説明

個別電荷蓄積素子を有するメモリのプログラミング

不揮発性メモリ(100)は、個別電荷蓄積素子(40)を有するトランジスタ群(30)から成るアレイを含む。トランジスタに対しては、2ステップ書き込み方法(60)を使用して書き込みを行ない、この方法では、第1ステップ(68)が低ゲート電圧によるホットキャリア注入(hot carrier injection:HCI)書き込みである。第2ステップ(78)を幾つかのメモリセルに対して選択的に利用して注入電荷分布を変え、トランジスタメモリセル内部の各メモリビットの間の電荷分布間隔を大きくする。書き込みを行なう第2ステップは、書き込み操作に長い余分な時間が加わることなく行われる。一の例では、第1ステップにおいて電子を注入し、そして第2ステップにおいてホールを注入する。2つのステップを実行して分布が形成される結果、蓄積媒体の中心部分の電子電荷が取り除かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不揮発性メモリに関し、特に個別電荷蓄積素子を有する不揮発性メモリのプログラミングに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物中の電子及びホールトラップのような個別電荷蓄積素子を使用する不揮発性メモリに対する書き込みは通常、電子を個別電荷蓄積素子に注入することにより行われる。蓄積媒体は非導電性なので、電子は蓄積媒体内ではほとんど動くことがない。電子を窒化物に注入する代表的な最も効果的な方法の一つは、ホットキャリア注入(hot carrier injection:HCI)である。このホットキャリア注入によって、電子を窒化物に不均一に注入することができる。電荷密度は、電子が、通常ドレイン近傍で最も大きなエネルギーを示す場合に最大となる。その結果、電子はドレインに最も近接する領域の窒化物の中で更に高密度になる。これは、十分な電荷を供給してメモリセルのしきい値電圧を検出可能にするのに効果的である。
【0003】
しかしながら、メモリセルを消去をするには、蓄積媒体を荷電する電子の全てを中和する必要があり、この動作が困難であるという問題がある。この動作を実現するための方法は直接トンネリングであるが、直接トンネリングには、下部酸化膜、すなわち基板と窒化物との間の誘電体が極めて薄く、20〜30オングストロームの範囲の厚さであることが必要になる。しかしながら、シングルトランジスタビットセルから成るアレイでは、下部酸化膜が薄いと、データ保持が不十分になり、そして読み出しができなくなる。別のアプローチは、Fowler−Nordheim(FN)トンネリングであり、このFNトンネリングによって、下部酸化膜を30オングストロームを超えることがないが若干厚いことが許される。この下部酸化膜はこの薄い厚さに維持して、消去時間が非常に長くなってしまうことを防止する、または互いに非常に近接している書き込みしきい値電圧と消去しきい値電圧との間に、電子が消去中に上部酸化膜を突き抜けて逆方向に注入される現象を防止する必要がある。
【0004】
別の方法はホットホール注入である。このホットホール注入によって、ホールが窒化物に注入されて窒化物中の電子を中和することができる。ホットホールも、逆バイアスをPN接合に印加し、そして負電圧をコントロールゲートに印加することによりドレイン近傍に生成される。これらのバイアス条件は、ホール/電子ペアを形成するように作用する。これらのホールの或る部分は、基板と窒化物との間の電位障壁を乗り越える十分なエネルギーにまで、ドレインと基板との間で加速される。窒化物に到達することができるこれらのホールは、或るパターンに従ってこの動作を行なう。このパターンはHCIを利用する書き込みに関するパターンに類似するが、同じではない。T.Y. Chanらによる「真のシングルトランジスタ構成の酸化膜−窒化膜−酸化膜EEPROM素子」と題する非特許文献1(IEEE Electron Device Letters, Vol.
EDL−8, No. 3, March 1987)には、トランジスタを飽和状態にする大きなゲート電圧及びドレイン電圧を同時に使用してメモリに対する書き込みを行なうことが記載されている。飽和状態で書き込みを行なうことによって、ドレインに非常に広い分布で局在化する電子分布が形成される。この書き込みにはHCIを利用し、そしてこの書き込みによって、ドレイン近傍に一つのピークだけでなくドレインから更に少しだけ離れた別のピークが形成され易くなる。ホットホール注入(HHI)の場合は、この第2のピークが形成され易くなることがないので、第2のピークの一部として注入される電子は、HHIによって効果的に中和されるということはない。従って、電子は、HHI消去を使用する場合には、窒化物中に残留し易くなる。書き込み/消去サイクルの後、蓄
積された電子は消去しきい値電圧を大きくするように作用し、メモリ動作の電圧マージンが十分に広くなる。
【非特許文献1】IEEE Electron Device Letters, Vol. EDL−8, No. 3, March 1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子が蓄積媒体中に蓄積される現象を回避するために使用する一つの方法では、蓄積媒体中のホットホール分布にほぼ一致する電子分布を形成する。この一致を実現するために、大きなゲート電圧を使用する。図1に示すのは、このような公知のメモリセル10である。メモリセル10は基板12を有し、この基板には、ソース14とドレイン16との間にゲートスタック構造が設けられる。ゲートスタック構造はゲート誘電体18と、複数の個別電荷蓄積素子を有する被覆誘電体層20と、被覆誘電体層22と、そして上部導電ゲート電極24と、を有する。複数の個別電荷蓄積素子は種々の形態で用いることができる。一の形態では、個別電荷蓄積素子は、シリコン、ゲルマニウム、窒化物などから成るナノクラスタ(nanocluster)、ナノ結晶、または窒化物層、或いは電子及び/又はホールをトラップする材料層から成るいずれかの層とすることができる。書き込みモードでは、ソース14は接地電位に接続され、ゲートは10ボルト電位に接続され、そしてドレインは5ボルト以下の電位に接続される。大きなゲート電圧及び小さなドレイン電圧というバイアス条件の下では、ソースとドレインとの間のチャネル領域はほぼ直線的な動作領域にある。これによって、ホットエレクトロンがドレイン16側の近傍の電荷蓄積媒体20に注入され、電子分布が狭くなる。電子分布が狭くなることにより、2つの個別データ状態を2つのソース/ドレイン端子の各々における単一メモリセル内に、メモリセルの2つのビットの間の相互干渉をほぼ生じることなく記憶することができる。しかしながら、大きなゲート電圧を使用するためには、このような大きなゲート電圧を処理することができる大きな周辺トランジスタが必要になる。10ボルトといった大きなゲート電圧に耐えるために、トランジスタは厚いゲート酸化膜を使用する必要があり、この厚いゲート酸化膜は、必要な周辺回路のサイズを大きくするように直接的に作用する。蓄積媒体層(storage medium layer)を、電荷の局在化を実現するために十分大きなゲートバイアスで使用する既存の不揮発性メモリモジュールは通常、特に高速読み出しアクセス時間が必要な場合にはサイズ的に不利となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当業者であれば、これらの図における構成要素が説明を簡単かつ明瞭にするために示され、そして必ずしも寸法通りには描かれていないことが分かるであろう。例えば、これらの図における幾つかの構成要素の寸法を他の構成要素に対して誇張して描いて本発明の実施形態を理解し易くしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図2に示すのは、本発明による書き込み方法の第1ステップにおいて書き込みが行われるメモリセル30である。通常、メモリセル30は、イオン注入済みソース34及びイオン注入済みドレイン36を含む井戸32を有する。ゲート構造はゲート誘電体38と、電荷蓄積素子層40と、制御誘電体42と、そして導電ゲート電極44と、から形成される。導電ゲート電極44、ソース34、及びドレイン36はそれぞれ、所定電圧を入力する端子を有する。導電ゲート電極44は約5ボルトの電圧に接続される。井戸32は、0ボルトの、またはゼロよりも低い−2ボルトのような大きさの電圧のVWELLに接続される。ソース34は、0ボルトの、またはゼロよりも高い、例えば1ボルトのような大きさの電圧のソース電圧Vに接続される。ドレインは、約4ボルトのドレイン電圧に接続される。ここで、本明細書において使用する電圧値は単なる例示であり、正確な値となるように意図したものではないことを良く理解されたい。ゲート誘電体38は一つの構成とし
て、約50オングストロームの厚さを有する。電荷蓄積素子層40は、どのタイプの電荷蓄積材料を使用するのかによって厚さが変わる。窒化膜層を用いる場合、厚さは一つの構成として、約100オングストロームである。ナノ結晶材料を使用する場合、ナノ結晶の直径は、例えば約50オングストロームであり、ナノ結晶の間隔は、例えば約50オングストロームである。制御誘電体42は、例えば約100オングストロームである。導電ゲート電極44は、例えば約1000オングストロームである。更に、ソース34とドレイン36との間のチャネル長は一の構成として、約100ナノメートルから300ナノメートルの範囲である。
【0008】
動作状態において、図示のバイアス条件の下では、チャネルはメモリセル30の飽和領域で動作している。飽和状態は、ゲートがドレインバイアス電圧に非常に近い値の電圧でバイアスされると生じる。飽和状態では、注入電子の分布は分布41で示される。分布41は図1の分布21よりも広い。分布が広くなると2ビットメモリセルにとって問題が一層深刻になるが、この動作はメモリセル10よりも好ましい、というのは、ゲートバイアスはほぼ2分の1であるので、周辺トランジスタのサイズをずっと小さくすることができ、その結果、メモリモジュールをずっと小さくすることができるからである。電子分布の広がりは、消去動作中のホットホール注入を使用して効果的に無くすことができない、というのは、ホール分布は電子分布と一致しないからである。注入電子分布の除去が不完全になることにより、電子が、電荷蓄積素子層40のような電荷蓄積媒体の中央に不所望な形で蓄積する。
【0009】
図3に示すのは、メモリセル30に関連する第2の書き込みステップの様子を示す断面である。このバイアス条件では、約−5ボルトをゲート電極44に印加し、そしてドレイン36を接地基準電位にバイアスする。更に、ソース34は約4ボルトにバイアスし、そして逆バイアス電圧VWELLを井戸32に印加する。VWELLの電位の例として、ゼロ、または−1ボルトまたは−2ボルトのようなゼロよりも低い非ゼロ値を挙げることができる。
【0010】
このバイアス条件では、電子−ホールペアは、ソース34の内、ゲート誘電体38下方の部分において生成される。生成ホールは、ソース34と井戸32との間に生じる横方向電界によって、ソース34に向かって加速される。この横方向輸送によって、ホールのエネルギーが大きくなり、負のゲート電圧によってホールが電荷蓄積素子層40に注入される。結果として得られるホール分布39を図3に示す。ホール分布39の一部が電子分布41と重なるので、電荷蓄積媒体の電子電荷の該当する部分が相殺または除去される。これらの分布が結合することによって、電荷蓄積素子層40の中心部分の電子分布が除去または補償され、電子分布が、電荷蓄積素子層40の内、端子34よりも端子36に近い所望の側に近づくように効果的に移動またはシフトする。
【0011】
図4に示すのは、図2及び3のメモリセル30に対して書き込みを行なう方法のフローチャートである。ステップ62では、メモリ部分(一つ以上の識別される所定のメモリセル)に対して消去を行ってメモリ部分を所定の状態とする。ステップ62は任意選択であり、かつ従来のバルク消去を使用して効果的に実行することができる。ここで、ステップ62を実行する場合、メモリセル蓄積媒体には効果的な電荷分布が全く無いことを理解されたい。ステップ62を実行しない場合、既知の電荷分布から開始するために、追加の論理回路がメモリシステムにおいて必要となる。ステップ64では、メモリ部分に対する書き込みは、メモリを書き込みモードに移行させることにより始まる。ステップ66では、第1メモリセルの左ビットの論理状態の値を所望の値から変化させて第1メモリセルに保存する必要があるかどうかについての判断が行われる。第1メモリセルの論理状態を変化させる必要がある場合、ステップ68を実行する。ステップ68では、図2に関連して前に議論したように、第1極性を有する電荷をメモリセルの左側に注入する。第1メモリセ
ルの論理状態を変化させる必要がない場合、ステップ68は実行しない。ステップ70では、第1メモリセルの右ビットの論理状態の値を所望の値から変化させて第2メモリセルに保存する必要があるかどうかについての判断が行われる。第2メモリセルの論理状態を変化させる必要がある場合、ステップ72を実行する。ステップ72では、第1極性を有する電荷をメモリセルの右側に注入する。ステップ80では、左ビットの論理状態が変化したかどうかについての判断が行われる。左ビットの論理状態が変化した場合、ステップ74を実行する。左ビットの論理状態が変化しなかった場合、ステップ82を実行する。ステップ82では、第2極性を有する電荷をメモリセルの左側に注入して、チャネルの中心領域の電子分布を無くす、または除去する。ステップ82の後、ステップ74を実行する。ステップ70において、第1メモリセルの右ビットの論理状態を変化させる必要がない場合、ステップ71を実行する。ステップ71では、左ビットの論理状態が変化するかどうかについての判断が行われる。左ビットの論理状態が変化する場合、ステップ78を実行する。ステップ78では、第2極性を有する電荷をメモリセルの右側に注入して、チャネルの中心領域の電子分布を無くす、または除去する。ステップ78の後、ステップ74を実行する。ステップ74において、メモリ部分に対する書き込みが完了したかどうかについての判断が行われる。メモリモジュールに対する書き込みが完了した場合、書き込みモードをステップ76で終了させる。書き込みが完了していない場合、ステップ66に戻り、そして上述の方法を後続のメモリセルに対して繰り返すことにより本方法を繰り返す。
【0012】
図5に示すのは、2ビットを使用し、かついずれのビットに対する書き込みも行われないメモリセル30の断面である。図示を簡単にするために、図2及び3に関連して使用したものと同じ参照番号を図5〜8に関連して使用する。2ビットはそれぞれ、電荷蓄積素子層40の左側及び右側に表示される。いずれのビットに対する書き込みも行われないので、電荷分布は電荷蓄積素子層40に生じない。従って、電子分布曲線の除去または変更は必要ない。
【0013】
図6に示すのは、2ビットを使用し、左側のビットに対する書き込みが行われず、右側のビットに対する書き込みが行われる構成のメモリセル30の断面である。結果として得られるホール分布85及び電子分布87を示す。この条件では、図3に関連して記載した電荷蓄積素子層40の左側部分及び中心部分の電子分布の除去または変更を行なう。
【0014】
図7に示すのは、2ビットを使用し、左側のビットに対する書き込みが行われ、右側のビットに対する書き込みが行われない構成のメモリセル30の断面である。結果として得られる電子分布89及びホール分布91を示す。この条件では、図3に関連して記載した電荷蓄積素子層40の右側部分及び中心部分の電子分布の除去または変更を行なう。ここで、図3には、電荷蓄積素子層40の左側部分の除去を行なうための電圧バイアス条件を示していることに留意されたい。従って、電荷蓄積素子層40の右側部分の除去を行なうために、ソース電圧Vは接地基準電位に設定する必要があり、そしてドレイン電圧は約4ボルトに設定される。ウェルはほぼゼロ電位またはゼロよりも若干低い電位に維持される。更に、ゲート電圧は−5ボルトのような小さな負電圧に維持される。
【0015】
図8に示すのは、両方のビットに対する書き込みが行われる構成のメモリセル30の断面である。結果として得られる電子分布93及び95を示す。この場合も同様に、2ビットは、電荷蓄積素子層40の左側及び右側にそれぞれ表示される。両方のビットに対する書き込みが行われるので、メモリセルのトランジスタは常に非導通である。その結果、2ビットの論理状態を判別する必要がない。従って、電子分布曲線の除去または変更は必要ではない。更に、メモリシステムのバルク消去を行なうと、このビットセルの電荷分布が除去されて電荷蓄積素子層40の中心における電子の正味の蓄積が無くなる。
【0016】
図9に示すのは、図4の書き込み方法に従って書き込みが行われるメモリアレイ102を含むメモリシステム100である。メモリアレイ102は、行103のような行、及び列105のような列を有し、これらの行及び列はこれらの行列の交点でメモリセルを形成する。図示の構成では、メモリシステム100はアドレスを受け取る行デコーダ104を有する。行デコーダ104はメモリアレイ102と双方向バスを通して信号の授受を行なう。列デコーダ106も、メモリアレイ102と双方向バスを通して信号の授受を行なう。列デコーダ106は、センスアンプ兼バッファ108の入力に接続される出力を有する。書き込み/消去回路110は、行デコーダ104、列デコーダ106、及びセンスアンプ/バッファ108の各々に接続される。書き込み/消去回路110は通常、書き込み回路112及び消去回路118を有する。消去回路118は行デコーダ104、列デコーダ106、及びセンスアンプ/バッファ108に、書き込み/消去回路110の図示の接続を通して接続される。書き込み回路112は通常、検出回路114を有し、この検出回路は、センスアンプ/バッファ108の出力に接続される入力を有する。検出回路114の入力/出力は、双方向バスを通して判定回路116に接続される。データを授受するデータバスは、書き込み/消去回路110の書き込み回路112及び消去回路118に接続される。アドレス入力も、列デコーダ106のアドレス入力に接続される。センスアンプ/バッファ108は、出力データを供給する出力を有する。行デコーダ104は、書き込み/消去回路110に双方向バスを通して接続される。
【0017】
動作状態では、メモリシステム100は、書き込み対象のメモリセルの入力メモリアドレスを受け取るように機能する。行デコーダ104及び列デコーダ106は、メモリセルアレイ102内の行及び列の交点の所定メモリセルを識別し、そして選択するように機能する。書き込み/消去回路110の書き込み回路は、図4に記載した書き込みステップを、複数のメモリセルを並列処理する形で実行するように機能する。検出回路114は、どのメモリセルが分布除去を必要としているかについて、好適には行毎に判断するように機能する。判定回路116は、メモリセルのどちら側に除去電荷を注入する必要があるのかについて判断するように機能する。除去操作を行毎に実行する利点は、書き込み実効速度が単一のHCIステップを使用する書き込みに比べて大きく劣化することがないことである。HCI書込み操作は、本明細書に記載するホットホール注入除去操作に比べると速い。従って、ホットホール注入を行毎に行なうことによって、書き込み時間を大きく減らすことができる。
【0018】
一の構成では、メモリ書き込みの第2ステップは、一行全部を負電位にバイアスすることにより行毎に実行する。特に、ソースまたはドレインの内の一方を、除去が左側/右側によって変わる形で必要となるかどうかに基づいて正にバイアスする。小さなゲート電圧及びソース/ドレイン電圧による書き込みによって、ホール注入を使用する低電流除去操作が可能になるので、並列操作が可能になる。
【0019】
別の構成では、メモリ書き込みの第2ステップ64は、一列全部を正電位にバイアスすることにより列毎に実行する。特に、或る列のソースまたはドレインの内の一方をまず正にバイアスし、同時にソースまたはドレインの内の他方を接地電位に保持し、更に一つ以上の行を除去が必要かどうかに基づいて負にバイアスする。除去は、異なる電荷状態がメモリセルの2ビットに記憶される場合にのみ必要になる。ソースが最初に正電位にバイアスされる場合、除去は、負にバイアスされる行に対応する電荷蓄積媒体のソース側及び中心領域において行われる。次のステップでは、同じ列のドレインが正にバイアスされ、そして手順が繰り返される。小さなゲート電圧及びソース/ドレイン電圧による書き込みによって、ホール注入を使用する低電流除去操作が可能になるので、並列操作が可能になる。
【0020】
図10は、図2のメモリセル30について更に詳細を示したものであり、この場合、電
荷蓄積素子層40には、単層に並んだドット群、すなわちナノ結晶122のようなナノクラスタまたはナノ結晶を有する層120を用いる。図示を簡単にするために、図2におけるものと等価な、または同じである図10の構成要素には同じ番号を付している。層120はゲート誘電体38の上に堆積させ、そして電荷トラップ層として機能する。ゲート誘電体38は堆積または成長により形成される。各結晶が例えば約50オングストロームの直径を有するナノ結晶単層膜またはナノ結晶多層膜のいずれかを堆積させる。制御誘電体42及びゲート電極44を含む2ビットメモリセルの他の全ての構成部分が前に記載したように形成される。
【0021】
図11は、図2のメモリセル30の別の構成について更に詳細を示したものであり、この場合、電荷蓄積素子層40には、サイト126のような電荷トラップサイトを含む窒化物または他の材料から成る層124を用いる。ここでも同じように、図示を簡単にするために、図2におけるものと等価な、または同じである図11の構成要素は同じ番号を付している。ゲート誘電体38は堆積または成長により形成される。サイト126のような電子及び/又はホールトラップサイトを含む材料から成る単層膜または多層膜を堆積させる。制御誘電体42及びゲート電極44を含む2ビットメモリセルの他の全ての構成部分が前に記載したように形成される。
【0022】
これまで、メモリセルが個別電荷蓄積素子を備える層を有するメモリシステムに使用するメモリ及び書き込み方法を提供してきたことを理解されたい。2ステップ書き込み方法を使用して、このようなメモリに従来から使用されるゲート電圧よりも非常に小さいゲート電圧が可能になる。2ビットメモリセルの中心領域内部の電荷分布の選択的変更または除去は、書き込み操作に長い余分な時間が加わることなく行われる。本方法では、メモリセルの少なくとも一つの部分に書き込み値を書き込む。第1極性を有する電荷は、メモリセル内の第1の複数の個別電荷蓄積素子に注入される。第2極性を有する電荷は、第1の複数の個別電荷蓄積素子の一部に注入される。第1の複数の個別電荷蓄積素子を使用して書き込み値を表わす。第1極性を有する電荷の注入は電子によって行われ、第2極性を有する電荷の注入はホールによって行われる。第1極性を有する電荷を注入する前に、メモリセルの少なくとも一つの部分の現在の論理状態が書き込み値と異なるかどうかについての判断が行われる。書き込み値は、論理状態1または論理状態0の内のいずれかである。一の構成では、メモリは不揮発性メモリである。
【0023】
別の構成では、メモリは電気的消去可能なプログラマブルメモリである。メモリセルは第1部分及び第2部分を有し、第1の複数の個別電荷蓄積素子はメモリセルの第1部分に位置する。メモリセルの第1部分の現在の論理状態が書き込み値と異なるかどうかについての判断が行われる。メモリセルの第1部分の現在の論理状態が書き込み値と異なる場合、第1極性を有する電荷の注入が行なわれる。メモリセルの第2部分に書き込まれる第2書き込み値が第1書き込み値と異なるかどうかについての判断が行われる。第2書き込み値が第1書き込み値と異なる場合、第2極性を有する電荷の注入が行なわれる。第1極性を有する電荷は、メモリセルの第2部分の内部の第2の複数の個別電荷蓄積素子に注入される。第2極性を有する電荷は、第2の複数の個別電荷蓄積素子の一部に注入される。第2の複数の個別電荷蓄積素子を使用して第2の書き込み値を表わす。任意選択であるが、第1極性を有する電荷を注入する前記ステップの前に、メモリセルを消去状態にする。メモリは、第1極性を有する電荷を、メモリセルの一部の内部の第1の複数の個別電荷蓄積素子に注入する回路を有する。回路は、第2極性を有する電荷を第1の複数の個別電荷蓄積素子の一部に注入する。書き込み値は第1の複数の個別電荷蓄積素子から読み出される。第2極性を有する電荷を注入する回路は、1メモリ行内の複数のメモリセルに電荷を同時に注入することができる。別の構成では、メモリセルは第1部分及び第2部分を有し、第1部分は第1状態を有し、第2部分は第2状態を有する。センスアンプは前記メモリセルに接続され、前記センスアンプは、前記第1部分の第1状態及び前記第2部分の第2状
態をセンスする。書き込み回路はセンスアンプに接続されるので、第1状態と第2状態との比較に基づいて、電荷が前記第1部分及び前記第2部分の内の少なくとも一方に選択的に注入される。電荷は、メモリセルの少なくとも一つの部分に対する書き込みが行なわれている間に選択的に注入される。電荷は、メモリセルの少なくとも一つの部分に対する書き込みが行なわれている間に選択的に注入されるホールを有する。メモリセルは一つのメモリセル行の内部に位置し、そして電荷は、行内部の複数のメモリセルに、複数のメモリセルに保持される論理状態に基づいて注入される。電荷は、第1状態及び前記第2状態が反対の状態である場合に選択的に注入される。電荷は電子により構成される。
【0024】
これまでの明細書において、本発明について特定の実施形態を参照しながら記載してきた。しかしながら、この技術分野の当業者であれば、種々の変形及び変更を、以下の請求項に示す本発明の技術範囲から逸脱しない範囲において加え得ることが分かるであろう。例えば、本明細書において議論したメモリセルは特定の論理1及び論理0のデジタル値を記憶するとして記載されてきたが、本書き込み方法を使用して、論理1及び論理0の値とは異なる情報値(すなわち、更に別の状態または値を表わす値)を記憶することができることを理解されたい。また、蓄積媒体は窒化物とは異なる誘電体とすることができる、例えば酸化シリコンに挿入されるシリコン−ナノ結晶とすることができる。従って、明細書及び図は、制限的な意味ではなく、例示として捉えられるべきであり、そしてこのような変形は全て、本実施形態の技術範囲に含まれるものである。
【0025】
効果、他の利点、及び技術的問題に対する解決法について、特定の実施形態に関して上に記載してきた。しかしながら、効果、利点、及び問題解決法、及びこのような効果、利点、または問題解決法をもたらし、またはさらに顕著にし得る全ての要素(群)が、いずれかの請求項または全ての請求項の必須の、必要な、または基本的な特徴または要素であると解釈されるべきではない。本明細書で使用されるように、「comprises」、「comprising」という用語、または他の全てのこれらの変形は包括的な意味で適用されるものであり、一連の要素を備えるプロセス、方法、製品、または装置がこれらの要素のみを含むのではなく、明らかには列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、製品、または装置に固有の他の要素も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は例を通して示され、そして添付の図によって制限されるものではなく、これらの図では、同様の参照記号は同様の構成要素を指す。
【図1】大きいゲート電圧を使用して書き込みが行われ、かつ結果として狭い電子分布を示す従来のメモリセルの断面図。
【図2】小さいゲート電圧を使用する第1ステップで書き込みが行われ、かつ結果として本発明による広い電子分布を示すメモリセルの断面図。
【図3】小さいゲート電圧を使用する第2ステップで書き込みが行われ、かつ本発明によるホール分布及び電子分布の両方を示すメモリセルの断面図。
【図4】図2及び3に示すメモリ書き込み方法のフローチャートを示す。
【図5】いずれのビットに対する書き込みも行われない2ビットメモリセルの断面図。
【図6】最も右のビットに対する書き込みが行われる2ビットメモリセルの断面図。
【図7】最も左のビットに対する書き込みが行われる2ビットメモリセルの断面図。
【図8】両方のビットに対する書き込みが行われる2ビットメモリセルの断面図。
【図9】図4の書き込み方法に使用するメモリアーキテクチャ図。
【図10】本明細書に記載する2ビットメモリセルの電荷蓄積素子層の更に詳細な一の構成図。
【図11】本明細書に記載する2ビットメモリセルの電荷蓄積素子層の更に詳細な別の構成図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリセルの少なくとも一つの部分に第1の書き込み値を書き込む方法であって、
第1極性を有する電荷を、メモリセル内の第1の複数の個別電荷蓄積素子に注入する工程と、
第2極性を有する電荷を、第1の複数の個別電荷蓄積素子の一部に注入する工程と、
第1の複数の個別電荷蓄積素子を使用して第1の書き込み値を表わす工程と、
からなる方法。
【請求項2】
第1極性を有する電荷の注入は電子によって行われ、第2極性を有する電荷の注入はホールによって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
更に、
第1極性を有する電荷を注入する前記ステップの前に、メモリセルの少なくとも一つの部分の現在の論理状態が第1の書き込み値と異なるかどうかについて判断する請求項1記載の方法。
【請求項4】
更に、
メモリセルの第1部分及び第2部分を識別する工程と、
第1の複数の個別電荷蓄積素子をメモリセルの第1部分に配置する工程と、
メモリセルの第1部分の現在の論理状態が第1の書き込み値と異なるかどうかについて判断する工程と、
メモリセルの第1部分の現在の論理状態が第1の書き込み値と異なる場合に、第1極性を有する電荷を注入する前記ステップを実行する工程と、
メモリセルの第2部分に書き込まれる第2の書き込み値が第1の書き込み値と異なるかどうかについて判断する工程と、
第2の書き込み値が第1の書き込み値と異なる場合に、第2極性を有する電荷を注入する前記ステップを実行するする工程と、
からなる請求項1記載の方法。
【請求項5】
更に、
メモリセルの第1部分及び第2部分を識別する工程と、
第1の複数の個別電荷蓄積素子をメモリセルの第1部分に配置する工程と、
第1極性を有する電荷を、メモリセルの第2部分中の第2の複数の個別電荷蓄積素子に注入する工程と、
第2極性を有する電荷を、第2の複数の個別電荷蓄積素子の一部に注入する工程と、
第2の複数の個別電荷蓄積素子を使用して第2の書き込み値を表わす工程と、
からなる請求項2記載の方法。
【請求項6】
第1極性を有する電荷を、メモリの一部中の第1の複数の個別電荷蓄積素子に注入する手段と、
第2極性を有する電荷を、第1の複数の個別電荷蓄積素子の一部に注入する手段と、
書き込み値を第1の複数の個別電荷蓄積素子から読み出す手段と、
を備えるメモリ。
【請求項7】
第2極性を有する電荷を注入する手段は電荷を、一つのメモリ行の複数のメモリセルに同時に注入することができる請求項6記載のメモリ。
【請求項8】
第2極性を有する電荷を注入する手段は電荷を、一つのメモリ列の複数のメモリセルに同時に注入することができる請求項6記載のメモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−531954(P2007−531954A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520273(P2006−520273)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/022435
【国際公開番号】WO2005/024841
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】