説明

内燃機関のトルク制御装置

【課題】 加速に伴う車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、同タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、加速度センサを用いずに上記タイミングをより正確に求める。
【解決手段】 車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、同タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記車両の変速機の入力軸の回転角加速度dNtが上記車両の加速開始後最初に下に凸となる極値をとるタイミングから求める、内燃機関のトルク制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のトルク制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の加速に伴って発生する車体の前後方向の振動を、車両に搭載されている内燃機関の駆動力(トルク)を制御することによって抑制する技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。そして、このような車体の前後振動を抑制する目的で内燃機関のトルクの制御を行う場合、そのトルク制御の終了タイミングを、車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを基準として決定する場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−206775号公報
【特許文献2】特開平6−257480号公報
【特許文献3】特開平5−162571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、車体の前後振動の加速度がピークとなる上記タイミングを正確に求める必要があるのであるが、従来、このタイミングを正確に求めるのは困難であった(実際には、車両の加速度を測定する加速度センサを用いれば上記タイミングを求めることができるのであるが、その場合にはその分のコスト上昇が生じてしまう。)。
【0005】
本発明は以上のような点に鑑みてなされたもので、その目的は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、同タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、上記加速度センサを用いずに上記タイミングをより正確に求めることのできる、内燃機関のトルク制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された内燃機関のトルク制御装置を提供する。
【0007】
1番目の発明は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、同タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記車両の変速機の入力軸の回転角加速度が上記車両の加速開始後最初に下に凸となる極値をとるタイミングから求める、内燃機関のトルク制御装置を提供する。
【0008】
車両が加速される場合、同車両の変速機の入力軸の回転数(すなわち、回転速度)が上昇せしめられるが、この際、上記入力軸の回転角加速度の値は振動する。そして、この振動の位相は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度の振動の位相に比べ180°進んでいるということが本願の発明者らによって見出された。
【0009】
1番目の発明はこのことを利用して、上記車両の変速機の入力軸の回転角加速度が上記車両の加速開始後最初に下に凸となる極値をとるタイミングから上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求めるようにしたものであり、このようにすることで、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングをより正確に求めることが可能になる。そしてその結果、内燃機関のトルクをより適切に制御することが可能となる。
【0010】
なお、ここで変速機の入力軸の回転角加速度は、例えば、上記車両がトルクコンバータ付き自動変速機を搭載している場合には、トルクコンバータのタービンの回転角加速度である。また、上記車両が手動変速機を搭載している場合には、上記変速機の入力軸の回転角加速度として、クランク軸の回転角加速度を用いることができる。
【0011】
2番目の発明は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、同タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記車両の変速機の入力軸の回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングと、少なくとも機関回転数と上記変速機におけるギア比とに基づいて決定される上記車両の駆動系のねじり振動数とから求める、内燃機関のトルク制御装置を提供する。
【0012】
車両が加速される場合、同車両の変速機の入力軸の回転数(すなわち、回転速度)が上昇せしめられるが、この際、上記入力軸の回転数は、通常、振動しながら上昇していくことになる。そして、この振動の位相は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度の振動の位相に比べ90°進んでいる。このことから、上記車両の変速機の入力軸の回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングと、上記ねじり振動数から求められる位相90°分の時間(4分の1周期)とから上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求めることができる。
【0013】
2番目の発明はこのような原理によって上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求めるものであり、2番目の発明によっても、上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングをより正確に求めることができ、その結果、内燃機関のトルクをより適切に制御することが可能となる。
【0014】
なお、ここで変速機の入力軸の回転数は、例えば、上記車両がトルクコンバータ付き自動変速機を搭載している場合には、トルクコンバータのタービンの回転数(すなわち回転速度)である。また、上記車両が手動変速機を搭載している場合には、上記変速機の入力軸の回転数として、クランク軸の回転数(すなわち回転速度)、すなわち機関回転数を用いることができる。
【0015】
3番目の発明では2番目の発明において、上記車両がトルクコンバータ付き自動変速機を搭載していて、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記トルクコンバータのタービンの回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングと、少なくとも機関回転数と上記変速機におけるギア比と上記トルクコンバータにおける速度比とに基づいて決定される上記車両の駆動系のねじり振動数とから求めるようになっている。
【0016】
3番目の発明によっても、2番目の発明とほぼ同様の作用及び効果を得ることができる。なおここで、トルクコンバータにおける速度比とは、入力側の機関回転数NEと出力側のトルクコンバータのタービンの回転数Ntとの比(Nt/NE)である。
【0017】
4番目の発明は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、同タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記車両の車輪の回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングから求める、内燃機関のトルク制御装置を提供する。
【0018】
車両が加速される場合、同車両の車輪の回転数(すなわち、回転速度)が上昇せしめられるが、この際、上記車輪の回転数は、通常、振動しながら上昇していくことになる。そして、この振動の位相は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度の振動の位相と一致している。
【0019】
4番目の発明はこのことを利用して、上記車両の車輪の回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングから上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求めるようにしたものであり、このようにすることで、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングをより正確に求めることが可能になる。そしてその結果、内燃機関のトルクをより適切に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
各請求項に記載の発明は、車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、同タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、加速度センサを用いることなく上記タイミングをより正確に求めることを可能にし、その結果、内燃機関のトルクをより適切に制御することを可能にするという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明をトルクコンバータ付き自動変速機を搭載した車両に適用した場合について説明するための図である。
【0022】
本実施形態において、内燃機関1により発生した駆動力(トルク)は先ずトルクコンバータ3に入力され、次いで同トルクコンバータ3を介して変速機(ギア)5に伝達される。変速機5はドライブシャフト7に連結されており、上記トルクは同ドライブシャフト7を介してタイヤ9へと伝達される。そして、このようなトルク伝達の過程で発生した振動は車体10へ伝達されることになる。
【0023】
本実施形態では、内燃機関1はその発生トルクを含めて電子制御ユニット(ECU)11により制御されており、内燃機関1とECU11は制御に必要な信号をやり取りしている。内燃機関1からECU11に入力される信号には、機関回転数NEを示すものが含まれている。また、ECU11にはアクセルペダル13に接続されアクセル開度θを検出するアクセル開度センサ15からの信号も入力されている。
【0024】
また、トルクコンバータ3の出力側にはトルクコンバータ3のタービン3aの回転数Ntを計測するためのタービン回転数センサ17が設けられている。このタービン回転数センサ17からの信号もECU11に入力される。更に、シフト位置、すなわち変速機5におけるギア比についての情報もECU11に入力されるようになっている。
【0025】
本実施形態では、以上のような構成において、車両の加速に伴って発生する車体10の前後方向の振動を、内燃機関1のトルクを制御することによって抑制するようにしている。そしてこのように車体の前後振動を抑制する目的で内燃機関のトルク制御を行う場合、そのトルク制御の終了タイミングを、車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを基準として決定する場合がある。本実施形態においても上記終了タイミングを上記車体の前後振動の加速度が加速開始後最初にピークとなるタイミングとしているのであるが、従来、上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングを正確に求めることは、加速度センサを用いなければ困難であった。加速度センサを用いた場合には、その分のコスト上昇が生じてしまう。
【0026】
本実施形態では以上のような点を考慮し、本願の発明者によって見出された事実、すなわち、トルクコンバータ3のタービン3aの回転角加速度dNtの値の振動の位相が上記車体の前後振動の加速度の振動の位相に比べ180°進んでいるということを利用して、加速度センサを用いずに上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングをより正確に求めるようにし、内燃機関のトルクをより適切に制御するようにしている。この結果、上記車体の前後振動をより確実に抑制することが可能となる。
【0027】
すなわち、本実施形態では、車両の加速に伴う車体の前後振動を抑制するために図2のフローチャートに示された制御ルーチンによる制御が実施される。この制御ルーチンは、ECU11によって予め定めた時間毎の割込みによって実施される。
【0028】
本制御ルーチンがスタートすると、まずステップ101においてアクセル開度θの計測が開始される。続いてステップ103においてアクセル開度θの変化速度(dθ/dt)が予め定めた基準値αよりも大きいか否かが判定される。ここでの判定は、トルク制御を行って抑制する必要がある程の車体の前後振動が生ずる程の高い加速が要求されているか否かを判定するものであり、上記基準値αはこの目的を考慮して予め定められる。
【0029】
ステップ103においてアクセル開度θの変化速度が上記基準値α以下であると判定された場合((dθ/dt)≦α)は、加速が要求されていないか、もしくは加速が要求されていても要求されている加速の度合が低く、トルク制御を行って抑制する必要がある程の車体の前後振動は生じないと考えられる場合であり、この場合には、本制御ルーチンは一旦終了することとなる。
【0030】
一方、ステップ103においてアクセル開度θの変化速度が上記基準値αより大きいと判定された場合((dθ/dt)>α)は、要求されている加速の度合が高く、トルク制御を行って抑制する必要がある程の車体の前後振動が生ずると考えられる場合である。従って、この場合には、ステップ105に進み、上記車体の前後振動を抑制するためのトルク制御が開始される。このトルク制御は具体的には、例えば点火時期の遅角制御やスロットル弁開度の調整制御等であり、通常はトルク低減制御である。
【0031】
ステップ105において上記トルク制御が開始されると、ステップ107に進み、トルクコンバータ3のタービン3aの回転数Ntの計測が開始される。そして、続くステップ109において上記回転数Ntからトルクコンバータ3のタービン3aの回転角加速度dNtが算出される。この計算はECU11にて行われる。
【0032】
ところで、ここで上記回転角加速度dNtの値の振動の位相は上記車体の前後振動の加速度Gの振動の位相に比べ180°進んでいることを考慮すると、本実施形態において上記トルク制御を終了すべきタイミングである車体の前後振動の加速度が加速開始後最初にピークとなるタイミングは、上記回転角加速度dNtが加速開始後最初に下に凸となる極値をとるタイミングであると言える。
【0033】
すなわち、図3は上から順に車体の前後振動の加速度G、上記タービン3aの回転数Nt、上記タービン3aの回転角加速度dNtについて加速開始後の経時変化を示したものであるが、この図に示されているように車体の前後振動の加速度Gが加速開始後最初にピークとなるタイミングは、上記回転角加速度dNtが加速開始後最初に下に凸となる極値をとるタイミングt1と等しくなる。
【0034】
そこで、続くステップ111においては、上記回転角加速度dNtが下に凸となる極値となったか否かが判定される。すなわち、この判定によって車体の前後振動の加速度が加速開始後最初にピークとなるタイミングとなったか否か、すなわち上記トルク制御を終了すべきタイミングとなったか否かが判定される。
【0035】
ステップ111において、上記回転角加速度dNtが下に凸となる極値となっていないと判定された場合は、上記トルク制御をまだ終了すべきタイミングではない場合であるので、制御はステップ105に戻って上記トルク制御が継続される。一方、ステップ111において上記回転角加速度dNtが下に凸となる極値となったと判定された場合は、上記トルク制御を終了すべきタイミングとなった場合であるので、制御はステップ113に進み上記トルク制御が終了せしめられて本制御ルーチンが終了する。
【0036】
以上のように、本実施形態では、上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングが、上記タービン3aの回転角加速度が加速開始後最初に下に凸となる極値をとるタイミングから求められ、そのタイミングに基づいて内燃機関のトルクが調整されるようになっている。すなわち、本実施形態では、加速度センサを用いることなく上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングが正確に求められ、それに基づいて内燃機関のトルクが調整されるようになっている。そして、この結果、内燃機関のトルクをより適切に制御することが可能になる。
【0037】
次に本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態は図1に示したような構成において実施され得るもので、上述した実施形態と共通する部分を多く有しており、それら共通する部分については原則として説明を省略する。
【0038】
この実施形態は、車両が加速される際に生ずる上記トルクコンバータ3のタービン3aの回転数Ntの振動の位相が、車体の前後振動の加速度Gの振動の位相に比べて90°進んでいること(図3参照)を利用し、上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記回転数Ntが加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングと、上記車両の駆動系のねじり振動数とから求め、そのタイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整するというものである。
【0039】
以下、図4を参照しつつ本実施形態において実施される制御について説明する。図4は本実施形態で実施される制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンも先に説明した実施形態の制御ルーチン(図2)と同様、ECU11により、予め定めた時間毎の割込みによって実施される。
【0040】
本制御ルーチンがスタートすると、まずステップ201においてアクセル開度θの計測が開始される。このステップ201における制御は上述したステップ101における制御と同様である。また、ステップ201に続く、ステップ203、205及び207における制御も、それぞれ上述したステップ103、105及び107における制御と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0041】
ステップ207に続くステップ209では、トルクコンバータ3のタービン3aの回転数Ntが上に凸となる極値となったか否かが判定される。上記タービン3aの回転数Ntの振動の位相が、車体の前後振動の加速度Gの振動の位相に比べて90°進んでいることを考慮すると、この判定によって、車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングより位相90°分早いタイミング、すなわちこの振動の周期Tの1/4だけ早いタイミングとなったか否かが判定されることになる。
【0042】
ステップ209において、上記タービン3aの回転数Ntが上に凸となる極値となっていないと判定された場合には、制御はステップ205に戻ってトルク制御が継続される。一方、ステップ209において、上記タービン3aの回転数Ntが上に凸となる極値となったと判定された場合には、制御はステップ211に進む。
【0043】
ステップ211においては、車両の駆動系のねじり振動数fが求められる。本実施形態において、このねじり振動数fは、機関回転数NEと、変速機5におけるギア比と、トルクコンバータ3における速度比S(S=Nt/NE)とを引数として、ねじり振動数fが求められるマップを予め作成しておき、これに基づいて求めるようにしている。
【0044】
なお、この車両の駆動系のねじり振動数fは、車体の前後振動の加速度の振動の振動数と同じであると考えられるので、ねじり振動数fの逆数を求めることで、上記車体の前後振動の加速度の振動の周期Tを求めることができる(T=1/f)。
【0045】
そして、ステップ211に続くステップ213においては、ステップ209において上記回転数Ntが上に凸となる極値をとったと判定された時から4分の1周期が経過したか否かが判定される。これまでの説明から明らかなように、ここでの判定は車体の前後振動の加速度が加速開始後最初にピークとなるタイミングとなったか否かの判定であり、これはすなわち上記トルク制御を終了すべきタイミングとなったか否かの判定である。
【0046】
ステップ213において、上記回転数Ntが上に凸となる極値をとった時から4分の1周期が経過したと判定された場合には、制御はステップ215に進み、上記回転数Ntが上に凸となる極値をとった時から4分の1周期が経過していないと判定された場合には、トルク制御を実施したまま再度ステップ213の判定が繰り返される。つまり、本実施形態では、上記回転数Ntが上に凸となる極値をとった時から4分の1周期が経過した時にステップ215に進むようになっている。制御がステップ215に進むと、そこで上記トルク制御が終了せしめられて本制御ルーチンが終了する。
【0047】
以上のように本実施形態においても、加速度センサを用いることなく上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングが正確に求められ、それに基づいて内燃機関のトルクが調整されるようになっている。そして、その結果、内燃機関のトルクを適切に制御することができる。
【0048】
次に本発明の更に他の実施形態について説明する。なお、本実施形態も上述した各実施形態と共通する部分を多く有しており、それら共通する部分については原則として説明を省略する。
【0049】
この実施形態も基本的には図1に示したような構成において実施され得るものであるが、本実施形態では、図1に示した構成において、車両の車輪(すなわち、タイヤ)の回転数Ncを計測する車輪回転数センサ(図示無し)が設けられている。
【0050】
この実施形態は、車両が加速される際に生ずる車輪の回転数Ncの振動の位相が、車体の前後振動の加速度の振動の位相と一致していることを利用し、上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記回転数Ncが加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングから求め、そのタイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整するというものである。
【0051】
以下、図5を参照しつつ本実施形態において実施される制御について説明する。図5は本実施形態で実施される制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンも先に説明した実施形態の制御ルーチン(図2及び図4)と同様、ECU11により予め定めた時間毎の割込みによって実施される。
【0052】
本制御ルーチンがスタートすると、まずステップ301においてアクセル開度θの計測が開始される。このステップ301における制御は上述したステップ101及び201における制御と同様である。また、ステップ301に続く、ステップ303及び305における制御は、それぞれ上述したステップ103又はステップ203、及びステップ105又はステップ205における制御と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0053】
ステップ305においてトルク制御が開始されると、制御はステップ307に進み、上記車輪の回転数Ncの計測が開始される。そして、このステップ307に続くステップ309において、上記車輪の回転数Ncが上に凸となる極値となったか否かが判定される。上述したように上記車輪の回転数Ncの振動の位相は車体の前後振動の加速度の振動の位相と一致しているので、ここでの判定によって車体の前後振動の加速度が加速開始後最初にピークとなるタイミングとなったか否かが判定される。そして本実施形態において、これは、すなわち上記トルク制御を終了すべきタイミングとなったか否かの判定である。
【0054】
ステップ309において、上記回転数Ncが上に凸となる極値となっていないと判定された場合は、上記トルク制御をまだ終了すべきタイミングではない場合であるので、制御はステップ305に戻って上記トルク制御が継続される。一方、ステップ309において上記回転数Ncが上に凸となる極値となったと判定された場合は、上記トルク制御を終了すべきタイミングとなった場合であるので、制御はステップ311に進み上記トルク制御が終了せしめられて本制御ルーチンが終了する。
【0055】
以上のように本実施形態においても、加速度センサを用いることなく上記前後振動の加速度がピークとなるタイミングが正確に求められ、それに基づいて内燃機関のトルクが調整されるようになっている。そして、その結果、内燃機関のトルクを適切に制御することができる。
【0056】
なお、以上では、本発明をトルクコンバータ付き自動変速機を搭載した車両に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば手動変速機を搭載した車両に適用することも可能である。これまでの説明から明らかであると思われるので詳細な説明は省略するが、この場合、上述した実施形態におけるトルクコンバータのタービンの回転数Nt及びその回転角加速度dNtに相当する値としては、変速機の入力軸の回転数及びその回転角加速度が用いられる。そして、これらを表す値として、より具体的には例えば、クランク軸の回転数及びその回転角加速度を用いることができる。また、駆動系のねじり振動数については、例えば、機関回転数と、変速機におけるギア比とを引数として、ねじり振動数が求められるマップを予め作成しておき、これに基づいて求めるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明をトルクコンバータ付き自動変速機を搭載した車両に適用した場合について説明するための図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態において実施されるトルク制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図3は、車体の前後振動の加速度G、トルクコンバータのタービンの回転数Nt、同タービンの回転角加速度dNtのそれぞれについて加速開始後の経時変化を示したものである。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態において実施されるトルク制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の更に他の実施形態において実施されるトルク制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 内燃機関
3 トルクコンバータ
3a タービン
5 変速機(ギア)
7 ドライブシャフト
9 タイヤ
10 車体
11 電子制御ユニット
17 タービン回転数センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、該タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、
上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記車両の変速機の入力軸の回転角加速度が上記車両の加速開始後最初に下に凸となる極値をとるタイミングから求める、内燃機関のトルク制御装置。
【請求項2】
車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、該タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、
上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記車両の変速機の入力軸の回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングと、少なくとも機関回転数と上記変速機におけるギア比とに基づいて決定される上記車両の駆動系のねじり振動数とから求める、内燃機関のトルク制御装置。
【請求項3】
上記車両がトルクコンバータ付き自動変速機を搭載していて、
上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記トルクコンバータのタービンの回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングと、少なくとも機関回転数と上記変速機におけるギア比と上記トルクコンバータにおける速度比とに基づいて決定される上記車両の駆動系のねじり振動数とから求める、請求項2に記載の内燃機関のトルク制御装置。
【請求項4】
車両の加速に伴って発生する車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを求め、該タイミングに基づいて内燃機関のトルクを調整する内燃機関のトルク制御装置において、
上記車体の前後振動の加速度がピークとなるタイミングを、上記車両の車輪の回転数が上記車両の加速開始後最初に上に凸となる極値をとるタイミングから求める、内燃機関のトルク制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−132461(P2006−132461A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323461(P2004−323461)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】