侵入物体らしい縦横比であることを許容する範囲が狭くなっており、侵入物体と判定され難くなる。
【0061】
図5(c)において、グラフ503は関数F3'の入力値と出力値の関係を表し、横軸はエッジ変化率T3を、縦軸は関数F3'の出力値を表す。この例では、関数F3'の出力値は、0≦T3<c'のとき0から1まで線形に増加し、c'≦T3のとき1となる。ただし、図4(c)に示したcに対して、c<c'という関係が成立し、入力値T3が同一である場合、関数F3'の出力値は、関数F3の出力値以下となる。すなわち関数F3'を用いて正規化する方が関数F3を用いて正規化するより、侵入物体らしいエッジ比率であることを許容する範囲が狭くなっており、侵入物体と判定され難くなる。
【0062】
図5(d)において、グラフ504は関数F4'の入力値と出力値の関係を表し、横軸は移動量T4を、縦軸は関数F4'の出力値を表す。この例では、関数F4'の出力値は、0≦T1<d'のとき0から1まで線形に増加し、d'≦T4のとき1となる。ただし、図4(d)に示したdに対して、d<d'という関係が成立し、入力値T4が同一である場合、関数F4'の出力値は、関数F4の出力値以下となる。すなわち関数F4'を用いて正規化する方が関数F4を用いて正規化するより、侵入物体らしい移動量であることを許容する範囲が狭くなっており、侵入物体と判定され難くなる。
【0063】
図5(e)において、グラフ505は関数F5の入力値と出力値の関係を表し、横軸は移動直進度T5を、縦軸は関数F5の出力値を表す。この例では、関数F5の出力値は、0≦T5<eのとき0から1まで線形に増加し、e≦T5のとき1となる。つまり、移動直進度T5が小さい、すなわち変化領域の移動が直線的でないほど、その変化領域は植栽によるものである可能性が高いため、関数F5の出力値を小さくしている。なお、閾値eは、侵入物体による移動と、植栽の揺れによる移動とを区別できるように実験または経験的に予め定められる。
【0064】
図5(f)において、グラフ506は関数F6の入力値と出力値の関係を表し、横軸は形状安定度T6を、縦軸は関数F6の出力値を表す。この例では、関数F6の出力値は、0≦T6<fのとき0から1まで線形に増加し、f≦T6のとき1となる。つまり、形状安定度T6が小さい、すなわち変化領域の矩形の形状の変化が大きいほど、その変化領域は植栽によるものである可能性が高いため、関数F6の出力値を小さくしている。なお、閾値fは、人による矩形の形状の変化と、植栽による矩形の形状の変化とを区別できるように実験または経験的に予め定められる。
【0065】
図5(a)〜(d)に示すように、関数F1'、F2'、F3'及びF4'は、変化領域が人らしいほど、出力値が1に近くなり、変化領域が人らしくないほど、出力値が0に近くなる関数である。また図5(e)〜(f)に示すように、関数F5及びF6は、変化領域が植栽らしいほど人らしくないとして出力値が0に近くなり、変化領域が植栽らしくないほど人らしいとして出力値が1に近くなる関数である。このとき、侵入物体属性値は、関数F1'、F2'、F3'、F4'、F5及びF6を用いて、例えば次式により算出される。
(侵入物体属性値)=F1'×F2'×F3'×F4'×F5×F6 (12)
すなわち、侵入物体属性値は、変化領域が人らしいほど1に近くなり、変化領域が人らしくないほど0に近くなる。また上述した通り、関数F5、F6の出力値は0以上であり1以下の値となるため、関数F5及びF6を乗算した場合の侵入物体属性値は、関数F5及びF6を乗算しない場合の侵入物体属性値以下の値となる。従って、特徴量T1〜T4が同一である場合、式(12)により算出される侵入物体属性値は、通常判定処理において式(9)により算出される侵入物体属性値以下の値となる。これにより、判定手段36は、特別判定処理において通常判定処理より侵入物体を判定し難くすることができ、植栽領域に重なっている変化領域、または植栽領域から離脱したものである変化領域について、植栽の前を移動する侵入物体を検出するとともに、植栽の揺れによる誤検出を抑制できる。
【0066】
なお、図5(a)〜(f)に示した閾値a'、b1'、b2'、b3'、b4、c'、d'、e、f(以降、特別判定閾値と称する)を、植栽領域の重なり率T7が大きいほど、それぞれ関数F1'、F2'、F3'、F4'、F5及びF6の出力値が小さくなるように、すなわちその変化領域が人によるものであると判定され難くなるように調整してもよい。そのためには、例えば、特別判定閾値a'、c'、d'、e、fは、植栽領域の重なり率T7が大きいほど、大きくなるようにし、特別判定閾値b1'、b2'、b3'、b4は、植栽領域の重なり率T7が大きいほど、b1'とb2'の間の幅とb4とb3'の幅が小さくなるようにする。その場合、例えば、植栽領域の重なり率T7が50%未満の場合の各特別判定閾値をa1'、b11'、b21'、b31'、b41、c1'、d1'、e1、f1とし、T7が50%以上かつ75%未満の場合の各特別判定閾値をa2'、b12'、b22'、b32'、b42、c2'、d2'、e2、f2とし、T7が75%以上の場合の各特別判定閾値をa3'、b13'、b23'、b33'、b43、c3'、d3'、e3、f3として、それぞれ次式の条件を満たすような値を予め定めておく。
a<a1'<a2'<a3' (13)
b1<b11'<b12'<b13' (14)
b2<b21'<b22'<b23' (15)
b3>b31'>b32'>b33' (16)
b4>b41>b42>b43 (17)
c<c1'<c2'<c3' (18)
d<d1'<d2'<d3' (19)
e1<e2<e3 (20)
f1<f2<f3 (21)
これにより、判定手段36は、変化領域と植栽領域の重なった領域の割合が大きいほど侵入物体らしい特徴量であることを許容する範囲を狭くする。従って判定手段36は、植栽と人の判別精度を向上でき、植栽の揺れによる誤検出を抑制できるとともに、植栽の前を移動する侵入者を検出することができる。
【0067】
なお、判定手段36は、重なり判定手段34によって植栽領域が重なっていると判定された変化領域については、現フレームにおける植栽領域の重なり率T7を用いて各特別判定閾値を調整してもよい。
一方、判定手段36は、重なり判定手段34によって植栽領域と重なっていないと判定され、かつ離脱判定手段35によって植栽領域から離脱したものと判定された変化領域については、最後に植栽領域と重なっていたときの植栽領域の重なり率T7を用いて各特別判定閾値を調整してもよい。しかしながら、変化領域が植栽領域から離脱する直前の植栽領域の重なり率T7が極端に低いこともあり得るため、判定手段36は、所定期間内に算出された植栽領域の重なり率T7の平均値を用いて各特別判定閾値を調整するようにしてもよい。
【0068】
または、判定手段36は、重なり判定手段34によって植栽領域と重なっていないと判定され、かつ離脱判定手段35によって植栽領域から離脱したものと判定された変化領域について、離脱判定手段35によって算出された植栽領域の重なり回数T8を用いて各特別判定閾値を調整してもよい。 その場合、例えば、植栽領域の重なり回数T8が5回未満の場合の各特別判定閾値をa1'、b11'、b21'、b31'、b41、c1'、d1'、e1、f1とし、T8が5回以上10回未満の場合の各特別判定閾値をa2'、b12'、b22'、b32'、b42、c2'、d2'、e2、f2とし、T8が10回以上の場合の各特別判定閾値をa3'、b13'、b23'、b33'、b43、c3'、d3'、e3、f3とする。
これにより、判定手段36は、同一の移動物体が写っている変化領域が植栽領域と重なっていた期間が長いほど、その変化領域は植栽によるものである可能性が高いと判断して侵入物体らしい特徴量であることを許容する範囲を狭くする。従って判定手段36は、植栽と人の判別精度を向上でき、植栽の揺れによる誤検出を抑制できるとともに、植栽の前を移動する侵入者を検出することができる。
【0069】
また判定手段36は、特別判定処理では、移動直進度T5、形状安定度T6を用いずに、侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3、移動量T4のみを用いて侵入物体属性値を算出するようにしてもよい。その場合、判定手段36は、特別判定処理では、侵入物体属性値を関数F1'、F2'、F3'、F4'のみを用いて、例えば次式により算出する。
(侵入物体属性値)=F1'×F2'×F3'×F4' (22)
特徴量T1〜T4が同一である場合、式(22)により算出される侵入物体属性値は、式(12)により算出される場合と同様に、通常判定処理において式(9)により算出される侵入物体属性値以下の値となる。これにより、判定手段36は、特別判定処理において通常判定処理より侵入物体を判定し難くすることができ、植栽領域に重なっている変化領域、または植栽領域から離脱したものである変化領域について、植栽の前を移動する侵入物体を検出するとともに、植栽の揺れによる誤検出を抑制できる。さらに判定手段36は、これらの変化領域について、関数F1〜F4の特別判定閾値の変更によって侵入物体の判定し難さを容易に調整できる。
【0070】
あるいは判定手段36は、特別判定処理では、侵入物体の大きさT1、縦横比T2、エッジ変化率T3、移動量T4を正規化する関数として、通常判定処理と同じ関数F1〜F4を用いるようにしてもよい。その場合、判定手段36は、特別判定処理では、侵入物体属性値を関数F1、F2、F3、F4、F5、F6を用いて、例えば次式により算出すればよい。
(侵入物体属性値)=F1×F2×F3×F4×F5×F6 (23)
特徴量T1〜T4が同一である場合、式(23)により算出される侵入物体属性値は、式(12)により算出される場合と同様に、通常判定処理において式(9)により算出される侵入物体属性値以下の値となる。これにより、判定手段36は、特別判定処理において通常判定処理より侵入物体を判定し難くすることができ、植栽領域に重なっている変化領域、または植栽領域から離脱したものである変化領域について、植栽の前を移動する侵入物体を検出するとともに、植栽の揺れによる誤検出を抑制できる。さらに判定手段36は、これらの変化領域について、侵入物体と植栽とを区別するための特徴に基づいて人と植栽を判別するので、人と植栽の判別精度を向上でき、植栽の揺れによる誤検出を抑制できるとともに、植栽前を移動する侵入者を検出することができる。
【0071】
あるいは判定手段36は、通常判定処理と特別判定処理において全く同じ関数を用いて侵入物体属性値を算出し、侵入物体属性値と比較する閾値のみを変更するようにしてもよい。その場合、特別判定処理で用いる、侵入物体属性値と比較する閾値を通常判定処理で用いる閾値Th3より大きくすればよい。これにより、判定手段36は、特別判定処理において通常判定処理より侵入物体を判定し難くすることができ、植栽領域に重なっている変化領域、または植栽領域から離脱したものである変化領域について、植栽の揺れによる誤検出を抑制できる。
【0072】
また変化領域が植栽領域から離脱したものである場合、現在も植栽領域と重なっている場合より、その変化領域は人によるものである可能性が高いと判断することもできる。そこで、判定手段36は、植栽領域から離脱したものであると判定された変化領域を、植栽領域に重なっていると判定された変化領域より、人によるものであると判定しやすくしてもよい。例えば判定手段36は、植栽領域から離脱したものであると判定された変化領域では、植栽領域に重なっていると判定された変化領域より、関数F1'、F2'、F3'、F4'、F5及びF6の出力値が大きくなるように、すなわち侵入物体属性値が大きくなるように調整してもよい。あるいは判定手段36は、植栽領域から離脱したものであると判定された変化領域については、関数F1'、F2'、F3'、F4'のみを用いた式(22)により侵入物体属性値を算出し、植栽領域に重なっていると判定された変化領域については、関数F1'、F2'、F3'、F4'、F5及びF6を用いた式(12)により侵入物体属性値を算出してもよい。あるいは判定手段36は、植栽領域から離脱したものであると判定された変化領域については、関数F1、F2、F3、F4、F5、F6を用いた式(23)により侵入物体属性値を算出し、植栽領域に重なっていると判定された変化領域については、関数F1'、F2'、F3'、F4'、F5及びF6を用いた式(12)により侵入物体属性値を算出してもよい。
これらにより、判定手段36は、変化領域が植栽領域から離脱したものである場合、過去に植栽領域と重なっていなかった場合より、その変化領域が人によるものであると判定し難くするとともに、現在も植栽領域と重なっている場合より、その変化領域が人によるものであると判定しやすくすることができる。従って判定手段36は、植栽と人の判別精度を向上でき、植栽の揺れによる誤検出を抑制できるとともに、植栽前を移動する侵入者を検出することができる。
【0073】
また侵入物体属性値は、通常判定処理同様、F1'、F2'、F3'、F4'、F5、F6の平均値や加重和によって算出するようにしてもよい。F1'、F2'、F3'、F4'、F5、F6の平均値が用いられる場合、侵入物体属性値は、次式により算出される。
(侵入物体属性値)=(F1'+F2'+F3'+F4'+F5+F6)/6 (24)
またF1'、F2'、F3'、F4'、F5、F6の加重和が用いられる場合、侵入物体属性値は、次式により算出される。
(侵入物体属性値)=(F1'×β1+F2'×β2+F3'×β3+F4'×β4+F5×β5+F6×β6) (25)
ただし、β1〜β6は、F1'〜F4'、F5〜F6のいずれを重視するかによって決定される重み係数であり、その合計(Σβi(i=1〜6))は1である。例えば、F1'〜F4'、F5〜F6の重みを等しくする場合、各重み係数は全て同一の値に定められ、F1'〜F4'、F5〜F6のうちの一部の特徴量を用いない場合、対応する重み係数は0に定められる。各重み係数の具体的な値をどのように設定するかは、侵入物体検出装置100が設置される環境や人を検出する目的などに応じて適宜最適化される。
【0074】
判定手段36は、通常判定処理または特別判定処理のいずれかにおいて算出した侵入物体属性値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。そして判定手段36は、侵入物体属性値が所定の閾値以上である場合、その変化領域は侵入物体によるものと判定し、監視領域内で侵入物体が検出されたことを示す異常検出信号を出力部40に送信する。なお、この閾値は、変化領域が侵入物体によるものであることを示す値に設定される。例えばこの閾値は、実験により求められた、少しでも侵入物体の可能性があると判断できる侵入物体属性値に設定される。
【0075】
また判定手段36は、侵入物体によるものと判定された変化領域が存在しない場合、入力画像内に侵入物体が存在しないと判定して、背景画像更新手段37に記憶部20に記憶されている背景画像を更新させるための背景画像更新要求を送信する。あるいは判定手段36は、変化領域そのものが存在しない場合に背景画像更新手段37に背景画像更新要求を送信して背景画像を更新させるようにしてもよい。
【0076】
背景画像更新手段37は、判定手段36から背景画像更新要求を受け取ると、記憶部20に記憶されている背景画像を入力画像で置換することにより更新する。このように、背景画像を常に監視領域の最新の状態を表すものにしておくことで、画像処理部30は、天候の変化、太陽の日周変動などに起因する侵入物体の誤検出を軽減できる。
【0077】
なお、背景画像更新手段37は、上記の背景画像の更新処理を、判定手段36により侵入物体がないと判定されたときではなく、一定周期(例えば、10分間隔)ごとに行うようにしてもよい。その場合、例えば、監視領域に対する日照変動により入力画像の平均輝度値が所定値以上変化する時間を実験により求め、実験により求めた時間のうち最短の時間を更新処理を行う周期とすればよい。
【0078】
あるいは背景画像更新手段37は、上記の背景画像の更新処理を、照明変動があったときに行うようにしてもよい。その場合、背景画像更新手段37は、例えば、定期的に入力画像の平均輝度を算出し、その平均輝度が所定の閾値以上に変化したとき、背景画像の更新処理を行えばよい。なお、この閾値は、例えば実際に照明変動を発生させたときの入力画像の平均輝度値を測定することにより、適切な値を決定できる。
【0079】
あるいは背景画像更新手段37は、上記の背景画像の更新処理を、移動平均を用いて行うようにしてもよい。その場合、例えば、背景画像更新手段37は、直近の所定数の入力画像の対応する画素の輝度値の平均値または加重平均値を画素値とするように背景画像を生成すればよい。
【0080】
植栽領域更新手段38は、記憶部20に記憶されている植栽領域を更新する手段である。植栽領域の抽出方法は、例えば、特開2007−249270に開示されている。具体的には、植栽領域更新手段38は、入力画像に対して、sobelフィルタまたはprewittフィルタなどのエッジ検出フィルタを用いた近傍画素間演算を実行してエッジ画素を求める。そして植栽領域更新手段38は、一定時間内に取得した入力画像について、画素毎に、エッジ画素の有無が変動した回数を計数し、計数した回数が所定回数以上である画素位置をエッジ変動位置とする。そして植栽領域更新手段38は、現フレームの変化領域において、エッジ画素の位置がエッジ変動位置と一致する割合が所定値以上となる場合、すなわちエッジ画素の多くが頻繁にエッジ変動を繰り返している場合、その変化領域を植栽領域とする。
【0081】
あるいは植栽領域は、侵入物体検出装置100の運用者等から指定されるようにしてもよい。その場合、侵入物体検出装置100に運用者からの操作の指示を受け取って画像処理部30に渡す、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力部(図示せず)を備えておき、植栽領域更新手段38は、その入力部を介して運用者から指定された領域を植栽領域とすればよい。なお、植栽領域の指定方法として、植栽が撮像されている領域と撮像されていない領域とが区別された画像データを運用者に作成させるようにしてもよいし、画像データ中の植栽が撮像されている領域に対応する画素の座標を運用者に入力させるようにしてもよい。
【0082】
なお、植栽領域更新手段38は、植栽領域の更新処理を、入力画像を取得する毎に行うようにしてもよいし、一定周期(例えば、10分間隔)ごとに行うようにしてもよい。あるいは植栽領域更新手段38は、植栽領域の更新処理を、照明変動があったときに行うようにしてもよい。あるいは植栽領域更新手段38は、侵入物体と判断されなかった変化領域が存在する場合、その変化領域は植栽の変化により発生した可能性が高い、すなわち植栽領域に変化があった可能性が高いと判定して植栽領域の更新処理を行うようにしてもよい。
【0083】
出力部40は、構内LANまたは公衆回線網などの通信ネットワークに接続する通信インターフェース及びその制御回路を有する。そして出力部40は、判定手段36から異常検出信号を受け取ると、侵入物体検出装置100と通信ネットワークを介して接続された警備装置または監視センタ装置へ警報を出力する。
なお、侵入物体検出装置100から警報を受け取った警備装置または監視センタ装置は、音声や画像により、監視領域内で侵入物体が検出された旨を監視者に通知する。
【0084】
次に、図6に示したフローチャートを参照しつつ、侵入物体検出装置100の侵入物体検出動作を説明する。なお、以下に説明する侵入物体検出動作は、画像処理部30によって制御され、撮像部10による画像取得間隔で繰り返し実行される。
【0085】
まず、撮像部10により監視領域を撮像した入力画像が生成され、画像処理部30に送信される(ステップS1)。
画像処理部30が入力画像を受け取ると、画像処理部30の変化領域抽出手段31は、受け取った入力画像と記憶部20に記憶されている背景画像から変化領域を抽出する(ステップS2)。そして変化領域抽出手段31は、抽出した変化領域毎にラベル番号を付し、画素値を対応する変化領域のラベル番号とするラベル画像を作成する(ステップS3)。
変化領域抽出手段31が変化領域を抽出してラベル画像を作成すると、追跡処理手段32は、現フレームの変化領域に写っている移動物体と同一の移動物体が写っている、前フレームの変化領域とを対応付ける(ステップS4)。
【0086】
追跡処理手段32が現フレームの変化領域と前フレームの変化領域とを対応付けると、特徴量算出手段33は、変化領域毎に、その変化領域における侵入物体の特徴量T1〜T8を算出する(ステップS5)。
特徴量算出手段33が侵入物体の特徴量T1〜T8を算出すると、重なり判定手段34は、特徴量算出手段33によって算出された植栽領域の重なり率T7を用いて、変化領域が植栽領域と重なっているか否かを判定する(ステップS6)。
重なり判定手段34によって変化領域が植栽領域と重なっていないと判定されると、離脱判定手段35は、特徴量算出手段33によって算出された植栽領域の重なり回数T8を用いて、変化領域が植栽領域から離脱したものか否かを判定する(ステップS7)。
【0087】
離脱判定手段35によって変化領域が植栽領域から離脱したものでないと判定されると、判定手段36は、変化領域が侵入物体によるものか否かを通常判定処理によって判定する(ステップS8)。そして判定手段36は、変化領域が侵入物体によるものと判定すると、異常検出信号を出力部40に送信する。
一方、重なり判定手段34によって変化領域が植栽領域と重なっていると判定された場合、または離脱判定手段35によって変化領域が植栽領域から離脱したものと判定された場合、判定手段36は、変化領域が侵入物体によるものか否かを特別判定処理によって判定する(ステップS9)。そして判定手段36は、変化領域が侵入物体によるものと判定すると、異常検出信号を出力部40に送信する。
【0088】
判定手段36は、変化領域が侵入物体によるものか否かを通常判定処理または特別判定処理によって判定すると、全ての変化領域について侵入物体の判定処理を実施したか否かを判定する(ステップS10)。侵入物体の判定処理を実施していない変化領域がある場合、判定手段36は制御をステップS5へ戻し、ステップS5〜S8の処理を繰り返す。
【0089】
一方、全ての変化領域について侵入物体の判定処理を実施すると、判定手段36は、侵入物体と判断された変化領域が存在したか否かを判定し、侵入物体と判断された変化領域が存在しない場合、背景画像更新手段37に背景画像を更新させるための背景画像更新要求を送信する。背景画像更新手段37は、判定手段36から背景画像更新要求を受け取ると、背景画像を更新する(ステップS11)。
背景画像更新手段37が背景画像を更新すると、植栽領域更新手段38は、植栽領域の更新処理を実施する(ステップS12)。
植栽領域更新手段38が植栽領域の更新処理を実施すると、出力部40が、判定手段36から異常検出信号を受け取ったか否かを判定する。そして出力部40は、判定手段36から異常検出信号を受け取っている場合、警備装置または監視センタ装置へ警報を出力する。(ステップS13)。
【0090】
なお、上記の各ステップにおける処理の詳細については、侵入物体検出装置100の各部の説明において詳しく説明したので、ここではその説明を省略する。
【0091】
以上説明してきたように、本発明に係る侵入物体検出装置は、変化領域毎に、侵入物体の特徴量に基づいて侵入物体らしさの度合いを表す侵入物体属性値を算出し、その変化領域が植栽領域と重なっている場合、その変化領域を侵入物体として検出し難くしている。これにより侵入物体検出装置は、植栽の揺れによって生じた変化領域を侵入物体として誤検出することを抑制でき、さらに侵入者が植栽の前を移動したことによって生じた変化領域であれば侵入物体として検出することができる。
また本発明に係る侵入物体検出装置は、変化領域が植栽領域と重なっているか否かに基づいて侵入物体属性値の算出基準を調整するため、侵入物体の特徴のみに基づいて侵入物体属性値を算出するより高い精度で侵入物体らしさを求めることができる。
【0092】
さらに本発明に係る侵入物体検出装置は、変化領域が植栽領域と重なっている場合、侵入物体の特徴量T1〜T4に加えて、侵入物体と植栽とを区別するための特徴量である移動直進度T5、形状安定度T6に基づいて侵入物体属性値を算出する。そのため、侵入物体検出装置は、植栽の前を移動する侵入者に対して高い精度で侵入物体らしさを求めることができるので、植栽の前を移動する侵入物体を検出するとともに、侵入者の誤判定を抑制できる。
さらに本発明に係る侵入物体検出装置は、変化領域が植栽領域と重なっていない場合でも、その変化領域が過去のフレームで植栽領域と重なっていた場合、その変化領域が植栽領域と重なっている場合と同一の方法で侵入物体の有無を判定する。そのため、侵入物体検出装置は、植栽領域から離脱した物体を判別してその物体は植栽である可能性が高いと判断でき、植栽の揺れを侵入物体として誤検出することを抑制できる。
【0093】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0094】
10 撮像部
20 記憶部
30 画像処理部
31 変化領域抽出手段
32 追跡処理手段
33 特徴量算出手段
34 重なり判定手段
35 離脱判定手段
36 判定手段
37 背景画像更新手段
38 植栽領域更新手段
40 出力部
100 侵入物体検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域内に侵入した侵入物体を検出する侵入物体検出装置であって、
前記監視領域を撮影した監視画像を取得する撮像部と、
前記監視領域に前記侵入物体が存在しない状況において前記監視領域を撮影した画像である背景画像と、植栽が撮像されている画像上の領域を示す植栽領域を記憶する記憶部と、
前記監視画像と前記背景画像の差分によって、輝度値が変化した変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、
前記変化領域について、該変化領域が前記植栽領域と重なっている場合に重なっていない場合より侵入物体らしさが低くなる侵入物体らしさの度合いを表す侵入物体属性値を算出し、前記侵入物体属性値に基づいて前記変化領域が侵入物体によるものか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする侵入物体検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記変化領域が前記植栽領域と重なっていない場合、侵入物体の特徴である第1の特徴量に基づいて前記侵入物体属性値を算出し、前記変化領域が前記植栽領域と重なっている場合、前記第1の特徴量に加え侵入物体と植栽とで顕著に異なる第1の特徴量以外の特徴である第2の特徴量に基づいて前記侵入物体属性値を算出する、請求項1に記載の侵入物体検出装置。
【請求項3】
さらに、前記撮像部により前記監視画像が取得される度に、最新の監視画像から抽出された最新の変化領域と、直前に取得された監視画像から抽出された直前の変化領域のうち、該最新の変化領域に写っている物体と同一の物体が写っている前記直前の変化領域とを対応付ける追跡処理手段を有し、
前記判定手段は、前記最新の変化領域が前記植栽領域と重なっておらず、かつ該最新の変化領域に対応付けられた前記直前又は所定数前までの監視画像での変化領域が前記植栽領域と重なっていなかった場合、第1の処理により前記侵入物体属性値を算出し、該最新の変化領域が前記植栽領域と重なっておらず、かつ該最新の変化領域に対応付けられた前記直前又は所定数前までの監視画像での変化領域が前記植栽領域と重なっていた場合、前記第1の処理より前記侵入物体属性値を侵入物体らしくない値とする第2の処理により前記侵入物体属性値を算出する、請求項1または2に記載の侵入物体検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記変化領域に占める前記植栽領域と重なった領域の割合が大きいほど前記侵入物体属性値を侵入物体らしくない値とする、請求項2または3に記載の侵入物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−88861(P2012−88861A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233937(P2010−233937)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】