説明

光半導体用樹脂組成物、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材及びそれらを用いた光半導体素子

【課題】発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、ハウジング材への密着性に優れ、長期に亙って高輝度を維持することができる硬化物を得ることが可能な光半導体素子用樹脂組成物、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材及びそれらを用いた光半導体素子を提供する。
【解決手段】分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するシリコーン樹脂(A)と、前記エポキシ含有基と反応可能な酸無水物熱硬化剤(B)と、分子内に下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物(C)とを含有する光半導体素子用樹脂組成物。
【化1】


一般式(1)中、Rはハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルキル鎖、炭素数5〜8のシクロアルキル鎖、アルキル鎖を有し、ハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルコキシル鎖、又は、アルキル置換基若しくはハロゲン基を有してもよい炭素数1〜6のアリール基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が高く、発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、ハウジング材への密着性に優れ、長期に亙って高輝度を維持することができる硬化物を得ることが可能な光半導体素子用樹脂組成物、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材及びそれらを用いた光半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の光半導体素子の発光素子は、直接大気と触れると大気中の水分や浮遊するゴミ等により急速にその発光特性を低下させるため、通常、封止剤で封止された構造となっている。このような発光素子を封止する封止剤を構成する樹脂としては、接着力が高く力学的な耐久性に優れることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、酸無水物硬化剤とを含有する樹脂組成物が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、LEDは、自動車用ヘッドライトや照明等の高輝度が要求される用途に用いられるようになってきており、そのため、発光素子を封止する封止剤には、点灯時の発熱量の増大に耐え得る高い耐熱性とともに、高輝度化に伴う光劣化を防ぐ高い耐光性が要求されるようになってきている。しかしながら、エポキシ系樹脂からなる従来の封止剤は、充分な耐熱性及び耐光性を有するとは言い難く、自動車用ヘッドライトや照明等の高輝度が要求される用途では、エポキシ系樹脂からなる封止剤では対応できない場合があるという問題があった。
【0004】
また、従来のエポキシ樹脂からなる封止剤は、密着性が高い、透湿性が低い等の利点を有するものの、短波長の光に対する耐光性が低く、光劣化により着色してしまうという問題があった。また、耐熱性も充分とはいえないものであった。
【0005】
一方、エポキシ樹脂に代えて、青色から紫外領域の短波長の光に対する透過性が高いシリコーン樹脂をLEDの発光素子を封止する封止剤に用いる方法が知られているが、シリコーン樹脂は、一般に軟質で表面タック性を有しているため、発光素子表面に異物を付着させやすく、封止時に発光面を損傷することがあった。
【0006】
これらの耐光性の問題に対し、エポキシ樹脂と、酸無水系硬化剤と、シリコーン樹脂とを含有する樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような樹脂組成物を用いることによって、得られる硬化物は、一定の耐光性等を発揮することができる。
しかしながら、特許文献1又は2に開示された樹脂組成物を用いて光半導体を封止した場合であっても、充分な輝度を長期に亙って維持することは困難であった。
【特許文献1】特開2003−277473号公報
【特許文献2】特開2006−274249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、ハウジング材への密着性に優れ、長期に亙って高輝度を維持することができる硬化物を得ることが可能な光半導体素子用樹脂組成物、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材及びそれらを用いた光半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するシリコーン樹脂(A)と、前記エポキシ含有基と反応可能な酸無水物熱硬化剤(B)と、分子内に下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物(C)とを含有する光半導体素子用樹脂組成物である。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)中、Rはハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルキル鎖、炭素数5〜8のシクロアルキル鎖、アルキル鎖を有し、ハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルコキシル鎖、又は、アルキル置換基若しくはハロゲン基を有してもよい炭素数1〜6のアリール基を表す。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、光半導体素子の輝度の低下は、使用する封止剤の硬化物において、樹脂の特定の末端状態が過剰に存在することによって、光半導体素子において、電極腐食が生じることに起因するものであることを見出した。
すなわち、エポキシ基を含有する樹脂と酸無水物とを用いてなる封止剤の硬化物では、架橋反応の結果、樹脂末端にカルボキシル基が存在することとなる。このようなカルボキシル基が多く存在する封止剤を用いると、発光ダイオード等の光半導体素子を高温高湿下で駆動させた場合、リード電極部分に腐食が発生すると推察される。
これは、一般に、発光ダイオード等の光半導体素子のリード電極には反射率を高めるために反射金属層として銀メッキが施されているところ、銀の酸化や硫化を防止し、光沢性を出すために、銀メッキは、銀と様々な他の金属との合金で形成されている。ここで、他の金属としては、例えば、ニッケル、クロム等が用いられるが、硬化物中に有機酸であるカルボン酸が存在すると、これらの金属はイオンとして溶出したり、イオンとなった金属が更に化合物を形成したりすることになる。この結果、リード電極に設けられた銀メッキ層等の反射金属層は光沢性を失い、リード電極部分で光の吸収を生じるため、発光ダイオード等の光半導体素子の輝度が低下してしまうと考えられる。
【0012】
本発明者らは、更に鋭意検討した結果、硬化物を構成する樹脂末端を制御する手段を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の光半導体素子用樹脂組成物では、上記シリコーン樹脂(A)と上記熱硬化剤(B)との架橋反応により生成する樹脂末端のカルボキシル基に対して、上記化合物(C)を反応させることによって、該カルボキシル基の存在量が余剰にならないよう制御する結果、該カルボキシル基に起因する電極腐食の発生を抑制し、長期に亙って高輝度を維持しうる硬化物を得ることができる光半導体用樹脂組成物を得るものである。
【0013】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するシリコーン樹脂(A)(以下、単にシリコーン樹脂(A)ともいう)を含有する。
本明細書において、エポキシ含有基とは、エポキシ基を少なくとも基の一部に含んでいればよく、例えば、アルキル基、アルキルエーテル基等の他の骨格とエポキシ基を含有していてもよい基を意味する。
【0014】
上記シリコーン樹脂(A)において、上記エポキシ含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタン基等が挙げられる。なかでも、グリシジル基及び/又はエポキシシクロヘキシル基が好適であり、特にエポキシシクロヘキシル基が好適である。
【0015】
上記グリシジル基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0016】
上記エポキシシクロヘキシル基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0017】
このようなシリコーン樹脂(A)としては、分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、平均組成式が下記一般式(2)で表される樹脂成分を含有するものが好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
上記一般式(2)中、a、b、c及びdは、それぞれa/(a+b+c+d)=0〜0.2、b/(a+b+c+d)=0.3〜1.0、c/(a+b+c+d)=0〜0.5、d/(a+b+c+d)=0〜0.3を満たし、R〜Rは、少なくとも1個がエポキシ含有基を表し、上記エポキシ含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
上記シリコーン樹脂(A)が、平均組成式が上記一般式(2)で表される樹脂成分を含有することで、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、硬化させた硬化物の青色から紫外領域の短波長の光に対する透過性が高く、光半導体素子を封止したときに、発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、発光ダイオード等の光半導体素子の発光素子を封止した際に、該光半導体素子のハウジング材等への密着性に優れたものとなる。
なお、上記平均組成式が上記式(2)で表されるとは、本発明の光半導体素子用樹脂組成物のシリコーン樹脂(A)が上記式(2)で表される樹脂成分のみを含有する場合だけでなく、種々の構造の樹脂成分を含有する混合物である場合に、含有する樹脂成分の組成の平均をとると上記式(2)で表される場合も意味する。
【0021】
上記シリコーン樹脂(A)は、上記エポキシ含有基の含有量の好ましい下限が0.1モル%、好ましい上限が50モル%である。0.1モル%未満であると、上記シリコーン樹脂(A)と後述する熱硬化剤との反応性が著しく低下し、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化性が不充分となることがある。50モル%を超えると、上記シリコーン樹脂(A)と熱硬化剤との反応に関与しないエポキシ含有基が増え、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の耐熱性が低下することがある。より好ましい下限は5モル%、より好ましい上限は30モル%である。
なお、本明細書において、上記エポキシ含有基の含有量とは、上記シリコーン樹脂(A)の平均組成物中に含まれる上記エポキシ含有基の量を意味する。
【0022】
上記一般式(2)で表されるシリコーン樹脂(A)において、上記エポキシ含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表す。
【0023】
上記直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(2)で表されるシリコーン樹脂(A)において、(RSiO2/2)で表される構造単位(以下、2官能構造単位ともいう)は、下記一般式(2−2)で表される構造、すなわち、2官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基又はアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0025】
(RSiXO1/2) (2−2)
上記一般式(2−2)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0026】
また、上記一般式(2)で表されるシリコーン樹脂二官能において、(RSiO3/2)で表される構造単位(以下、3官能構造単位ともいう)は、下記一般式(2−3)又は(2−4)で表される構造、すなわち、3官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、3官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0027】
(RSiX1/2) (2−3)
(RSiXO2/2) (2−4)
上記一般式(2−3)及び(2−4)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0028】
また、上記一般式(2)で表されるシリコーン樹脂(A)において、(SiO4/2)で表される構造単位(以下、4官能構造単位ともいう)は、下記一般式(2−5)、(2−6)又は(2−7)で表される構造、すなわち、4官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の3つ若しくは2つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、4官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
(SiX1/2) (2−5)
(SiX2/2) (2−6)
(SiXO3/2) (2−7)
上記一般式(2−5)、(2−6)及び(2−7)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0029】
上記一般式(2−2)〜(2−7)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0030】
また、上記一般式(2)中、aは、a/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.2の関係を満たす数値である。0.2を超えると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の耐熱性が劣化することがある。
【0031】
また、上記一般式(2)中、bは、b/(a+b+c+d)の下限が0.3、上限が1.0の関係を満たす数値である。0.3未満であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物が硬くなりすぎ、クラック等が発生することがある。
【0032】
また、上記一般式(2)中、cは、c/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.5の関係を満たす数値である。0.5を超えると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物としての適正な粘度を維持するのが困難になる場合がある。
【0033】
更に、上記一般式(2)中、dは、d/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.3の関係を満たす数値である。0.3を超えると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物としての適正な粘度を維持するのが困難になる場合がある。
【0034】
上記一般式(2)で表されるシリコーン樹脂(A)について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記一般式(2)の(RSiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜0ppm付近に現れ、上記一般式(2)の(RSiO2/2及び(2−2)の2官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−30ppm付近に現れ、上記一般式(2)の(RSiO3/2、(2−3)及び(2−4)の3官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−70ppm付近に現れ、上記一般式(2)の(SiO4/2、(2−5)、(2−6)及び(2−7)の4官能構造単位に相当する各ピークは−90〜−120ppm付近に現れる。
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって一般式(2)の比率を測定することが可能である。
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMR測定で上記一般式(2)の官能構造単位の見分けがつかない場合等のときは、29Si−NMR測定結果だけではなく、H−NMRや19F−NMR等で測定した結果を必要に応じて用いることにより構造単位の比率を見分けることができる。
【0035】
上記シリコーン樹脂(A)は、RSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有することが好ましい。RSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有することにより、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、更に優れた耐熱性を有するものとなり、使用条件下での膜減り等の問題を防止することができる。また、SiO4/2の構造単位を適宜有することにより、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の粘度を所望の範囲に調整することが容易となり、好ましい。なお、上記シリコーン樹脂(A)が、RSiO2/2の構造単位のみを含有する場合、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、耐熱性が不充分であったり、また、3次元的な架橋が不充分になりやすく、硬化後に膜減りを起こすことがある。
上記R〜Rは、少なくとも1個がエポキシ含有基であり、エポキシ含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。このようなR12〜R14としては、例えば、上述したR〜Rと同様のものが挙げられる。更に、上記RSiO2/2の構造単位、RSiO3/2の構造単位、及び、SiO4/2の構造単位には、上記一般式(2−2)〜(2−7)で表される2官能構造単位、3官能構造単位及び4官能構造単位と同様の構造が含まれる。
【0036】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物において、RSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有するとは、未硬化の状態で1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有する樹脂を用いてもよく、RSiO2/2のみの構造単位を有する樹脂と、RSiO3/2の構造単位を有する樹脂及び/又はSiO4/2の構造単位を有する樹脂の混合物を用いてもよい。なかでも、樹脂の1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位及びRSiO3/2の構造単位を有する樹脂が好ましい。
【0037】
上記1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位とRSiO3/2の構造単位とを有する樹脂としては、上記一般式(2)中、a=d=0で表される樹脂を用いることができる。
この場合において、b/(a+b+c+d)の好ましい下限は0.5、好ましい上限は0.95であり、より好ましい下限は0.6、より好ましい上限は0.9である(以下、条件(1)ともいう)。またc/(a+b+c+d)の好ましい下限は0.05、好ましい上限は0.5、より好ましい下限は0.1、より好ましい上限は0.4である(以下、条件(2)ともいう)。
【0038】
上記シリコーン樹脂(A)の1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位及びRSiO3/2の構造単位を有する樹脂としては具体的には、例えば、平均組成式が下記一般式(3)、(4)又は(5)で表される樹脂を用いることができる。
【0039】
【化3】

【0040】
上記一般式(3)においてR10〜R12のいずれかが環状エーテル含有基であり、環状エーテル含有基以外のR10〜R12は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ素化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。e/(e+f)は、上記条件(1)を満し、f/(e+f)は上記条件(2)を満たす。
【0041】
【化4】

【0042】
上記一般式(4)において、R13〜R17のいずれかが環状エーテル含有基であり、環状エーテル含有基以外のR13〜R17は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ素化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R1314SiO2/2)と(R1516SiO2/2)とは構造が異なるものである。(g+h)/(g+h+i)は上記条件(1)を満たし、i/(g+h+i)は上記条件(2)を満たす。
【0043】
【化5】

【0044】
上記一般式(5)において、R18〜R21のいずれかが環状エーテル含有基であり、環状エーテル含有基以外のR18〜R21は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ素化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R20SiO3/2)と(R21SiO3/2)とは構造が異なるものである。j/(j+k+l)は上記条件(1)を満たし、(k+l)/(j+k+l)は上記条件(2)を満たす。
【0045】
なかでも、上記一般式(3)又は(5)で表される樹脂成分を含有することが好ましい。また、上記一般式(3)〜(5)中、エポキシ含有基は、グリシジル基又はエポキシシクロヘキシル基のいずれか一方を含むことが好ましい。
【0046】
また、上記1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位及びRSiO3/2の構造単位を有する樹脂は、RSiO3/2の構造単位中にエポキシ含有基を有することが好ましい。エポキシ含有基がRSiO3/2の構造単位中に含まれると、エポキシ含有基がシリコーン樹脂のポリシロキサン骨格の外側に出やすくなり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物が充分な3次元的架橋構造をとって耐熱性が充分なものとなり、また、硬化物に膜減りが生じることを好適に防止することができる。
【0047】
上記1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位及びRSiO3/2の構造単位を有する樹脂であって、RSiO3/2の構造単位中にエポキシ含有基を有する樹脂としては、例えば、平均組成式が下記一般式 (6)、(7)又は(8)で表されることが好ましい。
【0048】
【化6】

一般式(6)中、m、nは、m/(m+n)=0.6〜0.95、n/(m+n)=0.05〜0.4を満たし、R24がエポキシ含有基であり、R22、R23は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ素化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
【化7】

一般式(7)中、o、p、qは、(o+p)/(o+p+q)=0.6〜0.95、q/(o+p+q)=0.05〜0.4を満たし、R29がエポキシ含有基であり、R25〜R28は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ素化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R2526SiO2/2)と(R2728SiO2/2)とは構造が異なるものである。
【0050】
【化8】

一般式(8)中、r、s、tは、r/(r+s+t)=0.6〜0.95を満たし、(s+t)/(r+s+t)=0.05〜0.4を満たし、R33がエポキシ含有基であり、R30、R31、R32は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ素化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R32SiO3/2)と(R33SiO3/2)とは構造が異なるものである。
【0051】
また、本発明の光半導体素子用樹脂組成物において、上記シリコーン樹脂(A)は、エポキシ含有基とポリシロキサン骨格とがケイ素−炭素結合を介して結合していることが好ましい。エポキシ含有基とポリシロキサン骨格とがケイ素−炭素結合を介して結合していることにより、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、耐熱性、耐光性、膜減りに対して優れたものとなり好ましい。例えば、OH基を反応させる付加反応により得られる樹脂を用いた場合には、エポキシ含有基とポリシロキサン骨格とがケイ素−酸素結合を介して結合することとなり、このようなシリコーン樹脂(A)は、耐熱性や耐光性が充分得られない場合があるだけでなく、膜減りが悪くなることがある。
【0052】
上記シリコーン樹脂(A)は、アルコキシ基を下限が0.5モル%、上限が10モル%の範囲で含有することが好ましい。このようなアルコキシ基を含有することによって耐熱性や耐光性が飛躍的に向上する。これはシリコーン樹脂(A)中にアルコキシ基を含有することにより硬化速度を飛躍的に向上させることができるため、硬化時での熱劣化が防止できているためと考えられる。
【0053】
また、このように硬化速度が飛躍的に向上することにより、後述する硬化促進剤の添加量が比較的少ない場合でも充分な硬化性が得られるようになる。
【0054】
アルコキシ基が0.5モル%未満であると、硬化速度が充分に得られず耐熱性が悪くなることがあり、10モル%を超えると、シリコーン樹脂や本発明の光半導体素子用樹脂組成物の貯蔵安定性が悪くなったり、耐熱性が悪くなったりする。より好ましい下限は1モル%であり、より好ましい上限は5モル%である。
【0055】
なお、本明細書において、上記アルコキシ基の含有量は、上記シリコーン樹脂(A)の平均組成物中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0056】
上記シリコーン樹脂(A)はシラノール基を含有しないほうが好ましい。シラノール基はポリマーの貯蔵安定性を著しく悪化させるほか、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性も著しく悪くなるために好ましくない。このようなシラノール基は、真空下で加熱することで減少させることが可能であり、シラノール基の量は赤外分光法等を用いて測定可能である。
【0057】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物において、上記シリコーン樹脂(A)の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は1000、好ましい上限は5万である。1000未満であると、熱硬化時に揮発成分が多くなり、硬化物に膜減りが多くなり好ましくない。5万を超えると、粘度調節が困難になるため好ましくない。より好ましい下限は1500、より好ましい上限は15000である。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンをスタンダードとして求めた値であり、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定した値を意味する。
【0058】
上記シリコーン樹脂(A)を合成する方法としては特に限定されず、例えば、(1)SiH基を有するシリコーン樹脂(a)と、環状エーテル基を有するビニル化合物のハイドロシリレーション反応により置換基を導入する方法、(2)シロキサン化合物とエポキシ含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる方法等が挙げられる。
【0059】
上記方法(1)において、ハイドロシリレーション反応とは、必要に応じて触媒の存在下、SiH基とビニル基とを反応させる方法である。
【0060】
上記SiH基を有するシリコーン樹脂(a)としては、分子内にSiH基を含有し、上記エポキシ含有基を有するビニル化合物を反応させた後、上述した一般式(2)で表される構造、好ましくは、上記一般式(3)〜(8)のいずれかで表される構造となるようなものを使用すればよい。
【0061】
上記エポキシ含有基を有するビニル化合物としては、分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するビニル化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、ブタジエンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルシクロヘキセンオキシド等エポキシ基含有化合物等が挙げられる。なお、上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0062】
上記ハイドロシリレーション反応時に必要に応じて使用する触媒としては、例えば、周期表第8属の金属の単体、該金属固体をアルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に担持させたもの、該金属の塩、錯体等が挙げられる。上記周期表第8族の金属としては、具体的には、例えば、白金、ロジウム、ルテニウムが好適であり、特に白金が好ましい。
上記白金を用いたハイドロシリレーション化反応触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンとの錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、ジカルボニルジクロロ白金等が挙げられる。
【0063】
上記ハイドロシリレーション反応時の反応条件としては特に限定されないが、反応温度は、反応の速度と収率とを考慮すると好ましい下限は10℃、好ましい上限は200℃である。より好ましい下限は30℃、より好ましい上限は150℃であり、更に好ましい下限は50℃、更に好ましい上限は120℃である。
【0064】
また、上記ハイドロシリレーション反応は、無溶媒で行ってもよく、溶媒を使用して行ってもよい。
上記溶媒としては特に限定されず、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。なかでも、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素系溶媒が好ましく、具体的には、ジオキサン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチルが原料の溶解性と溶媒回収率から特に好ましい。
【0065】
上記方法(2)において、シロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(9)、(10)、(11)及び(12)のシロキサン単位を持つアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0066】
【化9】

【0067】
【化10】

【0068】
【化11】

【0069】
【化12】

【0070】
上記一般式(9)〜(12)中、R34〜R39は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0071】
上記一般式(9)〜(12)中、R34〜R39が直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素である場合、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0072】
また、上記一般式(9)〜(12)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0073】
上記シロキサン化合物において、一般式(9)〜(12)で表されるシロキサン単位を持つアルコキシシラン又はその部分加水分解物の配合比としては、後述するエポキシ含有基を有するシロキサン化合物と縮合反応させて合成したシリコーン樹脂(A)が、上述した一般式(2)で表される構造、好ましくは上記一般式(3)〜(8)のいずれかで表される構造となるように適宜調整する。
【0074】
上記エポキシ含有基を有するシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(13)、(14)で表されるエポキシ含有基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0075】
【化13】

【0076】
【化14】

【0077】
一般式(13)、(14)中、R40及び/又はR41、並びに、R42は、エポキシ含有基であり、R40又はR41のいずれか一方のみがエポキシ含有基である場合、他方は、直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素又はそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0078】
一般式(13)、(14)中、R40及び/又はR41、並びに、R42で表されるエポキシ含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタン基等が挙げられる。なかでも、グリシジル基及び/又はエポキシシクロヘキシル基が好適である。
【0079】
上記グリシジル基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0080】
上記エポキシシクロヘキシル基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0081】
上記一般式(13)中、R40及び/又はR41のいずれか一方が直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素又はそのフッ素化物である場合、具体的には、例えば、上記一般式(2)において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0082】
また、上記一般式(13)、(14)中、ORで表される直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、上述した一般式(2−2)〜(2−7)において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0083】
上記一般式(13)で表されるエポキシ含有基を有するシロキサン化合物としては、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシラン等が挙げられる。
【0084】
上記一般式(14)で表されるエポキシ含有基を有するシロキサン化合物としては、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0085】
上記方法(2)において、上記シロキサン化合物とエポキシ含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、上記シロキサン化合物と環状エーテル基を有する化合物とを水、及び、酸又は塩基性触媒の存在下で反応させてシリコーン樹脂を合成する方法が挙げられる。
また、上記シロキサン化合物を水、及び、酸又は塩基性触媒の存在下で予め反応させておき、その後に環状エーテル基を有するシロキサン化合物を反応させてもよい。
【0086】
上記方法(2)において、上記シロキサン化合物とエポキシ含有基を有する化合物とを水、及び、酸又は塩基性触媒の存在下で反応させる際に、上記エポキシ含有基を有する化合物は、上記エポキシ含有基が、上記シロキサン化合物及びエポキシ含有基を有する化合物のケイ素原子に結合する全有機基に対して、下限が0.1モル%、上限が50モル%となるように配合する。
【0087】
上記水の配合量としては、上記エポキシ含有基を有するシロキサン化合物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を加水分解できる量であれば特に限定されず、適宜調整される。
【0088】
上記酸性触媒は、上記シロキサン化合物とエポキシ含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等の有機酸;これらの酸無水物又は誘導体等が挙げられる。
【0089】
上記塩基性触媒は、上記シロキサン化合物とエポキシ含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、セシウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物、セシウムシラノレート化合物等のアルカリ金属のシラノール化合物等が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒及びセシウム系触媒が好適である。
【0090】
上記酸又は塩基性触媒の添加量としては特に限定されないが、上記シロキサン化合物及びエポキシ含有基を有するシロキサン化合物との合計量に対して、好ましい下限は10ppm、好ましい上限は1万ppmであり、より好ましい下限は100ppm、より好ましい上限は5000ppmである。
なお、上記酸又は塩基性触媒は、固形分をそのまま添加してもよく、少量の水や上記シロキサン化合物等に溶解してから添加してもよい。
【0091】
上記シロキサン化合物とエポキシ含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応においては、合成するシリコーン樹脂が反応系から析出することを防止できるとともに、上記水及び上記縮合反応による遊離水を共沸により除去できることから、有機溶剤を用いることが好ましい。
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系有機溶剤等が挙げられる。なかでも、芳香族系有機溶剤が好適に用いられる。
【0092】
上記縮合反応時の反応温度としては特に限定されないが、好ましい下限は40℃、好ましい上限は200℃であり、より好ましい下限は50℃、より好ましい上限は150℃である。また、上記有機溶剤を用いる場合、該有機溶剤として沸点が40〜200℃の範囲内にあるものを用いることで、還流温度で容易に上記縮合反応を行うことができる。
【0093】
アルコキシ基の量を調節する観点から上記方法(2)でシリコーン樹脂を合成するのが好ましい。
上記アルコキシ基を適切な範囲にするには上記方法(2)は、反応の温度、反応の時間、触媒量や水の量を調節することによって上記アルコキシ基を適切な範囲にすることが可能である。
【0094】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、上記エポキシ含有基と反応可能な酸無水物熱硬化剤(B)(以下、単に熱硬化剤(B)ともいう)を含有する。
上記熱硬化剤(B)としては、上記シリコーン樹脂(A)のエポキシ含有基と反応可能な酸無水物であれば特に限定されず、例えば、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物等の脂環式酸無水物類、3−メチルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する3−アルキルグルタル酸無水物、2−エチル−3−プロピルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,3−ジアルキルグルタル酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、2,4−ジメチルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,4−ジアルキルグルタル酸無水物等のアルキル置換グルタル酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類等が挙げられる。なかでも、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類が好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物がより好ましい。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記熱硬化剤(B)の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は200重量部である。この範囲であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、充分に架橋反応が進行し、耐熱性及び耐光性に優れるとともに、透湿度が充分に低いものとなる。より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は120重量部である。
【0096】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、分子内に下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物(C)(以下、単に化合物(C)ともいう)を含有する。
【0097】
【化15】

【0098】
一般式(1)中、Rはハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルキル鎖、炭素数5〜8のシクロアルキル鎖、アルキル鎖を有し、ハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルコキシル鎖、又は、アルキル置換基若しくはハロゲン基を有してもよい炭素数1〜6のアリール基を表す。
【0099】
上記化合物(C)は、構造単位中、窒素原子の塩基性が高く、本発明の光半導体素子用樹脂組成物において、シリコーン樹脂(A)と上記熱硬化剤(B)との架橋反応により生成した樹脂の末端に存在するカルボキシル基の水素原子を引きつけ、カルボキシル基に由来する−COOδ−を生成する。生成した−COOδ−は、上記一般式(1)中の窒素原子と二重結合により結合している炭素原子を攻撃することによって、樹脂末端に存在するカルボキシル基を消費するとともに、新たに架橋構造を形成する。このようにして、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、得られる硬化物において、樹脂末端に存在するカルボキシル基の量を抑制し、得られる光半導体素子において、該カルボキシル基に起因する電極腐食の発生を防止し、高輝度を維持しうる硬化物を得ることができる。
【0100】
上記一般式(1)の構造単位としては特に限定はされず、例えば、オキサゾリン骨格、カルボジイミド骨格、ピラゾリン骨格、イミダゾリン骨格等を有するものが挙げられる。
なかでも、オキサゾリン骨格及び/又はカルボジイミド骨格を有するものが好ましく、カルボジイミド骨格を有するものがより好ましい。このような骨格を有する化合物を用いると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物において、樹脂末端に存在するカルボキシル基との反応性が高くなるため、樹脂末端のカルボキシル基を効率的に消費し、カルボキシル基の存在量を抑制することが可能になる。
【0101】
上記オキサゾリン骨格を有する化合物(C)としては特に限定されず、例えば、低分子有機化合物、有機ポリマー又は有機オリゴマーを主骨格とする化合物の主鎖末端又は側鎖にオキサゾリン基を有する化合物を用いることができる。
【0102】
このようなオキサゾリン骨格を有する化合物(C)としては、具体的には例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾンが挙げられる。
このようなオキサゾリン骨格を有する化合物(C)の市販品としては、具体的には例えば、エポクロスK−2010E、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2030E、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスRPS−1005(以上、日本触媒社製)等が挙げられる。
【0103】
上記カルボジイミド骨格を有する化合物(C)としては特に限定されず、例えば、低分子有機化合物、有機ポリマー又は有機オリゴマーを主骨格とする化合物の主鎖末端又は側鎖にカルボジイミド基を有する化合物を用いることができる。
【0104】
このようなカルボジイミド骨格を有する化合物(C)としては、具体例には例えば、N、N’―イソプロピルカルボジイミド、N、N’―t−ブチルカルボジイミド、1−t―ブチル−3−エチルカルボジイミド、N、N’―シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−t−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドが挙げられる。
このようなカルボジイミド骨格を有する化合物(C)の市販品としては、具体的には例えば、カルボジライトV01、カルボジライトV03、カルボジライトV05、カルボジライトV07、カルボジライトV09(以上、日清紡社製)等が挙げられる。
【0105】
上記一般式(1)で表される構造を有する化合物(C)の配合量としては特に限定はされないが、上記分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するシリコーン樹脂(A)100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が5重量部である。0.05重量部未満であると、樹脂末端の余剰のカルボキシル基を充分に消費できないため、得られる硬化物が長期に亙って高輝度を維持することができないことがある。5重量部を超えると、反応せずに残存する化合物(C)の量が増えるため、得られる硬化物の耐熱性が低下することがある。より好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0106】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、更に、硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類及びその塩類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類;アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
上記硬化促進剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限5重量部である。0.01重量部未満であると、上記硬化促進剤を添加する効果が得られず、5重量部を超えると、硬化物の着色や耐熱性、耐光性の低下が著しくなるため好ましくない。より好ましい下限は0.05重量部であり、より好ましい上限は1.5重量部である。
【0108】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、更に、有機ケイ素系化合物で表面処理された酸化ケイ素微粒子(以下、微粉シリカともいう)を含有することが好ましい。このような微粉シリカを含有する本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、硬化物の機械的強度及び透明性に優れたものとなる。
すなわち、上記微粉シリカは、酸化ケイ素微粒子の表面に有機ケイ素系化合物が存在するため、親油性の高い表面を有し、上述した親油性の高いシリコーン樹脂(A)中での分散性に優れたものとなる。この微粉シリカの優れた分散性が、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物の機械的強度の向上に寄与するとともに、ボイド等の発生を防止することで高い透明性を維持することができるものと考えられる。なお、これに対し、有機ケイ素系化合物で表面処理が施されていない未処理の酸化ケイ素微粒子は、表面にシラノール基が存在するため、親水性の高い表面を有し上述した親油性の高いシリコーン樹脂(A)への分散性に劣るものとなり、このような未処理の酸化ケイ素系微粒子を含有する樹脂組成物は、硬化物の機械的強度に劣るとともに、酸化ケイ素微粒子と樹脂との界面にボイド等が発生したり、分散されていない酸化ケイ素微粒子に起因した光散乱が発生したりして透明性が低下していたものと考えられる。
【0109】
上記酸化ケイ素微粒子としては特に限定されないが、例えば、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカや、コロイダルシリカ、ゾルゲルシリカ、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ等が挙げられる。なかでも、揮発成分が少なく、高い透明性が得られるフュームドシリカが好適に用いられる。
【0110】
上記酸化ケイ素微粒子の大きさとしては特に限定されないが、1次粒子径の好ましい下限は5nm、好ましい上限は、200nmである。5nm未満であると、該酸化ケイ素微粒子を有機ケイ素系化合物で表面処理してなる微粉シリカの分散性が低下し、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物の透明性が劣ることがある。200nmを超えると、酸化ケイ素微粒子を有機ケイ素系化合物で表面処理してなる微粉シリカに起因した光散乱が発生しやすくなり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物の透明性が低下することがある。より好ましい下限は8nm、より好ましい上限は150nmである。なお、上記酸化ケイ素微粒子の1次粒子径とは、上記酸化ケイ素微粒子が球形である場合、その直径の平均値を、非球形である場合、長径の平均値を意味する。
【0111】
上記酸化ケイ素微粒子は、有機ケイ素系化合物で表面処理されている。
上記有機ケイ素系化合物としては特に限定されず、例えば、アルキル基を有するシラン系化合物、ジメチルシロキサン等のシロキサン骨格を有するケイ素系化合物、アミノ基を有するケイ素系化合物、(メタ)アクリル基を有するケイ素系化合物、エポキシ基を有するケイ素系化合物等が挙げられる。なお、上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0112】
上記有機ケイ素系化合物は、上記酸化ケイ素微粒子表面に化学的に結合する化合物であることが好ましく、なかでも、下記一般式(15)、(16)又は(17)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物であることが好ましい。
【0113】
【化16】

【0114】
【化17】

【0115】
【化18】

【0116】
上記一般式(15)及び(16)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、一般式(17)中、R’は、炭素数4〜8のアルキル基を表す。
【0117】
上記一般式(15)、(16)又は(17)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物は、図4(a)、(b)及び(c)に示すように、アルキル基含有シラン系化合物41、42又は43中のケイ素原子のR又はR’で表されるアルキル基が結合された以外の結合手が、酸化ケイ素微粒子40の表面のシラノール基と反応して化学結合を形成しているものである。なお、図4(a)、(b)及び(c)は、一般式(15)、(16)又は(17)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物が酸化ケイ素微粒子の表面に結合した状態を模試区的に示す断面図である。
【0118】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物において、上記酸化ケイ素微粒子を表面処理する有機ケイ素系化合物が上記一般式(15)又は(16)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物であると、上記微粉シリカは、上述したシリコーン樹脂(A)中での分散性に優れたものとなり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、硬化物の機械的強度、透明性、耐熱性及びハウジング材等に対する密着性に優れたものとなる。また、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の粘度を所望の値に維持しつつ、上記微粉シリカを高充填可能となることから、好ましい。上記一般式(15)又は(16)において、Rは、炭素数の下限は1、上限は3である。3を超えると、上記有機ケイ素系化合物が耐熱劣化を起こすことがあり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の耐熱性が低下することがある。
【0119】
また、上記酸化ケイ素微粒子を表面処理する有機ケイ素系化合物が上記一般式(17)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物であると、上記微粉シリカは、上述したシリコーン樹脂(A)中での分散性に優れたものとなり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、硬化物の機械的強度、透明性、耐熱性及びハウジング材等に対する密着性が優れたものとなる。上記一般式(17)において、R’は、炭素数の下限が4、上限が8である。4未満であると、上記微粉シリカの上述したシリコーン樹脂(A)を含有する本発明の光半導体素子用樹脂組成物中での分散性が不充分となり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物の透明性を確保することができないという問題が生じることがある。8を超えると、上記有機ケイ素系化合物が耐熱劣化を起こすことがあり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の耐熱性が低下することがある。
【0120】
上記一般式(15)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物、すなわち、酸化ケイ素微粒子表面に結合した状態が図4(a)となる化合物としては特に限定されないが、ジメチルシリル基を有する化合物であることが好ましく、具体的には、例えば、ジメチルシリルジクロライド、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0121】
また、上記一般式(16)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物、すなわち、酸化ケイ素微粒子表面に結合した状態が図4(b)となる化合物としては特に限定されないが、トリメチルシリル基を有する化合物であることが好ましく、具体的には、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライド、トリメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0122】
また、上記一般式(17)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物、すなわち、酸化ケイ素微粒子表面に結合した状態が図4(c)となる化合物としては特に限定されず、例えば、オクチルシラントリクロライド、オクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0123】
上記有機ケイ素系化合物で表面処理された酸化ケイ素微粒子(微粉シリカ)は、BET比表面積の好ましい下限が30m/g、好ましい上限が400m/gである。30m/g未満であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物中で上記微粉シリカに起因した光散乱が発生し、該硬化物の透明性を確保することが困難となる。400m/gを超えると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物中での分散性が劣り、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び透明性が不充分となることがある。より好ましい下限は50m/g、より好ましい上限は350m/gである。
【0124】
上記微粉シリカにおいて、上記酸化ケイ素微粒子に対する上記有機ケイ素系化合物の割合としては特に限定されないが、上記酸化ケイ素微粒子100重量部に対して、好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は15重量部である。0.1重量部未満であると、上記有機ケイ素系化合物による酸化ケイ素微粒子の表面処理が不充分となり、上記微粉シリカの本発明の光半導体素子用樹脂組成物中での分散性が低下し、硬化物の機械的強度及び透明性が不充分となることがある。15重量部を超えると、上記微粉シリカ表面と反応しない有機ケイ素化合物が多量に残存することがあり、耐熱性を悪化させたり膜減りの原因になったりする。
【0125】
上記有機ケイ素系化合物で上記酸化ケイ素微粒子の表面を処理する方法としては特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー等の高速攪拌可能なミキサー中に酸化ケイ素微粒子を添加し、攪拌しながら有機ケイ素系化合物を、直接、又は、アルコール水溶液、有機溶媒溶液若しくは水溶液として添加する乾式法、酸化ケイ素微粒子のスラリー中に有機ケイ素系化合物を添加するスラリー法、及び、酸化ケイ素微粒子の乾燥工程後に有機ケイ素系化合物をスプレー付与するスプレー法等の直接処理法;本発明の光半導体素子用樹脂組成物の調製時において、酸化ケイ素微粒子と後述するシリコーン樹脂(A)等のマトリクス樹脂との混合時に有機ケイ素系化合物を直接添加するインテグレルブレンド法等が挙げられる。
【0126】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物において、上記微粉シリカの含有量としては特に限定されないが、上述したシリコーン樹脂(A)100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。1重量部未満であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の硬化物の機械的強度が不充分となり、クラックの発生を充分に防止できないことがあり、50重量部を超えると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の粘度が高くなり、例えば、LED等の光半導体素子の封止剤として用いた場合に、充填工程において泡かみの問題が発生することがあり、ボイドが発生し、硬化物の透明性が低下することがある。より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0127】
また、上記微粉シリカは、本発明の光半導体素子用樹脂組成物中で凝集せず、一次粒子に近い状態で分散していることが好ましい。なお、上記一次粒子に近い状態とは、上記微粉シリカは、本発明の光半導体素子用樹脂組成物中で完全に一次粒子として分散している必要はなく、ある程度凝塊又は凝集して塊粒子として存在していてもよいことを意味する。
上記微粉シリカが上記塊粒子として存在している場合、該塊粒子の平均径の好ましい上限は200nmである。200nmを超えると、上記微粉シリカに起因した光散乱が発生し、硬化物の透明性が不充分となることがある。より好ましい上限は150nmである。なお、上記塊粒子の平均径とは、凝集等して存在する微粉シリカ群(塊粒子)の長径の平均値を意味する。
【0128】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、更に、金属元素を有する微粒子を含有することが好ましい。上記微粒子を含有することで、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の屈折率が高くなり、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなるLED等の光半導体素子の光取り出し性が優れたものとなる。
【0129】
上記微粒子の平均1次粒子径の好ましい上限は20nmである。20nmを超えると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物中で上記微粒子に起因した光散乱が生じ、本発明の光半導体素子用樹脂組成物が白濁することがある。より好ましい下限は3nm、より好ましい上限は15nmである。
【0130】
上記微粒子は、金属元素を有するものである。
上記微粒子は、該微粒子中に存在する金属元素の80%以上が下記で表される群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。80%未満であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の屈折率が余り高くならず、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子の光取り出し性が劣ることがある。
金属元素:Al、In、Ge、Sn、Ti、Zr、Hf
【0131】
上記微粒子は、上記金属元素を有するものであれば特に限定されないが、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の屈折率の向上性に優れることから、なかでも、ジルコニウムを有する微粒子が屈折率向上と光の透過性に優れることから好ましい。
【0132】
上記微粒子の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は100重量部である。1重量部未満であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の屈折率が殆ど向上しないことがあり、100重量部を超えると、粘度の調整が困難になる。より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は80重量部である。
【0133】
このような微粒子の屈折率の好ましい下限は1.50である。1.50未満であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物の屈折率が上昇せず、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子の光取り出し性が不充分となることがある。
なお、本明細書において、上記屈折率は、ナトリウムD線(589.3nm)に対する屈折率を測定温度20℃で屈折率計(アッベ式)を用いて測定した値である。
【0134】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、接着性付与のためにカップリング剤を含有してもよい。
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0135】
上記カップリング剤の配合割合としては、上記シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。0.1重量部未満であると、カップリング剤の配合効果が充分発揮されないことがあり、5重量部を超えると、余剰のカップリング剤が揮発し、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を硬化させたときに、膜減り等を起こすことがある。
【0136】
また、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、耐熱性を改善するために酸化防止剤を含有してもよい。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ノニル・ジフェニル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等のリン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、〔4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)〕−ビス(アルキルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、その他酸化防止剤として、フラーレン、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属系酸化防止剤が挙げられる。これら酸化防止剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
上記酸化防止剤の配合割合としては、上記シリコーン樹脂(A)100重量部に対して、好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が2重量部である。0.001重量部未満であると、上記酸化防止剤の配合効果が充分発揮されないことがあり、2重量部を超えると、上記酸化防止剤が揮発し、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を硬化させたときに、膜減り等を起こすことしたり、硬化物が脆くなったりすることがある。
【0138】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、必要に応じて、消泡剤、着色剤、蛍光体、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー、難燃剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0139】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物の粘度としては特に限定されないが、好ましい下限は500mPa・s、好ましい上限が5万mPa・sである。500mPa・s未満であると、光半導体素子の封止剤として用いたときに、液ダレが起こり光半導体素子を封止できないことがあり、5万mPa・sを超えると、均一かつ正確に光半導体素子を封止できないことがある。より好ましい下限は1000mPa・s、より好ましい上限が1万mPa・sである。
なお、本明細書において、上記粘度は、E型粘度計(東機産業社製、TV−22型)を用いて25℃、5rpmの条件で測定した値である。
【0140】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、初期光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子の光学特性が不充分となる。なお、上記初期光線透過率は、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を硬化させた厚さ1mmの硬化物を用いて、波長400nmの光の透過率を日立製作所社製「U−4000」を用いて測定した値である。
【0141】
また、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、耐光性試験後の光線透過率の低下率が10%未満であることが好ましい。10%以上であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子の光学特性が不充分となる。なお、上記耐光性試験とは、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を硬化させた厚さ1mmの硬化物に、高圧水銀ランプに波長340nm以下の光をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで24時間照射する試験であり、上記耐光試験後の光線透過率は、上記耐光性試験後の上記硬化物を用いて、波長400nmの光の透過率を日立製作所社製「U−4000」を用いて測定した値である。
【0142】
また、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、耐熱性試験後の光線透過率の低下率が10%未満であることが好ましい。10%以上であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子の光学特性が不充分となる。なお、上記耐熱性試験とは、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を硬化させた厚さ1mmの硬化物を150℃のオーブンに1000時間放置する試験であり、上記耐熱性試験後の光線透過率は、上記耐熱性試験後の上記硬化物を用いて、波長400nmの光の透過率を日立製作所社製「U−4000」を用いて測定した値である。
【0143】
また、本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、硬化物の膜減りが3%未満であることが好ましい。3%以上であると、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子の光学特性が不充分となる。なお、上記膜減りとは、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を硬化させた厚さ1mmの硬化物を150℃のオーブンに1000時間放置し、試験前後の厚みの変化から算出したものである。
【0144】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール、ビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上述したシリコーン樹脂(A)、熱硬化剤(B)、化合物(C)、微粒子及び硬化促進剤、添加剤等の各所定量を混合する方法等が挙げられる。
【0145】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物の用途としては特に限定されないが、例えば、封止剤、ハウジング材、リード電極や放熱板等に接続するためのダイボンド材、発光ダイオード等の光半導体素子の発光素子をフリップチップ実装した場合のアンダーフィル材、発光素子上のパッシベーション膜として用いることができる。なかでも、封止剤、アンダーフィル材、ダイボンド材として好適に用いることができる。
本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子用封止剤もまた、本発明の1つである。
本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子用ダイボンド材もまた、本発明の1つである。
本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子用アンダーフィル材もまた、本発明の1つである。
【0146】
(光半導体素子用ダイボンド材)
本発明の光半導体素子用ダイボンド材は、本発明の光半導体素子用樹脂組成物からなるため、耐熱性、耐光性、接着性に優れたものとなる。また、使用条件下において高い透明性を維持しうるため、光半導体素子のハウジング材方向への光を吸収して損失させることがなく、高発光効率の光半導体素子の提供に貢献することができる。
【0147】
本発明の光半導体素子用ダイボンド材は、更に、高熱伝導性微粒子を含有することが好ましい。本明細書において高熱伝導性微粒子とは、熱伝導性の高い微粒子を意味する。
熱伝導性の高い微粒子を配合することにより、本発明の光半導体素子用ダイボンド材は放熱性に優れたものとなり、例えば光半導体装置のパッケージに放熱板を設け、該放熱板上に上記光半導体用ダイボンド材を用いて光半導体を固定すると、光半導体への熱的ダメージを大きく緩和させることが可能となり、好ましい。
【0148】
本発明の光半導体素子用ダイボンド材に配合する高熱伝導性微粒子の熱伝導率としては、好ましい下限は60Kcal/m・hr・℃である。熱伝導率が60Kcal/m・hr・℃未満であると、添加量を増やさなくては充分な放熱性が得られず、粘度調整が困難になることがある。
【0149】
上記高熱伝導性微粒子としては特に限定はされないが、例えば、ニッケル、すず、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、コバルト、インジウムやこれらの合金等の金属粒子;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物;炭化珪素、黒鉛、ダイヤモンド、非晶カーボン、カーボンブラック、炭素繊維等の炭素化合物粒子;樹脂粒子や金属粒子に他の金属層を形成した金属被覆粒子等が上げられる。
金属被覆粒子としては例えば、樹脂粒子に金、銀メッキを施した粒子が好ましい。
【0150】
また、金、銀、及び銅からなる群より選択される少なくとも一種を含む粒子を含有すると、上記ダイボンド材は熱伝導性と共に高い導電性を有するものとなり、好ましい。導電性を有するダイボンド材を用いることにより、発光素子の上下両面に電極パッドを設けた構造の光半導体素子を作製する場合に、ダイボンド材によってリード電極と電気的に接続せしめることができ、好ましい。
【0151】
また、これらの熱伝導性の高い微粒子は、高い配合割合で均一に混合できるように表面処理されていることが好ましい。
【0152】
上記高熱伝導性微粒子の配合量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は95重量%である。10重量%未満であると、充分な熱伝導率が得られないことがあり、95重量%を超えると粘度調整が困難になることがある。
【0153】
(光半導体素子用アンダーフィル材)
本発明の光半導体素子用アンダーフィル材は、本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなるため、フリップチップ実装の場合に電極接続バンプにかかる応力を緩和するというアンダーフィル材本来の目的に好適であると同時に、耐光性、耐熱性、接着性に優れ、好適に使用可能である。このように本発明の光半導体素子用アンダーフィル材は、フリップチップ実装を行ってアンダーフィル材として硬化させてから封止剤を硬化させてもよく、封止剤をアンダーフィル材と同じものを用いる場合には兼用しても良い。後者の方法はタクトタイムが短縮されるためにより好ましい製造方法となる。
【0154】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなる光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、及び、光半導体素子用アンダーフィル材の少なくとも1つを用いて光半導体素子を製造することができる。
【0155】
上記発光素子としては特に限定されず、例えば、上記光半導体素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上に半導体材料を積層して形成したものが挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。
上記基板としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料の間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層としては、例えば、GaN、AlN等が挙げられる。
【0156】
上記基板上へ半導体材料を積層する方法としては特に限定されず、例えば、MOCVD法、HDVPE法、液相成長法等が挙げられる。
上記発光素子の構造としては、例えば、MIS接合、PN接合、PIN接合を有するホモ接合、ヘテロ接合、ダブルヘテロ構造等が挙げられる。また、単一又は多重量子井戸構造とすることもできる。
【0157】
本発明の光半導体素子用封止剤を用いて上記発光素子を封止する場合、他の封止剤を併用してもよい。この場合、本発明の光半導体素子用封止剤で上記発光素子を封止した後、その周囲を上記他の封止剤で封止してもよく、上記発光素子を上記他の封止剤で封止した後、その周囲を本発明の光半導体素子用樹脂組成物で封止してもよい。
上記その他の封止剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、ガラス等が挙げられる。また、表面改質剤を含有すると液を塗布して表面に保護層を設けることもできる。
【0158】
本発明の光半導体素子用封止剤で発光素子を封止する方法としては特に限定されず、例えば、モールド型枠中に本発明の光半導体素子用封止剤を予め注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後、硬化させる方法、発光素子を挿入した型枠中に本発明の光半導体素子用封止剤を注入し硬化する方法等が挙げられる。
本発明の光半導体素子用封止剤を注入する方法としては、例えば、ディスペンサーによる注入、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。更に、その他の封止方法としては、本発明の光半導体素子用封止剤を発光素子上へ滴下、孔版印刷、スクリーン印刷、又は、マスクを介して塗布し硬化させる方法、底部に発光素子を配置したカップ等に本発明の光半導体素子用封止剤をディスペンサー等により注入し、硬化させる方法等が挙げられる。
更に、本発明の光半導体素子用封止剤は、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド材、発光素子上のパッシベーション膜、パッケージ基板として用いることもできる。
【0159】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物は、上記シリコーン樹脂(A)が平均組成式が上記一般式(2)で表される樹脂成分を含有し、かつ、上記エポキシ含有基の含有量が0.1〜50モル%であるため、青色から紫外領域の短波長の光に対する透過性が高く、光半導体素子用封止剤として用いた場合、封止する発光素子の発熱や発光による膜減りや変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、発光ダイオード等の光半導体素子の発光素子を封止した際に、該光半導体素子のハウジング材等への密着性に優れたものとなる。
なお、ハウジング材としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等からなる従来公知のものが挙げられる。
【0160】
本発明の光半導体素子用樹脂組成物、本発明の光半導体素子用封止剤、本発明の光半導体素子用ダイボンド材及び/又は本発明の光半導体素子用アンダーフィル材を用いてなる光半導体素子もまた、本発明の1つである。
【0161】
図1及び図2は、本発明の光半導体素子用封止剤及び光半導体素子用ダイボンド材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図であり、図3は、本発明の光半導体素子用樹脂組成物及び光半導体素子用アンダーフィル材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【0162】
図1に示す光半導体素子は、発光素子11が放熱板16上に本発明の光半導体素子用ダイボンド材10を介して設置されており、発光素子11と、ハウジング材の上面から側面を通って底面へ延長された2本のリード電極14とが金ワイヤー13でそれぞれ電気的に接続されている。そして、発光素子11、本発明の光半導体素子用ダイボンド材10及び金ワイヤー13が本発明の光半導体素子用封止剤12で封止されている。
【0163】
図2は、本発明の光半導体素子用ダイボンド材が上述した金、銀、及び、銅からなる群より選択される少なくとも一種を含む粒子を含有することで高い導電性を有する場合の光半導体素子を示す。
図2に示す光半導体素子は、発光素子21が本発明の光半導体素子用ダイボンド材20を介して設置されており、ハウジング材25の上面から側面を通って底面へ延長された2本のリード電極24のうち、一方のリード電極24の末端は、本発明の光半導体素子用ダイボンド材20とハウジング材25との間に形成され、本発明の光半導体素子用ダイボンド材20を介して発光素子21と電気的に接続され、他方のリード電極24は、金ワイヤー23で発光素子21に電気的に接続されている。そして、発光素子21、本発明の光半導体素子用ダイボンド材20及び金ワイヤー23が本発明の光半導体素子用封止剤22で封止されている。
【0164】
図3に示す本発明の光半導体素子は、発光素子31がバンプ33を介して設置されており、発光素子31とハウジング材35との間に本発明の光半導体素子用アンダーフィル材30が形成されている。ハウジング材35の上面から側面を通って底面へ延長された2本のリード電極34は、それぞれ一方の末端がバンプ33とハウジング材35との間に形成されて発光素子31と電気的に接続されている。そして、発光素子31及び本発明の光半導体素子用アンダーフィル材30が本発明の光半導体素子用封止剤32で封止されている。
図3に示す本発明の光半導体素子において、本発明の光半導体素子用アンダーフィル材30は、発光素子31とリード電極34とをバンプ33で接続した後、発光素子31の下方に形成された空間に横の隙間から充填することで形成される。
【0165】
本発明の光半導体素子は、具体的には、例えば、発光ダイオード、半導体レーザー、フォトカプラ等が挙げられる。このような本発明の光半導体素子は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト、スイッチング素子等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0166】
本発明によれば、発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、ハウジング材への密着性に優れ、長期に亙って高輝度を維持することができる硬化物を得ることが可能な光半導体素子用樹脂組成物、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材及びそれらを用いた光半導体素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0167】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0168】
(合成例1)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(750g)、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン(150g)を入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.9g)/水(250g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(2.1g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーAを得た。ポリマーAの分子量はMn=11000、Mw=25000であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.90(EpMeSiO2/20.10
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は14モル%、エポキシ当量は760g/eq.であった。
なお、分子量は、ポリマーA(10mg)にテトラヒドロフラン(1mL)を入れ溶解するまで攪拌し、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いてGPC測定により測定した。また、エポキシ当量は、JIS K−7236に準拠して求めた。
【0169】
(合成例2)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(440g)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(160g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.2g)/水(170g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.3g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーBを得た。ポリマーBの分子量はMn=2300、Mw=4800であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.84(EpSiO3/20.16
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有量は22モル%、エポキシ当量は550g/eq.であった。
なお、ポリマーBの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0170】
(合成例3)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(350g)、トリメトキシメチルシラン(125g)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(125g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.2g)/水(190g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.3g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーCを得た。ポリマーCの分子量はMn=2900、Mw=4600であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.65(MeSiO3/20.22(EpSiO3/20.13
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有量は19モル%、エポキシ当量は660g/eq.であった。
なお、ポリマーCの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0171】
(合成例4)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(400g)、メトキシトリメチルシラン(100g)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(100g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.3g)/水(180g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.4g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーDを得た。ポリマーDの分子量はMn=3200、Mw=5400であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.71(MeSiO3/20.18(EpSiO3/20.11
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は15モル%、エポキシ等量は780g/eq.であった。
なお、ポリマーDの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0172】
(合成例5)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(400g)、トリメトキシメチルシラン(50g)、テトラメトキシシラン(50g)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(100g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.3g)/水(180g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.4g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーEを得た。ポリマーEの分子量はMn=2600、Mw=3600であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.73(MeSiO3/20.09(EpSiO3/20.10(SiO4/20.08
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は14モル%、エポキシ当量は760g/eq.であった。
なお、ポリマーEの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0173】
(実施例1)
ポリマーA(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、20g)、N、N’−イソプロピルカルボジイミド(0.3g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0174】
(実施例2)
ポリマーB(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、25g)、N、N’−イソプロピルカルボジイミド(0.3g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0175】
(実施例3)
ポリマーB(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、25g)、2−ビニル−2−オキサゾリン(0.3g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0176】
(実施例4)
ポリマーC(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、20g)、N、N’−イソプロピルカルボジイミド(0.3g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0177】
(実施例5)
ポリマーD(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、20g)、N、N’−イソプロピルカルボジイミド(0.3g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0178】
(実施例6)
ポリマーE(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、20g)、N、N’−イソプロピルカルボジイミド(0.3g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0179】
(比較例1)
ポリマーA(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、20g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0180】
(比較例2)
ポリマーB(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、25g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.1g)を入れ混合・脱泡を行い光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0181】
(評価)
実施例1〜6、比較例1、2で作製した光半導体素子用樹脂組成物及びその硬化物について以下の評価を行った。
結果を表1に示した。
【0182】
(1)初期光線透過率
厚さ1mmの硬化物を用いて400nmの光線透過率を日立製作所社製U−4000を用いて測定を行った。
【0183】
(2)耐光性試験後の光線透過率
厚さ1mmの硬化物に高圧水銀ランプに340nm以下をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで24時間照射し、400nmの光線透過率を日立製作所社製U−4000を用いて測定を行った。
なお、表1及び表2中、初期からの光線透過率の低下率が5%未満の場合:◎、10%未満の場合:○、10〜40%未満の場合:△、40以上の場合:×とした。
【0184】
(3)耐熱性試験後の光線透過率
厚さ1mmの硬化物を150℃のオーブンに1000時間放置し、400nmの光線透過率を日立製作所社製U−4000を用いて測定を行った。
なお、表1及び表2中、初期からの光線透過率の低下率が5%未満の場合:◎、10%未満の場合:○、10〜40%未満の場合:△、40以上の場合:×とした。
【0185】
(4)密着性試験
アルミニウム、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)に実施例及び比較例で調製した光半導体素子用封止剤を塗布し、100℃×3時間、130℃×3時間で硬化させ薄膜を作製し、JIS K−5400に準拠し、すきま間隔1mm、100個のます目で碁盤目テープ法を用いて密着性試験を行った。
なお、表1及び表2中、剥離個数0の場合:○、剥離個数1〜70の場合:△、剥離個数71〜100の場合:×とした。
【0186】
(5)腐食試験
(光半導体素子用ダイボンド材の作製)
ポリマーB(30g)に平均粒径3μm、最大粒径20μmのフレーク状銀粉(170g)を入れ攪拌し、三本ロールを用いて混錬を行った。
そのフレーク状の銀粉入りポリマー(100g)にリカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、3.75g)、N、N’−イソプロピルカルボジイミド(0.045g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.075g)、サンドスタブ P−EPQ(酸化防止剤、クラリアント社製、0.015g)を入れ混合・脱泡を行い、光半導体素子用ダイボンド材を得た。
【0187】
リード電極付きハウジング材(PPA)に、作製した光半導体素子用ダイボンド材を用いて、主発光ピークが460nmの発光素子を実装し、180度で15分間硬化させ発光素子を固定した。続いて、発光素子とリード電極とを金ワイヤーで電気的に接続し、実施例及び比較例で作製した封止剤を注入し、110℃×3時間、130℃×3時間で硬化させ、図1に示す構造の光半導体装置を作製した。
【0188】
作製した光半導体装置を85℃、85RH%の高温高湿オーブンに入れ、電流値20mAで1000時間高温高湿通電試験を行った。1000時間後、通電を止めて、リード電極部分の腐食を顕微鏡にて確認し、以下の基準で判定を行った。
○:リード電極の腐食がほとんどない。
△:リード電極の腐食が少しある。
×:リード電極の腐食が著しい。
【0189】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明によれば、発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、ハウジング材への密着性に優れ、長期に亙って高輝度を維持することができる硬化物を得ることが可能な光半導体素子用樹脂組成物、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材及びそれらを用いた光半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の光半導体素子用樹脂組成物及び光半導体素子用ダイボンド材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の光半導体素子用樹脂組成物及び光半導体素子用ダイボンド材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光半導体素子用樹脂組成物及び光半導体素子用アンダーフィル材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)、(b)及び(c)は、一般式(15)、(16)及び(17)で表される構造を有するアルキル基含有シラン系化合物が酸化ケイ素微粒子の表面に結合した状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0192】
10、20 光半導体素子用ダイボンド材
11、21、31 発光素子
12、22、32 光半導体用封止剤
13、23 金ワイヤー
14、24、34 リード電極
15、25、35 ハウジング材
16 放熱板
30 光半導体用アンダーフィル材
33 バンプ
40 酸化ケイ素微粒子
41、42、43 有機ケイ素系化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するシリコーン樹脂(A)と、前記エポキシ含有基と反応可能な酸無水物熱硬化剤(B)と、分子内に下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物(C)とを含有することを特徴とする光半導体素子用樹脂組成物。
【化1】

一般式(1)中、Rはハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルキル鎖、炭素数5〜8のシクロアルキル鎖、アルキル鎖を有し、ハロゲン基、アリール基若しくはビニル基を有してもよい炭素数1〜12の環状若しくは分岐状のアルコキシル鎖、又は、アルキル置換基若しくはハロゲン基を有してもよい炭素数1〜6のアリール基を表す。
【請求項2】
分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するシリコーン樹脂(A)は、平均組成式が下記一般式(2)で表される樹脂成分を含有し、かつ、エポキシ含有基の含有量が0.1〜50モル%であることを特徴とする請求項1記載の光半導体素子用樹脂組成物。
【化2】

一般式(2)中、a、b、c及びdは、それぞれa/(a+b+c+d)=0〜0.2、b/(a+b+c+d)=0.3〜1.0、c/(a+b+c+d)=0〜0.5、d/(a+b+c+d)=0〜0.3を満たし、R〜Rは、少なくとも1個がエポキシ含有基を表し、前記エポキシ含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【請求項3】
一般式(1)で表される構造単位は、カルボジイミド骨格及び/又はオキサゾリン骨格を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光半導体素子用樹脂組成物。
【請求項4】
分子内に1個以上のエポキシ含有基を有するシリコーン樹脂(A)100重量部に対して、分子内に一般式(1)で表される構造単位を有する化合物(C)を0.05〜5重量部含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の光半導体素子用樹脂組成物。
【請求項5】
更に、硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光半導体素子用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子用封止剤。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5記載の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子用ダイボンド材。
【請求項8】
請求項1、2、3、4又は5記載の光半導体素子用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子用アンダーフィル材。
【請求項9】
請求項1、2、3、4又は5記載の光半導体素子用樹脂組成物、請求項6記載の光半導体素子用封止剤、請求項7記載の光半導体素子用ダイボンド材、又は、請求項8記載の光半導体素子用アンダーフィル材を用いてなることを特徴とする光半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−120732(P2009−120732A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296575(P2007−296575)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】