説明

光集積回路装置

【課題】任意の2つの光送受信部が相互に通信可能な光集積回路装置を提供する。
【解決手段】光導波路1〜iおよび光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijは、半導体基板20の一主面に配置される。光源30は、半導体基板20の端面に配置され、発生した光を光導波路1〜iへ導く。各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijにおいて、光共振部材40は、電圧がシリコン層に印加されると、光導波路1〜i中を伝搬する光の1つの一部の光と光共振し、その一部の光を光伝送部材10中へ出射する。また、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijにおいて、光共振部材50,60は、電圧がシリコン層に印加されると、光伝送部材10中を伝搬する光と光共振し、その共振した光を光検出部70,80へ出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光集積回路装置に関し、任意の複数の光送受信部間で、直接、光通信可能な光集積回路装置、または同一時刻に複数の光送受信部間で任意に光通信可能な光集積回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光電子集積回路装置が知られている(特許文献1)。この光電子集積回路装置は、光配線基板と、複数の光電子IC(Integrated Circuit)チップと、複数の光導波路とを備える。
【0003】
複数の光電子ICチップは、光配線基板上に離散的に配置される。そして、複数の光導波路の各々は、隣接する2つの光電子ICチップ間に配置される。
【0004】
そして、隣接する2つの光電子ICチップは、その間に配置された光導波路を介して光信号を送受信する。
【特許文献1】特開平5−67770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光電子集積回路装置においては、各光電子ICチップは、光導波路を介して隣接する光電子ICチップとだけ接続されているので、任意の2つの光電子ICチップとの間で直接光通信を行なうことが困難であるという問題がある。
【0006】
また、従来の光電子集積回路装置においては、光導波路を光スイッチによって切り替えれば、時系列的に任意の光電子ICチップとの間で光通信を行なうことができる。しかし、同一時刻に任意の光電子ICチップとの間で光通信を行なうことが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、任意の2つの光送受信部が、直接、通信可能な光集積回路装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、同一時刻に、任意の2つの光送受信部が相互に通信可能な光集積回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、光集積回路装置は、光伝送部材と、複数の光送受信部と、光導波路とを備える。光伝送部材は、光を伝送する。複数の光送受信部は、光伝送部材を共用の光伝送路として用い、相互に信号を送受信する。光導波路は、光源から出射された光を伝搬させる。そして、複数の光送受信部の各々は、光検出部と、光スイッチ部材とを含む。光検出部は、光伝送部材中の光を検出する。光スイッチ部材は、ストレスが印加されたシリコンからなり、光導波路中の光を光伝送部材へ導くとともに、光伝送部材中の光を光検出部へ導く。
【0010】
好ましくは、複数の光送受信部は、相互に異なる波長の光を光伝送部材中に伝送させて相互に信号を送受信する。
【0011】
好ましくは、光源から出射された光は、離散的な複数の波長または一定範囲の連続的な波長を有する複数の光からなる。そして、光スイッチ部材は、第1および第2の光共振部材を含む。第1の光共振部材は、電圧が印加されると、光導波路中を伝搬する光を構成する複数の光のうち、任意の1つの波長を有する1つの光を光共振によって光導波路から光伝送部材へ導く。第2の光共振部材は、電圧が印加されると、光伝送部材中を伝搬する光を光共振によって光検出部へ導く。
【0012】
好ましくは、第2の光共振部材は、第1および第2の光入射部材を含む。第1の光入射部材は、光伝送部材中を伝搬する光が入射するための第1の光入射窓を有する。第2の光入射部材は、光伝送部材中を伝搬する光が入射するための第2の光入射窓を有する。そして、第1の光入射窓の位置は、第2の光入射窓の位置を約90度回転した位置である。
【0013】
好ましくは、複数の光送受信部の各々は、信号処理回路をさらに含む。信号処理回路は、第1の光共振部材への電圧の印加と不印加とによって光伝送部材を介して信号を送信し、第2の光共振部材への電圧の印加と不印加とによって光伝送部材を介して信号を受信する。
【0014】
好ましくは、第1および第2の光共振部材の各々は、リング形状からなる。
【0015】
好ましくは、光導波路は、半導体基板の一主面に形成される。光検出部は、光導波路から離れて半導体基板の一主面に形成される。第1の光共振部材は、光導波路に接して光導波路上に形成されるとともに、光伝送部材に近接して配置される。第2の光共振部材は、光検出部に接して光検出部上に形成されるとともに、光伝送部材に近接して配置される。第1および第2の光共振部材の各々は、シリコン層と、第1の応力印加層と、第2の応力印加層とを含む。第1の応力印加層は、シリコン層の一方側でシリコン層に接して形成され、半導体基板の面内方向において第1の方向の応力をシリコン層に印加する。第2の応力印加層は、シリコン層の他方側でシリコン層に接して形成され、半導体基板の面内方向において第1の方向と反対方向である第2の方向の応力をシリコン層に印加する。
【0016】
好ましくは、第1の応力印加層は、シリコン窒化層からなり、第2の応力印加層は、シリコン酸化層からなる。
【0017】
好ましくは、光伝送部材は、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する透明部材からなる。
【0018】
好ましくは、光伝送部材は、SiN、SiO、SiON、レジストおよびプラスチックのいずれかからなる
また、この発明によれば、光集積回路装置は、光伝送部材と、半導体基板とを備える。光伝送部材は、光を伝送する。半導体基板は、光伝送部材に近接して配置される。半導体基板は、i(iは正の整数)個の光導波路と、i個の第1の光共振部材群と、i個の光検出部群と、i個の第2の光共振部材群と、i個の信号処理回路群とを含む。i個の光導波路は、光伝送部材側の一主面に形成され、光源からの光を伝搬させる。i個の第1の光共振部材群は、i個の光導波路に対応して設けられ、各々が1つの光導波路に接して1つの光導波路上に形成される。i個の光検出部群は、i個の光導波路に対応して設けられる。i個の第2の光共振部材群は、i個の光導波路に対応して設けられ、各々が1つの光検出部群に接して1つの光検出部群上に形成される。i個の信号処理回路群は、i個の光導波路に対応して設けられる。i個の第1の光共振部材群の各々は、j(jは2以上の整数)個の第1の光共振部材を含む。i個の光検出部群の各々は、j個の光検出部を含む。i個の第2の光共振部材群の各々は、j個の第2の光共振部材を含む。i個の信号処理回路群の各々は、j個の信号処理回路を含む。j個の第1の光共振部材の各々は、ストレスが印加されたシリコンからなり、電圧、磁場および熱のいずれかが印加されると、光導波路中を伝搬する光のうち、光共振する波長の光を光伝送部材へ導く。j個の第2の光共振部材の各々は、ストレスが印加されたシリコンからなり、電圧、磁場および熱のいずれかが印加されると、光伝送部材中を伝搬する光のうち、光共振する波長の光を光検出部へ導く。j個の光検出部の各々は、第2の光共振部材によって導かれた光を検出する。j個の信号処理回路の各々は、第1の光共振部材への電圧、磁場および熱のいずれかの印加と不印加とによって信号を送信し、第2の光共振部材への電圧、磁場および熱のいずれかの印加と不印加とによって光検出部が検出した検出信号を処理する。
【発明の効果】
【0019】
この発明においては、光伝送部材を共用の光伝送路として用いて信号の送受信が行われる。
【0020】
したがって、この発明によれば、任意の2つの光送受信部が、直接、通信できる。
【0021】
また、この発明においては、送受信に使用する光の波長を、複数の光送受信部間で異なる波長を使用する。
【0022】
したがって、この発明によれば、同一時刻に、任意の2つの光送受信部が相互に通信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0024】
図1は、この発明の実施の形態による光集積回路装置の斜視図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による光集積回路装置100は、光伝送部材10と、半導体基板20と、光源30と、光導波路1〜i(iは正の整数)と、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij(jは2以上の整数)とを備える。なお、光集積回路装置100は、1cm角〜2cm角のサイズを有する。
【0025】
光伝送部材10は、平板形状を有し、シリコンナイトライド(SiN)、二酸化シリコン(SiO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、レジストおよびプラスチック等の空気よりも大きい屈折率を有する透明材料からなる。
【0026】
半導体基板20は、たとえば、n型シリコン(n型Si)からなり、光伝送部材10の1つの平面に近接して配置される。光源30は、半導体基板20の1つの端面に配置される。
【0027】
光導波路1〜iの各々は、光伝送部材10と同じ材料からなり、方向DR2において、半導体基板20の長さと同じ長さを有し、0.3mmから5mmの幅を有する。そして、光導波路1〜iは、方向DR1において、半導体基板20の一主面上に所定の間隔で配置される。
【0028】
光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijは、半導体基板20上に2次元的に配置される。より具体的には、光送受信部11〜1jは、光導波路1に対応して設けられ、方向DR2において所定の間隔で配置される。また、光送受信部21〜2jは、光導波路2に対応して設けられ、方向DR2において所定の間隔で配置される。以下、同様にして光送受信部i1〜ijは、光導波路iに対応して設けられ、方向DR2において所定の間隔で配置される。
【0029】
光伝送部材10は、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijから入射された光を伝送する。光導波路1〜iは、光源30から出射された光を方向DR2へ伝搬させる。光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijの各々は、後述する方法によって、光導波路1〜i中を伝搬する光の一部を光伝送部材10中へ導くとともに、光伝送部材10中を伝送する光を検出する。光源30は、それぞれ、波長λ1,λ2,・・・,λm(mは正の整数)の離散的な波長を有する光Lg1〜Lgmまたは所定の波長範囲を有する連続光Lgcを発生し、その発生した光Lg1〜LgmまたはLgcを光導波路1〜i中へ出射する。
【0030】
図2は、図1に示す半導体基板20、光導波路1〜iおよび光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijの斜視図である。図2を参照して、光送受信部11は、光共振部材40,50,60と、光検出部70と、信号処理回路90とを含む。
【0031】
光共振部材40,50,60の各々は、ストレスが印加されたSiからなり、リング形状を有する。そして、光共振部材40,50,60の各々は、10μmの直径および0.4μmの幅を有する。
【0032】
光共振部材40は、光送受信部11が対応する光導波路1上に配置される。光共振部材50,60は、光共振部材40から離れた位置に配置される。光検出部70は、たとえば、フォトダイオードからなり、光共振部材50の下側に配置される。なお、図2においては、図示されていないが、光共振部材60の下側にも、光検出部が配置されている。
【0033】
信号処理回路90は、光送受信部11が対応する光導波路1と光検出部70との間に配置される。
【0034】
なお、光送受信部12〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijの各々は、光送受信部11と同じ構成からなる。
【0035】
図3は、図2に示す光送受信部11の構成を示す斜視図である。図3を参照して、光送受信部11は、光共振部材40,50,60、光検出部70および信号処理回路90に加えて、光検出部80をさらに含む。
【0036】
光検出部80は、フォトダイオードからなり、光共振部材60の下側に配置される。光共振部材40は、光出射窓41を有する。光出射窓41は、リング形状からなり、光共振部材40と同じ直径および幅を有する。そして、光出射窓41は、光共振部材40に接して光共振部材40上に配置される。
【0037】
光共振部材50は、光入射窓51を有し、光共振部材60は、光入射窓61を有する。光入射窓51,61は、略四角形からなり、それぞれ、光共振部材50,60に接して光共振部材50,60上に配置される。
【0038】
なお、光送受信部12〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijの各々は、図3に示す光送受信部11と同じ構成からなる。
【0039】
図4は、図3に示す2つの光共振部材50,60の平面図である。図4を参照して、光共振部材50,60は、光入射窓51と光入射窓61との配置位置が相互に90度ずれるように配置される。
【0040】
その結果、光1は、光入射窓61によって光共振部材60中へ入射し、光共振部材60中を矢印ARW2の方向へ伝搬する。また、光2は、光入射窓51によって光共振部材50中へ入射し、光共振部材50中を矢印ARW1の方向に伝搬する。さらに、光3は、光入射窓51,61によってそれぞれ光共振部材50,60中へ入射し、光共振部材50,60中をそれぞれ矢印ARW1,ARW2の方向へ伝搬する。
【0041】
このように、光共振部材50に設けられた光入射窓51と、光共振部材60に設けられた光入射窓61とを相互に90度ずらせて配置することによって、光伝送部材10中をあらゆる方向へ伝搬する光を光共振部材50および/または光共振部材60中へ入射させることができる。
【0042】
図5は、光共振部材40の断面図である。図5を参照して、光共振部材40は、シリコン層401と、応力印加層402,403とからなる。
【0043】
シリコン層401は、リング形状からなる。応力印加層402は、シリコン層401に接してシリコン層401の上側に形成される。応力印加層403は、シリコン層401に接してシリコン層401の下側に形成される。そして、応力印加層402は、Siからなり、応力印加層403は、SiOからなる。
【0044】
なお、光共振部材50,60の各々も、図5に示す光共振部材40と同じ断面構造を有する。
【0045】
図6は、図5に示すシリコン層401へのストレスの印加状態を示す断面図である。図6を参照して、Siからなる応力印加層402は、1.855GPaの引張応力をシリコン層401に印加し、SiOからなる応力印加層403は、0.066GPaの圧縮応力をシリコン層401に印加する。
【0046】
したがって、シリコン層401は、応力印加層402によって矢印404の方向へ引っ張られ、応力印加層403によって矢印405の方向へ圧縮される。その結果、シリコン層401は、略台形形状に歪む。そして、シリコン層401は、応力印加層402,403によって応力が印加された状態で電圧が印加されることによって、電気光学材料として機能する。
【0047】
なお、光共振部材40,50,60においては、応力印加層402がシリコン層401に接してシリコン層401の下側に形成され、応力印加層403がシリコン層401に接してシリコン層401の上側に形成されていてもよい。
【0048】
図7は、図1に示す線VII−VII間における光集積回路装置100の断面図である。図7を参照して、光伝送部材10は、光吸収部材101を周囲に有する。光吸収部材101は、光伝送部材10中を周囲へ伝搬して来た光を吸収する。これによって、光伝送部材10の周囲による光の反射が防止される。その結果、光伝送部材10中における光の干渉を防止して光通信を正確に行なうことができる。
【0049】
光導波路1〜iは、半導体基板20の一主面に形成される。この場合、光導波路1〜iの各々は、シリコン酸化膜110によって囲まれており、1つの面が半導体基板20の一主面に略一致するように半導体基板20中に埋め込まれて半導体基板20の一主面に形成される。そして、シリコン酸化膜110の膜厚は、1.5μmである。
【0050】
このように、光導波路1〜iの周囲をシリコン酸化膜110によって囲むことにより、光損失を低減して光を光導波路1〜i中で伝搬させることができる。
【0051】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijは、光結合窓42,52をさらに含む。
【0052】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光結合窓42は、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijが対応する光導波路1〜i上に光導波路1〜iに接して形成される。
【0053】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光共振部材40は、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光出射窓41および光結合窓42に接して光出射窓41と光結合窓42との間に形成される。
【0054】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光出射窓41は、光伝送部材10および光共振部材40に接して、光伝送部材10と光共振部材40との間に形成される。そして、光出射窓41は、光伝送部材10および光共振部材40,50,60の屈折率よりも小さく、周囲の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなる。
【0055】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光入射窓51は、光伝送部材10および光共振部材50に接して、光伝送部材10と光共振部材50との間に形成される。そして、光入射窓51は、光伝送部材10および光共振部材40,50,60の屈折率よりも小さく、周囲の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなる。
【0056】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光共振部材50は、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光入射窓51および光結合窓52に接して光入射窓51と光結合窓52との間に形成される。
【0057】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光結合窓52は、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光共振部材50および光検出部70に接して光共振部材50と光検出部70との間に形成される。
【0058】
なお、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijは、光結合窓62をさらに含み、光共振部材60、光入射窓61、光結合窓62および光検出部80は、図7に示す光共振部材50、光入射窓51、光結合窓52および光検出部70と同じように配置される。
【0059】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光検出部70は、光導波路1〜iと同じように、半導体基板20に埋め込まれて半導体基板20の一主面に形成される。
【0060】
各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる信号処理回路90は、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijが対応する光導波路1〜iと、光検出部70との間において、半導体基板20の一主面に形成される。
【0061】
そして、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光出射窓41および光入射窓51,61と、光伝送部材10との間隔が0.2μmになるように、半導体基板20は、光伝送部材10に近接して配置される。
【0062】
光共振部材40,50,60の直径をrとし、光共振部材40,50,60の屈折率をnとし、共振波長をλとすると、次式が成立する。
【0063】
2πr=sλ/n(sは正の整数)・・・(1)
が成立する。
【0064】
光共振部材40,50,60に電圧を印加すると、光共振部材40,50,60の屈折率が変化するので、式(1)を満たす屈折率を有するように光共振部材40,50,60に電圧を印加すると、波長λを有する光が共振光として光共振部材40,50,60中を伝搬するとともに、一部が光伝送部材10中へ出射され、または光検出部70,80へ出射される。
【0065】
より具体的には、式(1)を満たす屈折率を有するように光共振部材40に電圧を印加すると、波長λを有する光が光結合窓42を介して共振光として光共振部材40中を伝搬するとともに、一部が光出射窓41を介して光伝送部材10中へ出射される。また、式(1)を満たす屈折率を有するように光共振部材50,60に電圧を印加すると、波長λを有する光が光入射窓51,61を介して光共振部材50,60中を伝搬するとともに、一部が光結合窓52,62を介して光検出部70,80へ出射される。
【0066】
光導波路1〜iは、波長λ1〜λmの離散的な波長を有する光Lg1〜Lgmを伝搬させ、またはλ1〜λmの範囲の連続的な波長範囲の光を伝搬させるので、波長λ1〜λmのうちの1つの波長λk(k=1〜m)が共振波長λになるように光伝送部材40,50,60に印加する電圧Vkを決定する。
【0067】
図8は、光共振部材40,50,60の出力と波長との関係を示す図である。また、図9は、共振波長を選択する概念図である。図8を参照して、光共振部材40,50,60は、電圧が印加されていない場合(V=0)、波長λ0をピーク波長とする光を出力する。一方、光共振部材40,50,60は、電圧Vkが印加されると、波長λkの光と共振し、波長λkをピーク波長とする光を出力する。
【0068】
したがって、光共振部材40は、電圧が印加されていない場合、光導波路1〜i中を伝搬する波長λ1〜λmの離散的な波長を有する光Lg1〜Lgm、またはλ1〜λmの範囲の連続的な波長範囲の光と共振しない。その結果、光共振部材40は、光伝送部材10中へ光を出射しない。
【0069】
一方、光共振部材40は、電圧Vkが印加されると、光導波路1〜i中を伝搬する波長λ1〜λmの離散的な波長を有する光Lg1〜Lgmまたはλ1〜λmの範囲の連続的な波長範囲の光のうち、波長λkを有する光Lgkと共振し、光Lgkを光伝送部材10中へ出射する。
【0070】
また、光共振部材50,60は、電圧が印加されていない場合、光伝送部材10中を伝送される光Lgkと共振しない。その結果、光共振部材50,60は、それぞれ、光検出部70,80へ光を出射しない。
【0071】
一方、光共振部材50,60は、電圧Vkが印加されると、光伝送部材10中を伝送される光Lgkと共振し、光Lgkをそれぞれ光検出部70,80へ出射する。
【0072】
このように、光共振部材40は、電圧Vkが印加されると、光導波路1〜iを伝搬する光Lg1〜Lgmの一部の光Lgkまたはλ1〜λmの範囲の連続的な波長範囲の光のうち波長λkを有する光を光伝送部材10中へ出射し、電圧が印加されていないとき、光伝送部材10中へ光を出射しない。
【0073】
また、光共振部材50,60は、電圧Vkが印加されると、光伝送部材10を伝搬する光Lgkをそれぞれ光検出部70,80へ出射し、電圧が印加されていないとき、光検出部70,80へ光を出射しない。
【0074】
光検出部70は、光共振部材50から出射された光の強度を検出し、その検出した強度を信号処理回路90へ出力する。
【0075】
光検出部80は、光共振部材60から出射された光の強度を検出し、その検出した強度を信号処理回路90へ出力する。
【0076】
信号処理回路90は、他の光送受信部へ信号を送信する場合、電圧Vkの光共振部材40のシリコン層401への印加と電圧Vkの光共振部材40のシリコン層401への不印加とを繰り返し行う。より具体的には、信号処理回路90は、デジタル信号の“1”に応じて電圧Vkを光共振部材40のシリコン層401に印加し、デジタル信号の“0”に応じて電圧Vkの光共振部材40のシリコン層401への印加を停止する。
【0077】
また、信号処理回路90は、他の光送受信部からの信号を受信する場合、電圧Vkを光共振部材50,60のシリコン層401に印加する。
【0078】
さらに、信号処理回路90は、光検出部70,80から受けた光強度に基づいて、信号を復調および処理する。より具体的には、信号処理回路90は、光検出部70,80から受けた2つの光強度の和を演算し、その演算した和に基づいて、信号を復調および処理する。
【0079】
図10は、図1に示す光源30の構成図である。図10を参照して、光源30は、レーザLS1〜LSmと、導波路300とを含む。導波路300は、レーザLS1〜LSmに接続されるとともに、光導波路1〜iに接続される。
【0080】
レーザLS1〜LSmは、それぞれ、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmを発振し、その発振した光Lg1〜Lgmを導波路300へ出射する。導波路300は、レーザLS1〜LSmから受けた光Lg1〜Lgmを伝搬させ、光導波路1〜iへ導く。
【0081】
このように、光源30は、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmを発生するとともに、その発生した光Lg1〜Lgmを光導波路1〜iへ導く。
【0082】
図11は、図1に示す光源30の他の構成図である。図11を参照して、光源30は、発光素子LSと、導波路310と、フィルタ320とを含む。導波路310は、導波路1〜iおよびフィルタ320に接続される。フィルタ320は、発光素子LSおよび導波路310に接続される。
【0083】
発光素子LSは、たとえば、紫外線励起蛍光発光素子からなり、連続波長の光を出射する。フィルタ320は、発光素子LSから出射された連続波長の光のうち、所定の波長範囲の光だけを導波路310へ通過させる。導波路310は、フィルタ320から受けた連続波長の光を導波路1〜iに導く。
【0084】
この発明においては、光源30は、図10に示す構成および図11に示す構成のいずれかからなっていればよい。
【0085】
図12から図16は、それぞれ、図1に示す光集積回路装置100の製造方法を説明するための第1から第5の工程図である。光集積回路装置100の製造が開始されると、n型Siからなる半導体基板20の一主面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングしてレジストパターン120を半導体基板20の一主面に形成する(図12の工程(a)参照)。
【0086】
そして、レジストパターン120をマスクとして、半導体基板20の一主面を反応性イオンエッチングによってエッチングし、溝51〜5iを半導体基板20の一主面に形成する(図12の工程(b)参照)。この場合、溝51〜5iは、約1.5μmの深さを有する。
【0087】
その後、半導体基板20の全面を覆うようにレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングして溝51〜5i以外の領域にレジストパターン130を形成する(図12の工程(c)参照)。
【0088】
そして、溝51〜5iおよびレジストパターン130を覆うように半導体基板20の一主面にシリコン酸化膜をプラズマCVD(Chemical Vapour Deposition)法によって形成し、レジストパターン130を除去する。これによって、シリコン酸化膜110が半導体基板20の一主面に形成される(図12の工程(d)参照)。この場合、シリコン酸化膜110の原料ガスとして、シラン(SiH)ガスおよびNOガスが用いられる。
【0089】
引き続いて、半導体基板20の全面を覆うようにレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングしてシリコン酸化膜110の一部が開口するようにレジストパターン140を形成する(図12の工程(e)参照)。
【0090】
そして、レジストパターン140をマスクとしてシリコン酸化膜110を反応性イオンエッチングによってエッチングし、シリコン酸化膜110に溝61〜6iを形成し(図13の工程(f)参照)、レジストパターン140を除去する。
【0091】
その後、溝61〜6iおよび半導体基板20の表面を覆うようにレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングしてシリコン酸化膜110の領域が開口するようにレジストパターン150を形成する(図13の工程(g)参照)。
【0092】
そして、溝61〜6iおよびレジストパターン150を覆うように半導体基板20の一主面にシリコン窒化膜(SiN)160をスパッタリングによって形成する(図13の工程(h)参照)。
【0093】
その後、シリコン酸化膜110の表面が露出するまでSiN膜160をエッチングし、レジストパターン150を除去する。これによって、周囲をシリコン酸化膜110によって囲まれた光導波路1〜iが半導体基板20の一主面に形成される(図13の工程(i)参照)。
【0094】
引き続いて、光導波路1〜iを覆うように半導体基板20の全面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングしてシリコン酸化膜110の領域にレジストパターン170を形成する。そして、レジストパターン170をマスクとしてボロンイオン(B)をイオン注入によって一部の領域に注入し、p−n接合を形成する。これによって、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光検出部70,80が半導体基板20の一主面に形成される(図14の工程(j)参照)。なお、図14においては、光検出部70のみが図示されているが、実際には、紙面の奥側の領域に光検出部80が形成されている。
【0095】
その後、半導体基板20の全面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングしてレジストパターン180を形成する(図14の工程(k)参照)。
【0096】
そして、レジストパターン180をマスクとして光導波路1〜iと光検出部70との間に各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる信号処理回路90を形成する(図14の工程(l)参照)。
【0097】
その後、光検出部70,80、信号処理回路90および光導波路1〜iを覆うように、半導体基板20の全面にSiN膜190をスパッタリングによって形成する(図14の工程(m)参照)。そして、SiN膜190の全面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングしてレジストパターン210を形成する(図14の工程(n)参照)。
【0098】
そうすると、レジストパターン210をマスクとしてSiN膜190をエッチングする。これによって、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光結合窓42,52がそれぞれ光導波路1〜i上および光検出部70上に形成される(図15の工程(o)参照)。なお、図15には、図示されていないが、光結合窓42,52の形成と同時に、光結合窓62が光検出部80上に形成される。
【0099】
その後、シリコン酸化膜をプラズマCVD法によって半導体基板20の全面に形成し、その形成したシリコン酸化膜を光結合窓42,52,62が露出するまでエッチングし、光結合窓42,52,62以外の領域に光結合窓42,52,62と同じ厚みを有するシリコン酸化膜111を形成する(図15の工程(p)参照)。
【0100】
そして、シリコン酸化膜111および光結合窓42,52,62を覆うように、半導体基板20の全面に、SiO、シリコン層およびSiを順次堆積した3層構造の膜220を形成する(図15の工程(q)参照)。
【0101】
そして、膜220の全面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングし、そのパターンニングしたレジストをマスクとして膜220をエッチングする。これによって、各光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光共振部材40,50がそれぞれ光結合窓42,52上に形成される(図15の工程(r)参照)。なお、図15には、図示されていないが、光共振部材40,50の形成と同時に、光共振部材60も、光結合窓62上に形成される。
【0102】
その後、シリコン酸化膜をプラズマCVD法によって半導体基板20の全面に形成し、その形成したシリコン酸化膜を光共振部材40,50,60が露出するまでエッチングし、光共振部材40,50,60以外の領域に光共振部材40,50,60と同じ厚みを有するシリコン酸化膜112を形成する(図15の工程(s)参照)。
【0103】
引き続いて、光共振部材40,50,60およびシリコン酸化膜112上にSiN膜230をスパッタリングによって形成する(図16の工程(t)参照)。そして、SiN膜230の全面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィーによりパターンニングし、そのパターンニングしたレジストをマスクとしてSiN膜230をエッチングする。これによって、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijに含まれる光出射窓41および光入射窓51がそれぞれ光共振部材40,50上に形成される(図16の工程(u)参照)。なお、図16には、図示されていないが、光出射窓41および光入射窓51の形成と同時に、光入射窓61が光共振部材60上に形成される。
【0104】
そして、周囲が光吸収剤101によって囲まれた光伝送部材10を半導体基板20と張り合わせる(図16の工程(v)参照)。これによって、光集積回路装置100が完成する。
【0105】
上述したように、半導体プロセスを用いれば、光集積回路装置100を容易に製造できる。
【0106】
図17は、図1に示す光集積回路装置100における信号のやり取りを説明するための図である。なお、光集積回路装置100における信号のやり取りにおいては、信号を送信する光送受信部の信号処理回路90は、一定期間、電圧Vkを光共振部材50,60に印加し、光検出部70,80が光伝送部材10中を伝搬する光を検出しない場合に信号を送信し、信号を送信する光送受信部以外の光送受信部は、定期的に、電圧Vkを光共振部材50,60に印加し、他の光送受信部から送信された光を受信する。
【0107】
図17を参照して、光源30のレーザLS1〜LSmは、それぞれ、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmを発振し、その発振した光Lg1〜Lgmを導波路300へ出射する。導波路300は、レーザLS1〜LSmからの光Lg1〜Lgmを伝搬させ、光導波路1〜iに導く。そして、光導波路1〜iは、光Lg1〜Lgmを伝搬させる。
【0108】
光送受信部11が信号を送信する場合、光送受信部11の信号処理回路90は、送信信号の“1”に応じて、電圧Vkを光共振部材40のシリコン層401に印加し、送信信号の“0”に応じて、光共振部材40のシリコン層401に電圧を印加しない。
【0109】
光送受信部11の光共振部材40は、信号処理回路90から電圧Vkがシリコン層401に印加されると、光導波路1中を伝搬する光Lg1〜Lgmのうち、波長λkを有する光Lgkと共振し、光Lgkを光伝送部材10中へ出射する。また、光送受信部11の光共振部材40は、信号処理回路90から電圧がシリコン層401に印加されないとき、光導波路1中を伝搬する光Lg1〜Lgmのいずれとも共振せず、光伝送部材10中へ光を出射しない。
【0110】
その結果、送信信号のデジタル値“1”に対応する波長λkの光Lgkが光伝送部材10の全域へ伝搬する。より具体的には、デジタル値“1”が連続していれば、その連続しているデジタル値“1”の長さに相当する期間、光Lgkが光伝送部材10中を伝送し、デジタル値“1”とデジタル値“0”とが交互に配列されていれば、途切れ途切れの光Lgkが光伝送部材10中を伝送する。
【0111】
そして、たとえば、光送受信部2jの信号処理回路90は、電圧Vkを光共振部材50,60のシリコン層401に印加する。そうすると、光送受信部2jの光共振部材50,60は、光伝送部材10中を伝搬する光Lgkと共振し、光Lgkをそれぞれ光検出部70,80へ出射する。
【0112】
光送受信部2jの光検出部70は、光共振部材50から出射された光Lgk1を受け、その受けた光Lgk1を電圧Vout1に変換する。そして、光送受信部2jの光検出部70は、電圧Vout1を信号処理回路90へ出力する。また、光送受信部2jの光検出部80は、光共振部材60から出射された光Lgk2を受け、その受けた光Lgk2を電圧Vout2に変換する。そして、光送受信部2jの光検出部80は、電圧Vout2を信号処理回路90へ出力する。
【0113】
この場合、光送受信部2jの光検出部70,80は、それぞれ、光Lgk1,Lgk2を受ければ、光Lgk1,Lgk2を受けた期間に相当する時間だけ、VLg(>0V)からなる電圧Vout1,Vout2を信号処理回路90へ出力し、光LLgk1,Lgk2を光共振部材50,60から受けなければ、0Vからなる電圧Vout1,Vout2を信号処理回路90へ出力する。
【0114】
そして、光送受信部2jの信号処理回路90は、電圧VLgからなる電圧Vout1,Vout2を光検出部70,80から受ければ、その受けた電圧Vout1,Vout2の和Voutを演算し、その演算した和Voutをデジタル値“1”に変換する。また、光送受信部2jの信号処理回路90は、和Voutが0Vからなるとき、和Voutをデジタル値“0”に変換する。その後、光送受信部2jの信号処理回路90は、その変換したデジタル値を復調および処理して光送受信部11からの信号を受信する。
【0115】
他の光送受信部12〜1j,21〜2j−1,・・・,i1〜ij間における信号のやり取りも、上述した方法によって行われる。
【0116】
したがって、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijは、光伝送部材10を共用の光伝送路として用いて信号を相互にやり取りする。
【0117】
図18は、図1に示す光集積回路装置100における信号の他のやり取りを説明するための図である。
【0118】
なお、図18においては、光導波路1〜iの個数が光Lg1〜Lgmの個数以下である場合について説明する。
【0119】
また、以下においては、信号を送信しない光送受信部の信号処理回路90は、一定期間、それぞれ、電圧V1〜Viを光共振部材50,60に順次印加し、信号を受信するものとする。
【0120】
図18を参照して、光導波路1に対応して設けられた光送受信部11〜1jは、電圧V1を光共振部材40,50,60のシリコン層401に印加して信号を送受信する。また、光導波路2に対応して設けられた光送受信部21〜2jは、電圧V2を光共振部材40,50,60のシリコン層401に印加して信号を送受信する。以下、同様にして、光導波路iに対応して設けられた光送受信部i1〜ijは、電圧Viを光共振部材40,50,60のシリコン層401に印加して信号を送受信する。
【0121】
光源30から出射された光Lg1〜Lgmが光導波路1〜i中を伝搬している状態において、光送受信部11の信号処理回路90は、電圧V1を光共振部材50,60のシリコン層401に印加して光検出部70,80が光Lg1を検出していないとき、送信信号の“1”に応じて、電圧V1を光共振部材40のシリコン層401に印加し、送信信号の“0”に応じて、光共振部材40のシリコン層401に電圧を印加しない。
【0122】
光送受信部11の光共振部材40は、信号処理回路90から電圧V1がシリコン層401に印加されると、光導波路1中を伝搬する光Lg1〜Lgmのうち、波長λ1を有する光Lg1と共振し、光Lg1を光伝送部材10中へ出射する。また、光送受信部11の光共振部材40は、信号処理回路90から電圧がシリコン層401に印加されないとき、光導波路1中を伝搬する光Lg1〜Lgmのいずれとも共振せず、光伝送部材10中へ光を出射しない。
【0123】
このようにして、光送受信部11は、波長λ1を有する光Lg1を用いて信号を送信する。
【0124】
また、光送受信部2jの信号処理回路90は、電圧V2を光共振部材50,60のシリコン層401に印加して光検出部70,80が光Lg2を検出していないとき、送信信号の“1”に応じて、電圧V2を光共振部材40のシリコン層401に印加し、送信信号の“0”に応じて、光共振部材40のシリコン層401に電圧を印加しない。
【0125】
光送受信部2jの光共振部材40は、信号処理回路90から電圧V2がシリコン層401に印加されると、光導波路2中を伝搬する光Lg1〜Lgmのうち、波長λ2を有する光Lg2と共振し、光Lg2を光伝送部材10中へ出射する。また、光送受信部2jの光共振部材40は、信号処理回路90から電圧がシリコン層401に印加されないとき、光導波路2中を伝搬する光Lg1〜Lgmのいずれとも共振せず、光伝送部材10中へ光を出射しない。
【0126】
このようにして、光送受信部2jは、波長λ2を有する光Lg2を用いて信号を送信する。
【0127】
さらに、光送受信部i1の信号処理回路90は、電圧Viを光共振部材50,60のシリコン層401に印加して光検出部70,80が光Lgiを検出していないとき、送信信号の“1”に応じて、電圧Viを光共振部材40のシリコン層401に印加し、送信信号の“0”に応じて、光共振部材40のシリコン層401に電圧を印加しない。
【0128】
光送受信部i1の光共振部材40は、信号処理回路90から電圧Viがシリコン層401に印加されると、光導波路i中を伝搬する光Lg1〜Lgmのうち、波長λiを有する光Lgiと共振し、光Lgiを光伝送部材10中へ出射する。また、光送受信部i1の光共振部材40は、信号処理回路90から電圧がシリコン層401に印加されないとき、光導波路i中を伝搬する光Lg1〜Lgmのいずれとも共振せず、光伝送部材10中へ光を出射しない。
【0129】
このようにして、光送受信部i1は、波長λiを有する光Lgiを用いて信号を送信する。
【0130】
光送受信部11,2j,i1からそれぞれ出射された光Lg1,Lg2,Lgiは、光伝送部材10中を全方向へ伝搬する。この場合、光Lg1,Lg2,Lgiは、相互に波長が異なるので、干渉しない。
【0131】
そして、たとえば、光送受信部i4の信号処理回路90は、一定期間、電圧V1を光共振部材50,60のシリコン層401に印加すると、光送受信部i4の光共振部材50,60は、光伝送部材10中を伝搬する光Lg1と共振し、光Lg1をそれぞれ光検出部70,80へ出射する。そして、光送受信部i4の光検出部70,80は、光Lg1を受けると、電圧VLgからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ生成して信号処理回路90へ出力し、光Lg1を受けないとき、0Vからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ生成して信号処理回路90へ出力する。
【0132】
光送受信部i4の信号処理回路90は、電圧VLgからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ光検出部70,80から受けると、その受けた電圧Vout1,Vout2の和Voutを演算し、その演算した和Voutをデジタル値“1”に変換し、0Vからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ光検出部70,80から受けると、和Voutをデジタル値“0”に変換する。そして、光送受信部i4の信号処理回路90は、その変換したデジタル値を復調および処理して信号を受信する。
【0133】
また、光送受信部15の信号処理回路90は、一定期間、電圧V2を光共振部材50,60のシリコン層401に印加すると、光送受信部15の光共振部材50,60は、光伝送部材10中を伝搬する光Lg2と共振し、光Lg2をそれぞれ光検出部70,80へ出射する。そして、光送受信部15の光検出部70,80は、光Lg2を受けると、電圧VLgからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ生成して信号処理回路90へ出力し、光Lg1を受けないとき、0Vからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ生成して信号処理回路90へ出力する。
【0134】
光送受信部15の信号処理回路90は、電圧VLgからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ光検出部70,80から受けると、その受けた電圧Vout1,Vout2の和Voutを演算し、その演算した和Voutをデジタル値“1”に変換し、0Vからなる電圧Vout1,Vout2を光検出部60から受けると、和Voutをデジタル値“0”に変換する。そして、光送受信部15の信号処理回路90は、その変換したデジタル値を復調および処理して信号を受信する。
【0135】
さらに、光送受信部24の信号処理回路90は、一定期間、電圧Viを光共振部材50,60のシリコン層401に印加すると、光送受信部24の光共振部材50,60は、光伝送部材10中を伝搬する光Lgiと共振し、光Lgiをそれぞれ光検出部70,80へ出射する。そして、光送受信部24の光検出部70,80は、光Lgiを受けると、電圧VLgからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ生成して信号処理回路90へ出力し、光Lgiを受けないとき、0Vからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ生成して信号処理回路90へ出力する。光送受信部24の信号処理回路90は、電圧VLgからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ光検出部70,80から受けると、その受けた電圧Vout1,Vout2の和Voutを演算し、その演算した和Voutをデジタル値“1”に変換し、0Vからなる電圧Vout1,Vout2をそれぞれ光検出部70,80から受けると、和Voutをデジタル値“0”に変換する。そして、光送受信部24の信号処理回路90は、その変換したデジタル値を復調および処理して信号を受信する。
【0136】
光送受信部11,2j,i1,i4,15,24以外の光送受信部も、上述した方法によって信号をやり取りする。
【0137】
このように、この発明においては、複数の光Lg1,Lg2,Lgiを同時に光伝送部材10中に出射して信号をやり取りすることもできる。
【0138】
図19は、この発明の実施の形態による他の光集積回路装置の斜視図である。この発明の実施の形態による光集積回路装置は、図19に示す光集積回路装置100Aであってもよい。
【0139】
図19を参照して、光集積回路装置100Aは、図1に示す光集積回路装置100の光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijをそれぞれ光送受信部11A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAに代えたものであり、その他は、光集積回路装置100と同じである。
【0140】
光送受信部11A〜1jAは、光導波路1に対応して設けられ、光送受信部21A〜2jAは、光導波路2に対応して設けられ、以下、同様にして、光送受信部i1A〜ijAは、光導波路iに対応して設けられる。
【0141】
光送受信部11Aは、図2に示す光送受信部11に光起電力素子240を追加したものであり、その他は、光送受信部11と同じである。光送受信部12A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAの各々は、光送受信部11Aと同じ構成からなる。
【0142】
図20は、図19に示す線XX−XX間における光集積回路装置100Aの断面図である。図20を参照して、各光送受信部13A,23A,i3Aにおいて、光起電力素子240は、光伝送部材10に接して信号処理回路90上に配置され、信号処理回路90に電気的に接続される。
【0143】
光起電力素子240は、たとえば、p型Siとn型Siとのp−n接合からなる。そして、光起電力素子240は、n型Siが光伝送部材10に接するように、信号処理回路90上に配置される。
【0144】
Siは、光伝送部材10を構成するSiNよりも大きい屈折率を有するため、光起電力素子240まで伝搬した光は、光起電力素子240に入射する。そして、光起電力素子240は、光伝送部材10中を伝搬する光を受け、その受けた光を電気に変換して信号処理回路90へ供給する。
【0145】
光集積回路装置100Aにおいては、信号処理回路90は、光起電力素子240から受けた電気によって動作する。つまり、光集積回路装置100Aにおいては、信号処理回路90は、光起電力素子240を電源として用いる。
【0146】
光集積回路装置100Aにおいては、各光送受信部11A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAは、図17および図18において説明した方法によって、他の光送受信部と信号をやり取りする。
【0147】
そして、各光送受信部11A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAにおける光起電力素子240は、光検出部70,80による光の受信の有無に拘わらず、光伝送部材10中を伝搬する光を受けて電気に変換し、その変換した電気を信号処理回路90へ供給する。すなわち、各光送受信部11A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAにおける光起電力素子240は、自己が接続された信号処理回路90が信号を送受信しなくても、他の光送受信部が信号をやり取りするときに光伝送部材10中を伝送する光を受けて電気に変換し、その変換した電気を信号処理回路90へ供給する。
【0148】
したがって、光集積回路装置100Aにおいては、各光送受信部11A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAは、信号の受信の有無に拘わらず、光伝送部材10中を伝送する光を電気に変換するので、エネルギーを節約できる。
【0149】
なお、図19および図20に示す光集積回路装置100Aは、図12から図16に示す工程(a)〜工程(v)に従って作製される。この場合、図14に示す工程(l)において、信号処理回路90を半導体基板20の一主面に形成した後、信号処理回路90上にp型Siおよびn型Siを順次積層して光起電力素子240を形成する。
【0150】
図21は、この発明の実施の形態によるさらに他の光集積回路装置の斜視図である。また、図22は、図21に示す他方の半導体基板20Aを光伝送部材10側から見た斜視図である。さらに、図23は、図21に示す線XXIII−XXIIIにおける光集積回路装置100Bの断面図である。
【0151】
この発明の実施の形態による光集積回路装置は、図21から図23に示す光集積回路装置100Bであってもよい。図21から図23を参照して、光集積回路装置100Bは、図1に示す光集積回路装置100に半導体基板20A、光源30A、光導波路1A〜iA、および光送受信部11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBを追加したものであり、その他は、光集積回路装置100と同じである。
【0152】
半導体基板20Aは、n型Siからなり、半導体基板20に対向するように光伝送部材10に近接して配置される。
【0153】
光源30Aは、半導体基板20Aの端面に配置される。光導波路1A〜iAは、光導波路1〜iと同じように、半導体基板20Aの一主面に配置される。
【0154】
光送受信部11B〜1jBは、光導波路1Aに対応して設けられ、光送受信部21B〜2jBは、光導波路2Aに対応して設けられ、以下、同様にして、光送受信部i1B〜ijBは、光導波路iAに対応して設けられる。そして、光送受信部11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBの各々は、光送受信部11と同じ構成からなる。
【0155】
光源30Aは、光源30と同じ構成からなり、それぞれ、波長λ1〜λmを有する光Lg1〜Lgmまたは所定の波長範囲の連続光Lgcを発生し、その発生した光Lg1〜Lgmまたは連続光Lgcを光導波路1A〜iAへ供給する。
【0156】
光送受信部11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBは、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijと同じように、上述した方法によって、光導波路1A〜iA中を伝搬する光Lg1〜Lgmまたは連続光Lgcの一部を光伝送部材10中へ出射するとともに、光伝送部材10中の光を光検出部70,80によって受けて信号をやり取りする。
【0157】
光集積回路装置100Bにおいては、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij間で相互に信号のやり取りを行うこともでき、光送受信部11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijB間で相互に信号のやり取りを行うこともできる。また、光集積回路装置100Bにおいては、光伝送部材10の一方の面側に配置された光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijのいずれかと、光伝送部材10の他方の面側に配置された光送受信部11B〜2jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBのいずれかとの間で信号のやり取りを行うこともできる。
【0158】
したがって、光集積回路装置100Bにおいては、光集積回路装置100,100Aよりも多くの光送受信部を相互に接続できる。
【0159】
このように、光集積回路装置100Bは、光伝送部材10の2つの面側にそれぞれ光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ijおよび光送受信部11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBを配置した構造からなる。
【0160】
なお、光集積回路装置100Bにおいては、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij,11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBの各々は、光起電力素子240をさらに含んでいてもよい。
【0161】
上述したように、光集積回路装置100,100A,100Bにおいては、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij、光送受信部11A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAおよび光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij,11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBは、光伝送部材10を共用の光伝送路として用いて信号の送受信を行う。
【0162】
したがって、この発明によれば、任意の2つの光送受信部が通信を行うことができる。また、光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij、光送受信部11A〜1jA,21A〜2jA,・・・,i1A〜ijAおよび光送受信部11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij,11B〜1jB,21B〜2jB,・・・,i1B〜ijBを光伝送部材を介して任意に接続可能である。
【0163】
この発明においては、光共振部材40,50,60は、「光スイッチ部材」を構成する。
【0164】
また、この発明においては、光共振部材40は、「第1の光共振部材」を構成し、光共振部材50,60は、「第2の光共振部材」を構成する。
【0165】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1jに含まれるj個の光共振部材40、光送受信部21〜2jに含まれるj個の光共振部材40、・・・、および光送受信部i1〜ijに含まれるj個の光共振部材40は、「i個の第1の光共振部材群」を構成する。
【0166】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1jに含まれるj個の光共振部材50,60、光送受信部21〜2jに含まれるj個の光共振部材50,60、・・・、および光送受信部i1〜ijに含まれるj個の光共振部材50,60は、「i個の第2の光共振部材群」を構成する。
【0167】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1jに含まれるj個の光検出部70,80、光送受信部21〜2jに含まれるj個の光検出部70,80、・・・、および光送受信部i1〜ijに含まれるj個の光検出部70,80は、「i個の光検出部群」を構成する。
【0168】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1jに含まれるj個の信号処理回路90、光送受信部21〜2jに含まれるj個の信号処理回路90、・・・、および光送受信部i1〜ijに含まれるj個の信号処理回路90は、「i個の信号処理回路群」を構成する。
【0169】
さらに、この発明においては、光送受信部11A〜1jAに含まれるj個の光共振部材40、光送受信部21A〜2jAに含まれるj個の光共振部材40、・・・、および光送受信部i1A〜ijAに含まれるj個の光共振部材40は、「i個の第1の光共振部材群」を構成する。
【0170】
さらに、この発明においては、光送受信部11A〜1jAに含まれるj個の光共振部材50,60、光送受信部21A〜2jAに含まれるj個の光共振部材50,60、・・・、および光送受信部i1A〜ijAに含まれるj個の光共振部材50,60は、「i個の第2の光共振部材群」を構成する。
【0171】
さらに、この発明においては、光送受信部11A〜1jAに含まれるj個の光検出部70,80、光送受信部21A〜2jAに含まれるj個の光検出部70,80、・・・、および光送受信部i1A〜ijAに含まれるj個の光検出部70,80は、「i個の光検出部群」を構成する。
【0172】
さらに、この発明においては、光送受信部11A〜1jAに含まれるj個の信号処理回路90、光送受信部21A〜2jAに含まれるj個の信号処理回路90、・・・、および光送受信部i1A〜ijAに含まれるj個の信号処理回路90は、「i個の信号処理回路群」を構成する。
【0173】
さらに、この発明においては、光送受信部11B〜1jBに含まれるj個の光共振部材40、光送受信部21B〜2jBに含まれるj個の光共振部材40、・・・、および光送受信部i1B〜ijBに含まれるj個の光共振部材40は、「i個の第1の光共振部材群」を構成する。
【0174】
さらに、この発明においては、光送受信部11B〜1jBに含まれるj個の光共振部材50,60、光送受信部21B〜2jBに含まれるj個の光共振部材50,60、・・・、および光送受信部i1B〜ijBに含まれるj個の光共振部材50,60は、「i個の第2の光共振部材群」を構成する。
【0175】
さらに、この発明においては、光送受信部11B〜1jBに含まれるj個の光検出部70,80、光送受信部21B〜2jBに含まれるj個の光検出部70,80、・・・、および光送受信部i1B〜ijBに含まれるj個の光検出部70,80は、「i個の光検出部群」を構成する。
【0176】
さらに、この発明においては、光送受信部11B〜1jBに含まれるj個の信号処理回路90、光送受信部21B〜2jBに含まれるj個の信号処理回路90、・・・、および光送受信部i1B〜ijBに含まれるj個の信号処理回路90は、「i個の信号処理回路群」を構成する。
【0177】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1j,11B〜1jBに含まれる2j個の光共振部材40、光送受信部11〜1j,21B〜2jBに含まれる2j個の光共振部材40、・・・、および光送受信部11〜1j,i1B〜ijBに含まれる2j個の光共振部材40は、「i個の第1の光共振部材群」を構成する。
【0178】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1j,11B〜1jBに含まれる2j個の光共振部材50,60、光送受信部11〜1j,21B〜2jBに含まれる2j個の光共振部材50,60、・・・、および光送受信部11〜1j,i1B〜ijBに含まれる2j個の光共振部材50,60は、「i個の第2の光共振部材群」を構成する。
【0179】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1j,11B〜1jBに含まれる2j個の光検出部70,80、光送受信部11〜1j,21B〜2jBに含まれる2j個の光検出部70,80、・・・、および光送受信部11〜1j,i1B〜ijBに含まれる2j個の光検出部70,80は、「i個の光検出部群」を構成する。
【0180】
さらに、この発明においては、光送受信部11〜1j,11B〜1jBに含まれる2j個の信号処理回路90、光送受信部11〜1j,21B〜2jBに含まれる2j個の信号処理回路90、・・・、および光送受信部11〜1j,i1B〜ijBに含まれる2j個の信号処理回路90は、「i個の信号処理回路群」を構成する。
【0181】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0182】
この発明は、任意の2つの光送受信部が、直接、通信可能な光集積回路装置に適用される。また、この発明は、同一時刻に、任意の2つの光送受信部が相互に通信可能な光集積回路装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】この発明の実施の形態による光集積回路装置の斜視図である。
【図2】図1に示す半導体基板、光導波路および光送受信部の斜視図である。
【図3】図2に示す光送受信部の構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示す2つの光共振部材の平面図である。
【図5】光共振部材の断面図である。
【図6】図5に示すシリコン層へのストレスの印加状態を示す断面図である。
【図7】図1に示す線VII−VII間における光集積回路装置の断面図である。
【図8】光共振部材の出力と波長との関係を示す図である。
【図9】共振波長を選択する概念図である。
【図10】図1に示す光源の構成図である。
【図11】図1に示す光源の他の構成図である。
【図12】図1に示す光集積回路装置の製造方法を説明するための第1の工程図である。
【図13】図1に示す光集積回路装置の製造方法を説明するための第2の工程図である。
【図14】図1に示す光集積回路装置の製造方法を説明するための第3の工程図である。
【図15】図1に示す光集積回路装置の製造方法を説明するための第4の工程図である。
【図16】図1に示す光集積回路装置の製造方法を説明するための第5の工程図である。
【図17】図1に示す光集積回路装置における信号のやり取りを説明するための図である。
【図18】図1に示す光集積回路装置における信号の他のやり取りを説明するための図である。
【図19】この発明の実施の形態による他の光集積回路装置の斜視図である。
【図20】図19に示す線XX−XX間における光集積回路装置の断面図である。
【図21】この発明の実施の形態によるさらに他の光集積回路装置の斜視図である。
【図22】図21に示す他方の半導体基板を光伝送部材側から見た斜視図である。
【図23】図21に示す線XXIII−XXIIIにおける光集積回路装置の断面図である。
【符号の説明】
【0184】
1〜i 光導波路、11〜1j,21〜2j,・・・,i1〜ij 光送受信部、20 半導体基板、30 光源、40,50,60 光共振部材、70,80 光検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝送する光伝送部材と、
前記光伝送部材を共用の光伝送路として用い、相互に信号を送受信する複数の光送受信部と、
光源から出射された光を伝搬させる光導波路とを備え、
前記複数の光送受信部の各々は、
前記光伝送部材中の光を検出する光検出部と、
ストレスが印加されたシリコンからなり、前記光導波路中の光を前記光伝送部材へ導くとともに、前記光伝送部材中の光を前記光検出部へ導く光スイッチ部材とを含む、光集積回路装置。
【請求項2】
前記複数の光送受信部は、相互に異なる波長の光を前記光伝送部材中に伝送させて相互に信号を送受信する、請求項1に記載の光集積回路装置。
【請求項3】
前記光源から出射された光は、離散的な複数の波長または一定範囲の連続的な波長を有する複数の光からなり、
前記光スイッチ部材は、
電圧が印加されると、前記光導波路中を伝搬する光を構成する複数の光のうち、任意の1つの波長を有する1つの光を光共振によって前記光導波路から前記光伝送部材へ導く第1の光共振部材と、
電圧が印加されると、前記光伝送部材中を伝搬する光を光共振によって前記光検出部へ導く第2の光共振部材とを含む、請求項1に記載の光集積回路装置。
【請求項4】
前記第2の光共振部材は、
前記光伝送部材中を伝搬する光が入射するための第1の光入射窓を有する第1の光入射部材と、
前記光伝送部材中を伝搬する光が入射するための第2の光入射窓を有する第2の光入射部材とを含み、
前記第1の光入射窓の位置は、前記第2の光入射窓の位置を約90度回転した位置である、請求項3に記載の光集積回路装置。
【請求項5】
前記複数の光送受信部の各々は、
前記第1の光共振部材への電圧の印加と不印加とによって前記光伝送部材を介して信号を送信し、前記第2の光共振部材への電圧の印加と不印加とによって前記光伝送部材を介して信号を受信する信号処理回路をさらに含む、請求項3に記載の光集積回路装置。
【請求項6】
前記第1および第2の光共振部材の各々は、リング形状からなる、請求項3に記載の光集積回路装置。
【請求項7】
前記光導波路は、半導体基板の一主面に形成され、
前記光検出部は、前記光導波路から離れて前記半導体基板の一主面に形成され、
前記第1の光共振部材は、前記光導波路に接して前記光導波路上に形成されるとともに、前記光伝送部材に近接して配置され、
前記第2の光共振部材は、前記光検出部に接して前記光検出部上に形成されるとともに、前記光伝送部材に近接して配置され、
前記第1および第2の光共振部材の各々は、
シリコン層と、
前記シリコン層の一方側で前記シリコン層に接して形成され、前記半導体基板の面内方向において第1の方向の応力を前記シリコン層に印加する第1の応力印加層と、
前記シリコン層の他方側で前記シリコン層に接して形成され、前記半導体基板の面内方向において前記第1の方向と反対方向である第2の方向の応力を前記シリコン層に印加する第2の応力印加層とを含む、請求項3に記載の光集積回路装置。
【請求項8】
前記第1の応力印加層は、シリコン窒化層からなり、
前記第2の応力印加層は、シリコン酸化層からなる、請求項7に記載の光集積回路装置。
【請求項9】
前記光伝送部材は、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する透明部材からなる、請求項1に記載の光集積回路装置。
【請求項10】
前記光伝送部材は、SiN、SiO、SiON、レジストおよびプラスチックのいずれかからなる、請求項9に記載の光集積回路装置。
【請求項11】
光を伝送する光伝送部材と、
前記光伝送部材に近接して配置された半導体基板とを備え、
前記半導体基板は、
前記光伝送部材側の一主面に形成され、光源からの光を伝搬させるi(iは正の整数)個の光導波路と、
前記i個の光導波路に対応して設けられ、各々が1つの光導波路に接して前記1つの光導波路上に形成されたi個の第1の光共振部材群と、
前記i個の光導波路に対応して設けられたi個の光検出部群と、
前記i個の光導波路に対応して設けられ、各々が1つの光検出部群に接して前記1つの光検出部群上に形成されたi個の第2の光共振部材群と、
前記i個の光導波路に対応して設けられたi個の信号処理回路群とを含み、
前記i個の第1の光共振部材群の各々は、j(jは2以上の整数)個の第1の光共振部材を含み、
前記i個の光検出部群の各々は、j個の光検出部を含み、
前記i個の第2の光共振部材群の各々は、j個の第2の光共振部材を含み、
前記i個の信号処理回路群の各々は、j個の信号処理回路を含み、
前記j個の第1の光共振部材の各々は、ストレスが印加されたシリコンからなり、電圧、磁場および熱のいずれかが印加されると、前記光導波路中を伝搬する光のうち、光共振する波長の光を前記光伝送部材へ導き、
前記j個の第2の光共振部材の各々は、ストレスが印加されたシリコンからなり、電圧、磁場および熱のいずれかが印加されると、前記光伝送部材中を伝搬する光のうち、光共振する波長の光を前記光検出部へ導き、
前記j個の光検出部の各々は、前記第2の光共振部材によって導かれた光を検出し、
前記j個の信号処理回路の各々は、前記第1の光共振部材への電圧、磁場および熱のいずれかの印加と不印加とによって信号を送信し、前記第2の光共振部材への電圧、磁場および熱のいずれかの印加と不印加とによって前記光検出部が検出した検出信号を処理する、光集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−294577(P2009−294577A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150335(P2008−150335)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.発行者名 社団法人 電子情報通信学会 2.刊行物名、巻数、号数 電子情報通信学会技術研究報告 信学技報 第107巻 第389号 3.発行日 平成19年12月7日
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】