説明

光ファイバ保持部材、光電変換端末、光電変換モジュール、および光電変換モジュールの製造方法

【課題】 製造工程における歩留まりを向上することが可能な光ファイバ保持部材、光電変換端末、光電変換モジュール、および光電変換モジュールの製造方法を提供する
【解決手段】 本発明の光ファイバ保持部材は、樹脂製基体10と、樹脂製基体10に貫通形成された光ファイバ保持穴11と、光ファイバ保持穴11が開口する樹脂製基体の第1の面S1から、少なくとも第1の面S1と異なる第2の面S2および第3の面S3に連続して形成され、第1の面S1及び第2の面S2、第3の面S3それぞれにおいて少なくとも一部が露出し、第2の面S2における露出部が第2の面S2から突出して形成されている電気配線部12とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ保持部材、光電変換端末、光電変換モジュール、および光電変換モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを面発光レーザ等の光電変換素子に直接結合させた(バットジョイント)光電変換部品が提案されている。近年の電子デバイスの性能向上、動作速度向上で動作周波数が上昇するのに伴い、電気配線の伝送損失や雑音、電磁障害が増大する問題に対し、電気配線を短くして信号品質を確保する試みが為されている(特許文献1を参照)
【0003】
特許文献1に記載の技術では、光伝送路と光結合され且つ電極を有する光半導体素子、および光半導体素子の電極に電気的に接続された引出し電極を有する光電気結合体が、パターン電極に電気的に接続される。そして、パターン電極の光電気結合体が搭載された面と反対側の面に光素子駆動ICを電気的に接続して搭載する。このようにすることで、光半導体素子と光素子駆動回路とを短距離で接続し、高速動作性能を向上する光半導体モジュールを開示している。光電気結合体は、側面に形成された引き出し電極に設けられたバンプ電極を介してパターン電極と電気的に接続される。また、光素子駆動ICもパターン電極とバンプ電極を介して電気的に接続される。
【0004】
上記光電気結合体をはじめとする電子部品を回路基板に設けられたパターン電極にバンプ電極を介して搭載する方法として、フリップチップ実装が知られている。例えば特許文献2には、超音波発信手段を備えたチップボンディング装置により、半導体チップの電極端子と回路基板上の回路パターンとを超音波エネルギーにより金属バンプを介して金属接合する超音波接合法が開示されている。この超音波接合法は、短時間で接合可能であり、また、接合に要する温度が低温で済み、かつ低コストである点で、はんだ接合法などと比較して有利である。なお、金属バンプは、銅、アルミ、金のメッキによる電極上に、金、アルミなどの金属を半球状に突出形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−59882号公報
【特許文献2】特開平1−146337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波接合法は、接合強度においてはんだ接合法などと比べて弱いため、接合部における接合強度信頼性を確保するために、接合された半導体チップと回路基板を樹脂でモールドする処理が行われる。しかしながら、バンプ電極における接合強度が不足すると、樹脂でモールドする処理を施す工程等においてバンプ電極が欠落することがある。即ち、製造工程における歩留まりを向上するためには、バンプ電極の接合強度を向上する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の光電気結合体及び光半導体モジュールの構成では、充分にバンプ電極における接合強度を確保することが難しい。フリップチップ実装では、電子部品のバンプ電極が形成された面と反対側からチップボンディング装置で吸着して固定し、超音波エネルギーを印加するので、光電気結合体は引き出し電極を形成した側と反対の側面から吸着される。即ち、光電気結合体の本体部は特許文献1にも記載されるように一般に樹脂で形成されるので、チップボンディング装置から印加される超音波振動に本体部が追随できず、超音波エネルギーが発散されてしまい、バンプ電極部に充分に印加されない。一方、バンプ電極部に十分な超音波エネルギーを供給すべく、チップボンディング装置からの超音波出力を大きくすれば、光電気結合体が破損してしまうという問題がある。
【0008】
超音波エネルギーを光素子駆動ICが搭載された回路基板側から印加する方法も採用され得る。回路基板としてはSiやGaAs等の無機材料も採用することで、バンプ電極部に充分に超音波エネルギーを印加できると考えられる。しかしながら、この方法では光素子駆動ICに加わる超音波エネルギーが大きく、光素子駆動ICが破損してしまい、結果として製造工程における歩留まりの向上が困難になるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、製造工程における歩留まりを向上することが可能な光ファイバ保持部材、光電変換端末、光電変換モジュール、および光電変換モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光ファイバ保持部材は、(1)第1の面と、第2の面と、第3の面とを含む樹脂製基体と、(2)樹脂製基体に貫通形成され、一方が前記第1の面に開口する光ファイバ保持穴と、(3)第1の面と、第2の面および第3の面に連続して形成され、第2の面における露出部が第2の面から突出して形成されている電気配線部と、を備えることを特徴とする。なお(1)樹脂製基体において、第2の面と前記第3の面は、互いに対向した位置に配置されていることが好ましい。
【0011】
上記(3)電気配線部は、長尺配線と短尺配線を備え、複数の長尺配線及び短尺配線が第1の面において交互に配置されており、長尺配線が第1の面と、第2の面および第3の面に連続して形成され、第2の面における露出部が第2の面から突出して形成されていても良い。
【0012】
本発明の光電変換端末は、上記の本発明にかかる光ファイバ保持部材と、第1の面における電気配線部の露出部と電気的に接続され、受光部又は発光部が開口部に位置決めして搭載された光電変換素子と、光ファイバ保持穴に固着された光ファイバと、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の光電変換モジュールは、上記の本発明にかかる光電変換端末と、パターン電極が形成された回路基板とを備え、第3の面における電気配線部の露出部が、パターン電極と導電性バンプで接合されている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の光電変換モジュールの製造方法は、上記の本発明にかかる光電変換端末及び回路基板を用意する工程と、第3の面における電気配線部の露出部に導電性バンプを設ける工程と、第2の面に突出して設けられた電気配線部の露出部を、超音波を印加可能なボンディングツールに接触させて固定する工程と、回路基板と第3の面を対向して配置し、導電性バンプをパターン電極を押圧して接触させる工程と、ボンディングツールから超音波エネルギーを印加して、パターン電極および第3の面の電気配線部を、導電性バンプを介して電気的に接合する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光ファイバ保持部材、光電変換端末、光電変換モジュール、および光電変換モジュールの製造方法によれば、ボンディングツールに固定される第2の面において、電気配線部の露出部が第2の面から突出して形成されているので、ボンディングツールを電気配線部に直接接触させて超音波エネルギーを印加することができる。そのため、超音波出力を過剰にすることなく、導電性バンプに効率よく超音波エネルギーを供給することができるので、製造工程における歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光ファイバ保持部材の一例を示す図である。(a)は全体斜視図、(b)は部分Aにおける断面図、(c)は部分Bにおける断面図である。
【図2】本発明の光電変換端末の一例を示す図である。(a)は全体斜視図、(b)は部分Aにおける断面図、(c)は部分Bにおける断面図である。
【図3】本発明の光電変換モジュールの製造方法を示す図である。(a)〜(c)は各工程を説明する断面図であり、A,Bはそれぞれ図2に示す光電変換端末の部分A,Bにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0018】
(光ファイバ保持部材)
図1は、本発明の光ファイバ保持部材の一例を示す図である。光ファイバ保持部材1は、樹脂製基体10、光ファイバ保持穴11、電気配線部12を備える。
【0019】
図1(a)および図1(b)に示すように、樹脂製基体10は、第1の面S1、第2の面S2、第3の面S3を含み、光ファイバ保持穴11の一方が第1の面S1に開口するよう貫通形成されている。光ファイバ保持孔11はガラス部保持部11a及び被覆部保持部11bを備え、後述するように光ファイバが位置決め固定される。このような光ファイバ保持孔11は、例えば250μmピッチで複数(例えば4つ)設けられている。以後、光ファイバ保持穴11のガラス部保持部11aが開口する面を第1の面S1と称する。
【0020】
第1の面S1には、光ファイバ保持部材1の厚さ方向へ延在する電気配線部(リードフレーム)12が露出して形成され、長尺配線12aと短尺配線12bが交互に設けられている。これらの電気配線部12は、例えば、インサート成型によって樹脂製基体10の第1の面S1に一体的に設けられている。つまり、この樹脂製基体10は、複数の電気配線部12とともに一体成型されている。
【0021】
そして、図1(c)に示すように、電気配線部12のうち、長尺配線12aは少なくとも第1の面S1と異なる第2の面S2及び第3の面S3に連続して形成されている。そして、第1の面S1及び第2の面S2、第3の面S3それぞれにおいて少なくとも一部が露出している。さらに、第2の面S2における露出部が第2の面S2から突出して形成され、突出部13を形成している。突出量は例えば50μm程度である。
【0022】
なお、図1においては電気配線部12は第1の面S1と隣接する上下面に連続して形成されているが、必ずしも隣接面に形成されていなくてもよい。即ち、第1の面と第2の面の間に面取り部が設けられているような場合であっても、第1の面S1と連続して形成されてさえいれば、第1の面S1と異なる面を第2の面S2及び第3の面S3として設定できる。これは、後述する光電変換モジュールの製造方法における実施形態に応じて、適宜変更され得ることを意味する。
【0023】
また、電気配線部12は、第1の面S1及び第2の面S2、第3の面S3それぞれにおいて少なくとも一部が露出していればよい。即ち、各面において、電気配線部12の一部が樹脂製基体に覆われていても良い。
【0024】
樹脂製基体10は絶縁性樹脂により形成されており、例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを主体として構成することができる。また、両者を混合した材料であっても良く、例えばガラスやアルミナのフィラーを混合したエポキシ樹脂を用いれば、成形工程における寸法変化を抑制できる。例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)を主成分とする熱可塑性樹脂から形成されていれば、精密成形性に優れ、線膨張係数が小さく、耐熱性にも優れるため好ましい。
【0025】
(光電変換端末)
図2は、本発明の光電変換端末の一例を示す図である。光電変換端末2は、本発明の光ファイバ保持部材1に加え、光電変換素子20、光ファイバテープ21を備える。
【0026】
光電変換素子20は、光ファイバ保持部材1における第1の面S1に搭載されている。光電変換素子20は、基板20a上に受光部または発光部20bが形成されている。受光部または発光部20bには、図示しないアノード電極及びカソード電極が電気的に接続して形成されている。このアノード電極及びカソード電極と、光ファイバ保持部材1における第1の面S1に設けられた長尺配線12aと短尺配線12bのそれぞれおける露出部と、導電性バンプ22を介して電気的に接続されている。これにより、電気配線部12を介して、容易に光電変換素子20に駆動電流を供給可能である。
【0027】
光電変換素子20は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)やフォトダイオードなどの発光素子または受光素子である。なお、樹脂製基体10には、第1の面S1の幅方向半分に発光素子からなる光電変換素子20を取り付け、残りの幅方向半分側に受光素子からなる光電変換素子20を取り付ける場合もある。
【0028】
導電性バンプ22は、銅、アルミ、金等のメッキにより電気配線部12上に半球状に突出形成した金属バンプであるのが好適である。この導電性バンプ22による接続は、超音波振動または熱によってバンプ22を介してアノード電極及びカソード電極と電気配線部12とを接続するフリップチップ接続で行われる。あるいは、異方性導電フィルム(ACF)を用いて接着することも可能である。このようにして、受光部又は発光部20bは、第1の面S1に開口する光ファイバ保持孔11の開口部に位置決めして搭載され得る。
【0029】
なお、図2(b)(c)に示すように、導電性バンプ22は、光電変換素子20の受光部又は発光部20bを挟んだ両側に形成されていることが好ましい。また、両側において、導電性バンプ22と電気配線部12との接触面積和が略等しく設定されていることが好ましい。これにより、光ファイバ保持部材1の電気配線部12に、導電性バンプ22を押圧して超音波フリップチップ実装する場合であっても、光電変換素子20の受光部又は発光部20bを挟んだ両側で、略均等に圧力が加わることとなり、片側に圧力が集中することによる受光部又は発光部20bとガラスファイバ21cの結合面の傾斜やずれを防止し、光ファイバ保持部材1と高精度に位置決めして搭載することができる。
【0030】
光ファイバ保持孔11には光ファイバテープ21が固着されている。光ファイバテープ21は、光ファイバ21aが複数本(本実施形態で4本)並列され、テープ被覆21bにより被覆されて形成されている。その先端部はガラスファイバ21cが露出されている。光ファイバ保持孔11は、図2(b)(c)において紙面と垂直方向に複数設けられており、それぞれが1本ずつ光ファイバ21aを保持する。光ファイバ21aの被覆部21b及びガラスファイバ21cは、それぞれ被覆部保持部11b及びガラス部保持部11aに収容される。ガラスファイバ21cは、その先端部が平滑な面に形成され、第1の面S1と同一面上または光ファイバ保持孔11内へ少し引き込んだ位置に配置されている。光ファイバ21aとしては、例えばコア径50μm、クラッド径125μm、被覆外径250μmのマルチモード光ファイバを用いることで、軸線方向或いは調芯方向に多少のずれを許容して取り付けることができる。
【0031】
なお、光電変換素子20とガラスファイバ21cの光結合部における反射戻り光による伝送特性悪化を防止する観点から、受光部又は発光部20bの端面とガラスファイバ21cの端面が平行でないことが好ましい。即ち、光ファイバ保持部材1の第1の面S1または/およびガラスファイバ21cの端面が光軸方向と垂直な面から傾斜して(例えば4°)形成されていても良い。さらに、光結合における高次モード光の発生を抑制し、モードスペックルノイズの発生による伝送品質の悪化を避けるためには、受光部又は発光部20bとガラスファイバ21cの光軸が一致していることが好ましい。即ち、光ファイバ保持部材1の第1の面S1(即ち、(受光部又は発光部20bの端面)は光軸と垂直な面と一致させて形成した上で、ガラスファイバ21cの端面が光軸方向と垂直な面から傾斜して形成されていることが好ましい。
【0032】
ガラスファイバ21c及び被覆部21bは、接着材として機能するアンダーフィル23によって接着されて固定される。このアンダーフィル23は、樹脂製基体10の第1の面S1と光電変換素子20との間にも充填されており、このアンダーフィル23によって光電変換素子20と樹脂製基体10とが強固に接合されている。このアンダーフィル23は、樹脂製基体10に対して熱処理を施すことにより硬化されている。
【0033】
(光電変換モジュール及びその製造方法)
図3は、本発明の光電変換モジュール及びその製造方法を示す図である。(a)〜(c)は各工程を説明する断面図であり、(c)は特に本発明の光電変換モジュールを示す。(a)〜(c)におけるA,Bはそれぞれ図2に示す光電変換端末の部分A,Bにおける断面図である。
【0034】
光電気変換モジュール3は、光電変換端末2、回路基板30、導電性バンプ31を備える。光電変換端末2を構成する光ファイバ保持部材1の第3の面S3に露出して形成された電気配線部12と、回路基板30に設けられた図示しない回路面とが、導電性バンプ31を介して電気的に接続されている。回路基板30には、図示しない回路面に、電気デバイスが実装されている。なお、電気デバイスは、例えば、ドライバ、トランスインピーダンスアンプなどの光電変換素子駆動ICである。
【0035】
回路基板30は、上記電気デバイスが実装されるパターン電極が表面に露出して設けられていれば良く、種々の電子部材等を適宜使用できる。即ち、無機材料であっても、有機材料であっても良い。無機材料である回路基板30は、例えばSiやGaAs、アルミナや窒化アルミ、窒化シリコン等からなる基板を用いることができる。有機材料である回路基板30としては、例えばコスト的に有利なフェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを主体として構成された基板を用いることができる。また、有機材料に無機材料を混合した材料であっても良く、例えばガラスやアルミナのフィラーを混合したエポキシ樹脂を用いれば、基板作製時の体積変化を抑制することができる。
【0036】
次に、上記の光電変換モジュールの製造方法を説明する。まず、図3(a)に示すように、光電変換端末2及び回路基板30を用意する。次に、光ファイバ保持部材1の第3の面S3に、第1の面S1から連続形成された電気配線部12の露出部に、導電性バンプ31を設ける。
【0037】
導電性バンプ31は、銅、アルミ、金等のメッキによる電気配線部12上に、金、アルミなどの金属を半球状に突出形成したものである。バンプは公知の方法により電気配線部12上に形成すれば良く、その方法は問わない。例えば、貫通孔を備え、超音波振動を印加可能なバンプ形成用治具(キャピラリ)に、導電性バンプ31と同素材の金属線を挿入し、先端を貫通孔から押し出し、かかる金属線の先端をアーク放電等により加熱して、球状部を形成する。そして、この球状部を電気配線部12に押圧しながら超音波振動を印加し、球状部と電気配線部12を接合する。最後に、キャピラリを引き上げて球状部から引き離すことによって金属線を球状部から切り離し、導電性バンプ31の形成が完了する。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、光ファイバ保持部材1の第2の面S2に突出して設けられた電気配線部12の露出部(突出部13)を、超音波を印加可能なボンディングツール32に接触させて固定する。ボンディングツール32には吸着穴32aが貫通形成され、図示しない吸着器に接続されている。この吸着穴32aから大気を吸引し、吸引による真空吸着力によって、光電変換端末2はボンディングツール32の下面の吸着穴32a開口部に吸着固定される。ボンディングツール32は、光電変換端末2を回路基板30に対して近接及び離反方向に移動可能である。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、回路基板30と光ファイバ保持部材1の第3の面S3を対向して配置し、ボンディングツール32を回路基板30に対して近接させ、バンプ31を回路基板30上の図示しないパターン電極と押圧して接触させる。そして、ボンディングツール32から超音波振動を印加して、回路基板30上の図示しないパターン電極と光ファイバ保持部材1の第3の面S3を、バンプ31を介して電気的に接合する。ボンディングツール32から突出部13、電気配線部12、を介して超音波エネルギーがバンプ31に印加され、その際に生じる摩擦によりバンプ31と回路基板30上の図示しないパターン電極が接合される。
【0040】
ここで、本発明の光ファイバ保持部材1及び光電変換端末2は、電気配線部12が、光ファイバ保持穴11の開口部が位置する樹脂製基体10の第1の面S1から、第2の面S2および第3の面S3に連続して形成され、第2の面S2における露出部が第2の面S2から突出して形成されているので、ボンディングツール32を電気配線部12に直接接触させて超音波エネルギーを印加することができる。即ち、従来のようにボンディングツール32に樹脂製基体10を吸着し、樹脂製基体10を介して電気配線部12に超音波エネルギーを印加したり、ボンディングツール32に回路基板を吸着して超音波エネルギーを印加しなくても良い。そのため、超音波エネルギーを光ファイバ保持部材1及び光電変換端末2の樹脂製基体10に設けられた電気配線部12を介して、直接バンプ31に印加することが可能であるから、超音波出力を過剰にすることなく、バンプ接合部に効率よく超音波エネルギーを供給することができる。即ち、製造工程における歩留まりを向上することができる。
【0041】
さらに付言すれば、従来のようにボンディングツール32に樹脂製基体10を吸着し、樹脂製基体10を介して電気配線部12に超音波エネルギーを印加すると、樹脂製基体10は金属である電気配線部12の材料より硬度の低い有機材料で構成されているため、超音波振動により微小な形状の変動が生じやすい。つまり、超音波振動に樹脂製基体10が追随できず、超音波振動エネルギーが樹脂製基体10の形状変動に消費されることとなるから、超音波振動が逃げやすいからである。これに対し、超音波エネルギーを樹脂製基体10に設けられた電気配線部12を介して、直接バンプ31に印加することができるので、超音波エネルギーの損失を抑制する事ができる。その結果、好適に超音波エネルギーを伝導することができ、超音波出力を過剰にすることないので、製造工程のおける光ファイバ保持部材1、光電変換端末2、および光電変換モジュール3の損傷を防止することができる。
【0042】
また、ボンディングツール32によりバンプ31を回路基板30上の図示しないパターン電極と押圧して接触させるには、電気配線部が形成されている第2の面S2と第3の面S3は、樹脂製基体10において互いに対向する位置に配置されていることが好ましい。このようにすれば、ボンディングツール32を回路基板30に対して近接させる際の動作により、容易にバンプ31を回路基板30上の図示しないパターン電極に押圧することができる。押圧しながら超音波エネルギーを加えれば、超音波エネルギーを過剰に加えたり、接合部を加熱したりといった工程が不要になる場合があるため、より好ましいと言える。
【0043】
さらに、電気配線部12の短尺配線12aと長尺配線12bが第1の面S1において交互に設けられていることが好ましい。短尺配線12aは光ファイバ保持孔11の開口部をまたいで配置されるから、第2の面S2から第3の面S3に連続形成することができないため、長尺配線12bに接合される導電性バンプ32に対し、接合強度が小さくなる。これに対し、短尺配線12aと交互に長尺配線12bを配置することで、短尺配線12aに接合される導電性バンプ32の接合強度を補強することができる。その結果、光電変換モジュール3の製造工程における歩留まりの向上が可能である。
【0044】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において変形して実施することが可能である。例えば、上記実施形態において、電気配線部12は第1の面S1と隣接する上下面に連続して形成されているが、必ずしも隣接面に形成されていなくてもよい。即ち、樹脂製基体10が断面多角形である場合には、第1の面S1と連続して形成されてさえいれば、少なくとも第1の面S1と異なる面であれば第2の面S2及び第3の面S3として設定できる。この場合、樹脂製基体10における電気配線部12の突出部13は、ボンディングツール32の吸着面に対し、かかるボンディングツールに吸着保持される第2の面S2から突出して設けられていればよい。
【0045】
上記形態であれば、接合部に荷重を加えずに超音波接合を実施する場合に、製造工程における自由度を高めることができる。例えば、電気配線部が形成されている第2の面S2と第3の面S3は、樹脂製基体10において互いに対向する位置以外(例えば垂直方向に位置する面や、一定角度に傾斜している面を設けた場合)に配置されている場合であっても、当該面においてボンディングツール32に樹脂製基体10を吸着固定すれば、無用な荷重を加えることなく電気配線部12を通じて接合部に十分に超音波エネルギーを印加可能である。即ち、使用設備などの制約を考慮して所望の実施形態を適宜選択可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1:光ファイバ保持部材、2:光電変換端末、3:光電変換モジュール、
10:樹脂製基体、11:光ファイバ保持穴、12:電気配線部、12a:短尺配線、
12b:長尺配線、13:突出部、20:光電変換素子、20a:基板、
20b:受光部又は発光部、21:光ファイバテープ、21a:光ファイバ、
21b:テープ被覆、21c:ガラスファイバ、22,31:導電性バンプ、
23:アンダーフィル、30:回路基板、32:ボンディングツール、
32a:吸着孔、S1:第1の面、S2:第2の面、S3:第3の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、第2の面と、第3の面とを含む樹脂製基体と、
前記樹脂製基体に貫通形成され、一方が前記第1の面に開口する光ファイバ保持穴と、
前記第1の面と、前記第2の面および前記第3の面に連続して形成され、前記第2の面における露出部が前記第2の面から突出して形成されている電気配線部と
を備えることを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項2】
前記樹脂製基体において、前記第2の面と前記第3の面は、互いに対向した位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項3】
前記電気配線部は、長尺配線と短尺配線を備え、複数の前記長尺配線及び前記短尺配線が前記第1の面において交互に配置されており、
前記長尺配線が前記第1の面と、前記第2の面および前記第3の面に連続して形成され、前記第2の面における露出部が前記第2の面から突出して形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の光ファイバ保持部材と、
前記第1の面における前記電気配線部の露出部と電気的に接続され、受光部又は発光部が前記開口部に位置決めして搭載された光電変換素子と、
前記光ファイバ保持穴に固着された光ファイバと、
を備えることを特徴とする光電変換端末。
【請求項5】
請求項4に記載の光電変換端末と、
パターン電極が形成された回路基板とを備え、
前記第3の面における前記電気配線部の露出部が、前記パターン電極と導電性バンプで接合されている、
ことを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光電変換端末及び前記回路基板を用意する工程と、
前記第3の面における前記電気配線部の露出部に導電性バンプを設ける工程と、
前記第2の面に突出して設けられた前記電気配線部の前記露出部を、超音波を印加可能なボンディングツールに接触させて固定する工程と、
前記回路基板と前記第3の面を対向して配置し、前記導電性バンプを前記パターン電極を押圧して接触させる工程と、
前記ボンディングツールから超音波を印加して、前記パターン電極および前記第3の面の前記電気配線部を、前記導電性バンプを介して電気的に接合する工程と、
を含むことを特徴とする光電変換モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204421(P2012−204421A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65214(P2011−65214)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】